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2020/05/16

1件〜100件

  • 老いへの挑戦

    森村誠一,2020,老いへの挑戦,海竜社.(7.4.2022)本書は、森村さん、その膨大な大衆小説の作品群のなかから、数多くの人生訓を抽出した一冊だ。退屈したとまでは言わないが、もっぱら「サラリーマン」を主たる読者層としてきたこともあって、時代錯誤の古臭いマッチョな価値観が目立ち、それがどうも気になった。とはいえ、サラリーマン的処世術への批判は徹底しており、その点は共鳴できるところがあった。残された時間を、どう生きるか。「人生の意味」を問い続ける森村文学、珠玉の一冊。目次1老いを生き抜く力2「幸福」と「生きがい」をどう探すか3山はいのちを育む最高の場所4夫婦とは一体、何か5心が満たされる生き方6組織の中での「自分の居場所」の見つけ方老いへの挑戦

  • グループホームの基礎知識

    山井和則,2003,グループホームの基礎知識(改訂新版),リヨン社.(7.3.2022)旧作ではあるが、現在でも通用する認知症高齢者ケアについての知見はおおいに参考になるだろう。本書で詳説されている(認知症高齢者)グループホームや「宅老所」(小規模多機能居宅介護サービス)は、ますます必要とされているが、近年、増加するどころか減少傾向にある。高齢者の生活の質を向上させるサービスを充実させるとともに、サービス従事者、とくに若者の安定した収入源となる雇用を増やすための施策を、政府が講じてこなかったからである。雇用政策と連動した社会福祉の増進の責を果たさない政府など、万死に値する。本書は、2008年改訂版を最後に、絶版のままであるが、有益な内容であるので、改訂し再版してもらいたく願う。第三の介護の道を拓くグループ...グループホームの基礎知識

  • 代理出産

    大野和基,2009,代理出産──生殖ビジネスと命の尊厳,集英社.(7.2.2022)代理出産を依頼した夫婦、代理出産を請け負った女性、そして代理母ビジネスを展開する業者に、代理母ビジネスを禁止するよう州政府にはたらきかける者。本書は、代理母問題にかかわるこれら当事者に、インタビューを積み重ねた大野さんの執念が実った快作だ。ベビーM(Mは代理懐胎依頼者夫婦がつけた名前であるMelissaのM)事件の顛末についても詳しく解説されている。抜群におもしろい内容であり、売春、買春問題等にも応用できる倫理が学べるので、おすすめしたい。電子書籍でも読める。不妊に悩む夫婦にとって「福音」といわれる生殖補助医療、代理出産。しかし、代理母の精神的・肉体的負担、貧困層のブリーダー階級化、親子関係の定義づけの難しさなど、現実はシ...代理出産

  • 世代の痛み

    上野千鶴子・雨宮処凛,2017,世代の痛み──団塊ジュニアから団塊への質問状,中央公論新社.(6.30.2022)上野さんが指摘するとおり、団塊ジュニアが、ロストジェネレーション(就職氷河期世代)として生活困窮に苦しめられてきたことは、まこと「人災」である。団塊世代は、たんに高度経済成長という僥倖のおかげで階層上昇移動を果たしただけであるのに、それをおのれの努力の成果だと思い違いをし、また己惚れて、自分たちの雇用を守るためもあって切り捨てられたロスジェネに対し、「努力が足らない」と嘯く。バブル経済による1,000兆円規模の不良債権処理にあたって、超長期償還国債を発行するなり、年功賃金制度を改め、時短を推進し、ワークシェアリングによって、当時の若者を包摂することは可能であった。しかし、労働力の非正規化によっ...世代の痛み

  • 成熟社会の経済学、節約したって不況は終わらない

    小野さんの主張は、ほぼ一貫しており、かつとても分かりやすい。耐久消費財市場が飽和状態となり、脱物質主義的価値観が優勢となって久しい。それに加えて、所得税の累進性の緩和、消費税の導入と高率化、非正規雇用の増加、労働分配率(賃金水準)の低迷等は、さらに商品やサービスの需要を冷え込ませ、人々は、将来不安に怯え、ひたすら貯蓄に励む。コロナ禍における定額給付金のほとんどが貯蓄にまわってしまったことは記憶に新しい。モノへの飽くなき渇望が冷え込んだことは、なにも悪いことではない。気候変動や資源枯渇の問題があるのだから、むしろ良いことだろう。一方、育児、教育、介護、相談援助等の対人サービスは、いくら消費されようが、環境、資源問題にはほとんど影響しない。高齢者をはじめとして、将来不安ゆえ溜めこまれた資産を吐き出させるべく、...成熟社会の経済学、節約したって不況は終わらない

  • 国家・企業・通貨

    岩村充,2020,国家・企業・通貨──グローバリズムの不都合な未来,新潮社.(6.23.2022)日本銀行が国債やETFを買い続け、延々と市場に大量の貨幣を流し込んでも、賃上げをともなう物価上昇が起こらなかったのはなぜか、その疑問が本書を読めば氷解するだろう。「流動性の罠」による中央銀行の金融政策の無効化、グローバリゼーションによる「底辺への競争」の加速、GAFAによる「関心の独占」、仮想通貨、リブラ、MMTの虚妄、これらの論点について、ばっさりと俗説を切り捨て、たしかな根拠にもとづいた正論を展開する。理路整然とした議論の展開は爽快でさえある。秀逸なコラム記事をはさみながら、一気に読ませる力量はすばらしい。議論を楽しみながら、グローバリゼーション、経済、金融政策の歴史としくみが学べるすばらしい書物なので、...国家・企業・通貨

  • 金儲けがすべてでいいのか

    ノーム・チョムスキー(山崎淳訳),2002,金儲けがすべてでいいのか──グローバリズムの正体,文藝春秋.(6.23.2022)旧作であることもあり、新味はなかったが、国家と結託したグローバル企業による搾取、グローバリゼーションによって蝕まれるわたしたちの生活のありようが的確に描かれている。ひとにぎりのアメリカ巨大企業とわずかな投資家たちの利益最優先主義が世界を荒廃させてしまった。アメリカの知性チョムスキーがグローバリゼーション神話を完膚なきまで解体する評論集。目次第1章新自由主義とグローバルな秩序第2章同意なき同意―民衆の心を画一化して管理する第3章自由市場への情熱第4章新自由主義秩序のなかの市場民主主義―教義と現実第5章ザパティスタ党の蜂起第6章究極の武器第7章「自警団員の大群」金儲けがすべてでいいのか

  • 21世紀の不平等

    アンソニー・B・アトキンソン(山形浩生・森本正史訳),2015,21世紀の不平等,東洋経済新報社.(6.20.2022)1980年代以降、アメリカ合衆国、イギリス、日本、この三か国は、さながら新自由主義の草刈り場と化したわけであるが、アトキンソンは、イギリスの所得税最高税率を65%まで回復させる(引き上げる)ことなどを提言する。子どもやシングルマザーの貧困については、日本は、アメリカ合衆国に次いでひどい状況にある。日本は、累進課税の強化、最低賃金の引き上げ等により、イギリス以上に貧困世帯への経済資本の配分を強化する必要がある。ただ、国民国家レベルでの連帯意識が弱体化しており、生活保護の不正受給への怒りは沸騰しても、はたして、経済資本の再配分の強化について国民的合意がはかれるのかどうか、日本もイギリスも厳し...21世紀の不平等

  • オープンダイアローグとは何か

    斎藤環著訳,2015,オープンダイアローグとは何か,医学書院.(6.14.2022)本書は、フィンランドのヤーコ・セイックラ等により開拓されてきた、オープンダイアローグと呼ばれる精神療法につい紹介する。セイックラ自身の論文に加え、斎藤環氏により解説がなされている。社会構成主義の考え方が、急性期精神疾患の治療に生かされているのには、感慨深いものがある。このオープンダイアローグが、「べてるの家」での実践と重なる部分が大きいことも興味深い。依頼があったら「24時間以内」に精神科の「専門家チーム」が出向く。そこで患者・家族・関係者をまじえて、状態が改善するまで、ただ「対話」をする――フィンランド発のシンプルきわまりないこの手法に、なぜ世界が注目するのか?第一人者セイックラ氏の論文と、斎藤環氏の熱情溢れる懇切丁寧な...オープンダイアローグとは何か

  • 世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠

    ジョセフ・E・スティグリッツ(峯村利哉訳),2015,世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠,徳間書店.(6.13.2022)本書には、『世界の99%を貧困にする経済』を補強する論説が収められている。大部の書物であるが、読んでおいて損はない内容だ。格差は、冷徹な資本主義の結果ではない。1%の最上層が、自分たちの都合のいいように市場のルールを歪め、莫大な利益を手にし、その経済力で政治と政策に介入した結果なのだ。だが格差の拡大は、経済や社会の不安定と混乱をもたらし、やがてはすべての人々を危機へと導く―。この負の連鎖を止めるために、我々はいったい何をすべきなのか?ノーベル賞経済学者スティグリッツが、すべての人によって繁栄が共有されるための道筋をしめす!目次Prelude亀裂の予兆第1部アメリカの“偽りの資本主義”...世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠

  • 貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか

    橘木俊詔・山森亮,2009,貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか,人文書院.(6.11.2022)もはや旧作に近い対談集であるが、貧困問題そのものよりも、経済思想、社会保障、租税制度、最低所得保障等をめぐって、たいへん興味深い議論が展開されている。いま読んでもおもしろく有益な内容なので、せめて電子書籍化されることを望む。格差、貧困、福祉、労働…、いま日本において緊急かつ最重要の問題をめぐる、ベテランと新鋭、二人の経済学者による白熱の対話。徹底した議論の先に見える未来とは何か。目次第1章格差問題と経済学近年の格差社会最適課税論経済政策の転換ネオリベラリズムケインズの経済学新古典派の経済学絶対的貧困と相対的貧困第2章福祉と制度の経済思想1北欧の社会福祉同一労働同一賃金社会保障児童扶養手当女性...貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか

  • 脱貧困の経済学

    飯田泰之・雨宮処凛,2012,脱貧困の経済学,筑摩書房.(6.7.2022)10年前に出版された書物であるが、非正規雇用は増えるばかりで、法定労働時間分働いても生活が成り立たないほどに最低賃金は低いままであるし、本書で提案されている、最低所得保障のための部分的ベーシックインカムはもちろん実現していない。実現したことといえば、消費税が10%に上がったくらいのものである。あいかわらず、ろくでもない無為の10年間が過ぎ去ってしまったわけだ。コロナ禍が終息に向かうなか、欧米諸国は、急速な景気の回復を受けて金融引き締めをはかっている。それに対し、日本は、金融緩和政策を続行し、円は叩き売られ、景気回復なき物価高に陥っている。コロナ禍による生活困窮に加え、政府と日銀のこの体たらくが、人々の生活をさらにどん底にまで叩き落...脱貧困の経済学

