「今週の『朝日俳壇』」より 明かり障子の前に立ち、自らの貧しい心を映してみたまえ 山が泣く山に合はせて海も泣く霜の降る夜は枕抱き寝む
大串章選○ 山鳴りに海鳴りまじる霜夜かな (霧島市)久野茂樹 本句の作者・久野茂樹さんがお住いの鹿児島県霧島市は、前方に錦江湾を望み、背後に霧島連峰を控えた、海も近く、山にも近い、景勝の地である。 季節が深まり行き、霜が降りる頃ともなれば、「山鳴りに海鳴り」が交って、海と山との奏でる交響曲を聴いてるような思いがする一夜も在り得ましょうか! 花は霧島 煙草は国分 燃え...
「今週の『朝日歌壇』」より グレタさんさぞかし激怒するならむクリスマスケーキを殆ど廃棄!
高野公彦選○ グレタさんきっと激怒す一つ家で別々に見る同じ番組 (名古屋市)福田万里子 せっかくの歳末の日曜日だと言うのに、私の観たい番組は全くありません。 したがって、環境運動家のグレタさんに叱責される謂れは我が家には絶えてありません。 グレタさんさぞかし激怒するならむクリスマスケーキを殆ど廃棄 鳥羽散歩○ ウォーキングの仕上げを七階まで登る踊り場ごとに一息入れて (...
「今週の『朝日歌壇』」より 祝電を打ったからとてお返しを期待するのは大怪我の元
永田和弘選○ 電報が最速手段でありし時代下宿の扉の内定通知 (横浜市)大建雄志郎 下宿の汚い扉に挟まれていた電報であったとしても、その中身が内定通知で良かったですね! 電報が装飾手段のこの頃と結婚祝いのウナ電を打つ 鳥羽散歩 私の連れ合いの同級生同士のいざこざの一端を紹介しますが、今から十数年前のある日、同級生A宅へ交際らしきものが絶えてなかった同級生Bから突然電話があっ...
「今週の『朝日歌壇』」より いそいそと竿を磨いて行く先が酒田花街アネコ待つ街!
佐佐木幸綱選○ 障害は不便であれど不幸ではないなど軽く言いたくはなし (愛知県)清水将一 作者の清水将一さんは或いは障碍者ならむ? だとしたならば、「不幸ではないなど軽く言いたく」も<軽く言われたくもない>のは当然の事でありましょう。 「障害は一つの個性である」などと嘯きて張る意地など持つな 鳥羽散歩○ 老いてなほ歴代住持の墓所を掃く転ばぬように気をつけながら (三原市)...
「今週の『朝日歌壇』」より 閉店に間近き時刻になりぬれば50パー引きで筋子など売る
馬場あき子選○ 海近き寺に住する僧の吾はしばしば魚を貰ひてさばく (三原市)岡田独甫 馬場選の首席。 つい、うっかり、「生臭坊主め!、しかし貰う者も貰う者だが、呉れる方も呉れる方だ!」と口に出したくなるが、選者の馬場あき子氏が「寺に地元の産物を贈るのはきわめて当然の人情なのだ。第一首の御住職の生を養う魚捌きも許されるのではないか」と選評にて仰るのも当然の人情でありましょう。 馬場あき...
○ 先生を返せお前も井戸を掘れ正しいことなら何故撃って逃げた (奈良市)矢尾米一○ 「悔しい」とただそれだけを思い泣く中村医師を識る人はみな (瀬戸市)冬木裕子○ 質問にはぐらかさずに答えてた中村哲の人柄偲ぶ (伊丹市)宮川一樹○ 恩人と敵の区別ができなくて自動小銃放つバカモノ (宝塚市)岸田万彩 「第一首~四首、今週は、アフガニスタンで殺害された医師・中村哲氏を追悼する作がじつに多く...
