朝井リョウ,2020,スター,朝日新聞出版.(4.23.25) 国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。新時代の「スター」は誰だ。作家生活10周年記念作品〔白版〕「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応――作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。朝日新聞連載、デビュー10年…
フランソワ・デュベ(山下 雅之監訳、濱西栄司・渡邊拓也訳),2014,教えてデュベ先生、社会学はいったい何の役に立つのですか?,新泉社.(4.23.25) 社会学は、生物学や工学ほど「役に立つ」ものではない。しかし音楽、絵画、哲学や文学より「役に立たない」わけでもない。それって、結局、どういうこと!?社会学は役に立つ?立たない? 本書は、フランスの高校生に向けて編まれた、諸学問の入門書シリーズの一冊であるが、高校生には少し難解過ぎる内容だ。 社会学はぬえのようにわかりにくいというのは、わたしの学部生時代から変わっていないし、就職も、文学系よりは良いものの、法学部、経済学部、商学部等よりは不利、…
使用しなくなったスマホ5台を、最寄りの○フトバンク代理店に持ち込む。 端末を回収する際には、IMEI(端末識別番号)が必要とのことで、けっこう手間がかかった。(IMEIの把握のためにスマホを起動する必要があるため、回収してもらう際は、バッテリーに充電しておきましょう。) ○フトバンクの回線や端末を利用していたわけではないのに、店員さんに気の毒で仕方なかった。 せめて、1台1,000円くらいでも、リサイクル手数料をとってくれれば、気が楽になるのだけどな。 そのあと、プリンターカートリッジの回収ボックスが設置してあるC郵便局に向かう。 モノを買うというのは、廃棄物を産み出すということだ。 メーカー…
アルテイシア,2023,生きづらくて死にそうだったから、いろいろやってみました。,講談社.(4.21.25) 『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』や『モヤる言葉、ヤバイ人』などで知られるアルテイシア氏の「&Sofa」に掲載された最新コラム集。毒親問題からフェミニズムまで、ヘビーな内容もストレスフルな現象もコミカルに楽しく語ります。書籍撮り下ろしで、太田啓子さんと犬山紙子さんとの対談も2本収録! 毒親、親ガチャ、自己肯定感の呪い、異性が苦手、結婚・出産の呪い、恋愛に興味がない…いろんな生きづらさから解放される爆笑コラム集!! アルテイシアさんの言語のセンスは抜群だなあ。 中年じゃなく若…
4/14、gooブログサービス、突然の終了のお知らせ。 www.iza.ne.jp そんなわけで、ここ数日間をかけて、gooブログの投稿記事と画像とをHatenaブログに移行した。 とても時間がかかったけれども、あっけないほど簡単な操作で作業を完了できた。 gooブログへの初ポストが2005年7月3日なので、20年近く利用してきたことになる。 数年間、Facebookに投稿を移したことがあったけれども、記事検索が容易なデータベースとしての使い勝手はgooブログがはるかに上、であった。 Hatenaブログのインターフェイスは、gooブログと似た点が多く、それも含めてすんなり移行できたのは幸いであ…
朝井リョウ,2019,どうしても生きてる,幻冬舎.(4.21.25) 死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(『健やかな論理』)。家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろう。(『流転』)。あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。(『七分二十四秒めへ』)。社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。(『風が吹いたとて』)。尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。(『そんなの痛いに決まってる』)…
