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落合順平 作品集さんのプロフィール

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ブログタイトル
落合順平 作品集
ブログURL
https://blog.goo.ne.jp/saradakann
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現代小説を中心に、連載で小説を書いています。 時々、画像もアップします。
更新頻度(1年)

102回 / 365日(平均2.0回/週)

ブログ村参加:2017/03/26

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落合順平 作品集さん
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落合順平 作品集
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落合順平 作品集

落合順平 作品集さんの新着記事

1件〜30件

  • 上州の「寅」(16)実は高所恐怖症

    上州の「寅」(16)「不純異性交遊?。まったく身に覚えがありません」「忘れたとは言わせないぞ。雑魚寝したとき。未成年のチャコとユキの尻とおっぱいに触っただろう。どうだ。身に覚えがあるだろう」「たしかにすこしは触ったかもしれません。しかしそれはあくまでも雑魚寝という非常事態の中での出来事です。濡れ衣です。責任はありません」「黙れ。理由はともあれ、未成年の尻と胸に触ればりっぱな犯罪だ。警察へ訴えて出れば、おまえさんは前科一般の性犯罪者になる」「警察は勘弁してください。おまわりさんは嫌いです」「免許証のコピーがある。実家の住所もわかっている。では両親へ電話してこれこれこういうわけですと、俺から説明しょうか」「あっ・・・両親も勘弁してください。わかりました。羽田空港へ行けばいいんですね」「おう。3時間以内に来いよ。制限...上州の「寅」(16)実は高所恐怖症

  • 上州の「寅」(15)羽田へ来い

    上州の「寅」(15)それから一ヶ月。寅のあたらしい年は可もなく不可もなく時間と日にちだけが過ぎた。2月。明日が節分という夜。年末年始に稼いだアルバイト代が、ついにきれいになくなった。何に使ったか記憶にない。気が付いたらいつものように、すっからかんになっていた。「大将。いつもの!」「なんでぇ寅ちゃん。成金生活はもう終わりか。計画的に使わないからそういうことになる。早すぎないか。散財するのが」「うるせぇ。江戸っ子は、宵越しの金なんざ持たねぇ」「江戸じゃねぇだろう。上州生まれだろ寅ちゃんは。ここは江戸だが、武蔵野といったほうが世間にわかりやすい」「いいから早くつくってくれ。腹が減って死にそうだ」いつものラーメン屋でのやりとり。仕送りが振り込まれるまで、まだ一週間ある。それまでの間は倹約という名の、ぎりぎり食生活をおく...上州の「寅」(15)羽田へ来い

  • 上州の「寅」(14)関東テキヤブルース

    上州の「寅」(14)「ご苦労さんだったな。約束の日当だ」1月4日の夕刻。ようやく寅は屋台の仕事から解放された。朝9時から開店準備。初もうで客の姿があるうちは終日、仕事。夜の11時近くまで働いたあげく、いつものように3人で雑魚寝をする。4日目。参道に初もうで客の姿はすくない。「すこしばかり色をつけておいた。また頼むかもしれねぇから、そんときはよろしく。じゃなぁ」人事担当の大前田氏が寅の肩をポンとたたき、歩き去っていく。「あたしらも行くか。寅ちゃん。あんたどこまで帰るんだ」「おれ?。おれは八王子」「八王子か。すこし寄り道になるが帰る方向は同じだ。乗りな。送っていくから」「送るって・・・君。運転できるの?」「ひと月前にとったばかりだ。ほやほやの双葉マークさ」「心配だ。やめておく」「なんでさ。あたしの運転が不安かい?。...上州の「寅」(14)関東テキヤブルース

