ヤマトタケルの自伝 24 わたしは蝦夷の地を後にし、大和への帰路についた。 そして常陸から武蔵へと進んでいき、武蔵から相模の国境である足柄峠までたどり着いた。 わたしは足柄峠で休憩をし、食事をとることにした。 その時だった、我々のもとに一頭の鹿が現れた・・・見上げるほど巨大な、白い鹿だった! 「む・・・こいつ、ただものではないな・・・!」 そう、その巨大な白い鹿・・・見た目の恐ろしさだけではない!その姿に邪悪な霊気を感じたのだ・・・この鹿は、この山の神の化身に違いない・・・ わたしは従者らを後ろにさがらせると、食べかけのニラを鹿に向かって投げつけた! 果たしてその鹿は・・・わたしが投げたニラが…
ヤマトタケルの自伝 23 東国を平定したわたしは、相鹿(おうか)の丘前宮(おかざきのみや)に滞在していた。東国を朝廷の支配下に組み入れるための、様々な政務に追われていたのである。 そこに、妻のオオタチバナヒメがはるばる、大和から訪ねてきたのだ! 「おお!オオタチバナヒメ!女の足で、こんなところまで・・・」 「ヤマトタケルさま!会いとうございました!その一心で、ここまで旅してまいりました!」 ・・・わたしは胸が熱くなった。嬉しさがこみあげてきた。 その夜、わたしはオオタチバナヒメと久しぶりに夜を共にした。 ・・・しかし・・・ オオタチバナヒメと再会したことで、次の朝、わたしの心に言いようのない影…
ヤマトタケルの自伝 22 行方の国から陸路、わたしは従者を引き連れてさらに北のほうに進んでいた。そして当麻(たぎま)まで来た。 この地を支配するカラスヒコを征伐することが目的である。 常陸に入って味方になり一緒に従軍してきた蝦夷の長老によると、この地を支配しているカラスヒコは周囲の民族とは調和せず、あまり評判がよくないそうであった。 それでもまずは恭順を進める使者を送ってみたのだが、カラスヒコは刀を振り上げ使者を追い払ってしまったのである。 はたして、カラスヒコはわたしが來るという情報を得ていたのだろう、わたしが通りかかると襲いかかってきた。しかしこれまで数々の戦いを征してきたわたしの敵ではな…
ヤマトタケルの自伝 21 わたしは蝦夷を朝廷の支配下に置いた。 わたしはさらに従者を従え船を進めていった。流れ海に入り、広大な入海である流れ海の北方を拠点としていた民族を、新たに朝廷に服させた。 こうしてこの地も平定したわたしは、槻野(つきの)に上陸した。そこにはきれいな泉が湧いていた。 わたしはその清らかな水に、連日の遠征で疲れた手を浸し、清水で喉を潤した。 ・・・その時だった 「あっ・・・」 わたしはついうっかり、身に着けていた玉を泉の中に落としてしまったのだ。深い泉の中に落としてしまった玉は、拾い上げることはできなかった。 その玉は、今も泉の中に残っていることだろう。 そこから陸路わたし…
ヤマトタケルの自伝 20 上総の国を発ったわたしは、陸奥(みちのく)を目指して進んでいた。 陸奥国に入ると、わたしは海上を進んでいくことにした。この先は全く未知の領域である。下手に陸路を進んでいくと、どのような敵に襲われるかわからない。 そこで危険の少ない海路を進んでいくことにしたのである。 わたしは乗る舟に、大きな鏡を掲げた。鏡は天岩戸の神話にもあるように、神の象徴なのである。 舳先に鏡を掲げた船は、風に乗って順調に進んでいく。そして船は蝦夷(えみし)の支配する地に履いた。蝦夷はいまだ朝廷に服属していない。 すると、蝦夷はわたしが攻めてくるのを察していたのだろうか、蝦夷たちは水門に兵を繰り出…
ヤマトタケルの自伝 19 その時、オトタチバナヒメがわたしに向かって言った。 「ヤマトタケルさま!わたくしが生贄となって海に入ります。そうすれば海の神の怒りもおさまることでありましょう。 ヤマトタケルさまは、どうかその使命を果たして朝廷に復命してください」 「な・・なんだと!いかん!やめるんだ!」 わたしは叫び、オトタチバナヒメにかけ寄ろうとした。しかし荒波に翻弄される船の上だ。その時、大きく舟が揺れて、わたしはよろめいて倒れてしまった。 そうこうしている間にオトタチバナヒメは、すげ・皮・絹の敷物を幾重にも重ねて海に浮かべたかと思うと、その上に降りて行ってしまった。 ≪入水するオトタチバナヒメ…
ヤマトタケルの自伝 18 わたしは駿河で反逆を起こした国造を誅殺した後、さらに東に進んでいた。 わたしが国造の陰謀にはまったその日、わたしが野に入ったすぐあと、オトタチバナヒメは捕らえられたという。そして目の前で国造の兵士が、わたしが入った野に向かって火矢を放つのを見たという。 そのときのオトタチバナヒメの気持ち、いかばかりだっただろうか・・・泣き叫びたかったに違いない。 しかしそれさえもできなかった・・・声を立てて私に気づかれぬよう、彼女は猿轡をかまされていたそうだ。 そして私が焼死したと思って、監禁された屋敷の一室で泣き続けていたという。悲しみに暮れるオトタチバナヒメに、一緒に捕らえられた…
ヤマトタケルの自伝 17 駿河国造の陰謀にはまったわたしは、枯野の中で燃え盛る炎に取り囲まれていた。炎はわたしに迫ってくる! このままでは焼け死ぬのは確実だ・・・どうすれば・・・ ・・・はるかな神代、同じように炎に枯野で炎に取り囲まれたオオクニヌシの大神は、ネズミのおかげで助かったそうだが・・・ そんなにうまいことはないだろうな・・・覚悟を決めるしかないのか・・・ わたしがそう思った時だった。その時、思い出したのだ! 伊勢のヤマトヒメが、困ったときに開けといった小袋のことを・・・ わたしはいそいでその袋を開けてみた。すると、そこには・・・ ・・・一組の火打石が入っていた。 ・・・これは・・・そ…
ヤマトタケルの自伝 16 翌朝、わたしは駿河国造に案内され、荒々しく乱暴な一団が住んでいるという野原に来ていた。 そこには一面の枯れ草がはるか先の地平線まで広がっていた。 「ヤマトタケルさま、この先の岩山に、その一団は砦を築いて陣取っているのです」 「よし、見に行ってみよう。場合によってはそなたの軍勢を借りるかもしれぬぞ!」 「かしこまりました。お気をつけて」 そして、ここまでついてきたオトタチバナヒメに言った。 「オトタチバナヒメ、お前はここで待っておれ」 「でも・・・ヤマトタケルさま、従者もつけずにおひとりで・・・大丈夫ですか?」 「なに、偵察してくるだけだ、心配ない」 こうしてわたしは単…
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