根抵当権も不動産物権の一つであるから登記をしなければ第三者に対抗できないことはいうまでもなく、民法177条の適用を受けることは当然です。登記する事項は不動…
八月下旬の日曜日であった。 炎帝の怒りをかったような日盛り、達朗は汗でシャツを地肌にべたつかせながらも、六本木のアマンド前で由貴子を待っていた。 大学…
確かにチェスは愉しいし、自信のない卑屈な半生に無血の革命を起こしてくれたようなところがある。世界レベルの実力は世界レベルの自信にもつながっている。達郎は最…
「あのさ、由貴子さん、クラシック音楽でね、さっきカノンっていう曲を聴いたんだけどね。とても有名な曲なの?」 「カノン・・・?あぁ、パッヘルベルのね。有名…
恋と才能(15)pachelbel Canon in D (piano version)
翌日の大会二日目、達朗は予定だと、日本上位四強の二人と対戦するはずであった。 今回は川下チャンピオンもジョーンズ選手も参加していなかったが、代わりに二…
何を考えているのだろう、この少年。 達朗はペットボトルのお茶で舌を湿らせた。 フレンチ・ディフェンスにおける定跡は、ここで白番d4、黒番d5と続き、更…
達朗が出場を予定している日本チェス選手権大会は十二月の半ば、二週にわたって土日に行われる。計四日間で九試合を戦い、ポイント順に優勝者を決めるわけで、同率の…
八月上旬に行われるサマーオープンに向けて達朗は、一層チェスの勉強に励むことになるのだが、大学にも少しづつ通うようになり、久しぶりに会計学の教科書を開くよう…
駅前商店街にある居酒屋チェーン店にも毎日通っていたのが三日に一回程度なり、就寝も早くなった。 その晩、達朗はいつものようにPCで世界の強豪チェスプレイヤ…
七月に入った。じめじめとした時季も続いたが、気温が急上昇し、照りつける日差しの眩しさと暑さが一層感じられるようになった。 達朗は最近人生についてそして将…
達朗が強豪ジョーンズに公式戦で引き分けたことは、今までの破竹の勢いとも併せて協会中にあってはちょっとした話題になった。 新星現れる、そんな記事が全会員…
白番の達朗はいつものように初手d4とポーンを動かした。クイーンズ・ギャンビットの布陣を目指す。チェスの白番における一手目は大概がd4かe4の位置にポーンを…
午前10時から始まったチェスの公式試合は午後5時半頃まで続く。 第一試合早くに自分の試合を勝利に終えた達朗は、今回選手として参加している由貴子の対局を熱…
六月の最終日曜日、早くに起床した達朗は湘南新宿ラインを使ってJR代々木駅まで向かった。 駅の改札で由貴子と待ち合わせ、会場の代々木文化センターまで向かっ…
六月の最終日曜日に行われる代々木での公式戦、達朗はおそらく全勝同士で最後対戦することになろう、まだ見ぬジョーンズのことを思うと武者震いがした。 広汎性発…
「岸上君、ちょっと大事な話があるの。お茶でもどうかしら。」 薄暗くなった駅前ロータリーで二人の大学生と別れて直ぐ由貴子は達朗の耳元に囁いた。 妙に深刻…
対局前のお喋りぶりとは別人のように、静寂に身を正し盤面に鋭い眼光を投げかける青木の横顔を上目遣いに覗き見る達朗だった。 先程の池田君と青木さん、風貌だけ…
調布チェスクラブに遊びに来た城南大学チェスサークルの二人の学生は、名前は知られていないがとても強い大学生が出現した、ぜひ一局非公式戦だが対戦してみてくれと…
母由美子と佐伯教授とのサンシャインでの説教食事会も無事に終わったが、この日を境に達朗に若干の心境的変化が生じた。 まずチェスに対する取り組み方である。 …
「とまあ、こんな状況の一年間だったんです。」 飛行機の窓を大きくしたような厚いガラスの向こうに眼をやった達朗である。地上60階の個室から臨める東京の外景…
今年の正月明け、達朗はジャパンチェス協会の会員として初めて公式大会に参加した。 新宿の次世代文化センターは中央線市ヶ谷駅近くにあり、全日本選手権を始め多…
由貴子と初めて一緒に酒を呑み、いろんなことを話し合って、そしてカラオケ店まで行った。 その日を境に、なんとなく達朗の心の空洞に春の暖風が南の国から少しだ…
あと3話位で一部が終了します。 まあ下書き段階ですからね、訂正の嵐になると思います。 今月中には二部も終了させたいんですが・・・。
「盤上のモーツァルト、俺もその言葉は知っていますよ。ボビー・フィッシャーでしょ。」 少し酔いが廻ってリラックスしてくると、達朗は一人称が僕から俺に変わる…
この創作話、1部2部に分けて完成を目指しているところ、1部の方が終結に近づいてきました。 連休中には1部を完了させるつもりだったのですが、あと少しのとこ…
