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2020/08/15

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  • r=1-sinθ

    放課後、君と二人うねる前髪も肌に張り付く空気も大嫌いな数学も今だけは愛おしい。君の指が僕の文字をなぞる大雑把な文字を綺麗な指がなぞるそのチグハグさに見惚れていたr=1-sinθいつになったら解けるのだろう?r=1-sinθ

  • r=1-sinθ

    梅雨の放課後、期末テストがすぐそこに迫っている。部活動も休みになって、君と二人きりでテスト勉強会をする。授業は終わったからって切られた冷房が恋しい。蒸し暑い教室の中、君の指が僕のノートの文字をなぞる。(ああ、綺麗な指だなあ)なんて考えていると「ちょっと、聞いてるの?」って君が少し膨れていた。「ごめん、もう一回」「あと一回しか言わないからね」の会話しかできない関係性。本当は見惚れていたんだよって言いたかった。ノートの上、黒い線が増えていく。大雑把な僕の字に時々書き足される綺麗な字。君の存在みたいだって思った。ねえ、テストが終わったらお礼をさせてよ。デートに誘ってもいいかな?心の中で問いかける。口に出せるようになるまで、あと何回テストを受ければいいんだろう?ふと顔をあげれば目が合って、君はジトっとした目で僕を...r=1-sinθ

  • 贈る

    君に好きだと伝えようと思った。だから日曜日は一日中君への告白を考えていた。君に好きだと伝えようと思った。素敵な言葉で伝えようと思った。どう伝えたらいいんだろう?「愛してる」?「君が特別なんだ」?しっくりこなくて、もっと君に相応しい言葉があるのかもしれないって思って辞書に手を伸ばした。それでもやっぱりいい言葉が見つからなかった。君に好きだと伝えようと思った。言葉は見つからなかったから、花で伝えようと思った。どんな花を贈ればいいんだろう?バラ?チューリップ?アネモネ?ハナミズキ?どんな花を思い浮かべても、君にピッタリ似合いすぎて、君に贈るべき花が分からなかった。君に好きだと伝えようと思った。花は分からなかったから、絵を描いて伝えようと思った。どんな絵を描けばいいんだろう?笑顔?横顔?後ろ姿?たくさんの絵を描い...贈る

  • 贈る

    君に伝えたい思いがあるのになんと表現したらいいのかわからなくて辞書を捲ったけれど相応しい言葉は見つからなかった。花を贈ることを考えたけど君はどんな花も似合うから贈るべき花が分からなかった。絵で伝えようとしたけれど僕の技量では君を描ききれない。既存の言葉では言い表せない程君は魅力的でどんな花よりも君は美しい。贈る

  • オリオン座

    オリオン座が空に浮かぶと君のことを思い出す深夜1時でも、東京の空は明るくて冷たい空気が頬を撫でていく寒いねって言ったら君が私の頬を両手で包んでくれた二人並んで歩きながら「オリオン座しかわからない」って言ったら「俺もだよ」って返してくれる君が好きだった東京の空でもオリオン座は明るく輝いていてすぐに見つけ出すことができたんだまるで君みたいにねえ、元気ですか?幸せですか?もう東京から離れてしまったけどあの頃と同じようにオリオン座は明るくて冬の空気は冷たいんだ私の頬を温めるのはココアのペットボトルになって、君の手が恋しいねえ、好きだったよ今でも想ってるよいつか、いつか君が私じゃない誰かと幸せに暮らすようになってもきっと、きっと私には君だけなんだその時がきたらオリオン座をながめて君を思い出すよそれだけで幸せだからオリオン座

  • 輪郭をなぞる

    心を縛りつけた鎖がほどけない。もう会うことのない君をいつだって思い出す。春の風のなかに、夏の煌めきのなかに、秋の落ち葉のなかに、冬のひだまりのなかに、君との記憶を見つけて一人、懐かしいような、悲しいような気持ちになる。君を「君」だと認識してから8年目。知らないうちに恋に落ちていた。いつのまにか一番特別な人になっていた。片思いはいつか終わると思っていたけど、あまりにも長い永い片思いだったから終わらせ方が分からなかった。最後に会ってからもう2年。それでも未だに思い出せるんだ、君の全てを。笑ったときに細くなる目も、私の名前を呼ぶ声も、無条件にくれる優しさも。笑った顔が好きだった。名前を呼んでくれるときの声が好きだった。誰にでも優しいところが好きだった。今だって好きなんだ。今日は君のこと覚えていて、明日も覚えている。1...輪郭をなぞる

  • 輪郭をなぞる

    長すぎる片思いはいつしかほどけない鎖となって私の心を君に縛りつけた知ってた?私の特別だったの知らなかったでしょ?私の一番だったのもう会えない君一番近くにいたのに今では一番遠くなった触れたくても触れられなくて伸ばした手の行き先はどこにもないいつか顔も声も忘れて君という存在が輪郭だけになってしまっても私はいつまでも君を覚えているし好きでいつづけるんだろう君の輪郭をなぞって輪郭をなぞる

  • 君の笑顔は遅効性の猛毒だ

    君の笑顔は遅効性の猛毒だ君が僕に笑いかけたあの日からふとした瞬間に君の笑顔が浮かんで心臓が掴まれたみたいに痛くて息が上手くできないじわじわとじわじわと僕を締め付けるきっと解毒薬なんてなくて僕は君の毒に冒されたまま中毒症状に苦しんでいる僕はいつかきっと君の笑顔に殺されてしまうんだ君の笑顔は遅効性の猛毒だ

  • You are my Vision

    輝いた時代はいつか終わって遠い過去のことになる今が幸せで寂しいのは終わってしまうことを知っているから毎日眠る度に祈る明日も君が笑っていますようにどうか終わりが明日ではありませんように君は僕の希望で光なんだ奇跡のような君だからいつまでも消えないでほしい北極星のようにいつだって僕を照らして輝いた君をいつか忘れて思い出せなくなる過去が宝物で悲しいのは終わってしまうことを知っているから毎朝目覚める度に願う今日の君が幸せでありますようにどうか終わりが今日ではありませんように君は僕の希望で光なんだ奇跡のような君だからいつまでも笑っていてほしい太陽のように暖かく僕を包み込んで永遠なんてないことも始まれば終わることも全部知っているそれでも君は僕の希望で光だからどうかどうか一日でも長く奇跡のような君が笑っていられますようにYouaremyVision

  • 来年の桜が楽しみだなって君が言ったから

    解けない呪いにかかっているの。毎日死にたくて、人生の目標も、やり遂げたいことも何もなくて、生きている理由が見つからなかった。生きていく勇気も死ぬ勇気もなくて、八方塞がりの日々。君は私の特別な人、ではなかった。同じ学科で同じサークル、それだけ。他の誰かとよりかは少し近くて、でも特に何も感情はなくて。特別たくさん話すわけでもなく、どこかに一緒に遊びに行ったりもない。他人以上で、友達未満だった。「大学の桜並木が綺麗で好きなんだ」そう言った私に君が「来年の桜が楽しみだな」って言ったんだ。あの時君はどんな表情をしていたんだっけ。私はそれに何と返したんだっけ。もう何も思い出せない。恋じゃなかった。愛でもなかった。何気ない会話だった。特別じゃなかったんだ。だけどね、他の誰でもない君が「来年の桜が楽しみだな」って言ったから、私...来年の桜が楽しみだなって君が言ったから

  • 来年の桜が楽しみだなって君が言ったから

    来年の桜が楽しみだなって君が言ったからこの世界は私が考えているよりも希望があるのかもしれないって思ったの。もう少しだけ、もう少しだけ。そう思えたんだ。恋じゃなかった。愛じゃなかった。友達より遠くて他人より近い人。恋じゃなかった。だけど他でもない君が来年の桜が楽しみだなって言ったから私、今日もここで生きている。来年の桜が楽しみだなって君が言ったから

