<はじめから読む! ペーパーレスがどうのこうの、ビジネスニュースでは有識者が議論しているが、雪人ゆきとの務める会社には無縁の言葉であった。 毎月の申請をオンライン上でできるようにして、人事が直接決済してくれたらいいのに。普通の有休だって、そ...
<はじめから読む! ペーパーレスがどうのこうの、ビジネスニュースでは有識者が議論しているが、雪人ゆきとの務める会社には無縁の言葉であった。 毎月の申請をオンライン上でできるようにして、人事が直接決済してくれたらいいのに。普通の有休だって、そ...
葉咲透織のオリジナル小説&レビューサイト
「……新入生代表――」 高校一年、入学式の主役といっても、それは入試の成績が一番で、挨拶を任された子だけだ。 自分で考えたのではないだろう(ついこの間まで同じ中学生だったのだから、「ごべんたつ」なんて言葉、人生で初めて使ったに違いない)、誰...
職業柄、背中にも目がある。「こら、そこ。今持っているものを出しなさい」 できる限り穏やかな声で注意する。まだ振り向かない。こういうのはタイミングが重要だ。 正確な位置はわからないが、ぴりりと教室全体の空気が緊張したのが伝わってくる。 二年生...
1月のBL小説は、現代モノ2冊でした。1冊目のレビューはこちら現代モノとひとくくりにしても、昨今はオメガバースやDom/Subユニバースなどが流行っているので、純粋な現代モノってなかなか探せないのですが(特に新人作家さん)、キャラ文庫はやっ...
<<はじめから読む!<(13) 千秋楽を終えたばかりの楽屋は、冷めやらぬ熱気に包まれている。そこかしこで労いの抱擁が交わされていた。「桃治さん」 桃治も、年下の先輩劇団員に求められ、まずはぎゅっと手を握り合ったのち、互いの背中にひしと腕を回...
葉咲透織のオリジナル小説&レビューサイト
<<はじめから読む!<(11) 控えめなノックの音がしたのは、至がある程度泣き止んでからだった。秘密の話をするわけだから、防音はしっかりしているだろうに、高月の空気を読む能力が高すぎる。 抱き合っていた身体を名残惜しく離してから、部屋の主を...
<<はじめから読む!<(10) 扉がしまれば、この空間にはふたりしかいない。桃治と至だけ。真央の存在はないと、高月が保証した。 話し合いをしなければ。 場所を提供してくれた高月の言葉を思い出して、桃治はのろのろと動いた。 でも、何から? 思...
2024年は小説、特に商業BL小説を読むことをサボり倒してしまったことを大反省したBL小説家志望、心を入れ替えました。「月に2冊はBL小説を買って読む」を目標としましたが、読むだけじゃもったいないので、レビューもぼちぼち再開していきますので...
<<はじめから読む!<(9) 心霊相談を兼ねた心理相談所は、周辺地図を見たところ、電車よりも車で行った方が便利そうだった。幸い駐車場もあるようで、姉の家に車を借りに行く。 鈴女そっくりな姉は、「ちょっとやだ。あんたひどい顔よ?」と、眉間に皺...
<<はじめから読む!<(8)「桃治くん、どうしたの?」 店にやってきた時点ですでに飲んでいた鈴女だが、叔父の顔を見て開口一番、はっきりと言った。酔いは一気に覚めた様子で、名前の発音も舌足らずでない。「んあ?」 なんでもねぇけど、と言いかけた...
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<<はじめから読む!<(6) 翌早朝、すっきりとした表情で至は目を覚ました。「おはよう」 きっと彼に比べて、自分はどんよりとした目をしているだろうと思う。あまり顔を合わせず、さっさと支度をしようとベッドを下りかけたところで、手首を掴まれて振...
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<<はじめから読む!<(4) それから普段着をいくつか見繕った。大きな紙袋はかさばり、桃治は至と分けて持ったまま、駅へと向かう。「今日は本当に、ありがとうございました」「いいや。俺も楽しかったから」 自分では着ない系統の店に入り、ああでもな...
<<はじめから読む!<(3) 桃治は人の買い物に付き合うのは、苦にならないタイプだ。こういうのは慣れであり、年の離れた姉に散々振り回され、鍛えられた。 鈴女もよく桃治を誘う。あっちがいいとかこっちがいいとか、彼氏相手よりも的確なコメントをく...
<<はじめから読む!<(2)「ねぇ、また来てるよ、あの人」「ちょっとガリガリっていうか病的だけど、イケメンだよね」「え~、ああいうのがいいんじゃな~い?」 ナッツを皿に開けていると、女たちの声が耳に入った。最後だけどう聞いても男の声だったけ...