雹月あさみ,2025,猫がこっちを見る理由,KADOKAWA.(4.20.25) お風呂から出た私は、冷凍庫から「冷凍果実シリーズ 完熟キウイバー」を選ぶと、ドラマを見るためにソファへと座った。そこには飼い猫のキジトラミックス・マルが、名前通り文字通り、丸くなって眠っている。ドラマには犬系彼氏やキツネ系イケメン俳優が出ており、画面から目が離せずにいると、気づけばマルがじっとこっちを見つめてきて……。(「ヘアゴム」より) 彼女は予告なしに猫を連れてやってきた。今から数日、猫を預かって欲しい、と。だけど僕には問題がいくつかあった。まずは、僕が猫アレルギーだということ。案の定くしゃみが止まらない。そ…
ジャック・アタリ、ステファニー・ボンヴィシニ(樺山 紘一 日本語版監修、大塚宏子訳),2009,図説 「愛」の歴史,原書房.(4.20.25) 「愛」はどこへいくのか?知の巨人ジャック・アタリが語る男と女の過去・現在・未来。218におよぶ図版とともに描く21世紀の愛のゆくえ。 ふんだんに図版が取り入れられており、視覚的にたいへん楽しめる内容の書物となっている。 デズモンド・モリスの『マンウォッチング』を彷彿とさせる。 ジャック・アタリとステファニー・ボンヴィシニは、キリスト教圏のヨーロッパを中心に、人類のセクシュアリティと結婚制度の変遷をたどる。 記憶に定かなことではないが、子どもの頃、悪ガキ…
女性から虐待されている男性へ──女性はなぜ傷つけ、男性はなぜ留まってしまうのか
アン・シルバース(上田勢子訳),2025,女性から虐待されている男性へ──女性はなぜ傷つけ、男性はなぜ留まってしまうのか,明石書店.(4.19.25) 「どうしようもありません。だって、自分の身に何が起きているか、どんな思いをしているか、周囲に気づいてもらえないのですから。ただ頑張り続けるしかありません」それは、DV/虐待です。 ジェンダー間での虐待は、その多くが男性から女性に対して行われるものであるがゆえに、その逆、女性の男性に対する虐待はなかなか取り上げられない。 難しいのは、女性が加害者で男性が被害者のケースを取り上げると、男性による女性への加害を軽視しているとさえ思われてしまう点にある…
マンション管理組合の今年度第一回の理事会。 小生、今年度、りじちょーという厄介な職務を背負ってしまったのだが、しょーがないなー、一年限りだし、引き受けるしかあんめー、みたいな。 議題は、マンション共用部総合保険契約内容の検討(T保険会社担当者の説明と質疑応答)、月次会計報告、今年度事業計画など。 議事の進行、意見の集約、合意、採決を見越した提案等は、長年の経験もあり、お手のもの。 手八丁はないけど、口八丁。笑 感情に流された意見を言う人は、巧いこと言いくるめて(笑)いなす。 仕事から解放されて、お金の心配もいらず、悠々自適の生活をおくれるのはありがたいことなんだろうが、自分の能力を活かせる場が…
向谷地生良,2025,向谷地さん、幻覚妄想ってどうやって聞いたらいいんですか?,医学書院.(4.18.25) 精神医療の常識を溶かし、対人支援の枠組みを更新しつづける「べてるの家」の向谷地生良氏。当事者がどんな話をしても彼は「へぇー」と興味津々だ。その「へぇー」こそがアナザーワールドの扉を叩く鍵だったのだ!大澤真幸氏の特別寄稿「〈知〉はいかにして〈真実〉の地位に就くのか?」は“良心的兵役拒否者”である向谷地氏に言語論から迫る必読論文。 本書は、精神疾患、主に統合失調症の当事者たちによる生活共同体、「べてるの家」でソーシャルワーカーとして活動してきた向谷地生良さんへのインタビュー録と、大澤真幸さ…
