※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
ギルド商会に到着した三人は、皆に驚きと喝采を浴びていた。「凄いな。 こんな大きなボアを二人でやっつけたのか?」「お前らどれだけ強いんだよ。」「さすがマキノが惚れるだけの事はあるよな。 今まで軽んじてすまなかったな。」「カルロ、流石だな。 結婚してから魔物討伐はやってなかったよな? 腕は鈍っていないんだな。」類とカルロを褒めたたえるハンターや村人たち。そんな中、つくしは商会長から傷薬と綺麗な布、そし...
約3か月が経った。つくしが作った薬は良く効くらしく、今では他の町からもギルド商会に注文が入る程だ。またハンターからの評判も良く、傷薬はもちろん、打ち身に効く軟膏や栄養ドリンクも売れる。そして子供用のシロップタイプの風邪薬も評判になった。今まで薬は苦く美味しくない物だったが、これは進んで飲んでくれる。もちろん注文が入るからと言ってすぐに作れるものではない。森の入り口にあった薬草も、少しずつ奥へ入らな...
つくしは薬草を摘み、籠に入れている。その隣には周囲に気を配りながら類も手伝っている。二人はつかず離れずの距離を保っている。そして二人以外の音を察知した時には、類がサッとつくしの手を止める。つくしは動きを止め、類の視線の先を見る。するとピンと立っている長い耳が見えた。ハギ―だ。類は静かに剣を抜く。つくしはその場に身を屈める。そしてハギ―がこちらに向かって駆け出したときに、類は剣を振るった。ザシュッどさ...
アレッタの店で、つくしは小さな巾着二つと、少し大きな巾着を一つ作っている。小さな巾着はもちろん転移魔法が込められた紙を入れる為の物。もう一つの巾着は財布代わりだ。今は類のポケットに全てのお金が入っている。その間、類は店内の服を物色中だ。すると布で出来た肩掛け鞄を見つけた。「牧野。 これも買おうか。 そうすれば大きな袋は薬草専用に出来るだろ?」「だね。 類に合うものを選んでて。」「分かった。」類は数...
朝日を感じ、つくしは目を開ける。そこには類のシャツが見える。(つ:あっ/// 昨夜、怖い夢を見てから///)途端、昨夜の事を思い出し頬を染める。スネイクが大きい口を開け向かってきた事は、かなり衝撃を受け恐怖を感じた。もちろん無事退治し、それ以降は考えないようにしていたがまさか夢で再びあの光景を見るとは思わなかった。それから類の優しさに救われて、ぐっすり眠れた。そろそろと顔を上げると類の顎が見える。今日で...
自宅へ戻った二人は、すぐにランプにオイルを入れつけてみる。「明るいね。」「ん。 十分使えるな。」「うん。 じゃあお湯を沸かすね。 沢山汗を掻いたし、類から行水してね。」「分かった。」お湯が沸くと、ランプを一つ持ち洗面所へ向かった。天井にひっかけるフックがあり、そこにランプ吊るすと部屋全体が明るくなった。「なるほど。 こうするのか。」類はお湯が冷める前にサッと行水する。そしてつくしのいるリビングへ戻...
類とつくしはもう魚釣りをする気持ちにはなれず村へ帰る事にした。蛇に似た魔物の処分に困ったものの、魔物の体には魔石があり、それは売る事が出来るとティアから聞いた。食べられるかどうかは疑問だが、魔石だけでもお金に換えられるならギルド商会へ持っていきたい。それにここに放置すれば他の魔物を呼び寄せるかもしれない。まるでロープのようにクルクルと巻き肩に乗せる類に、やっとつくしは笑顔を見せた。「ロープみたい。...
釣り道具を持ち川へ向かう途中「あっ、ティアに餌は何が良いか聞いてみようか?」「そうだな。」二人は食堂に顔を出す。昼過ぎで客は誰もいない。この世界に来て三日目だが、ここでは二食が当たり前のようだ。「いらっしゃい。 マキノ! ルイ! 食事?」問われて二人は顔を見合わせる。朝から薬草を取りに行きお腹が空いているし何より水分補給したい。「じゃあ少し食べて行こうかな。」「サンドイッチ一つとジュースを二つ下さ...
