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  • 写真ができたら、届けてくださいね『オリオン写真館』

    『オリオン写真館』☆あらすじ☆村の写真館で働いているお猿のオリオン。もう三年も修業しているのに、まだ一度も写真機に触らせてもらえないのです。オリオンは一大決心をしました。「そうだ、独立しよう。」驚いている写真館の主人にカメラを一台分けてもらい、オリオンは店を出たのでした。村は桜の花ざかり、お花見や入学式が重なったせいで、道行く人たちに「写真屋さん、写真屋さん」と呼び止められて商売は大繁盛です。そして...

  • 海の町のお祭りと桜貝『海からの贈りもの』

    『海からの贈りもの』☆あらすじ☆夏が終わって、海水浴のお客が帰ってしまったあとの海の町のお祭り。病気のお母さんが「好きなもの買っておいで」と渡してくれた五十円玉二つをポケットに入れて、一人で夜店に来たかな子。これで自分のものを五十円分、お母さんのお土産を五十円分買いたいなと思っていました。いつもは「見るだけのお祭り」でしたが、久々にもらったお小遣いが嬉しかったのです。でも、五十円で買える品物なんて、...

  • 胸の中のかまどが真っ赤に燃えている女の子のお話『わるくちのすきな女の子』

    『わるくちのすきな女の子』☆あらすじ☆人の悪口を言うのも、人にいじわるをするのも好きな女の子がいました。この女の子は咲きたての花のような綺麗な顔をして、頭も良くて、遊びも上手でした。ゴム飛びも一番高く飛べる女の子に友達は憧れて集まってくるのです。そして、女の子はその中でいつも一番威張っていました。ゴムとびが下手な友達を仲間外れにしようと言った時も、ほかの友達は同調していきました。ある日のこと、灰色の...

  • 不思議な少女が見せてくれたオレンジ色の国『夕日の国』

    『夕日の国』☆あらすじ☆スポーツ用品を飾るショーウィンド。ぼくはその小さい方の窓をお父さんから任されました。表通りに面している大きい窓は、真新しいスポーツ用品が綺麗に飾られています。一方、横町の路地に面している小さい方の窓はガラスに隙間があって汚れているし、場所柄人目を引かない窓です。それでもぼくはショーウィンドを任されたことが嬉しかったのです。テニスのラケットや野球のグローブ、登山靴も良いなと考え...

  • 雨の精の親子とお百姓『あまつぶさんとやさしい女の子』

    『あまつぶさんとやさしい女の子』☆あらすじ☆林の中に、銀色の髪の雨の精が住んでいました。あまつぶ母さんと子供のあまつぶぼうやです。あまつぶ母さんは村が日照りの時に畑に雨を降らせては、干し柿やお餅のお礼をもらっていました。ある日のこと、初めて持ち帰ったお砂糖をなめたあまつぶぼうやは、その美味しさがすっかり気に入ってしまいます。それからは他の食べ物は見向きもしなくなりました。困り果てたあまつぶ母さんは、...

  • 猟師一家と祝いの青い大皿『鶴の家』

    『鶴の家』☆あらすじ☆むかし、猟師の長吉さんがよめさんをもらった秋の晩のことです。猟師仲間が酒や肉を持ち寄って祝ってくれたあと、よめさんと二人きりになっていろりに向かい合っていると、戸口が細くあいて女の声がしました。「おめでとさんです」(今ごろ、誰が…)長吉さんが戸口に出てみると、真っ白の着物を着て、頭にさざんかの赤い花を飾った女がゆらりと立っていました。「おめでとさんです。これは心ばかりの祝いで」と...

  • 一緒にロシア紅茶を飲めるなら『あるジャム屋の話』

    『あるジャム屋の話』☆あらすじ若いころから人づきあいの下手な私は、大学を卒業して就職した会社を辞め故郷に帰り、しばらくごろごろしていた時のことです。実家の庭にある鈴なりのあんずでジャムを作ることを思い付いたのです。くる日もくる日もあんずのジャムを作り続け、周りの反応に気を良くした私はますます熱心にジャム作りに励みました。森の中に小屋を建てて、何度も失敗を重ねた末に、なんとか売り物になるジャムが作れ...