仕事場の荷物を整理していたら、珍物を発見。 卒論。笑 いやいやいや、懐かしいやら、恥ずかしいやら。 卒論は卒業した大学の研究室に永久保存されるはずなんだが、なんで手元にあるのか、わからんちん。 どうも写しっぽいので、別途、綴じておいたのか。 時代を感じるのは、手書きってこと。 われながら、丁寧に書いたのだなあ。 ひとしきり感傷にふけったら、燃えるゴミゆき。 専門社会調査士の認定証も廃棄廃棄。 理想を言えば、死ぬときまでに蔵書をすべて読了し廃棄すること。 死ぬまで、目を腫らしながら、がんばろー。
山田昌弘,2025,希望格差社会、それから──幸福に衰退する国の20年,東洋経済新報社.(4.17.25) 「バーチャル世界」で格差を埋める人々が急増。「パラサイト・シングル」「希望格差」「婚活」などの言葉を世に出した稀代の社会学者による現代日本社会の実像。 「希望格差」が拡大し、将来に希望を託せなくなっても、生活満足度が高いのは、推し活、オンラインゲーム等の「バーチャル世界」、ペットやキャバクラ等の接待飲食、性風俗サービス等の疑似家族、疑似恋愛で、リアルでは充たされない欲望を擬似的にかなえられるようになったから、こう山田先生は指摘するのだが。 そして、令和になると、リアルな社会に希望を持て …
三宅秀道,2012,新しい市場のつくりかた,東洋経済新報社.(4.16.25) ウォシュレットに象徴される新商品は、わたしたちの嗜好や生活そのものをつくりかえる。 ニーズが先にあってそれを充足する新しい商品やサービスが開発されるのではなく、新しい商品やサービスが新たなニーズを創出する。 すでにある問題を解決するだけではなく、新たに問いを立ててその解決策を模索していくのは、イノベーションの基本だ。 どのようなヒット商品も、やがて陳腐化、コモディティ化する。 本書は、嗜好、価値観、ライフスタイルの革新を射程に入れたマーケティングとエンジニアリングの重要性を教えてくれる。 目次さよなら技術神話新しい…
シャンタル・ムフ(山本圭・塩田潤訳),2019,左派ポピュリズムのために,明石書店.(4.16.25) ギリシャのシリザ、スペインのボデモス、米国のサンダース、英国のコービン、不服従のフランスのメランション…。“少数者支配”に立ち向かう。民主主義を回復・深化させるためのラディカル・デモクラシー戦略。 ポピュリズムは、「大衆迎合主義」として批判的に捉えられてきたが、新自由主義勢力による緊縮財政や国家権力による人権抑圧に抵抗する人々の運動を指して、肯定的に捉える向きもある。 ムフは、後者の立場だ。 予定調和的な「熟議デモクラシー」ではなく、「闘技デモクラシー」へ。 たしかに、社会運動による異議申し…
美馬達哉,2012,リスク化される身体──現代医学と統治のテクノロジー,青土社.(4.15.25) メタボリックシンドローム、パンデミック、医療「崩壊」、大震災…。私たちはいま、ミクロからマクロまで無数のリスクに脅え、絶えず自己管理を迫られている。こうした風景がもはや日常化した現代社会の知られざる陥穽を、精緻な分析のもとで明らかにする。 半ば義務化した健康診断の数値に一喜一憂し、自らの健康状態をモニタリングして生活習慣を改めることをせずにして病気になった場合、病者の自己責任が問われる「リスク化される身体」の時代。 「リスク化される身体」を生きる人々は、自らの身体の外部にあるリスク要因に敏感にな…
トニ・モリスン(荒このみ訳),2019,「他者」の起源──ノーベル賞作家のハーバード連続講演録,集英社.(4.14.25) 社会の分断やヘイト運動が世界中で大きな問題となっている。なぜ、人の心は「よそ者」を作り出し、排除や差別をしてしまうのだろうか?本書は、アフリカ系アメリカ人初のノーベル文学賞作家トニ・モリスンが、そんな「他者化」のからくりについて考察した画期的論考。過去の白人作家たちが作品に隠蔽した人種差別を暴き、その欺瞞を鋭く突きながら、一方で自著の解説と作品の仕掛けも大胆に明かしていく。 白人が黒人を「他者化」し、差別、抑圧する。 それだけでなく、黒人内部においても、出自はどこか、先祖…