  • ケアってなんだろう

    小澤勲編著,2006,ケアってなんだろう,医学書院.(6.6.2022)認知機能は衰えても感情は残る、現在では常識化した認知症についての理解は、この故小澤勲氏らによって確かなものになった知見である。論点は多岐にわたるが、認知症理解の第一歩として、小澤さんから学べるところはまだまだ多いことを実感した。目次1部向かいあって考える対談ケアと異界(田口ランディ)「当事者の時代」に専門家はどこに立つのか(向谷地生良)情動・ことば・関係性(滝川一廣)病いを得るということ(瀬戸内寂聴)2部若手研究者が考えるインタビュー+論文「私」はどこにいるのか(西川勝)なんてわかりやすい人たち(出口泰靖)治らないところから始める(天田城介)3部認知症を生きるということ公開講座より4部「ぼけ」を読む認知症高齢者をかかえる家族への手紙ケアってなんだろう

  • ゆたか作業所

    清水寛・秦安雄ほか編著,1975,ゆたか作業所──障害者に働く場を,ミネルヴァ書房.(6.5.2022)本書は、わが国における障がい者福祉の黎明期に、「ちえおくれの仲間」が働く場を得るために奮闘した、施設職員と障がい当事者とその家族による記録である。わたしたちは、生計の維持のほか、なんのために働くのか、そんな素朴な、しかし難しい問いに、障がい当事者たちがみごとに答えてくれている。すばらしいことである。ゆたか福祉会目次「生きる喜びの源泉」として(清水寛)第一章ゆたかの仲間1ゆたか作業所の一日2「ゆたか」で働く仲間たち3みんなで支え、つくりあげている確信第二章「ゆたか」のおいたち1ゆたか作業所の前身「グッドウイル工場」2グッドウイル工場での一年をふりかえって3親会社倒産と新しい作業所づくり4ゆたか共同作業所5...ゆたか作業所

  • ワニの腕立て伏せ

    町永俊雄,2014,ワニの腕立て伏せ──35の物語と5つのコラムで読む世間の福祉論,中央法規出版.(6.4.2022)町永さんの軽妙洒脱なエッセイを読んで、つくづく、社会福祉に、無味乾燥な制度・政策論は要らないな、と思った。官僚が書いた作文のような社会福祉学に辟易したら、こんな本を読んでリフレッシュしたら良いと思う。暮らしの中の「福祉」を絶妙に探り当て、未来の扉につなげる。元NHKアナウンサーがおくる、これまでにない「世間の福祉論」!目次第1章リフォーム大作戦第2章二つの東京オリンピック第3章人生という放物線第4章三丁目郵便局の奇跡第5章座敷わらしと認知症終章認知症になる「私」が考えた「認知症」ワニの腕立て伏せ

  • パレートの誤算

    柚月裕子,2017,パレートの誤算,祥伝社.(6.2.2022)本書は、生活保護をくいものにする、暴力団による貧困ビジネスと、それと癒着する福祉事務所職員による殺人事件を軸に展開するサスペンス小説である。主人公が、大学で社会福祉学を専攻した、女性の福祉事務職員であることと、上記の筋立てから、退屈しないで楽しめた。暴力団が介在した、生活保護不正受給の挿話は、とてもリアルで、生活保護の現場事情の一面がしっかり取材されているように感じた。ベテランケースワーカーの山川が殺された。新人職員の牧野聡美は彼のあとを継ぎ、生活保護受給世帯を訪問し支援を行うことに。仕事熱心で人望も厚い山川だったが、訪問先のアパートが燃え、焼け跡から撲殺死体で発見されていた。聡美は、受給者を訪ねるうちに山川がヤクザと不適切な関係を持っていた...パレートの誤算

  • 発達障害

    岩波明,2017,発達障害,文藝春秋.(5.29.2022)自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)等について、それらの障害の発見の経緯、現時点での診断の尺度、実際の臨床事例と、過不足なくていねいに説明されている。大村益次郎、アンデルセン、ルイス・キャロル等、発達障害の当事者だったと思われる人物の評伝も興味深い。人の気持ちがわからない、空気が読めない、同じ失敗を繰り返す…それは発達障害かも知れません。日本の医学界きっての専門家が、疾患の種類、豊富な治療事例を懇切丁寧に解説します。目次はじめになぜあの人は「空気が読めない」のか?第1章ASD(自閉症スペクトラム障害)第2章ADHD(注意欠如多動性障害)第3章ASDとADHDの共通点と相違点第4章映像記憶、共感覚、学習障害第...発達障害

  • 障害者市民ものがたり

    河野秀忠,2007,障害者市民ものがたり──もうひとつの現代史,日本放送出版協会.(5.28.2022)関西での障害者解放運動で重要な役割を果たしてきた、故河野秀忠氏が、軽妙でユーモアあふれる筆致で、運動の歴史を振り返る。社会運動は冬の時代が続く。障害者解放運動もしかり、である。これからも、血気あふれる抗議活動は起こらないだろうが、静かに、残り火のように燃え続ける抵抗の精神は絶やさないようにしたいものだ。障害者市民ものがたり

  • 考える障害者

    ホーキング青山,2017,考える障害者,新潮社.(5.26.2022)重度の身体障がい者にしてお笑い芸人の著者が、障がい者をめぐるおかしな現象を取り上げ考え尽くす。「24時間テレビ」の偽善をばっさり切り捨て、返す刀で「バリバラ」の偽悪の作為性に悪態をつく。自らの障がいを武器に成り上がり、あげくのはてに健常者以上の強者と化した「乙武」に対してもたいへん手厳しい。共感するところの多いなかなかの好著である。往々にして世間は障害者を汚れなき存在のように扱う。一方で、表には出てこないが、「厄介者」扱いする人もいる。そんな両極端の捉え方ってなんかヘンじゃないか―身体障害者芸人として二十余年活動してきた著者は、偽善と健前を痛烈に嗤い、矛盾と盲点を鋭く衝く。「24時間テレビ」「バリバラ」「乙武氏」「パラリンピック」から「やまゆ...考える障害者

  • 重い障害を生きるということ

    高谷清,2011,重い障害を生きるということ,岩波書店.(5.24.2022)200ページにみたない短い論述ではあるが、いかにわたし(たち)が重度の障がいとそれを生きる人々が感じとる世界に無知であるかを教え諭してくれる。また、「びわこ学園」の職員をはじめとして、重症心身障害児・者が人間としての尊厳を保障されて生きていくことのできる環境づくりに尽力してきた人々の活動の歴史についても学べる作品である。曲がった手足は意志とは無関係に緊張し、呼吸も思うにまかせない。はっきりした意識もないかに見える―こうした心身に重い障害のある人たちは、世界をどう感じているのか。生きがいや喜びは何か。長年、重症心身障害児施設に勤務する医師が、この人たちの日常を細やかに捉え、人が生きるということ、その生を保障する社会について語る。目次序章...重い障害を生きるということ

  • 決定版 生きがいの創造、生きがいの創造Ⅳ

    数あるスピリチュアリズムのなかでも、飯田さんのそれは、論拠、傍証をふまえた信頼できる内容であるように思う。医学者、心理学者、哲学者のなかには、「生まれ変わり」や「死後に出会う光の存在」等が実在すると信じる者が少なくない。わたしは、半信半疑ではあるが、飯田さんの書物は、親しい者の死に耐え難い喪失感を抱いたり、日々の仕事や生活に虚無感を募らせるだけで生きづらさに悩む者には、生きる意欲を取り戻すきっかけともなりうるものであろう。飯田史彦,2006,決定版生きがいの創造──スピリチュアルな科学研究から読み解く人生のしくみ,PHP研究所.(5.23.2022)圧倒的な知的興奮と画期的な思考法で多くの人々を救ってきた、「科学的スピリチュアル人生論」の最高峰!正しい人間観・人生観・宇宙観とは何か?わが国にスピリチュアル・ブー...決定版生きがいの創造、生きがいの創造Ⅳ

  • 世界を変える知的障害者

    ジョン・マクレー(長瀬修監訳),2016,世界を変える知的障害者──ロバート・マーティンの軌跡,現代書館.(5.22.2022)ニュージーランドにおける大規模知的障がい者入所施設の解体と、知的障がい者の地域生活移行を推進した、自身も知的障がい当事者であるロバート・マーティン、その人の人生と活動の記録をとりまとめた好著。障がい者の自立生活運動が、スウェーデンやアメリカ合衆国だけでなく、ニュージーランドや日本でも展開されてきた歴史は、忘れるべきではないだろう。目次始まり赤ん坊の寮家庭山のふもとで屋根にボールを蹴上げた男の子南へ移る走っても行く先はない流浪の身を脱してストライキ声を見つける懸命に働き、懸命に遊ぶリンダピープルファースト手を差し伸べる施設の暗黒面世界を旅する閉鎖を見届ける世界をもっと良い場所にする未来へ世界を変える知的障害者

  • 統計学が最強の学問である、統計学が日本を救う

    『統計学が最強の学問である』は、どの入門書よりもわかりやすく、統計学のイロハを学べる。χ二乗検定やt検定も、線形回帰モデルで解けるとは、目から鱗であった。『統計学が日本を救う』は、統計学の基本的知見を解説しながら、統計学を生かして、少子化、国民医療費の問題等を再検討した、なかなか興味深い一冊だ。西内啓,2013,統計学が最強の学問である──データ社会を生き抜くための武器と教養,ダイヤモンド社.(文庫新装版有)(5.22.2022)あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたしてどれだけの人が、その本当の魅力とパワフルさを知っているだ...統計学が最強の学問である、統計学が日本を救う

  • リスク

    P・バーンスタイン(青山護訳),1998,リスク──神々への反逆,日本経済新聞社.(文庫新装版有)(5.15.2022)不確定な未来を予測するために、数学者、統計学者たちは、いかにして、過去、現在、未来に向き合ったのか。地味な内容ながら、確率・統計学の歴史が、幾多の数学者、統計学者の人物群像ともども、鮮やかに描かれている。リスクの謎に挑み、未来を変えようとした天才たちの驚くべきドラマ。目次1200年以前始まりギリシャの風とサイコロの役割1、2、3と同じくらい簡単1200~1700年数々の注目すべき事実ルネッサンスの賭博師フレンチ・コネクション驚くべき人物の驚くべき考え)1700~1900年限りなき計測人間の本質についての考察事実上の確実性を求めて非合理の超法則ほか1900~1960年曖昧性の塊りと正確性の追求無...リスク

  • 大学改革の迷走

    佐藤郁哉,2019,大学改革の迷走,筑摩書房.(5.9.2022)筆致は柔らかいが、実はとても辛辣な大学行政への批判の書である。奇妙な書式と意味不明の規則で縛られたシラバスに、よく考えたら(考えなくとも)陳腐で不毛きわまりないPDCA(のポンチ絵)。最近では、これらに「学修ポートフォリオ」(の作成)なるものが課せられるようになった。まったく、バカバカしい限りなのであるが、こういういかさま大学教育改革の旗を振っているのが、教育コンサルタントなる詐欺師たちである。その詐欺師たちの中心には、少子化でおまんまくいあげになりそうな国立大学法人教育学部の連中がいる。愛媛大学のおまえらのことだよ。さすがは佐藤さん、大学改革に資するとうたって実施された、おおがかりな調査についても、たいへん手厳しい。それでも、指摘されていること...大学改革の迷走