  • 上州の「寅」(13)親分が来る 

    上州の「寅」(13)元旦の午前10時。参道に初もうで客の姿がふえてきた。昨夜と違いみんな着飾っている。そんな中。派手なスーツを着た男が屋台へ挨拶に来た。「ご商売中すいません。わたくし地元の〇△組の者です。これから親分が初もうでにまいります。これは些少ですが新年の名刺代わりに」ペコペコ頭を下げながら、1万円札の入った封筒を置いていく。「おい。〇△組の親分が初詣に来るってよ・・・」「なんだって。おい、えらいこっちゃ。のんびりしている場合じゃねぇ。おまえらぐずぐずするな。焼き鳥、イカ、タコを、どんどん焼け!。シケネタ(古い素材)なんか使うな。マブネタ(新しい素材)を使えよ」にわかに屋体が騒々しくなってきた。あわてて鉄板を磨きだす者。車のアイスボックスへ入れておいたマブネタを取りに行く者。あちこちで歓迎の献上品つくりが...上州の「寅」(13)親分が来る

  • 上州の「寅」(12)半返し

    上州の「寅」(12)「はじめまして。あなたがこんど加入されたポテト屋さん?」「へぇ。銀二と言います。で、あなたさんは?」「露天商組合の理事、大前田です」「これはまたずいぶんお若い役員さんで」「父の代理で来ました」「ご苦労さんです。どんなご用件でしょう?」「契約違反がある場合、出店が取り消されることはご存知ですね」「へぇ。聞いておりやす。それが何か・・・」「こちらの場合、フライドポテトのみに許可が出ています。無届けでアメリカンドッグと、から揚げを売るとなると契約違反に該当します。売りつづける場合、組合員証を没収します」「えっ。ち・・・ちょっと待ってください。組合員証を没収されたら露店で商売できません。ほんの出来心でアメリカンドッグとから揚げに手を出しただけで、本心じゃありません。すぐやめます。お願いですから穏便に...上州の「寅」(12)半返し

  • 上州の「寅」(11)根回し

    上州の「寅」(11)元旦の午前9時。金髪娘2人の屋台が開店した。参道に早い初もうで客が姿を見せる。「いまはまだ嵐の前の静かさだ。本番は11時頃からさ」「どのくらい人が来るの?」「3日間で30万人」「さ、さんじゅうまん!」「そのうちの半数、およそ15万人が今日、押し寄せてくる」「じゃ昨夜の・・・二年参りのあの人出は・・・」「小手調べだな。本番前の」チャコは涼しい顔で仕込みに専念している。今日も売るのはもつ煮とおでん。(せっかく商売するんだ。もっといろいろ売ってもいいと思うが)もつ煮とおでんだけを売る屋台が、もったいなく思えてきた。(いろいろ仕込めば、もっと売れるかも・・・)と言おうとしたとき、「姐さん」チャコの背中へパンチパーマの男がやって来た。「なんだ。もめ事か?」「へぇ。向こうのフライドポテト屋がちょっと・・...上州の「寅」(11)根回し

  • 上州の「寅」(10)生まれは東北 

    上州の「寅」(10)午前8時。どこかで起床のベルが鳴っている。朝だ。いつの間に眠りに落ちたのだろう。2人の間に挟まれ悶々としているうち、いつのまにか寝息を立てていた。隣りにチャコの姿はない。ユキはまだ眠りの中。寅の背中でスヤスヤ寝息をたてている。「起きたかい。朝食はこっち」部屋の片隅でチャコが手招きする。朝食は部屋の片隅に用意された長机のうえ。(ここはタコ部屋か)ユキを起こさないよう、そっと布団から抜け出していく。半分以上の布団がすでにたたまれ、部屋の隅で山になっている。残った布団に数人が、頭だけを出して眠っている。鮭の焼き物。納豆。海苔。薄く切ったキュウリと大根の漬物。おひつの飯はすでに冷えている。(元旦の朝飯だというのに、これじゃまるで田舎旅館の朝飯だ・・・)「贅沢を言うんじゃないよ。はやい連中は6時から動...上州の「寅」(10)生まれは東北

