※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
夢子は双子達と共に講堂に入るとスタッフから予約席へと案内される。そこには二人の老女と一人の女性が既にいた。その老女に声をかける。「こんにちは。」「あっ、こんにちは。」「おや。 美作の奥様じゃないかい。 その子供たちは娘さん達だね。もうこんなに大きくなったんだねぇ。」「はい。 小学生になりました。 タマさんもお元気そうで。」「あぁ。 まだまだ元気でいないとねぇ。」今度は初江に視線を移す。「初めまして...
つくしは講堂裏にある関係者出入口へ向かった。そこには幸子と彼氏の前田がテーブルの前に座り受付を行っていた。その二人もつくしに気づいた。「あっ、牧野さん。 これを付けてくれる?」前田は<生け花 牧野つくし>と書かれたネームプレートをつくしに渡す。受け取ったつくしは首からぶら下げる。「つくしさん。 頑張って!」幸子からの珍しい応援に、つくしも勇気を貰う。「ありがとう。」「じゃ中に入ったら出番まで控室で...
食後、総二郎はお茶をふるまう。と言っても道具は英徳からの借り物。お湯は電気ポット。唯一持参したのはお抹茶のみ。しかも部屋はテーブルと椅子が配置された会議室のような作り。床に座り込むことも出来ず、椅子に座りテーブルの上でお茶を点てている。それでも目の前の四人は、そのほれぼれする手前に魅入られる。「すごく綺麗な作法だねぇ。」「本当にすごい。 さすが次期家元ね。」「本当に凄いですね。」「こういう姿は風格...
初江、タマ、佳代は食事をしながら、つくし、司、類の話へと自然に移行する。「それにしても、つくしさんが花沢の坊ちゃんの許嫁とはねぇ。でも口約束で、絶対に結婚しなければならないと言う物じゃないんだろ?」「そうなんです。 花沢の奥様とは古くからの知り合いで、私が亡くなった後のつくしの心配を話したら、息子さんとの話を持ち出されて。でも結婚は本人の意思が大切。私としては、つくしの良き相談相手になっていただけ...
つくし達は、美術部の絵を鑑賞していた。油絵で風景画や人物画など数々ある。どれも上手だ。次の部屋には書道が展示されていた。「上手ねぇ。」「うん、上手い! あっ、今日の一芸大会に書道パフォーマンスもあるみたい。」「へぇ。 それは楽しみ。」と話しながら教室を出ると、佳代が初江に問いかける。「お手洗いは大丈夫ですか? そこに多目的トイレがありますが。」「そうだね。 行っておこうかしら。」「じゃ、私が連れて...
朝9時に、佳代と運転手がつくしの家にやって来た。「おはようございます。 お世話になります。」「いえ、こちらこそ楽しみでして。学園祭を見学できるチャンスなど中々ありませんから。」佳代はつくしに挨拶後、初江に向き合う。「初めまして。 花沢で使用人をしております佐藤佳代と申します。何時も類様がお世話になっております。本日はよろしくお願いします。」「こちらこそつくしが大変お世話になりました。今日はお世話に...
信夫とつくしが出て行った後、初江は大きなため息を吐く。「本当にダメな息子だわ。 花沢さんを見て何も感じないなんてね。仕事上の付き合いは無いし、まだ学生で表に出ていないとしても雰囲気とかで分からないのかねぇ。」「まだ俺自身、全く仕事をしていないのでそういうオーラが出ていないんだと思います。」類は信夫を庇う発言をするが、それでも見た目だけで判断するのはあり得ないと思っている。現に未だ名乗っていない。そ...
葉山の自宅へ戻り、すぐ荷物の片づけを始める。するとインターホンが鳴った。「あっ、宅配弁当かな?」つくしは急いでインターホンを見る。するとそこには伯父の姿。早速リフォーム状況を確認に来たんだろか?それともまたお金の無心だろうか?と思いつつ居留守を使うことも出来ない為、渋々インターホンに出る。「はい。」「つくしか? 開けてくれ。」つくしはその場で開錠せず、急いで門へと向かう。もし何か渡し物があるなら受...
土曜日類は9時に葉山のつくしの家に到着した。そして門のインターホンを押すとすぐつくしの声が聞こえる。『すぐ開けるから。』と同時にカチャッと鍵が開く音がした。類は門を開け中に入ると丁度つくしが家の玄関を開けたところだ。「「おはよう。」」挨拶が重なり、二人はニコッと笑みを見せる。「どうぞ、上がって?」「ん。 お邪魔します。」類は上がり込むとまっすぐ居間に向かう。思った通り初江は庭を眺めている。その初江...
その夜、類はつくしにSNSを送る。<今、電話をしても大丈夫?>つくしは丁度類にSNSを送ろうとしていた時だった。そのタイミングの良さに頬が緩む。それなら、、、と、つくしの方から類へと電話をかけた。類は手元のスマホからの着信に驚くものの、相手を見て微笑む。そしてすぐに電話に出た。『あっ、花沢さん?』「ん。 俺。」『あたしも丁度連絡しようと思っていたところだったの。』つくしの言葉に類は偶然を喜ぶ。『今日、西...
つくしが総二郎に返事を送信した後、ふと前に人が立ったのが分かり顔を上げる。そこには従妹の幸子が立っていた。「つくしさん。 あなた学園祭に行くわよね?」「そのつもりですが?」「そう。 良かったわ。あのね、私学園祭の実行委員メンバーなの。」実行委員は各学年、各学部から数人が選ばれている。そのほとんどが立候補だ。外部入学者は就職に有利になるし、内部進学者は出会いの場が増え、それがゆくゆくは仕事へとつなが...