朝食を取り洗濯物を干した後、二人は二日ぶりに森に足を踏み入れる。つくしの髪はアレッタに貰った紐で括られている。そして入口周辺の薬草から取り始める。「これが腹痛に効く薬草。 こっちが頭痛に効く薬草。 やっぱり森に入ると薬草があるね。 村には何一つないのに。」「薬草に適した環境なんだろうな。 それに採取する人が少ない? 医師や薬師がいないと言っていたし。 それに多少の知識があったとしても魔物が出るかも...
家に戻った二人は早速盥を置いてみる。まるであつらえたかのようにぴったりと納まった。玄関前に置いていた薪を裏口へ運び、数本を竈に入れる。「薪は火が消えないようにしないと、使いたい時になかなか火が付かないと思う。」「うん。 中が広いから調理をしない時は竈の横の方に置くみたいだね。 火かき棒があるし。」「だな。 それと今夜はタンポポ亭で食べるとして、明日はどうする? 朝食を食べてから薬草取りに行くだろ?...
掃除道具も一揃えあり、遠慮なく使わせてもらう。食器や調理器具もある程度揃っており、いつでも娘が帰ってこられる状態になっていた。それを思うと、絶対にどこかで生きていて欲しいと願わずにはいられない。そこにティアがシーツとランプを持ってきた。「どう? すぐに住めそう? これアレッタから預かってきた。」「あっ、ティアさん。 ありがとう。」つくしはシーツとランプを受け取る。ランプはオイルが入っており、すぐに...
「おはようございます。」「あっ、おはよう。」店員は2人が手を繋いで降りてきた姿を見てニンマリと笑う。類の方は堂々と、そしてつくしの方は頬を染め下を向いている。二人は寝不足のようで、無事愛し合い満足した男性と、奔走された女性の姿に映る。店員は朝食の乗ったプレートを持ち、すぐに二人の席へ向かう。「昨夜は、あまり寝られなかったようね。」「はい。 あんなにすごいとは思わなくて///」店員はうんうんと頷き、つく...
※周囲にお気をつけご覧ください宿の窓辺に二枚の下着と類のシャツを干し、ランプの灯を消してそれぞれベッドに横になる。(類:自身のアレを見られるのと同等に下着を見られる事もこれほど恥ずかしいなんて。きっと知り合ってまだ一日も経っていないからだろうけど、これがまだ続くのか?朝になると自分の部屋に居たって事になると良いんだけど。)(つ:二つ並べて干すなんてまるで恋人同士みたいだよね。 まあここでは夫婦にな...
二人は1ルーツを渡し店を出た。「凄く良い人でしたね。 サービスとして手ぬぐいを貰ったし。」「ん。 まああっても困らない物だし。」「はい。 でもどんな仕事を斡旋するつもりでしょうかね? 畑仕事ならまだしも土木関係はやった事ないんですけど類は出来ますか?」「土木関係?」「はい。 汗を掻くし汚れると言って手ぬぐいをくれたでしょ? って事は重労働の仕事を斡旋するつもりですよ。」途端、類はプッと笑いを漏らす...
部屋に入った二人は、サッと室内を見る。8畳ほどの広さでベッドが二つに小さなテーブル一つと椅子が二脚。そのベッドもシングルサイズ。(類:狭いな。 とりあえずベッドは二つあるが手を伸ばせば届きそうな距離。 ベッドにはスプリングも無く硬い。 まあシーツは綺麗にされているみたいだから贅沢は言えないか。)類は室内をマジマジ見て、ベッドの硬さを確かめるように手で押さえる。つくしはパッと室内を見た後、もう一つの...
森から抜けるとそこは広々とした平地が広がり、田舎の風景を思わせる様な景色だった。そして土道の先に転々と家が見える。「村だ。」「やっと抜け出せたな。」「うん。」魔物の森を抜け出た二人はホッと安堵する。そして近くで畑仕事をしている女性に声をかけた。「すみません。」「はい。 何ですか?」緑色の髪に青い瞳の女性は、やはりここが異世界である事を教えている。二人は驚きを表情に出さず、類は手にしているハギ―を掲...