  • 大学とは何か、「文系学部廃止」の衝撃

    「役に立つ学問」には、短期的な、目的合理的、手段的有益性をもたらすものだけでなく、中長期的な、価値の転換、創造につながるものがあることを、吉見さんは、大学変遷の歴史をたどりながら、教えてくれる。ヨーロッパ中世の自治都市と大学の形成、近代国民国家の成立にともなう大学の再生、そして国家の衰退、グローバリゼーションの進行、情報化による大学の役割の大きな転換と、こうして俯瞰してみると、既存の価値の転換と新たな価値の創造に果たす大学の役割にあらためて気付かされる。吉見俊哉,2011,大学とは何か,岩波書店.(5.6.2022)いま、大学はかつてない困難な時代にある。その危機は何に起因しているのか。これから大学はどの方向へ踏み出すべきなのか。大学を知のメディアとして捉え、中世ヨーロッパにおける誕生から、近代国家による再生、...大学とは何か、「文系学部廃止」の衝撃

  • 見えない性的指向 アセクシュアルのすべて

    ジュリー・ソンドラ・デッカー(上田勢子訳),2019,見えない性的指向アセクシュアルのすべて──誰にも性的魅力を感じない私たちについて,明石書店.(5.4.2022)一口に、アセクシュアルといっても、その内実は、実に多様であることに驚く。あまりに多様であるがゆえに、理解がなかなか追いつかない箇所も数多い。アセクシャルの当事者は、LGBTからもいわれもない中傷、攻撃を受けることも少なくない。その意味で、アセクシャルは、「マイノリティのなかのマイノリティ」と言っても良い。アセクシャルへの理解が広がることは、「性愛への自由」が強制される社会から「性愛からの自由」が認められる社会への転換につながるだろう。100人に1人がアセクシュアルと言われています。この本は、そんな当事者のために、また友だちや家族やパートナーがアセク...見えない性的指向アセクシュアルのすべて

  • 性別違和・性別不合へ

    針間克己,2019,性別違和・性別不合へ──性同一性障害から何が変わったか,緑風出版.(4.30.2022)性同一性障害(GenderIdentityDisorder)は、アメリカ精神医学会のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)では性別違和(GenderDysphoria)に、WHOのICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)では性別不合(:GenderIncongruence)に、名称が変更された。名称変更の理由は、一つには、GID当事者から「自分たちはDIDなる障害をもつわけではない」という抗議がなされ、「こころの性とからだの性がくいちがっている状態」が脱障害化、そして脱病理化されたからである。脱障害化は良いとして、脱病理化は、下手をすれば、公的医療の対象から外されてしまうことにつながる懸念があるが、...性別違和・性別不合へ

  • 9条入門

    加藤典洋,2019,9条入門(「戦後再発見」双書),創元社.(4.29.2022)なかなか興味深い論考であった。憲法9条は、昭和天皇を戦犯として絞首台に送らないようにすべく策定された、という。旧憲法では国家元首であった天皇が、戦犯として裁かれないことには、日本軍に蹂躙された国々は納得しない。しかし、マッカーサー等は、日本の占領統治を円滑に進めるため、かつて国民にとって「現人神」であった天皇は、そのまま天皇として生かしておくことが賢明だと考えた。それでは、どうやって他の国々(の人々)を納得させる?それには、新憲法に、日本が軍事力をもつことを禁止する絶対平和主義を書き込む必要があった。加藤は、自国防衛のための交戦権さえ否定する憲法9条が、「神風特攻隊」と同様の、(日本人が大好きな)「自己犠牲」とそれによる自己陶酔を...9条入門

  • 地域福祉マネジメント

    平野隆之,2020,地域福祉マネジメント──地域福祉と包括的支援体制,有斐閣.(4.24.2022)本書は、政府が推進する「地域包括ケア」に適合する、自治体の福祉行政組織のあり方を論じたものであり、福祉行政の現状への批判的視点は皆無と言ってよい。自治体で福祉行政に関わる管理職向けの、一種のマニュアル本であり、それでしかないのであれば、行政向けの専門書として刊行すればよいものを、このように一般向けに出されたら、わたしのように、読んでも無駄になってしまうではないか。行政関係者以外は、まったく読むに値しないので、注意が必要だ。包括的支援体制構築へ向けて、自治体は、地域住民や多様な機関との協働による地域福祉をいかに実現するかが求められています。本書はそのためのツールとして自治体行政による「地域福祉マネジメント」を提唱し...地域福祉マネジメント

  • 殺人鬼フジコの衝動

    真梨幸子,2011,殺人鬼フジコの衝動,徳間書店.(4.21.2022)虐待やネグレクト、そしてパーソナリティ障がいの世代間連鎖といっても、あまりに言葉が軽すぎて、リアリティが感じられないわけだが、虐待やネグレクトに加えて、いじめ、そして殺人と、次々に凄惨な経験が積み重ねられていくと、一気に現実感が増す。フィクションだからこそ描ける悲惨がある。そして、しばしば現実はフィクションより悲惨だ。だからこそ肉迫するリアルな、ざらざらした不快感、これには病みつきになるだろう。一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられ...殺人鬼フジコの衝動

  • 【旧作】妻を帽子とまちがえた男【再読】

    オリバー・サックス(高見幸郎・金沢泰子訳),1992,妻を帽子とまちがえた男(サックス・コレクション),晶文社.(文庫新装版有)(4.19.2022)脳の障がいにより、驚くべき世界を構築し、そこに生きる人々。サックスは、情感豊かな医学者としてのまなざしをもち、そうした人々の精神世界を深く探求していく。障がい理解のための古典といっても良いだろう。病気について語ること、それは人間について語ることだ―。妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする男。日々青春のただなかに生きる90歳のおばあさん。記憶が25年まえにぴたりと止まった船乗り。頭がオルゴールになった女性…。脳神経に障害をもち、不思議な症状があらわれる患者たち。正常な機能をこわされても、かれらは人間としてのアイデンティティをとりもどそうと生きている。心の質は少しも損...【旧作】妻を帽子とまちがえた男【再読】

  • 【旧作】社会的ジレンマ【再読】

    山岸俊男,2000,社会的ジレンマ──「環境破壊」から「いじめ」まで,PHP研究所.(4.17.2022)久しぶりに読み直してみて、このての研究の不毛さを痛烈に感じた。だいたい、500円程度の報酬の操作で、「協力行動」と「非協力行動」の度合いを比較していくことになんの意味がある?バカじゃねーの?こんな実験に、アメリカ合衆国や日本の自称研究者がいそしんできたわけだから、呆れ果てる。そういえば、社会理論のフォーマライゼーションだの、数理社会学だのやってる連中は、おつむ弱いのが多かったことを思い出す。もっとも、はじめて、「社会的ジレンマ」を知った者は、なるほどと納得させらるところがたしかにある。しかし、あらためて読み直してみると、化けの皮が?がれる、というものである。違法駐車、いじめ、環境破壊等々、「自分一人ぐらいは...【旧作】社会的ジレンマ【再読】

  • 【旧作】アフガニスタンの診療所から【再読】

    中村哲,2005,アフガニスタンの診療所から,筑摩書房.(4.13.2022)旧ソ連、アメリカ合衆国等に国土を蹂躙され、荒廃と混乱、絶対的貧困のなかに棄ておかれたアフガニスタンの地にて、ハンセン病治療等の活動を、不屈の精神でやりぬき、凶弾に倒れた中村哲医師。その信念と活動の軌跡が本書で語られている。中村さんが、あらためて偉大な人物であったことを再認識させられる書物である。幾度も戦乱の地となり、貧困、内乱、難民、人口・環境問題、宗教対立等に悩むアフガニスタンとパキスタンで、ハンセン病治療に全力を尽くす中村医師。氏と支援団体による現地に根ざした実践から、真の国際協力のあり方が見えてくる。目次帰郷―カイバル峠にて縁―アフガニスタンとのかかわりアフガニスタン―闘争の歴史と風土人びととともに―らい病棟の改善と患者たちとの...【旧作】アフガニスタンの診療所から【再読】

  • 子は親を救うために「心の病」になる

    高橋和巳,2014,子は親を救うために「心の病」になる,筑摩書房.(4.11.2022)精神疾患の原因を親子、とくに母子関係の問題に還元するのは危険ではあるが、高橋さんの洞察はとても深く、そのような因果関係もたしかにあるのだろうなと納得させられた。やり場のない怒り、焦燥感や無気力に悩む人に、とくにおすすめしたい。著者は「引きこもり」や「拒食症」で悩む多くの子どもたちに向き合い、心の声に耳を傾けてきた。どの子も親が大好きで、「自分が役に立っているだろうか」「必要とされているだろうか」と考えている。しかし思春期になり、親から逃れようとする心と、従おうとする心の葛藤に悩み「心の病」になってしまう。真の解決は、親が子を救い出すのではなく、子に親が救われるのだと分かった時に訪れる。目次プロローグ心の「宇宙期」第1章息子は...子は親を救うために「心の病」になる

  • 家族という病巣

    星野仁彦,2015,家族という病巣,セブン&アイ出版.(4.10.2022)発達障がいの当事者が機能不全家族のなかで育つと、どのような二次障がい、生きづらさをかかえることになるのか、たいへんわかりやすく説明されている。筆者自身が機能不全家族のなかで育った発達障がい当事者であることも、そうしたわかりやすさに寄与しているのだろう。それは、自らの苦悩を言語化することにほかならないのだから。歴史上の人物、有名人、凶悪犯罪者の内面に迫った部分も興味深かった。家族が生み出すべきたった一つのもの、それは「愛着」である。「機能不全家族」という環境要因と、「発達障害」という認知機能的要因の二つの視点から、子どもの育ちにとって「家族」機能はなぜ必要かを問う。目次序章診察室から見える「現代の家族像」第1章「機能していない家族」で育つ...家族という病巣

  • 戦争は女の顔をしていない

    スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(三浦みどり訳),2016,戦争は女の顔をしていない,岩波書店.(4.9.2022)ヒトラーが自ら「絶滅戦争」と名付けた、ドイツと旧ソ連との凄惨な戦争は、『独ソ戦』でみごとに描かれているが、その書においても、看護師、医師としてだけでなく、狙撃兵、砲撃兵、通信兵等として戦場に赴いた女性たちには言及されていない。女性たちがこの世の地獄を見た主戦場は、現在のウクライナ、ベラルーシ、クリミア等であった。再び戦場と化したウクライナでは、少なくない女性たちが戦地にいるが、むかしも今も、戦争はつねに男の側からしか語られない。数多くの女性たちが語る戦争の真実は、いかなる戦記よりも鮮烈だ。ソ連では第二次世界大戦で百万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦っ...戦争は女の顔をしていない

  • 持続可能な医療

    広井良典,2018,持続可能な医療──超高齢化時代の科学・公共性・死生観(シリーズケアを考える),筑摩書房.(4.6.2022)『定常型社会』など、これまでの著作同様、スケールの大きな議論が展開されている。ただ、長年にわたって使いまわしされてきた概念、論点が多く、わたしのように、広井さんの著作をすべて読んできた者は、毎度、肩すかしをくらった感が否めない。環境と福祉の融合、所得への課税から消費と資産への課税へ、人生前半期の社会保障への転換等、毎度のことながら、主要論点には賛同するばかりである。高齢化の急速な進展の中で、日本の医療費はすでに年間四十数兆円を超え、さらに着実に増加している。一方、私たちは医療や社会保障に必要な負担を忌避し、一千兆円に及ぶ借金を将来世代にツケ回ししつつある―。そもそも医療とは、科学、社会...持続可能な医療

