chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
化学徒の備忘録 https://www.syero-chem.com/

化学に関することを記事にしています。大学レベルの内容が多いですが、高校や中学レベルの内容もあります。また化学であれば、無機化学、有機化学、生物化学、分析化学、物理化学、量子化学、電気化学など幅広い分野の内容の記事を書いています。

化学徒
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2019/06/05

arrow_drop_down
  • 論文の回答レターの形式や具体的な参考例

    研究活動の1つとして、学術論文を投稿し、査読を経て、論文を論文誌に掲載させ、研究成果を世に公表するというものがあります。特に査読付きの論文は、研究者の業績の1つともされる重要な内容です。この論文を出版(publish)した研究者の100人中99人は対応しているだろうという過程が(データはないですが)査読者からのコメントへの回答です。 この回答レターはResponse letter(回答レター)やRebuttal letter(反論レター)と呼ばれます。この回答レター次第で、論文が採択(accept)されるか、却下(reject)されるかが決まるというケースもあるでしょう。 回答レターでまれに見…

  • 【錯体化学】配位子・リガンドの基礎

    リガンドとは? リガンド(Ligand) は中心のものなどと強く結合するものという意味があります。そのため、リガンド(Ligand) という概念は、化学の分野以外でも使われています。たとえば、生体分子とのリガンドによって形成される複合体は、イオン結合や水素結合などの弱い非共有結合性相互作用も含まれており、こういったリガンドは生物学などで用いられています。生物化学などにおいても、こういったリガンドという言葉を目にすることがあります。 リガンド(配位子)とは? 一方で、錯体化学では、リガンド (配位子) は中心原子に結合 (もしくは共有結合) できる適切なドナー基を持つ分子またはイオンです。また、…

  • ゼミ資料の参考にしたいコンサルのスライドデザイン

    ゼミ・抄読会・輪講・輪読の資料 理系の研究室に入ると、ゼミ、抄読会、輪講、輪読、論文紹介などの研究室によっていろいろな名前がつけられていますが、いわゆるゼミが行われます。内容の1つとしては、教科書や論文などを担当が読み込み、それを発表するというものです。このゼミの発表の際に、Wordなどでレポートのような形式にまとめるレジュメを用いるタイプと、Powerpoint(パワーポイント)などのスライド資料にまとめるタイプがあります。今回はスライド資料のタイプに焦点を当てます。 どういったパターンが求められているかは、研究室にもよりますが、ここでは経済産業省のサイトに公開されている委託調査報告書を紹介…

  • 海外の雑誌に論文が掲載されるって凄いの?

    海外の雑誌に論文が掲載という話は耳にすることがあります。 研究室に所属している先輩が論文を発表だったり、テレビや書籍などの有識者が研究成果の論文を掲載だったり、色々の場面で目にすることはあると思います。 ところで海外の雑誌に論文が掲載されるというと凄そうですが、実際はどうなのでしょうか? 実際はというと、ピンキリなのです。つまり必ずしも、スゴいとはいえません。どんなレベルの雑誌に掲載されたのかがスゴいかどうかの1つの指標といえるでしょう。それは海外かどうかもそこまで重要ではありません。 例えば、漫画に例えてみましょう。日本の場合でも有名な漫画雑誌から、まだあまり知名度のないような漫画雑誌までい…

  • 博士課程に進学する前に自問するべき5つの質問

    大学生、大学院生で研究室で博士課程の先輩などを見ていると、博士課程がいかに大変かが想像できると思います。しかし、身近に博士課程に進学している学生などがいないと、その違いまでは想像できにくいかもしれません。 そこで、博士課程に進学する前に自問するべき5つの質問を紹介します。博士課程に進学する前に、自分なりの回答を用意しておきましょう。 Q1:博士号を取得したい理由はなにか? 博士課程に進学する理由を整理しておきましょう。 例えば、研究を行いたいという理由であれば、修士課程で企業に就職して研究するという道もあります。たしかに大学と同じような進め方で研究ができないケースなどもあります。しかし、その一…

  • 錯体化学を学ぶときの金属・金属イオン

    金属元素について 錯体は金属イオンと配位子で構成されることから、錯体において金属は重要な要素である。 元素周期表を見ると、元素の大半は金属である。また、研究者によって新たに作られ、確認される新元素も金属であるため、全元素における金属の割合は増加していくとも考えることができる。周期表上での元素の位置は、電子配置に依存する。そして、よく知られているように各元素の化学的な性質は、元素周期表上の元素の位置によって、それぞれ特徴がある。例えば、s、p、d、fブロックの金属は共通の性質がある。通常は、金属は陽イオンを形成し、他のイオンや分子と結合して、分子配位錯体となることが多い。 自然中の金属元素と錯体…

  • 【錯体化学】錯体の配位結合と軌道の混成

    配位結合 錯体化学において重要な要素の1つが、配位結合である。分子結合を形成する共有結合は、結合に関与する原子がそれぞれ電子を1つずつ出して電子のペアが形成され、この電子のペアによって結合ができる。この共有結合は、ルイスが提唱し、そして現在でも、化学を考えるうえでの基礎的な概念となっている。 一方で、配位結合は、共有結合のように2つの原子から1つずつ電子を共有するのではなく、ある原子の軌道から1対の電子(ローンペア)を出し、相手原子となる原子の空の軌道を占有することによって形成される。そして、錯体化学は、この配位結合の形成という概念を考える必要がある。 配位結合は、電子対を出すアクセプター (…

  • アカデミアの男女共同参画が進まない話題の寄稿に対して

    一言でいうと、「理系のアカデミアの女性の割合を増やそう」といえるであろうアカデミアの男女共同参画問題ですが、読みやすい寄稿が公開されていますので、この寄稿をもとに、この話題を取り上げたいと思います。 寄稿はJSPSのCHEERS!に投稿された安藤真一郎氏のものです。リンクは以下になりますが、5~10分程度で読める読みやすい文章であり、研究者として忙しいなか執筆された文章だと思われますので、ぜひ一読をおすすめします。 アカデミアにおける男女共同参画はなぜ遅々として進まないのか この寄稿の見出しをまとめると以下のようになります。 ・なぜ男女共同参画が必要か・なぜ男女共同参画が進まないのか・無意識の…

  • 学会の懇親会って学生でも参加していいの?

    新型コロナウイルスの影響で一時期は、学会もオンライン開催に移行していましたが、再びオフラインの現地開催やハイブリッド開催となってきました。 そういった中で、特に学会に初めて参加する学生が気になることの1つが懇親会かもしれません。新型コロナウイルスの感染が広まっていたなかでは自粛されていた懇親会も、再び開催されるようになっていることもあるでしょう。 この記事は懇親会が開催されるみたいだけど、学生が参加していいのか?と思う方向けの内容になります。 勇気を出して参加してみよう 筆者の意見としては「ぜひ勇気を出して参加しよう!」です。特に初めて参加する場合や、自分の研究室からは学生が一人しか学会に参加…

  • 八面体錯体の配位子置換反応の反応速度式・アイゲン ウィルキンス機構とフオス・アイゲン式

    八面体錯体は、さまざまな酸化数の金属に対して、多様な結合状態を形成する。よって、置換反応にも、さまざまな反応経路が予想される。しかし、八面体錯体のほとんどすべては交替機構で反応が進行する。そこで反応を考えるうえで、その律速段階が会合性か、解離性であるかが重要となる。反応機構の反応速度式を解析すると、機構(会合性律速段階をもつ交替機構)と機構(解離性律速段階をもつ交替機構)であるかを明確にするために必要な条件を明らかにすることができる。 ここで反応式をMを金属イオン、L、X、Yを配位子として、以下のように考える。 MLX + Y → X-ML-Y → MLY + X これらの反応機構の違いは、律…

  • 【アカデミアの維持のために若者は安定な生活を捨てよ】任ポス問題がTwitterで話題に!!

    Twitterで話題になっていることを取り上げるトレンドがありますが、一部の人のおすすめトレンドには"アカデミア"や"博士課程"といった言葉がたまに表示されている人がいるのではないでしょうか?これは多くの場合は、有名人や問題行動の炎上と比べると、非常に規模は小さく炎上といわれるレベルのものではないですが、一部の界隈の人が注目するようなtweetがきっかけとなっています。 またTwitterは多くの様々なSNSの中でも、20代~40代の比較的若年層の利用率が高いことが知られており、いわゆる現時点で研究者やアカデミックキャリアの若手といわれる層に利用者が多いことも、反応しやすい要因の1つといえるで…

  • 学振・申請書で役立つ文章術:文を推敲する時のポイントと方法

    文を推敲する際のポイント 学振の申請書などでは、文章の推敲が採択率を上げる方法として紹介されるケースも多いと思います。ここでは、文章を推敲する際に意識するといいポイントや推敲をする際の方法を紹介します。 ポイント1: 文に間違いや論理の破綻がないかチェックする 文章に間違いがある場合は、伝えたい内容が正しく伝わらないため通常の文章はもちろんですが、申請書などでは致命的なミスになりかねません。同様に文章の論理の破綻も、相手に意味が伝わらなくなるため、注意して確認するべきポイントです。 ポイント2: 誤字脱字がないかチェックする 誤字や脱字は頻繁に起こるミスの1つです。誤字や脱字は必ずあると思って…

  • 学振・申請書で使える文章術:シンプルな文章にするテクニック

    学振などの申請書では、わかりやすい文章にするために何度も推敲や改訂を繰り返していくと思います。内容はもちろんですが、文章自体も書き方次第で、わかりやすさや伝わりやすさに違いが生まれます。 文章の推敲の方法は、様々なパターンを書いてみて、自分や周りの人に読んでもらう方法も1つです。しかしながら、共通のわかりやすい文章への直し方のパターンといったものも存在します。ここでは、参考になるように、そういった修正の方針を紹介します。 シンプルな文章にする 1文が長い文章は、意味がぼやけたり、相手にハッキリ伝わらないことがあります。そこで文章中の1文をシンプルにするという修正は定番の推敲方針です。つまり、文…

  • 学振の申請書を書くときに審査員について確認しておきたいポイント

    博士課程に進学する学生であれば、日本学術振興会 特別研究員(DC1・DC2)(通称 学振、がくしん)の申請書を申請すると思います。学振の申請書を提出する資格がある人が、申請をしない理由はないので、絶対に申請をするべきです。この申請書を完成に近づける中で確認しておきたいポイントを紹介します。 審査員の分野を確認する 書面審査セットといわれて、パッと単語の意味と内容がわからない人がいれば、審査区分について理解が不十分な可能性が高いです。審査区分のサイトページ https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_sinsa-set.html (2023年2月時点)を確認しましょう。 htt…

  • 学振の申請書作成でライバルと大きく差がつくのは何月か?

