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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『回転木馬のデッド・ヒート』村上春樹|ロマンチックでキザなスケッチの数々

    『回転木馬のデッド・ヒート』村上春樹 講談社[講談社文庫] 2022.4.27読了 無性に村上春樹さんの文章に触れたくなった。読むたびに、他の作品で読んだことがあるような既視感(既読感)に遭遇したり、お得意のコケティシュな女の子がまたまた出てきたなと思う。毎回毎回思う。いつも感じることは一緒なのに、どうしてかふとしたタイミングで無性にあの文体が愛おしくなり、春樹ワールドに自ら入り込みたくなるのだ。 とはいえ、村上さんの本はほぼ全て読んでいる。そろそろ2巡目かなと思っていたら、まだ未読のこの短編集があった。村上さんはこの本に収められた文章を「スケッチ」と言う。小説でもノンフィクションでもないから…

  • 『黒牢城』米澤穂信|大河ミステリー、ここにあり

    『黒牢城』米澤穂信 KADOKAWA 2022.4.25読了 第166回直木賞受賞、他にも4大ミステリランキングを制覇した大作である。米澤穂信さんの作品は数冊読んだことがあるが、そもそも現代モノ専門の作家だと思っていたから、歴史モノを書いたということに驚いていた。最近大河作品から離れていたのでついていけるか心配だったけどなんなく読めた。 織田信長、黒田官兵衛は知っている。もちろん明智光秀も。しかし荒木村重(あらきむらしげ)という人物のことは全く知らなかった。この小説は、村重率いる城「有岡城」を舞台にした歴史小説かつミステリ小説である。 村重が信長に対し謀反を起こし有岡城に籠城した。官兵衛の主君…

  • 『時のかなたの恋人』ジュード・デヴロー|夢見る乙女のためのタイムトラベル・ロマンス

    『時のかなたの恋人』ジュード・デヴロー 久賀美緒/訳 二見書房[二見文庫] 2022.4.23読了 タイムトラベルで恋愛ものって、もうそれだけで甘ったるいんだろうな、昼ドラみたいなのかなと予想していたけれど、読んでみると意外とドロドロした感じはなくサラサラだった。 文体を味わうとか行間を読むといった文学の一つの醍醐味を堪能する感じではなく、ただひたすら文章を読みストーリーを追うという読書になったのだが、物語性が豊かで分厚いのにあっという間に読み終えてしまった。結末がどうなるのかはある程度予想がつきほぼその通りだったのに、ラストにはほっこりとした気持ちになった。 恋人とイギリスに旅行中のダグレス…

  • 『世界地図の下書き』朝井リョウ|身体と心、一番成長する時期にどう生きるか

    『世界地図の下書き』朝井リョウ 集英社[集英社文庫] 2022.4.21読了 久しぶりに朝井リョウさんの小説を読んだ。もしかすると直木賞受賞作『何者』以来かもしれない。私の中で朝井さんは、小説界の「時代の寵児」というイメージだ。 両親を事故で亡くし、児童養護施設「青葉おひさまの家」で過ごす太輔(たいすけ)と、同じ養護施設の子供たちの数年間が描かれている。何らかの理由でここに住む彼らは、目に見えない心の傷を負っている。しかし、ここに登場する彼らは希望に溢れている。 麻利は強くなっている。だからもう、人の嘘だって見抜けるし、自分で嘘だってつける。(128頁) 嘘をつくのが悪いこととは限らない。嘘が…

  • 『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』サマセット・モーム|極上の短編集ここにあり

    『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』サマセット・モーム 金原瑞人/訳 新潮社[新潮文庫] 2022.4.21読了 イギリスの文豪モームさんの小説はどれもおもしろく、なかでも名作『月と六ペンス』『人間の絆』は私にとって大切な作品である。実はまだ短編を読んだことがなかったので、新潮文庫から刊行されている評判の良いこの短編集を読んだ。どの作品も余韻に残る一級品で、短編も素晴らしかった。モーム氏の観察眼に感服し、巧みに表現した人間心理が心を震わせる。そしてストーリーがもう抜群だ。表題作を含めた8作が収録されているが、印象に残った2作を簡単に。 『征服されざる者』 フォローしているミモレさんのツイートを…

