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<<はじめから読む! <(19) 「おおい、ホムラよ。これ、買っていかないか?」 市場を歩いていると、ホムラはよく声をかけられる。 「ええ? ぼったくりじゃないよねえ?」 精霊だったときと違って、ざっくばらん、素のホムラの態度を、ナパー
<<はじめから読む! <(17) 結局、レイニとホムラがゆっくりと話をすることができるようになったのは、戦闘終了から一ヶ月後のことだった。 レイニの父が他の族長たちとともに、帝国との講和を有利に結び、ティリアの族長は処刑され、新たな長が
<<はじめから読む! <(16) 「ホムラ様っ!」 今度こそ完全に目を覚ますと、眼前にレイニの顔が迫っていて、思わず「うわぁ」と声を出した。死にかけていたというのに間抜けなことだ。ホムラはおずおずと起き上がる。 「ホムラ様、そのお姿は……
<<はじめから読む! <(15) 誰かが咳き込む音に、ホムラは目を開けた。 いつの間に夜になっていたのか、辺りは暗い。火の精霊のくせに、術を使って明るくすることすら思い浮かばず、ここはいったいどこだろう、と呆けていた。 レイニを助ける
<<はじめから読む! <(14) 「な、何奴!? てきしゅ、敵襲――ッ!?」 騒がしい人間は、炎で焼いた。あっという間に阿鼻叫喚の地獄になる。 精霊の火は、人間には消せない。水場に向かって転がり落ちるように水を浴びたって、火は皮膚を焼き
<<はじめから読む! <(13) 「これは……」 レイニの声を頼りに、人間界へと渡ってきた。 おそらく、ここからそう離れていないところに彼はいるはずで、そうなると当然、ナパールの領地のどこかという話になる。 木々には矢が打ち込まれ、幹
<<はじめから読む! <(12) 精霊界は常春だが、人間界はそろそろ秋になっただろうか。 確信をもって秋だと言えないのは、ホムラが水鏡を覗くことをやめているせいだった。 漫然と眺めているだけでは、任意の光景を見せるだけの鏡は、見る者が
<<はじめから読む! <(11) 怪我をしたホムラを放っておけないと、レイニはその日、自分の屋敷に帰らなかった。 ふたりきりの庵の中、深く息をつく。肩の力が抜けている様子を見ると、レイニがいかに普段、重責に苦しめられているか想像がついた
<<はじめから読む! <(10) ルルがホムラの正体について明かしたその瞬間から、向けられる視線は厳しいものになった。 まさかそんなはずがない。でも、二番目の水の精霊の髪の毛は淡い青色で、最初の精霊とは全然違う。それに顔立ちも。光り輝く
<<はじめから読む! <(9) ピアナがナパールの村に滞在するようになって、しばらく経つ。 レイニはホムラが彼女と出くわさないように細心の注意を払っているが、それでも時折、顔を合わせることはある。 レイニは何度も拒否しているはずだが、
<<はじめから読む! <(8) 「せいれいさま、あそぼー!」 「今日もお前たちは、朝早くから……」 ホムラは寝ぼけ眼だが、子どもたちは元気いっぱいだった。また母たちに怒られるぞ、と言ったところ、えっへんと胸を張る。 「だいじょうぶ! せい
<<はじめから読む! <(7) 『で? あんた結局、帰ってくるのやめたの?』 ルルは呆れ果てている。滝越しでよかった。直視しなくて済む。 彼女には、人間に利用された恨み辛みをぐちぐち言っていた。 人間に肩入れするからよ、と厳しいことも
<<はじめから読む! <(6) レイニの真摯な態度に癒やされつつも、ホムラの心は戻ってこなかった。人間を愛していたからこそ、その反動も激しかった。 用もないのに村に降りることはやめた。彼らの願いに頷き、聞いてやることをやめた。 もともと
<<はじめから読む! <(5) しばらくの間、ホムラを抱擁していたレイニだったが、やがてゆるゆると身体を離した。 「さあ、汚れを落とさなければ」 努めて明るく言い放つレイニに引かれ、ホムラは庵の中へと向かう。そのまま浴室に連れ込まれた。
<<はじめから読む! <(4) 『精霊様の庵のすぐ近くの崖下。そこにしか咲かない、美しい花があるのです』 若い狩人は、地面に枝で図を描いて、それがどのような植物なのかを熱心に説明した。聖なる小百合と称されていて、採るのは困難だが、手に入れ