    博士課程に進学を予定している学生であれば、日本学術振興会 特別研究員(DC1・DC2)(通称 学振、がくしん)の申請書を申請すると思います。博士課程で申請する資格があれば、学振の申請書を書くことによって、自己分析や研究の計画力、研究への理解のブラッシュアップに繋がりますので、積極的に申請書を作成し、提出するべきでしょう。 一方で、例えば日本のほとんどの博士課程への進学は、受け入れ先の研究室の教員と話ができていれば、入学試験で、まず落ちることはありません。しかしながら、学振は指導教員がこの申請書は良い申請書だと認めていても、落ちることがあるような倍率となることが予想されます。それだけライバルが多…

  • SCISPACEとは?論文読解補助AIサイトの使い方をわかりやすく紹介

    SCISPACEとは? 学生や研究者にとって、論文を読むという作業は過去の知見を得るうえで非常に重要な活動です。一方で、論文を読みなれていない学生にとっては、論文を読んで理解するということは少しハードルがあると思います。 こういった論文を読みなれていない方をAIで支援するサイト(サービス)がSCISPACEです。 上記がTOPページのスクリーンショットですが、以下の文章が書いてあります。 Your AI Copilot to decode any research paperつまり、このサービスは研究論文の読解をサポートするAI副操縦士(Copilot)です。 当然論文を読みなれている研究者に…

  • 学振の評価書(推薦書)を「自分で書いて」と言われた場合の方法

    博士課程に進学を予定している学生であれば、日本学術振興会 特別研究員(DC1・DC2)(通称 学振、がくしん)の申請書を申請すると思います。むしろ博士課程で申請する資格があれば、学振を出さないというのは、資金を得る貴重な機会を逃すという点でも、申請書を書く能力を鍛えるという点でも、ありえないと考えるべきだと思います。 学振の申請書はもちろんですが、学振には研究指導者(指導教員)が執筆する評価書があります。この評価書の執筆に関しては、おおむね以下の4パターンがあると考えております。 指導教員が全て執筆し、提出してくれる 指導教員から申請者(学生)へ「原稿を書いて」と言われ、その原稿を指導教員が訂…

  • 学術論文と卒業論文や修士論文のページ数が全然違うのはなぜ?

    学術論文と卒業論文や修士論文のページ数が全然違うのはなぜ? 理系や化学系では、一般的な学術論文はletterやcommunicationといわれる短いものであれば、1~4ページ程度、Full paperといわれるような研究成果を丁寧にまとめたもので、長くて10ページ程度である。一方で、卒業論文や修士論文は短くても数十ページ、修士論文なら100ページ程度を超えるのは普通である。 あまり、研究に携わったことのない人であれば、「ほぼ同じ研究にも関わらずここまでページ差があるのはなぜなのか?」という疑問を持つ人もいるかもしれない。ここでは、この差について説明する。 目的が違うから 学術論文と卒業論文で…

  • 博士課程学生がやる気のでない時にできる8つのこと

    博士課程は博士号を取得するための最後のステップですが、最近は博士課程の実情も正しく学生に伝わるようになり、特に日本ではやる気のない学生が博士課程に進学するというケースは、まれになってきていると思います。ただ、博士課程は通常でも3年間と比較的長く、中だるみや、博士課程に進学当初のやる気やモチベーションが失われることも少なくないと思います。 また、博士課程も研究者ですが、企業や大学に勤めている研究者とはギャップがあります。まず、報酬体系や収入が全くことなり、金銭的なモチベーションは引き出しづらいという点が異なります。さらに、昨今の研究者は特に、短い期間でも違う研究室に移ったり、全く新しい分野に挑戦…

  • 無機化学の反応の種類・化合物の分類・分析手法

    化学試薬 化学反応では、他の物質を合成、測定、検出するために使用される物質のことを試薬という。つまり化学では試薬とは、「化学反応を起こさせるために系に加える物質や化合物、もしくは反応が起きているかどうかを確認するために加える物質や化合物」である。化学反応は、合成はもちろん、別の物質の存在の検出を確認するために使用されることもある。例えば滴定などもその一つである。 反応物と試薬は同じ意味で使用されることが多い。一般的に反応物とは、「化学反応の過程で消費される物質」である。ただし、化学反応の過程で溶媒や触媒が関与する場合は、これらは反応物とはみなさない。 有機化学では、有機分子や金属塩/化合物が、…

  • ResearchRabbitとは?!論文の繋がりを可視化できるサイトで論文検索を効率的に!

    研究活動を行ううえで、重要なのが文献や論文の調査です。論文の検索などを効率よく行うことができれば、研究の効率の向上に繋がります。研究においては、論文そのものが書いていることも重要ですが、その論文が引用している論文、その論文を引用している(被引用)論文といった論文の繋がりも研究の繋がりを理解するうえで重要です。 こういった論文間の繋がりを可視化できるサイトがResearchRabbitです。ResearchRabbitは、論文と関連する論文の可視化や、関連している研究者の可視化などを行う研究プラットフォームです。 ResearchRabbitの主要な機能 論文の繋がりを可視化できる 論文の繋がり…

  • 光触媒的窒素還元によるアンモニア合成で正しく評価するためのポイント

    光触媒による窒素からアンモニアの合成の研究 光触媒による窒素の還元によってアンモニアを合成する方法の実験に関する文献の紹介です。光触媒や電気触媒によるアンモニア合成反応は、まだ収率が低いため難しい点があるのですが、こういった研究で注意するポイントなどが示唆されています。他の研究でも、特にこの実験のような収率が低い実験では、参考になる部分が多いと思います。 光触媒を用いた窒素のアンモニアへの変換反応は、ハーバー・ボッシュ法に代わるグリーンなアンモニアの合成方法として注目を浴びています。しかしながら、光触媒による窒素の還元反応は、実用化には大きな壁が存在します。その課題の1つが、まだ光触媒の活性が…

  • 【Elicit】卒論の研究背景の文章がAIで生成可能?! 正確なAI文献検索・研究補助ツールで研究を効率よく進めよう

    大学のレポートや卒論で使えるAI回答サイト 最近、SNSやネットニュースなどで話題にあがるAIですが、話題のChatGPTは2023年1月現在では、嘘や架空の文献情報を返答することが知られています。 そのため、大学の理系の実験レポートや、卒業論文(卒論)、修士論文(修論)の文献の検索は、AIには頼れず、論文などはGoogle Scholarなどで検索して探すしかないと思っている人がいれば、ぜひ試してほしいのが、Elicitです。文献検索はChatGPTの代わりにこれを使うべきというツール(サイト)です。こちらもすでに研究者の間では、かなり有名になっていると思います。 文献検索サイト・データベー…

  • 【理系】卒論・修論でのChatGPTの正しい使い方・やったらダメなこと・注意点・具体例

    公開されてから、その機能が話題になっているChatGPTですが、その機能のスゴさを知っている人は、卒業論文(卒論)や修士論文(修論)でも使おう、もしくはすでに使っている人がいるのでは、ないでしょうか? 特に理系の卒論、修論の執筆の際にchatGPTを使う際の注意点や使い方の具体例について、解説します。 ChatGPTの機能は? ChatGPTを卒論・修論で使っていいのか? なぜ補助ツールとして使うのは問題ないと考えたか アウトになる可能性がある使い方 ChatGPTを使う時のポイント chatGPTの使い方の具体例 構成を考えるときの補助ツールとする 図表や軸のタイトルなどを考える際の補助ツー…

  • 令和6年度学振申請書(DC1,DC2)作成時にchatGPTを使わねばならないワケ

    最近SNSなどでも話題になり、もはや知らない人はいないくらいのAIツールがchatGPTです。 使い方は人それぞれですが、例えば大学の学部のレポート課題を入力すると、そのレポートの文章(のようなもの)が出力されます。 さて、本題ですが、トピックは令和6年度(2024年度)採用分の日本学術振興会特別研究員 (DC2・DC1)の申請書(通称:学振・がくしん)です。 ご存じの通り、博士課程に進学する学生の多くの学生が、この申請書を作成して提出し、採用されると年間200~300万円程度の生活費に使えるお金が貰えるものです。 毎年、申請書の題目などが少しずつ改変されますが、この記事執筆時点では、まだ次回…

