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  • 第215日 雪暮

    雪暮茫洋とした雪の夕暮れが好きだ命が消え入りそうな夕暮れが枝を重く垂れた木々が沈黙のまま佇む夕暮れが体は冷え頭は淀んでいるが心の奥底は氷のように澄み渡り私はいつこの光景を愛したのかこの人生で初めて見た時かそれよりずっと前か遠くの家の明かりが見えるけれど私の道はそこへ向かわないこの半闇の雪道を歩き続ける第215日雪暮

  • 第214日 無限

    無限風景の解像度は無限風景は無限なのだわれらの目の前に無限が拡がっているのだ小高い山の頂から下界を見下ろす時風景はその無限性をかいま見せる木々の葉の一つ一つも家々の細かい造作も確かに目に飛び込んでくるわれらの目と脳が雑駁なおかげでわれらは無限の恐怖から逃れているでなければわれらは発狂してしまうだろう創造はかくも精緻に仕組まれ絶妙な調和に張り詰めているわれらはその表面を漂うだけだ第214日無限

  • 第213日 化身

    化身美しいひとの背後には澄んだ緑と風の景色が展がり繊細で流麗な音楽が響くそれが真に美しいひとの証それは天の企み当人がそれで幸福になったり不幸になったり周りの者が幸福になったり不幸になったりそれを求めているそれは惑乱答えのない謎かけ平和な世への反逆美とはそういうものだそして美は時たま人の姿を取るそれもまた天のアイロニーだろう第213日化身

  • 第212日 落第

    落第あの時のあの人の思い別の時の別の人の思いそれらを思い返しながら私の心は悲しむもっとうまく愛せなかったのかもっと忍耐強く愛せなかったのかそう私は私をなじり続けるそれが私の地獄愛することはあまりにも難しい私は落第し続けたもう白旗を揚げるしかないさらりと愛し愛し続けられる人を私は畏敬のまなざしで見るいつか私にもできるようになるのだろうか第212日落第

  • 第211日 不伝

    不伝何ということか人の思想は人に伝わることはない恐るべき事実!いくらブッダを崇めてもブッダの悟りは誰も悟ることができないいくらイエスを信奉してもイエスの神の国は誰も見ることができない伝わるのはわずかな部分しかも歪んだ形で思想の伝承などというものはないのだそれが定めなのだ人が世に返すのは部分だけそして誤解と曲解が新たな思想を創る第211日不伝

  • 第210日 永続創造

    永続創造生命が一回こっきりの創造だなどと誰が言えるのか生命は今この一瞬も絶え間なく創造されているのではないかもし創造主が偉大であるのなら最初だけ思いを込め後は知らん顔で放っておくそんなことをするだろうかもし生命創造が偶然なのならそんな偶然はいくらあってもいいではないか今この一瞬も成層圏のはるか高みで何億もの創造が起こっていてもいいではないか創造は創造し続けるのだそれが創造というものだ生命も現象も常にやむことなく創造は続けられているのだ第210日永続創造

  • 第209日 白銀世界

    白銀世界雪で埋め尽くされた野に立って雪の王になったつもりになってどうだ世界征服を果たしたぞと叫んでみるあれあれ俺は暴君願望があったのかそれとも弱虫の鬱憤晴らしかそう思い惑いつつひたすら雪の制圧力に感服する何百キロにもわたってこの白い死の層が拡がっているそう思うと目眩がする雪の暴君支配は心地よいあらゆる猥雑なものを押し潰して静謐で清浄な世界が拡がる第209日白銀世界

  • 第208日 疎遠

    疎遠見たことのない物質がいつの間にかわれらの周りを埋め尽くした見たことのない物質は素晴らしいものから凡庸なものに変わったわれらの心はその物質に寄り添うことができない便利でありがたいものであってもそれを慈しむことはない安楽は増していながらわれらの心は渇く慈しめぬ物質に囲まれてわれらは苦しんでいるのかもしれぬ物の中に沈みながら物の冷たさに寄り添い合うことのない物と心に引き裂かれて第208日疎遠

