※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
クリスマスイブ。類は残業にならないよう必死に仕事を熟していた。そして18時過ぎには何とか目途がたった。そこへつくしが入ってきた。(つ:仕事終わりそうかな? 今日の為に予行練習までやったのにまだ仕事が続くようじゃ行けないよね?)「専務。 終わりそうですか?」「ん。 後15分ぐらいかな?」(類:牧野も心配だよな。 初めてのクリスマスイブだしさ。)(つ:良かった。 専務と西門さんの初めてのクリスマスイブだ...
日曜日。9時前に待ち合わせ場所でつくしを拾い千葉のショッピングモールへ向かう。「下調べをしたのですが店舗は中央入り口を入ってすぐ右側のようです。」(類:真面目だな。 でも裏を返せば楽しみだったという事じゃない?)「そんなに楽しみだった?」「もちろんです! 念入りに下調べしてきました!」(つ:広い店舗で時間は限られている。 花沢店舗は勿論だけど他に見たい店舗は無いかチェックしたのよね。 でももしかし...
週末は休日のはずが何故か急に仕事を入れられ不機嫌な類。目の前には変更を告げた田村がいる。「あのさ。 スケジュールは休日となっているけどなんで仕事?」類はカレンダーの週末を指差しながら不貞腐れた口調で告げる。(類:休日は牧野と一緒に過ごしたいんだよ。 まあまだ連絡していないんだけど、今日にでも誘うつもりだったんだよ。)「仕事ではございません。 ちょっとした視察でございます。千葉に出来た大型ショッピン...
「類! 見て! 咲いた!!」「ほんとだ、、、」二人は少し大きな鉢に植え替えたサボテンを見る。あれは2016年5月24日だった。つくしがガチャガチャでサボテンを手に入れた。最初は小さな種だった。それを付属の土に入れ霧吹きで水を与え、小さな芽が出てそれから枯れたように茶色になり。何度ももうダメだと思いつつ、とりあえず根をカットし少し大きな鉢に植え替えた。それから定期的に水をあげていたがあまり大きくならなか...
執務室では類がランチを食べ始めた。「お前、きちんと食事するようになったんだな。 学生時代は偏食で食べないことが多かったのにさ。」「牧野が心配するから。 昼食を抜くと閃きも生まれないし体力が持たないと入社してすぐ言われた。」「なるほどな。 その頃から既にお前の心はつくしちゃんに囚われていたわけだ。まあお前に対し堂々意見を言う奴はいねぇからなぁ。」(類:確かにきっかけだったと思う。 牧野の仕事っぷりは...
昼休憩になるとつくしはすぐに秘書室を飛び出した。オフィス街にあるコンビニは昼食を求め混み合う。目的の豆大福が無くなる可能性も十分にある為だ。エレベーターが一階に到着すると、エントランスに入ってきた人物に気づいた。「えっ? 西門さん? 西門さ~~ん!」つくしは大きく手を振る。つくしの声に気づいた総二郎も手を振り返す。(総:グッドタイミング! これぞ一期一会!)(つ:すごい! 専務の心労を察知したかの...
12月に入った。「専務。 先ほど企画部長から明日バレンタインチョコの最終確認をして欲しいと連絡がありました。時間は約30分。 会議室も押さえているとの事でスケジュール的に10時30分からが良いかと思うのですが。」「じゃそれで。 牧野も同行して欲しい。」「私ですか?」「そう。 バレンタインなんだから牧野が適任だろ?」(類:恋人に渡すチョコなんだからさ。)(つ:年齢的に田村さんじゃないって事?)「分かりま...
街をぶらぶらする二人。既に街はクリスマスムードに覆われている。「ボジョレーが終わっても次々イベントがあり、まさに繁忙期突入ですね。」「あぁ、そうだね。」(つ:専務の言葉遣いがどっちともとれるからゲーム上では見事騙されたのよね。こうして声を聞けば間違いなく男性と分かるのに『花さん』として文字だけのやり取りだと女性と遜色ないんだよ。)「クリスマス、バレンタイン、ホワイトデー、まさに恋人のイベント目白押...
