chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
月の爪痕 http://kurenai75.blog11.fc2.com/

「月の爪痕」は紅(くれない)が書いたオリジナルBL小説を掲載しているブログです。

フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2022/05/07

arrow_drop_down
  • Calling Section2-17

    どのくらいの間、湖のほとりで呆然と座り込んでいただろうか ―― 目の前を一組の老夫婦が行き過ぎたことで、相馬ははっとして慌ててスマートフォン取り出す。 時刻は7時を少し過ぎたところで、ほっとした。 ノロノロと顔を上げると、目の前の景色は相変わらず絵画か葉書かというほど明るく、美しい。 湖のほとりにはいつの間にかやってきていた家族連れの姿があった。 小学生に上がりたてくらいの少女が真剣なようすで水辺に...

  • Calling Section2-16

    「・・・っ、そ、その割にあんた、福島へは来るなって、言ってきただろうが!」 相馬は喚きながら、薫から距離をとるために後ずさろうとした。が、忌々しいことにベンチには金属製の肘かけがついており、端に座っていた相馬が逃げるスペースはなかった。「仕事をする上では、あなたは来ない方が良いと感じましたから。でもそう言ったところであなたは来るだろうと予想していましたし・・・実際来たのを見てかなりイラッとはしまし...

  • Calling Section2-15

    「・・・調子狂うな」 東京で凄惨な事件が起きていることを忘れてしまいそうなほどのどかな、鳥のさえずりだけが聞こえる沈黙の後、相馬は言った。「・・・はい?」 頭を下げ続けていた薫が、顔を上げる。「一番年下とは思えないくらい、誰よりも偉そうにしてるだろう、いつも。突然頭なんか下げられても、かえって調子が狂うって言ってんだよ」 薫は答えずに俯いた。 おいおい、本気で調子が狂うし、やり辛すぎるだろ・・・...

  • Calling Section2-14

    レオンとの話を終えて部屋に戻ると、時刻は12時近かった。 箕輪は既に夢の中で、全くこいつは完全に旅行気分だな・・・と思いつつ、相馬は東京の本部から送られてきたメールをチェックし、必要なものには返信をしてから、殺害現場ホテルの防犯カメラを再度見直してゆく。 箕輪には「何度見ても同じじゃないですか?」と言われるくらいに繰り返し見ているので、犯人の一挙手一投足、足の出し方から手の動きまで自ら体現できるく...

  • Calling Section2-13

    「以前、府警の田沼刑事から聞きました」 と、相馬は言った。「CIA内部でトラブルがあって、神無月さんが何ヵ月も入院していたと」「そういえば大阪の刑事が薫について、あれこれ嗅ぎ回っていましたね」 と、レオンは小さく笑って言った。「そう、その、田沼刑事の言うところの“トラブル”により、薫は一度死んだ ―― とある現場で名前を呼ばれて、振り返ったところにタオルケットを押し付けられたんです」「え?タオルケット?」...

  • Calling Section2-12

    それから、5分ほど経っただろうか。 奥の方の特別室のドアが開き、そこからアランが姿を現した。 彼は相馬の存在が見えていないかのように、相馬の横を通って薫がいる特別室へと入ってゆく。 入れ違いに、レオンが部屋から出てきた。「お待たせしました。 相馬さんには、ご理解頂いておいたほうが宜しいかと思われるお話があるのですが・・・お時間、頂けますか」 レオンに訊かれ、相馬は頷く。 レオンも頷き、相馬を奥の...

  • Calling Section2-11

    断定的な薫の言葉に対し、相馬は何も言えなかった。 薫は淡々と続ける。「今回の被害者、野間ひかり ―― 彼女は生への執着が非常に薄い。自ら死ぬことすら望めないほどに。死の間際に抵抗したのは、実家にいた頃に義父からされていた虐待の記憶に囚われたからです。彼女が抵抗していたのは、“あの瞬間”ですら義父にだった。そんな彼女が終始執着していたのが・・・いえ、あれは執着というより懇願のようなものですが、それがドア...

  • Calling Section2-10

    相馬も刑事なので、武道の心得は人並み以上にある。 学生時代にやっていた剣道では都大会に出場した経験があるし、柔道も有段者だ。 だがアランの攻撃を、相馬は全く防げなかった。防ぐどころか、身構えることすら出来なかった。 それにも驚いたが、それより驚いたのは相馬が吹っ飛ばされたのと同時に、薫が廊下に倒れたことだ。 その倒れ方は“くずおれる”とかいうものではなく、ある程度重量のある木の柱が突かれて倒れる時...

  • Calling Section2-9

    宿泊するホテルに関しては事前に薫側から、『我々の宿泊先は自分達で手配・精算します』と連絡が入っていた。 そしてその後、彼らが手配したと連絡してきたのは裏磐梯近辺では最高級レベルのホテルで、しかも最上階に2部屋ある特別室を両方押さえていた。 その部屋の宿泊料金を調べてみて相馬はひっくり返りそうになったのだが、自分達の分は自分達で精算すると言っているのだから、それはそれで、まぁいい。 問題は相馬達が...

  • Calling Section2-8

    東京から福島の猪苗代に着くまで、途中のサービスエリアで2回休憩を取ったが、薫は車から出てこなかった。 助手の猫塚兄弟は車外に出てきていたが、2人ともほとんど車から離れず、終始厳しい表情で額を突き合わせるようにして何やら話をしていた。 羽生サービスエリアでは、“来るなと言ったのを無視して俺が来ているから機嫌が悪いのかもしれない、それに付き合わなきゃならない助手も大変だな”などと相馬は思っていた。 だ...

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、紅さんをフォローしませんか?

ハンドル名
紅さん
ブログタイトル
月の爪痕
フォロー
月の爪痕

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用