  • 第207日 土俵

    土俵来歴も性質も異なる様々な魂が出会うために共通の土俵が創られただから現実は共通なのだ物理的法則は誰にも等しく現れる現実に在るものは現実に在るそれはそれでいいそれでなくては困る在ることは素朴に受け入れるしかない物理法則は頭を垂れて従うしかないわれらは今土俵の上にいるのだからしかし土俵はあくまで土俵われらはしばしば土俵からはずれるそして最終的には土俵を後にする第207日土俵

  • 第206日 毛ダモノ

    毛ダモノ毛が生えているのはわれらが獣である証まあずいぶん脱したけれどまだあちこちに獣を残している脇毛も臑毛も恥毛ももう要らないだろうけれど男がつるつるにすると変なふうに思われる頭が禿げてきたらいっそ剃ってしまえばいいのに本人も周囲も変な抵抗を持つ獣でいたいのか獣を捨てるなという天命なのか毛を持つことは悩ましい第206日毛ダモノ

  • 第205日 子供たちの時間

    子供たちの時間私が庭で水遊びをしてゆったりとした時間を過ごしていたあの昔の日々にも大人たちは忙しくしていたのだろうか今われらがせわしなく動いているこの時代に子供たちはゆったりとした時間を過ごしているのだろうかせめて子供たちは急かされ締め付けられないいくらでもある時間を味わってほしい小さな石に夢想を紡ぎ虫や草に神秘を見出すあの豪奢な時間を味わってほしい第205日子供たちの時間

  • 第204日 恋愛狂気

    恋愛狂気恋はそもそも狂気である常識も合理性も糞喰らえ世界の中心に勝手にいすわり全世界を敵に回すことも厭わないたくさんの愚行と罪を生み出しそして世を活かしているその狂気に世は眉を顰め同時に憧れ賞賛する生存には狂気が必要なのだ時にそれは生存を破壊するにしても狂気なしの生は眠りに等しい恋の歌を歌うのではなく恋せよその歓喜と苦悩と悔恨の中から生の赤裸な姿が現れ出る第204日恋愛狂気

  • 第203日 点滴

    点滴ぽたりぽたりと垂れる点滴の袋とカプセルを見ながらあれこれと考えるここに何を入れたらいい?美人の汗を入れても美人になるわけでもないしなっても困る天才の爪の垢を入れたら拒否反応で廃人になるだろう朝の森の滴がいいか針葉樹の香りと汚れない陽光を含んだそれで私は若返るかもしれないうつらうつらしながら私は森の一本の木になる静けさがあたりに満ちわたる第203日点滴

  • 第202日 微笑み

    微笑み微笑んでください明るく柔らかにそれは確実に私を溶かす私を幸せにしてくれる顔の美醜などは一種の罠当人も周りも歩みを狂わせる創造の謎かけあなたは知らないあなたの微笑みがどれほど周りを幸せにしていくかを微笑んでくださいそこから何かがにじみ出すそれはどんな偉業よりも人を豊かにする第202日微笑み

  • 第201日 病因

    病因何々は体に悪い何々を食べ続けていると病気になるのべつ幕なしにそんなことが語られ大騒ぎしている一番悪いのはわれらの心だよ心が作り出す歪んだ思念ほとんどの病気はそれが原因誰も認めようとはしないけれど一番の発ガン性物質とは君の思念なんだよなんて言ったら皆怒り出すだろう健康と病気をめぐっての体と心と魂の乱闘それを救うすべはないものか第201日病因