高山れおな選○ 冬夕焼け浴びて来し蝶欲しくなる (埼玉県寄居町)水野勝浩 七億円含む連番超欲しく 鳥羽散歩○ 冬茜に染まず満月昇りけり (富士宮市)高橋政光 富士宮焼きそばレシピ不安定 鳥羽散歩○ ツイッター・LINE・インスタ近松忌 (川越市)渡邉隆近松忌虚実皮膜論深し 鳥羽散歩○ 凍土を緑に変へる男逝き (松阪市)石井治 辺野古の海土砂で埋める男逝け 鳥羽散歩○ ...
長谷川櫂選○ 冬銀河中村哲に終はり無し (筑紫野市)二宮正博井戸掘るや中村哲氏逝きてなほ 鳥羽散歩○ 十二月八日毎年二歳かな (鹿児島市)青野迦葉開戦日吾の二歳の冬なりき 鳥羽散歩○ 冬の蜂てのひらに来て動かざる (川越市)大野宥之介冬の蜂巣に籠りゐて動かざる 鳥羽散歩○ また一人消して木枯去りゆけり (オランダ)モーレンカンプふゆこまた一人木枯らし詠みて入選す 鳥羽...
○ ポケットを引き出されたるわがズボン降参したるさまに干さるる 野田光介(短歌研究・7)○ 近代をささへし胃弱文学の『こころ』しづかに生みだす力 古谷智子(短歌往来・7)○ 買い足して鉢に入れたるヒメダカは道知りたらん迷わず沈む 玉井清弘(短歌往来・7)○ <便利>とか<お得>を追ひて小走りで生きる民族、東洋にあり 高野公彦(短歌研究・9)○ 古家が「ああ」とも「おお」とも声挙げて乾きゆ...
『岡部桂一郎歌集(抄)』 令和の暮れは寂しくて 紅白観ずに寝ています 其処から私が見えますか 見えても迎えに来ないでね
○ まさびしきヨルダン河の遠方にして光のぼれとささやきの声 (『緑の墓』より)○ このごろはダンサー稼業もひまにして君が額のすえし匂いよ○ 数条のレール光れる暁の薄明のなか紙ひとつ飛ぶ○ 遠くよりささやぎきたる悲しみといえども時に匕首の如しも○ 野の果てにくるめは落つる日にむきて空のトロッコが疾走し居りき○ しばしばも来る夢にしてまおとめの乳に針刺すわがおこないよ○ 空気銃もてる少年があ...
馬場あき子選○ 教皇の帰国を待っていた様に女川2号再稼働へと (川崎市)小島敦 時宜をよく弁えた原発再稼働に取材した、時宜に適った一首である。 是を以て知るべし、原発村村民の安倍某への忖度振り! 「原発村の住民は、安倍某へ忖度したのではなくて、ローマ教皇へ忖度したのである!.」との逆説的発言も衢に流布している。 女川へ核物質の垂れ流し!否、交付金など垂れ流し鴨! 鳥羽散歩○ 大...
佐佐木幸綱選○...
永田和弘選○...
高野公彦選○...
○ 生きるとは「何かを運ぶこと」といふ 私は何を運びて来しや? 鳥羽散歩 只今、年の瀬も押し迫った、令和元年十二月二十一日の午前一時二十五分ジャストである。 私は寝も遣らず本読みをしている。 私が今、読んでいるのは、佐佐木幸綱著『うた歳彩』という、紙の色褪せ、表紙のすり切れた古本である。 『うた歳彩』(1991年11月20日刊・小学館)は、歌人の佐佐木幸綱氏が、近現代の歌人たちが詠んだ名歌を一人一首ずつ...
○ そのかみの結核家系の裔にして八十七にて逝かざる従兄 鳥羽散歩 彼のかつて職業は郵便局員。 郵便局員と言っても郵便局の窓口で葉書や切手を売ったり、小包を扱ったりする局員ではなく、郵便物の配達を専らとする職員、即ち<郵便屋さん>なのである。 彼は、その郵便屋さんを四十年余り務めた後、目出度く定年退職し、定年退職後も嘱託職員とかで、それまでの配達地区の郵便物を配り続けたのである。 彼は、私の遠い...
