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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『たのしい保育園』滝口悠生|滝口さんの小説は迂遠でそれが心地良い

    『たのしい保育園』滝口悠生 ★ 河出書房新社 2025.05.18読了 またしても滝口悠生さんの書くものの虜になった。久しぶりの新刊で、もちろん読むのを楽しみにしていたけど、やはり最高の読み心地で幸せ。心がぎゅうっとなる優しい物語だ。 ももちゃんが0歳児から3歳を過ぎたくらいまでの保育園に通った記録が、ももちゃんのお父さんを中心にして大人の視点で語られている。あくまでも保育園に通う園児たちが主役だから、保護者たちの名前は固有名詞ではなく「ももちゃんのお父さん」「ももちゃんのお母さん」「ふいちゃんのお父さん」みたいになる。保育園の先生は下の名前で表されている。 ひとつひとつの場面が、子どもたちの…

  • 『夜の道標』芦沢央|心あたたまるミステリー

    『夜の道標(どうひょう)』芦沢央 中央公論新社[中公文庫] 2025.04.16読了 さくさくと読みやすい。ストレスなく自然体で読み進められて「これは多くの人に読まれるだけあるな」と納得した。作品のジャンルからも連想するのか、柚木裕子さんが書くものに近い気がする。ともかく、行間を読むみたいなことがほとんどなくて、全てが文字に表されているから楽だった。ミステリーが読みたいけど、特殊設定や複雑さが全面に出ている小説はキツイなと思っている時には本当にちょうど良い。 父親から当たり屋をやらされている少年・波留(はる)、その友人・桜介(おうすけ)、過去に起きた塾講師殺人事件を追う刑事・平良正太郎、そして…

  • 『横尾忠則2017-2025書評集』横尾忠則|読むと同時に「見る」書評になっている

    『横尾忠則2017-2025書評集』横尾忠則 光文社[光文社新書] 2025.05.14読了 朝日新聞の書評欄に掲載された138冊分の書評がこの新書にまとめられている。書評は月に2回のペース。驚くべきは、書評委員会の場に編集部が選んだ100冊ほどの本がプレゼンテーションされ、そこから書評委員が入札し著者が決まるということ。もちろん読みたい本を自分で選べんで書評を書くとは思っていなかったが、選ばれない本が多くあるということ、プレゼンされて決まるということは知らなかった。 とはいえ、ここに載っている半分ほどは芸術関係の本なので、横尾さんに書いてもらう目的で推薦され選出された本も多いだろう。不染鉄(…

  • 『名探偵と海の悪魔』スチュアート・タートン|途中から読んでしまったのか…?

    『名探偵と海の悪魔』スチュアート・タートン 三角和代/訳 文藝春秋[文春文庫] 2025.05.13読了 この作者の本はずっと前から気になっていた。初めて刊行された『イヴリン嬢は七回殺される』は、多くの文学賞の候補になった著者のデビュー作である。本の装幀も厳かで豪華な感じだったけど、特殊設定ミステリーで読みにくいと言われていたからパスしていたのだ。2作目のこちらから読むことにした。 最初から物語が頭に入ってこない!!もしかして途中から読んでいるんじゃないかとか、シリーズもので続きなのかなと感じてしまうほど、読者が既に物語や登場人物の背景を知っている前提で進むから、焦りが生じてしまい、やっかいさ…

  • 『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』金原ひとみ|「そんなのおかしくない?」が埋もれてしまう

    『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』金原ひとみ ★★ 文藝春秋 2025.05.10読了 語り手が入れ替わりながら、現代社会の闇を吐き出す。最初の章は文芸編集長・木戸悠介から始まるが、もう読み始めてすぐに「これはおもろいんじゃないか」と感じたし実際に今の日本文学では飛び抜けていると思う。小説が好きな人であればそもそもの文芸にまつわる設定というのが心をくすぐられるのだが、それ以上に圧倒的な文体と現代社会に向けた魂の叫びに心を抉られる。 登場する全員に何かしら共感するところがあって、年齢も性別も境遇も立場も全く違うのにどうしてこうもわかりみが強いのかと感じるのは、おそらく自分がこの相手はこんな気…

  • 『族長の秋』ガブリエル・ガルシア=マルケス|孤独な大統領は何を思う

    『族長の秋』ガブリエル・ガルシア=マルケス 鼓直/訳 新潮社[新潮文庫] 2025.05.06読了 美しく細密なペルシア絨毯を思わせる重厚な装幀だ。昨年刊行された『百年の孤独』と対になっているかのよう。でも広告で使われていたハゲタカのイラストのほうが私は好きだったかも。 おもしろく感じる場面は何箇所かあるものの、総じて難解だった。しかし読み進めるうちに抜け出せなくなる魔力があるのは確かだ。眩暈がしそうになるほど美しく詩的な文章。 独裁政治をしていた大統領が自ら語る。または匿名の語り手がめまぐるしく変わり、時間軸も空間軸もバラバラである。6つの章にわかれているが、その始まりはほとんどがハゲタカに…