  • 【論文紹介】メタンの触媒的変換反応に表面のわずかな水が重要であることが判明

    天然ガスの主成分であるメタンを他の化学物質に変換することに関する論文です。 メタンは強いC-H結合(結合解離エネルギー:439 kJ/mol)を持ち、高い活性化障壁を持っており、温和な条件下で変換することが困難です。現在、メタンは主に高温高圧下(700~1100℃、20~40気圧)で触媒的水蒸気改質反応( )を行って合成ガスを製造し、それを様々な化学製品の原料として使用しています。しかし、このプロセスはエネルギーを多く消費し、持続可能ではありません。そのため、常温常圧下での効果的なメタン活性化方法の開発は持続可能なメタン利用に向けて不可欠です。 そこで、光を利用して酸化還元反応を促進する方法が…

  • 【Youtube100万回再生動画】博士課程に進学してはいけない理由

    YouTube scientist であるYoutuberのSimon Clarkが博士課程に進学してはいけない理由を解説している動画です。動画投稿は2018年4月で、今の世界状況はさらに博士課程への進学のリスクが高まっている懸念もあるかもしれません。 博士課程を意識している人は、海外の博士号取得者の状況についても、ぜひアンテナを張り巡らしておきたいものです。日本はともかく、外資系企業や海外の企業なら博士号取得者の採用が多いなどの噂だけを鵜呑みにすると痛い目を見るかもしれません。 youtu.be 内容はぜひYoutubeを視聴してほしいですが、内容は以下のようなものです。 博士号取得者の給料…

  • 【簡単10分】グラフの画像データからExcelで使える数値データに変換できる便利サイト

    卒業論文や学会発表の場面で、研究背景やイントロダクションとして、既報の論文のグラフのデータを引用したい場面があると思います。もちろん適切に引用すれば、そのまま画像を使ってもいいのですが、 ・元の画像の画質が悪い・2つの以上のグラフ画像の内容を1枚のグラフにまとめたい・グラフの一部のデータだけ使いたい・研究分野や研究室の様式に改変したい・資料全体で統一感をもたせるためにグラフ画像を書き換えたい といったことを感じた経験のある人はいないでしょうか? ただグラフの画像はあっても、数値のExcelデータやtxtデータなどがない場合、いちいち定規を当てて、数値を読み取るなんてことをやっていると非常に非効…

  • 【博士課程進学不要論】D進はやめるべきという意見

    この記事は修士課程から博士課程への進学(D進)をやめるべきというテーマで執筆しています。 どうしてこの記事を執筆したのか、実際は筆者はどう感じているのかは、最後の書いていますので、興味ある方は、そちらも拝読ください。 博士課程へ進学する理由と、その反論 以下は、参考文献から引用した博士課程への進学理由です。いくつかの理由について、その理由だったら、博士課程に進学する必要はないということを説明していきます。 参考文献より 研究することに興味関心があった 博士課程じゃないと、研究ができないのかというと、そんなことはありません。企業の研究者の中には博士号を取得していないが活躍している方も大勢いらっし…

  • 【理系大学院】修士課程・博士課程で身につく能力・スキル6選

    修士課程・博士課程で専門に関する能力やスキルが身につくことは当然でしょう。例えば有機系の研究室であれば、有機合成のスキルや、TLCやNMRで化合物の合成を追跡したり確認したりするといった専門の分析スキルなどが身につくでしょう。 その一方で、就活や学振の申請書などでは、研究者としての専門以外の汎用的なスキルや能力について問われることも少なくありません。 ここでは、専門以外の修士課程や博士課程で身についているであろうスキルや能力を紹介します。自己分析やスキルの棚卸しなどを行う際に参考にしてください。なにより、自分が身に着けている能力やスキルを把握することは、自分の価値を把握することに繋がります。 …

  • 大学の若手教員・若手研究者が待遇改善に声を上げないあたりまえの理由

    大学の教員はもちろん、大学院生であっても、大学の若手教員の待遇が悪いという話を聞いたことがある人は多いと思います。例えば、長時間の労働や、研究以外の仕事や雑用、業務の増加や押しつけなどがあり、その影響で論文などの研究成果を出せてない人もいることでしょう。 その一方で、待遇が悪いのであれば、もっと声を上げて、自発的に待遇改善に対して努力すればいいのにと不思議に感じる人もいると思います。ただ、若手教員が声を上げない、もしくは声を上げにくい点には、少し考えてみるとあたりまえの理由があります。 1. 多くの研究者が、任期付き・非正規の雇用である 最近は、助教であっても、任期付きであることが非常に多いで…

  • NMRスペクトルの同定練習問題サイト:NMR Challenge

    NMRスペクトル (NMRチャート)は有機化合物の同定において、非常に有用で強力なツールであることは、化学に携わったことがある人にはよく知られていることです。 一方で、化学やNMRの初心者にとっては、NMRスペクトルはハードルが高いものかもしれません。そこで、大学の講義の期末試験といったテストなどでも、NMRスペクトルを見て、実際の化合物を同定するという問題が出ているケースもあるかもしれません。 また、特に有機系の研究室では、NMRを実際に研究で使うこともあると思いますが、未知の化合物の同定ができるようになるには、まずは既知の化合物のNMRスペクトルの同定ができるようになることが重要と考えてい…

  • 博士課程の学生・大学院生式のメンタルヘルス・うつ病対策

    博士課程の学生はうつ病のリスクが高い 博士課程の学生が、うつ病などの精神障害などを患うリスクが他の職業の方より高いということは、世界各国の調査結果が論文などでも報告されています。 最近は多少は世間の見る目や理解も変わっており、博士課程の間にうつ病になったことをブログやSNSなどでカミングアウトする方も増えてきましたが、日本全体の博士課程の学生を対象とした大規模な調査結果は調べてみてもほとんどなく、現在の実態は不明です。これに関しては、社会の博士課程の学生のメンタルヘルスへの問題意識が低いのか、対象となる学生の数が少なく調査して対策するほどではないのか、もしくは"臭いものに蓋をする"や"寝た子を…

  • 2022年化学界の12大ニュース!

    1年で多くのニュースがありますが、各業界や界隈でそれぞれ注目されたニュースがあると思います。研究などでは、各分野で注目された論文などもあるはずです。 今回は、compoundchem.com が化学界の2022年のビッグ化学ニュースを発表していましたので、ここでも紹介します。これは比較的、社会的にも注目されたニュースが取り上げられています。また、元の記事は各ニュース記事へのリンクも掲載されているので、ぜひ元の記事もご覧ください。 大気中のメタン濃度の上昇について研究が進む 山火事でオゾン層の回復が後退したことが明らかに クリックケミストリーがノーベル化学賞を受賞 電子の質量を表すことができる新…

  • 【無機化学】群論と対称操作・対称要素、点群とフローチャートを丁寧にわかりやすく解説

    群論と対称操作・対称要素 恒等操作 n回回転 鏡映 (反射) 反転操作 回映 分子の点群 点群を決めるフローチャート C1点群 C∞v点群 D∞h点群 Td点群・Oh点群・Ih点群 群論と対称操作・対称要素 分子の対称性は、分子の物理的性質や光学的性質に影響を与え、反応がどのように起こるかの手がかりとなる。この分子の対称性に対して、系統的かつ数学的に取り扱ったものを群論(group theory)といわれる。 群論の基本的な考え方は、対称操作である。 対称操作とは、分子がまったく同じ形に見えるように動かす操作のことである。例えば、H2O分子を180度回転させると、同じ形に見えるというような操作…

  • 【錯体化学】錯体の配位数・内圏錯体と外圏錯体・結晶溶媒の解説

    錯体の配位数 配位子の数は中心金属の配位数という。固体の場合と同じように、化合物によって配位数はさまざまな値をとる。配位数の最大は12である。 錯体の配位数を決定する要素は、主に以下の3つである。 中心原子、中心イオンの大きさ 立体障害:配位子間の立体的な相互作用 中心原子、中心イオンと配位子、配位子間の電子的な相互作用 一般的に周期表の下の金属原子やイオンは半径が大きく、高い配位数をとる傾向がある。 立体的な観点では、かさ高い配位子は低い配位数をとる。また、電荷をもった、かさ高い配位子は、配位数に不利な静電的な相互作用の影響によって、特に低い配位数をとることが多い。 同一周期では、左側にある…

  • 【大学図書館活用術】 本を借りるだけの場所じゃない

    大学図書館活用術 大学に在籍している方は勉強やレポート、研究で利用しなければもったいないのが、大学の図書館です。図書館というと本を借りる場所というイメージがある人もいると思いますが、他にも活用方法があります。 大学によって、サービスが異なるので、自分の大学の図書館のサイトは確認して、どのようなサービスを提供しているかは、理解しておかないと損です。 本を読む・借りる これはどの図書館でも行われているサービスだと思います。大学レベルの教科書や専門書は値段が高いため、講義では指定されていない教科書まで買いそろえようと思うと、かなりの金銭がかかります。 講義でわからない点や、レポートで必要な事柄などピ…