湊かなえ,2025,C線上のアリア,朝日新聞出版.(4.13.25) 中学生の時に両親を事故でなくした美佐は、叔母に引き取られ、高校時代を山間部の田舎町で過ごす。それから約30年、叔母に認知症の症状が見られると役場から連絡があり、懐かしい故郷を訪れる。かつて、美しく丁寧に暮らしていた家はごみ屋敷と化していた。片付けを進めていくと、当時の恋人から借りた本を見つける。あったかもしれない未来をのぞき見するような思いで、本を返しに行った美佐は、衝撃的な場面を目撃する。担い手となった女性たちの心の声が響く介護ミステリ。 主人公の美佐は、育ての親である叔母、弥生が認知症を患ったことから、弥生の住まい、いま…
福山哲郎・斎藤環,2018,フェイクの時代に隠されていること,太田出版.(4.13.25) ヤンキー文化、安倍晋三、トランプ等による民主主義の破壊、ポピュリズム、ポストトゥルース、反知性主義、引きこもり、自殺、不登校、精神科医療の問題、オープンダイアローグ等、多岐にわたる事象について、なかなかおもしろい対談が繰り広げられている。 いくら「正論」を主張したところで、他者の「感情」を損なえばそれは無為に帰すとの斎藤さんの指摘にハッとした。 「感情」に訴求するだけの「反知性」を支持するわけにはいかないが、現実政治が反知性の感情により動かされていることを考えると、わたしたちは、賢い説得のやり方を模索す…
田中淳夫,2016,樹木葬という選択──緑の埋葬で森になる,築地書館.(4.13.25) 自然の中で眠りたい。遺骨を土に埋葬し、石ではなく樹木を墓標とする、樹木葬。里山を守りたい、自然の一部になりたい、継承の手間をかけたくない、無縁墓とも無縁でいたい、そんな人たちの注目を集める新しい「お墓」のかたちを徹底ガイド。樹木葬を行えるお寺も掲載。 わたしは、叔父と父、二人の葬儀に参列し、火葬したあとの骨を骨壷に納めた経験がある。 骨を納めるときの、強烈な熱気と異臭は忘れられない。 父の骨壷を、墓に収めることまでした。 そして、不可解な死者の埋葬儀礼に、強い違和感をもった。 山林を切り開き、見渡す限り墓…
酒井順子,2019,センス・オブ・シェイム──恥の感覚,文藝春秋.(4.12.25) 世間様に、どう見られているか。ネット社会に、何をさらすか。日本人の恥の感覚は、SNS時代到来によって激変した!フェイスブックでの自慢バブルを斬った「中年とSNS」がネットで大反響!!共感の嵐を呼び起こす傑作エッセイ集。 ルース・ベネディクトの『菊と刀』は、社会学専攻生がまっさきに読むべきとされる書物であったが、それに依れば、キリスト教圏の欧米が「罪の文化」であるのに対し、日本は「恥の文化」、とされる。 読んだ当時は、へえ、そんなもんかねえ、と思ったものだったが、現在は、どの文化圏の人々も、罪と恥の意識のアマル…
岡野八代,2025,ケアの倫理と平和の構想──戦争に抗する (増補版),岩波書店.(4.11.25) 戦後も続く暴力の連鎖のなかで、フェミニズムは人間の「傷つけられやすさ」を見据え、ケアの視点から平和を論じてきた。「慰安婦」問題、9・11、ガザ…。「正戦」「自衛」の名の下で人間を破壊する戦争の本質を明らかにし、平和の構想を紡ぎだす。対談「戦争に抗する思想―フェミニズムから平和を構想する」(岡野八代×三牧聖子)を収録。 「テロとの戦争」と米国フェミニズム、「慰安婦」(性奴隷)問題、立憲主義等についての考察内容には、ほぼ賛同できるものの、「ケアの倫理」と反戦、平和との関連については、うーん、どうな…
マイノリティの「つながらない権利」──ひとりでも生存できる社会のために