類とつくしはデイジー村へ向かって歩いているが、明らかに違和感を感じていた。類は遠くのものまではっきり見えるし音も良く聞こえる。それこそこの先に小川があるのかせせらぎのような水音が聞こえる。つくしは道に生えている草の名前と効能、採取や処理の仕方などがパッと思い浮かぶ。「あのっ、ちょっとすみません。 先ほどからあたしの頭の中にその辺の草の情報が入ってくるんですけど、類も入ってきます?」(類:牧野も変化...
「あのっ、あたしの願いに『田舎のような緑豊かな場所で過ごしたい』という物があったので、多分こんな場所になったのかと。」「なるほど。 あり得るな。 俺も『現実に起こり得ないようなハプニング』と願ったからこんな事になったのかも? 他にもいろいろ思いながら寝落ちした。」「あたしも、いろいろと思いながら寝ました。」「ちなみにどんな願い?」(つ:それを言うの? ドン引きされるよ。 単なる恋愛だよ? しかもキ...
夢の世界だからと思う二人。それぞれ自分の夢の中に偶然にも同じように夢だと思い込んでいる異性が登場しているという設定だろうと。ただ心地よい風が身体に当たる感じや小川のせせらぎのような音が聞こえたりと夢にしてはリアルに感じがする。何より裸足の為、地面の感触がリアルだ。「リアルすぎません?」「すぎる。」「夢なんですから靴が欲しいと言えば出てくるんですかね?」つくしの言葉に類はなるほどと思う。(類:夢とは...
類は帰宅後スーツのポケットから占い師に貰った紙を取り出しベッドに放り投げる。そしてとりあえずシャワーを浴びるためにバスルームへ向かった。それにしても変な占い師だった。まるでどこかで会話を聞いていたのかと思うほど言い当てていた。しかもこんな紙切れで良い夢が見られる?頭をタオルで拭きながらもう一度紙をじっくり見る。少し厚めの紙で手書きで魔法陣のような物が書かれている。確か世界が変わるような時間を過ごせ...
類は真っすぐ駐車場へ向かうが道の端に小さな机を出した占い師がいた。その机の上には水晶らしきものが置かれている。こんな場所で客が来るんだろうか?だが酔っ払いのようなアルコールの入った人とか、若い女性などは興味本位でやるかもしれない。ただ通行人の目があり神妙な悩み事は話せないだろうし、なにより占い師はずっと水晶を見ているのか視線を上げない。これじゃ占いをしてもらいたい人も近寄りがたい。類の予想通り、チ...
※ファンタジー色の強い作品となります。 類は司がNYから一時帰国しているという事で皆で集まる事になった。場所は美作が経営している創作レストラン。比較的安価で美味しいという評判のレストランだ。何時もより少し早めに仕事を終え、類は真っすぐそこへ向かった。既に25歳になっている4人は、仕事に奔走している。もちろん大学卒業後まだ三年ほどしか仕事に携わっていないが、それでも会議などでは意見を求められ最終判断を任...
更に三年後の三月。つくしは大学を卒業し四月から花沢物産に勤めることが決まっている。配属先は総務部の受付業務になった。そこに至るまで紆余曲折があった。もちろん最大の難関は類だ。自分の秘書以外は認めないというスタンスだったからだ。だが今の類の役職は部長だ。入社一年目から重役職を与えるわけにはいかないという物だが、実際の仕事は重要な会議には出席し判断を仰がれる立場で一般の部長職よりも重要な立場にある。し...
フランスでは静が途方に暮れていた。大学のクリススマスパーティーのパートナーがいないからだ。去年まではこの時期になれば沢山の男性から申し込みがあり、その中から容姿や家柄を考慮し選ぶ事が出来たが今年は誰からも誘われない。一人で出席しても良いのだが、それでは恋人はもちろん友人もいない寂しい人と言う視線を浴びることになる。背に腹は代えられないと自分の方から誘ってみることにした。『ジョージ。 クリスマスパー...
