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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『石灰工場』トーマス・ベルンハルト|構成されていない小説、難解なのに読み進めるのは速い

    『石灰工場』トーマス・ベルンハルト 飯島雄太郎/訳 河出書房新社 2025.04.14読了 少し前に、東京・目黒にある東京都庭園美術館を訪れた。展示されていたのは戦後西ドイツのグラフィックデザインである。作品からドイツ人の几帳面さ、丁寧さを改めて感じ、そういえば最近ドイツ文学を読んでいないなと思いこの作品を読むことにしたのだ。とはいえ、ベルンハルトはドイツ語圏の作家だが実はオーストリア人だったのを解説を読んで思い出した…。トーマス・ベルンハルトの作品は『凍(いて)』しか読んでいない。当時オーストリア作家と認識していたようなのに知識がちゃんと更新されていなかった。まぁ、言語が同じなので、オースト…

  • 『二重葉脈』松本清張|途方もない地道な捜査

    『二重葉脈』松本清張 KADOKAWA[角川文庫] 2025.04.12読了 まるでスティーヴン・キングを思わせるような表紙のイラスト。車のイラストが表紙になることは結構多い気がする(カッコいいもんな)。この作品は、過去に読売新聞に連載された小説である。清張作品にしては珍しく映像化されていないらしい。だからかもしれないけど、長編にも関わらず今回の復刊がなければ全く知らなかった。 イコマ電器が破産し会社更生法を申請したため第一回債権者会議が行われる。そんな場面から物語は始まる。イコマ電器では何年も前から粉飾決算が行われていた。それに加えて社長の生駒が横領したのではないかと噂されている。 生駒は説…

  • 『春のこわいもの』川上未映子|得体の知れないいや~なものが春にもあるのよ

    『春のこわいもの』川上未映子 新潮社[新潮文庫] 2025.04.09読了 去年の春先に、村上春樹さんと川上未映子さんの朗読イベントに行った。敬愛するお2人に生で会えて感動したなぁ。その時川上さんが朗読してくださったのが、この短編集の最初にある『青かける青』だ。今でも川上さんの声と語りが耳にこだまして、あの時の静謐な空気感がまざまざと蘇る。今回は文章を目で追って読んだけれど(厳密には再読とは呼ばないのかな?)、耳で聴いたよりもぞくぞくとした怖さがあった。 圧倒的なインフルエンサーであるモエシャンの面接を受けに行き、側近チャンリイにこき下ろされる『あなたの鼻がもう少し高ければ』では、ルッキズムと…

  • 『彼女を見守る』ジャン=バティスト・アンドレア|圧巻のストーリーテリング、圧倒的な美しさに酔いしれる

    『彼女を見守る』ジャン=バティスト・アンドレア 澤田直/訳 ★★ 早川書房 2025.04.08読了 フランス最高峰の文学賞であるゴングール賞を受賞、また日本でも「日本の学生が選ぶゴングール賞」なるものを受賞している。もうもう、紛れもない傑作だった。現代フランス文学の力をまざまざと見せつけられた。 石工見習いのミモ(本名はミケランジェロ・ ヴィタリアーニ だが、巨匠と同じ呼び方を嫌い本人はミモと呼ばせる)は、親元を離れイタリア・トスカーナ地方の街ピエトロ・ダルバで生活をする。そこには、この地を治めるオルシーニ家の令嬢で空を飛ぶことを夢見る頭脳明晰な少女ヴィオラがいた。2人は全く共通点のない世界…

  • 『河を渡って木立の中へ』アーネスト・ヘミングウェイ|キャントウェル大佐を通してヘミングウェイを知る

    『河を渡って木立の中へ』アーネスト・ヘミングウェイ 高見浩/訳 新潮社[新潮文庫] 2025.04.04読了 何気なく本の表紙をめくってヘミングウェイの経歴を見ていたら、最後の文章を読んで愕然とする。彼が猟銃で自死したということを知らなかった。普通の銃ではなく猟銃なのは、子供の頃から父親から狩を教わりアウトドアに親しみ、猟銃が馴染みのあるものだったからかもしれない。この作品でも主人公のキャントウェル大佐が鴨狩をするシーンから始まる。 戦争を経験した50歳のキャントウェル大佐は、イタリア・ヴェネツィアの地で19歳の恋人レナータと愛をささやきあう。 「私のこと好き?」 「愛しているよ」 このような…

