※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
介護ベッドが届き、祖母の部屋に設置してもらう。上半身と足元が電動で上下する優れもの。しかも新品。そのベッドにL字型の柵を取りつけた。それで介護保険のレンタルを利用し月1,000円とかなりお得だ。それから30分後に宅配弁当が冷凍状態で届いた。月~金曜日の二人分だから全部で10個。それをすぐ冷凍庫に入れる。その後洗濯物を取り込み、祖母の病院へ向かった。祖母はレンタルした車いすに乗っている。それは病院の物より...
土曜日。つくしは花沢の使用人にお世話になった旨の挨拶を一人一人と交わした後、つくしの荷物を車に詰め込み類と共に祖母の病院へ向かう。「いよいよ明日は退院ですね。」「花沢さんには本当にお世話になりました。」「いえ、とんでもないです。それより凄くリハビリ頑張られたようですね。」「はい。 本当なら元通りに歩きたかったんですが、どうしても骨折した方の足を庇ってしまって杖では不安定で、、。」「仕方ないです。 ...
食後、つくしは司、あきら、総二郎の三人とアドレス交換をする。大学内では知らないふりをする事を了承した物の、生活が落ち着いた頃に連絡するという約束を取り付けた。そして三人を見送った後、、、「突然三人がいて驚いただろ?あいつらどうしても自分で確認すると言い張ってさ。」「いえ。 確かに四人揃った姿を間近で見て圧倒されましたが、きちんとお願いできてよかったです。これで大学で騒がれることは無くなりましたから...
つくしは料理を口に入れながら続きを話す。「本当に驚きました。 美作さんにあんなに可愛い双子ちゃんがいるとは思わなくて。しかも図々しく花を生けるために家に上がり込んで、、。その時、お母さんをお姉さんと勘違いしたし、花を生け終わった後も双子ちゃん手作りクッキーをバクバク食べてたし。話の合間にお兄さんがいると分かったんですけど、小学高学年から中学生ぐらいかな?とかってに想像してて。そうしたら美作さんが現...
やっと食事を食べ始めた5人。料理もすっかり冷えている。「冷てぇ。 これ作り直させようぜ!」「それ、おかしいです! 温かい物を出してもらっているのに、すぐ手をつけなかった道明寺さんが悪いんじゃないですか?」「だってよぉ。 話が話だし。」「でもこのメンバーですし、誰も食べるなとは言っていません。その中で食べないという選択をしたのは道明寺さん自身です!」司の我儘はいつもの事。それに慣れてしまっているF3は...
類は司の告白にギュッと拳を握る。元々俺と牧野の関係を牧野自身の口から聞くために、三人はここに来た。そして司は牧野と付き合いたいと思っているし、こうして自分の気持ちをズバッと口に出す性格。普通の女性なら喜んでOKするだろうが、牧野はどうだろう?少なくとも俺との関係は親が勝手に決めた許嫁と言う扱い。しかも花沢物産を背負う俺に腰が引けている。それは司に対しても同じだろうが、司の申し出を断るだろうか?面と向...
「ただいま戻りました。」玄関には男物の靴が三足ある。そして奥から聞き覚えのある声が近づいてくる。その声と共に佳代が小声で告げる。「類様のお友達が来られておりまして。」困惑した声からつくしは察した。自分と花沢さんとの関係と、なぜここに住んでいるのか問いただす目的だと。と同時に、花沢さんにかなり迷惑をかけたと。「遅ぇんだよ!」「やっと帰って来たな。」「お疲れさん。」「お帰り。」四人がそれぞれつくしに声...
つくしは祖母の病院へ向かいながらも、伯父の言葉にイライラしていた。だが『みっともないだろ!』と言う言葉に、祖母の気持ちをもう一度考える。無理やり言いくるめていないだろうか?あの時、花沢さんとケアマネさんも同席し、三人でデイケアの良さを訴えていた。それに華道の先生や篠田会長夫人と言う輝かしいキャリアがある。確かに今はあまりお金はないが、送迎車が来る普通のデイケアは嫌だと思っていないだろうか?それらの...
つくしは大学から祖母の病院へ向かっていた。すると伯父から電話が入った。「はい。 つくしです。」「お婆さんは何時退院するんだ?」「週末ですけど? 何かありました?」「いや、車いす生活になると病院から聞いたんだが、それだと自宅での生活は無理だろ?どこかの施設に入るのかと思ってな。」少しは祖母の事を心配してれるんだ、、と思うと嬉しくなる。だが続く言葉にがっかりする。「施設に入れるなら、あの家はお前に広す...
「お前なぁ。 お前の気持ちは?と聞いてんだよ!」司はイライラした口調で怒鳴るように告げる。「俺の気持ち?」「あぁ。 揶揄ったりしねぇから言ってみろよ!」「良い子だと思うし特別扱いを求めてこないから心地良い。今までそういう女性が近くに居なかったから良く分からないけど、、、。」総二郎は深いため息を吐き、司はこめかみをピクピクさせている。「確かにお前は昔っから感情が薄いと言うか何考えているか分からない時...
つくしはフランス語講義を受けている。前期は耳を素通りしていた単語も、今はしっかり聞き取れる。フランス人の講師だが、その発音は花沢さんと全く同じで改めて驚かされる。そして約二か月もの間、教えてくれた事に改めて感謝だ。それももうすぐ終わると思うと寂しい気持ちもするが仕方ない。元々祖母と花沢のおばさまの間で決められたユルユルの許嫁と言う関係。そして祖母が入院と言うアクシデントに花沢さんは手を貸してくれた...
