※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
もうすぐお盆休みという頃。そろそろ寝ようかという時刻につくしのスマホが鳴った。表示を見ると田村からだ。(つ:田村さん? こんな時間に? 明日は北海道出張だよね?)「はい。 牧野です。」「あっ、牧野さん。 こんな時間に申し訳ありません。」「いえ。 大丈夫ですが何かありましたか?」「急な話で申し訳ないのですが、私の代りに明日の北海道出張に行ってもらえないでしょうか?」その言葉に、つくしの眠気が吹っ飛ん...
類は出社するとつくしの机の上に紙袋を置く。その中は箱入りのお菓子のようだ。「お土産ですか? ありがとうございます。」「いや。 ワインありがとう。」「いえ。 ゆっくり出来たのなら何よりです。」「また頼む。」「はい。」それだけ告げるとサッと奥の執務室へ入っていった。そのやり取りを見ていた田村は笑みを漏らす。(田:昨日、福岡空港でサッと土産物店へ入る類様を見た時にはわ我が目を疑いました。そして一通り見た...
つくしは総二郎とあきらとの摩訶不思議な会食を終え自宅に戻った。そしてサッとお風呂を済ませるとスマホを手に取りオンラインゲームを始めた。するとすぐ花から声がかかった。<こんばんは。 今日は遅いね。><こんばんは。 急に食事会に誘われて。>(類:急に? モテモテだな。 まあ一緒に居て楽しいんだろうな。)<盛り上げ役? きっと草君がいると楽しいんだろうね。><いえいえ。 そんなんじゃなくて。 GWに体験教...
「あのさ。 つくしちゃんは秘書検定とか何か勉強してた?」「いえ全く。 面接時の希望も総務で出していたんですけど、なぜか秘書になっていました。」(総:田村さんが選んだんだろうけど選考基準が全く分からねぇ。まあ根性があるし俺達を見ても態度を変えねぇという点は類の秘書として合格だな。)(あ:自然体で肝が据わってんじゃね? 俺たちを前にしてもこうしてバクバク食べるという事は恋より仕事第一だろうしな。)「そ...
店内に案内され個室に入ると総二郎が笑いながら片手をあげる。つくしは自然にポッと頬が染まる。(つ:カッコいいんだよ。 専務も西門様も! それは間違いない!でも専務なら絶対こういう行動はとらないのよ。この軽さというか場慣れというか、、でも自然に雰囲気を柔らかくしてくれる。)(総:やっぱり来てくれた。 こういう時、真面目な性格って扱いやすよなぁ。)「約束の時間より早いけどそんなに俺と会いたかった?」「ち...
類と田村は直接福岡出張へと向かった。留守を任されたつくしはフランスから届いたメールに悪戦苦闘していた。フランス語が全く分からない為だ。その為、翻訳ツールを使いチェックしていた。「はぁ。 田村さんを尊敬するわ~~。専務もペラペラだというしあたしも習うべきかなぁ。」一人という事もあり、自然に声に出るつくし。一人で仕事をするのは気楽な反面、少し寂しい。室内がシーンとしているからだ。そんな中、受付から『牧...
GW明け。出社した類につくしは元気良い挨拶をする。「おはようございます。 茶会では色々ありがとうございました。」「いや。」それだけ告げるとサッと執務室に入る類。(つ:やっぱりオンとオフが違いすぎる。 でも仕事中はこれぐらいの方が良いかも?若いし舐められたくないという気持ちから自然に行動に出てしまうんじゃないかな?)(類:張り切ってる。 まあ茶会が気分転換になったんならそれで良い。)つくしは仕事に集中...
「今日は美味しい料理を奢っていただきありがとうございました。」「いや、これぐらい。 それより顔が赤いけど大丈夫?」「大丈夫です。 足はしっかりしていますから。」「そう?」確かにしっかりと歩けているようだ。「じゃまた仕事で。」「はい。 GW明けからまた頑張ります。 今後ともよろしくお願いします。」つくしはぺこりと頭を下げる。そして類が車に乗り込み発車するのを見送った後、駅へと向かった。(つ:比較的言葉...