  • 2月のチョコレート

    赤とピンクと白、それから茶色。街中が愛で溢れている。電車の中吊り広告、お昼の情報番組、デパート地下の有名スイーツ店、ショッピングモールの入り口。ハートがいたるところでとんでいる。2月のチョコレートは少しバレンタインを意識しているようで買うのに戸惑うんだ。私にとってバレンタインなんて行事、関係なくなってしまったのはいつからだろうか。自分だけ愛ある世界から爪弾きになっているようで少しだけ悲しい。昔は友達とチョコレートを一緒に作ったり、好きな男の子に渡すってドキドキしたりしていたのに、もう何年もあげる相手なんていない。私も誰かに愛をあげたかったけど、私も誰かに愛されたかったけど、私には誰もいないの。コンビニに入ってチロルチョコを手に取る。その行為さえ気恥ずかしさを覚える。別にバレンタインだからじゃないんだって、チロル...2月のチョコレート

  • 2月のチョコレート

    街中が赤とピンクと茶色で溢れる日気恥ずかしさを覚えながらコンビニでチロルチョコを買ったあげる相手なんていないんだけど2月のチョコレート

  • happy birthday

    今日は特別な日。君がこの世界に生まれた日。私が君のことを知ったのは13年前。もう私の人生の半分以上を君が占めている。初めて君を見たとき、太陽のような人だと思った。みんなを照らして、明るくしてくれる。でも、ずっとずっと昔も今も、少し悪戯っぽくわらう顔が少年みたいで変わらないなあって思うの。楽しそうに笑う顔も、君がくれるあたたかい言葉も、努力家なところも、全部ぜんぶ大好きです。私の人生を君が明るく照らしてくれた。私が君に何かできることはないって私は知ってるけど、それでも、ずっと好きでいることはできるよ。今日は特別な日だから、私は祈るよ。君が、君の大切な人たちが、ずっと幸せでありますように。笑って生きていけますように。happybirthday

  • happy birthday

    太陽のような人だと思う明るくているだけでみんなが笑うの少年のような人だと思う少しだけ悪戯っぽいところが好き今日は特別な日私にできることなんてほとんどないんだけど今日は特別な日だから私は祈ります今日も明日もずっと君が大切な人たちと笑って生きていけますように幸せな日々を送れますようにhappybirthday

  • 色褪せるまで

    ずっと隣にいたから、私、気がつかなかったの。悲しいときは何も言わずにそばにいてくれた。楽しいときは冬の陽だまりのような目で笑ってくれた。君は大切な友達だったの。いちばんの、大切な人だった。だから気がつかなかったんだ。君と会うことがなくなって、連絡することもなくなった。大学を卒業したらそんなものよね。「久しぶりに会えてよかったよ。仕事頑張って。またね。」最後のLINEは一昨年の8月で止まっていて、またねがあることなんてきっとないんだろう。そんな事実が悲しく思えてようやく気づいたの。私は君のことが好きだったみたい。別に今更君とどうにかなりたいなんて考えていないわ。ただ、もう少しだけ、君のことを好きでいていいですか?もう少しだけ、私の一番を君にしておいていいですか?それでね、本棚の読まれない背表紙が少しずつ色褪せてい...色褪せるまで

  • 美人

    綺麗な人が好きって君が言ったから。行きつけの居酒屋、いつもの顔ぶれ、いつも君の隣に座ったの。大学の同じグループでいつのまにか好きになってた。でも知ってたよ。私みたいな可愛くない女より、あの子みたいに美人が君は好きなんだよね。いつだったか、君が酔っ払って言った言葉がいつだって私の頭の中で繰り返し再生される。「好きなタイプは綺麗な人。」私じゃ君の何にもなれないことがわかった瞬間だった。でもね、諦めたくなかったの私、少しでも綺麗になりたくて、でも、どうしたらいいのか分からなくて。ファッション雑誌で流行りの服装とか、メイクの仕方とか、ダイエット方法とか読み漁ってたくさん努力したけど、あの子みたいにはなれなくて、醜い私のままで。だから少しでも綺麗に見られたくて、綺麗な言葉を使うようになった。そうしたら君に見てもらえるんじ...美人

  • 美人

    綺麗な人が好きって貴方が言ったから私は綺麗な言葉を使うようになったの意識して意識して綺麗な言葉を話すそうしたらほら少しでも美人に見えるかなって浅はかで醜い心で美人

  • 君がいない世界

    世界を君で埋めてしまっていたから、君がいない世界をどうやって生きればいいか分からないんだ。1月2日初詣1月7日七草粥つくる!1月11日・・・毎日が君で埋まっていたスケジュール帳、今年もあと少し、来年のを買おうと思って書店に立ち寄った。だけど、どれを買えばいいか分からなくなってスケジュール帳のコーナーで立ち竦んだ。来年の予定なんて書かないだろうに、買って何になるんだろう。君と別れてから季節は2つ目の真っ只中、今年の後半の予定は真っ白で。君に会うのが待ちきれなくて何度もなぞった君の名前、今はただ悲しいだけ。君と出会うまではどんな風に生きていたんだっけ?何も覚えていないんだ。君と海に行って海月を見た。昔海月に刺されてから海月は嫌いだったけど、君が「可愛いね」って笑ったから海月を可愛いとおもえるようになったんだ。君が林...君がいない世界

  • 君がいない世界

    スケジュール帳のコーナーで立ち竦んだ今年の夏までは君との予定が書かれてたけどそれも新しくしてしまえば君の名前なんてもうなくなってしまうんだ。君と海に行ったから僕は海月を可愛いと思えた。君が林檎が好きだって言ったから僕は赤色が好きだったし、君がオリオン座が好きだって言ったから僕は腕に3つ並んだ黒子を愛しく思えた。世界を君で埋めてしまっていたから、君がいない世界をどうやって生きればいいかなんて分からなかった。記念日の日のハコに書かれた君の名前をなぞって愛しく思った日はもう過去のことで今は悲しみをなぞるだけ。君がいなくなってからの予定は空白だけ。君がいない世界

  • 消えないでと祈りを込めて

    風が歌って落ち葉が笑う、自販機にはあったか〜いが並んで炬燵を出そうかと思い始める。いつの間にか秋は終わりそうで冬がそこまで来ていた。秋が終わるのが哀しくて怖いのは秋の終わりと一緒に君も消えてしまいそうだから。秋風の君、冬も春も夏もそばにいる事は分かっているんだけど君が消えてしまうんじゃないかって不安で仕方がないんだ。消えないで、愛しい人。祈りを込めて繋いだ手を握りしめた。消えないでと祈りを込めて

  • 消えないでと祈りを込めて

    秋の終わりが哀しいのは君が秋風だから。窓の外で風が歌っているから冬が近づいていることに気がついた。びゅおー?ひゅおー?ぴゅおー?冬の風は独特な音を出すよね。都会のビル風みたいな音。ここは開けた田舎なのに。コンクリートの地面を落ち葉が舞う。カラカラ、カラカラってまるで笑うみたいに。最近は昼でも寒い日があって、自動販売機の‘‘あったか〜い’’が嬉しい。買ったばかりのお茶を飲んだら胃のあたりもあたたかくなって、生きているんだなあなんて思ったりもする。週末に炬燵を出そうか。冬が来るのは嬉しい。星が綺麗に見えるし、吐く息が白くて楽しくなっちゃう。だけど秋が終わってしまうのは今も昔も哀しかった。だって君が秋風だから。いつも隣にいてくれて、手を握ってくれる。抱きしめてキスをして、好きだって言ってくれる。それでも私は君といると...消えないでと祈りを込めて

  • 空に落っこちる

    空に落っこちたと思った。青い空、こんな雲一つない日は「きっと地球が上手に下降気流を発生させたのね」なんて思う。ずっと上を向いていたら不安になった。私は今、立っているの?座っているの?ねっころんでいるの?何も分からなくなってきて、空っぽな私は風が吹けば空に落っこちてしまうような気がして。みんな夢を語るけど、中身のぎっちり詰まった自分を語るけど、私には何もない。やりたいことも、行きたい場所も、なりたい自分も、何も持てないまま。空にはそんな私を見透かされているような気がして怖いんだ。「空っぽな奴ほど詩を書きたがる」ってイヤホンから流れてきてドキリとする。私が言葉を紡ぐのは空っぽだから。埋めたいの、空洞を、空虚を。それで誰も空っぽの私に気づきませんようにと願う。私が言葉を積み重ねるのは、誰かに気づいてほしいから。私がこ...空に落っこちる