(つ:えっ! えっ! え~~~!!! ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!専務が西門さんに告白? しかも西門さんも『好きだ』と返事したよね? 嘘でしょ?)つくしは過去のやり取りを思い出す。(つ:西門さんが突然会社に来たのも私をチェックする為? 秘書だから専務の近くで仕事をするもんね。それに茶会に招待したのもあたしを牽制する為? 格の違いを見せつけたかった?専務が業務命令としてあたしを無理や...
「トリュフ。 初めてです。」「良かった。 牧野は上の空だったから勝手に決めたけど。貝類はダメだしとトマト系はありきたりだし、ウニは食べたからキノコにしてみた。」「衝撃過ぎて。 私のイメージはピンヒールでカツカツと音を立てながら走り回るキャリアウーマンでしたので。」(類:どこからそんなイメージが? 単に普通に会話していただけなのにさ。)「俺は可愛い系か体育会系のマッチョな男性を想像していた。」(つ:...
つくしはどうやってここに来たか覚えていない。だが目の前にオードブルらしきものが置かれたのに気づいた。そしてキョロキョロ見渡し、ここがイタリアンレストランの個室だと分かる。一方の類もつくしが『草』だという事実はかなりの衝撃だった。とりあえず場所を移動しゆっくり話し合う必要があると予約していたレストランへ連れてきた。もちろんその間、つくしは無言で心ここにあらず状態。メニューを広げてもボーとしていた為、...
土曜日。つくしは翌日着ていく服に悩んでいた。(つ:花さんはどんな服装で来るだろう? 仕事のイメージは10センチのピンヒールでタイトスカートのスーツスタイル。あっ、ジャケットは肩に引っ掛けているだけのような気がする。何となく女優の菜々緒さんに似ているような? もちろん背は高い。そんな人の私服もカッコいいんだろうなぁ。 シンプルな重ね着じゃないかな?会ったら絶対仕事の秘訣を聞こう。 やっている事は違っ...
類は仕事を終え帰宅し、アプリゲームを始めると既に総二郎とあきらも入っていた。そして草と他愛無い会話を楽しんでいる。(類:あいつら余計な事を話していないよな?)<こんばんは。 皆、早いね><あっ、花さん。 こんばんは。 花さんはボジョレーに興味ありますか?>(類:あるも何も、それを販売しているんだけど。)<うん。 毎年飲んでる><花さんも? えめさんとなつめさんは丁度今飲んでいるそうです>(類:だろ...
11月。ボジョレーが解禁された。その視察に類はつくしを同行させた。まず訪れた百貨店では特設会場が設けられワインと共にワインに合うチーズやキャビアなどの食べ物も販売している。「チーズ鱈やサキイカは無いみたいだけど?」「百貨店だからでは?」類は揶揄ったつもりだが真面目に返され拍子抜けだ。(類:真面目な返答。 仕事モードだからかな? その点俺は半分私的モードだった。ボジョレーを始めワインは花沢の売り上げ...
つくしは美作秘書と共に会場を出た後、フロントへ向かう。「どうしてフロントなんですか? すし店に直接予約じゃないんですか?」「ホテル内店舗はホテル管轄です。 営業時間も決まっていますが、ホテル側の要請は受け付けてくれますから。」つくしはサッと腕時計を見る。もうすぐ13時だ。(つ:パーティーは13時から約1時間。 そこからだとランチ時間は終了し店は一旦閉めている可能性もある。その無理を聞いて貰う為にフロン...
つくしは類と共に政治家のパーティーに向かった。受付を済ませ会場へ向かったのだが、入り口付近で呼び止められた。「よぉ! 類!」「あきら!」「やっぱりお前が来たんだな。 牧野さん、久しぶり。」(類:俺よりも牧野が来た事の方が嬉しそうなんだけど?)類はあからさまにムッとした表情を見せる。その分かりやすい表情にあきらは噴き出すのを堪える。(あ:こんなに分かりやすい奴だったんだ。 それにムッとするという事は...
【こんばんは。 チーズ鱈美味しかった。】つくしが風呂から出ると類からSNSが届いていた。(つ:良かった。 まあアレは万人受けする味だよね。 だったらチーズおかきも合いそう。ってやばい! 時間が経ってるじゃない! すぐ返事を打たないと!)つくしは急いで返信を送る。【返事が遅くなり申し訳ありません。 お口にあったのなら良かったです。】返事が届き類はホッとする。(類:返事が来るまで凄くドキドキする。 今ま...