  • 上州の「寅」(9)雑魚寝 

    上州の「寅」(9)午前3時。参道から人の姿が消えた。最後の2年参りを見送ったチャコが、屋台のハダカ電球を消す。「寝よう。明日のために」あんたも来な。こっちだよと首を振る。「寝る場所が用意されているの?」「5日間。3食のまかないと寝る場所がある。嬉しい限りだろう」「ということは、途中で帰れないという意味か!」「書いてあっただろ。募集要項に」「聞いてない。そんな話は・・・」「どっちでもいいさ。ごちゃごちゃいわず、着いといで」テントの裏から細い路地へ入りこむ。路地の道を3分ほど歩く。なんだか連れ込み宿のような建物の裏へ出た。(あやしい建物だ・・・)ここじゃないだろうと否定する寅をしり目に、チャコが裏口のドアを開ける。(入っていく。ホントかよ・・・)うす暗い廊下を歩くと大広間のような部屋へ出た。20畳ほどはある。10数...上州の「寅」(9)雑魚寝

  • 上州の「寅」(8)30秒で食え

    上州の「寅」(8)深夜2時。参道が閑散としてきた。あれほど賑わっていた参拝客の姿が嘘のようだ。「安心するんじゃないよ。嵐のまえの静けさだ。本番はこれからだからね」チャコが、ふうっと青い煙を吐きあげる。「あ、やっぱり吸うんだ君は。未成年だろ。やめた方がいい。体によくない」「ひと稼ぎしたんだ。自分へのご褒美だ。いいだろう、これくらい」「よくない!。大人になってから吸え。それがルールだ」「18歳は大人だ。選挙権もある。2022年から成人年齢は18歳になる。大目に見ろ。そのくらい」「本番はこれからだと言ったね。どういう意味だ?」「元旦の朝からが本番さ。着飾った連中が今年一年の幸福のため、わんさか神頼みにやってくる。大晦日の人出なんて嵐の前の前兆だ。覚悟しな。トイレへ行く暇もないくらい忙しくなるから」そのとき。チャコの携...上州の「寅」(8)30秒で食え

  • 上州の「寅」(7)二年参り

    上州の「寅」(7)午後10時を過ぎると人の数がふえてきた。除夜の鐘を聞きながら初詣でする人たちが、これほど居るかと驚いた。10時半を過ぎると参道に長い行列ができた。「すごいなぁ。この寒さだというのに、この人出は」「兄ちゃん。ぼんやりしてんじゃないよ。あちらのお客さんに熱燗を一本。それからそちらのお客さんに、もつ煮のおかわり!。ぼやぼやしてんじゃないよ。仕事はまだ、はじまったばかりだからね!」チャコに怒られた。人の数はさらに増えている。「熱燗をくれ」行列の中から千円札をふる人がいる。「500円です」「ぼったくりだな。酒屋で250円で売ってるワンカップが500円か」「本日は除夜の鐘が鳴る特別な日ですから」「ちげぇねぇ。面白いことを言うねぇ。金髪の姐さんは。気に入った。釣りはいらねぇ。もう一本くれ」「はい。毎度。年明...上州の「寅」(7)二年参り

  • 上州の「寅」(6)金髪の乙女

    上州の「寅」(6)「此処がお兄ちゃんが働く職場だ」案内されたのは参道の最先端。山門の向こうは境内だ。小さなテントにパイプ椅子とテーブルのセットが4つ。奥に厨房がある。売っているのはもつ煮とおでん。「料理の経験は有るか?」「自炊はしません。すべて外食です。あっ、インスタントラーメンくらいなら作れますが」「問題外だ。じゃウエイターだ。おい。おまえら。新入りを連れてきたから仕事をおしえてやれ。言っておくがちょっかいを出すんじゃねぇぞ。こいつは上州生まれの寅だ。顔は可愛いが国定忠治の血を引く兄ちゃんだ。気をつけろ」紹介された2人は、ジャージ姿の金髪娘。ひとりは中学を卒業したばかり。もうひとりも18歳の未成年に見える。「包丁を持ったことは?」「握ったことはある」「握れりゃ十分だ。こっちへきてこいつをとにかく切りまくってく...上州の「寅」(6)金髪の乙女