  • テーブルが森の一本の木だったとき『白樺のテーブル』

    『白樺のテーブル』☆あらすじ☆ぼくの部屋に、白樺で出来た小さなテーブルがあります。白くて細い枝を組み合わせて作った可愛らしいテーブルです。友人がぼくの引越し祝いにと、民芸品の店で見つけて贈ってくれたものです。「こんなコンクリートの壁に囲まれて暮らすんだから、せめてテーブルくらい素朴なのを使って、森に行ったつもりになるといいよ。」そう言って、これを置いていったのでした。はじめこそ、仕事の合間に一服した...

  • 木漏れ陽編みのレース『丘の上の小さな家』

    『丘の上の小さな家』☆あらすじ☆丘の上に赤いえんとつのついた小さな家がありました。その家には、お母さんとかわいい少女「かなちゃん」が住んでいました。かなちゃんはいつも、ベランダの椅子に座ってレースを編んでいました。細い銀の針で、真っ白い糸をすくい取りながら、いつか自分が花嫁さんになる日のためのベールを編んでいるのです。かなちゃんが十三歳になったある日のこと、ベランダの柱にいる大きなクモに声をかけられ...

  • 不思議な砂場と海の猫『ふしぎなシャベル』

    『ふしぎなシャベル』☆あらすじ☆ベンチで編み物をしていたおばあさんは公園の砂場で置き忘れられているシャベルを見つけました。銀色で柄には波の模様がついています。「まあ、こんな綺麗なシャベルは見たことがないわ。生きのいいお魚みたいじゃないの。」シャベルを拾い上げて、砂場の砂をすくってみました。すくった砂はさらさらととてもいい感じにシャベルからこぼれます。おばあさんは嬉しくなって、せっせと穴を掘り始めまし...

  • たったひとつの嫁入り道具『木の葉の魚』

    『木の葉の魚』☆あらすじ☆アイは貧しい漁師の娘でした。財産は何一つ無く、借り物の小舟が一そう、借り物の網が一枚あるだけ。そして子供が十人もいるのに、父親は病気ばかりしているといった具合です。一番上の娘のアイがお嫁にやらなくてはならない年頃になったとき、遠い村から時々やって来るばあさんが山番をしている息子の嫁にアイを欲しいと言って来たのです。アイが村を離れる前の晩、母親は古い鍋を一つ出してきてこう言い...

  • おじいさんと少女の安らぎの場所『花の家』

    『花の家』☆あらすじ☆ある大きな町の真ん中に、大きなお屋敷がありました。お屋敷の周りには、一巡りするのに十五分もかかるほどの長い塀、塀の中には木立ちがうっそうと生い茂っていました。厳しい鉄の扉をくぐり、どこまでも続く白い飛び石の突き当りに、やっと家の灯りが見えるのです。その家には、もうすぐ百歳に手が届きそうなおじいさんと、やっと十六歳になったばかりのお手伝いの少女が住んでいました。あんまり長生きした...

  • ひみつ ひみつ 誰にも言えない『うさぎ屋のひみつ』

    『うさぎ屋のひみつ』☆あらすじ☆キャベツ畑の隣の小さい家に住んでいる若い奥さん。可愛らしくて気立てが良いのですが、大変な怠け者なのです。家のことすべてが面倒で、朝旦那さんが家を出てしまうと、日がな一日、窓のそばで椅子に腰掛けてレースを編んだり、本を読んだり、一面のキャベツ畑をぼんやり眺めていたりするのです。そして、夕方になるとため息を付いて「あああ、今夜のおかずは何にしよう…」とつぶやくのです。ある...

  • 片目の黒猫と三日月村の秘密『三日月村の黒猫』

    『三日月村の黒猫』☆あらすじ☆山本洋服店の息子、さちおが初めてその猫に会ったのはある夏の夕暮れ時、西の空に細い三日月がかかり始めた時刻でした。さちおの家はたくさんの借金を抱えて、今日倒産したのです。家は表通りの大きな仕立て屋でした。三代も続いた老舗を三代目のお父さんが潰してしまったのです。今朝、店を立て直すお金を工面するためにしばらく帰れないと言い残してお父さんは青い顔で、ふらりと出掛けていきました...