<<はじめから読む! <(3) 水の精霊なりすまし作戦は、どうにか上手くいっている。 夏にかけ、雨が多くても少なくても、畑の作物は育たない。ホムラはレイニとともに、実際に農業に携わる人間――主に女たちとよく相談をして、雨を降らせる日や降
<<はじめから読む! <(2) 「だからお願いって。ちょちょいといい感じに雨を降らせてくれたらいいんだからさ」 ホムラの居場所として用意されたのは、神聖な滝壺近くの庵であった。最初にレイニに案内されたとき、なるほど、精霊界との間の障壁が周
<<はじめから読む! 「精霊様! 精霊様がいらっしゃった!」 目を開けたホムラを迎えた第一声は、興奮した男のものだった。 彼が自分を喚んだ御巫みこか。 わくわくと見れば、髭がもうもうと生えた大男だったので、驚いて後ずさった。 精霊が
指先が触れた瞬間、世界は歪んだ。 ホムラは濡れた爪をさっと引っ込めて、波紋が広がりきり、揺らぎが止まるのを待った。 落ち着いてくると、先ほどまで見えていた農夫が再び姿を現す。雑草を取り去り、作物を丹念に世話をする姿は眩しく、ホムラはじ
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<<はじめから読む!<(11)「改めて、鳥飼とりかいつばさです」 名刺と交互に、彼の顔を見た。鳥飼。駒岡じゃなくて。籍を入れない事実婚の関係なのだろうか。 雪人の疑問は、表情にありありと浮かんでいたようで、つばさは笑ってつけ足した。「旧姓は...
<<はじめから読む!<(10) 士狼は次の日も休んだ。「おはよう」 自分以外の同僚たちにかけられる朗らかなあいさつに、雪人は反応を示さず、ただひたすら自分の前にあるパソコンに向き合った。「休み、ありがとう。何か変わったこと、あった?」 話し...
<<はじめから読む!<(9) 本格的な失恋に打ちひしがれても、朝はやってくる。仕事は待ってくれない。たとえ、まともに手をつけられなくても。 どんな顔をして士狼と仕事をすればいいのか、わからなかった。ぐるぐると脳内でこね回した結果、「そういえ...
<<はじめから読む!<(8)「ここか……」 看板を見上げて、スマホの地図を閉じた。 リラクゼーションサロン「セレネ」。士狼が手伝っている店だ。 周辺には、もっと直接的な名称と刺激的なデザインの看板の店舗がある。挿入側の人間を顧客とする風俗店...
<<はじめから読む!<(7)「あ、駒岡先輩……」 出勤中、士狼の後ろ姿を見かけた雪人は、声を上げた。それほど距離が離れていない。これまでならば、彼はすぐに気づいて、「おはよう」と並んで歩いてくれた。営業部エースの雑談力を遺憾なく発揮して、会...
<<はじめから読む!<(6) それから二ヶ月が経過しても、ふたりの関係は変わらなかった。変えられなかったのは、雪人自身の性格の問題である。 職場では雪人をフォローし、週末は食事に行く。発情期で店に予約を入れれば、必ず士狼が来てくれた。 数度...
「なんで美術部は、男が入らんのかね」 本人も美大出身の男である顧問の先生は、美術室の鍵を手渡しつつ、ぼやいた。「さあ、なんででしょう」 とぼけるけれど、理由は明白。見学に来た男子たちを放っておいて、女子だけで固まって、ひそひそと話をし続けて...
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<<はじめから読む!<(4) 金曜日の会社終わりに、約束どおり一緒に食事に行った。 半個室になっている店は落ち着いた雰囲気で、居酒屋といえば学生時代に行ったチェーン店しか知らない雪人は、物珍しくきょろきょろと見渡した。 そわそわするのは、オ...
<<はじめから読む!<(3) ヒート明けの出勤日。 毎月恒例の課長や同僚たちからのからかいも気にならないほど、雪人はぼんやりしていた。 あの日、家にやってきた士狼とセックスした。前後不覚になるほど貫かれ、揺さぶられ、とにかく満たされた。 そ...
<<はじめから読む!<(2) 休暇初日、雪人はひとり暮らしのアパートで、緊張しながら来客を待っていた。 ヒート中の過ごし方は、人によってまちまちだ。軽度のオメガは、ひたすら部屋にこもってやり過ごすが、たいていは誰か相手を見繕って、性交に耽る...
<はじめから読む! ペーパーレスがどうのこうの、ビジネスニュースでは有識者が議論しているが、雪人ゆきとの務める会社には無縁の言葉であった。 毎月の申請をオンライン上でできるようにして、人事が直接決済してくれたらいいのに。普通の有休だって、そ...