  • 空に落っこちる

    青い空を見ていると不安になる。生きているのか死んでいるのか分からなくなるから。この世界に私、独りぼっちになってしまったような気になるから。空に、空っぽな私を見透かされているような気になるから。言葉を紡ぐのは空っぽな自分を埋めるため。隙間があると不安になるからできるだけぎゅうぎゅうに言葉を詰め込むの。みんな自分を持っているのに私だけ空っぽだって気づかれないように。言葉を紡ぐのは確かにここにいるんだって誰かに知ってもらうため。立っているのか座っているのか、起きているのか眠っているのかさえ分からなくなってしまうくらいの不安に攫われてしまわないように、誰かに私の存在を認めて欲しいんだ。拙くても、綺麗じゃなくても、誰にも分かってもらえなくても、今日も言葉を積み重ねる。空に落っこちる

  • おわり

    朝、目が覚めて突然の寒さに驚いた。昨晩は半袖で丁度よかったのに、慌ててタンスの奥から長袖を引っ張り出した。彼との最後の日からもう5回目の土曜日。未だに実感が湧かないまま彼の温もりを探してしまう。あと何回繰り返したら彼はいないって実感できるようになるんだろう。終わりが迫って来ていることにすら私、気がつかなかった。毎週土曜日は一緒に行った場所を、景色を、思い出を辿って、一つ一つ彼との恋を思い出すの。どんなものを見て、どんなものを食べて、どんな会話をしたのか。それでね、どこかに落としたままの彼の好きを探して拾い集めたいの。終わってしまった恋はどんな存在なんだろう。彼にとってははじめからなかったものになるのかな?私にとってもなかったものになるの?彼との時間も、言葉も、思いも全部、幻だってなるのかな。それで、いつかこの気...おわり

  • おわり

    半袖で寝た次の朝が寒くて長袖を着るみたいに月曜日にバッサリ切った髪の毛の人に会うみたいに恋の終わりはいつだって突然だおわりに向かう予兆もどこかに落としてしまった君の好きも未だ気づけないまま終わってしまった恋の終わらせきれない気持ちはどうなるんだろう君との時間も全部なかったことになるのかしら君からの言葉は幻になるのかないつかこの気持ちは無くなってしまうものなのかな思い出そうとしても何も思い出せなくなるのかなそのいつかは来るのかないつかが来るまでは落としてしまった君の好きを探し集めながら生きていくよおわり

  • beautiful you

    いつからかは分からないけど君が綺麗だと思っている。別に顔が整っているとか、仕草が綺麗だとかそんなんじゃなくて、何故かは分からないけど君が綺麗だと思っている。授業中、先生の話を聞いてノートを取る君の横顔を見ていた。あの子を見つめる熱い眼差しを見ていた。目が合いそうになって慌てて逸した赤い耳を見ていた。全部が綺麗だと思った。地学の先生が「この時期は夏の大三角と秋の四辺形どちらも見ることができるよ」なんて言っている。きっと見上げても大多数の人にはどれがどれかなんてわからないでしょ?きっと君にとっての私も有名じゃない星たちと同じなんだろうなんて考えて勝手に悲しくなった。夜はいろいろ考えてしまうからYouTubeを開いて最近SNSで話題のアーティストのチャンネルを開いて新曲を聴いてみる。綺麗な恋愛をしてきたのね。真っ暗な...beautifulyou

  • beautiful you

    YouTube開いて最近人気のアーティストの恋愛ソングを聞く綺麗すぎて悲しくなった暗い部屋の中カーテンを閉めないから星が綺麗で自分がひどく汚く思える君が綺麗なのは私じゃない誰かをみているからなのねそのままでいい振り向かないで君は綺麗なままでいて明日目が覚めても私汚い私のままだろう流行の歌に眩しさを感じるような日陰者のまま明日もきっと君を綺麗だと思っているイヤホンから聞こえるのは流行りのラブソング窓の外煌くのは夏の大三角と秋の四辺形思い浮かべたのは綺麗な君beautifulyou

  • わがまま

    難解な言葉よりも分かりやすい言葉が欲しいの。世界でいちばん不器用で無愛想で照れ屋な人だと思う。告白だって、そっぽを向きながら「月がきれいだ」だったし、誕生日プレゼントは綺麗な花束。きっと花に言えない想いを託しているんだね。褒めてくれるときも難しい比喩ばかりで褒められていることに気づかないこともある。たまにはね、目を見て「好きだ」って言って欲しいし、ストレートな言葉が欲しい。誰かが昔使った言葉を借りてくるんじゃなくて、花に頼るんじゃなくて、彼自身の言葉が欲しい。すごくわがままなのかもしれないけど、誕生日と記念日くらいは私の我が儘をきいて欲しい。私はきっと彼をずっと好きだから、今日も素直な言葉にして想いを伝えるけど、彼はまたそっぽを向きながら「ここだかなしき」って言う。難解な言葉よりも分かりやすい言葉がいいの。わがまま

  • わがまま

    難解な言葉はいや分かりやすい言葉がいいわ月が綺麗じゃなくてILoveYou って言って比喩ばかりで飾り立てた言葉じゃなくてストレートな褒め言葉を頂戴不器用で無愛想で照れ屋なあなただけどたまには私の我が儘をきいてよ目を見て好きって言って可愛いって言ってそれだけで幸せだから高価なアクセサリーもブランドのバックも綺麗な花束もいらないのただあなたの本心が欲しいそうしたら私もありったけの愛の言葉をあなたにあげるからわがまま

  • 22時、2番ホーム

    ふたり並んで座るベンチ電車を待つ22時の2番ホーム触れそうな手君までの距離は3センチメートル手を握ることはできない関係都会じゃないから夜は1時間に1本人もほとんどいないホームたまにポーンと音が鳴るだけの静かな時間ライトがふたりの時間をドラマチックに演出している愛を囁けない代わりに将来の夢を語るいつかに君がいて欲しい1番ホームに電車がやってきて私の方向とは反対に君を運んでいく君に手を振って見送った今日もいえなかった好きを心の中で何回も繰り返して今日の君の姿を記憶に留めた、22時32分22時、2番ホーム

  • 22時、2番ホーム

    人影も疎らな22時、電車を待つ。君とふたり、ベンチに座っていろいろなことを話す。将来の夢、模試の成績、部活のレギュラー争い。学校が違うのに数学の先生の話を面白いって聞いてくれる君、とても優しいのね。触れそうで触れない手が擽ったい。君までの距離は3センチメートル。恋人だったら手を握ることができるのにね。都会じゃないこの街の夜は静かで、電車は1時間に1本くらい。この時間に電車を待つのは私と君くらいで、暇な時間を埋めるために話すようになったんだっけ。君のことたくさん知って、優しい声も笑顔も全部好きになるには時間はかからなかった。学校が違うから君に会えるのは毎日この時間だけで、朝からも会えるようになればいいのになんて思う私。だけど、だからこの時間は大切な時間だとも思う。ポーンとなる音、あれは何のためになっているんだろう...22時、2番ホーム

  • 秋風

    映画の終わりの5分間のようだなと思う。幸せで、楽しくて、少し寂しい。僕は君といると切ないんだ。どれだけそばにいて、手を繋いで抱きしめても埋まらない隙間があるように感じる。埋まらない隙間が恐くて、どうやって埋めようか試行錯誤の毎日。始発駅があって終着駅があるようにいつか僕らも終わってしまうのかと怯える。君からする金木犀の香りもいつか思い出せなくなるんじゃないかと思ってしまう。冬になれば秋の過ごしやすさも凛とした風も忘れてしまうように、オリオン座が輝くから秋の満月を思い出せなくなるように、一瞬で通り過ぎていく秋のような君だから切なくて哀しくて愛おしい。切ないのは刹那だからなのかもしれない。埋まらない隙間があるから僕は君を大切にしたいし愛おしいと思うのかもしれない。秋風