  • カエルの発電所『秘密の発電所』

    『秘密の発電所』☆あらすじ☆この間、急ぎの仕立物を届けた帰りでのこと、日が暮れた峠の道で帰り道が分からなくなりました。すると、いきなりあたりの百合が光りだしたのです。はじめはついたり消えたりしながら、いつしか白く眩しくなりました。まるで、お祭りの晩みたいです。これはきっと、きつねのいたずらに違いないと思いました。気味が悪いので、前を向いてさっさ、さっさと歩いていきました。「もしもし、おばさん」草の中...

  • おはじき三つと、あなたの心『星のおはじき』

    『星のおはじき』☆あらすじ☆あの朝、あやちゃんが学校に持ってきたたくさんのおはじきを机の上に出すと、女の子たちが集まってきて、おはじきに触ったり手のひらに乗せたりしていました。私も、みんなの真似をしておはじきに触ろうとすると、あやちゃんはいきなり、「さわらないで!」と言いました。そして、顔をしかめて、とても嫌そうに、「あなたが触ると、汚れるわ」と言いました。私は心の中が、すうっと青くなるような気がし...

  • 歯医者さんへのお礼です『ねずみのつくったあさごはん』

    『ねずみのつくったあさごはん』☆あらすじ☆小さな町に小さな歯医者さんがありました。若くて腕の良い歯医者さんがたった一人で働いていました。ある日曜日、小さな患者さんが来ました。「せんせい、お願いします。」それは一匹のねずみでした。玄関に飛び込むと、さっさと診療室の方へ歩き出しました。今日は日曜日でお休みです。そんなことはお構いなしに、ねずみはさっさと診療室の椅子によじ登ってぱくっと口を開けたのです。そ...

  • せんせい、早く「ひみつ」を取り出して下さい!『鳥』

    『鳥』☆あらすじ☆夏の夕方、腕が良いと評判の耳のお医者さんの診療所に一人の少女がかけこんで来ました。聞いてはいけなかった「ひみつ」を日が沈むまでに大急ぎでとって欲しいというのです。その秘密とは少女が好きになった少年は実は魔法をかけた赤い海藻の実を食べて人間になった鳥で、その秘密を誰かが知ってしまったら日が沈むと少年は鳥に戻ってしまうのです。少年に実を食べさせた魔法使いは少女に言いました。「あんたが話...

  • 花吹雪の午後、お出掛けください。『花びらづくし』

    『山の童話 風のローラースケート』より『花びらづくし』☆あらすじ☆あれは、去年の四月…、ちょうど桜がちらほら咲き始めた頃にさくら屋からの招待状が来ました。招待状は、薄桃色の和紙のはがきで、文字は墨でこう書かれていました。「さくら屋にご招待します。花ふぶきの午後、おでかけください。お金は、百円お持ちください。ぜんぶ、五円玉で、お願いいたします」私は嬉しくて嬉しくて、そのはがきを抱いてしまいました。それか...

  • もうすぐ一年生『うさぎの学校』

    『うさぎの学校』☆あらすじ☆まり子はランドセルを買ってもらいました。赤いピカピカのランドセルです。ランドセルにノートやえんぴつを入れて毎日学校へ行く練習をしています。「おかあさん、いってまいりまあす」「はあい、いってらっしゃい。気をつけて」お母さんはいつも楽しそうに笑って送ってくれます。まり子は近くの野原を一周りして、また「ただいまー」と帰ってくるのです。ある日の事、原っぱの桜の木のあたりで不思議な...

  • おばあさんがミシンでカタカタ縫い上げます『カーテン屋さんのカーテン』

    『おしゃべりなカーテン』より『カーテン屋さんのカーテン』☆あらすじ☆「わたし、これから仕事を始めようと思うのよ。」ある朝、おばあさんがいきなりそんなことを言ったので家族はみんなびっくりしました。「どんな仕事をするの?」「また洋服屋さん?」お母さんとはる子が同時に訪ねました。おばあさんは、目が弱ってきたから洋服作りはもう無理と言いましたが、古いミシンを使った良い仕事を思いついたと笑いました。そして次の...