<<はじめから読む!「適当に、命令してもらえるか?」 シャワーも浴びずに、桃治は切り出した。 別にプレイ=セックスじゃない。命令をする。それを受け入れ実行する。 中身は何だっていいのだ。エロに直結することだけじゃない。例えば「三回回ってワン...
(どうしてこうなった……) 目の前でとろけた笑みを浮かべる男は、恋人関係ではない。彼の健康のためにパートナーになっただけだった。自分の抱く想いは別として、名目上は、そういうことになっている。 桃治とうじが他人に説明したとしても、傍から見れば...
毎年恒例、やってきました創作TALK2024。今年は5回目の参加となります。最初の頃は年内にアップできてるのになぁ……各種SNSからいらした方向けに、簡単に自己紹介・公募勢小説書き・BLとライト文芸が多め、読むのはミステリやホラーも・落選作...
年内ラストのイベントに行ってきました~。東京タワーといえば、劇中でも言及される「世界一の電波塔」。悲劇の少年である時弥が見てみたいと切望していた場所でのコラボイベントは感慨深いですね。トンネルトンネルをくぐると、まずは時ちゃんが迎えてくれま...
今年ももうすぐ終わりということで、個人的なベストコスメ2024を発表します。ど素人のベスコスなぞ、あまり参考にはならないかと思いますが、「ほーん」という気持ちで見てもらえると嬉しいです。2024年は全然デパコスを買わなかったので、ほぼほぼぜ...
<<はじめから読む!<(20) 番となったリッカとエドアールを邪魔するものは、もはやなかった。念のために次の発情期を待ち、他のアルファにリッカのフェロモンが感じられないことを確認したうえで、オメガの国への移住をした。 とっくに春が過ぎ、季節...
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<<はじめから読む!<(18)「兄上、ご相談がございます」 兄はリッカが使っている離宮に泊まっていた。リッカの傷はもういいが、薬が馴染み、完全回復するまでに十日ほどかかっていたため、足腰の衰えは否めない。走れるようになるまでは、と兄はエルフ...
先日、ゲゲゲの謎とコラボ中の西武園ゆうえんちに行ってまいりました。いや~、遠かったです!神奈川在住なもので、普段都内に出るときは便利なのですが、埼玉は遠かったです。また、普段通勤ラッシュ時間帯は下り電車に乗っているので、久しぶりに満員電車に...
<<はじめから読む!<(17) 目を覚ました。 ……なぜ? もう二度と目を開け、現世の景色を見ることはないと覚悟して、意識を飛ばしたはずだった。 なのに、目が開いた。リッカの視界にまず映ったのは、ここにはいるはずのないひとだった。「リッカ!...
<<はじめから読む!<(16) 後宮入りに応じる代わりに、リッカはいくつか要求を突きつけていた。 エルフ国内にいる他のオメガたちの自由を保障すること。オメガの国への進軍を絶対にしないこと。アンジュの怪我の慰謝料を支払い、彼を国元へ帰すこと…...
<<はじめから読む! <(15) 自室に閉じこもったリッカを、エドアールはすぐに追いかけてきた。 鍵をかけていても、騎士団長の馬鹿力をもってすれば、強引に入室することもできる。実際、彼はガチャガチャと扉を開けようと頑張っていたが、「来な
<<はじめから読む! <(14) アンジュの宿下がりが終わってから、エドアールに彼の置かれている状況を説明すると、「どうして兄上は」と、呆然としていた。 王の血に人一倍こだわっているのは兄王であり、そこに追従するのがベルジャン。クロード
<<はじめから読む! <(13) 冬の寒さが厳しくなってきた。故郷では珍しかった雪も、こう毎日降ると、ありがたみが薄れてくる。 「さあ、お茶が入ったよ」 久しぶりに、離宮には活気が満ちていた。アンジュが王城から離宮に宿下がりするに当たっ
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<<はじめから読む! <(11) リッカは、父のことを知らない。兄弟の元には、折りに触れ、贈り物や手紙が来ていたが、自分宛のものはなかった。 その理由を、母は教えてくれなかったが、幼いながらにリッカは、悟っていた。 きっと僕のお父様は
<<はじめから読む! <(10) 背中の古傷が、疼く。 それは寒さのせいだけじゃないと、リッカは気づいている。 あの日触れた指先と、もしかしたら唇が、今もなお、這っているような気がして、じわじわと熱を孕んでいる。 気を抜くと、「傷物