雁屋優,2025,マイノリティの「つながらない権利」──ひとりでも生存できる社会のために,明石書店.(4.10.25) ここでもまた、コミュ力ですか?何らかのマイノリティ属性をもつ人は、生存に必要な情報を得るために当事者コミュニティへのアクセスがほぼ必須であり、コミュニケーション能力によってさまざまな差が生じている。マイノリティがつながることを半ば強いられている状況のなか、マイノリティは“つながらなければならない”のかを、根本から問い直す。本田秀夫さん(精神科医)、飯野由里子さん(東京大学特任教員)、相羽大輔さん(愛知教育大学准教授)へのインタビューを収録。 雁屋さんは、アルビノ、自閉スペクト…
レベッカ・バージェス(上田勢子訳),2025,私はアセクシュアル──自分らしさを見つけるまでの物語,明石書店.(4.10.25) レベッカは、学校でいじめられたり、友達に合わせようと無理をしたり、不安や強迫神経症を経験したりしながらも、セックスに執着する文化を乗り越えて、自分のアセクシュアルというアイデンティティを理解し受け入れていく。日本のコミックを愛するイギリスのイラストレーターが描く、自伝的グラフィック・ノベル。 異性愛(heterosexual)は、好意をいだく特定の異性に対し、心地よさや快感をともなう身体接触をもとめる性向であり、それは、マジョリティのものであるがゆえに確たる異性愛規…
ロックな福祉──福祉施設から始まった、だれも置いていかないライブハウス
川上佐智子,2024,ロックな福祉──福祉施設から始まった、だれも置いていかないライブハウス,游藝舎.(4.9.25) 福岡にて、レストランやライブハウスを含む社会福祉のグループ企業、まりもグループを展開する川上佐智子さん。 まったくなにもないところから、障がい福祉分野を中心に事業展開をはかってきた胆力に感心した。 シンママとして二人の子どもを育てながら、ダブルワーク、トリプルワークをこなしてきた川上さん、その心身の耐性はだれにでも真似できるわけではないが、社会福祉の領域で起業を目指している若者には格好のロールモデルとなるであろう。 川上佐智子さん(サステイナブルの羅針盤) 目次第1章 小学校…
金子勝・大澤真幸,2002,共同取材 見たくない思想的現実を見る,岩波書店.(4.9.25) 本書は、「同じ現実を見て、同じ人々に会って意見を聞き、ともに行動しながら、曖昧さを残すことなく同時に別々の文章を書く」という、新しいスタイルの緊張感あふれる試みの書である。沖縄、高齢者医療、過疎化、ナショナリズム、若者の就職難―。いま、本当に問わなければならない日本の課題は何か。前半は、現在もっとも注目される気鋭の経済学者と社会学者が、「現実と思想の往復運動の回復」を目指して厳しい「現実」ときり結んだ渾身のレポート。後半には、その二人による迫力ある三本の対論を収録する。 沖縄(基地問題)、高齢者の介護…
グローバル・グリーン・ニューディール──2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う
ジェレミー・リフキン(幾島幸子訳),2020,グローバル・グリーン・ニューディール──2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う,NHK出版.(4.8.25) 『限界費用ゼロ社会』の著者が示す新世界のビジョン! 再生可能エネルギー技術の急速な発展と、危機的状況にある気候変動問題。現在は化石燃料エネルギー関連資産が過大評価される「カーボンバブル」の時代だが、その崩壊はもはや確定的な事実である。いまこそ、1930年代アメリカの「ニューディール」に匹敵する経済政策の大転換「グリーン・ニューディール」、すなわち経済インフラの脱炭素化、グリーン経済部門における雇用創出等が必…
