ネタバレします。 第30章「扉の向こう側」1980-1982 1980年7月ハイスミスがモンクールの自宅に戻ってほどなく彼女はまたも神経衰弱症状が現れはじめる。 「憎しみや怒りに支配されていながらどうやって健康的な生活なんて送ることができるのだろう」 仕事ができなくなってしまうのは自分には何も残らなくなってしまうのと同じなのだ。 不吉な廃屋をめぐる小説「黒い家」のアイディアも思いつきその家は「死とセックス両方の象徴」であった。 1980年10月ハイスミスは長編小説『扉の向こう側』の執筆にとりかかる。キリスト教原理主義者と自由主義思想との間に起こるべくして起こる対立を書こうとした。 ハイスミスが…