<<はじめから読む! <(9) 「陛下はアンジュ殿の輿入れを望んでいらっしゃる」 とうとう来たか。 リッカは一度目を閉じて、心中の嵐を落ち着かせてから、「かしこまりました」と言った。本当は、血反吐を吐いてでも抵抗したいところである。
「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」シネマコンサート@オーチャードホール 11/10マチネ
念願のゲ謎シネコンに行ってまいりました!8月にやったときは、マジでチケット取れなくて恨み節をたくさん呟いていたし、半泣きになりながら一般発売で戦ったのを覚えております……。 グッズ シネコン数日前、bluesky(最近はtwitterではな
<<はじめから読む! <(8) 番う寸前のカップルがちらほらと現れてきたのを見て、リッカはあと少しで自分の役目も終わると、大きく背伸びをした。 問題があるとすれば、シャルル国王の件だ。 やはり王の番となると、アンジュしかいなかった。何
<<はじめから読む! <(7) エルフの国の生活は、順調だった。 リッカはエルフ族の面々と顔を合わせた。身分の上下関係なく、彼らのうちアルファ因子を持つ者を記録していった。 いきなり番わせるわけにはいかない。相性のよさ、互いの感情を積
<<はじめから読む! <(6) エルフという生き物の優雅さ、美しさとは対照的に、彼らの家は、どこか朴訥としていた。それは王城であっても同様で、森の民ではないリッカも、なぜか懐かしさを感じた。 自然との調和が、エルフの求める最良の生き方な
<<はじめから読む! <(5) 結局、キルシュとランが正気を取り戻した状態で出てきたのは、三日後であった。 ランの首筋には、何度も執拗に噛んだ傷痕が残っていた。食事の差し入れやらなんやらで、何かと目をかけていたアンジュが「おめでとう」と
<<はじめから読む! <(4) 二週間の旅路のうち、半分ほどまでは何事もなく過ぎていった。 周期に当たっていなくても、環境の変化によって発情期がずれる可能性がある。リッカも含め、エルフの国に向かうオメガは全員、抑制剤を一日一回、服用して
<<はじめから読む! <(3) 旅の支度はすぐに終わった。基本的に、大きな荷物は必要ない。行ったら行きっぱなしの旅だ。 相性の合うアルファ候補がいなければ、ともに行く少年たちは帰ってくることもあろう。あるいは番となっても、エルフの国にな
<<はじめから読む! <(2) 「失礼します」 エルフの一団は、基本的には都の高級宿に宿泊している。例外はエドアールで、王族の彼だけは、王宮の客間に泊まっていた。 用意していた小さな会議室には、今回派遣されてきた騎士団の団長であるエドア
<<はじめから読む! <(1) エルフの国へ行くのは、リッカの他に七人の年若い、番のいないオメガたちと決まった。 十四から十六の、妊娠・出産に適した年齢の少年たちには、リッカが直接告げに行った。 家族で暮らしている者もいれば、国の援助
<<はじめから読む! 古来から、他国の貴賓が訪れたときには、舞踏会を開くのがマナーらしい。 エルフの国より書状が届いたときから、オメガの国の王、リッカの母親でもあるミオは、城を挙げて準備を進めさせた。 何せ相手は、あのエルフだ。 こ
燭台の心許ない灯りが照らす部屋は、薄暗い。 まるで自分の行く末を案じしているみたいじゃないか。リッカはそう思う。 ベッドの横につけた椅子に座り、母と目線を合わせる。彼の顔はげっそりと頬が痩け、青白かった。ウェーブを描き背を落ちる赤い毛は
「UFOとか、興味はない?」 肩をツンツンされながら話しかけられた。人違いだと思いたかった。意味がわからずに、たっぷり三十秒は沈黙し、大地だいちは男の顔をまじまじと見つめてしまう。 鑑賞に堪える顔なのが、いっそうっとうしい。ぴかぴか光る
<<はじめから読む! <(22) 二〇二四年、十二月。 学生時代はそうでもなかったが、社会人になってから、「師走」という言葉に現実味を感じるようになっていた。一年があっという間に過ぎていく。 望美は二十五歳になった。なってしまった。兄
<<はじめから読む! <(21) 二学期の終業式。 ミッションスクール独自の行事として、クリスマスミサが行われる。近くの教会の神父を呼び、クリスチャンの生徒や教師が聖体を拝領する、本格的なものだ。 とはいえ、学校の生徒のほとんどが信仰
<<はじめから読む! <(20) 生徒が使う部屋と、広さは大差なかった。違うのは物の少なさで、本棚には聖書やカトリックに関する本が並んでいるだけだった。 「吉村さん」 立ち上がって出迎えてくれた鏡花は、入室したのが望美だと知ると、ホッと