つくしは前菜を前にポカンと口を開ける。(つ:これパスタじゃない。 どう見てもオードブル? 前菜? お通しとかじゃないよね?)「専務。 これは?」「ん? アンティパスト。 つまり前菜。」「ですよね。 パスタを頼んだのに何故前菜が?」「何故って、、、パスタの前に出るのが当たり前だろ?この後にパスタ、肉料理、サラダ、デザート、カプチーノだろ?」「つまりコース料理ですか?」「そう、、、だけど?」(つ:失敗...
車が停まり、その場所を見てつくしは驚く。「専務。 ここは?」「知らない? メープル。」(つ:知ってる。 高級ホテルで有名だから。 でもなんでここに?)運転手がドアを開け二人は降りる。つくしはキョロキョロと周りを見渡す。(つ:もしかしてこの周辺にパスタ屋があるんじゃ?メープルは単に車から降りやすい場所だったという可能性もあるよね?だってメープルにはパスタ屋はないでしょ?)(類:そんなにメープルが珍し...
ホテルの茶会会場を出る類とつくし。つくしは平謝りだ。「時間を取らせてしまい申し訳ございません。本日はいろいろ勉強させていただきありがとうございました。 貴重な体験でした。GWが明けましたらまた仕事を頑張りますのでよろしくお願いします。それでは失礼いたします。」深々とお辞儀をし、つくしはサッと踵を返した。(つ:足がしびれるという失態の上、専務を待たせ片付け作業も遅らせる結果に。完全なる失態! GW明けか...
順番が来て二人は総二郎の前に座る。二人が最後なのだが、総二郎は気を抜くことなく茶を点てスッと類の前に置く。類はつくしに軽くお辞儀をし、綺麗な所作で頂いた。次につくしの前にお茶が置かれた。(つ:まず隣の人に挨拶、、って、あたしで最後じゃない! この場合はどうするの?ええいっ! 最後なんだから点ててくれた西門様にお辞儀して、専務にもお辞儀すれば良いんじゃない?作法は気にしなくて良いって言ってたし間違っ...
GW茶会当日。つくしはホテルエントランス前で類の到着を待った。茶会は13時~16時。つくしとしては13時には受付を済ませたかった。嫌な事はサッサと済ませたいという気持ちだ。それが、、、つくしは「はぁ」と深い溜息を吐く。それはGW前のやり取り、、、*『専務。 茶会はホテル前に12時半待ち合わせで良いですか?』『嫌。 混む。』(つ:確かに初めの方が混む。 でもその方が沢山の人がいて作法など気にしなくて済む...
その日、つくしは早速『花』に相談した。<花さん、こんばんは。><こんばんは。><今、時間大丈夫ですか?><大丈夫。>類は親友達との四人の部屋ではなく『花』個人に話しかけられたことが嬉しい。単に今あきらと総二郎がゲームに入っていないだけかもしれないが。<実はですね。 せっかくのGWなのに上司と出かけることになったんですよ。>(類:恐いと言っていた上司だよな? もうすぐ入社して一か月になるけど今も緊張す...
つくしは執務室から出ると田村に相談する。「田村さん、田村さん。」「はい? 何でしょう?」「GWに茶会が行われるそうで、そこに招待されたんですが。」(田:ここに来た口実でしょうか?)「そうですか。 西門様の茶会は大変人気がありチケットもなかなか取れないと言われています。良かったですね。」(つ:全然良くない! そんなに人気がある茶会ならあたしが行かなくても良かったじゃない。最近、茶道人気が無くなったって...
執務室に突然総二郎が入ってきた事で、類はパソコンから視線を上げる。(類:近々来ると思っていたが本当に来た。 前室に牧野が居るはずだし、もう用は済んだはずだろ?)「もう帰れば?」「おいおい。 開口一番それは無いだろ?」「でももう目的は達成しただろ?」「第一目的はな!。」「第一目的?」類は怪訝な表情で総二郎を見る。「まあそんな怖い顔するなよ。 それにしても確かにお前が言っていた通り真面目そうな子だな。...
