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落合順平 作品集 https://blog.goo.ne.jp/saradakann

現代小説を中心に、連載で小説を書いています。 時々、画像もアップします。

落合順平 作品集
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2017/03/26

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  • 上州の「寅」(55)子連れ再婚

    上州の「寅」(55)子連れ再婚

    上州の「寅」(55)「受け入れたのですか、彼からのプロポーズを?」「言ったでしょ。子持ち女の恋の成就は難しいって。ひとつだけ条件を出しました。ユキがあなたのことをあたらしい父親と認めれば、そのとき再婚しますって」「ユキはあたらしい父親として彼を認めたのですか?」「ひとの心の奥底の変化を読むのは難しい。ユキは拒否しなかったけど、積極的に自分から近寄っていくこともしなかった。いつまで経っても微妙な距離が残っていた。それでも彼のことを、家族のひとりとして受け入れた。とわたしは勝手に思い込んでいた・・・ユキが中学2年になったとき。再婚することを決めました」「経済的な理由からですか?」「うふふ。ホント鋭いわね、あなたって。そう。いちばんの理由はこれから重くのしかかるユキの学費。高校大学とすすんでいけば、女ひとりの働きでは...上州の「寅」(55)子連れ再婚

  • 上州の「寅」(54)バツイチの恋

    上州の「寅」(54)バツイチの恋

    上州の「寅」(54)「結婚して鹿児島で暮したのは、5年あまり。離婚が成立し、3歳のユキを連れ、生まれ育った小豆島へ帰ってきました。実家へもどらずとなり町で、ちいさなアパートを借りました」「実家を頼らなかったのですか?」「駆け落ち同然で実家を出た身です。わずか5年で離婚しましたと、実家の敷居をまたぐことはできません。そのぶんユキに苦労をかけました」「でもユキはお母さんと暮らした7年間は、楽しかったと言っていました」恵子さんの手が止まった。沈黙の時間が過ぎていく。どうやら予期しない言葉だったらしい。「ユキがそんな風に言っていましたか。そうですか・・・再婚するまでの7年間のことを」恵子さんの眼が宙を泳いでいる。ユキと暮らしたふたりだけの7年間を思い出しているのだろうか。またすこし、沈黙の時間が流れていく。「再婚相手、...上州の「寅」(54)バツイチの恋

  • 上州の「寅」(53)駅まで

    上州の「寅」(53)駅まで

    上州の「寅」(53)降りるべき乗客はおり終わった。しかしバスは停留所から動かない。動きだす気配がない。・・・なんだ?、どうした?。乗客がざわつきはじめた。駅へ向かうバスはほぼ満席。(なにかトラブルの発生か?・・・)乗客の目が運転席の脇で立ちすくむ恵子さんへ集中する。運転手が恵子さんへ声をかける。「お母さん。ほんとうはどこまで行きたいのですか?」「駅までです。駅まで行きたいのですが、この子がこの通り泣きはじめて、わたしには手に負えません。みなさんにご迷惑がかかりますので、ここで降りたいと思います」「そうですか。わかりました。ちょっと待ってください」運転手がマイクのスイッチを入れる。「混雑している中、お時間をかけてすみません。みなさんにお願いがあります。こちらのお母さんが赤ちゃんが泣いて皆さんに迷惑がかかるので、こ...上州の「寅」(53)駅まで

  • 上州の「寅」(52)泣き虫

    上州の「寅」(52)泣き虫

    上州の「寅」(52)「あの子は泣き虫でした」昨日よりやわらかい笑顔の恵子さんが、寅とチャコを出迎える。「どうぞ」手招きされた。「紅茶?。コーヒー?。今日はわたしにおごらせて」こころが落ち着いたせいか、物腰も昨日よりはるかにやわらかい。「ユキはね。とっても泣き虫な赤ん坊でした」コーヒーが2つ運ばれてきたあと、恵子さんがユキの話を始めた。「わたしも泣き虫だったよ。私のDNAを受け継いだようです。うまれたときからユキはとにかくよく泣きました。何が気に入らないのか、火がついたように泣くの。はじめてのことでどうしたらいいかわからず、一晩中、抱っこしたまま公園を歩いたこともあります。好きなだけ泣いて泣きつかれるとようやく眠るの。その時の寝顔が可愛いの。泣くときは悪魔、眠るときの顔は天使。とにかく手を焼きました。それが産まれ...上州の「寅」(52)泣き虫

