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リエミブログ https://riemiblog.blog.fc2.com/

不思議な展開をみせる、オリジナル小説、 ほんのり奇妙な短編・ショートショートや、 中編小説を書いています。

◆小説一覧リスト https://riemiblog.blog.fc2.com/blog-entry-2.html  読んで感じたこと、思ったことなど、  ひとことでもいいので、  作品へのご感想をお待ちしています。

リエミ
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2017/10/28

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  • 月のライン 8-2

    ホテルの大きな窓ガラスを、キトは掃除していた。 日差しが肌に暖かい。 マリは捕まってしまったけど、キトには今、ナヤがいる。 毎日、午後には、畑の手入れをかねたデートだ。 キトはいつも以上に丁寧に、窓を磨いた。 そこから表を眺めると、ホテル入口へ続く、短い階段を、ゆっくりと上ってくる男を見つけた。 キトは急いでロビーへ向かった。 大きなドアが開き、男が入ってくる。 相変わらずの、黒いスーツに銀縁...

  • 月のライン 8-1

    『親愛なる兄さんへ。 兄さんの言った通り、ノエルの翌日に、たくさんの警官たちが本土から来て、自宅にいた町長を、そちらへ連れてゆきました。 町のみんなは、どういうことか分からない、という顔をしていましたが、警官たちと一緒にやってきた、ひとりの人が、税金を横領した形跡がある、と言って、その場で町長を取り押さえました。 そう言ったひとりの人こそ、キトの友達のラジだそうです。 おかげでこちらでは今、次の...

  • 月のライン 7-5

    校舎の裏に回ると、町長は高鳴る胸を押えながら、辺りの様子をうかがった。 小さな畑のある場所に、いくつもの白い光が浮かんでいる。 月のライン。 夜に光る、花びらのライン。 町長は静かに歩み寄ると、花々の間で横たわる人影に、目が行った。 左手に、今、摘んだばかりの花を。右手は人差し指を立て、空を指している。 影はその指で何度も、何度も、何かを切るような仕草を見せる。 町長はその病状に、思い当たるこ...

  • 月のライン 7-4

    メルは町なかを駆けていた。 楽しげな笑い声の間をすり抜けて、来た道を戻って行った。 ロイに、手紙を渡してくるので、あのベンチで待つよう言ったが、おそらく待ってはいないだろう。 あのあとすぐに、小学校のほうへ行く、と言って聞かなかった。 畑を壊すつもりだろう。この町のために、ロイは証拠を消そうとしているのだ。 メルは役場前の広場に着いた。 上下に動きながら、回り続けるメリーゴーランド。移動式遊園...

  • 月のライン 7-3

    すぐ目の前に駆けつけた、メルの問いかけるような視線を受けて、ロイは小さな声で答えた。「メルがなぜここにいるのか、俺には分からないが、今ここでメールボーイに会えたことは、俺にとって好都合だ。聞きたいことがあるんだろう? そこに座ってくれ」 メルはロイと一緒に、近くのベンチに腰掛けた。 街灯の明かりが、2人の上から降り注ぐ。「リカも心配してるんだ。お前のことが好きだからだよ」 メルがロイに訴えた。...

  • 月のライン 7-2

    町役場の広場の中央に、小さな回転木馬が設置されていた。 馬の数は5台しかない。サーカスのゾウのように、体中に派手な模様をペイントしていた。 メルは自分のかたわらで、満足げにそれを見つめる、父の横顔を見た。 メリーゴーランドの張り出た屋根に、ピカピカと点滅するライトが光る。 父の顔を明々と照らす。 よくこの短期間のうちに仕上げたものだ、とメルは思った。 たぶん、父の手柄じゃない。技術職人が頑張っ...

  • 月のライン 7-1

    歌うように揺らめいて、何層にも重なって聞こえる、アコーディオンの不思議な音色。 路上で演奏するお爺さんの近くで、リカはワゴンを出していた。 町の看板や、家々の軒下に光る、イルミネーションに負けないくらい、リカのワゴンは華やかだ。 この広場ににぎやかに光る、虹色ストライプのネオン。 後ろの教会の奥からは、賛美歌が聞こえる。 幼い聖歌隊の子供たちが、この日のためにと練習していたのを、リカは知ってい...