○ てのひらに稚きトマトはにほひつつ一切のものわれに距離もつ〇 キャラメルの函にてつくりしエッフェル塔とどまりがたき夕光に置く○ 時雨ふる土の傾斜を見てゐたり不治のこころは騒然として○ 白雲の一つ一つに名をつけて見てをれば太郎の消長あはれ○ 妻子なく病めるこころは疲れつつ朱き金魚を夜に見てゐたり○ 人妻の美しき日われは心飢ゆ黄落の森むごくにほひて〇 曇り日に天水槽の彦がみゆ重き一個の精神...
今日の一首(12月19日) 雨つぶて真顔突き刺す真昼間をギター背に負ひ曲を盗みに
○ 雨つぶて額にはじかせ駈けてきてひとつ根方に妻と宿りぬ 時田則雄 令和元年もいよいよ押し詰まって来た。 とは、書いてみましたが、ここまで書いてみて、日本語の言い方として、今、私が書いた、「(年もいよいよ)押し詰まって来た」という言い方の他に、是とほぼ同じような意味の言い方として、「(年もいよいよ)押し迫って来た」という言い方が在る事に気付きました。 そもそも、「押し詰まって来た」という言い方...
今日の一首(12月17日) 珊瑚樹のとびきり紅き秋なれば彼は求めむ彼女の何を
○ 珊瑚樹のとびきり紅き秋なりきほんとうによいかと問はれてゐたり 今野寿美 『世紀末の桃』(1988年)所収。 若かりし頃は、巷の男たちの何を震撼させる程の美女だったかと思われますが、何せ今は、御齢五十二歳と伺って居りますから、言わば年増美人である。 その年増美人の彼女が、ただの婚期を逃した独身女性だったら、これ程にも騒がれなかったかも知れませんが、厚生労働省で、危機管理や科学技術やイノベーション...
○ 朽木より伸ぶるみどりの芽にあらず接ぎ木のごとき平成・令和 中根誠(まひる野) 前天皇の尊きご意思に拠って、平成時代が三十年で終末を遂げ、新たに令和の世の中とは相成りましたが、本作は、その変則的な年号の交代を見事に言い当てた作品である。 今から三十年前に執行されたる年号交代は、前天皇の崩御に伴って新天皇が即位する、という、憲法や皇室典範に則っての年号交代でありましたが、今回の場合は、未だご息...
「今週の『朝日歌壇』」より 後冷泉院 天喜二年 四月中旬以降 丑時 客星觜参度 見東方 孛天関星 大如歳星
高野公彦選○ 水俣の歴史見つめし恋路島無人の島となりて久しき (熊本市)徳丸征子 水俣市の土地台帳に記載されている恋路島の地名は 「小路島」である、との事。 史料によれば、恋路島は、古くは「こぎ島」「こき島」「こじ島」と呼ばれていたようであるが、「恋路島」 と呼ばれるようになったのは、天正 12 (1585) 年、島原の有馬義純と肥前の竜造寺隆信の戦い に出陣した薩摩・島津軍の若き武将と新妻との恋...
佐佐木幸綱選○ 「たまる」「当たる」「もらえる」だからほんとうにいるものなんてもうわからない (京都市)石原祐子○ 洗壜機に蒸気吹き込み社員らを待ちたり昨日生れし新酒と (長野市)原田浩生○ 教皇のミサの中継見届けて繙く歌集『とこしへの川』 (福岡市)下村靖彦○ 教皇のズケットの先の闇深し原爆ドームは秋雨に洗われている (藤沢市)松山裕○ みすずかる信濃の棚田の大田螺幼な貝...
馬場あき子選○ はろばろと被爆地に来て教皇が核は要らぬと世界に宣す (三原市)岡田独甫○ 爆心地教皇立ちて祈りけり被爆の少年立ちしこの地に (弘前市)今井則三○ 首相よりまず被爆者と被災者の手を取るローマ教皇の手よ (観音寺市)篠原俊則○ サイルイダンの漢字を知りき子供らは雨傘の意味をひとつ追加す (横浜市)小林瑞枝○ 歌謡曲親しまれてる日本のも知っていますか北朝鮮で (...
