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  • 第549日 祓戸大神

    祓戸大神祓戸大神たちは特に祭られることもないのに人々の罪穢れを祓ってくれる気前のいい神様だ誰でもお供えなしに唱えてお願いすれば人は清められる神々の前に立つことができる大いなる浄化が無償で与えられる何と大らかな信仰か清まって神の前に立てばよい汚れたらまた清めてもらえばよい祓戸大神こそが神道の真髄だ第549日祓戸大神

  • 第548日 敬意

    敬意敬意に敬意を持たねばならぬ敬意を放逐した心はケダモノ以下のものになる愛を持てなどというのは余計な強要嫌悪を持つことさえ仕方ないけれど敬意は持たねばならぬ敬意というのはよくわからないだが人にも自然にも物にさえもこの国の人々は敬意を持ってきた敬意の奥には叡智がある社会を円滑にする功利以上の存在への深遠な賛美がある第548日敬意

  • 第547日 答える時間

    答える時間人に尋ねられた問いに数日後に答えが出ることがある考え続けていたわけではないのに心のどこかでは思索し続けていたらしい一つの問いに答えるのに数年掛かることもある数十年あるいは一生掛かる問いもあるだろう中には何回もの人生を掛けて答えを手にする問いもあるはずだそうとしか思えないものがあるすぐに答えが見つかる問いは大したものではない最も深奥な問いは答えの出ない問いだ第547日答える時間

  • 第546日 大河

    大河すべての姿を貫いて流れる何かがある強固な意図と猛烈な熱情をもってあらゆるものをエネルギーとして意志として感じ直さねばならないだがそれは猛烈な奔流だ小さな私など吹き飛ばされるその響きだけで私は怖じ気づく姿の花園は平穏だわれらの魂は大河に飛び込むには弱すぎる第546日大河

  • 第545日 首絞め

    首絞めネクタイというものは奇っ怪なものいつでも首を絞められまっせ力ずくで引きずり回せまっせ一地域の風習が全世界に拡がっているのも気持ちが悪い気丈に反抗するアラブ人は偉いけれどねえ男の首もとはだらしなくて汚いんだよ特に老人になるとしわしわでね誰かもっといい方法を発明してくれないものかね第545日首絞め

  • 第544日 進化対象

    進化対象技術も仕組みも人類が永らく夢見てきた理想に近くなっているんだよけれど人は幸福ではないと言うそろそろわかる時が来ている理想の社会に近づくためには技術や仕組みではなく別の所を進化させねばならぬといくら技術や仕組みを高めても人はそれを悪用するあるいは無駄なことに費やすいい加減気づかなくてはならぬ進化させる対象は自分たち自身だということを第544日進化対象

  • 第543日 未知の月

    未知の月十五夜よりも十七日の月明け方の空に幻のように輝く長く生きていてもそれを知らなかった見たことのない時刻の風景というものがある夕暮れの空に怪物の爪のように光る二日月もいいいろいろな季節のいろいろな時刻の空を見たい忙しい都会人の知らない楽しみ第543日未知の月

  • 第542日 苦い蜜

    苦い蜜数十年掛けてたくさんの体験をして集めた蜜は甘くはないこの苦い蜜は魂を養うのか滅ぼすのか私は知らない肉の中に生きて痴愚を免れることなどできるのだろうか願わくは苦い蜜が発酵し新たな私のいのちを育む腐葉土の一部とならんことを第542日苦い蜜

  • 第541日 野良

    野良かつて安アパートで同棲した最愛の猫は半野良だった気ままにやってきて勝手に出て行く病院に連れて行ったのは喧嘩で大けがをした時だけ去勢もしなかったし老いて衰えていく時もそのままにしたもっとよくしてやりたかったと胸が痛むこともあるが半野良の宿命と自分を慰める最近は半野良は犯罪のように言われる息苦しい嫌な世だ野良猫と共に私も消え去りたい第541日野良

  • 第540日 取り落とし

    取り落とし詩作はどこででもできる書き留めるものさえあれば書き留めないと忘れる数分後には跡形もなくなる取り落としたものはたくさんある取り落とさなかったらものになったかというのはわからないただ取り落としたという思いがあるだけ人生もまた取り落としたものでいっぱいのような気がするけれど取り落とさなかったらと考えても意味はない釣り逃がした魚は大きいということもない忘れてしまっている忘れてしまうのがいい第540日取り落とし