  • 秋風

    君といるといつも切なくて近くにいても傍にいても手を繋いで抱きあっても埋まらない隙間幸せなのに楽しいのにどこか切ない秋風が吹くみたいにいつか終わってしまうような気がするいつか思い出すこともなくなってしまう気がするそんな恋だからこそ君を大切にしたいし君を愛おしいと思う秋風

  • 世界が終わるそのときも

    世界の終わりはどんな色なんだろう。燃えるような赤か、澄んだ青か、すべてを包み込む黒か。世界の終わりが緑色なら君を思いながら消えていけるのにね。世界最期の日の次の日はどんな光景なんだろう。君が存在した痕跡は残っていてほしい。いつか芽生える生命と君の痕跡が触れ合うならとてもロマンチックよね。明日世界が終わるとしても私は君への思いは誰にも教えないわ。最期のときまで私はあなたにとってただの他人でいたい。世界が終わるそのときも

  • 紫苑

    今日も明日も変わらずに日が昇って、日が沈んで。君がいた昨日も、君がいない今日も同じだけの時間が流れていく。今日は君がいなくなって悲しかったけど、明日はきっといつもと同じ1日を過ごして、いつもと同じことで笑うんだろう。いつか悲しみは薄れて君のことを思い出すこともなくなっていくんだろう。人はそれを忘却と呼ぶし、別れだと呼ぶ。私も君も地球の長い時間のなかでは瞬きをするくらいの一瞬にしか存在しなくて、その時間の流れで忘れられていく存在なんだ。ねえ、それでも私は君を忘れたくないし、君がいない今日も明日もこれからも悲しんでいたいよ。悲しみのなかには確かに君が存在しているから。紫苑

  • 秋霖

    朝に目が覚めたはずなのに薄暗くて静かな部屋。カーテンを開くといつも飛び込んでくる光はなくて、暗い空がそこにあった。雨が降っている。音もなく降っている。秋の雨だ。秋は切なく、美しく、楽しく、寂しい。雨は音もなく降って、記憶はグレースケールで、まるで昔の無声映画のよう。君との思い出も遠い昔のことのようで、どんな色をしていたのかはもうあまり覚えていない。今日みたいな日はお気に入りのカフェでコーヒーを飲もうかと思い、身支度をはじめる。出掛けるのに半袖は頼りなくて、値札も取っていない、買ったばかりの長袖を着た。駅までの道、新築に引っ越してきた五人家族。休みの日は笑い声が響いている。駐車スペースに並べられた自転車はまるで幸せのしるしのようで少し眩しい。私にはこない幸せ。駅について電車を待つ。貨物列車が知らない誰かの大切な荷...秋霖

  • 秋霖

    静寂音を立てずに雨が降るこの時期の記憶はグレースケールまるで昔の無声映画出かけるには半袖では頼りないから買ったばかりの秋を纏うこんな日はお気に入りのカフェに行こうかコーヒーにミルクと砂糖と君との思い出を溶かし込んでゆっくりゆっくりと飲み干そう駅までの道新築の家に並ぶ大中小の自転車は幸せのしるし通り過ぎる貨物列車は誰かの希望と優しさと未来を運んで電車待ちのホームのコンクリート傘の先で君の名前書いた秋霖

  • word

    君の言葉にはじめて触れたとき目の前がキラキラと光ってシャボン玉が弾けるみたいな感覚がしたそれからはもうはやくていつの間にか君の言葉の虜になっていた君にはどんな世界がみえているのどんな風に考えているの知りたいことがたくさんあって私は君にはなれないから知ることができないことがたくさんあって君の真似をして言葉を紡いでみたけど君の言葉には程遠いいつの間にか君の言葉に触れるたびに息ができなくなった胸が締め付けられるようになったプールの底にいるみたいにこれも恋なのかもしれないword

  • word

    昔から文章を書くのは好きで、国語の先生を唸らせるような作文や、友だちをクスリとさせるような随筆を書くのが得意だった。文章を書いているときも、書いていないときも、どんな言葉を遣えば、どんな言い回しをしたら、人の興味をひけるのか、自分の思いを伝えられるのか、そんなことばかり考えていた。君の言葉に初めて触れたときから君の虜になってしまった。キラキラとしたシャボン玉が目の前でパチンと弾けるような感覚。また見たい、また触れたいと切望するような感覚。いつしか君の言葉に触れるたびに息ができなくて、胸が締め付けられた。まるでプールの底にいるみたいに。私には紡げない言葉、私には見えていない世界。私は自信をなくしたし、言葉を書くのを辞めてしまおうかとも思うくらいの衝撃だった。憧憬、羨望、嫉妬、憎悪。いろいろな感情が混ざり合うような...word

  • 歩くような速度で

    君を認識したのは確か、入学して2か月は経った頃だった。授業の発表グループが同じになって、こんな人いたっけ?というくらいだった。発表の準備をしていくなかで君のことを少しずつ知っていった。雨が降り続いた7月、暗い空に気分も自然と沈んで無意識のうちに不機嫌顔になってしまっていた。購買から出てきた君、雨宿りの屋根の下で嬉しそうに買ったばかりのアイスを食べていた。その日の夜は君のアイスを食べるときの笑顔が離れなかった。セミが煩い8月はじめ、うだるような暑さに家を出たばかりなのにもう帰ろうかと考えていた。道の向こうで旅行の外国人に道案内をしていた君、英語は苦手って言っていたのに一生懸命に説明している。僕はいつの間にか書店で『英会話入門』を手に取っていた。はじめての夏休み仲間で集まった8月おわり、みんなの輪から抜けて、君と話...歩くような速度で

  • 歩くような速度で

    ゆっくりと歩くような速度で君に恋をしていたいはじめはなんとも思っていなかったある日の笑顔にある日の優しさにある日の涙に気がつくたびにひとつひとつ小さい子どもが覚束ない手で積み木をつみあげるようにひとつひとつ君への好きをつみあげていったゆっくりでいいよ不格好でいいよだけどひとつずつ確実につみあげていこうきっと終わりのない積み木だけどゆっくりと歩くくらいの速さで君と恋をしていよう歩くような速度で

  • せんとせん

    おとぎ話が好きだった。シンデレラにはガラスの靴、白雪姫には毒リンゴ。眠り姫には糸車、ヘンゼルとグレーテルにはお菓子の家。当たり前に登場する安心感と、それがないなんて考えられないキーアイテム。そのキーアイテムは私には君だったんだ。息をするように一緒にいた。ベッド横のぬいぐるみくらい必ずある存在だった。何をするにも、どこに行くにも、君が当然のように一緒で、ずっと昔から一緒だったような気さえしていた。だけど、君には私の知らない18年があって、私には君の知らない18年があった。これからも私の知らない君の人生があって、君の知らない私の人生があるんだろう。長い長い人生を一本の線で表すなら、私と君の線が交わったのは4年間だけで、この後の人生で交わることはないんだろう。ねえ、私君に出会うまでどんなふうに息をしていたっけ?おとぎ...せんとせん

  • せんとせん

    君といつも一緒にいること息をするくらい自然なことだった君がいつも隣にいることベッド横の人形くらい当然なことだった君には私の知らない18年があって私には君の知らない18年があるそんなことを忘れていたこの先君には私の知ることのない人生があって私には君の知ることのない人生があるそんなことに気がつかなかった君と私の線が交わったのはたった4年間のことでその後は交わらないのね君と出会うまでの私はどんな風に息をしていたのか忘れてしまったというのにせんとせん

  • 返しそびれた思い出を

    返しそびれたDVD、返却しに歩く午前2時。街は寝静まってまるで世界に私だけみたい。借りてきて観ずに返すことになったななんて落ち込みながら歩く。何度も観たの、あなたの好きだった映画。手元にはなくてよくてたまに思い出して借りに行くくらいが丁度いい。閉店後の返却BOXは名前も知らない虫が踊っているスポットライト。ギギと音を立ててあなたとの思い出を吸い込んでいく。帰り道、悲しくなってイヤホンに涙をおしこめた季節外れの卒業ソング。あの映画みたいに歌って踊りながら帰ろうか、世界の端っこで。返しそびれた思い出を