  • 第200日 自由の世

    自由の世今の人たちは何にでもなれる哲学者になることも詩人になることも音楽家になることも画家になることも仏教徒になることもキリスト教徒になることも自分で創案した教祖になることも唯物論者になることも何にでもなれるのだ人からの評価とかを求めなければ知識も情報も容易に手に入る家や階級から強制されることもない認定する権威などもうない自分で定義してそれになればよいこのことが今の世の最も優れた点だそれをもっと活かせばよい好きなように探究すればよい自由に思索し言葉を紡ぎ色や音を駆使すればよい誰かに認めてもらう必要はないけれど多くの人はやりたいことなりたいものがわからないこんなに自由が手に入る世なのにそれを虚しく腐らせている第200日自由の世

  • 第199日 浅っ

    浅っお盆のように底が浅いいろいろなものを載っけられるけれど何かを注ごうとしてもただ外に流れ出ていってしまう深い話など彼らにはない内に溜めて発酵させることなどないさらさらと表面を流れていく春の小川かきらきらと輝いているのはいいさわやかな音を立てるのもいい変な匂いを立てないのもいいけれどつまらないその浅い水では誰にも洗礼を施せない第199日浅っ

  • 第198日 五本指

    五本指指は巧みに私の生を編む私が動かそうと思わずとも見事なチームワークを作り上げる私の思いを指は実現する驚くほど見事に協力しながら時々二本くらいは見ているだけだがそれでも釣り合いを取っているらしい五という数は曖昧だ聖なる三と華麗な七の間にそれは所在なく佇むその微妙な曖昧さこそ人間に似つかわしい五の神秘は謎としてわれらの前にある第198日五本指

  • 第197日 転び傷

    転び傷ふと思い出した小さい頃は膝に擦り剥き傷がいつもあった転んで傷を作り治ってはまた転び大人になってしょっちゅう転ぶ人はいない体もうまく操れるし無茶もしないけれど大人になって転ぶととんでもない大けがになったりする老人になるとへたに転ぶとそのまま寝た切りになったりもする転んで傷を負えるということはいいことなのかもしれない魂もまた第197日転び傷

  • 第196日 弱き光

    弱き光灯台が夜の海に束の間の光を投げるように私の意識も私の心に覚束ない光を投げる浮かび上がるのは一瞬の姿輪郭も正体もおぼつかないわずかに残り香のようなものが私を暖めたり冷たくしたりするいつか巨大な天の光が現われ海の全貌が明らかになる時がやってくるのだろうかその時私はどうなるだろう貧しさ悲惨さに泣きわめくだろうかそれとも忘れていた宝物を見出すだろうか第196日弱き光

  • 第195日 蹴球芸術

    蹴球芸術美しいパス美しいドリブル美しいシュート確かにそれは「美しい」のだそれは思いが余すところなくそこに現前するから鍛えられた体と磨かれた技によって思いが実現しなかったり思いそのものがなかったりそれは美しくない瞬時にして幾何学的な思いを作りそれを体で実現するその時サッカーは芸術となる第195日蹴球芸術

  • 第194日 理想の悪魔

    理想の悪魔理想にのめり込み人を指弾し人を殺すこの迷路集合的意識へ同一化すると個人の意識は低減し無意識がせり上がるノイマンはそう言った無意識の中には原始の獣や悪魔が棲んでいる理想にのめり込む時人は獣や悪魔になっているこの恐ろしい罠第194日理想の悪魔

  • 第193日 冬木立

    冬木立葉を落とした木々はいとおしく美しい木そのものの生きてきた姿をまざまざと見せている夏には木々は緑のカオスになるひたすらに陽を集めようと貪欲過ぎる姿になる木そのものの姿は見えない人もまた様々に身につけたものを落とした時にその人そのものの姿が見えるのかいや緻密な計画で天の光を求める木々の静かな叡智に人は決して叶わないだろう第193日冬木立