10月になった。二人は鎌倉に来ている。テレビで巡礼古道が紹介され、まだ足を踏み入れていない道がある事を知り、是が非にでもそこを調べたくなった。そして以前と違い二人には一人のボディガードを必ずつけるようになった。何かあってからでは遅いと悟ったからだ。入り口には『古道巡礼』と書かれた木で出来た小さな案内板があるのみ。気づかず素通りしそうな細道だ。人一人が通るぐらいの幅しかないが、二人は並んでその道へ入...
ガラッ病室のドアを開けると、ベッドを少し起こした状態でこちらを見ているつくしと目が合った。瞬間、つくしが笑う。その笑顔に類は胸にグッと来るものを感じた。そして足をベッド脇まで進め近くの椅子に座ると直ぐに手を取る。その手は暖かい。再び、類の胸がグッとくる。「まきの、、、」「るい、、ありがとう。」「ん。 良かった。」この温もりを失ったら俺はどうなっていたんだろう?それを考えるだけで怖くて仕方ない。「類...
病室に総二郎が顔を覗かせた。つくしには親戚たちが付いている為、病室を出て廊下に出る。警察への説明が終わったのか三人が揃っていた。その三人を連れ近くの談話室へ向かった。「それで牧野の状態はどうだ?」「落ち着いているし意識もはっきりしてる。頬を叩かれたことによる腫れと、肋骨のヒビ、それと背中を包丁で切り付けられ15針縫ってる。三階から飛び降りたけど、上手く受け止められたみたいでその影響はないみたい。」...
303号室と思われるベランダへ向かって声を上げ続ける。「牧野! 牧野! そこにいるんだろ!」すると突然そのベランダに牧野が現れたと思ったら躊躇することなく柵に手をかけた。飛び降りる?そう思うと咄嗟に体が動きベランダの下へ向かう。「まきの~~!!」思った通り牧野は柵を蹴るように飛び降りた。その背後にキラリと光るものが目に入ったが、そんな事よりも牧野だ。牧野の落下地点へ走ると手を広げる。必ず受け止める...
つくしは恐怖で叫び声も上げられない。ただ、こんな男に犯されたくない!と強く思う。そして、、、蒔乃の心情を思い出す。楓弥以外に触れられたくないという強い気持ちから自ら命を絶った。それ位の気持ちは今のつくしにもある。ただ、、、自分は蒔乃と違い動ける体力がある!そう思うと必死に抵抗する。諦めない!諦めたくない!!類以外の人に触れられたくない!!ブチブチと制服のボタンが千切れるが、お構いなしに両手両足をば...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
つくしは類の家から自宅に戻った後、すぐ父親に報告した。『花沢類さんの家に一緒に住む事になったので土曜日にこの家を出ます。』その報告に父親は一瞬間があった後、、『そうか。良かったな。』と突然の同棲宣言に戸惑いつつもホッとした返事があった。だが土曜日には用事があり引っ越しの手伝いが出来ないと言われ、代わりに二番目の兄の徹を寄越すと言われた。だったら自転車を持っていきたいのでトラックで来て貰えば助かると...
その夜、あきらと総二郎から電話があり報告は1月5日の初出の後でとなった。初出は忙しいと拒んだが二人が納得するはずもなく、類はこの経緯をどこまで話すべきか悩み数日を過ごした。まずは父親に牧野つくしという人物の事を確認してからだと思いながら。そして1月5日を迎えた。類は少し早めに出社し社長室へ向かった。すると父親に満面の笑みで迎えられた。「さっそく報告に来てくれたのか?」「そんなに良い報告ではないのです...
運転手は類が女性を伴い乗り込んだことに内心ビックリした。だが表情には出さずそのまま類の自宅へと車を発進させる。そうしながらも後ろの二人の会話を漏らさぬよう聞いていた。「一応東京都だけど周囲を山に囲まれてる場所だけど。」「はい。」揺るがないな。「駅まで徒歩30分だけど。」「自転車に乗れるので大丈夫です。」お嬢様が自転車で駅まで?「車は?」「免許はあるんですけど車は持ってないです。」免許は持っているんだ...