もうすぐGWという頃。つくしの元に受付から電話があった。『専務に西門様が来られています。』(つ:えっ? ニシカド? 今日は訪問客の予定はないはずだけどアポなしの客人? どこの会社?)つくしはパソコンに入っている取引先検索を呼び出し<ニシカド>と入力しながら田村に問う。「田村さん。 アポなしでニシカド様が来られたそうなんですが、どちらの方ですか?」「あぁ。 その方は専務のお友達の方です。」「お友達? ...
つくしは頼まれた資料を探しに倉庫へ向かった。最近の物はデータ化されパソコンで検索できるが、それ以前の物は倉庫にある。その膨大な資料の中から探し出したものを必要な部分だけピックアップしデータ化する。そして会議案件に添付する。入社当初は妬み嫉妬むき出しで見ていた秘書達も、二週間が過ぎる頃には何も言わなくなった。着ている服も黒か紺の地味な物でパンツスタイル。髪も後ろ一つ括り。専務とどうにかなりたいという...
「あっ、草君がゲームを始めた。」「おっ、じゃ早速聞いてみろよ。」類は渋々ながらも草に連絡を取る。<草君。 こんばんは。><花さん。 こんばんは。 今日は早いですね。><仕事が早く終わったから。 草君は?>(類:仕事が早く終わったんじゃなくて途中で切り上げたという方が正しいんだけどね。)その類のスマホを、総二郎とあきらが覗いている。二人がどんなやり取りをしているか興味津々だ。<今、帰宅途中です。>「...
「すっげぇ秘書だな。 まあ新入社員という事で色仕掛けとかそういう方面の余裕がねぇのかもな。」「それとも、、お前への嫌がらせかもよ?」「嫌がらせ?」類は呆然と呟く。今までそういう発想をしたことがないからだ。(あ:へぇ。 『嫌がらせ』という言葉に反応したぜ。)「お前の事だからその秘書に次々仕事を押し付けてるだろ?」「押し付けてはいない。」「けど頼んでんだよな? しかも凄く短い期限を付けて大量に。」(類...
4月中旬。類のスマホに総二郎から連絡があった。久しぶりに飲みに行こうという物。19時に新宿のバーで集合という事で18時30分には仕事を終え執務室を出た。すると田村は勿論だが牧野も残業している。「今日はもう帰る。」「「お疲れ様です。」」(類:そう言えば牧野は新入社員にも関わらず入社以来ずっと残業しているような?まあまだ要領が悪いだけかもしれない。)類はチラリと目に止めるだけで急いで待ち合わせ場所へ向...
紅茶会議当日。つくしは専務室で待機し会議には田村が同行した。販売促進部は前回の反省を踏まえ改善点を次々述べていく。パッケージの改善、販促物の展開などだ。「味は? 前回の物と加工方法とか変えている?」「いえ。 茶葉の変更はありませんがティーバッグタイプの物は仕様を変更しました。三角すいのような形にすることにより茶葉が開きやすく香りが高い紅茶に仕上がりました。」そこに紅茶が運ばれる。ティーカップに入っ...
翌日。類は昼食を完食する。それを見てつくしはホッとした。(つ:良かった。 花さんの言う通り忙しすぎて食事が取れなかっただけかもしれない。)そしてこの日、田村から類のスケジュールの作り方を教わる。だが社内外から多くのアポがあり悩む。社内のアポのほとんどは今後の販売戦略や新製品など多岐にわたっている。(つ:これ全てを把握しないといけないの? 飲食系から建設系まで範囲が広すぎる。そりゃあ昼食を食べる時間...
つくしは田村に教わった通り、朝一に日本茶を出す。30分後、それを下げに行くと一口も飲んでいない。10時にコーヒーを出すがそれも飲んだ形跡がない。昼に昼食を持って行くがそれにも手を付けない。「田村さん。 専務が食事にも手を付けず仕事をされているのですが。」「いつもの事ですので気になさらず。」「いつもの事ですか、、。」(つ:専務は何時も昼食を取らないんだ。 しかもそれを不思議に思わない田村さんもちょっ...
