井上荒野,2022,生皮──あるセクシャルハラスメントの光景,朝日新聞出版.(5.9.24)生皮あるセクシャルハラスメントの光景 井上荒野朝日新聞出版性暴力被害や被害者のPTSDをモチーフとした、ノンフィクション(ドキュメンテーション)や学術書は数多い。それらには、被害経験とその記憶に苦しむ当事者の生々しい声も数多く収録されている。しかし、自らの苦しみを言語化するのは必ずしも簡単なことではなく、性暴力被害経験とその記憶の過酷さがじゅうぶんには伝わっているとは言えない現状がある。そして、加害者は、被害者以上に口を閉ざしたままであることが多く、なぜそのようなことをしたのか、自分がしたことに対しどう思っているのか、ほとんど不明のままだ。その点、優れたフィクション、文学作品は、被害者、加害者双方の心理を、巧みな言...生皮──あるセクシャルハラスメントの光景