  • 『絶望キャラメル』島田雅彦|町おこしのために立ち上がれ

    『絶望キャラメル』島田雅彦 河出書房新社[河出文庫] 2022.4.18読了 軽快な文体の青春コメディといったところだろうか。高校野球の場面が多かったから青春スポーツ小説の印象も強い。島田さんらしく政治要素もふんだんに盛り込まれている。登場するキャラクターが、なんというか結構テキトーであっけらかんとしていて、だから読んでいるこっちも肩肘張らずに楽に読めた。 寂れた地方都市葦原に、伯父の寺の跡継ぎとして江川放念(えがわほうねん)が帰ってきた。放念は、葦原は「絶望」が重く立ち込めていると言う。そこでこの町おこしとして「原石発掘プロジェクト」なるものを思い付く。そこで登場するのが情報通の緑川夢ニ、肩…

  • 『ひとりの双子』ブリット・ベネット|生まれた自分で懸命に生きること|素晴らしい作品

    『ひとりの双子』ブリット・ベネット 友廣純/訳 ★★★ 早川書房 2022.4.17読了 読み始めてすぐに、これは自分の好きなタイプの作品だと感じた。まずストーリーが抜群におもしろい。そして何より登場人物たちの息づかいが真に迫り感情に訴えかけてくる。どのキャラクターもその懸命な生き方に心をえぐられるのだ。特にアーリーとリースの優しさと強さには震える。じっくりゆっくり大事に読んだのだが、最後は読み終えるのが惜しくなってしまった。 マラードという小さな街から双子の姉妹が消えた。父親を亡くした記憶と貧困から、そして自分を変えたいと故郷を捨てたのだ。しかし姉のデジレーは子供を連れて町に戻ってくる。一方…

  • 『運命の絵 もう逃れられない』中野京子|強く印象に残る絵

    『運命の絵 もう逃れられない』中野京子 文藝春秋[文春文庫] 2022.4.13読了 3年近く前に、東京・上野で開催された「コートルード美術館展」を訪れた。まだコロナが始まる前で美術館はどこも混雑しており、本当は近くで開催されていた別の美術展を観に行くつもりが、2時間待ちとのことでしぶしぶながらこちらの美術展にしたのだ。見どころのある展示が多く、期待していなかったこともあってか大満足だった。特に目と心を奪われたのが、展示の目玉であったエドゥアール・マネ作『フォリー・ベルジェールのバー』である。それがこの本の表紙の絵(実際は大型のサイズなのでごく一部)だ。 バーカウンターでお酒を提供する若い美女…

  • 『破船』吉村昭|本屋大賞「発掘部門」隠れた名作

    『破船』吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2022.4.13読了 本屋大賞に「発掘部門」なんていつからあったのだろう?国内小説部門と翻訳海外小説部門しか知らなかった。大賞となった国内小説『同志少女よ、敵を撃て』と海外小説『三十の反撃』はたまたま読み終えていたのだが「発掘部門」なるものの存在を知り、受賞作である吉村昭著『破船』を読んだ。吉村昭さんの小説は7〜8年前に『破獄』を読んで以来だ。 伊作の住む村には、古くから「お船様」という風習(行事)がある。なんだか曰くありげな、もしかしてホラーなのかと疑う。この不気味さは実は終盤までずっと続く。こんな緊張感とぞわぞわした感覚を読者にもたらすとは、それだ…

  • 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ・ウィアー|ユーモアたっぷり、爽快な宇宙SF

    『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上下 アンディ・ウィアー 小野田和子/訳 早川書房 2022.4.11読了 昨年末に刊行されてから話題になり、めちゃくちゃ売れているようで気になっていた。正直、SF作品は得意ではない。それでも単行本上下巻なのに翻訳ものにしては意外と安価で思わず購入してしまった。著者の最初の作品『火星の人』は読んでいないし、映画(映画タイトルは『オデッセイ』)も観ていないけれどなんとかなるだろうと。 ジョン、ポール、ジョージ、リンゴに。 一頁めくるとそこにはこう書かれていた。これってビートルズのメンバーではないのか!?と不思議に思いながら読み進めて行く。そう、途中で解き明かされ…

  • 『ミーツ・ザ・ワールド』金原ひとみ|死にたみ、わかりみ、生きたみ

    『ミーツ・ザ・ワールド』金原ひとみ 集英社 2022.4.9読了 腐女子という言葉はもはや当たり前のように世の中にあり、俗にBLジャンル(男性同士の恋愛)にハマっている女子のことを言う。確かにBL作品は漫画にも小説にも結構増えていて、最近はドラマにもなっている。そんな腐女子の由嘉里と、キャバ嬢ライが出会う場面から始まる。ライは「死にたい」という。死ぬことが持って生まれたギフトなのだと思っている。 死にたい人に出会って初めて、私は生きたい人なのだと知る。(23頁) 死にたいとは思わないけど、生きていく意味もない、ただただ食べて働いて寝てという生活をするだけの日々に疑問を感じる人は多くいると思う。…