  • 介護ビジネスの罠

    長岡美代,2015,介護ビジネスの罠,講談社.(4.4.2022)本書は、介護保険や国民健康保険制度を悪用し、金儲けのために公金を横領するのみならず、高齢者の健康と生命をないがしろにする介護ビジネスの実態が、とてもよくわかる内容となっている。なにより周到な取材をとおして、実態を究明しているところが良い。分量も多く、質量ともに充実した、実態究明と問題解決の方途を示した良書といえる。10兆円の巨大市場に巣くう悪徳業者たち。入居者の「囲い込み」は当たり前、増加する「老人ホームもどき」、「看取り」サービスの裏側、「胃ろう」の功罪、高齢者を“儲けの道具”と考える不届きな事業者が跋扈…。家族の弱みにつけ込む悪質な手口を徹底解剖!目次第1章入居者の「囲い込み」は当たり前―ケアマネジャーは敵か味方か介護の劣化をもたらした「サ高...介護ビジネスの罠

  • ユマニチュード

    NHK取材班・望月健,2014,ユマニチュード──認知症ケア最前線,KADOKAWA.(4.1.2022)ユマニチュードとは、主として認知症高齢者に対し、人間の尊厳を保障し、「見つめる」、「話しかける」、「触れる」という関わり方を重視して実践されるケアのことである。なんでもないようなことだが、ユマニチュードを実践することで、高齢者の心身の状態が良好となり、介護者の身体的、心理的負担も減るというのであるから、この技法が高齢者介護の現場で当たり前に実践されることをめざすべきであろう。認知症の人が本来持っていた最も善良なその人らしさを取り戻す。「クローズアップ現代」「あさイチ」「NHKスペシャル」紹介!誰にでもできる認知症ケアの新技術。目次第1章見つめて触れて語りかけてユマニチュードとの出会い~「叫ぶ女性」と「訴える...ユマニチュード

  • 【名作】モモ【再読】

    ミヒャエル・エンデ(大島かおり訳),2005,モモ,岩波書店.(3.31.2022)本作は、ベーシック・インカムや地域通貨の議論のなかで参照されることが多い、児童文学の傑作であるが、グレーバーの『ブルシット・ジョブ』の主張とも通底するところが大きい。われわれの生き方、働き方、消費生活のあり方に対する鋭い問題意識が、ファンタジー小説というかたちでみごとに表現された不朽の名作といえる。町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。小学5・6年以上。【名作】モモ【再読】

  • お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?

    エノ・シュミット、山森亮、堅田香緒里、山口純,2018,お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?,光文社.(3.29.2022)ベーシック・インカムが議論されるようになってすでに20年ほどが経過したが、世界で10か国が採用している(広義の)「給付付き税額控除」を除けば、普遍的な「基本所得」の給付に踏み切っている国は、現時点では存在しない。わたしは、家事労働などのアンペイド・ワークの問題を解消するためにも、ベーシック・インカムの給付に賛同する。ただし、警戒しなければならないのが、ネオリベ派が主張しているような、ベーシック・インカムの給付と同時に生活保護、公的年金制度等を廃止しようとする企てであろう。これを許せば、餓死者が続出する惨憺たる状況となるのは必至である。消費税を30%程度まで引き上げ、ベーシック...お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?

  • 年金問題の正しい考え方、社会保障が経済を強くする

    『年金問題の正しい考え方』は年金数理の説明が多くて退屈だったが、『社会保障が経済を強くする』はたいへん興味深かった。なぜ、社会保障の強化が財政再建のためにも必要なのか、これほど明瞭でわかりやすい説明はほかにないだろう。さすがである。盛山和夫,2007,年金問題の正しい考え方,中央公論新社.(3.23.2022)「自分が年をとったときには年金制度はつぶれてなくなっているのではないか」―本来、人々に安心をもたらすはずの年金制度が、逆に大きな不安材料となっている。年金制度の適切な運営は、国防・治安・教育と並ぶ、政府の重要な機能の一つである。少子高齢化が進むなか、安心して信頼できる制度を作るにはどうすべきか。基礎年金の消費税化や一元化を検討し、本当の公平さと福祉国家の将来像を提示する。目次1信頼衰退の根源にあるもの年金...年金問題の正しい考え方、社会保障が経済を強くする

  • 世代間格差、「日本型格差社会」からの脱却

    ともに、「格差」問題を克服する方途を、社会保障と労働政策の抜本的改革にもとめる。加藤久和さん、岩田規久男さんともに、年金制度を、修正賦課方式から積立方式に移行すべきであると論じるが、これにはわたしも同感だ。移行にともなう、納付と給付、および財源確保の方策についてもきちんと議論されていて、評価できる内容となっている。加藤久和,2011,世代間格差──人口減少社会を問いなおす,筑摩書房.(3.22.2022)年金破綻、かさむ高齢者医療費、就職できない若者。少子高齢化の進む今、生まれた年によって受益と負担の格差が出てしまう「世代間格差」は、日本の現状と先行きを考えるうえでは避けて通れない問題である。なぜ世代間格差が生まれてしまうのか。格差はいかに解消すべきか。本書は経済学的見地から世代間格差を考察し、実行可能な処方箋...世代間格差、「日本型格差社会」からの脱却

  • 没落する文明、知の最先端、未来を読む

    もし生きていれば、の話だが、最近、退職してからのことを考えるようになって、職場の本をすべて持ち帰ろうにも、自宅にそんなスペースはない。だったら、どんどん本を読み廃棄してスペースをあけるしかないというわけで、いささか乱読ペースで消化している。この3冊は、対談とインタビューを構成したもので、いずれも、巨視的な視点から、歴史を振り返り、近未来を予測する内容となっており、それぞれ、なかなか興味深かった。社会変動論といえば、かつては社会学の十八番であったわけだが、いまや、その役割は、哲学、歴史学、人類学等が担うようになっており、寂しい限りではある。萱野稔人・神里達博,2012,没落する文明,集英社.(3.20.2022)3.11で我々に突きつけられたのは、文明の限界である。人間がテクノロジーによって自然を飼いならし、開拓...没落する文明、知の最先端、未来を読む

  • ルポ 老人地獄

    朝日新聞経済部,2015,ルポ老人地獄,文藝春秋.(3.19.2022)全国紙の記者チームならではの取材力が発揮された好著。本書で取り上げられている問題群は、現在ではさらに深刻さを増し、残り続けている。社会保障からこぼれ落ちる生活困窮高齢者の増加、介護労働者の不足、私物化される社会福祉等、のっぴきならない問題群は、けっして他人事ではない。男女混合で雑魚寝、汚物の処理もせずノロウイルスも蔓延…。「ひもつきケアマネ」に食い物にされ、都内から都外の施設に追いやられる。こんな老後に誰がしたのか?硬骨の本格的社会派ルポ!目次プロローグ老人が報われぬ国第1章下層化する老人たち第2章カネなし家なし人手なし八方ふさがりの老人介護第3章老人ビジネスに群がる社会福祉法人第4章医療・年金制度は崩壊している第5章老後の沙汰はカネ次第、...ルポ老人地獄

  • 大学生 学びのハンドブック

    世界思想社編集部編,2021,大学生学びのハンドブック(5訂版),世界思想社.(3.19.2022)オーストラリアのあるソーシャルワークのテキストブックには、大学初年次生への教育と相談援助について一章が割かれている。(AnnTaket,BethR.Crisp,MelissaGraham,LisaHanna,SophieGoldingayandandLindaWilsoneds.,2013,PractisingSocialInclusion,Routledge.)ソーシャルワークの対象にもなりうるほど、たしかに、大学初年次生の教育は大切だ。レポートや参考文献の書式等、二年次以降も参照してもらわねばならないことが多いため、どうしても教科書を指定し買ってもらわないといけないのだが、価格が安く、必要最小限のことが内容に...大学生学びのハンドブック

  • 窓から逃げた100歳老人、世界を救う100歳老人

    奇想天外でありながら、主人公、アラン・カールソンが出会う、あるいはわき役として登場する、フランコ、トルーマン、スターリン、金日成、金正日、毛沢東(以上『窓から逃げた100歳老人』)、トランプ、メルケル、金正恩、プーチン(以上『世界を救う100歳老人』)等を茶化した人物描写がすばらしく、とても笑える。世界とその歴史は、でたらめな人物によるでたらめなできごとによって成り立っていることを、たいていの人は知ってるだろう。だからこそ、いかにもありそうな与太話が心底おかしいのである。しかし、これだけ気宇壮大な法螺話を構想、執筆したのは、偉業である。文句なしに楽しめる作品だ。ヨナス・ヨナソン(柳瀬尚紀訳),2014,窓から逃げた100歳老人,西村書店.(3.18.2022)お祝いなんてまっぴらごめん!100歳の誕生日パーティ...窓から逃げた100歳老人、世界を救う100歳老人

  • 総介護社会

    小竹雅子,2018,総介護社会──介護保険から問い直す,岩波書店.(3.14.2022)これから介護保険制度を利用する人々を読者として想定してのことなのか、制度利用の留意点も含めて、格好の介護保険の手引書となっている。もちろん、それだけでなく、成立以降の介護保険制度の変遷と功罪、現時点での問題点が、的確に指摘されている。誰もが年を重ねていくなかで、介護保険は不可欠である。だが度重なる制度改正は、利用者に何をもたらしたのだろうか。介護保険制度を最新のデータとともに、わかりやすく解説する。ひとり暮らしの増加など家族の変化、介護労働の現状を背景に、全世代をみすえた制度のあり方を考えていく。目次序章介護問題の社会化―「含み資産」から「介護の社会化」へ1章介護保険わ利用する人たち2章介護現場で働く人たち3章介護保険のしく...総介護社会

  • 介護民俗学という希望

    六車由実,2018,介護民俗学という希望──「すまいるほーむ」の物語,新潮社.(3.14.2022)小規模デイサービスに集う高齢者たちに、六車さんたちは話しを請う。そして、若かりしときの思い出、得意だった料理(のレシピ)等、ていねいに「聞き取り」を行う。「聞き取り」を行うことで、六車さんたちは、ものを教わる立場にたつ。「介護する」、「介護される」という主客が入れ替わり、高齢者たちは一方的に支援される立場から解放される。「聞き取り」により成立するのは、みごとな中動態の世界である。そこには、オープンダイアローグとも共通する、ゆたかな生活と意味の世界が成立している。ここは沼津市のデイサービス施設「すまいるほーむ」。デイルームや入浴介助の場で、ふと語られる記憶の数々。意外な戦争体験、昭和の恋バナ、心に沁みるエピソード。...介護民俗学という希望