  • 【電気化学】式量電位と電極電位とpH・錯形成の関係の解説

    式量電位 標準電極電位()は、標準状態における電位の値である。これは、化学種の活量が1の場合であることを意味している。一方で、半反応の電位は、溶液の条件によって変化する。 例えば の反応の標準電極電位は1.61 Vである。しかしながら、実際には溶液に加える酸の種類が異なると、電位も変化する。これは酸の解離によって生じる陰イオンのセリウムイオンとの錯形成のしやすさがとで異なるためである。これによって、遊離しているとの濃度比が酸の種類に影響されることになる。 錯体の構造がわかる場合には、酸の陰イオンを含めた反応式を記述することで、酸や化学種の活量を1にして、その反応の標準電極電位値を決定することが…

  • 【錯体化学】錯形成反応・生成定数と解離定数の解説

    錯形成反応 多くの金属イオンは、さまざまな配位子(錯形成剤)と平衡にある場合、ほとんど解離しない錯体を形成する。この錯形成を上手に利用し、ターゲットではない反応を遮蔽することで、錯体を分析化学に利用することができる。つまり、多くの金属イオン種は、錯滴定を利用することで正確に定量をすることができる。 多くの金属イオンは、配位数を満足させる非共有電子対をもつ多くの物質と溶液中で錯体を形成する。非共有電子対をもっている物質としては、例えばN、O、S原子などが挙げられる。金属イオンは電子対のアクセプターとなるルイス酸であり、錯形成剤は電子対のドナーとなるルイス塩基である。 配位子(リガンド)といわれる…

  • 【量子化学】調和振動子と分子振動(波動方程式・分子構造・振動の自由度)

    調和振動子 波動方程式を用いる例として有名なものに調和振動子がある。 調和振動子とは、バネを用いる際の実験や計算でよく使われるフックの法則に従って、位置エネルギーが上昇すると平衡点へ戻すような力が働き振動するものである。 化学では、二原子分子の二原子間の距離がバネにように振動する分子振動を考える場合には、この調和振動子を当てはめて考えることができるため、基礎的な分子振動の理解については調和振動子を使うことがある。 調和振動子の波動方程式 まず、バネの力の定数をとする。そして、バネに球が繋がれ、球の質量をとして、これが振動する場合を考える。 フックの法則とは、球を平衡点である、つりあっている位置…

  • 【熱力学】系に関する用語

    熱力学で重要な"系" 熱力学では、系と、その系を決める境界を正しく考えておくことが重用である。 熱力学の系とは、注目する物理空間の任意の3次元領域のことをいう。通常は一度に一つの系だけを考え、これを系と略して呼ぶことが多い。他の部分は系の周囲となる。 境界とは、系を囲み、周囲から切り離すための、閉じた3次元の空間である。 境界の具体例として、2つの相の界面や、フラスコなどの容器の内側と外側を分けるガラス壁面などである。そのため、境界と物理的な表面が一致することも多い。 また、境界によって決められた系の大きさや形は、時間によって変化することがある。 以上の点から、系は3次元領域の任意の領域を選択…

  • 【量子化学】二粒子系の波動方程式の扱い方の解説

    二粒子系の波動方程式 二粒子系の波動方程式は次のように考えることで、粒子1個の問題として取り扱うことができるようになり、簡単になる。 二粒子系 質量がとの2個の粒子が、それぞれ速度とをもっている。そして、位置エネルギーで運動しているとする。 この時のエネルギーは次の式で求めることができる。 各粒子( )の座標を( )とする。このとき重心の座標()は次の式のように表すことができる。 各粒子の速度を表すベクトル[texV_i]は、各座標成分の時間微分となる。つまり次の式のようになる。 重心の速度をとする。重心の速度は各座標成分を時間で微分して求めることができるため、次のように表すことができる。 こ…

  • 【電気化学】ネルンストの式・平衡電位・セル電圧の解説

    ネルンストの式 電気化学や分析化学において、電極電位を考えることが必要になることが多い。 標準電極電位は酸化体と還元体などの、全ての化学種の活量が1の場合である。標準電極電位は記号はで表されることが多い。 この標準電極電位が決められた後、ネルンストが、より実用的なものを、電位と濃度の定量的な関係を使って作成した。ネルンストは、電位が化学種の濃度に依存するものとして、その関係を式に表した。これが、ネルンストの式である。 以下の酸化還元反応式を考える。酸化体が、還元体がである。は反応電子数である。とは定数である。 この時、ネルンストの式は以下のようになる。 はある濃度における電位であり、単位はVで…

  • 研究者のモチベーションを上げる5つの提案

    この記事はChemistry worldの記事を参考に執筆しております。ご興味のある方は、そちらの記事も御覧ください。 研究は終了までに長い時間がかかります。また、実験は期待通りの結果がでなかったり、失敗することも多いものです。また日本でも競争が激しくなっているため、研究者が目標のポジションに就くまでに、多くの苦労が必要となります。 この記事がそういった日々の研究や雑用に追われ、研究へのモチベーションが低下している人への5つの提案になります。 新しい研究領域を開拓してみる 最近は複合領域など、専門を別の分野や領域と組み合わせることで、オンリーワンの研究に取り組んでいる方が多くいます。今の専門分…

  • 生体内の錯体反応:血液中のヘムと酸素

    生体内の錯体反応 生体内の反応でも、錯体に関する反応が起こっている。特に血液中のヘムに関しては、よく知られている。 血液中のヘムは鉄を強く保持している。これはヘムの窒素原子が鉄と強い配位結合を形成するためである。 鉄(鉄(II))は、酸素分子と結合し、肺から体内のほかの場所へ運搬して放出する。これは、酸素分子はドナー原子や錯形成剤としては弱いからである。 一酸化炭素は中毒などが起こるや一酸化炭素は死ぬ危険性があるという話を聞いたことがある人もいると思う。 これは、一酸化炭素は強い錯形成剤であり、ヘムに結合した酸素を置換するためである。一酸化炭素は酸素と比較すると200倍の強さでヘムと結合するた…

  • 【理系研究】論文投稿は査読ガチャってホントなの?

    査読ガチャ 査読ガチャって聞いたことはありますか? 厳密な定義は無いと思われますが、論文投稿の査読のプロセスにおいて、どのような査読者(reviewer) が査読するかが、論文の掲載受理(accept)のされやすさに影響することだといえると思います。 正確な起源を断定することはおそらく不可能だと思いますが、比較的ここ最近、大学の学生、特に研究室に所属している大学院生が中心に使っている言葉だと認識しています。いわゆるガチャやガチャポンは昔からあり、ガラケーのゲームでもガチャといわれた抽選がありましたが、最近はスマートフォンアプリのゲームなどでガチャといわれる抽選が、より身近に普及してきた影響だと…

  • 【卒業研究】過去の文献や論文を検索して調べても見つからない時のコツ

    研究活動において、過去の文献を読むということは非常に重要です。 理系の研究であれば、過去に出版されている論文を適切に検索し、実験や考察の参考にし、必要に応じて、論文でも引用することが求められます。 でも、その"過去の論文を探しても見つけられない"という特に学生向けの内容です。 過去の論文・文献がないわけない 今は、日本のみならず、世界中の論文を検索して、読むことができます。そして、世界中には非常に多くの研究者がいます。 また卒業研究などは、ある程度の限られた時間で研究を行うためにも、参考文献が全く存在しないような新規性の高い研究を任せることは、まれです。 検索をして、過去の論文や文献が見つから…

  • 選ぶと危険!? 研究室配属の新入生が避けるべき研究テーマ5選

    理系であれば、大学の3年後期や4年生から研究室に配属され、卒業研究に従事する学生が多いです。研究室に配属されると、研究テーマを決め、その研究に集中して取り組むことになりますが、この研究テーマの中には、研究室に配属されたての学生が避けたほうがいい研究テーマがありますので、その特徴をここで紹介します。特に自分で研究テーマを決定するタイプの研究室の方は参考にしてください。 あくまで、初めて研究に取り組む学生にとって避けたほうがいいテーマですので、修士課程や博士課程の学生、もちろんポスドクなどには当てはまらないので、ご理解ください。 また、"なぜ避けるべき研究テーマがあるのか"という話は、後半に書いて…

  • 共存イオン効果とイオンの活量・平衡定数・pHの関係

    共存イオン効果とは 溶液中に共存するイオンが電解質の解離や、溶解度へ影響を与える効果のことである。 一般的に共存する塩(ただし平衡に関与する共通するイオンは含まない)は、弱電解質の解離や沈殿の溶解度を増加させる。 陽イオンは反対符号である陰イオンを引き付け、陰イオンは反対符号である陽イオンを引き付ける。そのため、陽イオンに注目すると、共存する陰イオンに囲まれる。この現象はイオン雰囲気が形成されると表現される。その結果、平衡に関与するイオン間の引力は、溶解している電解質によって遮蔽されるため、それらの有効濃度を減少させ、平衡を移動させる。共存塩、もしくは平衡に関与するイオンのどちらかの電荷が増加…

  • 【Writefull】英語論文のアカデミックな言い換え・書き換えの便利サイト

    Writefull 学術論文を執筆する際は、ほぼ間違いなく英語で執筆するのが、現在の主流です。 ただ、英語で文章を書くのは、慣れてないとなかなか大変です。他の論文の英文を借用しようとする人もいますが、きちんと単語や文章を変えて借用しないと、盗用や剽窃などの機械的なチェックで引っかかってしまい、それが原因で、論文が査読までまわしてもらえないというケースも想定できます。 ただし、最近は、Google翻訳やDeepLなどの言語も翻訳も充実はしてきましたので、とりあえず英語の文章を作るまでは、比較的どうにかなります。 ここでは、その次の英語の文章の英語の単語を類語を調べて適切な単語を探したり、英文をア…

  • あなたの大学に論文が引用された回数のトップ層は何人いますか?