永田和弘選○ 冥王星は惑星のまま載つてゐる手に馴染みたるこの電子辞書 (茨木市)瀬川幸子○ 「シュレッダー」を広辞苑に読めば「機密保持のために裁断する機械」 (長野市)関龍夫○ 妻の死を看取りて後に気付きたり励まされたのは自分だつた (高松市)島田章平○ きっぱりと核廃絶を求めつつハグしてキスして笑顔の教皇 (三鷹市)山縣駿介○ <ため息は周りを暗ーくするんだよ>言いたいけ...
あれから数分が過ぎてしまい、もう今日になってしまいましたが、その数分前の昨日の夜に、私は眠りから覚めてしまい、それまで見ていた夢の中の世界からも突き放されてしまったんです。 で、これから長々と語り続けるのは、私が不覚にもめざめてしまったが為に、私を突き放してしまった夢の中に話なんですけれども、聞いてくださいますか。 そうですか。聴いて下さるんですか。なら語りますけど、話の途中で聞いているのが嫌...
○ ドオミエの夜行車の図を見てしより混みし乗客俄かに親し 島田修二 掲出の一首は、歌人・島田修二の代表作の一つとして、三一書房刊行の「現代短歌体系10」等、さまざまな「現代短歌選集」の類の書物に納められている佳作であるが、ある筋からの情報に拠ると、今は亡き歌人・島田修二に『朝の階段』という未刊の歌集が在り、この一首は、その未刊の歌集に納め.られている、とか? 一首の意は、「十九世紀・フランスの...
今日の一首(12月13日) 朝日歌壇の選者欄から島田修二の氏名が焼失して久しい! こはごはと吾の差し出す色紙をば「さくらさくら」と染めにき修二 鳥羽散歩
○ 背負ひたる子はジャンボリーを歌ひつつ我とひとつの影を落せり 島田修二 『花火の星』所収。 一九六三年に刊行された歌集『花火の星』は、二〇〇四年九月十二日に川崎市内のあるマンションの一室で不審死を遂げた歌人・島田修二の第一歌集であるが、この歌集に次のような、歌人ご夫妻の蜜月時代に取材した一首が納められている。 ○ 灯消し稚き妻が息づきぬ窓の外に満ちし冬の月光 今、この一首の大意を述べ...
永田和宏選○ 黒シャツにつつまれゐたるやはき胸を警官が撃ち燃ゆる香港 (町田市)村田知子○ 銃撃てば死ぬこと知らぬはずはなく警官発砲ああ香港は (春日井市)伊東紀美子 発砲したのは確かに警察ではあるが、その警察を発砲に駆り立てるのは林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官を肇とした香港政府(中華人民共和国香港特別行政区政府)なのであり、その香港政府の背後に在るのは………………なのである。○ 友は言...
高野公彦選○ 3、5、8、10まで上げし消費税「桜を見る会」その都度増える (大和郡山市)四方護 「上げし」は「上げた」とした方が宜しい! また、消費税率が上昇した、その都度、<桜を見る会>への安倍総理後援会関係者の出席数が急増した訳では無いので、「<桜を見る会>その都度増える」という下の句の表現にも無理がある。 時局便乗型短歌の典型として、選者の高野公彦先生は、この作品を首席入選作とし...
佐佐木幸綱選○ 撃たれてもマスクで顔を覆っても母たちはすぐにあなたと判る (横浜市)小林瑞枝○ 霜月の時雨の走る里山の田に餌わ拾ふ白鳥の群 (仙台市)武藤敏子○ 連なりてダンプが進むふるさとの広き耕土の汚染土怖し (二本松市)開発廣和○ 山並みにビルに林に朝日射す作業車を駆る吾も風景 (富山市)徳永光城○ 若きよりサービス業に身わおけば勤労感謝の日は勤労日 (伊勢原市)丸山貴○ ...