  • 『遠慮深いうたた寝』小川洋子|文章を光らせたのは作家ではなくあなた自身

    『遠慮深いうたた寝』小川洋子 河出書房新社[河出文庫] 2025.04.02読了 タイトルの「遠慮深い」をてっきり「思慮深い」だと勘違いしていた。全く異なる意味なのに、漢字が似ているだけで思い込みがひどい…。確かにうたた寝に「思慮深い」なんてないよな、と思いながらも、思慮深いあまり遠慮深くなり、ぼうっとしてついにはうたた寝をしてしまったのでは…と無謀な解釈をしている自分がいる。 本の半分ほどを占める『遠慮深いうたた寝』とタイトルがつけられた章は、わずか2〜3頁の短めのエッセイがたくさん載せられている。これは2012年から2021年まで神戸新聞に連載された中から選りすぐったものが収められている。…

  • 『半生の絆』張愛玲|深く愛し合うその先にあるもの

    『半生の絆』張愛玲(ちょうあいれい) 濱田麻矢/訳 ★★ 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2025.03.31読了 色々な国の本を読みたいと思っているので、中国人作家の本もたまに読む。郝景芳(ハオ・ジンファン)さんや余華(ユイ・ホア)さんの小説のようにおもしろい本はあっても、思い入れがある作家や作品に出逢ってはいない。まだ多くを読んでいないというのもあるが。しかしそんな中でもこの『半生の絆』は傑作だった。著者の張愛玲さんという方は、中国では魯迅と並び称されるほどの文豪らしいが今まで全く知らずにいたとは。 自分が好きだと思う作品はほとんどが読んで数ページで気に入るものだ。冒頭から心奪われ、張愛玲…

  • 『死せる魂』ニコライ・ゴーゴリ|未完の大作と呼ばれるものを読んでしまう

    『死せる魂』上中下 ニコライ・ゴーゴリ 平井肇・横田瑞穂/訳 岩波書店[岩波文庫] 2025.03.28読了 主人公チチコフは、戸籍上では生きていることになっている死んだ農奴を買い集めるという、いささか奇妙なことをしていた。何のためにこんなことをするのだろう、そしてチチコフとは何者なのか。 著者ゴーゴリは作中で「作者(わたし)は万事につけて几帳面なことが非常に好きで、この点では元来ロシア人であるにもかかわらず、ドイツ人のように綿密でありたいと願うのである(上巻31頁)」と言うように、これでもかと言わんばかりに人物描写が細かい。 ロシアのことを風刺を交えて悪く書いているのだけど、ところどころでゴ…

  • 『沈むフランシス』松家仁之|文体に目と心を奪われる

    『沈むフランシス』松家仁之 新潮社[新潮文庫] 2025.03.23読了 松家仁之さんの作品に魅了されたのは今年2月に『火山のふもとで』を読んでから。だからつい最近のこと。真に満たされる静謐な読書とはこのことだと深い感動を覚えた。だから、3ヶ月連続で松家さんの作品が新潮社から刊行されると知って心躍らされた。これは第二弾となる作品である。 ストーリーは至ってシンプルでゆるやかに時間が流れる。東京の大きな会社を辞めて、北海道の村に移り住み郵便配達員として働く撫養桂子(むようけいこ)は、川のほとりの家屋に住む寺富野和彦(てらとみのかずひこ)と、郵便物を通して知り合い急速に惹かれ合う。雄大な自然の中で…

  • 『灼熱』葉真中顕|ブラジル移民社会を力強く生きる

    『灼熱』葉真中顕 ★ 新潮社[新潮文庫] 2025.03.21読了 渡辺淳一文学賞を2022年に受賞した作品である。この賞はたまに目にするけど、集英社と、ある公益財団法人が主催する文学賞だ。調べてみると比較的新しい賞のようで受賞作の半分くらいは読んでいた。この作品は、1940年代のブラジル移民社会について書かれた小説である。 沖縄で産まれ育ち、大阪でも暮らした比嘉勇(ひがいさむ)は、差別を目の当たりにし日本では生きにくさを感じていた。だから叔父夫婦とともにブラジルに移り住むことにしたのだ。労働力のある3人以上の家族でないと移民としてブラジルに行けなかったため、当時は養子縁組をした「構成家族」な…

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