  • 看護師も涙した老人ホームの素敵な話

    小島すがも,2018,看護師も涙した老人ホームの素敵な話,東邦出版.(3.12.2022)本書には、特別養護老人ホームで看護師として働く筆者が出会った、入居者たちの物語が、収録されている。安っぽい「お涙頂戴」話ばかりが収められているわけでなく、一癖も二癖もある高齢者と介護者、家族たち、それぞれの人間性がいきいきと描かれていて、けっこう楽しめる内容となっている。泣ける!笑える!最強のじいじ&最愛のばあば。老人ホームの素晴らしき面々。親子の愛、夫婦の絆、独り身の喜怒哀楽…実際にあった19の感動ドラマ。目次序章老人ホームに魅せられて第1章人生で必要なことは、ぜんぶ入居者が教えてくれる第2章介護される親と、介護する子。親子の美しき絆第3章認知症でも、動けなくても、いくつになっても、夫婦愛第4章優しさに包まれて、ひとりで...看護師も涙した老人ホームの素敵な話

  • 夢に住む人

    木部克彦,2020,夢に住む人──認知症夫婦のふたりごと,言視舎.(3.12.2022)本作は、ともに認知症の夫婦の生活を、通いで介助する息子の筆者がユーモラスに綴った一冊だ。群馬弁で綴られる老夫婦と息子の会話が楽しい。ただそれだけで、なにも残らない作品ではあるが、親が認知症で将来が心配な人には、在宅生活でもなんとかなるかもという希望がわくかもしれない。「どちらも認知症の老齢夫婦が自宅で暮らすのは無理」と言われながらも、生きがいの畑仕事で市長賞に輝く大根を生産した父、悪態をつきながらも懸命に夫の「世話」を焼く母…。希望通り自宅暮らしを続ける二人の「こころの声」や「つぶやき」を、まとめてみました。認知症になっても楽しく生きられる、その一例なのです。目次1「にんちなんとか」2ファイトお!3絶好調4必殺料理人5宝探し...夢に住む人

  • 【旧作】私は三年間老人だった【再読】

    パット・ムーア(木村治美訳),2005,私は三年間老人だった──明日の自分のためにできること,朝日出版社.(3.11.2022)工業デザイナーであった筆者は、老婆に完璧に変装し、高齢者がいかに邪険にされ、ときには身の危険にさらされてしまうかを、身をもって実証してみせた。本書の初版が出版されたころ、けっこう話題になっていたように記憶している。いま読んでも、高齢者の社会的排除について考えさせられるところの多い書物である。再版を望みたい。85歳の老人に変装した若き工業デザイナーの3年間。ユニバーサルデザインの出発点となった衝撃のドキュメント。目次メイクアップ・アーティストとの出会いパット・ムーアおばあさん誕生いざ、出発変装成功!“潜入”調査変装に改良を加えてお年寄りのなかへ潜入天使の老婦人みじめな扱い私の子供時代ほか【旧作】私は三年間老人だった【再読】

  • 太平洋食堂

    柳広司,2020,太平洋食堂,小学館.(3.9.2022)明治期屈指の知識人にして数々の善行の実践者、またたぐいまれな人格者として、郷里、新宮の人々に慕われた大石誠之助。この偉大な人物の生涯を長編小説として描き尽くす。幸徳秋水、堺利彦、荒畑寒村、菅野須賀子、大杉栄、与謝野鉄幹等、大石と同時代を疾走した人々の息遣いが聞こえてきそうな傑作だ。大石は、山県有朋等がでっちあげた「大逆事件」に連座し処刑される。のちの、甘粕正彦による大杉栄、伊藤野枝殺害事件に通じる、当時の時代状況が、克明に描き出されている。「目の前で苦しんでいる人から目を背けることは、どうしてもできん」一九〇四年(明治三十七年)、紀州・新宮に西洋の王様がかぶる王冠のような看板を掲げた洋食屋「太平洋食堂」が開店した。店の主人は「ひげのドクトル(毒取る)さん...太平洋食堂

  • 火星に住むつもりです

    村木風海,2021,火星に住むつもりです──二酸化炭素が地球を救う,光文社.(3.6.2022)発想もすごいが、発明と事業化の実績もすごい。日本で、こうした逸材が活躍しているのは、うれしいことだ。2030年までにCO2排出量を半分にしなければ地球温暖化は止められず、温暖化を止められないと人類の1/3が亡くなるという予測も!?CO2はとかく“悪いヤツ”“人類の敵”と思われがちですが、実は可能性の塊。空気中のCO2から石油の代わりになるものが作れてしまうのです!つまり、石油製品と呼ばれるものから衣食住にまつわるものまで、全てCO2から作れるということ。誰もがボタンひとつでCO2を回収できる世界最小のCO2直接空気回収装置「ひやっしー」と、CO2が切り拓く未来のページをめくってみましょう。目次Prologue「そもそ...火星に住むつもりです

  • 破壊者たちへ

    青木理,2021,破壊者たちへ,毎日新聞出版.(3.6.2022)主に、第二次安倍政権時の出鱈目の数々を取り上げた時局集。正論につぐ正論、この国のジャーナリズムに、一角の良心が残っていることが救いだ。誰がここまで社会を壊したのか?人倫を踏みにじったのか?闘うジャーナリストが、暴政に抗い続けた4年間。危機の時代を刻み込む記録。変革のための必読テキスト。目次2018年統治の道具報道と恥ほか2019年根を張る病別の理由ほか2020年圧政の餌共犯者ほか2021年正気かなかにし礼さんほか破壊者たちへ

  • どん底に落ちた養分たち

    鈴木傾城,2021,どん底に落ちた養分たち──パチンコ依存者はいかに破滅していくか?,集広舎.(3.5.2022)日本は、おそらく、世界でもっとも、全人口に占めるギャンブル依存症者の比率が高い国である。本書で描かれているパチンコ依存症者の末路は凄惨というほかない。失業、多重債務、一家離散、窃盗、自殺、殺人等々、依存症者とその家族の不幸を招来するだけでなく、ときとして、無差別殺傷事件の被害者も生む。鈴木さんは、マイナンバーカードを活用し、ギャンブル依存を抑制するしくみを提唱するが、これにはわたしも賛同する。どん底に落ちた養分たち

  • わたしは黙らない

    合同出版編集部編,2021,わたしは黙らない──性暴力をなくす30の視点,合同出版.(3.4.2022)性暴力被害当事者、当事者を支えるアライ、弁護士等が、この深刻で厄介な問題について語りつくす。女性の性暴力被害だけでなく、最後に、男性の被害、犯罪加害者の再犯防止プログラムについて触れているのも良い。「性暴力」について語ろうとする人の口を、ふさぎ続けてきたわたしたちの社会。それでも声を上げ続け、問題を明らかにしてきた人たちがいま、伝えたいこととは―。目次第1章世界で、日本で、立ち上がった#MeTooアメリカにおける#MeToo(渡邉葉)2017年の#MeToo(伊藤詩織)ほか第2章性暴力の犠牲になる未成年者性被害に遭う未成年たち(上間陽子)少女たちが性犯罪の被害に巻き込まれていく(仁藤夢乃)ほか第3章性暴力をめ...わたしは黙らない

  • マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か

    杉田俊介,2021,マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か──#MeTooに加われない男たち,集英社.(3.4.2022)構造的に強者、抑圧者として社会に組み込まれた者が、弱者、被抑圧者に語りうることはなにか。むしろ自分は被害者であると思い込んで、ミソジニー(女性蔑視)に「闇落ち」することなく、また、加害者として居直ることなく、「まっとう」であるとはどういうことか。本書は、こうした難題について徹底的に考えぬいた秀作である。新書とは思えないほど、情報量が多く、読みごたえがある。「人間としての不幸や痛みや傷を見つめて、それを手当てする(自己ケアとしての自己への配慮)。それと同時に、男としての既得権や優位性、加害的ポジションを認識し、それを手放し(unlearnし)、その放棄の痛みにおいて社会変革を試みていくこと...マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か

  • くらしのアナキズム

    松村圭一郎,2021,くらしのアナキズム,ミシマ社.(3.1.2022)マルセル・モースの『贈与論』からアナキズムを説き起こす点も含めて、おおむね、デヴィッド・グレーバーの立論にならって議論が展開されているが、きだみのるの『気違い部落周游紀行』に描かれている、全員一致型の民主主義のしくみを評価している点が新しい。国家なんかいらない。こんなことはわたしにとっても自明のことだし、最も身近な国家権力の走狗である警察にしても、嫌悪と敵対の対象でしかない。(ただし、警察官も含めて、生業としてその任につかざるをえない事情は理解しているので、職業差別はしない。)国家など必要としない生活を実践することが大切であることを、再認識した。国家は何のためにあるのか?ほんとうに必要なのか?「国家なき社会」は絶望ではない。希望と可能性を孕...くらしのアナキズム

  • 心はどこへ消えた?

    東畑開人,2021,心はどこへ消えた?,文藝春秋.(2.27.2022)東畑さんは謙遜しているが、なかなどうして、読んでいて楽しく、また考えさせられるところも多い快作だ。心理臨床に懐疑的なわたしでも、なるほど、このようなカウンセリングであれば、クライアントの心も軽くなるだろうと感心した。臨床心理を学んで、それを将来の仕事に生かそうと思っている学生には、強くおすすめしたい。命がけの社交、過酷な働き方、綺麗すぎる部屋、自撮り写真、段ボール国家、仮病…すぐにかき消されてしまう心を探して。『居るのはつらいよ』の筆者が贈る“心が閉じ込められた時代”の道しるべ。目次春バジーさんが転んだメールで卓球ほか夏補欠の品格補欠の人格ほか秋午前4時の言葉たち雑談賛歌ほか冬中学受験の神様ハルマゲドンの後でほかまた、春孤独の形段ボール国家...心はどこへ消えた?

  • ヤングで終わらないヤングケアラー

    仲田海人・木村諭志編著,2021,ヤングで終わらないヤングケアラー──きょうだいヤングケアラーのライフステージと葛藤,クリエイツかもがわ.(2.27.2022)既存調査のまとまりのない紹介、文章力不足、平板な記述等の難点があるが、自身もヤングケアラーであった当事者たちが編纂した作品であるし、現時点では類書が少ないので、読んでおいた方が良いだろうな。弱小出版社ゆえ、じゅうぶんな校正ができなかったのかもしれないが、弱小でも、「みらい」のように編集がしっかりしたところもあるわけで、なんだかねえ、もう少しちゃんと仕事してちょ。障がいを理由に世話をしているきょうだいに着目。ケアの対象は自閉症、知的障害、頭部外傷、統合失調症など状況はさまざま、その体験談とポイント解説で実際を知ってほしい。目次PROLOGUEヤングでは終わ...ヤングで終わらないヤングケアラー

  • 中動態の世界

    國分功一郎,2017,中動態の世界──意志と責任の考古学,医学書院.(2.24.2022)本書は、言語には、能動態と受動態しかないと思い込んでいたわたしたちの常識を粉砕してくれた好著である。本書の影響は大きく、中動態のアイディアを生かした研究書が続々と出版されている。中動態は、能動態と受動態が行為の帰責を明確にする文体であるのと対照的だ。これは憶測でしかないが、中動態は、超越的な存在に対する人間の無力さの認識を根底においた文体であり、それが抑圧され消え去ったからこそ、自然を支配する権限をもち、自発的意志により有責の主体として行為する人間像(のフィクション)が生まれたのであろう。本書でとりあげられている、「非自発的な同意」は、わたしたちの日常生活においてごくありふれたものであるし、「(異論はあるが)それもまたいた...中動態の世界