類は自宅で寛いでいた。つくしにはケアマネの話を伝え、祖母のリハビリを少し見学して先に帰った。それにしても偶然あきらに出会うなんて。あきらはどう思ったか分からないけど、少なくとも悪い印象は持っていないだろう。にしても俺だけ運命的な出会いをしていないんじゃないだろうか?と思うとモヤモヤする。すると突然部屋のドアが開き、あきらが姿を見せた。「よぉ!」「何?」あきらは、かなり機嫌が良さそうだ。多分、牧野と...
あきらは車を飛び出すと、つくしの後を追い病院内へ入った。するとエレベーターへ向かって歩いている後姿を見つける。声を出そうかと思ったがここは病院。大声は禁物!と足早で追いかけたがその足は数メートル進んだところでピタリと止まった。なぜなら横からヒョコッと類が現れたからだ。そして自然に何かを話し、二人は揃って奥へと消えた。何だ?今の自然な行動は。あの類が女に話しかけるのもレアだし、牧野さんも俺の時の様に...
「えっと。 そろそろ失礼します。 この後、病院へ見舞いに行くので。」病院、、、。つくし、、、。こういう偶然があるか?と、あきらは思う。「じゃ、送るよ。」「えっ! いえ、大丈夫です。」「遠慮しないで? あきら君、お願いするわね。」夢子はルンルンとした口調で告げる。あきら自らが進んで『送る』と言ってくれたことが嬉しいからだ。「え~~。 もう帰るんですか?」「もう少しお姉ちゃまと遊びたい~。」双子達はつ...
「ゲホッ、、ゲホッ、、、」つくしはムセながら胸をトントンと叩く。もちろん思考はパニック状態だ。何でここに美作さんが?『お兄ちゃま』と双子達が呼んでいたから間違いなくお兄さんなんだろうけど、あまりにも歳が離れてない?もしかして目の前のお母さんとは血が繋がっていないとか?ありえる!だってどう見ても20代後半から30代前半でしょう?それよりも帰らないと、、。美作さんの家に上がり込みお茶したことが万が一に...
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※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
翌日、類は出張から帰ってきた。前回と同じように夕食を持っている。それをダイニングテーブルの上に置き、つくしがお茶を持ってきて食べ始めたところで麗の訪問を告げた。すると類はあからさまに驚いた表情を見せた。「えっ!母親が?」「はい。フランスへ行く前に一度会ってみたかったと言っていました。」類は何も聞いていなかった。「それで他には?気に障る言葉を言われたりしなかった?」「そのような事は何も。庭の野菜を見...
「大胆ですよね。見合いを断るつもりだったのに、自分の方から同棲を申し込んだんですから。」「えぇ。確かに大胆だわ。普通はお付き合いをして欲しいと頼むわよね?」「はい。でも類さんがこの家で一人暮らしをしていると聞いた時、家事をするストレスも感じているのでは?と思ったんです。」「家事をするストレス、、、」麗はハッとする。類は、この家に佳代が通っていた事を敢えて話さなかったのでは?そこには自分はストレスを...
「行ってきます。今夜は早めに戸締りをして早く寝る事。」「分かってます。」「あっ、でも夜に電話するからそれまでは起きてて。」「分かってます。気をつけて行ってらっしゃいませ。」「ん。行ってきます。」類は軽く手を振り、待たせていた花沢の車に乗って出張へ出かけた。今回は北海道。一泊二日の予定だ。つくしは類が出かけた後もいつも通り家事を熟す。掃除、洗濯の後、庭の野菜に水をやり今日は肥料もパラパラと撒いた。そ...
類は23時ごろに自宅に戻ってきた。つくしはすぐに出迎える。「ただいま。」「お帰りなさい。どうでした?」つくしの表情は心配気だ。そんなつくしににっこりと笑いかける。「息子さんの悩みも無事解決した。」それを聞き、つくしはホッとする。「良かった。やっぱり類さんにお任せして良かった。」「ん。これからもどんどん頼ってよ。」「はい。それで、、少し悩みの内容を聞かせてくれても良いですか?」「ん。」「その前にこれ...
衝撃な言葉にあきらと総二郎は固まる。そして頭の中には『同棲中』という言葉と共にアレコレが浮かんでしまう。どう考えても若い男女が一つ屋根の下で何もないとは思えないからだ。その為、二人は意気消沈した。それを見て類は誤解していると分かる。「仕事は家事全般。つまり俺の身の回りの世話をしてもらい対価を払っている。」二人はその言葉に再び固まる。身の回りの世話という部分がどこまでの世話か模索しているようだ。類は...
「俺の場合は、母親のマナースクールに本村さんが通っていた事がきっかけだ。」ここで類はつくしとあきらの接点を知った。お稽古の一つにマナー教室をあげていたが、それはあきらの母親の教室で、母親と妹達と仲良くしていた訳か。もちろん三人も牧野を気に入って家族総出で牧野を落としにかかっている。「あそこには数人の講師がいるんだが母親は月に一度講師をしている。その時は妹達も連れて行き学ばせているんだ。そこで妹達と...
なんとか二人は落ち着いてきた。「ちなみに今日は本村さんは来ねぇぞ。」「えっ?どういう事だ?」総二郎の言葉にあきらは驚く。今日という日を楽しみにしていたし、これに賭けていた。あきらの表情に総二郎は危ない所だったと安堵する。と同時に『息子さん』というのがあきらだと分かった。それに本村さんがこの場に来たならば、あきらの怒涛の攻撃にいつの間にか連絡先交換&お付き合いという関係になった可能性がある。それだけ...
そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...