ウルリッヒ・ベック(山本啓訳),2014,世界リスク社会,法政大学出版局.(4.8.25) 原発事故、環境汚染、経済破綻…われわれはリスクの時代に生きている。かつて二極化と敵対関係で成立していた世界は、いまや一元的に危険でリスクに満ちたものとなる。近代化とグローバル化を経て、いま我々が直面する新たな“リスク”とは何か? 原文自体もかなりの悪文なのだろうが、それをさらにわかりにくい訳文にしているのだから、始末に負えない。 翻訳においては、文意を正確に把握したうえで、原文の構造を解体し、一から日本語の文章を創造しなければいけない。 本訳はそれがまるでできていないように思う。 直訳調に、細かく区切る…
小林エリカ,2024,彼女たちの戦争──嵐の中のささやきよ!,筑摩書房.(4.7.25) リーゼ・マイトナー、伊藤野枝、メイ・サートン、ヴァージニア・ウルフ、マルゴー・フランクとアンネ・フランク姉妹、湯浅年子…この女を見よ!科学者、詩人、活動家、作家、スパイ、彫刻家etc.「歴史」の中で、おおく不当に不遇であった彼女たちの「仕事」がなければ、「いま」はありえなかった。彼女たちの横顔を拾い上げ、未来へとつないでいく、やさしくたけだけしい闘いの記録。 戦争、国家権力、家父長制社会に、翻弄され、立ち向かった女たちのプロフィールとエピソードが手短に綴られる。 男たちのように歴史の教科書に掲載されなくと…
お金は使うためにある。 使うあてのないお金を蓄える必要などない。 「子孫を美田を残す」ことが善であるとされたのは、農業社会の地主層に限られる。 被雇用者社会に完全に転換したいま、理想を言えば、寿命を迎えるときに資産を使い尽くすことが合理的だ。 もちろん、財産信託サービスを利用して、自らが支援するNPOや社会福祉法人に遺産を寄付することはとても良いことだから、死後、財産が残ることを忌避する必要もない。 ただ、難しいのは、人間、何歳まで生きるのか、予測できない点にある。 65歳まで働くとして、退職したあと、いくら必要か? 長生きするリスクを考えすぎても仕方ないが、かりに、幸か不幸か、90歳まで生き…
小林エリカ,2021,最後の挨拶──His Last Bow,講談社.(4.5.25) いつか、ここに、遠くに、存在した誰か。言葉によって、わたしたちは出会える。――柴崎友香さん推薦 シャーロック・ホームズの翻訳者だった父が倒れ、四姉妹の末っ子リブロは家族の歴史をたどりなおす。時空を超えて紡がれる、風変りでいとしいファミリー・ストーリー。 「そこでは、もうとっくのむかしに死んでしまった人たちが、みんな生きていた。リブロの目の前、ここに、生きていた。」百年前のロンドンから、戦争と震災をへて現在まで、家族の記憶とホームズの物語が鮮やかに交錯する。 小林エリカさんの父、小林司さんは、シャーロック・ホ…
モヤる言葉、ヤバイ人──自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」
アルテイシア,2021,モヤる言葉、ヤバイ人──自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」,大和書房.(4.5.25) “女性にかけられた呪い”を解くのは、自分自身。「あなたが1人で、トイレで泣く日が来ないように。」そんな願いをつめこんだ、呪いを滅する爆笑エッセイ! サブカル界隈で鍛えたと思われる語彙のセンスがすばらしい。 ニヤニヤしながら、パワハラ、セクハラ、モラハラ、クソバイスに対抗する言葉を学べる、たいへん愉快な一冊だ。 目次1章 悪気はないかもしれないが褒めるフリをした「モヤる言葉」「いい奥さんになりそうだよね」押しつける人「あなたは強いからいいよね」決めつける人 ほか2章 迷惑すぎる…
トランプ(政権)の関税大幅引き上げにより、株価の暴落が続いている。 わたしは、株取引、というより利殖自体にまったく興味がなく、8年くらい前に取ったショートポジションで火傷して650万円くらいの含み損を負ったままなのであるが、使う予定のないカネなんざどーでも良いと思っているし、実際、どーでも良い。 安い輸入品を締め出したからといって、Make America Great Againになるわけがない。 グローバルなサプライチェーンを破棄し、フルセットの製造業を米国内に構築するなんざ、無理無理。 4年もしないうちにトランプはいなくなるのに、米国企業が設備投資するわけないじゃん。 資本だけでない。 労…