「岸上君は、まだ大学の二年生だって言ってたわよね。ワタシは三年生の時かな、大学の就職課が各界で働く諸先輩を招いて就職座談会っていうのを開催したことがあるの…
由貴子の話はさらに続く。 「一流のピアニストってね、有名音大をトップの成績で卒業して留学して著名なコンクールでいっぱい賞をとってさ。そこまでだって限られ…
レストランフロアは日曜日の夕食時とあってか混雑していたが、イタリアンレストランの通路側が一席だけ空いており、達郎と由貴子は早速ワインで乾杯した。 「初め…
暦の上では立冬となったが、天候は定まり穏やかな日が続いていた。 昨年の11月中旬、紅葉の街路樹を眺めることもなく、達朗は久々に急ぎ足で京王線調布駅から市…
昨年の十月、達郎の精神状態は最悪であった。 学校とか会社に通わねばならない状況であったら、おそらく鬱の病が侵食していたに違いなかったが、何もしないニート…
悲しいことがあると達朗は、いつも高校時代の帰りの都営バスを想い出す。 これはおそらく今後幾つになっても変わらないことだろうと思っている。 彼が通った高…
居酒屋から帰宅し、いつものように自室で二次会をやろうと焼酎の瓶と肴をコンビニのレジ袋から取り出した達朗である。 毎度のことながら眠たげな瞳は最近コンサー…
由貴子との長い夜の電話を終え、達朗はなんとなく満ち足りたものが胸に浸潤していくのを感じた。 不思議な感情だった。生まれて初めて肉親以外と者と交わした心の…
できれば明日の夜にしたいのですが、三日の連休初日になりそうです(^^♪ 今年の連休は執筆に明け暮れそうです。
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根抵当権も不動産物権の一つであるから登記をしなければ第三者に対抗できないことはいうまでもなく、民法177条の適用を受けることは当然です。登記する事項は不動…
最近、かなり久しぶりに行政法の本を読んでいるのですが、妙にハマっています。久しぶりにという表現をしましたが、これは学生時代に単位取得で学んだことがあった時…
根抵当権は分かるようで分からない。私にとって、いつまでも模糊とした抽象性に富んだところもありますが割合好きな法分野です。根抵当権の定義自体は、そんなに難し…
法定地上権と共同抵当の問題は難しいですね。ここは一つの論点を挙げ、個別価値考慮説と全体価値考慮説による論理構成と結論の違いにだけ触れてみます。 土地と建…
今までにアップした記事なのですが、浅学非才の身、あらためて読み返すと知識が曖昧な部分や誤字脱字が多いです。というわけで、今後、彫琢し、noteの方に移行し…
【共同抵当不動産の一部が物上保証人所有の場合】 (具体例) Aは1000万円の債権を担保するために債務者B所有の甲不動産(時価1000万円)と物上保証人C…
第392条【共同抵当における代価の配当】① 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、そ…
【抵当権設定当時、土地と建物が同一人の所有であること~要件②】 ④共有と同一人の所有の論点 この論点は、以下に事例をあげますが、第一に他の共有者(B)の利…
【法定地上権の意義、成立要件】 第388条(法定地上権) 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定…
今回の執行猶予制度改正についての最後の点、③刑の執行猶予期間経過後の刑の執行の仕組みの導入とは何か。なんだか、分かりにくい表現なので、具体例を挙げて話しま…
次に改正点②です。これは通常の執行猶予と違って保護観察付執行猶予の場合、その猶予期間中に罪を犯したら、従来は絶対に再度の執行猶予は付かないとされていたもの…
今回の執行猶予制度改正内容をまとめると、①再度の刑の全部執行猶予を付することのできる条件として、宣告刑の上限が1年から2年に引き上げられたという点(改正後…
令和4年6月17日に公布された刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)が今年の6月から施行されることになりましたね。もっとも、既に施行されている…
抵当権の処分、つまり、抵当権の譲渡、放棄、順位の譲渡、順位の放棄が行われた場合の具体的配当分の計算が私はとても苦手でした。計算自体は非常に単純なのですが、…
捜査には任意捜査と強制捜査があり、その違いについては今までに話したところです。そして、捜査というのは任意捜査が原則であり、強制捜査というのはあくまでも任意…