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「……新入生代表――」 高校一年、入学式の主役といっても、それは入試の成績が一番で、挨拶を任された子だけだ。 自分で考えたのではないだろう(ついこの間まで同じ中学生だったのだから、「ごべんたつ」なんて言葉、人生で初めて使ったに違いない)、誰...
職業柄、背中にも目がある。「こら、そこ。今持っているものを出しなさい」 できる限り穏やかな声で注意する。まだ振り向かない。こういうのはタイミングが重要だ。 正確な位置はわからないが、ぴりりと教室全体の空気が緊張したのが伝わってくる。 二年生...
1月のBL小説は、現代モノ2冊でした。1冊目のレビューはこちら現代モノとひとくくりにしても、昨今はオメガバースやDom/Subユニバースなどが流行っているので、純粋な現代モノってなかなか探せないのですが(特に新人作家さん)、キャラ文庫はやっ...
<<はじめから読む!<(13) 千秋楽を終えたばかりの楽屋は、冷めやらぬ熱気に包まれている。そこかしこで労いの抱擁が交わされていた。「桃治さん」 桃治も、年下の先輩劇団員に求められ、まずはぎゅっと手を握り合ったのち、互いの背中にひしと腕を回...
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<<はじめから読む!<(11) 控えめなノックの音がしたのは、至がある程度泣き止んでからだった。秘密の話をするわけだから、防音はしっかりしているだろうに、高月の空気を読む能力が高すぎる。 抱き合っていた身体を名残惜しく離してから、部屋の主を...
ゲ謎コラボの映画村に行くために、京都へ行きました。が、あいにくの雨(と体調不良)だったので、来年絶対にリベンジしようと思います。 来年リベンジしたい場所 ①源氏物語ミュージアム 雨じゃなければ、雨でももうちょっと小降りで体調が悪くなければ、
ゲ謎にはまって、久しぶりに遠征を決めました。10年ぶりの太秦映画村・・・・・・ですが、10年前は、キョウリュウジャーのショー&キャストトークショー目当てだったし、ここから猛ダッシュで和歌山のアドベンチャーワールドまで行ってショーのはしごをし
コナンのスタンプラリーをこなしつつも、美味しいものも食べてまいりました~。 羽田空港 ①ラーメン だいたいAIRDOを使うので、第二ターミナルで時間を潰します。ここ数回、「らぁ麺 鶏だし屋」でラーメンを食べている気がする。今回はカレーうどん
四泊五日で帰省しました。大きな目的はふたつ。ひとつは父の三回忌。法事の日程は決まっているので、そこに合わせての帰省です。父が亡くなったのも、函館で桜が咲き始めた頃でしたが、今年の春も桜の季節(平年よりもだいぶ早い)に帰省が叶いました。 もう
濃い灰色の雲が、重苦しく立ちこめる朝だった。鶏が鳴いても、太陽が顔を出さない。春とは名ばかりの、肌寒い日。 暖炉に火をつけるかどうか、姑と夫は軽く言い合いをしていた。 数日前、もう暖房は必要ないだろうと結論していたため、夫は火を炊くこと
ゲゲゲの謎コラボカフェ@渋谷モディに行ってきました。予約抽選発表日は、どこもかしこも外れた! の悲鳴が上がっていましたが、 ・ど平日 ・真っ昼間 ・ひとり の条件で第一希望当選したので行ってきました。 一番乗りで並んできました。外からの撮影
五月の連休が明けても、時折肌寒い日がある。名残の桜がひらりと舞い落ちるのを後目に、俺は校門を急ぎ足で一歩踏み出す。 「川崎かわさき、お前、本当に部活やらなくていいのか?」 中学の部活は必修じゃない。転校以来、先生がしつこく誘ってくるのは、
九月の夜。東京と比べて涼しいと見越して長袖を持参したが、必要なかったかもしれない。 店内は冷房が稼働しているにもかかわらず、宴会場の襖を明けた瞬間に、熱気がこちらへと向かってきた。 「今日の主役がようやくお出ましだぞー」 長い大学の夏休
ゲ謎応援上映@チネチッタに行ってきました~。 川崎は3つでかい映画館があるのですが、利用頻度でいうと、 109>チネチッタ>>>>>TOHOシネマズ って感じ。でも同じ映画を複数回通ったというと、断然チネチッタ。なぜならば、 「ウルトラマン
今年もやって参りました、創作TALKのお時間です。昨年までの記事は↓です。 twitter(死んでもtwitterと言う)のリンクなどから飛んできた方向けの自己紹介。 ・プロの小説家になりたくてもがいて早○年・主な投稿先はBLとライト文芸系