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骨董商Kの放浪 https://kottousho.hatenablog.com/

大学卒業後1年もたたずに退社し、その後骨董商をめざす主人公Kが、美しくそして妖しげな骨董品をとおして、それに関わるさまざまな個性的な収集家、同業者などの人たちと織りなす創作小説。魅惑的な骨董品を巡る群像劇をお楽しみください。

立石コウキ
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2022/03/17

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  • 骨董商Kの放浪(22)

    僕はその夜まっすぐに帰る気力を失い、時折り夜空に浮かぶ満月を見上げながら、あてもなくふらふらとし、そして最後に犬山得二の家に辿り着いた。犬山は机で書きものをしている最中であったが、僕の遅い訪問に特段驚きもせず、無造作に伸ばした髪をかき上げながら僕を部屋に招き入れると、無言で卓の上に盃を置き、そこにゆっくりと酒を注ぎ込んだ。僕はそれを、定まったことのように自然と口に運ぶ。外から小刻みに聞こえてくる秋の虫の声に耳が慣れてくるにつれ、僕は次第に平静を取り戻していき、ようやく今日の出来事を語った。 いつものように、目をしばたたかせながら、その一部始終を聞き終えた犬山は、自分の酒を一気に飲み干す。「おま…

  • 「骨董商Kの放浪」(21)

    僕は、玩博堂(がんぱくどう)の出している土偶の写真を指し、三代目に訊いた。「これって、やっぱり贋物(がんぶつ)ですか?」それに対し「これの本物は、もちろんある。中国の紀元前3~4世紀くらいの黒陶の俑(よう)。ただ、非常に少ない。もっと造形がシンプルで、身体のラインもなめらか。こんなに固くない。昨今、結構出回っている贋物だよ」と断言。「やはり、そうでしたか。僕もそんな感じがしました」「こういうモノは、あまり見ない方がいいね」三代目は、雑誌を閉じてもとに戻した。 次の日早速、僕は世田谷区の或る美術館で開催している龍泉窯の展覧会に出かけた。平日だが来館者が多い。龍泉窯青磁の人気を僕は再認識する。 龍…

  • 「骨董商Kの放浪」(20)

    展示作品の最後を飾ったのが、清時代につくられた「粉彩(ふんさい)」という色絵で、牡丹を描いた一対(いっつい)の碗であった。これが粉彩かと思い、僕は凝視した。三代目の授業で、中国陶磁の最高位と解説していたのを思い出す。官窯のなかの官窯。まさに皇帝の磁器。 Eと名乗るオークションハウスのエキスパートが僕に近寄り解説。「粉彩は、白磁胎にエナメルの顔料で直接絵を描いています。使われる色も豊富で、図様も緻密で正確になされているので、さながら絵画のようです」たしかに繊細な油絵のようだ。「何というのか、綺麗としか言いようがないですね」僕はそれ以外の形容詞が出て来なかった。「はい。おそらく専門の画家の手による…

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