  • 『暁の死線』ウイリアム・アイリッシュ|若い2人の推理と行動のプロセスを楽しむ

    『暁の死線』ウイリアム・アイリッシュ 稲葉明雄/訳 東京創元社[創元推理文庫] 2022.4.7読了 先日読んだアイリッシュ著『幻の女』に心を奪われたので、2作目にこの作品を読んでみた。同じくタイムリミットサスペンスと呼ばれており、アイリッシュ氏の代表作のひとつと言われている。 初対面の相手で、趣味があう人、嗜好が合致する人とは話が合い盛り上がる。中でも一番ぴたりと合うのは同郷の人ではないだろうか。住んでいた街が同じ、行きつけの飲食店が同じ、通った学校すら同じであれば自然と相手のことを知ったかのような気持ちになる。ダンサーのブリッキーとクィン、この若者2人の偶然の出逢いから始まり、犯罪捜査にま…

  • 『少年』川端康成|未完の原稿のような作品

    『少年』川端康成 新潮社[新潮文庫] 2022.4.5読了 五十歳になった「わたし・宮本(川端康成さん本人だろう)」が、全集を出すために昔書いた作品を読み直す作業をする。『湯ケ島での思い出』という未完の原稿をゆっくりと読み進めながら、過去に想いを寄せていた清野少年に対する愛を連ねていく。 これは小説なのだろうか。昔から書き溜めた日記や原稿、手紙を書き起こしながら当時を思い出しつらつらと書いている体である。まるでこの『少年』という作品そのものが未完の原稿のように思える。 清野の信仰が描かれた場面では、何かそこはかとない神の力が清野に宿っているようで、それが宮本にも憑依するかのようである。清野が信…

  • 『物語 ウクライナの歴史』黒川祐次|ヨーロッパの中心にあるウクライナ

    『物語 ウクライナの歴史』黒川祐次 中央公論新社[中公新書] 2022.4.4読了 ロシアがウクライナ侵攻を始めてからもうすぐ1か月になる。日本からは遠い地の出来事で、できることは何もないかもしれないが、何が起きているかを知ることは出来る。私たちは目を背けずに、今起きている現実を見届けなくてはならないのだと思う。ウクライナの歴史を知ることもそのひとつのきっかけである。 北京パラリンピックでのウクライナの応援や、紛争が始まって間もない頃、渋谷でウクライナ人が抗議デモをしているニュースを見たのが印象に残っている。日本人が話す、棒読みでどちらかというと「ラ」を強調する「ウクライナ」の読み方ではなく、…

  • 『掃除婦のための手引き書ールシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン|実体験に基づいた生の声

    『掃除婦のための手引き書ールシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン 岸本佐知子/訳 講談社[講談社文庫] 2022.4.3読了 表紙の女性が著者のルシア・ベルリンさんと知って驚いた。気高くとても美しい女性である。小説のようなエッセイのような、全てがルシアさんの実体験に基づいているようなので、私小説といったところだろうか。人生で色々な経験をしてきた彼女からの「生きた声」が聞こえてくるようだ。無骨で乱暴な言葉遣いもあるのに、何故だか美しい作品たちだと感じた。 緊急手術室で乗馬服を脱がせるのにひどく時間がかかるという『わたしの騎手(ジョッキー)』のある場面で、「三ページもかかって女の人の着物を脱がせ…

  • 『高慢と偏見、そして殺人』P・ D・ジェイムズ|原作の世界観を損なわずに書くこと

    『高慢と偏見、そして殺人』P・ D・ジェイムズ 羽田 羽田詩津子/訳 早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2022.4.2読了 偉大な小説の続きを別の作家が書くことは、大いなるプレッシャーがあるだろう。マーガレット・ミッチェル著『風と共に去りぬ』の続編の『スカーレット』、スティーグ・ラーソン著『ミレニアム』の続きを書いた『ミレニアム4』以降の作品群など、世の中にはそういった作品が多くある。日本だと夏目漱石氏の小説の続きを現代作家が書いたものが多く見られるように思う。 実は今年に入って、今更ながらP・ D・ジェイムズ作品に密かにハマっている。ダルグリッシュ警視シリーズでもコーデリアシリーズで…

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