翌朝、つくしは出勤前にコンビニでチーズ鱈を買う。それを昼休憩時にランチとお茶と共に類の元へ持って行った。「専務。 昨日話していましたチーズ鱈です。」「ありがと。」類はパソコンから顔を上げそれを手に取る。「へぇ。 美味しそう。」「美味しいですよ。」(類:昨夜のSNSからの繋がり。 こういう何でもないやり取りが楽しいんだから恋って凄いよな。)「あっ、昨日の牧野の初ワイン購買模様を纏めてみた。 牧野のパソ...
<草君。 こんばんは><花さん。 こんばんは><草君はアルコール好き? ビール飲む?><いいえ。 チューハイならなんとか>(類:真面目な草君らしい。 きっと20歳を超えるまで一切飲まなかったんだろう。その後も炭酸飲料が好きで手を出さなかったとか?)<学生時代バイトしていたんですが、ビールとかアルコールは高いじゃないですか?ですから20歳を過ぎても、もっぱら炭酸飲料に手を出していました>(類:金銭面...
類と共に車に乗ったつくし。田村から連絡が届いているのかすぐに車は走り出す。(つ:田村さんの素早い行動。 あたしも見習わなくちゃ。)(類:かなり緊張する。 田村なら行先の情報や絶対に伝えなければならいことなどを念押しするが、今回は俺が突然言い出したこと。俺が目的などを説明し素直な意見を引き出したいのだが上手く伝えられるだろうか?)「牧野。 百貨店には良く行く?」「あまり行きません。 行くとしても地下...
麗がフランスへ戻り、今まで通りの日常が戻った類だが進展は無かった。「牧野。 会議が終わったから営業販売部が提示した資料を分かりやすく紐づけといて。」「畏まりました。」「明日の会議の資料は?」「先ほど部長からアップ終えた旨の連絡がありました。」「分かった。 チェックしてみる。」類は執務室のパソコンを操作しチェックを始める(類:11月のボジョレー解禁に向け仕事に追われ私的な事を話す余裕は全くない。外回...
20時。類が帰宅すると麗に出迎えられた。「お帰りなさい。」「ただいま。」「夕食まだでしょ? 一緒にいただきましょう。」類は返事の代りに溜息を一つ吐く。(類:なんで一緒に? でも何時までここに居るのか聞きたいと思っていた。同じ家に住んでいても何時もすれ違いで顔を合わせる事もあまり無かったから。)類はそのままダイニングへ向かい、ジャケットを脱ぎネクタイを外すと着席した。サッと目の前に料理が運ばれワイン...
本日、私が類つくを書き始めて10年が経ちました。朝起きると総つく作家であるるいか様から『おめでとう』の言葉と共にお話が届けられていました。ルンルンするお話なので皆様にも是非読んでもらいたくてアップします。是非楽しんでください。「りお10歳」~ RUI ~今日はかわいい愛娘りおの10歳の誕生日。俺にとっては、俺とつくしを繋いでくれたかけがえのない天使なんだ。NYへ行った司とつくしはあっけなく別れてしまったも...
お盆休みが終わり仕事が始まった。田村も捻挫が完治し、つくしに礼を告げる。「北海道出張はありがとうございました。 大変助かりました。」「いえ、初めての事で色々不手際があり専務に沢山フォローしていただきました。それでこれお土産です。 専務に買っていただきました。」「私にお土産ですか?」「はい。 あっ、秘書課の分は既に皆で頂いていますので、これは田村さんが自宅でゆっくり召し上がってください。」「分かりま...
墓参り後、類は自室でのんびりと過ごしていた。丁度オンラインゲームがイベントをやっている。今回は当たり外れの多いクジ物で当たりは黄金のマントが貰える。そのくじを引く為には何度もチャレンジし星を集めるか、課金によって星を買うかだが、類はひたすらチャレンジする道を選んだ。そこに草が入ってきたのが分かった。<花さん。 こんにちは><こんにちは。 イベント中なのになかなか会わないけど忙しい?><今、実家なん...
つくしは手土産を買った後、駅前のカフェに総二郎を誘った。「つくしちゃんからのお誘い。 すんげぇ嬉しい。」目尻を下げ顔をほころばせる姿は、新たな総二郎の一面を垣間見た気分だ。(つ:本当に西門さんも色々な表情がある。 茶道の姿とこうした普段の姿のどちらも同一人物というのが今も信じられない。)「お土産のお礼です。 それに暑くて喉が渇いたかな?と思って。」「確かに今日は暑いな。 それで何を飲む?」カフェは...