    毎年、ClarivateからHigly Cited Researchers (直訳すると、高被引用論文著者)が発表されています。2022年の報告についても発表がされています。 被引用回数についての解説 被引用について、詳しくない方に説明しますと、科学では最新の研究成果を論文として発表します。この時、どこまでが自分の新しい研究成果で、どこまでは他の人の研究成果や、アイデアなどで影響を受けているかを、ハッキリさせる必要があります。 そのために、論文の形式として、過去に出版された論文を引用して、その研究分野の背景や、他の研究者の結果や知見を示したうえで、自分の研究のどこに新規性があるかを、示します。…

  • 【分析化学】ケルダール分析:タンパク質の定量方法の解説

    ケルダール分析とは ケルダール分析は、ドイツの化学者ケルダールが開発した、タンパク質分析の方法の1つである。 ケルダール分析は、タンパク質などの窒素含有化合物に含まれる窒素を正確に分析する方法である。タンパク質中の窒素含有率からタンパク質の定量を行う。 タンパク質の定量には、ケルダール分析以外の手法もあるが、ケルダール分析はさまざまな分析対象に対する標準法となり、他の多くの分析法もケルダール分析に基づいていることが多い。 ケルダール分析では、硫酸で試料を分解し、試料中の窒素を硫酸水素アンモニウムに変換する。化学式で表すと、以下のようになる。 溶液を冷却した後、濃アルカリを加えて溶液を塩基性にす…

  • 【分析化学】化学平衡と電解質効果、その性質の解説

    モル平衡濃度 化学平衡は、化学平衡の法則や質量作用の法則によって考えていくことができる。さらに、活量でより詳細に考えることができる。 しかしながら、溶質であれば、モル濃度で簡易的に代用することができる。 以下のような化学平衡を考える。 ここで、モル濃度平衡定数を考える。モル濃度平衡定数は、温度、共存物質の組成などによって変化する。これを式で表すと次のようになる。 化学平衡と電解質効果 実際に水溶液中の化学平衡の一例である酢酸の解離反応を考える。 反応式は以下のようになる。 モル濃度を用いた化学平衡の式は次のようになる。 ここに例えばNaClなどを溶液に加え、共存する電解質の濃度を変化させてモル…

  • 【理系就活】2025年に求められるスキルと修士・博士課程の過ごし方

    2025年版 トップ10スキル 少し古い話ですが、2020年10月に世界経済フォーラムで発表された主にビジネスパーソンに2025年に求められるトップ10スキルの内容を、どこかで目にした方は多いのではないでしょうか。 そのスキルの内容は以下の10種です。 引用 World Economic Forum 人によって、多少は捉え方が違うかもしれませんが、日本語にすると、だいたい以下のような感じです。 分析的思考力とイノベーション(革新) アクティブラーニング(主体的学習)と学習戦略 複雑な問題の解決能力 クリティカルシンキング(論理的・批判的思考力)と分析力 クリエイティビティ(創造性)・独創性・問…

  • 男子理系学生は大学教員になる進路は諦めよ!!

    大学関連のニュースを目にする方は、最近は、東京大学の女性教員300人採用計画のような、女性教員の採用を加速させる取り組みのニュースを目にした方もいるのではないかと思います。 まずは現状を整理しましょう。 2022年現在、大学では女性研究者や女性教員の割合を増加させる取り組みが行われています。男性、女性が共に、その能力を最大限発揮できる環境を整えていくことは、様々な社会問題の解決のためにも必要な課題でしょう。 そもそも、大学の理系の学部に通ったことのある学生は、同じ学部や学科の男女比率だったり、教員の男女比率などから、なんとなく分かっているように、基本的に多くの理系分野は男性の割合が多いのも事実…

  • 【分析化学】過マンガン酸カリウム滴定とCODの測定

    過マンガン酸カリウム滴定法 過マンガン酸カリウム滴定法は、頻繁に用いられる滴定法の1つである。 過マンガン酸カリウム滴定法の利点の1つは、終点の検出に指示薬がいらないことである。過マンガン酸カリウム標準溶液は、それ自体がMnO4-の赤紫色をしており、当量点前は、MnO4-が全て消費されて、Mn2+となるため、無色になる。実際にはMn2+は非常に淡いピンク色をしているが、吸光係数が低いため、ほぼ無色に見える。一方で、当量点を過ぎるとMnO4-の色が残ることで、溶液が淡いピンク色になるため、終点が求められる。MnO4-の半反応式は以下のようになる。 過マンガン酸カリウム滴定とCOD測定 過マンガン…

  • 博士号は足の裏の米粒ってイヤミなの?

    大学などで研究を行い、論文を執筆し、1st author(第一著者)の論文を2報や3報とacceptまで準備し、さらに博士論文の執筆や、海外ではDefense(ディフェンス)とも呼ばれる審査会や公聴会をやり遂げて得ることのできる資格が博士号です。 修士課程などの大学院に進学した経験のある人であれば、この大変さは少しは想像ができると思います。 一方で「博士号は足の裏の米粒」って言葉聞いたことはありますか? おそらく日本では数十年前から言われているであろう例えです。意味は人によって多少異なりますが、大きく以下の2つです。 とらないと気になる とっても食えない とらないと気になる 特に修士号をもって…

  • 【理系研究発表】卒論発表のスライド例とポイントをわかりやすく解説

    大学の理系の学部4年生は1年間程度研究室に配属され、卒業研究を行い、卒業論文を執筆し、その内容を審査する教員の前で発表することが多いと思います。 この記事では、参考文献のnature communicationに発表されている論文を題材に使用して、卒論発表(研究発表)のスライド例と、意図やポイントを解説します。 ここでは、卒業論文を提出した学生が、その内容について10分間で発表し、5分間質疑応答を行うという設定でスライドを作成しました。 また、本記事で使用した論文にはCC BY 4.0のライセンスが付与されています。 タイトルスライド 研究背景 研究目的 実験内容、結果と考察 結論スライド 謝…

  • ゼミで質問が思いつかないときは"なぜ"を活用するといい3つの理由

    この記事は研究室やゼミに配属されて日が浅い学生を主な対象にしています。 大学で研究室に配属されると、順番に発表者が教科書の一部の担当部分や最近の論文、本人の研究の進捗などを発表するゼミやセミナーなどが実施されていることが多いです。 発表者が内容を文章にまとめたりや発表内容を動画に撮影して共有したほうが、大勢のメンバーの都合を合わせやすいはずですが、あえて研究室のメンバーが集まってゼミやセミナーを行う理由の一つは、その場で質疑応答をすることで、発表者とやり取りを行うことでお互いに理解を深められたり、議論をすることができるからだと思います。 せっかくのゼミやセミナーの場で、一回も質問をしなかったり…

  • 【分析化学】分配平衡・分配係数・分配比と抽出

    分配平衡・分配係数・分配比 分配について考えるために、物質が溶媒に溶けることについて考える。 塩や極性分子は水によく溶ける。一方で、無極性の有機分子は水に溶けにくい。 反対に、ベンゼンのような無極性の有機溶媒には、塩や極性分子は溶けにくいが、無極性分子はよく溶ける。 そして、水と無極性の有機溶媒は、水と油を混ぜたときのように、お互いに混じりあわず2相を形成する。 溶質Sが溶けている水溶液に、水とは混じりあわないヘキサンを加えて、充分に振り混ぜた後に静置する。こうしたとき、溶質Sの一部は水相にとどまるが、一部はヘキサン相にも溶ける。このときの、溶ける割合は、その溶質の性質よって大きく異なる。 溶…

  • 【分析化学】錯滴定の原理と最適な試薬の条件

    錯滴定の原理 錯生成反応を利用することで、金属イオンを滴定する方法を錯滴定という。 特にキレート試薬を用いるキレート滴定は一般に広く知られており、その中でもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いるEDTA滴定はよく知られている。 ただし、全ての錯生成反応が錯滴定に適しているわけではない。錯滴定に用いりやすい錯生成反応としては、以下のような条件を満たすものが挙げられる。 金属イオンと滴定試薬が1:1の錯体を形成する 錯滴定に対して、充分に大きい錯生成定数をもっている 錯生成の反応速度が充分に大きい 反応速度が大きいものが錯滴定に適している理由は、反応速度が小さい場合は、滴定に長い時間が必要にな…

  • 【そのD進、ちょっと待った!】学振DC不採択者へのメッセージがTwitterで話題に!

    そのD進、ちょっと待った! いわゆる学振の結果が出たタイミングで博士課程への進学(D進)について、学振に不採択だった学生へのメッセージが話題になっているので紹介します。 ※記事内容は特に学振(DC)不採択者にとって、酷な内容となっている可能性があります。苦手な方や精神的な面で不調な方は読まないことを、おすすめいたします。 tweet内容 連投tweetになっているため、以下にまとめて引用します。元のtweetは記事下の参考リンクからご確認ください。 【そのD進、ちょっと待った!】学振の話題でTLが賑わってますね。通った人は素直におめでとう。ただ、7~8割近くの人間は落ちるのでそういう人たちに向…

  • 【学会発表】研究発表ポスター製作の時の8つのポイント

    初めての学会発表は、まずはポスター発表と促される学生も多いのではないでしょうか? 一般的に、プレゼンテーションソフトを用いる口頭発表と比べると、ポスター発表の方が、発表件数も多く、敷居が低い傾向があります。この記事では、ポスター製作するときに気を付けたい8つのポイントを紹介します。 1. 盛りすぎない 研究をするといろいろな実験を行い、その解析データなども膨大になるでしょう。グラフを少し小さくし、文字も小さくすれば、一枚のポスターにかなり多くの情報を盛り込むことができます。でも、その情報がいっぱいのポスターは果たして分かりやすいポスターになっているでしょうか? ポスターを作り始める前には、手元…

  • データから見る、"化学の研究は化学の分野でしか利用されていない"のか?