  • 第539日 粘体の日

    粘体の日ぼよーんと緩みどよーんと沈み動物ですらなく粘体のようになって日がな一日無為に過ごすそれもいいではないか長い旅だそういう時に余計なことを考えるから逆に病気になるその日はそういう日にしてぼよーんとしどよーんとすればいい第539日粘体の日

  • 第538日 誰もが

    誰もが哲学は思索し叡智を得るもの宗教は祈り自らを高めるものそれはどこにでもあるそれぞれの場所と力量において学問である必要などない組織である必要などないプロフェッショナルも要らない誰もがなせること他者を動かそうなどと思わず自らが担うものでいい時に呟き時に聴けばいい誰もが哲学者であり宗教者であることそれが人類の理想ではないのかそれ以外に何があるのか第538日誰もが

  • 第537日 別の地球

    別の地球たくさんの風景を集めて心の甕で発酵させ幻のように立ち昇る魂の風景を作る忘れないよう人は記録するけれどその必要はない時と場所を離れることで風景は幻となる私の中に一つの地球があるこの地球とは別の地球がそれは私の魂の作品私の魂のすみか私の魂そのもの第537日別の地球

  • 第536日 色

    色物質に色があるのではない物質は特定の波長を投げてくるだけ色はわれらが認知する色そのものは天上にあるわれらが見る色はその反映拙く単純化されたもの思念は色を持ち感情もまた色を持つその綾織りをわれらは生きるわれらの魂も色を放っているその色をわれらは知ることができない第536日色

  • 第535日 時代の色

    時代の色幼年は黄色少年は黄緑青年は澄んだ青これは男か幼女は白少女は桃色娘は紅?男の私にはわからない大人になると時代の色はなくなる様々な色を塗ったくったり塗りつぶしたりけれど大体は濁った紺色か老年は枯れ草色それはそれで美しい変な色が混じらなければ第535日時代の色

  • 第534日 盛りつける幸

    盛りつける幸この限られた器の中に何を盛りつけるか色とりどりの珍味かやさしい日常食か山野を渉猟すれば素朴で繊細な山の幸があり海川に進み入れば芳醇で濃厚な海川の幸がある街には幸はないけれど人との愛憎は唯一無二の珍料理私は荒れた浜に出て小さな石と貝殻を集め慎ましい絵模様を描こう第534日盛りつける幸

  • 第533日 危惧

    危惧新しい考え方は生まれているのか新しい世界観は生まれているのか若者たちのエネルギーと創造性は商業資本の魔の触手に吸い取られているのではないか古い人間の愚かな危惧ならいいそうでないならこの文明は一度壊れたほうがいいこんな世界観を作ってしまったのは今の老人と大人たちだ若者たちはそれを壊してほしい第533日危惧

  • 第532日 赤い日々

    赤い日々赤く明滅する信号灯をぼうっと見つめていると心の中にもやもやと記憶が浮かんできたそれは赤い日々だった世界は普通に見えていたがその奥に赤い強烈な光があったそれは地獄の業火のようでもあり私は何かに取り憑かれたように一人の女を愛したそして生活のすべてを狂わせた後悔しているわけではないだがよい想い出とは言えないあの赤い光は何だったのか第532日赤い日々

  • 第531日 呪い解き

    呪い解き自分だけが神へのアクセス権を持っているそんな傲慢を神は許しはしない信じればいかなる罪も赦されるそんな不道徳を神は許しはしないこの最も遠い土地ここに生まれたことで私は古い十字架の呪いを解いたそれが私の人生の一つの収穫私は自由になったそして新たに知り得ぬ神への道を歩き始める第531日呪い解き

  • 第530日 終戦

    終戦後ろ姿の人々が黄色い光の中を歩いていく祝祭でもなく帰還でもなく彼らはどこへ向かっているのか私は私の脳を手提げ鞄の中に仕舞うもう新しい言葉を覚えることのないように水色の手帳には滅び去った文明の賑やかな戦争物語が書かれているが私はもう読めなくなっている新しい日の太陽はどの建物の上から昇るのか私は手に持ったマンドリンで遠い先祖への挽歌を奏でる第530日終戦

  • 第529日 夢の中の曲

    夢の中の曲夢の中で創った曲はあれほど美しかったのに起きて思い出せるのは凡庸な数小節ばかりあの曲は存在したのか存在したように感じたのかそれとも現実の私には捉える能力がないのか夢の中の私はしばしば劣悪な人間になるがごく時たま天才になりもする私に音楽の素養と才能があればあの曲を持って帰れたのだろうかかすかな残響が切なく淋しい第529日夢の中の曲