  • 返しそびれた思い出を

    借りていたDVDの返却期限が今日(日付が変わってしまっているので本当は昨日だけど。)だったのに忙しくて観れずにいた。今夜遅くに観て、明日の開店前までに返しに行こうかとも思ったけれど、明日は早起きできる自信がなくて返しにいくことにした、午前2時。外は人もお店も寝静まって、街灯のオレンジが優しく見守っている。その静かさにまるで世界に私だけみたいだと思った。何度も何度も観たDVDは、洋画だけど、台詞が聞き取れるようになってきた。そんなに観るなら買えばいいのにとも思うけど、あなたが好きだった映画だから、手元にはなくてよかった。たまに思い出して借りに行くくらいがちょうどいいんだ。あなたのことをたまに思い出して悲しくなるくらいの頻度で。閉店後の返却BOXだけが照らされていてまるでスポットライトみたい。(虫がたくさん集まって...返しそびれた思い出を

  • 帰り道

    夕方6時の帰り道、もうクーラーはいらなくて窓を開けて外の空気を取り込んだ。不思議だな、先週は暑くてクーラーなしじゃ生きてけなかったのに。窓の外には色んな音が溢れていた。男子高生の笑い声、サッカー部の中学生の恋バナ、自転車のベル、横をすり抜けようとするオートバイのエンジン音。もう涼しさを感じるようになったことに嬉しくなって、楽しそうな人々の音に微笑ましくなった。横に誰もいないのに笑っている私は傍からみれば変人以外の何者でもないのだろうな。そんな風に危惧しながらアクセルを踏んだ。風を切る音がする。暑いと締め切ってるから気付くことができない音だなと思う。車のスピーカーからはメロウな音楽。空はオレンジと水色。なるほど、エモーショナル。明日はどんな服を着ようかなと考える。この時期は服装を考えるのがとても楽しい。家路を急ぐ...帰り道

  • 帰り道

    帰り道もうクーラーはいらなくて窓を開けた飛び込んできたのは少しひんやりとした風と男子高生の笑い声涼しさに嬉しく思いながら楽しさに微笑ましく思いながらアクセルを踏んだ風を切る音スピーカーからはメロウな音楽秋がもうそこまで来ている明日はどんな服を着ようかなそんなことを考えながら家へと向かう長い列に加わった帰り道

  • find

    あなたと見たことのない景色来たことのない場所その中のどこにでもあなたを見つけてしまう知らない誰かの後ろ姿に、服装に、髪型に。あなたじゃない誰かの瞳の中に、話し方に、笑い方に。まだ、まだ、私の中にはあなたが息づいていて。find

  • find

    彼がいる街を出てから3年が経とうとしている。はじめの頃はただただ寂しくて何もかもがつまらなかった。彼がいない人生を生きていける気がしなかった。大型のショッピングモール、古くからあるような商店街、隠れ家的な喫茶店、街角の本屋さん。今では彼がいない街の、彼がいない思い出がたくさんできて、お気に入りの場所もたくさんできた。でもね、でも。彼と来たことのない場所にいつだって探してしまう。彼と見たことのない景色のなかにいつだって見つけてしまう。彼の姿を。すれ違う人の歩き方に、前を歩く人の背中に。聞こえてくる笑い声に、一瞬目があったカフェの店員さんの瞳のなかに。いつだって彼を見つけてしまうんだ。ようやく彼のいない街で彼のいない人生を歩いていけるような気がしていたのに、まだ私のなかに息づいていて、離れない、離してくれない。今日...find

  • アスファルトに氷をひとつ

    夏の終わり、なんてカレンダー上では言うけれど、まだ夏なんて終わりそうになくて太陽がてっぺんにいる時間帯はとても暑い。午後二時はアスファルトがいちばん熱くなる時間帯だと理科の先生が言っていたような気がする、10年以上前の記憶。何もすることがない日曜日の昼、テレビを見ようにも再放送ばかりで季節外れの桜が咲いていたりする。この時ばかりは何か趣味になるようなことをはじめておけばよかったと後悔する。冷蔵庫の製氷ルームを覗き込んで、ふとアスファルトの上に置いてみたらどれくらいで溶けるのだろうかと思った、何もすることのなかった4週間前の私。今日も氷をひとつ手に取って庭まで急ぐ。アスファルトの上に置く。帽子を被ってくればよかったと後悔しながら氷の溶けていく様を眺めていた。8月10日は2分で溶けた氷、今日は5分だった。永遠に終わ...アスファルトに氷をひとつ

  • また明日の夕焼け空

    今日も疲れた。とても疲れた。夕方6時半の帰り道、早く家に帰りたいと思っている車は私だけではないようで長い長い列を作っている。信号待ち、空を見上げる。夏が終わろうとしているこの時期、夕方の6時半は夕焼け空が広がつている。夜を迎え入れようとしているこの時間、空は水色と藍色と茜色。綺麗だと思って以前写真に納めたことがあるけれど何故だろう、見たまんまには写せなくて。車の窓に頬杖をついて夕焼け空を堪能する。流行りの音楽なんか口遊めば気分は映画の主人公だ。今日の楽しかったこと、失敗したことを考える。あの失敗、すごく恥ずかしかったな。いつもは注意されてばかりの先輩に褒めてもらって嬉しかったな。なんて。楽しかった日も、嬉しかった日も、悲しかった日も、死んでしまいたかった日も。夕焼け空は変わらずに綺麗で、明日はきっといい日だよと...また明日の夕焼け空

  • アスファルトに氷をひとつ

    夏の終わり昼間はまだ暑くて午後二時のアスファルトは熱気をもっている手持ち無沙汰な日曜日氷をひとつアスファルトの上に置いて溶けてゆく様を眺める8月10日は2分で溶けた今日は5分まだまだ暑くて夏は永遠に終わりそうにないように感じるけれど確実に秋に近づいているアスファルトに氷をひとつ

  • また明日の夕焼け空

    信号待ち見上げた空は茜色窓に頬杖ついて流行りの歌を口遊む気分は映画の主人公嬉しかった日も悲しかった日もたくさん笑った日も死んでしまいたかった日も夕焼け空は変わらずに綺麗で明日はきっといい日だよと私を励ましているよう楽しかったことも失敗も恥ずかしかったことも明日また太陽に会えるときには何もかもリセットされていて新しい一日が用意されている不意にクラクションの音前を見ると信号はもう青でごめんなさいと後ろの人たちに呟いてアクセルを踏んだまた明日の夕焼け空

  • 砂の城

    久しぶりに会った君見ないうちに格好よくなっていっそうキラキラしている恋人ができたと幸せそうな君よかったねと笑う私ほんとは君の隣は私がよかったけど恋人のいいところを褒めるより今日のためのお洒落を褒めてほしかった恋人との未来を語るより私との思い出を語ってほしかった知りたくなかった蕩けるような目を上がった口角を優しい声をあの日の砂のお城の約束忘れずにいたのは私だけ約束を胸に抱いたまま大人になってしまった砂の城

  • 砂の城

    地元の小さな居酒屋の角の席、それが私たちの特等席。「久しぶりだな」そう言って席に座る君、いつも通りの10分遅刻。「遅いよ」と膨れる私、これもいつも通り。忙しくて中々会えなかったから半年ぶりの再会だ。毎月のように会っていた私たち、半年ぶりの彼は格好よくなっていてなんだかキラキラしていた。いつも通りじゃない事がひとつ。「あのな、俺、恋人ができたんだ。今度紹介するな。」なんて幸せそうに笑う君。「よかったね」なんて言いながら微笑んだけど、本当は泣いてしまいたかった。なんで君の隣はいつも私じゃないんだろう。そんな私の様子なんて気づかないお気楽な彼は恋人の好きなところを話しだす。恋人との未来の話を私にしてくる。頑張れ私の表情筋、なんて思いながら私は彼の話に相槌を打つ。それよりも今日のためにしたお洒落を褒めてよね。私、知らな...砂の城