○ 空壜捨場に下りゆきし看護婦がつぎつぎに思ひきり叩きつけてゐる音聞ゆ (酸匂ふ階)○ 医官焼香のこゑに棺にちかづけり氷嚢置く胸を診しは昨夜にて (焼香)○ 解剖台にうつさむとして胸のうへの銀の十字架の鎖をはづす○ 病棟のいくたりが覚めこの鳴ける山の狐をききわびてゐむ○ 立春のひかりのなごむ坂のなかば喪の家の門すぎて来にけり (喪の家)○ いかに生きてあらむと思ふかすかなる賀状も来ずな...
今日の一首(12月10日) 尖閣列島及び北方領土を除く日本国内、本日早朝公開!
〇 多摩川の鉄橋をゆくロマンスカー夕焼けに溺れただ帰るだけ 馬場あき子 『あさげゆふげ』所収。 自らが主宰を務める「かりん」の東京歌会に出席した折りや、毎月二回の朝日歌壇の選歌の為に築地の朝日新聞本社まで赴いた場合など、既に卒寿を過ぎた高齢者であるにも関わらず、歌人・馬場あき子は東京まで足を運ぶ機会が多い。 日頃から「電車は座れなくても平気。1時間くらいは講演だって立ってやりますから。ドア口に...
巻頭28首 馬場あき子作「いきものの夏」抄○ 暑かりし一夏を耐へし朝顔に水やりわれは眼ぐすりをさす○ 宵の明星こよひは月とともにありわが氷庫桃を秘めてうるはし○ 盆燈をともせば生者ひとりなり帰り来し死者に向きて夕餉す○ 長き世は時効のがれて棲むごとし目高飼ひなれ秋に入るなり○ 風呂場より守宮つかみて逃がしたる感触のこる指に梨剥く○ 沙羅の木に羽化せし蟬の青翅のまだやはらか...
〇 イブ・モンタンの枯葉愛して三十年妻を愛して三十五年 岩田正(『郷心譜』所収) 掲出の岩田正作の鑑賞に資するために、昨日に続いて、馬場あき子著『穗村弘が聞く馬場あき子の波乱万丈/寂しさが歌の源だから』から、関連記述を引用させていただきます。 ── 前回は、昭和三十八年が人生の転換期であったと伺いました。今日は、その頃の話をさらにくわしく伺います。 馬場 三十七年に、家を出る決心をしたんですね。...
○ ふくろうの鳴く谷戸に住み見定めん一人になりしわれの時間を 下村道子 馬場あき子著の『寂しさが歌の源だから』は、「穂村弘が聞く馬場あき子の波乱万丈」というサブタイトルがいみじくも示しているように、「当代人気の歌人<穂村弘>の尋問に答えて<馬場あき子が自らの波乱万丈の半生に就いて語る>」という型破りの馬場あき子自叙伝であるが、その第十章「<かりん>創刊前夜」に、掲出の一首の作者であり、食物学者...
○ あげますと言いても捌けぬチケットを公演のたび憎みておりぬ 高波喜代子(町田) 結社誌「かりん」2019年11月号所収。 作中の「チケット」とは、作中主体(=作者)の所属する合唱団の定期公演のチケットでありましょうか? 本作の作者・高波喜代子さんは、結社誌「かりん」の<作品Ⅰ・A>欄に作品が掲載されている中堅歌人であるが、彼女は亦、とある合唱団にも所属していて、お子様方を一人立ちさせた後のゆとりある...
〇 「補助犬の里親求む」を通り過ぎ改札を過ぎ過ぎてった今日 法橋ひらく 『それはとても速くて永い』所収。 自ら<幼児性自閉症>の罹患者を名乗る彼とて、既に成人に達していて、しかも大卒とあれば、職業を持ち、職場と言うものがあるはずである。 聞くところに拠ると、彼の職場は、ある公共図書館。 即ち、彼は正式な公共図書館職員であると臨時職員であるとに関わらず、毎週五日は、彼の職場たる図書館に通わなけれ...