  • 上州の「寅」(5)正月用品を売る

    上州の「寅」(5)アパートへ戻った寅が電話をかける。威勢のいい男性が電話に出た。「君で3人目だ。やる気があるなら即採用だ。どうする?」「はぁ・・・僕でいいのですか。本当に?」「やりたいだろ。短期バイト。その気があるのなら大晦日の昼に、履歴書はいらんから、免許証のコピーを持って、これから指定する寺院の境内へ来てくれ」即採用ということで話が決まった。免許証のコピーがあれば、履歴書はいらないという。変った会社だと思ったが、ふかく詮索しなかった。5日間の短期仕事だ。問題はないだろう・・・とタカをくくっていた。暮れの31日。予定の時間より早く寺院へ着いた。有名寺院はすでに、初詣客を迎えるための屋台があふれている。(正月用品を売るということは、まさかテキヤの仕事・・・)準備にいそがしい屋台の様子を見ているうち、不安がわいて...上州の「寅」(5)正月用品を売る

  • 上州の「寅」(4)年末年始のアルバイト

    上州の「寅」(4)寅は冷めているわけではない。しかし熱くなることはほとんどない。彼女は居ない。いや、女ともだちすら存在しない。欲しいと思ったこともない。20歳を過ぎたというのに、いまだ初恋を経験していない。「親もおらんし、兄弟はアルバイトと部活で留守か。となると実家へ帰っても意味はない。ということは年末年始は八王子の、この部屋で過ごすことになる」困ったもんだと、ごろり寝転ぶ。石橋を叩いて渡らないどころか、そのまま帰ってしまうのんき者。対策を考えているうち、いつしかウトウト。そのまま深い眠りの中へ落ちていく。「あれ・・・」目覚めた時。窓の外はすでに真っ暗。いつの間にか日が暮れている。「よく寝た。腹減ったな」冷蔵庫を開けてみる。中は空だ。何もない。買い出しもしていない。実家へ戻る予定でいたからだ。「しょうがねぇ。ラ...上州の「寅」(4)年末年始のアルバイト

  • 上州の「寅」(3)デザイナーへの道

    上州の「寅」(3)寅は都内の大学へ進学した。住んだのは八王子市。アパートの窓から多摩丘陵が見える。「グラフィックデザイナーになりたい?。どんな仕事じゃ。いったいそれは」「広告や看板、チラシなどをデザインする仕事です」「広告?、看板?。看板屋になりたいのか。おまえは」「看板屋じゃありません。いろいろデザインする仕事です」「絵描きになるのが夢だったはずだ。気持ちが変ったのか?」「芸術は食えません」「賢明な判断だ。デザイナーになるための学校なんか有るのか?」「多摩にあります」「高尾山のふもとだな。ハイキングに行くときの宿泊に便利だ。いいだろう許可する。看板屋の学校へ行け」「だから、グラフィックデザイナーだって・・・もう」父のひと声で、造形大学への進学が許された。寅の熱意がつうじたわけではない。ハイキングに凝り始めてい...上州の「寅」(3)デザイナーへの道

  • 上州の「寅」(2)エピソード2 柔道ワルツ

    上州の「寅」(2)「寅」のエピソードをもうひとつ。「寅」の幼年期の習い事はふたつ。体育教師の父のすすめではじめた柔道と、音楽教師の母が得意とするピアノ。両親は文武両道の息子を育てることが夢だった。学校から帰って来ると毎日1時間、ピアノの練習。柔道は近所の道場で、月・水・金の3日間。練習時間は90分。これで文武両道の息子が完成するはずだった。しかし。母がさきに音をあげた。なにを弾いても、テンポがまったく同じ。「寅ちゃん。この曲はもうすこし速い曲なのよ。テンポよく、チャチャと弾くことができないのかしら。この子は」「寅ちゃん。この曲はもっとゆったり遅めに弾く曲なのよ。もっとゆっくり、ゆったり、優雅に弾くことができないのかしら。この子は」母がピアノのうえにメトロノームを置いた。メトロノームは、リズムを取りながら練習する...上州の「寅」(2)エピソード2柔道ワルツ