  • 黄色の未来

    チャイムの音が聞こえる少しして楽しそうな声が近づいてきた窓の外を見ると黄色の帽子が駆けているきゃいきゃいと楽しそうに響く声きっと目に見える全てが彼らには輝いているのだろうこれから黄色い彼らは何色になるのだろうどんな夢を抱いてどんなことに興味を持ってどんな人間になっていくのだろう大丈夫、君たちの未来は明るいよ通り過ぎる黄色い帽子たちを見つめながらそう呟いた黄色の未来

  • 黄色の未来

    チャイムの音が聞こえてきた。しばらくして楽しそうな声が近づいてきた。窓の外を見ると黄色い帽子の子どもたちが走ってきた。「はやく!」「まってよ!」「せんせいがはしっちゃダメだっていってたよ!」きゃいきゃいと楽しそうに響く声。あの年の頃は目にするもの全てキラキラとして見えて、明日もきっと笑っていられると無条件に信じていた。きっと彼らもそうなんだろう。彼らはこれからどんな人生を歩むのだろうか。どんな夢を持って、どんなことに興味を持ってどんな人間になっていくのだろうか。きっと楽しいばかりではなくて、綺麗なことばかりではないだろう。だけど、だけど、きっと大丈夫。君たちの未来は明るいよ。そう去っていく黄色い帽子たちに呟いてパソコンに向かう。彼らの未来を少しでも明るくするために。黄色の未来

  • 秋を恋う

    秋を待つ世界が赤や黄色オレンジに色付く季節秋がいちばん好き美しくて空気が澄んで楽しくて少し切ない過ごしやすくて夜は少し寒い一瞬で冬に移り変わる刹那的な季節だからものがなしく切なく愛おしい秋が待ち遠しいまだ暑い日は続きそうだけど早く秋よこい秋を恋う

  • 秋を恋う

    秋を待つ。四季の中でいちばん秋が好き。世界が赤や黄色、オレンジ色に色付く季節。秋は空気が澄んでいて、凛としている。紅葉やイチョウが美しい。ヒラヒラと舞い落ちる葉と、地面に積み重なる様さえ美しい。ご飯が美味しいし、スイーツも美味しい。それに店頭に並ぶ洋服がどの季節よりも可愛い。お洒落が楽しくなる季節だ。何をするにも楽しくて心が躍る、だけど何故か切ないそんな秋が好きだ。夏の暑さが和らいで過ごしやすくなる季節。夜は少し寒くて毛布を引っ張り出すか悩み始める季節。ようやく夏が終わって、秋が来たと思ったらすぐに冬に移り変わっていく、そんな刹那的な季節だからたまらなく愛おしいのだ。まだ、夏も終わっていないんだけどね。早く秋よこい。秋を恋う

  • 世界でいちばん

    「『世界でいちばん君が好きだ』この言葉における世界とはなんだろうか」毎週木曜日の5時間目の講義で社会学の先生が問いかけた。世界の人口は約70億人。この70億人の中からいちばん好きな人ということ?そうじゃないよね。世界70億人に会うことなんて到底不可能だ。ここにおける"世界"はきっと、"私"の世界で。今まで出会った人、認識した人その中でのいちばん好きな人ということなんだろう。私は考える。今までの人生でどれくらいの人と出会ったのだろうかと。数え切れないくらいたくさんの人と出会った。その中のいちばんはきっと彼で。「好きな人と両思いになる確率は1%にも満たないらしい」なんて先生が言っていることを聞き流しながら、彼のことを思う。講義中に何をやっているんだという感じだけれども。私が今まで出会った人の中で何故だか彼だけは輝い...世界でいちばん

  • 世界でいちばん

    「世界でいちばん君が好きだ」この言葉における世界とは何だ?大学の講義で社会学の先生が問いかける世界の70億人全員に会えるわけではないから「世界」は"私"の世界だ。私が今まで出会った私の手が届く範囲にいた人たちそれが私の世界。70億人全員に会ったわけではないけれど、私の手の届く、私の世界でいちばんあなたは特別だった。あなたが輝いてみえた。だから私の世界でいちばんあなたが好きなの。願わくばあなたの世界のいちばんも私であってほしいのだけど。世界でいちばん

  • 積み木

    茶葉から淹れたアールグレイ本を読み耽る土曜日夕方に入るお風呂いつもより一品多い夕飯そんな少しの贅沢を幸せと思えるような人間でありたい庭を飛びまわる鳳蝶終わりかけの朝顔夕立の後のみずたまり燃えるような夕焼けそんな些細な風景を美しいと思えるような人間でありたい日々の幸せと美しさを少しずつ少しずつ積み重ねてあなたとふたり笑って生きていけたなら積み木

  • 積み木

    日々の少しの贅沢、例えば茶葉から淹れたアールグレイを飲むこと、土曜日の一日中本を読むこと、夕方の明るいうちからお風呂に入ること、夕飯にいつもより一品多く作ること、そんなことを幸せだと思えるような人間でありたい。些細な日常の風景、例えば庭を飛びまわる鳳蝶、夏の終わりの朝顔、夕立の後のみずたまり、明日も晴れだと告げる夕焼け、そんな風景を美しいと思えるような人間でありたい。毎日の幸せとか美しさとかをあなたとふたり、積み木のように少しずつ積み重ねてふたりで笑って生きていきたい。あなたとならそうやって生きていけると思うの。だって同じことで笑って、同じことで泣いて、同じことで怒る、そんなふたりだから。だって、同じものを美味しいと思って、同じものを美しいと感じて、同じものを楽しいと思える、そんなふたりだから。この先の人生も同...積み木

  • forget

    拝啓、あなたへねえ、知ってる?人ってね、誰かを忘れる時は声から忘れるそうよ。その次は顔、次は思い出、最後に匂いなんですって。私はもう、あなたの声も顔も朧気にしか思い出せなくなってきたわ。へんなの。あんなに好きだったのにね。これでも私、毎日あなたのことを考えているのよ。毎晩夢で会えますようにって願っているのよ。私ほどの健気な女はいないでしょ?それはそうと、いつになったら忘れていったタバコを取りに来るの?いつもみたいに「忘れもの〜」なんて呑気な声でやって来て、帰り際におでこにキスをするあなたを待っているのだけど。いつになったらあなたは来るの?あなたが忘れものを取りに来ないと私は引っ越しができないじゃない。鍵を付け替えることができないじゃない。前に進めないじゃない。早く取りに来てよね。それじゃないと私、あなたのメビウ...forget

  • forget

    毎日毎日君のことを思い出す毎晩毎晩夢で会えることを願う近ごろは君の声君の顔朧気になってきたあんなに好きだったのに毎日毎晩想っているのにどんどん思い出せなくなっているその事実がひたすらに哀しいきっと明日は君のこと覚えているでも十年後はきっと忘れてしまっているのだろう人は誰かを忘れるとき声から忘れるらしい次に顔、思い出最後に匂いあなたが纏っていたメビウスの匂いもいつか忘れてしまうのかな持ち主のいなくなったタバコの箱を見つめたforget

  • 住の江

    もう会うことのない君をいつだって探している。君と見た朝日の中に、陽だまりの中に。夕焼けの中に、星空の中に。君が好きだった映画の中に、小説の中に。夢の中でさえ会えないと昔の人は嘆いたけれど確かにその通りだ。毎晩ベッドに入って目を閉じる時私は君のことを考えている。そうしたら夢の中では君に会える気がして。今夜こそは君に会えますように。住の江