  • 亀に魅入られた娘『日暮れの海のものがたり』

    『日暮れの海のものがたり』☆あらすじ☆海のほとりの小さな村に縫い物の上手な娘がいました。仕立て物をしている、いとばあさんと暮らしているさえと言う娘がどこの生まれで歳はいくつなのか、知っている者は誰もいません。何年も前の夏の夕暮れ、いとばあさんのところにやってきた娘は、追われているのでかくまってほしいと頼んだのです。さえはこの村にたどり着く前に、大きな海亀との約束を破って逃げてきたのでした。病気で死ぬ...

  • 耳の遠くなったおばあさんと山の風からの贈り物『秋の音』

    『秋の音』☆あらすじ☆「この頃、耳が悪くなりまして電話の話がよく分からなくなりました。…電話の代わりに手紙をください。どうか御用はみんな手紙にしてください。」耳が悪くなってきたおばあさんは電話がかかってくるとこんなふうに一息に言うと最後にごめんなさいと言って電話を切りました。そとに出て誰かに会っても、話がよく分からなくなってきてしまいました。耳が悪くなって、おばあさんの周りが静かになってくるとそのか...

  • 井戸の中に、とっても綺麗なものがあるよ『もぐらのほった深い井戸』

    『もぐらのほった深い井戸』☆あらすじ☆じゃがいも畑の隅っこにモグ吉という子供のもぐらが住んでいました。ある秋の夜、畑の小道で平べったくて、丸くて、ピカッと光るものを見つけました。それがお金だと気づいたモグ吉は、なにか閃いたように地主の家に向かいました。そして、じゃがいも畑の隣の、ちょうど広げた風呂敷くらいの土地を買ったのです。「ああ、ここはぼくの土地なんだ。この土の下どこまで行っても僕のものなんだ。...

  • 知ってしまった耳飾りの秘密『奥さまの耳飾り』

    『奥さまの耳飾り』☆あらすじ☆お屋敷の奥さまが耳飾りの片方を無くしてしまいました。薄桃色の大きな真珠の耳飾りで、お屋敷のどこかに落としたようなのです。それは、奥さまが御結婚の時に旦那さまから贈られた品物でした。旦那さまは大金持ちの貿易商でほとんどを海の上にいるのだそうで、小夜がこのお屋敷に奉公にあがって半年経つのですが、まだ旦那さまにはお目にかかったことがありません。その日の夕暮れ時、小夜は庭に落ち...

  • あんたたちは、やっぱりわたしの孫なんだよ。『遠い野ばらの村』

    『遠い野ばらの村』☆あらすじたったひとりで小さな村で雑貨屋を営んでいるおばあさん。おばあさんは、店に買いに来る村の人や品物を卸しにくる問屋さんによく遠い村にいる息子の話をしました。そこは綺麗な川が流れていて、たくさんの野ばらが咲いています。息子の家族は奥さんと三人の子どもたち。一番上の子は女の子です。おばあさんは孫娘のためにゆかたの反物を買いました。ゆかたを縫いながら、自分の若い頃にそっくりな孫娘...

  • 落ち着いてください、お父さん。『猫の結婚式』

    『猫の結婚式』☆あらすじ☆のどかな日曜日の朝のことです。僕が縁側の椅子に座って新聞を読んでいると、野良猫のギンが一枚の招待状を届けに来ました。僕の膝の上では猫のチイ子がすやすやと眠っています。元々綺麗な白猫ですが、僕が毎朝ブラシをかけているおかげでまるで白いビロードのような毛並みになりました。それに比べたらそこらへんの猫は下品で汚くて、特に、この野良猫ギンなんかは傷だらけで汚れていて、もともと何色の...