    例えば、触媒の開発の研究を行うとき、触媒分野の論文だけを読んで、参考にしながら研究を進めていくのでしょうか? 実際は、ほとんどの研究者は違う分野の論文も読みながら、研究を進めることでしょう。 例えば、高効率、高耐久な排ガス触媒の開発を行うとしたとき、触媒材料として合金に着目したとします。そうすると、触媒としての研究はされていないが、合金として研究がされている材料分野の論文を読んで、触媒の合成方法を検討する参考にするかもしれません。 触媒の耐久性が低い原因を探るために、反応中、もしくは反応後の触媒の状態を分析しようとするかもしれません。このときは、分析方法を検討するために、分析化学分野の論文を参…

  • 企業の新規採用研究職における博士号保持者の割合は減少傾向が続く

    2022年8月に公開された科学技術指標2022の結果から、メディアを中心に日本の科学技術力の低下が話題になっています。 学生にとっては、論文数やTop1%論文数と同じくらい、以下のデータも気になる人がいるのではないでしょうか? 引用文献より引用 企業の新規採用研究者(研究職)のうちの、博士号取得者の推移を示したデータです。単純に人数を見ても、新規採用研究者のうち博士号取得者の人数は製造業で前年比-16.3%、非製造業で前年比-12.6%と一割以上減少しています。 さらに採用者のうちの博士号取得者の割合も、2019年前後を境に、2021年はほぼ全分野で減少傾向が続いていることがわかります。 例外…

  • 【有機化学】二分子求核置換反応(SN2反応)

    二分子求核置換反応(SN2反応) ハロアルカンの炭素-ハロゲン結合は、炭素原子とハロゲン原子の電気陰性度の差によって、大きく分極している。 炭素原子は正に帯電しているため、孤立電子対をもっている求核剤と反応することで新しい結合が生成する。 ハロゲン原子は負に帯電しているため、結合電子を取り込むことで、炭素-ハロゲン結合が開裂し、ハロゲン化物イオンが生成する。 この反応は、全体で見ると、ハロゲンと求核剤が置き換わるため、求核置換反応と呼ばれる。 ここでは求核置換反応の中でも、二分子求核置換反応(SN2反応)といわれる反応について説明する。SN2反応のSは置換(substitution)のS、Nは…

  • 研究の申請書が"新規性"だけではダメなワケ

    研究を行ううえで、研究費や予算を獲得するために、申請書を書くいたり、プレゼンをすることがあります。こういった場合には、その研究内容を申請書にまとめたり、研究内容をプレゼンテーションすることでしょう。 このとき研究テーマは、これまで研究されたことのない内容、つまり新規性をアピールすることは、よく行われることです。たしかに、これまで研究された内容と同じことを研究することは、新たに発見できることがあまり無いと思われるため、研究されることはほとんどありません。 しかし、研究費や研究予算を獲得するためには、それ以外にも考える必要があることがあります。 それは、シンプルに言うと、新たな価値が生み出されるこ…

  • 【放射化学】核反応に関わる粒子の種類・核反応式

    核反応に関わる粒子の種類 核反応には多くの粒子が関わります。 最も一般的なものは、図1に示すように、陽子、中性子、アルファ粒子、ベータ粒子、陽電子、ガンマ線です。陽子(、とも表される)と中性子()は原子核の構成要素です。 アルファ粒子(、で表される)は、高エネルギーのヘリウム原子核です。 ベータ粒子(、で表される)は高エネルギーの電子で、ガンマ線は非常に高エネルギーの電磁波の光子です。 陽電子(、とも表される)は正電荷の電子(反電子)です。 図1 参考文献より改変 陽電子は、電荷が反対であることを除けば、電子と全く同じです。 陽電子は反物質の最も一般的な例で、質量は同じだが別の性質(例えば電荷…

  • 【放射化学】概要・原子核結合エネルギー・質量欠損・原子核の安定性の解説

    原子核の化学 放射線や核に関する化学は、1896年にフランスの物理学者アントワーヌ・ベクレルが発見した放射能に始まります。その後、20世紀から21世紀にかけてエネルギー、医療、地質など様々な技術の基礎となりました。 原子の原子核は陽子とを除く中性子で構成されています。 よく、原子核に含まれる陽子の数をその元素の原子番号(Z)、陽子の数と中性子の数の和を質量数(A)といいます。原子番号が同じで質量数が異なる原子は、同じ元素の同位体といわれます。 1種類の原子核を指す場合、核種という言葉を使うことが多く、Xは元素記号、Aは質量数、Zは原子番号(例えば)であるという表記がされます。 多くの場合、核種…

  • 有機金属構造体(MOF)の合成方法の概要

    有機金属構造体 MOF (Metal-Oraganic framework) 有機金属構造体(MOF, Metal-Oraganic framework)は、ここ30年ほどの間、材料分野で注目されている材料の1つです。 MOFは分子サイズで見ると、穴(細孔)を有しており、金属と有機配位子の組み合わせによって細孔のサイズや形状、物性などコントロールできることや合成後に官能基などを導入することができることから、ガスの貯蔵、ガスの分離、触媒などへの応用が期待されています。さらに、近年では生物や医学分野への応用なども研究が行われています。 その用途に応じて、MOFも結晶の大きさや結晶の形状、薄膜や膜な…

  • 冷やした果物がおいしい理由・ぬるい清涼飲料水が美味しくない理由

    糖と温度の関係 甘さを感じる主成分は糖である。 フルクトースは最も甘い糖のうちの1つであり、グルコースと比べると約2倍甘いと言われており、スクロースよりも甘い。 このフルクトースは、熱すると甘味が減少する。これは低温では甘味を強く感じるピラノース型のフルクトースとなるが、高温では甘味を弱く感じるフラノース型のフルクトースに変化するためである。 このため、フルクトースが多く含まれている果物などは冷やしたほうが甘く、おいしく感じる。 また清涼飲料水の甘味料として用いられるコーンシロップにもフルクトースが含まれているため、温めた清涼飲料水は甘味が弱く感じられることがある。そのため、ぬるい清涼飲料水が…

  • 【物理化学】理想気体の混合の各変化

    理想気体の混合の変化 2つの系に入ったmolの気体Aとmolの気体Bの混合を考える。 ここでどちらの系も温度、圧力であるとする。ここでは気体を理想気体とする。 ここでは混合前を、混合後をで表す。 混合前の状態では、それぞれの気体の化学ポテンシャルは以下のように表される。 ただし標準圧力としている。 混合後のそれぞれの成分の分圧を、とすると化学ポテンシャルは次のようになる。 混合後の全圧はである。 混合のギブズエネルギーの変化 混合前の系のギブズエネルギーを、混合後の系のギブズエネルギーをとすると次のようになる。 よって混合のギブズエネルギーの変化は次のようになる。 理想気体の混合は自発的に進行…

  • 【物理化学】ギブズ-デュエムの式:示強性変数の変化に関する式

    ギブズ-デュエムの式(ギブス・デュエムの式) 2成分の混合物のギブズエネルギーは以下の式で与えられる。 この全微分は以下のようになる。 この式を次の多成分系のギブズエネルギーの全微分式と比較する。 このようにして次のギブズ-デュエム式(Gibbs-Duhem式)を導出することができる。 ギブズ-デュエムの式は、1つの示強性変数の変化は、残りの3つの変数の変化によって決定されるということを意味している。つまり、これはすべての示強性変数のうち1つは従属であるということもある。 温度と圧力が一定である場合には、次のようになる。 これは、部分モル体積、部分モルエンタルピー、部分モルエントロピーなどの他…

  • 【物理化学】化学ポテンシャル(部分モルギブズエネルギー)

    化学ポテンシャル(部分モルギブスエネルギー) 部分モル量は、体積以外の示量性の状態量について定義することができる。 溶液を構成する物質については成分の部分モルギブスエネルギーは、その成分の化学ポテンシャルとして以下のように定義することができる。 つまり化学ポテンシャルは温度、圧力、以外の成分の物質量を一定とした溶液に成分を微少量加えた場合のギブズエネルギーの変化である。 一般的に、独立変数として温度と圧力を用いた場合が便利であることが多いため、上の式で定義された化学ポテンシャルを用いることが多い。 一定温度、一定圧力にある2成分系溶液に対しては、以下の関係が成り立つ。 これを多成分系に一般化す…

  • 【物理化学】部分モル体積の求め方の図的方法

    部分モル体積の求め方 部分モル体積の求め方として、図的方法といわれるものがある。 ここでは、2成分系の場合について考える。この時、平均モル体積は以下の式で求めることができる。 は全体積である。とは成分AおよびBの物質量 (mol)である。とは成分AおよびBのモル質量である。とは成分AおよびBのモル分率である。 そこで、溶液の密度の測定から決定して、モル分率に対して図を書くと下のようになる。この曲線に対して、任意のモル分率に引いた接線がとでの縦軸と交わる切片から、それぞれの成分AとBの部分モル体積とが決定できる。 ここで下の関係が成り立つ。 このことから、次の関係が成り立つ。 この上の式を下の式…