<<はじめから読む! <(19) MIRAと鏡花が同一人物であるという疑惑を抱いて以降、望美は鏡花のことを徹底して避けた。菜々を助けるべく、相談して動かなければならないのに、一切言葉を交わしていない。 彼女の方は、何かを話したそうにこち
<<はじめから読む! <(18) その日以降、菜々は帰ってこなかった。 寮母にも生徒指導の教師にも聞きづらく、望美が彼女の処遇を尋ねたのは、鏡花だった。彼女は自分の味方だ。菜々ともよく話をしていて、仲がいい。 鏡花は菜々がタバコを持っ
<<はじめから読む! <(17) MIRAの痕跡を追うも、実像が見えてこないまま、十二月半ばになろうとしていた。 期末テストの季節である。 一度取った特待生は、目に余る素行不良や法律に反する行動を行わない限り、たとえ学年順位が下がった
<<はじめから読む! <(16) 帰寮してすぐ、MIRAの捜索を始めた。 彼女は兄が自殺する少し前に、歌い手の活動を休止している。理由については言及がなく、更新が途絶えているSNSには、活動を無期限休止すること、動画は削除しないことを端
<<はじめから読む! <(15) 在宅している期間が、めっきり短くなった母を、とうとう施設に入れる。 そして、祖父母は別の土地に引っ越しをするのだという。母の身持ちの悪さで、あれこれと噂をされる生活とも、これでおさらばというわけだ。
<<はじめから読む! <(14) 翌朝、鏡花に伴われて、元々の宿泊先であるホテルへと帰った。 修道院は静かで、自分の愚かな行いを嫌というほど反省した。眠れないと思ったが、実際はよく眠れて、鏡で見た顔はまだ腫れていたが、晴れ晴れとしていた
<<はじめから読む! <(13) 「ええ、そうです。はい。今日は私のところで面倒を見ますので。明日の朝、ホテルまで送ります」 鏡花が電話でやりとりをしているのは、担任教師だ。 東京に研修に来た彼女が宿泊しているのは、もちろん修道院である
<<はじめから読む! <(12) 道中の食事や買い物は、すべて誠が奢ってくれた。 せめて喫茶店での飲食代くらいは自分の小遣いから出すと申し出たのだが、彼は望美が、将来のためにアルバイトに励んでいることを知っている。 「ここは俺に甘えなさ
<<はじめから読む! <(11) 誠はわざわざ有休を取り、車で来てくれていた。 地元より気温が高いとはいえ、東京の風は強く、十一月のオープンカーは寒い。 誠はきちんと心得ていて、車の中にはふかふかのブランケットを積み込み、望美のために
<<はじめから読む! <(10) 出発当日、なぜか空港に鏡花がいた。 尋ねる相手がおらず、愛理に聞いてみれば、 「スール和泉も、たまたま研修で東京に行くんだって」 とのこと。修学旅行の一団は、そのまま飛行機を乗り継いで広島へと向かうか
<<はじめから読む! <(9) いよいよ修学旅行二日前。望美は実家から持ってきたスーツケースに荷造りをしていた。 公立高校だと、旅行中は私服のため、荷物も多くなりがちだが、望美たちの学校は、外にいるときも学園生らしく節度を持った行動を取る
<<はじめから読む! <(8) 『もうすぐ修学旅行だっけ?』 そんな言葉が誠から送られてきたのは、出発の十日前のことだった。 他愛のないやりとりは、普段は望美の健康を気遣う言葉が多く、学校行事に言及することはなかった。 興味もないだろ
<<はじめから読む! <(7) 文化祭も終わり、残すところ大きな行事は、修学旅行だった。 月一の実家詣での際に、望美は祖母に、「来月は修学旅行で東京へ行きます」と告げた。あまり顔を見ずに済むように、食事の下ごしらえをしながらである。
<<はじめから読む! <(6) 文化祭も二日目。 同じクラスの有志によるダンスステージは盛況のうちに幕を下ろし、たこ焼きの売れ行きも好調だった。 「クラスTシャツに校則通りの丈のスカートだと、なんか合わないよね」 朝イチで愛理が、そん
<<はじめから読む! <(5) 鏡花に対して講釈をたれるという、後ろ向きで陰湿な読書ははかどらない。 「全然進んでないじゃん」 机に向かって船をこいでいたら、菜々が文庫を覗き込んで爆笑した。 びくん、と肩が跳ねる。完全に眠気が去った。
<<はじめから読む! <(4) 「ねぇ、ちょっとは手伝ってくれてもよくない!?」 大声に、望美は内心で、「またか」と呆れた。かといって、立場上、放っておくわけにはいかない。本格的な喧嘩に発展する前に、騒ぎの中心人物に近づいた。 「どうした
<<はじめから読む! <(3) 「ありがとうございましたー」 十八時が近づいてくると、そわそわする。 退勤時間直前に、おかしな客に当たりませんように。 願いながら、ホットスナックの補充をする。 この時間帯は、部活終わりの学生や塾通いの