  • 不思議なてまりが出会わせた身分違いの友だち『てまり』

    『てまり』☆あらすじ☆お姫様はお屋敷の一番奥の部屋で、絹のお座布団に座っています。そして、けたたましく大声をあげて泣いているのです。お姫様には二人のお遊び相手がいました。たくさんの女の子の中から難しい試験の末に選ばれたおきくとおふじです。毎日、この二人の友だちと遊んでいましたが、おきくもおふじも、はしかになって寝込んでしまいました。国中に病気が広まったので、お姫様に感染っては大変だとお屋敷への子供の...

  • 祖父が愛したカーネーション『カーネーションの声』

    『カーネーションの声』☆あらすじ☆亡くなった祖父が残してしていった、庭の一画にある十坪ほどの温室。その中にはさまざまな花や観葉植物の鉢植えがぎっしりと育っていましたが、祖父が亡くなってからは植物の世話をする人が誰もいなく、しおれていきました。そして、誰が言い出したか温室を取り壊してアパートを建てることになりました。温室にあった鉢植えや球根は欲しいものは貰ったり、隣近所に分けました。しかし、丈ばかり高...

  • 踊りが上手になりたいお嬢さんへ『うさぎのくれたバレエシューズ』

    『うさぎのくれたバレエシューズ』☆あらすじ☆その女の子はバレエ教室に通い始めて5年も経つというのに踊りが上手になりませんでした。くるくると鮮やかに回れないし、先生の言うとおりに手も動きません。それでも、音楽が鳴れば踊りたくてたまらなくなるのです。女の子の願いはたったひとつだけでした。「どうか、踊りが上手になりますように」ある朝のこと、不思議な小包が届きました。それは一足のバレエシューズでした。そして...

  • こふきちゃんと母ちゃんとコロッケと『コロッケが五十二』

    『コロッケが五十二』☆あらすじ☆町の肉屋でもう何十年も使われている大きな大きなおなべがあります。ぶ厚くて、黒くて重くて、叩くといい音のするおなべです。毎日、長いかねのお箸と一緒に美味しいおかずをこしらえています。コロッケなら五十個、とんかつなら二十枚、ポテトフライなら百個を一度に作れる大きなおなべです。しかも、このおなべで作ったコロッケはまるで生きているように歌でも歌いながら今にもコロコロ転がりそう...

  • おばあさんの針箱と不思議な縫い針『小さい金の針』

    『小さい金の針』☆あらすじ☆おばあさんの針箱は古いバスケットです。ずっと昔に、お嫁に来るときに持ってきたものです。バスケットには、小さな赤い針刺しとハサミと糸巻き、ボタンを入れた小箱が入っています。針刺しには大きい針と小さい針がそれぞれ三本刺さっていて、おばあさんは針仕事が終わると必ず針の数を数えました。ある日のこと、針刺しに見たことのない針が一本刺さっていました。お日さまの光だろうかと思うほどの金...

  • 月夜の不思議な拾いもの『つきよに』

    『つきよに』☆あらすじ☆月夜に、ねずみの子供が不思議なものを拾いました。白くて、四角くて、いい匂いがします。ねずみの子供は触ってみました。ちょっと舐めてみました。ちょっとかじってみました。そして、それを抱えて家に帰りました。 今日は新月なのだそうですが、あえて月夜のお話。とても短いお話です。ねずみの子供が不思議なものを拾って家に帰ると、お父さんもお母さんもとても喜びました。そして、三匹のねずみは...

  • 青い夢の海に溺れてしまった娘『夢の果て』

    『夢の果て』☆あらすじ☆あるところに、とても美しい目をした娘がいました。やっと十三歳でしたがその大きな目に見つめられるとあまりに眩しくて誰もが思わず目を伏せてしまうのです。そのくせ、またどうしてもその顔を見ずにはいられなくなるのです。「あんたは、いい目をしてるねえ。」大人は必ずそう言いました。自分の目は誰が見ても美しいのだとはっきり知るようになった娘は、高慢になっていきました。そして、他の人が頑張っ...