お盆休みに入った。久しぶりにゆっくり眠れると思っていた類だが、突然やって来た母親に叩き起こされた。「類君! 起きて! いつまで寝てるのよ!」「ん? 母さん?」久しぶりに会う母親に類は大きく伸びをした後、上半身を起こす。「いつ帰ってきたの?」「昨日よ! それより早く用意してちょうだい。 お墓参りに行きましょう。」「分かった。」類はサッと起きるとすぐに着替える。(類: そっかぁ、お盆だから帰国したのか...
空港に到着するとまず手荷物を預ける。それはつくしが対応した。無事預けることが出来、ルンルンとした足取りで戻ってくる姿が類には面白く映る。「あっ、田村さんにお土産! 秘書課の人達にも!」「田村は盆休み明けまで出社しないと思うけど?」「日持ちするものなら大丈夫です。 それにもう決めてあるお菓子があるんです!」そう告げると土産物屋へ足を向けた。つくしについていく形で類も土産物店へ入る。「何を買うの?」「...
翌朝、6時45分。つくしのモーニングコールで類は起きる。そして朝食会場へ向かった。「おはようございます。」「ん、おはよ。」(つ:専務が寝ぐせ。 凄く珍しい物が見れた。 何時も完璧な姿しか見た事ないから。)(類:爆睡してた。 モーニングコールが無かったら危なかったかもしれない。)ビュッフェ形式のモーニングにつくしは類に問う。「専務の分もお取りしましょうか?」「いや。 自分で取るから良い。」「そうです...
ラーメンは類が奢った、「ごちそうさまでした。」「いや。 これくらい。」「あっ、ちょっとそこのコンビニに寄っても良いですか?」「ん。」つくしはホテル一階のコンビニに入ると、お茶とおつまみを手に取りサッと会計を済ませ店舗を出たところで類におつまみを渡す。「今夜もワインのルームサービスがありますのでこれと一緒にゆっくりされてください。」「ありがと。」(つ:夕食は奢ってもらったから、お返しにおつまみでお礼...
その後、市役所にて市長に面会し、旭川の観光地の場所やそこを訪れる年代などを確認する。次にバス会社へ向かい、ショッピングモールが出来た際には駅から施設までバスを通してもらうよう交渉する。もちろんシャトルバスも依頼する。そしてあっという間に18時になり、二人はホテルへ向かった。「チェックインしてきますので専務はこちらでお待ちください。」類は言われた通りソファーに座り待つ。(類:急遽田村の代りに出張とな...
つくしは空港から現地へ向かいながら外を眺めながら支社の人の説明に耳を傾ける。「ここは北海道中央部にあたり交通網も比較的発達しています。国立大学もあり人口も札幌に次ぐ第二位で立地には非常に良いと思われます。札幌からは車で約1時間40分ほどかかり、札幌周辺の人達の観光目的には丁度良い距離と思われます。中部は人口密集地となりますが少し離れますとこのようにのどかな景色が広がっています。」つくしは広大な土地...
類と共に荷物を預け搭乗ゲートをくぐる。口に出して教えるタイプではなく見て覚えろというタイプである事はつくしも既に承知している。その為、つかず離れず類の傍で観察していた。(つ:ここで搭乗口を確認するのかぁ。 こんな所にもお土産売ってる。 買い忘れても大丈夫なようにかな? あの辺の椅子で座って待つのかな?)(類:非常にやりにくい。 何も言わないがジロジロ見られて、、、。まあ色々聞かれても困るけど。)類...
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※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
なんとか二人は落ち着いてきた。「ちなみに今日は本村さんは来ねぇぞ。」「えっ?どういう事だ?」総二郎の言葉にあきらは驚く。今日という日を楽しみにしていたし、これに賭けていた。あきらの表情に総二郎は危ない所だったと安堵する。と同時に『息子さん』というのがあきらだと分かった。それに本村さんがこの場に来たならば、あきらの怒涛の攻撃にいつの間にか連絡先交換&お付き合いという関係になった可能性がある。それだけ...
そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...