数日が過ぎた。葉山での日常が戻ったつくしは、希望通りの生活を送っている。F4は約束通り声をかけて来ることはない。もちろんつくしも今まで通り近寄る事は無い。だがチラリと見る類との距離の遠さに寂しさを感じていた。当たり前に一緒にご飯を食べ、当たり前に頭をくっつけながらフランス語を習い、当たり前のように『おはよう』『おやすみ』と挨拶を交わし、当たり前のように雑談をしていたのに。それら全てが夢か幻のような感...
翌日、朝食を取った後、病院へ向かう準備をするつくしに類が声をかける。「牧野。 室内の監視カメラのアプリは入れた?」「うん。」「ちゃんと作動するかチェックして?」「うん。」つくしはスマホをタップする。そして『今すぐ見る』を押すと二人の姿がパッと映る。「あっ、映った。 アレ? 4画面? カメラは2台じゃなかった?」「4台に変更した。 玄関と居間とお婆さんの部屋とキッチン。」「そんなに?」「ん。 あんたが...
「あたしは静さんには勝てません。」「えっ? 静?」思いもよらぬ名前に類は驚く。「あたしが最初に見たのは静さんの為にバイオリンを弾いている花沢さんの姿。あの時西門さんも美作さんも、静さんが帰国していること知らなかった。花沢さんだけに声をかけ、静さんの望むとおりバイオリンを弾いた。そして何か話をしたあとキスをした。」「だからそれは、静は昔から俺の事をそういう風に扱うし、キスは挨拶で。」「確かにそうかも...
葉山に戻ると、門横の小さなボックスのセキュリティを解除する。そしてまっすぐ家へ向かい鍵を開け中に入る。それからすぐインターホンが鳴る。「絶対にインターホンで相手を確認する事!受話器を取らなくてもカメラには相手が映るから。」類はモニターを指す。そこには花沢の運転手の姿がある。「うん。 はっきり見える。」「それから受話器を取り話す。」つくしは言われた通り受話器を取る。「どちら様ですか?」「花沢です。 ...
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※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
翌日、類は出張から帰ってきた。前回と同じように夕食を持っている。それをダイニングテーブルの上に置き、つくしがお茶を持ってきて食べ始めたところで麗の訪問を告げた。すると類はあからさまに驚いた表情を見せた。「えっ!母親が?」「はい。フランスへ行く前に一度会ってみたかったと言っていました。」類は何も聞いていなかった。「それで他には?気に障る言葉を言われたりしなかった?」「そのような事は何も。庭の野菜を見...
「大胆ですよね。見合いを断るつもりだったのに、自分の方から同棲を申し込んだんですから。」「えぇ。確かに大胆だわ。普通はお付き合いをして欲しいと頼むわよね?」「はい。でも類さんがこの家で一人暮らしをしていると聞いた時、家事をするストレスも感じているのでは?と思ったんです。」「家事をするストレス、、、」麗はハッとする。類は、この家に佳代が通っていた事を敢えて話さなかったのでは?そこには自分はストレスを...
「行ってきます。今夜は早めに戸締りをして早く寝る事。」「分かってます。」「あっ、でも夜に電話するからそれまでは起きてて。」「分かってます。気をつけて行ってらっしゃいませ。」「ん。行ってきます。」類は軽く手を振り、待たせていた花沢の車に乗って出張へ出かけた。今回は北海道。一泊二日の予定だ。つくしは類が出かけた後もいつも通り家事を熟す。掃除、洗濯の後、庭の野菜に水をやり今日は肥料もパラパラと撒いた。そ...
類は23時ごろに自宅に戻ってきた。つくしはすぐに出迎える。「ただいま。」「お帰りなさい。どうでした?」つくしの表情は心配気だ。そんなつくしににっこりと笑いかける。「息子さんの悩みも無事解決した。」それを聞き、つくしはホッとする。「良かった。やっぱり類さんにお任せして良かった。」「ん。これからもどんどん頼ってよ。」「はい。それで、、少し悩みの内容を聞かせてくれても良いですか?」「ん。」「その前にこれ...
衝撃な言葉にあきらと総二郎は固まる。そして頭の中には『同棲中』という言葉と共にアレコレが浮かんでしまう。どう考えても若い男女が一つ屋根の下で何もないとは思えないからだ。その為、二人は意気消沈した。それを見て類は誤解していると分かる。「仕事は家事全般。つまり俺の身の回りの世話をしてもらい対価を払っている。」二人はその言葉に再び固まる。身の回りの世話という部分がどこまでの世話か模索しているようだ。類は...
「俺の場合は、母親のマナースクールに本村さんが通っていた事がきっかけだ。」ここで類はつくしとあきらの接点を知った。お稽古の一つにマナー教室をあげていたが、それはあきらの母親の教室で、母親と妹達と仲良くしていた訳か。もちろん三人も牧野を気に入って家族総出で牧野を落としにかかっている。「あそこには数人の講師がいるんだが母親は月に一度講師をしている。その時は妹達も連れて行き学ばせているんだ。そこで妹達と...
なんとか二人は落ち着いてきた。「ちなみに今日は本村さんは来ねぇぞ。」「えっ?どういう事だ?」総二郎の言葉にあきらは驚く。今日という日を楽しみにしていたし、これに賭けていた。あきらの表情に総二郎は危ない所だったと安堵する。と同時に『息子さん』というのがあきらだと分かった。それに本村さんがこの場に来たならば、あきらの怒涛の攻撃にいつの間にか連絡先交換&お付き合いという関係になった可能性がある。それだけ...
そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...