  • 第528日 殺される場面

    殺される場面幼稚園の頃だったか私は絵を描いていた自分が殺される場面を何度も何度も縛られ腹を刺されるそれに奇妙な魅力を覚えていた前世の記憶なのかなぜ死の場面が悦楽なのか母親はたぶん知っていた気持ち悪い子だと思ったろう後に思い出して自分でも奇妙だった前世記憶にしては奇妙すぎる私の人生との関わりもわからない今回は殺されずに生きろということか第528日殺される場面

  • 第527日 氷の洞窟

    氷の洞窟何歳の頃か憶えていない思春期のある日のことだった世界が冷たくよそよそしくなったいくら手を差し出しても掴み返してくるものはないまるで氷の洞窟のようにこの中を生きていくのかと私は怯え少しばかり泣いた何十年ぶりにその記憶が蘇ったその感覚と感情はずっと心の奥底にあったそして老いた私はまた氷の洞窟を進む第527日氷の洞窟

  • 第526日 主張

    主張「何かを主張するためには一面的にならざるを得ない」と言ったのはキェルケゴールだったか一面的になるということは愚かになるということだ主張するためには愚かにならねばならぬ愚かになっても主張すべきことがある世をただすためにはけれど大声でがなり立てている人はたいてい愚かなだけだそしてそのことにも気づかない第526日主張

  • 第525日 神は妄想である

    神は妄想である神は妄想であるというのは正しい神が存在しないのではなく神をめぐる人間の思惟はすべて妄想であるただ直観のみが思考や感情や感覚の彼方に神のかすかな光を捉えることができる一億光年先の恒星から来る素粒子のように言葉になどなりはしない沈黙するしかないただ絶望して身を正すだけ神を考えるなど無駄なことただ神の方向らしき方へ向かい目を上げ足を進めるだけ第525日神は妄想である

  • 第524日 湯

    湯鍋一杯の湯がどれほどありがたいものか登山をしたことのある者は骨身に沁みて知っている沢に降りて水を汲み朽ち木を集めて火を焚く山の冷気に熱を奪われつつようやく湯が出来上がる蛇口をひねると湯が出るなんて本来あり得ないこと何と罰当たりの贅沢かやがて人類は滅亡するのではという後ろめたさを感じつつ私は恐る恐る顔を洗う第524日湯

  • 第523日 人生の美

    人生の美人の一生は真ではなく善でもなく美としてあるみすぼらしい暮らしや失敗だらけの活動も立派に美の素材となる絶望のみの悲惨な人生ですら美は創造の精華われらは皆創造されたものそしてそれなりに創造する真実に近づけなくとも善をなし得なくともわれらは生きるだけで美になれる第523日人生の美

  • 第522日 冬の陽

    冬の陽冬ざれの野には色もなく見捨てられた道にはただ淡い陽が揺れている私は独りとぼとぼと歩む音もないこの午後をもう春は帰って来るまい私の生きるこの世にはやがて重たい雪がすべてを包み込むだろうあまたの祭りと偶像が砂のように崩れていった遠い歓声は木枯らしに消えたヤブコウジの赤い実が幻のような木漏れ日に笑い私を静かな微笑に誘う第522日冬の陽

  • 第521日 無為

    無為ぼうっとしていられるというのは一つの特技かもしれない風景を見つめぼうっとし湯船に浸かりぼうっとし人は忙しく活動する電車に乗っている間も必死に小さな画面を追っているぼうっとしている人は少ない何をしているのかと訝かられる考えを追い記憶を辿りだからどうということはないそれでもその茫洋たる中に何かが浮かんでくることはあるその小さな結晶が私の宝物第521日無為

  • 第520日 台無し

    台無し街も電車も洋服も美しくなったのに人間たちは美しくなったのかスタイルはよくなり目鼻立ちはくっきりし化粧もうまくなったけれどだらしなくすわりスマホを見つめドリンクをすする姿勢や所作が美しい人は少ない誰もそれを教えないのか誰もその醜さに気づかないのか第520日台無し

  • 第519日 反射光

    反射光陽が水面に当たって梢や壁に光の模様を描くこの美を的確に表す言葉がない繊細な日本人にしては手落ちだ水面が揺れれば光は幾何学模様を踊らせる何か見えない存在が暗号を送っているようだこの世はゆらぎでできているとかいうような考えがあったがこの光のゆらぎも世の神秘のようだじっと見つめていると私の心も奇妙なゆらぎを起こし始めるそれに乗って意識もどこかへ飛びそうだ第519日反射光

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