  • 上州の「寅」(51)渡したいもの

    上州の「寅」(51)渡したいもの

    上州の「寅」(51)「あんたのせいでまた、ホームセンターへ行く羽目になったじゃないか」次の日の昼休み。背後からあらわれたチャコが唇を尖らせた。「おれはなにもしてないぜ。君がぜんぶ話をしたくせに、なんでいまさら俺のせいなんだ」「寅ちゃんが運転してね。あたし、疲れた」「それはかまわないが、怖いぞおれの運転は」「だいじょうぶ。寝ているから」「いいのか。なんどもホームセンターへ行くとユキが疑うぜ」「ユキには買い忘れが有ると言っておいた。それよりなんだろう。渡したいものがあるからもう一度来てくれというのは」別れ際、準備していたものがあるの、と恵子さんが言い出した。ユキに渡してほしいという意味か。明日用意するから午後3時過ぎにまた来てほしいという。断る理由はない。わかりましたと2人で答え、ホームセンターから帰って来た。4月...上州の「寅」(51)渡したいもの

  • 上州の「寅」(50)休憩室

    上州の「寅」(50)休憩室

    上州の「寅」(50)周囲が騒がしくなってきた。「不審者あらわる」の一報が警備室へ伝わる。警備員が駈けつけてきた。「なに?」「どうしたの?」買い物客たちも立ち止まる。寅の周囲へ物見高い人垣が出来上がる。おおくの視線が寅へ集まる。「だから言ったのに・・・」人垣をかきわけてチャコが出てきた。店長へペコリと頭を下げる。「ごめんなさい。この人はわたしの連れです。こちらのレジにいた女性の娘さんのことで話があり、戻ってきました」人垣の背後へ3番レジにいた女性が戻ってきた。「わたしの娘、ユキをご存じなのですか!」声がふるえている。「この人の娘さんのことを知っているのか、君たちは」「はい。どうやら誤解があったようです。最初にそう言えばよかったのに、このひと、やたら口が不器用なんです」「なんだ。そういうことか。よかった」店長がほっ...上州の「寅」(50)休憩室

  • 上州の「寅」(49)もう一度行く

    上州の「寅」(49)もう一度行く

    上州の「寅」(49)「もう一回行く?。何か考えがあるの?」慌ててチャコも立ち上がる。「策はない。でももういちど三番レジのおばちゃんに会って来る」「会ってどうするの。策もないのにどうするつもり?。会いに行くだけじゃなにも解決しないわ」「それでもおれは行く」「石橋を叩いても渡らないくせに、へんなところでやる気をみせるわね。お願いだから無茶しないで。家族が崩壊するようなことになったら逆効果になるからね」「それでもおれを止めるな」「止めないわ」「じゃ、行ってもいいんだな」「行きたいんでしょ。どうぞご自由に」自分でもよくわからないまま寅が動き始めた。なにかがはげしく寅を突きあげる。黙って座っていられない気分だ。「無茶しないでよ」チャコの声を背中で聞きながら、寅が喫茶店をあとにする。こんな気分になったのははじめてだ。寅は人...上州の「寅」(49)もう一度行く