  • ケアの倫理とエンパワメント

    小川公代,2021,ケアの倫理とエンパワメント,講談社.(2.23.2022)「ケアの倫理」とは、強者総取り型の競争原理に対抗するものであるが、弱者への共感、配慮、介助といった価値を称揚するだけでは、家父長制社会における女性の不払い労働を正当化することになる。「ケアの倫理」はそうした危うい側面はあるが、文学作品に描かれてきた、両性具有的なケアラーのモデルには、普遍的で、力強い文化的価値がある。ヴァージニア・ウルフをはじめとして、家父長制文化に対抗しながら、「ケアの倫理」を貫いた人々の文化的営為には、深く共感する。強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己…、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。自己と他者の関係性としての“ケア”とは何か。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オス...ケアの倫理とエンパワメント

  • 福祉国家

    デイヴィッド・ガーランド(小田透訳),2021,福祉国家──救貧法の時代からポスト工業社会へ,白水社.(2.22.2022)読んでみてなにか新しい知見なり分析視角なりが学べる作品ではなかったが、イギリスとアメリカ合衆国を中心にした、福祉国家の歴史と現状についての入門書としては、要点をおさえながらよくまとまった書物ではないだろうか。ガーランドが指摘するとおり、いかに新自由主義の思想が社会権の後退をもたらしたとしても、福祉国家の屋台骨は揺るがない。なぜなら、社会保険の制度が、個人が直面する(可能性のある)リスクを社会的に軽減する、普遍的で代替不可能な優れたものであるからであり、また、いかに個人主義化が進行しようとも、わたしたちが、仲間がじゅうぶんなケアがなされずに死んでしまったり、窮乏、排除、搾取、虐待、暴力等によ...福祉国家

  • 生活保護解体論

    岩田正美,2021,生活保護解体論──セーフティネットを編みなおす,岩波書店.(2.21.2022)本書は、「生活保護解体」というコンセプトのもとで、わが国の社会扶助、社会保障の問題点を明快に剔出し、最低生活保障のあるべきかたちを提言した力作である。この国の最低生活保障がまちがっているのは、現在の最低時給で法定労働時間分働いて、あるいは国民基礎年金を満額受給できてそれで暮らしていけるのか、当然できないわけであるから、まずその問題の解決をめざし、そのあとで生活保護基準を検討しなければならないとことろ、賃金や社会保障を改善することなしに、浅はかな国民劣情をあてこんで、生活保護基準を引き下げ、国民の生存基盤をますます切り崩している点にある。岩田さんは、低所得者も包摂してきた国民健康保険や国民年金の制度、就学援助制度、...生活保護解体論

  • 言葉を失ったあとで

    信田さよ子・上間陽子,2021,言葉を失ったあとで,筑摩書房.(2.20.2022)性犯罪やDVの加害者更生についての、信田さん、上間さん、双方のスタンスの違いが、興味深かった。わたしが女だったら、上間さんにおおいに共感しただろう。被害者がもうこれ以上傷つかないようにケアするのがもっとも大切であり、嫌悪と恐怖の対象でしかない加害者とは関わりたくもない、これがごくもっとうな感覚だ。ただ、加害者が、虐待や性犯罪の被害者であり、犯行時に「解離」の状態にあったとすれば、どうだろうか?もっとも、性犯罪やDVの加害者は、周到に犯行の計画を練り、「解離」どころではない、「正常」な判断のもと、犯行に及ぶことが多いわけであるから、自らの被害者性により加害が免責されるわけはあるまい。被害と加害の負の連鎖を断つ有効な手立てはなにか、...言葉を失ったあとで

  • 海をあげる

    上間陽子,2020,海をあげる,筑摩書房.(2.19.2022)淡々と美しい言葉で、傷つけられる自己と他者、そして沖縄の自然の痛みが綴られていく。ひんやりとした筆致であるが、書かれている内容には人間と自然への濃密な思いがこめられている。上間さんの他者を思いやる繊細な感性には、ただただ圧倒された。おびやかされる、沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなおその目の光を失わない著者の姿は、連載中から大きな反響を呼んだ。ベストセラー『裸足で逃げる沖縄の夜の街の少女たち』から3年、身体に残った言葉を聞きとるようにして書かれた初めてのエッセイ集。目次美味しいごはんふたりの花泥棒きれいな水ひとりで生きる波の音やら海の音優しいひと三月の子ども私の花何も響かない空を駆けるアリエルの王国海をあげる調査...海をあげる

  • この働き方大丈夫?

    中国新聞取材班,2021,この働き方大丈夫?,集広舎.(2.18.2022)本書は、好評だった新聞連載記事を書籍化したものだ。就職氷河期世代の非正規労働、名ばかり正社員、パワハラ、やりがい搾取、コロナ禍での女性の貧困等々、見やすい図表やイラストをまじえて、数多くの当事者である人々の苦悩を伝える。大学でのキャリア教育でどのようなことを教えているのか、わたしは知らないが、このような現実をしっかりふまえた内容でることを願う。目次(1)われら非正規ワーカー就職氷河期という「貧乏くじ」給料格差正社員の3分の1仕事続かず、親の年金が「生命線」「あえて」正規じゃない選択願いは自立複雑な親世代(2)結婚・出産遠すぎて男性の婚活「年収300万円の壁」「普通」の男性今は「希少物件」理想の妻かわいさより「稼ぐ力」共働きでカツカツ子ど...この働き方大丈夫?

  • ジョブ型雇用社会とは何か

    濱口桂一郎,2021,ジョブ型雇用社会とは何か──正社員体制の矛盾と転機,岩波書店.(2.17.2022)メンバーシップ型雇用社会である日本に、その基本的な特徴を変えることなく、ジョブ型雇用社会の概念、理念、組織論を接ぎ木することにより、大いなる誤解が生じていること、本書はなによりそのことに気づかせてくれる。要するに、企業がジョブ型雇用に切り替えるというのであれば、まず、新卒一括採用という奇妙な採用方式をやめろ、ということだ。最後に論じられている、日本の企業別労働組合に従業員代表機能が欠落している問題が、とりわけ興味深かった。わたしの経験からも、経営上の問題をその責任を問うかたちで追求する際、経営側は、団交権に代表される純粋な組合機能は認めるけれども、経営上の問題追及については応答責任がないと逃げてしまう。これ...ジョブ型雇用社会とは何か

  • デジタル・ファシズム

    堤未果,2021,デジタル・ファシズム──日本の資産と主権が消える,NHK出版.(2.16.2022)堤未果さんといえば、どうしてもナオミ・クラインを想起してしまうが、クラインほど饒舌でない分、論旨がしっかりまとまっていてとてもわかりやすい。選ぶ言葉が的確であるのも、高い文章表現力の要素の一つである。コロナ・パンデミックのショック・ドクトリン(惨事に便乗した新たな支配と搾取)として、オンライン教育へGAFA等、テック企業が参入し、膨大な利権を得ている。わたしも、大学が採用するマイクロソフトのソフトウェアを使っているが、忸怩たる思いを禁じ得ない。オンラインでパワポのスライドを使って講義をし、学生はグーグル検査を繰り返して、なにかを学んだ気になる。さらに、ベーシック・インカムで生計を立て、SNSで愚にもつかぬ、自己...デジタル・ファシズム

  • それを、真(まこと)の名で呼ぶならば

    レベッカ・ソルニット(渡辺由佳里訳),2020,それを、真(まこと)の名で呼ぶならば──危機の時代と言葉の力,岩波書店.(2.16.2022)ミソジニー(女性嫌悪)、気候変動、人種差別等について、ソルニットらしい冷静な筆致で論じる。わたしたちが対峙すべき対象があれば、まず、それを、言葉で表さなければならない。おかしい、許せないと感じた自分の心情についても同様だ。そして、それに対抗していく論理についても、だ。ソルニットの批判の対象は、ドナルド・トランプ、共和党の政治家、石油メジャー、人種差別主義者等であるが、たんなる民主党イデオローグのポジション・トークで終わっていない点はさすがというべきであろう。「ものごとに真の名前をつけることは、どんな蛮行や腐敗があるのか―または、何が重要で可能であるのか―を、さらけ出すこと...それを、真(まこと)の名で呼ぶならば

  • 検索バカ

    藤原智美,2008,検索バカ,朝日新聞出版.(2.13.2022)たとえば(あくまでたとえばであって架空の話)、大学1年生が、初年次ゼミの発表で、「児童虐待」、「高齢者介護」、「障がい児対象の特別支援教育」等、要するになんでも良いが、テキトーにお題を決めて、グーグル検索を繰り返し、使えそうなネタを、パワポ(笑)にコピペし、最後のスライドで「ご清聴ありがとうございました」とくる。教員としては、キレないようにひたすら我慢、自重し、なぜ、こういうことをやってはいけないのか、切々と説教するしかないわけだが、3年生にもなって、稀ではあるが、同様のことをする学生については、「あれだけ言ったのにいまだになんで検索&コピペするのよ」と泣きたくもなるわけである。藤原さんが指摘するとおり、こうした「検索バカ」と、過剰に「空気を読む...検索バカ

  • 【旧作】ケータイを持ったサル【再読】

    正高信男,2003,ケータイを持ったサル,中央公論新社.(2.13.2022)当初からトンデモ本とのろくでもない評価しか得られていなかった書物であるが、想像以上にひどい。著者が言いたいのは要するに以下のとおりである。もともと母子癒着が強い日本社会において、既婚女性の専業主婦化は、さらにその度合いを強めることになった。親、とくに母親は、子どもを自立を促すことなく甘やかし、ケータイを躊躇なく買い与えられた子どもは、、複雑な対面コミュニケーションを回避して「サル」化し、著しく自己中心的で社会性を欠落させるに至った。は?(笑)調査データの扱いが雑すぎるし、論旨の展開もハチャメチャ。ちゃんと校正したとは思えない、学部学生が書いたかのような稚拙な内容だ。さもありなん、著者は、論文データの捏造を理由に、退職した京都大学から退...【旧作】ケータイを持ったサル【再読】

  • ファスト&スロー

    ダニエル・カーネマン(村井章子訳),2014,ファスト&スロー──あなたの意思はどのように決まるか?上・下,早川書房.(2.12.2022)わたしたちの行動は、「エコン」(合理的に利益極大化をはかる経済人)モデルではなく、「ヒューマン」(しばしば判断ミスをともない非合理的にふるまう等身大の人間)モデルによって、よりよく説明できる。例示される問いの一つ一つが興味深い。わたしたちは、無条件に利益を供与される場合、それをそのまま享受するが、不利益を課せられる場合、リスクをとって小さな確率で利益をあげることを選択する。人間は、感情と直感でものごとを判断するが、それだけではなく、合理的で冷静な熟慮により、直感と感情による判断ミスを避けようとする。本書は、どうすれば前者による致命的な判断ミスを防ぐことができるのか、いかにわ...ファスト&スロー