類は過去の失恋により恋愛が恐くなり、それを見かねた父親が見合いの席を用意したと判断する。「恋愛に否定的って事?失恋したとか?」「いいえ。恋愛をした事がありません。ただ家庭を持ちたくないだけです。」「なんでそこまで?でも恋愛ではなく政略結婚させられるかもしれないけどそれで良いの?」「いえ。きっと政略結婚も無いと思います。今回は父の気まぐれだと思っていますから。」きまぐれ?俺との見合いが?そんなにハー...
つくしは診断書を手に取る。そこにはED(勃起障害)と書かれている。「大学を出てからこの状態。だから誰とも付き合っていないし付き合おうとも思わない。何も知らない父親は色んな女性との会食の場を設けてくれるけど、そもそもこんな体では結婚は出来ない。相手にも失礼だからね。だからこの話は、、、」「ずっと一人で悩まれていたんですか?」つくしは類の続く言葉を遮り尋ねる。これはすごく大変なことだ。確か御曹司はまだ2...
1月3日。つくしは11時20分にメープルへ到着した。そしてフランス料理店へと向かうと入り口のボーイに告げた。「花沢様で予約している者ですが。」「伺っております。こちらへどうぞ。」つくしは緊張しながら歩く。メープルは父親の仕事の関係で何度か訪れた事はあるがそのどれも会議室だった。その為、高級レストランに緊張している。というのもドレスコードがあるからだ。そこまで厳しい物ではないが女性はワンピースやスー...
あきらは初めて他人に自分の気持ちを打ち明け、照れた表情を見せながら話す。「母親のマナー教室へ通っている女性なんだけど、いつの間にか妹達と仲良くなっててさ。俺に色々聞かせるから一度見てみようかと教室を覗いた時に妹に紹介されたんだけど、俺に取り入ろうとはしないし自分をアピールもしねぇ。単なるお兄さんという扱いでさ。マナー教室は美作の名前は一切出していねぇし、そこのオーナーが美作商事の社長夫人とも書いて...
類とつくしの会食の日取りが決まった。それは年明けの1月3日だ。聡はすぐに類に社内電話をかける。『類。1月3日にメープルで会食をするように。』「この前、話していた人?」『そうだ。』やっぱり、、と類は思う。あの時は相手が断る可能性があると示唆していたが、やはり断る事は無かった。つまり相手の女性も会食の相手が俺だと聞いて乗り気になったんだろう。「食事をするだけで良いんだよな?」『もちろんその後に気が合うな...
聡は本村と別れた後、すぐに類の執務室へ向かった。「何?」「まだ日程は決まっていないが会食へ行ってもらうことになるからそのつもりで。」「また?」類はあからさまに嫌そうな顔を見せる。「もちろん会食の場すら断られる可能性もあるがな。」「断られる?」類にしてみれば考えられない事だ。花沢物産御曹司との会食を断る女性がいるとは思えない。何時も俺が嫌がっているからそう言えば乗り気になると考えているとしたらお粗末...
12月末。花沢物産本社ビルに政治家の本村が秘書二人を引き連れやってきた。そして会議室で社長の聡と面会した。「こんにちは。いつもお世話になっています。」「こちらこそお世話になっています。」二人は固い握手を交わす。「今回の選挙も無事当選できました。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」「いえ、こちらは大したことはしておりません。」二人はどっしりとソファーに腰を下ろす。「かねてより伺っていました道路拡張工事...
結婚式類は緊張の面持ちでつくしが入ってくるのを待っていた。参列席には類とつくしの家族その後ろにあきら、総二郎、桜子夫妻、滋が座っている。するとドアがバンッと開き、司が入ってきた。皆はつくしが入ってくると思っていた為、驚く。「お前なぁ。来るならもう少し早く来いよ。」「悪りぃ。さっき着いたばかりで、これでも車を飛ばしてきたんだぜ。」「こっち来いよ。」あきらと総二郎は司を自分たちの真ん中に座らせると、類...
類とつくしは結婚式の為、東京へ向かった。そして挙式前日には、花沢家の好意でつくしは家族水入らずでホテルで一泊することになった。久しぶりの再会に、つくしは晴男、千恵子、そして進と順にハグをする。「つくし、おめでとう。」「元気そうで良かったわ。」「まさか姉ちゃんが花沢さんと結婚するとは思わなかった。」「それはあたし自身が思ってること。人生何があるか分からないね。」三人はつくしが一段と綺麗になり笑顔でい...