  • 【分析化学】難溶性固体の溶解度積と共通イオン効果・異種イオン効果

    難溶性の塩と共通イオン効果 難溶性の塩の場合、溶解平衡は以下の式の左側に非常に大きく偏った溶解平衡と考えることができる。 難溶性の塩の溶解度積はとすると、以下のように取り扱うことができる。 溶解度積は、それぞれのイオンの濃度が変化した場合でも一定である。つまり、溶解度積が大きな別の塩MYを添加することで、の濃度を増加させた場合、の溶解度は次の式で表されるに減少することになる。 このことからわかることは、難溶性の塩から生じるイオンと共通のイオンを加えると、難溶性の塩の溶解度は減少するということである。 このことを共通イオン効果という。 異種イオン効果 難溶性の塩が存在する溶液に、共通イオンがでな…

  • 【化学ニュース】Ca-Sn合金二次電池の充放電時の電極の構造変化が解明

    カルシウム(Ca)二次電池は、理論エネルギー密度が高い、安全性が高い、原料である天然資源が豊富であるといった点から、ポスト・リチウムイオン電池として注目されている。しかしながら、実用化には課題が残っており、今も研究が世界中で行われている。 今回紹介する論文は、カルシウムイオン電池の実用化に向けて、図1のようなCa-Sn合金を用いた二次電池について報告している。 図1:電池の概要図出典:参考文献 カルシウムイオン電池とその課題 リチウムイオン電池は世界中で用いられているが、コバルトやニッケル、リチウムといった原材料の長期的な確保には課題があり、リチウムイオン電池に替わる電池についても多くの研究が…

  • 【電池用語】ハーフセルとフルセル:リチウムイオン電池の用語解説

    ハーフセルとフルセル リチウムイオン電池やポスト・リチウムイオン電池の研究開発において、ハーフセルとフルセルが使われる。 ハーフセルは正極や負極にLiなどを用いたセル(電池)である。 フルセルは正極と負極の両方に通常の電極材料が用いられているセルである。 ハーフセルを用いる理由 リチウムイオン電池やリチウムイオン電池に替わる次世代のリチウムイオン電池(ポスト ・リチウムイオン電池)の研究開発では、電極の材料などを開発し、その電池としての充放電特性などの性能を評価することが多い。 このとき、電極の材料は正極のみを開発したり、負極のみを開発するという研究が行われることも多い。例えば正極のみの性能を…

  • 【物理化学】ギブズの相律と自由度・ギブズの相律の導出

    自由度 物理化学や熱力学において、系の状態は温度、圧力、モル分率などの組成などの示強性変数によって決定される。こういった変数の中で、系の状態を決定するために自由に(独立に)定めることのできる示強性変数の数を自由度という。 ギブズの相律の導出 ここで個の成分を含む系において、個の相が共存しており、平衡状態にある場合を考える。 このとき、各相()は個の成分を含んでいる。そのため、各相の組成(例えばモル分率など)はである。よって()個のモル分率を指定する必要があるということになる。 つまり、各相の状態は、これに温度と圧力の合計2を加えた、()個の示強性変数によって決定することができる。ここで相の数が…

  • 【分析化学】緩衝液と緩衝作用・緩衝液のpHの一般式

    緩衝液と緩衝作用 溶液に酸や塩基を加えたり、溶液を薄めても、pHが大きく変化しない溶液を緩衝液という。 そして緩衝液によるpHを一定に保つはたらきのことを緩衝作用という。 緩衝液は弱酸とその共役塩基、もしくは弱塩基とその共役酸の混合溶液である。 緩衝液のpHの一般式(計算式) よくある例として、酢酸(HA)と酢酸ナトリウム(BA)の混合溶液、つまり酢酸と酢酸ナトリウムの緩衝液について考える。(Aは酸acidのA、Bは塩基baseのBである) このとき緩衝液では、以下の平衡が成り立っている。 そして、酢酸()も酢酸イオン()も多く存在している。 ここで、酢酸の総濃度を、酢酸ナトリウムの総濃度をと…

  • 【化学ニュース】Ni触媒による鈴木クロスカップリングによって有機フッ素化合物の合成が報告

    ここ数十年で、フッ素を含む分子は薬として利用されるようになっており、その割合は全体の30%以上になっている。特に、gem-ジフルオロメチル類のような有機フッ素化合物は、薬効作用から薬に用いられる化合物として注目されている。 図1の(a)に紹介されているように、フッ素含有有機化合物は様々な薬効がある。 今回は、ニッケル触媒を用いてフッ素含有化合物の一種であるアリールジフルオロメチルアリールエーテルを簡単かつ効率的に合成する方法が報告された。 これまでの合成方法の変遷 図1 (a)薬効作用のあるフッ素化合物 (b)これまでの合成方法の変遷出典:参考文献 アルキルジフルオロメチルアリールやアルキルジ…

  • 【分析化学】電解質の溶解の水の比誘電率とイオンの水和の影響

    水が電解質を溶かす理由 水が電解質を溶かす理由については、未解明な点もあるが、水の大きな誘電率とイオンの水和が主な要因であると考えられている。 比誘電率の効果 距離((m))離れた電荷、と(C)の間に働く力(N)はクーロンの法則で考えることができる。 は真空の誘電率、は比誘電率であり、電荷がおかれた媒体の性質によって決定する無次元の定数である。 大きな比誘電率をもつ媒体におかれた電荷間に働く力はクーロンの法則に従う。そのため働く力は比誘電率の値の反比例する。一方で、水は大きな比誘電率をもつ液体である。よって、水の中に存在する電荷間に働く力は、他の溶媒と比べると小さくなる。 ここで塩の溶解につい…

  • 【化学ニュース】水へ塩素と紫外線の処理で有害な物質の生成が促進される可能性

    有害性が危険視されているハロベンゾキノン類 ハロベンゾキノン類(HBQs)は水の消毒の副生成物として、飲料水やプールから検出されることが最近報告されている。さらに、ハロベンゾキノンは毒性が高く、ハロベンゾキノン類は、現在規制がかかっているトリハロメタン(THM)などの前駆体でもある。このトリハロメタンは公衆衛生や環境に高いリスクをもたらすことで知られている。 引用:https://phys.org/news/2022-07-exploring-adding-uv-treatment-chlorination.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter …

  • セリワノフ反応(アルドースとケトースの識別テスト)と反応機構について

    セリワノフ反応 セリワノフ反応 (Seliwanoff's test or Seliwanoff's reaction) はケトースとアルドースを識別する呈色反応である。 セリワノフはロシアの化学者 Feodor Feodorovich Selivanovに由来している。 糖のうち、ケトン基を含む糖はケトースであり、アルデヒド基を含む糖はアルドースである。セリワノフ反応を用いた試験では、試料にレソルシノールと塩酸を加え、湯浴上で加熱すると、多糖類やオリゴ糖のケトース酸で加水分解され、より単純な糖となる。この糖を加熱したときにケトースはアルドースよりも急速に脱水しフルフラール誘導体 (5-ヒドロ…

  • 【分析化学】測容ガラス器具(メスフラスコ・ホールピペット・ビュレット)

    試薬を実験に用いる際や、未知試料の分析を行う際には、正確な濃度の測定が重要となる。この決まった濃度の溶液を調製するために、欠かせないものが測容ガラス器具である。ここでは、精密な測容器であるメスフラスコ、ホールピペット、ビュレットについて解説する メスシリンダーや駒込ピペットは簡単に使用することができるため、便利であるが、測容器としては精度が低いため、定量分析を行う際の溶液の正確は調製には使用されない。 メスフラスコ(全量フラスコ) メスフラスコは、一定の濃度の溶液を調製する際や、試料溶液を正確に希釈する際に用いられる。一般的には、10 mL ~100 mL程度のものが使用されることが多いが、サ…

  • 物質波と電子波とドブロイの関係式

    物質波 ミクロな視点では、電子のような粒子が波の性質をもつ。 アインシュタインの相対性理論によると、エネルギーと運動量の間には次の関係が成り立つ。 ここでは質量、は光の速さ、は運動量である。 光子の場合は、となるため、となる。 そこでとを用いると、光子の運動量は次のような式が成り立つと考えられる。 この式が成り立つことは、コンプトンが電子がX線の光子によって散乱されるコンプトン効果を観察し、確かめられている。 さらに上の式を書き換えると次のようになる。 つまり粒子に関する運動量と波動に関する波長の積は量子に関する値であるプランク定数となる。 ド・ブロイの関係式 ドブロイは電磁波が光子としての粒…

  • 1eVのエネルギーをもつ光子の波長は何nmか?