  • 住の江

    もう会うことのない君を探している。彼とは2年前に別れた。一緒に見た朝日、冬の寒い日に一緒に探した陽だまり。明日は晴れだねって笑い合った夕焼け、ずっと一緒にいたいと願った流星群。まだ、私の中には彼が住みついていて、あの頃と似ている、だけど決定的に違う景色を見るたびに鼻の奥がツンとする。彼が好きだった映画は俳優さんの名前まで覚えてしまった。彼が好きだった小説は主人公の台詞を言えるようになった。観るたびに、読むたびに、彼が傍にいるような気がして、でもいなくて寂しくて。大昔の人は和歌で夢の中でさえ会えないと嘆いていたけれど、確かにその通りで、夢の中でさえあなたは私に会いに来てくれなくて。毎晩ベッドに入って目を閉じる時彼のことを考える。今日こそは会いに来てくれますように。夢の中でくらいは手を繋いで歩きたいわ。そんな風に考...住の江

  • looks like

    世界で一番優しい人。それはきっとあなただと私は思うの。世界で一番残酷な人。それもきっとあなただと私は思うの。友だち数人で遊びに行った。久しぶりに会うから上手く話せるかな、とかみんな変わってしまっていたらどうしよう、とか心配もしたけれど、集まればまたあの頃のように話ができた。2年ぶりのあなたはあの頃よりも大人になっていた。「何か飲み物買ってこようか?」とか言って飲み物を買って来てくれたし、「ゴミ、捨ててくるよ」なんて言って私の手からスマートにゴミを奪っていった。優しいのは変わらないのね、なんて思いながら13cm斜め上を見上げる。私の視線なんて気付かないで他の人と笑うあなた。危なかった。自惚れてしまうところだった。あなたも私と同じ気持ちかもしれないって。あなたは優しくて、あたたかくて、好きにさせるだけさせてしまう。...lookslike

  • looks like

    世界は優しく残酷にみんなに等しく1日を与える貧しい者にも富める者にも健やかなる者にも病める者にも世界を呪う者にも幸せな時はその優しさが有り難く思える苦しい時はその優しさがとてつもなく残酷に思えるそんな世界だから理由もなく愛おしいのだこんな世界だから私はあなたを好きになったのだあなたは誰にでも優しいの残酷なくらいに私だけにその優しさを向けてほしかったけれどみんなに等しく優しさを分け与える人あなたはこの世界に似ているlookslike

  • メッセージカード

    部屋を掃除したら出てきたメッセージカード書いてあるのは私の名前最後の日君がくれたチョコレートほろ苦いお酒の味に混ざって少しだけ涙の味がしたことまだ憶えている元気かなって見上げた空はブランデー色に染まっていて明日も晴れだなぁってひとり笑った明日も君が幸せですようにと祈りながらメッセージカード

  • メッセージカード

    部屋の掃除をした。もう何年か前の手帳が出てきて、思い切って捨てるかなんて思いながらパラパラとページをめくったら懐かしいメッセージカードが出てきた。彼にしては可愛らしい、有名な犬のイラストが描かれたカード。そこにはメッセージなんて書いてなくて、ただ私の名前が書いてあるだけ。もらった時は彼らしい、なんて妙に納得しながらも、何か一言でもくれたっていいじゃないと思ったことをおぼえている。別に特別な名前の関係ではなくて、バイトの同僚だっただけ。それでも私は彼が好きだったし、傍にいられるだけで、話ができるだけで幸せだった。バイト最後の日、彼は私にプレゼントをくれた。可愛らしいチョコレートの紙袋に件のメッセージカードが貼ってあったのだ。もう会えないね、なんて思いながら家に帰ってチョコレートを食べた。チョコレートなのに、塩辛い...メッセージカード

  • あの子はともだち

    明るくて優しくて頭のいいあの子は私のともだちお人好しで負けず嫌いでたまに天然なあの子は私のともだち人気者でキラキラとした未来を見ていていつも笑顔のあの子のことが大嫌いで私にないものたくさんもっていて私なんて大勢の内の一人で近づいてこないでその光を当てないでそれでもあの子は私のともだちあの子はともだち

  • あの子はともだち

    出会ったのは大学のサークルで、お互いに先輩だと思って挨拶しあった。あの子はいつも笑顔で、優しくて周りに人が絶えないような子。それに頭もいいんだ。すごくお人好しで、だけど負けず嫌いで。たまに天然なあの子は私のともだち。私は?私はともだちと呼べる人なんてあの子くらいで。それにきっとあの子の大勢いるともだちの内の、いてもいなくてもあの子の人生に影響なんて何もないような一人。惨めだなあ。いつも周りに人が集まってくるあの子に苛つく。何よヘラヘラしちゃって、八方美人よね、なんて。私は地面を見て生きている。あの子は?あの子はキラキラとした未来を見て生きている。ムカつくなあ。なんで、私に冷たくされても、無視されても笑顔なんだろう?心底気持ちが悪いわ。それでも、私が落ち込んでたらすぐに気づいてくれるし、私の好きな食べものはいつも...あの子はともだち

  • 夕立ダンス

    アスファルトに打ちつける雨粒ぽつりぽつりぱしゃぱしゃタンタンタンまるで雨粒のダンスみたい笑う君と眺める雨一緒に踊ろうと夕立が誘っている我慢できなくって君は一緒に踊り出した雨宿りした意味がないよって笑いながら私も思わず踊り出すタンタンタンばしゃばしゃダダダダダ彼と私そして夕立三人で踊る踊るぱしゃぱしゃてんてんてんぽつりぽつり雨、まだ止まないで夕立ダンス

  • 夕立ダンス

    ぽつり。帰り道、夕立。「ああ、もう最悪」なんて言いながら軒下に入って雨から逃れる。昼間はお日様が私たちをこんがりと調理しようとしているかのように日差しが照りつけていたから、傘なんて持って出かけなかった。雨の中走って帰るには遠い家。雨が止むまで待つしかないかなんて思いながら雨の降りつけるアスファルトを眺めた。「まるで夕立のダンスだわ。」ぽつりと呟く。不意に頭上から笑い声が降ってきた。失礼だなという気持ちをこめて上を睨む。「ごめんごめん、面白い表現だなって思って。」優しそうな目を細めた同じくらいの年の男が立っていた。タンタンタンとステップを踏む夕立を二人で眺める。耐えきれなくなったのか彼は雨の中でダンスをし始めた。「あっはは、雨宿りした意味、なくなっちゃったじゃない。」思わず笑う私。楽しそうな彼を見て私も一緒に踊り...夕立ダンス

  • 魔法使い

    私は私が嫌いだ。可愛くないし、明るいわけでもないし、友だちと呼べる人は片手で足りてしまう。特別にスポーツができるわけでも楽器が得意なわけでもない。頭も別に良くはないし。とどのつまり凡庸な人間なのだ。私の嫌いな私を覆い隠すために髪を伸ばす。短くして顔がよく見えるようになんてなったら大変だ。大学に入って何か変わったわけではなくて、周りの頭の良さに嫉妬したし、お洒落なあの子を羨んだし、明るいあの子に羨望の眼差しを送った。それだけの日々。今日もまたイヤホンで耳を塞ぐ。お気に入りのバンドのボーカルが「もうすぐ夏が来るからとびきりのオシャレをしよう」なんて歌っている。大学に入ってからひとり暮らしを始めたからか、以前にも増して人と話すことが減った。きっとこの調子では大学を卒業する頃には人と話すことなんてできなくなっているんじ...魔法使い

  • 魔法使い

    魔法使いはいるのかしら空を飛んだり杖からビームを出したりする魔法使いはいるのかしら魔法使いはいるのかしら物を浮かせたりけが人にヒールをかけたりする魔法使いはいるのかしら魔法使いなんていないよみんなは言うそんなの空想の中だけだ魔法使いなんていないよ魔法使いはいるわ空は飛ばないしビームは出さないけれど物は浮かせないしヒールはかけないけれど魔法使いはいるわだってあの日あなたはたしかに私に魔法をかけた魔法使い

  • I Love You の訳し方

    二人きりの夜道二人の間を通り抜ける風舞うホタル月が二人を照らして優しく優しく微笑んだぽつりぽつりと響く君の声も二人を包む沈黙も君といる空間はどれも心地いい好きという言葉では君に伝わらない気がしてそれに代わる言葉を探す立ち止まった私を不思議そうに見る君大丈夫?なんて差し出される右手とっさに出た言葉は「あなたと手を繋いで歩きたいの」ILoveYouの訳し方