  • 気の良い大工さんと不思議なベランダ『だれにも見えないベランダ』

    『だれにも見えないベランダ』☆あらすじ☆ある町にとても気の良い若い大工さんがいました。どんな仕事でも頼まれたら気軽に引き受けます。立派な腕を持っていましたが、たいへんなお人好しでしたから、いつも報酬の無い仕事ばかりに追われていました。そして、いつも貧乏でした。ある晩のこと、大工さんの部屋に一匹の野良猫がやってきました。そして、「ベランダをひとつ、作って欲しいんです」と。それは、お世話になっている娘さ...

  • お月さまのいたずら『天窓のある家』

    『天窓のある家』☆あらすじ☆何年か前、友人の別荘でのことです。色々悲しいことが重なり、参ってしまったぼくに友人がそこへ行くことを勧めてくれたのです。「誰もいなくて静かだし、山小屋でしばらく静養してきたらいいよ」と。そして、春の初め三日ほどを、そこでたった一人で過ごしたのでした。その家には天窓がありました。ぽっかりと真四角に切り取られた天井の穴にはガラスがはめこまれていて、昼間は少し眩しいですが、夜に...

  • 向こうの崖から飛んできた赤い帽子『赤いばらの橋』

    『赤いばらの橋』☆あらすじ☆緑色の鬼の男の子が崖に腰掛けて、遠くを眺めていました。「向こう側の崖には何があるのかなあ。」子鬼はずっと前からそれが知りたかったのです。南側の崖の上は、オリーブ色の森です。やっぱり鬼がいるのかな…。子鬼はそう思いましたが、その森から聴こえてくる音楽を耳にしたとき、鬼がいるのではないと知りました。「鬼はあんなに綺麗な音楽を知らないもの…。」ある日、これまでにない激しい南風が吹...

  • さっきは赤かぶをありがとうございました。『みどりのはしご』

    『みどりのはしご』☆あらすじ☆小さな小さな庭の真ん中に、大きな大きなモチノキがある家に、そのおばあさんは住んでいました。近所の人は木を見ては、切っておしまいなさいと言うのですが、おばあさんにはそんな可愛そうなことはできませんでした。おばあさんはその木がとても好きなのです。冬が終わると、おばあさんは木の下に小さな畑を作りました。そして、赤かぶの種を十粒蒔きました。すくすく育った赤かぶはいつか食べごろに...

  • きつねの親子とお客様『きつねのゆうしょくかい』

    『きつねのゆうしょくかい』☆あらすじ☆「ねえ、お父ちゃん。今度うちへお客を連れてきてちょうだい。夕食会をしたいの。」ある朝、きつねの女の子はお父さんきつねにいそいそと話しかけました。「せっかくのあれ、使わなくちゃ…」きつねの女の子は、戸棚に並んだ六つのコーヒーカップを指さしました。それは娘にせがまれて、お父さんきつねがやっと手に入れてきたものでした。お父さんきつねはお客なんてバカげたことだと思いまし...

  • 夕陽が沈んだあとの空の色『夕空色のかばん』

    『ゆめみるトランク』~北の町のかばん屋さんの話~より『夕空色のかばん』☆あらすじ☆北の町、ここはまだ雪が舞う冬だというのに、町外れにある小さなかばん屋のショーウインドーだけは春なのです。南の港町にかばんを売りに行ったときに買ってきた水仙が窓いっぱいに飾られ、優しい春の歌を歌っていました。ある日、まるで水仙の花のようなお客さんがかばん屋に来ました。そして、「かばんをこしらえてください」と言うのです。か...

  • 子猫を捨ててきなさいと、さっきお母さんが言ったのです。『やさしいたんぽぽ』

    『やさしいたんぽぽ』☆あらすじ☆誰もいない日が暮れた春の野原に、女の子が立っていました。女の子はエプロンの中に白い子猫を隠していました。子猫は静かに眠っています。さっき、お母さんがこの子猫を捨ててきなさいと言ったのです。「眠っているうちに、さあ、早く早く」と。捨てられた子猫は、そのあとどうなるでしょう。真っ暗闇の中、目を覚ました子猫が鳴いても誰もいなくて…。考えただけでも恐ろしいことです。女の子は泣...