<<はじめから読む! <(2) 『九九年七の月に、人類は滅亡するってみんなが言ってたのよ。なのに滅亡しなかったんだもの。参るわぁ』 小学校に上がったとき、母は望美に聞かせるように、独り言を言った。 最初、自分に話しかけられていると思わな
<<はじめから読む! <(2) 『九九年七の月に、人類は滅亡するってみんなが言ってたのよ。なのに滅亡しなかったんだもの。参るわぁ』 小学校に上がったとき、母は望美に聞かせるように、独り言を言った。 最初、自分に話しかけられていると思わな
<<はじめから読む! 「いらっしゃいませー」 自動ドアが開くタイミングは、メロディが教えてくれる。それに合わせて挨拶をする。ちら、と窺って、それが同じ学校の生徒ではないことを確認した。 アルバイトは原則禁止だ。原則ということは例外もある
八月半ばの体育館は、いくら北海道とはいえ、暑苦しい。 休暇中はTシャツにショートパンツ、風通しのいい格好だったから、余計に。下着だって、パット付きのタンクトップ一枚で過ごしていたから、ワイヤーの入ったブラジャーが窮屈で仕方がない。 乳房
<<はじめから読む! <(19) 「おおい、ホムラよ。これ、買っていかないか?」 市場を歩いていると、ホムラはよく声をかけられる。 「ええ? ぼったくりじゃないよねえ?」 精霊だったときと違って、ざっくばらん、素のホムラの態度を、ナパー
<<はじめから読む! <(17) 結局、レイニとホムラがゆっくりと話をすることができるようになったのは、戦闘終了から一ヶ月後のことだった。 レイニの父が他の族長たちとともに、帝国との講和を有利に結び、ティリアの族長は処刑され、新たな長が
<<はじめから読む! <(16) 「ホムラ様っ!」 今度こそ完全に目を覚ますと、眼前にレイニの顔が迫っていて、思わず「うわぁ」と声を出した。死にかけていたというのに間抜けなことだ。ホムラはおずおずと起き上がる。 「ホムラ様、そのお姿は……
<<はじめから読む! <(15) 誰かが咳き込む音に、ホムラは目を開けた。 いつの間に夜になっていたのか、辺りは暗い。火の精霊のくせに、術を使って明るくすることすら思い浮かばず、ここはいったいどこだろう、と呆けていた。 レイニを助ける
<<はじめから読む! <(14) 「な、何奴!? てきしゅ、敵襲――ッ!?」 騒がしい人間は、炎で焼いた。あっという間に阿鼻叫喚の地獄になる。 精霊の火は、人間には消せない。水場に向かって転がり落ちるように水を浴びたって、火は皮膚を焼き
<<はじめから読む! <(13) 「これは……」 レイニの声を頼りに、人間界へと渡ってきた。 おそらく、ここからそう離れていないところに彼はいるはずで、そうなると当然、ナパールの領地のどこかという話になる。 木々には矢が打ち込まれ、幹
<<はじめから読む! <(12) 精霊界は常春だが、人間界はそろそろ秋になっただろうか。 確信をもって秋だと言えないのは、ホムラが水鏡を覗くことをやめているせいだった。 漫然と眺めているだけでは、任意の光景を見せるだけの鏡は、見る者が
<<はじめから読む! <(11) 怪我をしたホムラを放っておけないと、レイニはその日、自分の屋敷に帰らなかった。 ふたりきりの庵の中、深く息をつく。肩の力が抜けている様子を見ると、レイニがいかに普段、重責に苦しめられているか想像がついた
<<はじめから読む! <(10) ルルがホムラの正体について明かしたその瞬間から、向けられる視線は厳しいものになった。 まさかそんなはずがない。でも、二番目の水の精霊の髪の毛は淡い青色で、最初の精霊とは全然違う。それに顔立ちも。光り輝く
<<はじめから読む! <(9) ピアナがナパールの村に滞在するようになって、しばらく経つ。 レイニはホムラが彼女と出くわさないように細心の注意を払っているが、それでも時折、顔を合わせることはある。 レイニは何度も拒否しているはずだが、
<<はじめから読む! <(8) 「せいれいさま、あそぼー!」 「今日もお前たちは、朝早くから……」 ホムラは寝ぼけ眼だが、子どもたちは元気いっぱいだった。また母たちに怒られるぞ、と言ったところ、えっへんと胸を張る。 「だいじょうぶ! せい
<<はじめから読む! <(7) 『で? あんた結局、帰ってくるのやめたの?』 ルルは呆れ果てている。滝越しでよかった。直視しなくて済む。 彼女には、人間に利用された恨み辛みをぐちぐち言っていた。 人間に肩入れするからよ、と厳しいことも
<<はじめから読む! <(6) レイニの真摯な態度に癒やされつつも、ホムラの心は戻ってこなかった。人間を愛していたからこそ、その反動も激しかった。 用もないのに村に降りることはやめた。彼らの願いに頷き、聞いてやることをやめた。 もともと