<花さん、こんばんは。><草君、こんばんは。 どうだった?><聞いてくださいよぉ。>つくしは不安、戸惑いよりも沸々とした怒りのような物を感じた一日だった。それを誰にも言えず何とか初日を乗り切り夜になるのを待った。<配属先は希望していたところと全然違うんですよ!>(類:よくある事だ。 そこに空きがあるかどうかも分からないし、あったとしても希望者が多ければ他に回される。)<あるあるだと思うよ?>(つ:...
類は壇上からつくしをチラリと見る。(類:女性か。 今は男女平等とか言われる為、男性が良いとは言えなかった。だからインターンで頑張っている奴で営業部長が欲しがる人材を引き抜いてと言ったんだ。絶対男性だと思ったから。 まあ仕事自体は雑用がメインだし体力勝負。田村の補佐だし田村の仕事がやりやすければそれで良いんだけど、、。 女性か、、。)入社式が終わると類はすぐ執務室へ戻り仕事を始めた。一方、つくしの周...
3月の異動で、類は予定通り課長から専務へと昇格した。ただ秘書課はかなり残念がった。類が専務に昇格と同時に新しく秘書がつくのでは?と噂されていたからだ。だが誰一人として移動が無かった。新入社員が専務秘書になるとは考えられない。その為、単なる噂話だったと片付けられた。そして3月31日の夜。つくしはスマホゲームから『花』に報告する。<研修が無事終わり、明日は入社式です。><おめでとう。 頑張ったね。><...
つくしは忙しくインターンという名のバイトをしていた。それは雑用に近い。商品ディスプレイの設置だったリ商品を勧める売り子だったりだ。だが社員の名前やその課の人間関係などが良く分かる。そして『花』のアドバイス通りだと感じた。会社説明会や去年参加したインターンと違い、言葉遣いや態度が厳しい。既に社員としての扱いのようにも感じるが、つくしは持ち前の元気さと明るさで頑張っていた。そして10月15日。ゲームの...
類はシャワー後、スマホアプリを起動させる。するとすぐに『草』から声をかけられた。<花さん。 こんばんは。>類はすぐに返事を打つ。<草君。 こんばんは。>類は草との出会いを思い出す。総二郎に教わったリズムゲームは寝る前のひとときに楽しんでいた。少しずつ上達するとレベルもアップしていく。すると他の人と競いたくなる。オンラインにするとすぐに五人が集められ同じ曲で競い合う。一曲終わるとグループチェンジを繰...
10月。つくしは内定式が無事終わり入社式までの説明を受けていた。入社前の3月頃には研修があるのだが、その前にインターンという形で仕事をすることも出来る。もちろんバイト扱いになるためお金が貰える。ただ自分の希望する職種とは異なる仕事が与えられるかもしれないし最低賃金となる為かなり安い。つくしは悩む。(つ:単位は取れているけど卒論はまだ残っている。ただどこかでバイトをしたいと思っていたのは事実。入社ま...
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※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
「俺の場合は、母親のマナースクールに本村さんが通っていた事がきっかけだ。」ここで類はつくしとあきらの接点を知った。お稽古の一つにマナー教室をあげていたが、それはあきらの母親の教室で、母親と妹達と仲良くしていた訳か。もちろん三人も牧野を気に入って家族総出で牧野を落としにかかっている。「あそこには数人の講師がいるんだが母親は月に一度講師をしている。その時は妹達も連れて行き学ばせているんだ。そこで妹達と...
なんとか二人は落ち着いてきた。「ちなみに今日は本村さんは来ねぇぞ。」「えっ?どういう事だ?」総二郎の言葉にあきらは驚く。今日という日を楽しみにしていたし、これに賭けていた。あきらの表情に総二郎は危ない所だったと安堵する。と同時に『息子さん』というのがあきらだと分かった。それに本村さんがこの場に来たならば、あきらの怒涛の攻撃にいつの間にか連絡先交換&お付き合いという関係になった可能性がある。それだけ...
そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...