  • 上州の「寅」(1)エピソード1 もつ煮

    上州の「寅」(1)石橋をたたいても絶対に渡らない。いつも引き返してしまう。それが「寅」という男。生まれは群馬県。むかし風にいうなら「上州」。姓は諏訪。名は寅太郎。教師一家、諏訪家の長男として生まれた。父親は国民的名画「フーテンの寅さん」の大ファン。「いやです。寅太郎なんて野暮な名前。だいいちテキ屋でしょ。寅さんは。こどもが将来、そんな人間に育ったらどうするの。あたしは反対です。翔太か、翔(かける)にして!」「遅い。手遅れだ。もう役所へ出生届を出してきた」「もうっ、あんたって人は・・・」というわけで上州に「寅」が誕生した。フーテンの寅さんこと車寅次郎の生業は、ご存じの通りテキ屋。ばくちうちではないが旅ガラスの渡世人。「遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。渡世上故あって、親...上州の「寅」(1)エピソード1もつ煮

  • 北へふたり旅(119)最終話 

    北へふたり旅(119)新函館北斗駅から2時間40分。乗り換え駅の仙台へ到着する。ここで別の新幹線に乗り換えて、宇都宮まで南下する。東北を走る新幹線はぜんぶで5種類。はやて・はやぶさ・こまち・なすの・やまびこ、の5列車。はやて・はやぶさは新青森が終点。その先は北海道新幹線として北へ行く。なすのは郡山が終点。こまちの終点は盛岡。一部が秋田新幹線として秋田へむかう。やまびこの終点は盛岡。やまびこ号だけが、栃木県の宇都宮駅で停まる。言葉を変えればほとんどの新幹線が停まらない駅。それが宇都宮駅。宇都宮で降りるため、この旅最後の新幹線へ乗り込む。宇都宮から先は各駅停車の、ローカル線2本の移動がまっている。「最後まで手を振っていましたね。あの娘」「いい子だった。ホントに」「旅は楽しいですね。あんな娘さんと出会うことができるも...北へふたり旅(119)最終話

  • 北へふたり旅(118)メロン記念日⑬

    北へふたり旅(118)半熟黄身の卵焼きと3本のウインナーが白飯の上に載っている。「合法ハーブはどこだ?」卵焼きをそっとめくる。みどりの座布団があらわれた。これか・・・合法ハーブは。「お手紙が添えられています。合法ハーブのつくりかた。1。ニンニクは1mm幅に薄くスライスする。しそは良く洗い、キッチンペーパーでよく水気を取る。2。容器にしそ、ニンニク、醤油、ごま油を入れる。味がなじむまで漬け込んだら完成。万能調味料として幅広く、なんにでも活用できる、とあります」「若いものの考えるメニューは、なんとも刺激的だ。ユンケルより効き目があるかもしれない」「そういえばすっかり忘れていました。ユンケルを呑むことを。いまからでも遅くありません。念のため、呑んでおきましょ。ねぇあなた」妻がバッグの中からユンケルを取り出す。30ml...北へふたり旅(118)メロン記念日⑬

