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骨董商Kの放浪 https://kottousho.hatenablog.com/

大学卒業後1年もたたずに退社し、その後骨董商をめざす主人公Kが、美しくそして妖しげな骨董品をとおして、それに関わるさまざまな個性的な収集家、同業者などの人たちと織りなす創作小説。魅惑的な骨董品を巡る群像劇をお楽しみください。

立石コウキ
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2022/03/17

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  • 「骨董商Kの放浪」(19)

    濃紺に白い小さなドット柄のワンピース姿が目の前にあった。立った襟がクラシカルな雰囲気を醸し出している。彼女は、いったん赤絵の皿に目を向けたあと、ゆっくりと僕の顔を見た。「とても気に入ったので、これをいただけますか?」唖然としていた僕は我に返り、「あ、ありがとうございます」と慌てて頭を下げる。彼女はクスっと笑って、名刺を差し出す。名前をSaeと名乗った。名刺の下には電話番号が記されてある。「ここに連絡ください。すぐにお支払いしますから。そうしたら、届けてくださるでしょ?」僕は両手で名刺を掴みながら「は、はい」と答える。僕が「あの…、眼鏡…」と言うとSaeは「普段はコンタクトなの」と笑い、「では」…

  • 「骨董商Kの放浪」(18)

    師匠が飛んだことに関して、アニキ曰く、先々代から繋がっていた右翼団体の、当代の親玉が亡くなったことが最大の要因だという。親分の父子関係が一触即発の状態だったようで、先代と友好的だった師匠に対し、若は相当な嫌悪感を抱いていたらしい。それまでなんとか保っていた関係が、先代の死によって崩れ、金を借りている師匠への風当たりが急激に悪くなったとのこと。こうなると、師匠は、当分表舞台には出てくることはできないだろうと。そして、その行方も当然ながら誰も知る者はない。 師匠は、あの又兵衛の絵をどうやって処分するのだろうか。それは皆目見当がつかないが、僕は何となく、師匠はあの絵と心中するのではないだろうかと感じ…

  • 「骨董商Kの放浪」(17)

    その年の5月の上旬、僕は才介に連れられて、東京郊外の或る寺で行われる市(いち)に参加していた。ここは、俗に「禿寺(はげでら)市」と呼ばれている。「何で禿寺なの?」僕の質問に、「住職が禿だからだ」と才介。「だって、普通住職は禿だろ?」さらなる素朴な質問に、「その住職は、正真正銘の禿なんだよ」「よくわからん」「つまり、おれらくらいの時から既に禿てたんだってよ」「ふーん」まあ、それは別にどうでもよいことで。才介の話しだと、ここの住職は骨董趣味があり、境内の寺務所の一部屋を提供して、月一で市を開いているとのこと。ご自身も参加。ただ、いつも大したものが出ないらしい。才介は、たまに顔を出しているようだ。参…

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