  • 昨日までの世界

    ジャレド・ダイアモンド(倉骨彰訳),2013,昨日までの世界──文明の源流と人類の未来上・下,日本経済新聞出版社.(文庫版有)(2.10.2022)本作には、前著、『銃・病原菌・鉄』、『文明崩壊』にみられたような、やたらスケールが大きく、ドラマティックな歴史叙述の展開はない。どちらかといえば、地味な、「伝統的社会」についての、自らのフィールドワークと文化人類学の知見を駆使した考察が中心となっている。ダイアモンドは、「伝統的社会」から「近現代社会」に至るスペクトラムを、「小規模血縁集団」、「部族社会」、「首長制社会」、「国家」の順に措定する。人類の歴史でもっとも長いのは、「小規模血縁集団」の時代であるが、その「小規模血縁集団」と、「部族社会」における、闘争と報復、子育て、高齢者の処遇、宗教、言語、非感染性疾患等の...昨日までの世界

  • ドーナツ経済

    ケイト・ラワース(黒輪篤嗣訳),2021,ドーナツ経済,河出書房新社.(2.7.2022)「ドーナツ経済」は、「持続可能な成長」だの「SDGs」だの、絵空事の思考停止のマジックワードとは異なる。ラワースが指摘するとおり、図表がもたらすイメージは大切だ。需要供給曲線や無限に上昇するGDP直線に代わって、ラワースは、最低限の人間らしい暮らしと、環境負荷をはらむ浪費的生活との間に、持続可能な適正水準の経済を措定する。ドーナツ経済に、GDPの成長は必要ない。家事労働や育児、介護労働等に適切な所得保障を行う一方で、資産課税や累進所得税、環境税等を課し、グローバル企業の脱税を阻止し、金融取引にもきっちり課税すること、そして再生可能エネルギーへの転換、消費財の所有から共有への転換、農作物の地産地消、資源リサイクルの徹底等をは...ドーナツ経済

  • 【古典】創られた伝統【再読】

    エリック・ホブズボウム、テレンス・レンジャー編著(前川啓治・梶原景昭ほか訳),1992,創られた伝統,紀伊國屋書店.スコットランド、ウェールズにおける「民族」の伝統の創造、インド、アフリカの植民地における宗主国権威の儀礼による正当化等を論じる。国民国家はイデオロギーにより構築された「創造の共同体」である。このことはいまでこそ常識ではあるが、国民国家の創出過程における「伝統の創造」について、初めて本格的に論じられた書物として、本作は重要である。「天皇すごい日本すごい日本人のわたしすごい」という、しばしば捏造された歴史ともども語られる言説をみるにつけ、本書の論点はいまもなお重要だ。「伝統」という言葉は当然のように、「遠い昔から受け継がれてきたもの」と思われている。だが、「伝統」とされているものの多くは、実はごく最近...【古典】創られた伝統【再読】

  • 【古典】明日の田園都市【再読】

    【古典】明日の田園都市【再読】エベネザー・ハワード(長素連訳),1968,明日の田園都市,鹿島出版会.(新訳新装版有)(2.3.2022)クラレンス・ペリーの「近隣住区論」とこの、エベネザー・ハワードの「田園都市論」は、世界各国の都市計画に大きな影響を与えたが、「近隣住区論」同様、「田園都市論」もおおいに曲解されて、スプロール化したニュータウン(郊外住宅地)が延々と拡張される事態に陥ってしまった。ハワードが構想した「田園都市」は、鉄道の駅を起点として、食料自給を担う農地、工場、住宅、学校、図書館、社会福祉施設等が展開する、一種のコンパクト・シティであった。もちろん、本書が19世紀の終わりに執筆された、その時代による制約はある。工場の排出物や騒音・振動等による公害問題、移動手段としての自家用車の主流化等は、当然、...【古典】明日の田園都市【再読】

  • 未来

    湊かなえ,2021,未来,双葉社.(1.30.2022)貧困、性虐待、DV、いじめ、そして、殺人、放火。登場人物の小中学生の目線で語られるこころの痛みに、読むほうもひりひりする思いがした。なんといっても、放火殺人の真相を、複数の登場人物の語りをとおして明らかにしていく過程が、読むのをやめられないほど、スリリングだ。やはり、傑作小説は、読む者を、ギリギリ痛めつけ、またハラハラさせながら、一気読みさせるだけのクオリティがあるものだな。文句なしの傑作だ。こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです」ある日突然、少女に届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという―。家にも学校にも居場所のない、追い詰...未来

  • 子どもが増えた!

    湯浅誠・泉房穂編著,2019,子どもが増えた!──明石市人口増・税収増の自治体経営,光文社.(1.28.2022)暴言問題もなんのその、泉房穂市長は、明石市民から絶大な支持を受け続けている。それもそのはず、斬新で充実した子育て支援を断行した結果、地方都市でありながら、人口、とくに子育て世代の人口を増やし続けてきたのだから。子どもにやさしいまちは、障がい者にもやさしいまちであり、そして健常者にとっても活力にみち住みやすいまちである。本書を読めば、地方自治から社会を変える、そのもっとも堅実な社会改革の希望が得られることであろう。兵庫県明石市は、近年、子育て支援による子ども増・人口増・税収増で注目されている。市が掲げる「子どもを核としたまちづくり」「やさしいまちを明石から」が、聞こえのいいスローガンで終わらないのはな...子どもが増えた!

  • 【旧作】原発列島を行く【再読】

    鎌田慧,2001,原発列島を行く,集英社.(1.28.2022)本書は、福島第一原発事故を機に増刷され、広く知られるようになったルポルタージュである。ウラン採掘から、燃料棒製造、原子炉運転、点検と修理、そして廃棄物処理に至るまで、それらに関わる人々を被爆させ、生命を奪う、あってはならない欠陥施設、それが原発である。再生可能エネルギーの活用から電気自動車の開発に至るまで、先進産業国のなかでもっとも立ち遅れているのが、この日本である。持続可能な新産業の展開により、人々の生活をよりゆたかで安全なものにするどころか、時代遅れの原発産業に血税を注ぎ込む国家に、原発プラントの輸出に失敗し解体の危機に陥る重電メーカー、そしてそれに異議を唱えぬ国民と、どこまで愚かなのだろうか。日本の美しい海岸線を不気味に変容させている巨大な建...【旧作】原発列島を行く【再読】

  • 近代化と世間

    阿部謹也,2014,近代化と世間──私が見たヨーロッパと日本,朝日新聞出版.(1.25.2022)日本では、これまで、「個人」や「社会」が成立したためしはなく、そこには、曖昧模糊とした「世間」、すなわち、「つぎつぎになりゆくいきほひ」(丸山真男)にだれもが流されるだけの、没主体の、無責任の体系があるだけであった。西洋史の研究の立脚点を、つねに日本国民としての自己においてきた、阿部先生の問題意識が、とてもよくわかる作品だ。かつて日本と同様な「世間」が存在していたヨーロッパが、なぜ個人を重視する社会へと転換したのか。個人の誕生の背景には何が存在していたか。従来の歴史学が語らなかった生活の風景に踏み込み、日本人の生き方を問い続けた著者による総決算。西洋中世史研究と日本社会論とを鮮やかに連結させた、碩学の遺著。目次第1...近代化と世間

  • 【旧作】居住福祉【再読】

    【旧作】居住福祉【再読】早川和男,1997,居住福祉,岩波書店.(1.25.2022)わたしが住んでいる都市は、福岡都市圏の南端に近い場所にあるが、新築の戸建て、ファミリー向け集合住宅で、3,000万円以上、4,000万円近くはする。もはや先進産業国とはいえないほど実質賃金が下がっているのに、それでも売れるというのは、賃貸住宅でも、ストレスなく住めるところは、家賃12万円は軽く超えるからだ。かくして、35年返済住宅ローンとか、あたおかとしか思えない債務地獄を少なくない人々がかかえるわけであるが、そうした長期債務奴隷になるから、あたおかな経営者や上司に抵抗しない、精神の奴隷に成り下がるのであろう。早川先生は、阪神淡路大震災により、脆弱、劣悪な住宅のしたじきとなり、圧死、ないし焼死した人々に目を向ける。同等の震災で...【旧作】居住福祉【再読】

  • 里地里山エネルギー

    河野博子,2017,里地里山エネルギー──自立分散への挑戦,中央公論新社.(1.24.2022)ここのところ、読み損ねていた新書をまとめ読みしているのだが、ここで紹介できるような良書がなかなかない。新書の良いところは、バッチバチに張ったインテンシティを最初から最後まで持続できる点にあると思うのだが、ダラーンと弛緩しきって、平板な、カタログ提示的な内容に終わっているものが多い。ま、粗製乱造、ですな。本書は、全国五か所の事例に絞って、太陽光、風力、バイオマス、小規模水力等の、エネルギーの地産地消の取り組みを紹介したものだ。人間の生活にとって、もつとも大切なのは、食料と水、そしてエネルギーだ。再生可能エネルギーの活用において、世界におおいに遅れをとってしまった日本ではあるが、少数ながら、多数の有用な雇用を生み、自給で...里地里山エネルギー

  • 肩をすくめるアトラス

    アイン・ランド(脇坂あゆみ訳),2004,肩をすくめるアトラス,ビジネス社.(1.22.2022)二段組にして、優に1,200ページを超える長編小説。本作品は、アメリカ合衆国において、20世紀を代表する思想書にして文学作品として、絶大な支持と影響力をもち続けてきた。米国人の、反共産主義、反社会福祉の価値観が、どのような思想にもとづくものであるのか、この大作は、なによりも雄弁に語ってくれている。わたしは、反共ではあるが、反福祉でではない。それでも、「たかり屋」を心底から憎む思想には、ひとかどの説得力があることを認めざるをえない。それにしても、すごい作品だ。肩をすくめるアトラス

  • スローシティ

    島村菜津,2013,スローシティ──世界の均質化と闘うイタリアの小さな町,光文社.(1.19.2022)地産地消の食材を駆使したおいしい料理を、これまた地元産のワインとともにゆっくりあじわい、むかしからそこにあったゆたかな自然と伝統的建造物を眺めながら散策する、そんなイタリアのスローシティの魅力を存分に語りつくす。時節柄、イタリア旅行など望むべくもないが、島村さんの臨場感あふれるスローシティの描写は、自分もその地にいるかのような疑似体験を経験させてくれる。わたしも、イオンモールやなんちゃらアウトレットのようなショッピングモールは大嫌いだし、電柱まる出しで、歩道も整備されておらず、醜悪な広告看板やパチ屋があちこち点在し、金太郎あめみたいなロードサイドビジネスと郊外住宅地がだらしなくひろがる日本の地域社会の風景には...スローシティ

  • ルポ 地域再生

    志子田徹,2018,ルポ地域再生──なぜヨーロッパのまちは元気なのか?,イースト・プレス.(1.17.2022)なんとも誤解を生みそうなタイトルではあるが、おしなべて「ヨーロッパのまちは元気」で日本のまちはそうではない、わけではない。本書でとりあげられているのは、ヨーロッパのなかでも地域再生に成功した「まち」ばかりであり、ヨーロッパのどこにおいても地域が再生されているわけではない。それでも、複数の事例から、もとから存在する「資源」を有効活用し、持続可能な地域づくりにつなげていく成功モデルが導出でき、そうした試みは日本の地域再生事業においてもおおいに参考になるだろう。一つ、あらためて残念に思ったのが、日本と同じ火山国、アイスランドにおいて、地熱による発電と暖房、農作物の温室栽培などが行われ、地域の人々の生活の質を...ルポ地域再生