<<はじめから読む! <(5) しばらくの間、ホムラを抱擁していたレイニだったが、やがてゆるゆると身体を離した。 「さあ、汚れを落とさなければ」 努めて明るく言い放つレイニに引かれ、ホムラは庵の中へと向かう。そのまま浴室に連れ込まれた。
<<はじめから読む! <(4) 『精霊様の庵のすぐ近くの崖下。そこにしか咲かない、美しい花があるのです』 若い狩人は、地面に枝で図を描いて、それがどのような植物なのかを熱心に説明した。聖なる小百合と称されていて、採るのは困難だが、手に入れ
<<はじめから読む! <(3) 水の精霊なりすまし作戦は、どうにか上手くいっている。 夏にかけ、雨が多くても少なくても、畑の作物は育たない。ホムラはレイニとともに、実際に農業に携わる人間――主に女たちとよく相談をして、雨を降らせる日や降
<<はじめから読む! <(2) 「だからお願いって。ちょちょいといい感じに雨を降らせてくれたらいいんだからさ」 ホムラの居場所として用意されたのは、神聖な滝壺近くの庵であった。最初にレイニに案内されたとき、なるほど、精霊界との間の障壁が周
<<はじめから読む! 「精霊様! 精霊様がいらっしゃった!」 目を開けたホムラを迎えた第一声は、興奮した男のものだった。 彼が自分を喚んだ御巫みこか。 わくわくと見れば、髭がもうもうと生えた大男だったので、驚いて後ずさった。 精霊が
指先が触れた瞬間、世界は歪んだ。 ホムラは濡れた爪をさっと引っ込めて、波紋が広がりきり、揺らぎが止まるのを待った。 落ち着いてくると、先ほどまで見えていた農夫が再び姿を現す。雑草を取り去り、作物を丹念に世話をする姿は眩しく、ホムラはじ
ゲ謎コラボの映画村に行くために、京都へ行きました。が、あいにくの雨(と体調不良)だったので、来年絶対にリベンジしようと思います。 来年リベンジしたい場所 ①源氏物語ミュージアム 雨じゃなければ、雨でももうちょっと小降りで体調が悪くなければ、
ゲ謎にはまって、久しぶりに遠征を決めました。10年ぶりの太秦映画村・・・・・・ですが、10年前は、キョウリュウジャーのショー&キャストトークショー目当てだったし、ここから猛ダッシュで和歌山のアドベンチャーワールドまで行ってショーのはしごをし
コナンのスタンプラリーをこなしつつも、美味しいものも食べてまいりました~。 羽田空港 ①ラーメン だいたいAIRDOを使うので、第二ターミナルで時間を潰します。ここ数回、「らぁ麺 鶏だし屋」でラーメンを食べている気がする。今回はカレーうどん
劇場版「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」×函館市 スタンプラリー
四泊五日で帰省しました。大きな目的はふたつ。ひとつは父の三回忌。法事の日程は決まっているので、そこに合わせての帰省です。父が亡くなったのも、函館で桜が咲き始めた頃でしたが、今年の春も桜の季節(平年よりもだいぶ早い)に帰省が叶いました。 もう
濃い灰色の雲が、重苦しく立ちこめる朝だった。鶏が鳴いても、太陽が顔を出さない。春とは名ばかりの、肌寒い日。 暖炉に火をつけるかどうか、姑と夫は軽く言い合いをしていた。 数日前、もう暖房は必要ないだろうと結論していたため、夫は火を炊くこと
ゲゲゲの謎コラボカフェ@渋谷モディに行ってきました。予約抽選発表日は、どこもかしこも外れた! の悲鳴が上がっていましたが、 ・ど平日 ・真っ昼間 ・ひとり の条件で第一希望当選したので行ってきました。 一番乗りで並んできました。外からの撮影
五月の連休が明けても、時折肌寒い日がある。名残の桜がひらりと舞い落ちるのを後目に、俺は校門を急ぎ足で一歩踏み出す。 「川崎かわさき、お前、本当に部活やらなくていいのか?」 中学の部活は必修じゃない。転校以来、先生がしつこく誘ってくるのは、
九月の夜。東京と比べて涼しいと見越して長袖を持参したが、必要なかったかもしれない。 店内は冷房が稼働しているにもかかわらず、宴会場の襖を明けた瞬間に、熱気がこちらへと向かってきた。 「今日の主役がようやくお出ましだぞー」 長い大学の夏休
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職業柄、背中にも目がある。「こら、そこ。今持っているものを出しなさい」 できる限り穏やかな声で注意する。まだ振り向かない。こういうのはタイミングが重要だ。 正確な位置はわからないが、ぴりりと教室全体の空気が緊張したのが伝わってくる。 二年生...