夕食は楽しい物となった。久しぶりの豪華なディナーにつくしは舌鼓を打つ。「美味しい。それにやっと生野菜が食べられます。」「そういえば向こうでの食事はどういう物だったの?」「ヤム芋を蒸した物を潰してマッシュポテトにしたり、おかずは缶詰が多かったです。でも類さんがカップ麺を持ってきてくれてそれはそれは凄く美味しくて。」「日本では塩分が高いとか良いイメージを持たれないカップ麺も、ナイジェリアでは貴重な物だ...
『今、幸せ?』の作品に沢山のコメントありがとうございました。期間が短く最後まで読めなかった方からもう一度公開を望む声がありました。また最後まで読まれた方からも、もう一度読み返したいというお声も多数ありました。一度きりの公開と決めていましたが少し考えますね。今日も石川県で大きな地震があり、何時どこで起きるか分からない状況。物価が上がり、食材も信じられない価格になり、今月から電気代も上がるとか。「やっ...
司と楓の会談から一週間後、キャサリンの陣痛が始まった。司は仕事中だったが急いで病院へ駆けつける。そこにはキャサリンの母親もいた。『そろそろですね。』『司さんも待ち遠しいでしょう?』『はい。どちらが生まれるか楽しみです。』司はドキドキしていた。子供が生まれる事でやっと白黒つけられると思っているからだ。《どちらが生まれるか楽しみ》というのは、自分の子供かそうでないかという意味で言っている。もちろん母親...
類は仕事を終えると直ぐつくしの病院へ向かった。コンコン『はい。』つくしの声が聞こえ類はそっとドアを開ける。「俺。」「いらっしゃい。仕事はどうだった?」「順調。社員もやる気満々で発売を待つばかり。」「何とか成功させたいね。」「是が非にでもね。」類は近くの椅子に座るとつくしの手を握る。「ご飯は食べた?」「うん。」「言葉はどう?」「全く分からない。医師は英語で話してくれる人もいるけど看護師はほとんどフラ...
翌日、類は会社へ向かった。ブラックソープの商品は既に完成している。それをどう販売するかの最終確認だ。一部は桜子の会社のパッケージで作り、それは既に日本へ送っている。販売方法はそれぞれ好きな方法で売り込む事になったが、発売日だけは合わせる事にした。『販売日は今日から二週間後。日本に送ったSAKURAKOと発売日は同じ。中の商品も全く同じ。パッケージだけが違う事は承知の通り。つまり、、負けるわけにはいかない。...
フランスに着き、救急車に乗って病院へ運ぶ。スムーズに移動が出来るのは両親が根回しをしてくれたおかげだ。その最中も、つくしはしきりに申し訳ないと謝っていた。だがどこかホッとした表情にも見える。それは類も同じだ。病院内の個室に運ばれ、簡単な検査が行われた後やっと二人っきりになった。「痛い所はない?」「大丈夫。痛み止めが点滴に入っているから。」「あんたの事だから中途半端で仕事を放りだしたとか思うなよ?あ...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございます。以前少し連載しました『あんた、誰?』という作品ですが、似たような作品があると指摘を受け取り下げました。そこから指摘部分を修正していたのですが、このまま公開するのもどうかと悩んでいました。ですがこの作品に費やした時間があまりにも長く(修正も含め)、このまま埋もれさせるのもどうかと思い期間限定で公開させていただきます。全部で182話あります。期間は3...
オヨ州に着いた類は、その足で作業場へ向かう。そこには一生懸命働いているサニ達がいた。『あっ、類!恋人はどうなった?』『昨日は突然キャンセルしてごめん。牧野が勤務していた診療所が窃盗団に襲われ左肩と右脇腹を銃で撃たれたけどなんとか命は取り留めた。』『良かった。』サニ達はホッと安堵し喜び合う。『それで本当は後三日はここに居る予定だったんだけど、病院についていたんだ。だから俺は今日までとなる。何か聞いて...