  • 上州の「寅」(48)妹が出来た

    上州の「寅」(48)妹が出来た

    上州の「寅」(48)「貧しいけど楽しかった?。そんなはずはない。おかしいだろう、矛盾していないか?」「あんたみたいに恵まれた家庭に育った子には、わからないさ。人は仲良く暮せることが一番だ。わたしたちは仲間をまもる。どんなことがあっても裏切らない。テキヤは人と人のつながりを一番大切にする集団だ。一攫千金を夢見ているけど実態はほとんどが、額に汗して働く貧民層さ」「貧しいのか?。テキヤの暮らしは?」「裕福な人はすくない。お金には恵まれないが、こころまで貧しくはない。どんな状況でも事実を受け止め、笑顔で仲良く暮らす。笑顔は大切だ。こころの栄養になるからね。ユキは3歳から10歳までお金には恵まれなかったけど、母の愛に恵まれた」「10歳のとき。なにが起きたんだ」「窮状を見かねたかつての同級生が救いの手をさしのべた」「再婚し...上州の「寅」(48)妹が出来た

  • 上州の「寅」(47)旅はおわらない

    上州の「寅」(47)旅はおわらない

    上州の「寅」(47)「そんな風にユキはの君の屋台へ居着いたのか。そこまでのいきさつはわかった。でもさ。金髪になった理由はいままでの説明じゃわからない」カラリとメロンソーダーを寅がかき回す。「この島にはユキの母親の生家がある。ここは母親の故郷。でもユキが産まれたのは別の場所。ここから遠く離れた鹿児島県」「鹿児島?」「さいしょに巣箱を設置した鹿児島の山を覚えているだろ。あそこからすこし先のちいさな町でユキは生まれた」「あ・・・」「みつばちの旅は、ユキが生まれた土地のちかくからはじまったのさ」「スタートがユキが生まれた土地のちかく。2ヵ所目が母親の生家があるこの島。なにか意図的なものを感じるな」「離婚した母親は3歳のユキをつれてこの島へ戻ってきた。ユキは父親の顔をよく覚えていないそうだ。そのくらいだから自分が生まれて...上州の「寅」(47)旅はおわらない

  • 上州の「寅」(46)年齢不詳?

    上州の「寅」(46)年齢不詳?

    上州の「寅」(46)「おい。おまえ。名前は!」「ユキ」「その名前はさっき娘から聞いた。そうか。ユキというのは本名だな。住所は・・・生まれは何処だ。中学生を使うわけにはいかん。親に知らせる。親がいるだろ。電話番号と住所を言え。」「親はいません」「いないわけがないだろ。その歳で天涯孤独の独り身か!」「家出中です。親はいません」「ほら見ろ。やっぱり居るじゃないか。住所は何処だ。親の携帯番号を教えろ。すぐ連絡を取る」「知りません」「嘘を言うな。親の電話番号を知らないはずがないだろう」「忘れました」大前田氏の追及をユキがのらりくらり逃げていく。収穫の無い展開に、やがて大前田氏の怒りが頂点へ達していく。顔がみるみる赤くなる。「いい加減にしろ!」大きな声を出したとき。大前田氏が背後のざわざわに気がつく。いつのまにか同業者の人...上州の「寅」(46)年齢不詳?

  • 上州の「寅」(45)14歳の金髪

    上州の「寅」(45)14歳の金髪

    上州の「寅」(45)「はじめてユキと出会ったのはいまから半年前。場所はさぬき高松まつり。開店準備していた出店の前へ、はでな金髪の女の子があらわれた。金髪?。そのわりに年が若すぎるな。見た瞬間、そんな風に感じた。もしかしたら中学生かな?チラリと横目で見たけど、その子はそのまま通り過ぎていった」「さぬき高松まつり?、何それ?」「3日間で58万人をあつめる香川県最大のおまつり。学校は夏休み。だから若い女の子が金髪で通っても別に不思議じゃない」「でも中学生で金髪はまずいだろ」「そうでもないさ。夏休みの間だけ金髪や茶髪にそめる女の子はたくさんいる。2学期がはじまるまえ黒髪へ戻しておけば、どうってことないからね」「そんなものか?」「そんなものさ。すこししたらまた、金髪の女の子がもどって来た。わたしの店の前で立ち止まった。2...上州の「寅」(45)14歳の金髪