【抵当権の移転と抵当権の譲渡は違う】 第376条【抵当権の処分】① 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益の…
第521条(商人間の留置権) 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、…
第511条(多数当事者の債務の連帯)1 数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。…
【報酬請求権】 第512条(報酬請求権) 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。 民法の委任契約の…
【商行為の委任】 第505条(商行為の委任) 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。 本条は、直…
昨年の九月から書き始めた「島唄」も本日をもちましてようやく終結いたしました。 これから推敲、手直しと更に時間をかけて、世に出るのはおそらく来年の事になる…
本作品は冒頭に書いたように、武田秋一さんの最晩年の友人であった涼子と私の共同作品のようなものである。涼子の話を基に、私が小説風に肉付けして書き上げたもので…
直美と島内をドライブしてから数日後、近場の書店まで散歩がてらに出かけた帰り道であった。東京に帰るのはいつにするか、戻ったらすぐにホスピスに入るべく、今夜あ…
シンボルツリーであるバナナの木を実家の門前に見出した時、秋一は少年時代を思い出したのであるが、緑の草木は手入れが行き届いておらず、家も一目で古くなっている…
風車は当初予定していた金曜日までもたず、月曜日の朝、秋一が吐血して緊急搬送されたことをもって二十五年の歴史に幕を閉じた。 三週間の入院期間で秋一は別人の…
「初めてパパからホモセクシャルの話を聞いたのは、私が大学二年生の頃でした。同時になぜパパがママと結婚する決意を抱いたのか、それは数年前八丈島転勤時代に知り…
千鶴子が十三歳、中学一年生の秋の事であった。 市内の中心部にあったピアノ教室でのレッスンをすませ、ロータリーに面したバス停に向かうところであったという。…
カウンター越し、視線の合った秋一は瞬時で彼女の属性を推理し、それから冷蔵庫へと振り向いた。上背はあるが間近で見ると顔から足先までが細身で黒髪のロングヘアー…
日曜日の夕方であった。冴え返る肌寒さも感じたが、全体的に街には春の到来を告げる気配が漂い、あと二週間もすれば桜の開花時期となると思うと、秋一はなんとなく嬉…
多くのお客さんたちが秋一に別れを告げにやって来た。日本屈指のコメディアンS田氏に続いて、元上司である林崎裁判長の暖かい訪問まで受け、秋一は自分の東京生活に…
「家内も最近じゃ、すっかり涙もろくなってしまってな。」 林崎部長は嗚咽をもらす老婦人を横目にカウンターの秋一を見つめた。 「事情は私から話そう。私はね…
直美が帰った翌日の日曜日、秋一は夜六時から店に立っていた。一時間ほどで仕込みを済ませ、八時か九時頃まで店に立ち、後はジョージに任せるのであるから、さほどの…
秋に医師から節制して余命一年と宣告されて約四か月が経った。その間も通院治療は怠らなかった秋一であり、医師たちからの励ましで延命の期待を十分に胸に刻み込んで…
人気絶頂のコメディアンS田氏がぞっこん惚れ込み再婚相手にまでと考えていた銀座のクラブホステス明美が初めて、風車に顔を出したのは、もう二十年近くも前の話であ…
その晩、風車の閉店メッセージを知った長年来の常連客であるコメディアンS田氏は最後の宴を愉しむべく秘書を連れてやって来た。一年先のスケジュールまでに拘束され…
その頃から、秋一は毎晩のように妙な夢をみるようになった。スキーのジャンプ台に立つ夢である。多くの人がジャンプ台に立つまで順番待ちをしている。自分もその内の…
精神力が体力を凌ぐというのにも限界がある。二月の中旬に入ると倦怠感に襲われることが多くなり、食欲不振から益々瘦せ衰えてきた。しかし、抗がん剤治療を始めとす…
一月下旬の寒い夜、閉店のお知らせメールを受信した光の会の内田理事長と羽根女史とが更に数人の仲間を連れてすっ飛んで来た。真面目なゲイとビアン同士は基本相性が…
翌日、秋一は病院で担当医に対して三月いっぱいまで働き、後はがんと闘うことだけに専念したいと相談した。担当医としては秋一の仕事内容を知っているだけに渋い顔を…
八丈島の母親や姉家族、それに直美には退院直後に少しだけ事情を説明したのであるが、やはり医師からの余命一年という宣告については話せなかった。とりわけ高齢だが…