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<<はじめから読む!<(10) 扉がしまれば、この空間にはふたりしかいない。桃治と至だけ。真央の存在はないと、高月が保証した。 話し合いをしなければ。 場所を提供してくれた高月の言葉を思い出して、桃治はのろのろと動いた。 でも、何から? 思...
2024年は小説、特に商業BL小説を読むことをサボり倒してしまったことを大反省したBL小説家志望、心を入れ替えました。「月に2冊はBL小説を買って読む」を目標としましたが、読むだけじゃもったいないので、レビューもぼちぼち再開していきますので...
<<はじめから読む!<(9) 心霊相談を兼ねた心理相談所は、周辺地図を見たところ、電車よりも車で行った方が便利そうだった。幸い駐車場もあるようで、姉の家に車を借りに行く。 鈴女そっくりな姉は、「ちょっとやだ。あんたひどい顔よ?」と、眉間に皺...
<<はじめから読む!<(8)「桃治くん、どうしたの?」 店にやってきた時点ですでに飲んでいた鈴女だが、叔父の顔を見て開口一番、はっきりと言った。酔いは一気に覚めた様子で、名前の発音も舌足らずでない。「んあ?」 なんでもねぇけど、と言いかけた...
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<<はじめから読む!<(4) それから普段着をいくつか見繕った。大きな紙袋はかさばり、桃治は至と分けて持ったまま、駅へと向かう。「今日は本当に、ありがとうございました」「いいや。俺も楽しかったから」 自分では着ない系統の店に入り、ああでもな...
<<はじめから読む!<(3) 桃治は人の買い物に付き合うのは、苦にならないタイプだ。こういうのは慣れであり、年の離れた姉に散々振り回され、鍛えられた。 鈴女もよく桃治を誘う。あっちがいいとかこっちがいいとか、彼氏相手よりも的確なコメントをく...
<<はじめから読む!<(2)「ねぇ、また来てるよ、あの人」「ちょっとガリガリっていうか病的だけど、イケメンだよね」「え~、ああいうのがいいんじゃな~い?」 ナッツを皿に開けていると、女たちの声が耳に入った。最後だけどう聞いても男の声だったけ...
<<はじめから読む!「適当に、命令してもらえるか?」 シャワーも浴びずに、桃治は切り出した。 別にプレイ=セックスじゃない。命令をする。それを受け入れ実行する。 中身は何だっていいのだ。エロに直結することだけじゃない。例えば「三回回ってワン...
(どうしてこうなった……) 目の前でとろけた笑みを浮かべる男は、恋人関係ではない。彼の健康のためにパートナーになっただけだった。自分の抱く想いは別として、名目上は、そういうことになっている。 桃治とうじが他人に説明したとしても、傍から見れば...