  • 北へふたり旅(117)メロン記念日⑫

    北へふたり旅(117)札幌を出て25分。木立のむこうに銀色の尾翼が見えてきた。新千歳空港だ。乗客の3分の1が立ち上がる。「みんな降りていきますねぇ。函館までいくひとは少ないのかしら・・・空席が目立ってきました」「夏休みも終わりだ。人の動きもピークを過ぎたんだろう」「そういえばユキちゃんからもらった、はじめてのお弁当。いったいどんなお弁当でしょう」「厨房を借りてつくったと言ってたね。材料的に問題ないだろうが、問題はユキちゃんの腕前だな」「開けてみましょうか?」「早くないか。昼には」「見るだけです」風呂敷のつつみに妻の手がかかる。するりと風呂敷がはずれる。中から4段重ねの重箱があらわれた。「4段重ねのお重です。和食かしら?」「いいにおいがするな。食欲がそそられる」「しょうしょう危険な匂いです。でもなんでしょう、この...北へふたり旅(117)メロン記念日⑫

  • 北へふたり旅(116)メロン記念日⑪

    北へふたり旅(116)札幌駅のホームは2階。発車まであと10分。特急・北斗号はすでに入線している。メロンの箱をかかえた妻が、ホームの中ほどで立ちどまった。のぼって来たばかりのエスカレーターを振りかえる。(誰か来るのかな?)乗客の数は、意外なほどすくない。エスカレ―ターから人があらわれるが、すぐ車両の中へ消えていく。(乗車率、3割以下かな・・・)すこし寂しい出発風景だ。発車まで5分を切った。(そろそろ乗り込もうか)妻を振りかえったとき。エスカレータを駆けあがる足音が聞こえてきた。妻の顔がやわらぐ。まちびとがようやく来たようだ。(妻がメロンを欲しがったわけは、そういうことか)メロンが欲しいと言った妻を、ようやく理解することができた。ユキちゃんがエスカレータを駆けあがって来た。両手におおきな風呂敷包をかかえている。「...北へふたり旅(116)メロン記念日⑪

  • 北へふたり旅(115)メロン記念日⑩

    北へふたり旅(115)午前9時40分。2日間、世話になったホテルを出た。大きな荷物は無い。妻のキャリーバッグは宅急便で送り出した。最小限の荷物をいれたリュックと、妻の愛用のバッグだけの軽装でホテルを後にする。ゆっくり歩いて駅まで10分。西口に接続するデパートはまだ、重いシャッターが降りたまま。「すこし早かったな・・・」ベンチでも有れば座れるがと周囲を見回した。あいにく空きがない。どこかの団体客が30人ほどのベンチを完全に埋め尽くしている。振りかえると広場のベンチに空きが見える。しかしそこまで戻る時間が惜しい。中途半端な時間を持て余しているとシャッターが開きはじめた。(3分前だぜ・・・)静かにゆっくり、シャッターが上昇していく。気配に気付いた団体客がたちあがる。(なんだよ。電車待ちじゃなくて、デパートの開店待ちの...北へふたり旅(115)メロン記念日⑩

  • 北へふたり旅(114)メロン記念日⑨

    北へふたり旅(114)「あなた。もう7時半です」妻の声におこされた。今日は旅の4日目。最終日の朝。夕べはけっきょく呑みすぎた。ジェニファとアイルトン、ユキちゃんとすすきのの大衆食堂でラーメンを頼み、乾杯したことまでは覚えている。しかしその後のことは記憶にない。気がついたらホテルのベッドで石のように眠っていた・・・「かるくひと風呂あびてくる」「朝食は8時からです」「わかってる。カラスの行水で出てくる」「体調、いいようですね」「あ・・・」そういえば身体の重さも虚脱感もない。「くれぐれも無理しないでください。今日は長旅になりますから」「わかった。レストランで合流しょう」着替えを持ち、エレベーターへ乗り込む。大浴場は1階にあり、朝食は地下1階のレストラン。部屋へ戻るより、そのまま直行したほうが効率がいい。こちらのホテル...北へふたり旅(114)メロン記念日⑨