  • コミュニティー・キャピタル論

    西口敏宏・辻田素子,2017,コミュニティー・キャピタル論──近江商人、温州企業、トヨタ、長期繁栄の秘密,光文社.(1.16.2022)ヒューマン・キャピタルとソーシャル・キャピタルの中間にあって、「同一尺度の信頼」によって取り結ばれたコミュニティー・キャピタル。近江商人、(中国の)温州企業、そしてトヨタとその取引企業の間に醸成されたのがこのコミュニティー・キャピタルであり、東日本大震災により被災した半導体工場の早期復旧を可能にしたのも、自動車産業に関わる官民のコミュニティー・キャピタルにほかならなかった。調査研究による分厚い知見と社会ネットワーク理論を駆使しながら、産業の維持、発展に必要な、人と人、人と組織、組織と組織のつながりの質を究明した、たいへん読みごたえのある一冊だ。本書では、最新の社会ネットワーク理...コミュニティー・キャピタル論

  • 「都市縮小」の時代

    矢作弘,2009,「都市縮小」の時代,角川書店.(1.16.2022)産業構造の転換や少子化により、いずれほとんどすべての都市が縮小していくのは必然であり、人口減少を前提とした、持続可能な都市を構想しなければいけないのは当然のことである。再生都市の基軸とすべきなのは、再生可能エネルギー、農林漁業、医療、介護、福祉、教育、保育等の、人間の生存(サブシスタンス)に関わる産業である。無計画な都市化によりスプロール現象が進行し、財政的に社会資本の維持が困難となった郊外を縮小し、コンパクトシティを実現していくこと、空き家を有効活用するか、農園や緑地にしていくことも必要だろう。朽ちた街が甦る!米・独・日の徹底ルポ!賢い撤退で復活を遂げた欧米の都市の現状と、縮小政策を始めた国内地方都市の未来。目次第1章世界の町が小さくなって...「都市縮小」の時代

  • 地域の力を引き出す企業

    細谷祐二,2017,地域の力を引き出す企業──グローバル・ニッチトップ企業が示す未来,筑摩書房.(1.14.2022)本書が広く読まれていないとすれば、あまりにもったいないと思うほど、内容の詰まった好著である。日本の製造業大手の大企業はなぜ衰退したのか、そして、「グローバル・ニッチトップ(GNT)」の座を占めた中小企業がなぜ発展し続けてきたのか、起業家精神、意思決定のあり方、組織とネットワーク等、多面的にその謎を解き明かす。莫大な利益を叩き出すプラットフォームビジネスはほぼ米国企業が独占してきたが、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、デンマーク、スイス、そして日本には、高度の技術力を生かした高付加価値産業がある。画一規格の製品やサービスの価格競争で消耗するのではなく、現代人のニーズに見合う、付加価値の高い産業...地域の力を引き出す企業

  • 「豊かな地域」はどこがちがうのか

    根本祐二,2013,「豊かな地域」はどこがちがうのか──地域間競争の時代,筑摩書房.(1.12.2022)国勢調査等のデータを用いた、中長期の年齢階級(コーホート)別人口の推移と従業・通学による人口移動、経済センサスのデータを用いた雇用機会の分析、以上により、市町村の地域特性と持続可能性を的確に把握、予測することができる。本書は、人工統計学的な地域社会分析の有効性を、明確に示してくれている。人口減少と経済衰退がすすむ今、減り続ける「パイの奪いあい」が大きな問題になっている。駅前や商店街に人が来ない地域、若者がいなくなり限界集落と化した地域、市町村合併で弱まる地域―。しかし、その一方で確実に成長しつづける地域もある。そうした「豊かな地域」は、いったい何がちがうのか?そこではどういうことが実践されているのか?本書は...「豊かな地域」はどこがちがうのか

  • どこまでやるか、町内会

    紙屋高雪,2017,どこまでやるか、町内会,ポプラ社.(1.11.2022)紙屋さんの町内会論を読むのは、これで二冊目であるが、そもそも、町内会はたんなる任意団体であり、住民が強制加入されるいわれはないとか、ゴミの収集は住民税を徴収している自治体の責務であり、町内会でゴミの共同収集を請け負う義務はなく、戸別収集に切り替えれば済むはなしであるとか、自治体広報誌を配布する作業も自治体自身の責務であり、町内会組織がそれを請け負う必要はないとか、いちいち、真っ当な指摘ばかりで、なんの意味があるのかわからない、町内会行事や役務にうんざりしている人たちはうなずくことばかりだろう。コロナ禍でどうでも良い町内会の行事が中止となり、せいせいしている人も多かろうと思うが、あらためて、町内会の行事や役務など、ないならないで全然困らな...どこまでやるか、町内会

  • 【古典】オリエンタリズム【再読】

    エドワード・W・サイード(今沢紀子訳),1993,オリエンタリズム上・下,平凡社.西洋人により、自己を内省する能力、資質をもたず、野蛮で、正欲だけは旺盛な「他者」として描かれ続けてきた東洋の人びと。サイードの批判は、あらゆる人種、民族差別への批判的省察に開かれている。20世紀前半期、日本は、台湾、朝鮮、中国を、啓蒙すべき「オリエント」としてみなし、実際に植民地化した。「オリエンタリズム」の視点から近現代史をふりかえると、新たな気付きが生まれてくるだろう。ヨーロッパのオリエントに対するものの見方・考え方に連綿と受け継がれてきた思考様式――その構造と機能を分析するとともに、厳しく批判した問題提起の書。解説=杉田英明目次第1章オリエンタリズムの領域東洋人を知る心象地理とその諸表象―オリエントのオリエント化プロジェクト...【古典】オリエンタリズム【再読】

  • 資本主義と奴隷制

    エリック・ウィリアムズ(中山毅訳),2020,資本主義と奴隷制,筑摩書房.(1.7.2022)原著の出版年が1944年なので、サミール・アミン(従属理論)やイマニュエル・ウォーラーステイン(世界システム論)に先んじた作品である。まずなにより、膨大な資料から逐一傍証しながら知見を積み上げていく、その徹底ぶりに驚く。アフリカ大陸とカリブ海諸国、そしてヨーロッパをとり結ぶイギリスの奴隷貿易は、人道的な見地から廃止されたのではなく、東インド会社による貿易の拡大とともに、たんに経済的に引き合わなくなったから廃止されたのである。これが、エリック・ウィリアムズの下す結論の一つである。ちなみに、ウィリアムズ自身は、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムと資本主義の精神」に対するアンチテーゼとして、本書を上梓したわけではな...資本主義と奴隷制

  • 自閉症の僕が跳びはねる理由、同2

    重度の自閉症スペクトラム障がい(ASD)当事者である東田さんが、自らが見える世界について語りつくす。世界中で翻訳され話題となった本であることもむべなるかな、ASD当事者が、いわゆる定型発達者とは異なる世界に住んでいることがよくわかる内容となっている。ASD当事者ならではの、斬新でみずみずしい感性と言葉遣いにとても感心した。東田直樹,2016,自閉症の僕が跳びはねる理由,KADOKAWA.(1.6.2022)僕は跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです―。人との会話が困難で、気持ちを伝えることができない自閉症者の心の声を、著者が13歳の時に記した本書。障害を個性に変えて生きる純粋でひたむきな言葉は、当事者や家族だけでなく、海をも越えて人々に希望と感動を...自閉症の僕が跳びはねる理由、同2

  • むずかしい天皇制

    大澤真幸・木村草太,2021,むずかしい天皇制,晶文社.(1.4.2022)天皇制についてはすでに語りつくされた感があり、本書の対談でとくに目新しい知見や論点が展開されているわけではない。本書でも提案されているが、どう考えても無理がある象徴天皇制は廃止して、さしあたって、皇族を一種の「無形文化財」として保存しておくのが得策かと思う。天皇制の弊害は、二つある。一つは、長子相続の身分制度であるため、否定されているはずの、出自、門地による差別を正当化するはたらきがある点にある。もう一つは、皇族に基本的人権が保障されていない点にある。思想、良心、表現、集会、結社、職業選択の自由以前に、たとえば、コンビニで買った明太子おにぎりをパクつきながら、海上釣り堀で真鯛釣りに興じる自由もないわけで、今日日、生まれによりそんな不自由...むずかしい天皇制

  • 昭和天皇の戦後日本

    豊下楢彦,2015,昭和天皇の戦後日本──<憲法・安保体制>にいたる道,岩波書店.(1.2.2022)本書を読めば、昭和天皇、ヒロヒトが、いかに、狡猾にして、我が身の保身と天皇制の護持にしか関心をもたぬ、人間のクズとしか言いようのない存在であったことがわかる。ダグラス・マッカーサーが耄碌してからしたためた『回想記』が、事実と異なる妄言録でしかないことは、本書でも正しく指摘されている。すなわち、ヒロヒトは、国民の幸せを願って、自らが戦犯として裁かれることをよしとしていたわけでは、断じて、ない。ヒロヒトは、すべての罪を東条英機になすりつけ、自らを恥じることもなく、マッカーサーに命乞いしたのである。新憲法が施行されてからも、ヒロヒトは、憲法を踏みにじり、自己保身と天皇制護持のために、政治に干渉し続けた。わたしたちは、...昭和天皇の戦後日本

  • 完本 春の城

    石牟礼道子,2017,完本春の城,藤原書店.(12.31.2021)読む者のこころを震わせる、珠玉の長編小説。自然と一体となって生きる、純朴で、優しく、また剛毅な天草、島原の人々。幼子、年寄りも含めて、原城にて虐殺された人々、それぞれの人物造形がすばらしい。天草、島原の風土、人々の生活、そして信仰のありようが、あたかも自らの眼で見てきたかのように、美しい言葉で綴られている。「原城跡」には一度行ったことがあるが、再び訪れる機会があれば、本書で描かれた人々の、覚悟の死と、つかの間に成立していたであろうコミューンを偲びつつ、散策してみたい。天草生まれの著者が、十数年かけた徹底した取材調査ののち完成させた、天草・島原の乱を描いた最高傑作「春の城」。取材紀行文「草の道」、多彩な執筆陣による解説、地図、年表、登場人物紹介、...完本春の城

  • はじめてのケア論

    三井さよ,2018,はじめてのケア論,有斐閣.(12.27.2021)けっして読みやすい書物ではないし、「あとがき」にあるように、著者自身の苦心惨憺ぶりが、行間から伝わってくる。バカの一つ覚えのように「社会福祉職は専門職」と唱える人に対し、「あんたのいう専門職の中身はなんなんだ?空っぽじゃねーのか」とひそかに思っていた者としては、地べたの支援を「ベースの支援」として重視する三井さんの姿勢に、まず、共感した。また、三浦文夫等による、退屈な「ニード論」に、「排除/包摂」という補助線が引かれたとたん、なかなかわりきることができないニードの切り捨ての問題が、当事者支援の切実な課題として明らかとなる。支援の現場での経験知を、一般化、抽象化することは、とても難しい。社会福祉に理論がない(ように思える)のもむべなるかな、その...はじめてのケア論

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