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弌矢
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2020/09/14

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  • あかねと暮らして

    睡蓮の香りの色が満ちた暗い部屋で、あかねは吐息をつき、テーブルの上の炎をゆらした。 どうしたの。 ベッドの上で眠りにつこうとしていたぼくが聴いた。 ピアスをすると、自分が変わるというでしょう? あかねがこちらにふり向いてそう言った。 それがどうしたの。 そんな簡単に変わっていいのかしらと思って。 構わないじゃないか。 欺かれている気がするの。 分からないな。 コスプレもだけど…… 幾らでも変わればいいじゃないか。 そんな簡単に変わって、本当の自分がいるのかしらね。 ほっとけよ。 私だってピアスをしている。 似合っているよ。 似合っている私は誰なの。

  • 一季に二人は交わりあって

    夏の過ぎた黄色に染まるプラットホームで、彼女は枯れ葉をふんだ。 夏の盛りの狂ったセックスが懐かしいわね。 一季まえのあれだね。 究極を欲してたわ。 体験で欲しても、体験を無限に繰り返すだけなのかな。 抜けだしたいわ、今も。 夏のあいだのモーテルのなかで、彼女は三四歳だった。そのときの彼女が、そのときのぼくに話しかけていた。 他人のセックスをその目で見たことある? あれはそうだったのかな。 なぜはっきりしないのかしら。 二人の相手と同時にしたから、そうだったのかな。 そのときみたいに狂ってよ。 狂っていなかった、狂った君なら狂わせられる。 理性を捨てなきゃ

  • 大切な人に自殺されると消えたくなる...

    大切な人に自殺されると消えたくなるほどたまったものじゃない。自殺の自由があるとか止めないとか言うならせめて自分のほんとうに大切な人が自殺するとき、心から笑顔でいてみて……いや倫理道徳人生命の重さ軽さとかどうでもいいんですけれども不条理が即死ぬ理由にならないじゃないですか、やめよー 弌矢

  • 若者には無限の可能性があると軽口を...

    若者には無限の可能性があると軽口を叩くのは勝手だが、かつて若者だったあなたが言うのか、と思うのだ。 弌矢

  • 自殺するのも場合によってはその人の...

    自殺するのも場合によってはその人の自由だ、といいたい気持ちは痛むほど分かる。 自殺が許されるのならすべてが許されてしまう、といってのけたヴィトゲンシュタインの気持ちもやるせなくなるほど分かる。 引き裂かれる。 弌矢

  • 大麻解放論者とかほざいている奴らの...

    大麻解放論者とかほざいている奴らのだいたいもどうでもいい。 そういう論者(?)たちのほとんどが自分の退屈をみずから彩ろうと努めようともせず、ただ退屈に耐えきれず大麻などにしがみついているだけだ。 弌矢

  • 大麻所持なんかでそいつの人格を疑う...

    大麻所持なんかでそいつの人格を疑うまぬけどもなんかくそどうでもいい。けれども飲酒運転する奴らはくそどうしようもない最低のヒトもどきどもだ。 他人の躰の自由を奪うかも知れない想像力すらない人格どもをこそぼくは疑ってやまない。 弌矢

  • 姉妹の兄になってから

    デパートの雑貨屋で働く姉妹と客のぼくは仲がよくなり、それから三人で遊ぶようになった。その姉妹がぼくを、パパではなく、兄にしたいと申し出てきたのは、つき合いで行った駅前のアクセサリーショップでだった。 歳下としか恋ができないぼくは、一歳でも歳下でなくては不可能で、同い年でも成り立たたない。自分が高校一年生のときは中学生以下としか恋ができない。小学一年生だったら幼稚園児以下としか恋できず、もし自分が一歳のときだったら〇歳と恋に落ちたに違いない。 姉妹は一七歳と一六歳で、ぼくの二一歳下と二二歳下だった。その姉妹は、ショップのなかで小物を物色しながら、親ほど歳の離れたぼくへさらり

  • 寝巻と余韻につつまれて

    二〇代の女性を的にした寝巻の広告で浮名を流した私は、眠りの流行がまた廻って来れば、もう一度浮名を流すかも知れない。私の兄だってずっと応援してくれているし、タブレットで広告の蛍光色をタップして見て廻ると、幾つもの寝巻姿の色をまとう私が画面に現れてくれる。 都下にあるひとり暮らしの部屋のなかは整理されている。片づけが終わっていないのはテーブルの上だけで、そこにはサプリメントが二〇錠ほど散らばっている。片づけは簡単だ。飲んでしまえばいい。アイスティで飲み干して、昼間のカーテンを広げると、上空の薄藍にひまわり色が浮かんでいる。あと一時間半ほどすれば、あの夏雲の白が浮かぶ、種類ある青のなか

  • 秋の彼女の彩りかたに

    秋になるたびに哀しむ人があふれて嬉しくなる。 夕方、千咲と新宿にある大きな公園を歩いているときだった。 どうしてそうなるのかな。 憂鬱が多くなれば、笑いを強要されもしないわ。 ポタージュ色をしたトレンチコートに身を包む千咲が俯くのを見た。彼女は嬉しいときに笑わない女だった。笑うときはいつも無理に合わせている。二年のつき合いでそれが分かった。 哀しみを強要されるだろう。 されない、嬉しいから。 立ち並ぶ樹木はめっきり滅入った色使いに色づいて見える。梢の上に青い猫が乗ってこちらを覗っていた。見つめている青い猫を千咲が呼ぶと、真っ逆さまに樹木の幹を駆け下りてきた。 青い猫

  • 色々と色々

    うるさいだけの狭苦しさに巻き込もうと必死なテレビを消して、久しぶりに弟と通話をすることにした。ぼくは東京に落ち着き、弟は事業を起こしてオーストラリアに住んでいた。 オンラインで飲み会をやらないかと持ち掛けると、弟は大麻が良いと答えた。酒より増しだと説き伏せられ、オンライン大麻通話にすることに決まった。 「そうか、こっちはテレビのなかの人間どもが逮捕されてつるされているってのに、そっちは良いな」 監獄の近くと天国の近くみたいなヴィテオ通話が始まった。弟はダウンを着て日射し色のなかにある広い庭が映像で見えるアングルを保ち、ぼくは狭いマンションのベランダから太陽の色が射し込むなかに半

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