  • 北へふたり旅(113)メロン記念日⑧

    北へふたり旅(113)「締めはやっぱり、ラーメンでっしょ」「パフェじゃないのか?」「パフェは昨日食べたでしょ。すすきのの締めはやっぱりラーメン。それも大衆食堂の!」「大衆食堂のラーメン?。やってるか?。もう午前零時だぜ」「だから困るっしょ。群馬から来た田舎者は。すすきのは眠らない街なの。食堂も午前3時まで営業しているっしょ」案内されて驚いた。入り口に定食と書かれた白い暖簾が揺れている。ホントに食堂が開いていた。中へ入ってもっと驚いた。カウンターだけの狭い店。7~8人が座ればもう満席だ。壁にびっしり定食の名前がならんでいる。ラーメンは・・・あった!。しかし、いちばん最後に貼ってある。「末席に貼ってあるぞラーメンは・・・。だいじょうぶか?」「真打は最後に登場。だいじょうぶっしょ。ここのラーメンは絶品ですから」「じゃ...北へふたり旅(113)メロン記念日⑧

  • 北へふたり旅(112)メロン記念日⑦

    北へふたり旅(112)「次は立ち呑みっしょ」すすきのにも立ち飲み屋がある。繁華街からちょっとはずれた路地に何軒もある。立ち飲みには作法がある。少人数で訪れること。ほとんどの立ち飲み屋はスペースが限られており、大人数は入れない。ひとつのグループでカウンターを占拠することは、お店の側からも他のお客さんからも嫌がられる。多くても3人程度で行くのがいい。客が増えたときは一人でも多く入れるように、客同士が斜めになり、スペースを詰めることもある。つまみは少しずつ頼む。ひとりずつのスペースが限られているのでつまみの注文は、人数×2くらいにする。もちろん、無くなったら追加で頼めばOKだ。支払いにも独特のシステムがある。それがキャッシュオンデリバリー。ほとんどの店が採用している帰り際に代金を支払うのではなく、料理と引き替えにその...北へふたり旅(112)メロン記念日⑦

  • 北へふたり旅(111)メロン記念日⑥

    北へふたり旅(111)「2次会は、断然すすきの!」ジェニファが多数決で、行き先を決めましょうと手をあげる。しかも「女子優先で」と片目をつぶる。どうやら勝算があるらしい。数分後。「わたしも混ぜて」と、仕事を終えたユキちゃんがやって来た。女子はユキちゃんをふくめて3人。男子はわたしとアイルトンだけ。最初から勝ち目はない。すすきのは札幌を代表する繁華街。同時に全国に名をはせた歓楽街でもある。すすきのの歴史は古い。明治2年。開拓使がおかれ、札幌の建設が始まった時期までさかのぼる。定住者わずか13人だった札幌へ、労務者1万人が集まった。街づくりがおおいな活気を見せた。しかし彼らのほとんどは一稼ぎすると、本州へ戻ってしまう。開拓使判官・岩村通俊が労務者たちの足止め対策を考える。「金があれば男は遊ぶ。カギは女だ」官営の遊郭設...北へふたり旅(111)メロン記念日⑥

  • 北へふたり旅(110)メロン記念日⑤

    北へふたり旅(110)「呆れたぁ~。また来たの2人して。いったい何を考えてんのさ。忙しいって言ったっしょ、今夜は」店の一番奥へ通された瞬間。ユキちゃんが飛んできた。額に汗がうかんでいる。ほんとに今夜は忙しそうだ。「札幌へ2泊して、2晩ともウチで呑むなんて。バカじゃないの。2人とも。もうすこしまともなところで、最後の夜を楽しめばいいのに」「いや・・・味噌ラーメンを食べに行こうと思ってホテルを出たんだが、気がついたら足が勝手に、こっちへあるいていた。悪いね。とりあえず生ビールを2つ」「団体客で今夜はてんてこまいっしょ。つまみは途中で適当にくすねてくるから、それでいいかしら?」「くすねてくる?。ただ事じゃないね」「もっかのところ、厨房は戦争騒ぎです。オーダーを出してもたぶん、出てくるまで1時間はかかるっしょ」店はたし...北へふたり旅(110)メロン記念日⑤