    1eVのエネルギーをもつ光子の波長は何 nmとなるか? まずは 1eV J となります。 次に の式を用いることによって計算することができます。 は振動数、は波長、は光の速度、はプランク定数です。 nm となり1240 nmと求めることができます。

  • 【量子化学基礎】エネルギー遷移とボーアの振動数条件

    基底状態と励起状態 水素原子のスペクトルを観測すると、飛び飛びの波長のスペクトル線が観測される。これは、原子のエネルギー準位によって考えることができる。 エネルギー準位のうち、量子数の状態はエネルギーが最低の状態である。これを基底状態という。 基底状態より高いエネルギーの状態は、励起状態という。のときのエネルギーは0になる。 このの状態は、電子が原子核の引力を受けない無限に遠くに離れている状態であり、位置エネルギーと運動エネルギーが両方とも0となっている状態である。 エネルギーが0以上の状態は、電子が原子から離れているということを意味し、イオン化した状態でもある。 基底状態の原子から電子を取り…

  • 【量子化学基礎】ボーアの原子模型とボーア半径(電子の円運動の軌道半径)

    ボーアの原子模型 ボーアは1913年に原子模型(ボーアの原子模型)を提案した。 ボーアは水素原子のスペクトル線の波長が飛び飛びの値で観測されることから、原子の構造を解明しようとした。このとき、ボーアが着目した原子模型は1911年にラザフォードが提案した原子模型である。ラザフォードは、放射線の一つのα線が金箔に衝突し、散乱されるときに、α線が来た方向に跳ね返される現象に着目し、正電荷をもつα線が跳ね返される理由は、原子の中心に正の電荷もつ原子核が存在しているためであると考えた。一方で負の電荷をもつ電子は、太陽に対する惑星のように、原子核の周りを回っているため、α線の散乱には、ほとんど関係していな…

  • 水素のスペクトル線とバルマー系列

    水素原子のスペクトル線 水素ガスを入れた放電管に高電圧をかけると、放電して光が放出される。この光を分光器で波長毎に分けると、飛び飛びの波長のスペクトル線となっていることが観測される。これは、水素原子のスペクトル線であり、この波長は以下の式によって、求めることができる。 この式はバルマーが発見した式を、リュードベリが一般化したスペクトル式である。 とは各スペクトル線に割り当てられる整数である。はリュードベリ定数といわれ、である。 水素のスペクトル線はバルマー系列といわれ、、に相当する4本の線が可視光線の領域に観測される。さらに紫外領域まで含めると、が7以上に対応する線も観察され、は∞まで続く。 …

  • 1eV (電子ボルト)について

    1eV (電子ボルト) 1eV (電子ボルト) は、電子1個分の電気量をもつ電荷を1V(ボルト)だけ電圧 (電位差) の高いところへ移すために必要な仕事 (エネルギー) である。 電子が関連するエネルギーには単位にeVが用いられる場合が多い。 具体的には、電子1個が1Vの電位の上昇で増加する位置エネルギーは1eVということになる。また、静止している電子に1Vの電圧をかけて加速する場合、電子が獲得する運動エネルギーも1eVとなる。

  • 【量子化学基礎】光電効果と仕事関数・光量子説

    光電効果 光(電磁波)が物質に当たったとき、物質から電子が飛び出る現象を光電効果という。またこのとき飛び出した電子は光電子という。 光電効果を起こす限界となる波長を限界波長という。限界波長に対応する振動数を限界振動数という。この限界波長や限界振動数は物質の種類に依存する。限界波長はアルカリ金属やアルカリ土類金属とその合金では可視光線の領域にあるが、他の多くの物質では紫外線の領域となる。 限界振動数は光電管につないだ電気回路に流れる電流(光電流)を調べると、求めることができる。光電子を出す電極(陰極)と光電子を受け取る電極(陽極)の間に負の電圧をかけ、その電圧を徐々に大きくしていくと、ある大きさ…

  • 【量子化学基礎】エネルギー量子と電磁波の基本式

    エネルギー量子 プランクは、熱放射のスペクトルと温度について研究を行い、電磁波(光)が物質に出入りするときのエネルギーの受け渡しの大きさが光の振動数に比例する、飛び飛びの値しか許されないと仮定すると、実験結果と一致することを発見した。つまり、エネルギーは、どんな値でもとることができるわけではなく、振動数に比例するエネルギーの整数倍に一致する値だけをとることができる。 これを式にすると次のようになる。 ここで、は整数、はプランク定数である、プランク定数の値はである。 は振動数の光に関係したエネルギーの粒と考えることができる。こののことをプランクのエネルギー量子ということがある。 電磁波の基本式 …

  • 熱放射・キルヒホフの法則・ウィーンの変位則・シュテファンの法則

    熱放射と3つの特徴 熱くなった物質が出す電磁波(光)は熱放射といわれる。この熱放射には3つの特徴がある。 1. 熱放射のスペクトルの形は温度のみで決まる。そのため、物質の種類によらない。これをキルヒホフの法則という。 2. 熱放射のスペクトルの最大値を与える波長と絶対温度の積の値は、ほぼ一定となる。 つまり一定 これはウィーンの変位則といわれる。 この関係式を用いることによって、右辺の定数を決めておくと、温度系を使わなくても、スペクトルを測定し、を求めることによって、温度を求めることができる。 3. 熱放射で放出されるエネルギーは、絶対温度の4乗に比例する。これをシュテファンの法則という。その…

  • 【論文紹介】MOFに関する論文に多数のデータの使い回しの疑い

    結晶学に関する論文で800報以上の論文で、架空の金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks, MOF)や、架空のMOFの医療分野への応用についての論文が出版されている可能性について、指摘している論文を紹介します。 doi.org 研究職やアカデミックポストを目指す研究者にとって、学術論文の投稿と出版が、研究者の能力の指標の一つとなっています。そこで論文を出版するために、必要なデータの捏造や悪意のあるデータの加工などを行って、論文を投稿し、そういった論文が出版されるという事件が、残念ながら日本の研究室からも何度も起こっています。また、論文の著者が論文の原稿を執筆するというこ…

  • 【錯体化学】配位子場遷移と電荷移動遷移・分光化学系列

    配位子場遷移と電荷移動遷移 遷移金属錯体は特有の色を示すものも多い。そのため、可視吸収スペクトルなどを測定すると、可視領域に特有の吸収が表れる。吸収は錯体の分子軌道では、電子によって占有されたエネルギー準位から空のエネルギー準位へ電子が可視光によって励起されることに由来している。遷移可能な軌道の間のエネルギー差をΔとすると、吸収振動νはΔ=hνとなる。 光による励起によって起こる電子遷移は大きく2種類に分類することができる。 遷移可能な分子軌道が両方とも、主に金属のd性をもつ場合はd-d遷移もしくは配位子場遷移という。吸収波長は配位子場分裂の大きさに依存する。 片方の軌道は金属性が大きく、他方…

  • 【錯体化学】遷移金属錯体のσ結合とπ結合

    遷移金属錯体の結合 金属d軌道と配位子軌道の相互作用の結果、結合性、非結合性、反結合性の錯体分子軌道が形成される。一般に配位子軌道の方が金属結合より低いエネルギー準位にあるため、結合性軌道は配位子性が大きく、非結合性および反結合性軌道は金属性が大きくなる。 σ性とπ性の分子軌道の形成について考えると次のようになる。 σ結合 直行座標系の原点に金属を、座標方向に配位子を配置し、金属のs、p、d軌道と配位子の軌道の相互作用のうち、M-Lのσ結合を考える。σ結合は結合軸方向に節がない結合である。そのため、配位子のσ性の軌道と、+、-の符号で表される対称性、軌道の形が適合する場合は、金属のs結合(a1…

  • 【錯体化学】配位子場理論と6配位正八面体型錯体・平面正方型錯体・ヤーンテラー効果

    配位子場理論 配位子場理論は錯体の電子構造の理論として知られているが、もともとはイオン結晶に関する理論である結晶場理論を錯体系に適用したものである。 6配位正八面体型錯体 遷移金属の陽イオンの5つのd軌道は縮退している。そのため5つのd軌道のエネルギーは等しい。金属陽イオンの周りに球対称の負電場が来ると、静電相互作用によって全エネルギーは自由陽イオンのときよりも安定化する。しかし同時に、金属軌道の電子と負電場の反発相互作用によって不安定化もおこり、ある程度相殺される。その変化を縦軸をエネルギーとして考えると、下図のようになる。 錯体形成による電子エネルギー変化 球対称の負電場の代わりに6つの配…

  • 立体異性体(エナンチオマー・ジアステレオマー)とは

    立体異性体とは 化合物の物理的な性質や反応性は、分子の立体的な形によって決まるものも多い。この記事では、この立体化学の概要について説明をする。 同じ分子式をもつ2つの構造があるときに、その2つの構造を重ね合わせることができる場合と、重ね合わせることができない場合がある。この重ね合わせができるものは同一物であるが、重ね合わせができないものは異性体といわれる。 重ね合わせることができない場合にもいくつかの種類がある。まず原子の繋がり方が違う場合である。例えば分子式がC2H6Oである分子としてエタノールとジメチルエーテルがある。 こういったエタノールとジメチルエーテルのように原子の繋がり方が違うもの…

  • 「勉強と研究の違いを山登りに例えると」という話

    この記事は、勉強と研究の違いを山登りに例えてみるという話です。特に、まだ研究活動に取り組んだ経験の無い人や、研究の経験が少ない人は、勉強と研究の違いのイメージが湧いていないのではないかと思います。そういった方の参考になれば幸いです。 まずは勉強を山登りに例えてみましょう。勉強は、学習する内容が決まっており、到達目標に向かって進んでいきます。このとき、学習する内容は学問の世界では、すでにわかっている内容になります。これは、山頂というゴールに向かって、道が整備されている登山道に例えることができると思います。到達目標までに学習する内容は、多くの人が経験し、どんどん理解しやすい解説などが増えていきます…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、化学徒さんをフォローしませんか?

ハンドル名
化学徒さん
ブログタイトル
化学徒の備忘録
フォロー
化学徒の備忘録

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用