  • 『墳墓記』髙村薫|日本の古典を現代文学に織り交ぜる

    『墳墓記』髙村薫 新潮社 2025.05.03読了 珍しい色の装幀である。薄い朱色を背景に銀色のタイトルと著者名が大きく光るように見える。こういう装幀を目にすると、作者の名前だけでもう存在感があり、名前だけで売れるという出版社の意気込みが感じられる。 今まで読んだ髙村作品とはちょっと毛色が異なる。曰くありげな事件やドラマティックな展開があるわけではないから、物足りなく感じる人もいるだろう。 かつて法廷速記士だったある老齢の男は、古希を迎えてからは家族や知人との一切の接触を避けていた。死の淵にいる彼は、過去の出来事や昔の出来事を脳内で蘇らせる。夢のような現(うつつ)のような曖昧なものが移ろう。よ…

  • 『方舟』夕木春央|罪も恨みもない仲間を見殺しにできるのか

    『方舟』夕木春央 講談社[講談社文庫] 2025.05.02読了 ようやっと読めた!ソフトカバーの単行本が飛ぶように売れていて一時期はX(旧Twitter)ではこの本の話で持ちきりだった。文庫になっても勢い衰えず、奥付を見るともう第7刷になっている。 誰か1人を生贄にしなければ、この「方舟」から脱出することはできない。極限状態のなか、誰か1人が犠牲にならなければならない。それをどうやって決めるのか。そして、地下3階もあるこの巨大な施設は、一体誰が何のために作り、何がなされていたのか。 大学時代の友人ら7人が興味本位で探してたどり着いた地下組織。そこに、きのこ狩りをしていたら迷い込んでしまった矢…

  • 『光の犬』松家仁之|人が生きることの真摯な営みの物語

    『光の犬』松家仁之 ★ 新潮社[新潮文庫] 2025.04.30読了 新潮社の松家仁之さん作品3か月連続刊行のラスト月。3月(正式には2月末)発売はこの文庫本『光の犬』と単行本『天使を踏むを畏れるところ』である。なんだか勿体無いような気がしてどちらも積んでいたのだが、そろそろ読むことに。 物語世界に入るのに少し時間がかかってしまった。美しく装飾された文章に目眩がしてしまい、何度も読まないと意味がわからなくなるからより一層時間がかかる。なおかつ、誰の視点でいつの時代のことなのかが一見わかりづらい。 しかし徐々にこの添島家の3世代にも渡る家の事情を知り、北海道犬4匹の生きる様と人間らの日常に没入す…

  • 『幽霊たち』ポール・オースター|ブルーは空想し物語る

    『幽霊たち』ポール・オースター 柴田元幸/訳 新潮社[新潮文庫] 2025.04.26読了 ニューヨーク3部作のうち、この作品をまだ読んでおらずずっと引っかかっていた。大作『4321』を読む前に先に読んでしまおう!と意気込む。というか、まだ『4321』を読んでない…苦笑(持ち運べないしなかなか読み始めるのに勇気がいるのだ)。 探偵ブルーは依頼者ホワイトからブラックの見張りを頼まれる。ブラックの家の真向かいに用意されたアパートに住み四六時中見張りをするのだが、何も起こらない。奇妙な依頼に不安が募る。ブルーは、空想をし物語を作る。 オースターお得意の「誰かを探す、それは自分をも探すこと」というテー…

  • 『ロンドン・アイの謎』シヴォーン・ダウド|角度を変えてモノを見る

    『ロンドン・アイの謎』シヴォーン・ダウド 越前敏弥/訳 東京創元社[創元推理文庫] 2025.04.25読了 これは児童文学に分類されているようだ。確かに主人公テッド目線で語られる文章は、ひとつひとつの動作と感情に隙がなく淡々と易しい。しかし大人が読んでも充分に楽しめる。何よりもシンプルなストーリー、少ない登場人物、納得のいく合理的な謎解きのおかげで、なんのストレスもなく読み進められる。 観覧車に乗った人が消えたなんて。密室、そして空中という逃げも隠れもできない状態で行方不明になったテッドの従兄弟・サリムは果たしてどこに行ってしまったのか。テッドは姉のカットとともにこの難事件に挑む。 それにし…

  • 『おそろし 三島屋変調百物語事始』宮部みゆき|良い按配の怪談ファンタジーの始まり始まり

    『おそろし 三島屋変調百物語事始』宮部みゆき KADOKAWA[角川文庫] 2025.04.23読了 小気味よいリズムの語り口は、時代ものといえども大変読みやすい。2ヶ月ほど前に、書店の新刊コーナーに宮部みゆきさんの『猫の刻参り』が積み上げられていた。装幀もオシャレだしパラパラめくってみるとなにやらおもしろそう。あれ、三島屋シリーズって確かKADOKAWAから出版されてなかったっけ。そう、宮部さんがライフワークとして書き続けている怪談シリーズもの。出版社が変わった疑問はさておいて、やはり最初から読むべきなのかな、せめて第1巻だけは読まないとかな、と思い早速この本を読んだ。 ある事情から実家を離…

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