藤井誠二,2018,沖縄アンダーグラウンド──売春街を生きた者たち,講談社.(4.4.25) 二〇一〇年を過ぎた頃、「沖縄の恥部」とまで言われた売春街が、官民一体となった「浄化」運動によって消滅した。著者はその前からこの街に入り、売春に従事する女性、風俗店経営者、ヤクザなどに綿密な取材を行い、街の内実や市民社会からの偏見の構造を明らかにしてゆく。また著者は、この街ができるまでの歴史を辿る。売春街は、敗戦直後から沖縄で頻発した米軍兵士による凄まじい暴行事件への対応策でもあった。それは米国占領下に置かれた沖縄の戦後史と切り離せない関係にあったのだ―。浄化運動で消された「売春街」を丹念にルポルタージ…
エマ・ブラウン(山岡希美訳),2021,男子という闇──少年をいかに性暴力から守るか,明石書店.(4.3.25) 全米各地で研究者、学校関係者や親子など数百名に聞き取りを行い男子の性加害・被害実態を調査。男子大学生の22%が入学前に性暴力を振るった経験をもつ国の、語られざる物語を紡ぐ。「男らしさ」の常識に挑み、あるべき性教育を模索する、この時代の必読書。 少年期、青年期の男の子は、性の加害者にも被害者にもなりやすい。 ミソジニーの現れとしての女性への性加害、ホモフォビアの現れとしての男性への性加害はとりわけ深刻であり、とくに少年男子の間で、肛門にモップの柄を挿入するブルーミングの被害が多発して…
グリーン革命──温暖化、フラット化、人口過密化する世界 (増補改訂版) 上・下
トーマス・フリードマン(伏見威蕃訳),2001,グリーン革命──温暖化、フラット化、人口過密化する世界 (増補改訂版) 上・下,日本経済新聞出版社.(4.2.25) 原油価格の上昇は、産油国の民主主義の後退をもたらす。 なぜか? 原油価格が上昇すれば、レンティア国家、産油国の政府は、潤沢な財政を国民の福利向上に振り向け、警察力の強化をはかる。 その結果、国民は、高水準の失業手当をあてにして勤労意欲を失い、強大な警察権力は、国民の思想・言論・集会の自由を剥奪する。 あまつさえ、オイルマネーで潤う富豪たちは、イスラム原理主義勢力の拡大に資金を供与しさえする。 ロシアがウクライナを侵攻し三年以上にわ…
鎌田慧,2001,原発列島を行く,集英社.(4.2.25) 日本の美しい海岸線を不気味に変容させている巨大な建築物の群れ。それが原子力発電所である。過疎地を狙ったように建ち並ぶ原発が、いかにその地の人々に犠牲を強いてきたか。都会の繁栄の陰で、いびつに進行するエネルギー行政の矛盾がここに凝縮されている。日本全国の原発立地点をくまなく歩き続ける著者が、淡々と綴るドキュメント。 福島第一原発事故の10年前に出版された書物。 数々の名ルポルタージュを手掛けてきた鎌田さんが、全国の原発および使用済み核燃料処理施設が立地する地域を訪ねる。 電源三法交付金や固定資産税、漁業補償金等、札束で地域を究極の迷惑施…
齊藤真,2011,関西電力「反原発町長」暗殺指令,宝島社.(4.1.25) 14基の原発が立ち並ぶ福井県・若狭湾沿岸の“原発銀座”。関西電力の高浜原子力発電所で異常な出来事が起こっていた。獰猛な“原発警備犬”が、犯罪の凶器に使われようとしたのだ。国内初の「プルサーマル」に固執する“高浜原発の天皇”。ことごとく“天皇”に反発する地元高浜町の町長…。「喉元を犬にくいちぎらせたれや」襲撃を命じられた警備会社幹部が町長を追尾する…。電力会社の異常な地元対策を描く大型告発ノンフィクション。 高浜原発を牛耳る関西電力の幹部社員が、プルサーマル発電に反対する高浜町長を、請負警備業者に警備犬を使って殺害するよ…
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