  • I Love You の訳し方

    二人きりの夜道。二人の間を通り抜ける風。夏の夜は暑くて涼しい。蛍が飛びかう中、君と二人で並んで歩く。右隣を見上げると優しくどうしたの?と微笑む君。月よりも凛と輝いていた。全部全部好きなの。愛おしいと感じるの。ぽつりぽつりと君の口から落ちてくる言葉を拾い集めて宝箱の中にそっとしまっておきたい。沈黙も心地良くて、二人きりのこの景色を瞼の裏に刻み込む。どんな時間も、どんな場所も、君がいるだけで愛おしくて特別なものだ。この気持ちを伝えたい。でも「好き」は違う気がして、うまく伝わらないような気がして。昔の有名な文豪はILoveYou をなんと訳したんだっけ。伝えたい気持ちを探す。どう言ったら伝わるのかな。不意に立ち止まった私を不思議そうに君は見ている。「大丈夫?」と差し出される右手。ああ、私が伝えたかったのは、私のILo...ILoveYouの訳し方

  • 青空の詩

    「ここから出してやるよ」と彼は言った。細められる目がとても優しい。次の新月の夜が待ち遠しくなった。未来が待ち遠しいのはいつ以来だろう。私は青空を飛べるようになった。あれからどれくらいの月日が経っただろうか。彼に出会うまでの私はどんな風に生きていたっけ。どうやって息をしていたんだっけ。今日も一日の始まりは二人分のコーヒーを淹れて、一日の終わりには幸せねって思いながら彼の腕の中で眠りにつくの。という小説が書きたかったけど、その途中とか脱出方法とか思い浮かばなくて挫折した話。青空の詩

  • 鳥籠の詩

    知らない男と結婚することになった。嫌だと抵抗したけれど、男の家に無理やり連れて行かれた。ここに来てどれくらいの月日が経った?今の私にあるのはいつのまにか用意されている清潔な洋服と温かいご飯、読んでしまった本と1人でいるには広い部屋。まるで鳥籠の中の鳥みたいだ。あの男は毎晩私を蹂躙していく。悔しくて涙が出ることを初めて知った。今夜も私はあの男の下で喘ぎながらいつか殺してやると思うしかなくて。彼との出会いは突然で。窓から見える景色で時間の経過と何もできない悔しさからもう長いことしめきっているカーテンをなんとなく開けてみた。外の光に目が眩んだけど、彼だけは最初からはっきりと見えていた。日に当たって透き通っているブラウンの瞳と見つめ合う。鳥籠の詩

  • 青空の詩

    あれからどれくらいの時が経ったのだろうあなたに出会うまで私はどうやって生きていたのかどうやって息をしていたのか忘れてしまったわ二人分の洋服と温かいコーヒーとまだ知らない感情と二人で暮らすのにちょうどいい広さの部屋あなたから与えられる愛今の私にあるのは数え切れないほどの幸せであなたに出会うまで私はモノクロの世界にいたのね今日も私あなたの手の中で幸せだと思いながら眠りにつくの青空の詩

  • 鳥籠の詩

    あれからどれくらいの時が経ったのだろうか貴方に出会うまで私はどうやって生きていたのかどうやって息をしていたのか何も思い出せない清潔な洋服温かい食事読み尽くしてしまった本棚の本15メートル四方の部屋貴方から与えられる快楽今の私にあるのはそれだけで貴方に出会うまで私はどうやって生きていた?今日も私貴方の手の中で殺してやるわと思いながら喘ぐの。鳥籠の詩

  • 名前

    「ねえ、本当に大切な人の手は離したらだめだよ。」小さな居酒屋の一角、私はあなたにそう言う。私は大切な人の手を握る勇気すらなかったけど。離れてこんなに愛しくおもっていることに気付くくらいならあなたに恋人ができたって報告をされるくらいなら私はあのときあなたの手をとればよかった。知っていた感情。物語の中でだけれど。知らなかった感情。私だけがいいって。名前をつけようとしても「」のままだった感情。ようやく名前がついた。名前

  • 名前

    久しぶりに会った彼は少し大人になっていてすっかり社会人だった。ひとつ年下の彼をかまい倒していたのはもう2年も前の話、学生時代の思い出。「仕事、忙しそうだね」って言うと彼は頷く。でも充実してる顔で。大切だった、私の特別だった人。彼にされた告白は返事ができなくて宙ぶらりんのまま、私たちの関係は終わった。小さな居酒屋の一角、恋人ができたと幸せそうに笑う彼。「大切な人の手は離したらだめだよ。」なんて冗談まじりに言う私。(私はあなたの手を握る勇気すらなかったけどね。)そんな風に思いながら。小説や漫画、詩や短歌、色々なところで知ったようになっていた感情。でも本当は知らなかった。なんで私じゃないんだろう、隣は私だけだったのに、知らなかった感情がぐるぐると渦巻いて、なんだかモヤモヤとした。仕事で挫けそうになるたびに思い浮かべた...名前

  • 願いごと

    流れ星を待つこの街は夜が明るすぎると言う姉とあの頃よりも背が伸びて色々なことを知ってキレイだけじゃないこともおぼえたあの頃と何一つ変わらない感情で見ることはできなくなった流れ星小さい頃に星がたくさん降った夜を想うあの日私と姉と両親と探した星欲しいと願ったおもちゃのカラオケ幸せを描いたようで今思うとあれ、お母さんの趣味だよねって笑った姉父の愛に気づいたあの頃と変わらない願いを流れ星にかけて明日もみんな、幸せでありますように願いごと

  • 願いごと

    ペルセウス座流星群の活動がピークを迎えるってニュースが流れて私はひとりで夜中にこっそりみようかななんて考えてた。姉も同じことを考えてたらしい。二人で流れ星を待つ。この街の夜は明るいと言う姉。私もその通りだと思った。遠くで灯りがゆれている。耳をすませば聞こえる車の走行音。少しずつ慣れてきて星が明るく見えるようになってきた。流れ星見えないねって上を見ながらする会話。隣の幼馴染みの家から聞こえてくる音、もう何年も会っていない。昔はあんなに仲が良かったのに。流れ星を探しながら幼い頃家族で眺めた星空を語り合う。あの頃e-kara(イーカラ)が流行ってて、姉も私も欲しかったから何回も流れ星にお願いした。上手に3回言えなくて、何度も何度も。その年のクリスマスプレゼントはイーカラとミニモニのカセットと松田聖子のカラオケがたくさ...願いごと

  • photograph

    電車と電車がすれ違う瞬間修復途中のお城街角の花屋さん道端の小さな花お姉ちゃんが買ってきたケーキ真っ白なイヤフォンと真っ白なヘッドホン訪れる度に変わっていくあの街も小さい頃から変わらないこの街も好きなものは、大切なものは全部撮っておくからわたしが死んだら全部現像してね。みんなに私の好きだったものを知ってほしいから。みんなであいつはこんなのが好きだったんだなって、自分はこんなのが好きなんだよなって、ひとしきり話したら全部私と一緒に燃やしてね。好きなものの写真の中にあなたの写真を一枚だけ入れておくわ。写真の意味に気づいたらあなたは苦笑いするだろうけど。その写真だけは燃やさないで。あなたにあげるわ。それで私を一生忘れないようになればいい。photograph

  • photograph

    谷川俊太郎展に行った。あの展示会では、彼を形作るものがたくさんあって、彼の愛するものが沢山あった。帰り道、小さな花屋、路面を走る電車、修復途中のお城いつもと同じ景色だけどいつもよりも愛おしく感じた。他愛もない日常のひとコマも、いつも使っているイヤホンも、変わらないこの街も、あの人に会いに行くたびに変わっているあの街も私は好きで、大好きで。だから全部カメラで撮っておこうと思った。いつか私がそれらを忘れてしまってもいいように、いつかそれらが消えてしまっても寂しくないように。photograph

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