  • ひと粒のガラス玉を草のツルに通して『ころころだにのちびねずみ』

    『ころころだにのちびねずみ』☆あらすじ☆ころころだにの谷底にひとりぼっちで住んでいる男の子のねずみがいました。ちびねずみは恥ずかしがり屋で怖がり屋で、いつも自分の穴に引っ込んでいました。だから、空は谷底から見える細長い空しか知らないし、花は、谷に咲くユリの花しか知らないのです。でも、ころころだには住心地の良いところです。冷たい水も流れているし、緑の草もたくさんあるし、ときどき上の方から季節の木の実な...

  • ひとりぼっちのおばあさんと不思議なスカーフ『黄色いスカーフ』

    『黄色いスカーフ』☆あらすじ☆春間近のある朝、外出時に大きなスカーフを持っていくと便利だという新聞記事を読んだ、一人暮らしのおばあさん。なるほど、私も試してみようかしらと、たんすの中から目も覚めるような鮮やかな黄色い絹のスカーフを取り出してみました。すると、心が明るくなってどこかへ出掛けたくなりました。いそいそと、濃いオリーブ色の新しいワンピースに着替えて、家を出ました。並木道を歩いていると風が吹い...

  • 森の小さな病院とうぐいすのお話『うぐいす』

    『うぐいす』☆あらすじ☆森の中に、年取ったお医者さんと年取った看護婦さんの夫婦だけで営んでいる古い小さな小さな病院がありました。玄関のドアには「みならいかんごふさんぼしゅう」の張り紙がしてありますがまだ来てくれる人はいませんでした。お医者さんも看護婦さんも疲れ切っていました。この病院も、もうおしまいにしなければならないだろうかと思うのですが、頼ってやってくる村の人たちを思うと、なかなか決めかねずにい...

  • そんなら、僕と旅にでましょう。『かばんの中にかばんをいれて』

    『ゆめみるトランク』~北の町のかばん屋さんの話~より『かばんの中にかばんをいれて』☆あらすじ☆北の町の町外れにある小さなかばん屋さん。三代目の主人、上原一郎さんは腕のいいかばん職人ですが、商売は上手くなくてお客さんもあまり来ないようです。一郎さんが店の中で仕事をしていると時々不思議な声がします。「たいくつでたいくつで、やりきれない」「かばんは、かばんらしい暮らしがしたいよ」それはショーウインドーに飾...

  • 味の小人がくれた魔法と大切な約束『魔法をかけられた舌』

    『魔法をかけられた舌』☆あらすじ☆突然の不幸で父さんのレストランを受け継いだ洋吉。怠け者だった洋吉は評判だった父の味の秘密を知ることなくひとりぼっちになってしまいました。「何もかもおしまいだ」そう思った時、コックの身なりをした小人が立っていました。それは食料品の倉庫になっている、地下室の番人をしている小人でした。店を売ってしまおうかという洋吉に、たった一つ大切な約束を守ってくれるならと、とびきりの魔...

  • 雪に埋もれた小さな家から聞こえてくるのは『すずをならすのはだれ』

    『すずをならすのはだれ』☆あらすじ☆寒い寒い2月のこと。真っ白な森の中を、真っ白なうさぎが通りかかりました。「よもぎの葉っぱを三十枚、ハコベの葉っぱを十五枚…」うさぎはこれから森の向こうの町までおつかいに行くところです。あんまり急いでいたので、ツルッと滑ってしまいました。滑った拍子に、雪をかぶった小さな一軒家にドシンとぶつかってしまったのです。小さな家の扉には磨き上げられた銀色の鈴が付いていて、”ごよ...

  • 煙の中の楽園『熊の火』

    『熊の火』☆あらすじ☆小森さんは山の中で仲間に置いてきぼりを食って、何日もさまよい歩いていました。足を挫いた小森さんを、仲間ははじめは気遣ってくれていましたが、日が暮れて雨が降り出すと、みんなの足取りは早くなってとうとう追いつけなくなってしまったのです。闇の中、疲れと寝不足のかすんだ目に、ちらちらとタバコの火が動いているのが見えました。「向こうから人が来る、助かった」と思いながら近付いて来る姿を見る...

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