  • 第192日 夢の蘇生

    夢の蘇生夢は醒めるとすぐに蒸発してしまうしかしその日の午後や夕方まどろみに落ちそうになった時かすかに蘇ってくることがあるこの日常意識の下に夢の記憶が蓄えられている不思議な場所があるのだろうかどのくらい細かく記録されているのかそれを全部再生させることができたらどれほど面白いことだろう死の直前か死の後にそんなことがあるのだろうか無意味なものも多いだろうが驚くような宝があるかもしれない私の生のまったく異なる姿があるかもしれない第192日夢の蘇生

  • 第191日 犬嫌い

    犬嫌い犬は何となく哀しいあまりにも人間に忠実でいつも食べ物を求めている幼い頃飼った犬たちは立派な世話をしてやれず悲しい結末ばかりだった思い出すこともつらい犬との信頼の絆は無比至上のものだというが不実な私には無理なのだろう犬は立派な人が飼うのがいい未熟な人間に甘やかされたり見捨てられたりそれはあまりに哀しい第191日犬嫌い

  • 第190日 怯え子

    怯え子階段下の物置の中で頭を抱えてうずくまっている小さな私が今も私の中で生きている時折手を差し伸べて頭を撫でてやり大丈夫だよと声を掛けても彼は顔を上げて微笑もうとしないこの子はどこから来たのだろうDNA配列の偏りかそれとも生まれる前の古い人格か私はこの子を抱えて死ぬのか救ってやることもできず彼の笑みを見ることもなく第190日怯え子

  • 第189日 幸福のパラドクス

    幸福のパラドクス幸福な時は幸福を感じない幸福を目の前にすると心は自分に目隠しをする嘘のようだが本当の話だ不幸な時は不幸を感じる不幸から脱すると幸福を感じるけれど幸福な時に幸福を感じないこの深遠なパラドクスけれども人は幸福を求める勝ちのない戦だ不幸の中に飛び込んでいくしかこれは何の罠なのだろう人間の仕組みに何か間違いがあるのかそれとも不幸を奨励する神の親心なのか第189日幸福のパラドクス

  • 第188日 天の庵

    天の庵天国に行って家を造れるのなら小さな茅葺きの庵がいい板間の真ん中に囲炉裏のある少し薄暗い煙たい家が東の窓の外に満開の桜並木が続き西の窓は一面の紅葉北の窓からは輝く雪原と聳える山脈が望め南向きの戸口を出ると緑の野が拡がる朝は詩を紡ぎ絵を描き昼は友と語り合い夜は独り酒杯を傾け夢想するそんな質素な天国があっていいいや天国とは質素なものだろう余計な見栄は地上だけでたくさんだ第188日天の庵

  • 第187日 古社

    古社崩れかけた石段を上がると緑の中に古さびた社があったいやこの光景は何度も見ている夢でも現でもこの世の前でもこの土地の神々は津々浦々にこうした構えを造り何度も何度も人の心にこの構図を刻み込もうとしているらしいこの光景には隠された意味がある深い謎があるそれを解かなければならない豪壮な社殿に神々は住まない儀式や祝詞の中にはもう神々は現れない神々の囁きはこの光景の中にある第187日古社

  • 第186日 金色の風

    金色の風金色の風に吹かれていようすべての思いを振り捨ててこの輝きに身を浸そうそして自分も風になろう金色の風はいつも吹いている生きとし生けるものを輝かせていつも見られるわけではないけれど心が澄めばいつもここにある幼い日々私はそれを見ていた青春の苦い日々私はふいにそれを取り戻したそれから長く私は見ることがなかった今世から捨てられた身になって私はそれを再び見る安らかな笑みとともにそれを受け取る第186日金色の風

  • 第185日 元旦

    元旦日本人にとって一年は神様毎年やって来て毎年去って行くよい神様であることもあればよくない神様であることもある神様によい悪いを言うのは慎むべき傲慢なこと去る年神様には悪いことは水に流し忘れる新しい年がよいものであるよう慎ましやかに祈る人間という小さい存在の確認第185日元旦

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