今日の一首(12月5日) 本日未明、本邦初公開!乞う、熟読!
〇 おでん屋の女将がおでんを仕込むころわれは資料のページをめくる 田村元(りとむ・太郎と花子) つい先日、七月半ばから十一月の初めまでの四か月余りも私を苦しめた腰痛から解放された喜びと共に、久しく中断していた断捨離への思いが再び蘇って来た。 そこで、私は、黴の匂いの立ち込める我が家の八畳間の押し入れを空けて、その中に幾冊となく積まれていた雑誌類の中から、角川「短歌」の過去三年分を選び出し、断腸...
○ 晩年のわれをみてゐるわれのゐてしずかに桃の枝しづくする (改まらず)○ 年改まりわれ改まらず川に来て海に引きゆくかもめみてゐる○ 夕ぐれの鵜の森に鵜は帰りきて川闇重くふくらみはじむ○ 負けて悔しいといふ唄久しくうたはねど三月は来ぬ雛を飾らん○ いもうとが欲しかつたわれ年たけて雛あがなへり相向かひをり○ 桃咲けどわが雛の髪みだれなし葵上のやうなかなしみ○ 梅咲いてひひな斎ける七日ほどく...
〇 みめよくて大力にて大食の僧の自在をめでし兼好 馬場あき子 『あさげゆふげ』所収。 兼好法師の著『徒然草』の第六十段に取材した一首なので、以下、原典を原文のままに示したい。 真乗院に、盛親僧都とて、やんごとなき智者ありけり。芋頭といふ物を好みて、多く食ひけり。談義の座にても、大きなる鉢にうづたかく盛りて、膝元に置きつゝ、食ひながら、文をも読みけり。患ふ事あるには、七日・二七日など、療治と...
今日の一首(12月3日) 日本全土、本日早朝大公開!超出血サービス!
〇 新百合ヶ丘のオーパの地下に針買ひにゆくとき小さく啼いてゐた蟬 馬場あき子 掲出の一首を収める『あさげゆふげ』(短歌研究社刊・2018年11月13日)には、2015年11月から2018年5月までの作品が収録されている、との事。 あらためてこんな事を記すのは、本作に詠まれている「新百合ヶ丘のオーパの地下」には、その頃も現在も、柿生にお住いの馬場あき子先生がわざわざ「針買ひにゆく」ほどの老舗の雑貨店や小間物店な...
○ デモ隊のあいだを抜けて顔低く電力会社の社員帰りゆく○ ぽむぽむとペットボトルの水を押す 炉を冷やしいる水もある今○ 横波に揺らるる船に見ていたり肌色卵のような原発○ 贄(にえ)のごとき紅葉に遇えり中立とは何も歌わぬことにはあらず○ さむざむと風は比叡を吹き越すも酢の華やかに匂える夕べ○ ふるえつつ木から飛びゆく花びらのすべての中の一つ見ており○ 「デモに行きました」と言えばビール飲む上...
○ 荒塩を舐りてほゆる大牛の愚鈍なまでの動作を憎む 坂田博義 牧童が飼い牛に塩を舐めさせている場面に私は出会ったことがありますが、ものの本の記すところに拠ると、牛や鹿などの偶蹄目の動物は、野生状態に置かれていても、自らの健康を保つために岩塩を舐めたり、塩分を含んだ草木を食する、と謂う。 また、牛や鹿と同じ偶蹄目に属する動物の<ターキン>は、自らの身体に補給する塩分を求めて、標高差2,500mを移動し...
〇 書きかけの線路を歩いて駅へゆくきのうの子らのまだ眠る朝 藤田千鶴 『白へ』所収。 幼い者たちが団地の路上に白いチョークで描いた線路伝いに、私は幾たび横浜総合病院のリハビリ室に通ったことか! 彼らの多くは、その工事途上に「夕ご飯ですよ!」などとママに呼ばれるか何かして、線路工事を全うすることが出来なかったものと思われ、彼らの描く線路の多くは、電車道や鉄道線路と言うよりも、むしろ森林軌道と...
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