  • 北へふたり旅(109)メロン記念日④  

    北へふたり旅(109)ホテルへ戻ったのは午後6時。とりあえず部屋へはいる。窓の外、まだ陽は高い。夕食の予約はしていない。したがって今夜もどこかで札幌の食を楽しむことになる。「なにが食べたい?」「そうねぇ。最後はやっぱり札幌の味噌ラーメンかしら」「どうせ行くなら、地元のおすすめがいいね」「フロントのお姉さんに聞いてみましょう」「すこし呑みたいけどね」「駄目です。明日は長旅になります。無理して途中で調子がわるくなったら大変です。今夜は自重して、はやく寝ましょう」「旅の最終日は早寝か・・・味気ないな」「なに言ってんの。不整脈が悪化したらそれどころではありません。ラーメンを食べた後、すこしでいいのなら特別にユキちゃんのお店でビールくらい、許可します」「ユキちゃんお店に出るの?。休みのはずだけど」「きゅうな予約が入り、忙...北へふたり旅(109)メロン記念日④

  • 北へふたり旅(108)メロン記念日③ 

    北へふたり旅(108)床面積の広いスーパーマーケット。そんなイメージで地下へ降りていく。エレベーターのドアが開いた瞬間、目を見張った。そこはまるで食のテーマパーク。洗練された店舗が華やかに並んでいる。(いまどきのデパ地下は、こんな風になっているのか・・・)(ホント。じつに美味しそうです)メロンを見にいくはずが、妻の目は華やかな弁当にクギづけになった。北海道の食材をふんだんに盛り込んだ弁当が、これでもかとばかり並んでいる。「駅弁よりこちらのほうがおいしそうに見えます」「問題は時間だ。朝10時だ。買えるか、ここで」デパートの開店は10時。その時間、弁当はここへ並んでいるのか?。「だいじょうぶです。開店とどうじに販売できるよう、ご準備しております。駅弁として楽しんでいただけるようお茶もセットで用意してございます」妻の...北へふたり旅(108)メロン記念日③

  • 北へふたり旅(107)メロン記念日②

    北へふたり旅(107)「この味がいいね」と君が言ったから、8月27日はメロン記念日」「何。それ?」「俵万智。1987年に発売されたサラダ記念日。そこからの盗作」「あら。懐かしいです、俵万智。『寒いね』と話しかければ『寒いね』と答える人のいるあたたかさ。ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう、という作品も好きでした」「そういえば、おしまいにするはずだった恋なのにしりきれとんぼにしっぽがはえる。なんて作品もあったね」「えっ。いったいなんのお話ですか?」ユキちゃんがキョトンと振りかえる。無理もない。40代から上の年齢層なら知っているが、平成生まれは俵万智を知らない。「サラダ記念日は、280万部のベストセラー。口語体で現代短歌を詠んだ人、それが俵万智というひと」「へぇぇ・・・」「ここだけの話、サラ...北へふたり旅(107)メロン記念日②

  • 北へふたり旅(106)メロン記念日①

    北へふたり旅(106)2人が手ぶらでわたしの前にあらわれた。「あれ・・・どうしたの?。買ったものは?」「大きな荷物をもって戻って来ると思っていたの?。もしかして。遅れていますねぇ。いまどきはお店から送ってくれる時代です」なんでも宅配で送れる。おおきな荷物をかかえ電車へ乗りこむわたしが、いきなり時代遅れになった。「ユキちゃんにすっかりお世話になりました」「本当だ。あらためてお礼をしたいね」「なにか欲しいものがある?。遠慮なく言ってちょうだい」「わたし・・・メロンが大好物なんです」「メロン。いいわね。わたしも大好き!お世話になったお礼にメロンを買いに行きましょう。ねぇあなた」女2人ですでに筋書きが出来ているようだ。「このさき。西の出口にメロンを売っているデパートがあるそうです。駅弁も置いてあるそうですから、あしたの...北へふたり旅(106)メロン記念日①

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