ゲ謎にはまって、久しぶりに遠征を決めました。10年ぶりの太秦映画村・・・・・・ですが、10年前は、キョウリュウジャーのショー&キャストトークショー目当てだったし、ここから猛ダッシュで和歌山のアドベンチャーワールドまで行ってショーのはしごをし
コナンのスタンプラリーをこなしつつも、美味しいものも食べてまいりました~。 羽田空港 ①ラーメン だいたいAIRDOを使うので、第二ターミナルで時間を潰します。ここ数回、「らぁ麺 鶏だし屋」でラーメンを食べている気がする。今回はカレーうどん
四泊五日で帰省しました。大きな目的はふたつ。ひとつは父の三回忌。法事の日程は決まっているので、そこに合わせての帰省です。父が亡くなったのも、函館で桜が咲き始めた頃でしたが、今年の春も桜の季節(平年よりもだいぶ早い)に帰省が叶いました。 もう
濃い灰色の雲が、重苦しく立ちこめる朝だった。鶏が鳴いても、太陽が顔を出さない。春とは名ばかりの、肌寒い日。 暖炉に火をつけるかどうか、姑と夫は軽く言い合いをしていた。 数日前、もう暖房は必要ないだろうと結論していたため、夫は火を炊くこと
ゲゲゲの謎コラボカフェ@渋谷モディに行ってきました。予約抽選発表日は、どこもかしこも外れた! の悲鳴が上がっていましたが、 ・ど平日 ・真っ昼間 ・ひとり の条件で第一希望当選したので行ってきました。 一番乗りで並んできました。外からの撮影
五月の連休が明けても、時折肌寒い日がある。名残の桜がひらりと舞い落ちるのを後目に、俺は校門を急ぎ足で一歩踏み出す。 「川崎かわさき、お前、本当に部活やらなくていいのか?」 中学の部活は必修じゃない。転校以来、先生がしつこく誘ってくるのは、
九月の夜。東京と比べて涼しいと見越して長袖を持参したが、必要なかったかもしれない。 店内は冷房が稼働しているにもかかわらず、宴会場の襖を明けた瞬間に、熱気がこちらへと向かってきた。 「今日の主役がようやくお出ましだぞー」 長い大学の夏休
ゲ謎応援上映@チネチッタに行ってきました~。 川崎は3つでかい映画館があるのですが、利用頻度でいうと、 109>チネチッタ>>>>>TOHOシネマズ って感じ。でも同じ映画を複数回通ったというと、断然チネチッタ。なぜならば、 「ウルトラマン
今年もやって参りました、創作TALKのお時間です。昨年までの記事は↓です。 twitter(死んでもtwitterと言う)のリンクなどから飛んできた方向けの自己紹介。 ・プロの小説家になりたくてもがいて早○年・主な投稿先はBLとライト文芸系
<<はじめから読む! <【25】 「レイ。これはここにやっていいのか?」 「あ、えーと。それはサム爺に……サム爺! これってどうするの?」 ある秋の日、レイナールはジョシュアとともに、庭に出ていた。一角を整備してもらい、レイナール専用にし
<<はじめから読む! <【23】 帝国には、過去、白金の王族が送り込まれていた。レイナールは、帝国にもヴァイスブルムの伝承が残っていることに賭け、皇帝に手紙を送った。 帝国の歴史について、遠く離れたヴァイスブルム出身のレイナールが知るこ
秋といいつつ、10月~12月の3か月に読んだ本です。 図書館で集中して書き、本を借りて帰ってくるサイクルはやはりいいですね。 「獣神様とは番えない~アルファの溺愛花嫁さま~」(村崎樹) 我らがたつるん先生の獣人モノオメガバース。 運命の番っ
<<はじめから読む! <【22】 冬の風が吹く。首筋がひやっとして、レイナールはぶるぶると身体を震わせた。短く切りそろえた白金の髪は防寒には頼りなく、カールが差し出したストールを、ぐるぐると巻きつけた。 「まだいらっしゃいませんよ。家の中
<<はじめから読む! <【21】 ジョシュアが旅立って、三日経った。 アルバートが手の者をこっそりとつけているので、一行があと二日で国境を抜けるという情報が入ってきていた。本当なら、とっくに隣国に入り、帝国まで続く街道をひた走っている頃
<<はじめから読む! <【20】 ジョシュアが旅に出るまでの日々、レイナールは彼と睦み合った。言葉を交わせば、「行かないで」「ひとりにしないで」と縋りついてみっともなく泣いてしまいそうだった。 肉体の交わりは、レイナールから意味ある言葉
<<はじめから読む! <【18】 「十日後、ここを立つ」 疲れた顔のジョシュアが、重々しく告げたのは、年が明けてすぐのことだった。 新年の祝いもほとんどせず、周囲の貴族の挨拶も断っていた。軍閥貴族と言われる家系は、ジョシュアの置かれた立
<<はじめから読む! <【17】 以降、何度もジョシュアはレイナールの部屋を訪れ、話し合いをしようとしたけれど、応じる気になれなかった。アルバートが来たときには、さすがに扉を開けたけれど、ただそれだけ。彼の話を聞いても、聞き入れようとは一
産みの親と育ての親が違うのは、まれによくある。 積極的には言わないけれど、親密になるにつれて、打ち明け話をするようになる。一般家庭の子には同情され、腫れ物扱いされる場合もあるけれど、「実は……」と、お互いの秘密を共有する友人もいた。 人