  • 月のライン 6-5

    次の日、フラワーショップ・ナヤの前に、たくさんのスーツの男がやってきた。 観光客が、彼らを横目に過ぎてゆく。 しかし誰の目にも、その騒ぎの真相は分からなかった。 ただひとり、店の前の噴水近くから、そちらを見ていた少年以外は。 少年はただ黙って、不審な男たちの行動を遠目に見ていた。 店の写真を撮ってゆく者、花を押収する者、みな静かだったが、迅速に、それぞれの仕事をこなしている様子が見えた。 少年...

  • 月のライン 6-4

    ナヤがキトにこの手紙を見せることを、ラジは悟っていたのだろう。 キトなら、ナヤを支えてくれる、と分かっていて、セドにこんな手紙を書かせたのかもしれなかった。 そのため、マリのことを記していない。 ナヤがキトに打ち明けられるように、セドに、マリのことを言わなかったのだ。「ナヤ、大丈夫」 キトは手紙をナヤに返しながら、しっかりとした声で言った。「このことについてはラジに任せて。町長は、ラジが調べに...

  • 月のライン 6-3

    『ナヤへ。 家の者が心配しているだろうから、と、警察は僕にこの手紙を書くよう、促した。 携帯電話は調査として没収された。 ナヤ、僕は今、警察署の牢にいるが、心配しなくてもいい。 みな、大人の対応をしてくれている。乱暴な目にはあっていないよ。 あの日、僕は花を届けるために、本土に行ったが、受取人が、いつも待つ場所にいなかった。 どういうことだろうと思っていると、島から僕をつけてきたという、ラジとい...

  • 月のライン 6-2

    フラワーショップ・ナヤのドアを開けると、ドアに取り付けてあるベルが、涼やかな音を響かせた。 一歩中へ入って、窓から外を眺めると、雨はまるで滝のように店全体を打ち付けていた。「ごめんなさい、お客様。今日は店はお休みなんです」 奥の間から、ナヤのか細い声が聞こえた。「ナヤ」 キトはたたんだ傘を、ドアの横に立てかけながら、話しかけた。「僕だよ」「キトね」 店舗に出てきたナヤは、やわらかい微笑みをキト...

  • 月のライン 6-1

    傘を持ってホテルのロビーへ向かうと、キトは足を止めた。 ロビーから続くフロントで、ずぶ濡れの男がチェックインをしているところだった。 濡れた手で宿帳に名前をサインする。 キトはすぐ横に近づき、ポケットから取り出したハンカチを差し伸べた。 宿帳を盗み見ると、細い筆圧で『ロイ』と書かれている。 ハンカチで水滴を拭うロイの顔を、もちろんキトは知っていた。 けれど、どこか以前とは違う。なんとなくだが、...

  • 月のライン 5-4

    ロイは雨音で目を覚ました。 どしゃ降りの雨を受けながら、ゆっくりと起き上がる。 狭い路地の石畳に、大粒の水が跳ねている。 ロイはその場で咳き込んだ。 腕時計を見ると、2本の針はちょうど12を指していた。 昼の12時なのだろうか。胃の辺りがものを欲しがるような、しかし何かを吐いてしまいたいような、気持ちの悪い感じがした。 コートの前ボタンを止める。 目がくらむ……。 ロイは壁に両手をついた。 月のライ...

  • 月のライン 5-3

    宇宙空間にキリトリ線が現れた。 ミシンで縫ったような点線だ。周りをぐるりと取り囲む。 無重力の波を泳いで、ゴールテープのように切る。 点線の向こう側へ落ちてゆく。 頭のほうから、落下する。 向こう側が広がって、宇宙の闇が裏返しになる。 そうして体はゲートを抜けた。 明るい光が上空から差す。 失速した体は、足もとから地面に降りる。 そのまま根が生えて花になる。 パステルカラーの花々が、自分の周り...

  • 月のライン 5-2

    上陸して、人の間を縫うように歩いた。 初めて来る観光客なら、迷子になりそうな裏通り。 細い路地が迷路のように連なる場所。 ノラ猫1匹歩かない暗い小径で、ロイは立ち止まった。 ここからだと、空も狭い。 遠くに街灯があるくらいで、手の平を広げてみても、形はあやふやだ。 ロイは地べたにしゃがみ込んだ。 両足をまっすぐと放り出す。 冷えた石畳が体温を奪う。 ロイはコートの前ボタンを開けた。 内ポケット...

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