  • 上州の「寅」(44)メロンソーダ

    上州の「寅」(44)メロンソーダ

    上州の「寅」(44)メロンソーダ喫茶店で寅が頼むのは、いつも決まってメロンソーダー。メロンソーダー以外、頼んだことがない。母といっしょに初めてカフェへ寄ったとき。寅の目にいきなり、涼しそうな緑の飲み物が飛び込んできた。なんだろう?。サイダーのような液体に、鮮やかな色がついている。「ママ。シュワシュワしている、あの緑が呑みたい」「ダメ。あれは身体によくない炭酸飲料です。それにあの緑色は人工甘味料のかたまり。どちらもこどもの体によくありません。他のものを頼みなさい」「身体によくないの?」「炭酸飲料に子供にひつような栄養ははいっていません。炭酸は骨を溶かすのよ」「骨が溶けるの?。でもあの人は呑んでるよ」「大人は良いの」「大人になれば呑めるのか。いつになれば呑めるの。ぼくは」「親から独立した時。お給料をもらい、ちゃんと...上州の「寅」(44)メロンソーダ

  • 上州の「寅」(43)誰かに似ている

    上州の「寅」(43)誰かに似ている

    上州の「寅」(43)「どうだった?」チャコが真正面から寅の目をのぞきこむ。「なにが?」「言ったでしょ。3番レジのおばちゃんの印象よ。あのおばちゃん。あんたの目に、いったいどんな風に映った?。それが聞きたいの」「俺には関心がなかったようだな」「あたりまえです。あんたに感心示すような女はこのあたりにいません!。そうじゃないの。聞きたいのはあのおばちゃんの印象です」「お釣りをもらったとき。手が荒れていたような気がしたな。家事が忙しいのかな。あのおばちゃん」「顔は?」「顔?。普通だ。美人じゃないけど、ブスでもねぇ。どこにでも居るごく普通のおばちゃんだな」「誰かに似ていると思わなかった?」「似ている?。誰に・・・」「やっぱりだ。ピンと感じるものがなかったか、あんたには。無理ないか。もともと感度が低いもんね」チャコがストロ...上州の「寅」(43)誰かに似ている

  • 上州の「寅」(42)3番レジ

    上州の「寅」(42)3番レジ

    上州の「寅」(42)3番レジ「突き当りを右。そのまま直進して2キロ。左前方に建物が見えてくる。そこが目的地のホームセンター」助手席へ座ったチャコがすらすらと指示を出す。まるで何度もこの道を走った様な雰囲気だ。「前にも来たことがあるの?。この島へ」「ある。2回来た」「2度も来たの?。なにか特別な用事でもあったのか?」「普段はぼんやりしているくせに、ときどき鋭くなるわね、あんたも。行けばわかる。そこに答えがある」「どんな答えだ?」「そのうちわかる。いいから前を見て運転してちょうだい。あんたの運転は下手くそなんだから」「そこまで言うなら君が運転すればいいだろう」「可愛いレディは助手席が似合うの」(ホントに18歳かこいつ。なんだか年上に思えてきた・・・)寅が口の中で毒づく。実際、寅の運転はたどたどしい。とにかく危なっか...上州の「寅」(42)3番レジ

  • 上州の「寅」(41)ユキの変化

    上州の「寅」(41)ユキの変化

    上州の「寅」(41)次の日から巣箱造りがはじまった。老人との朝食がおわると寅は、少し離れた作業小屋へ向かう。午前9時。巣箱造りがはじまる。海を見おろす作業小屋で、3人並んで巣箱造りの日課がはじめる。丘から見下ろす3月の海の色は心地よい。瀬戸内海は内海。そのため太平洋や日本海と海の色が異なる。水深が浅く、水の交換がさほどない。島が多く点在し、影ができるなどの条件のため紺碧の色は出ない。そのかわり場所により緑やヒスイ色に見えるときもある。作業手順は頭に入っている。鹿児島で30個ちかく製造している。ここでの目標も30個。会話もなく、もくもくと3人で作業する日がつづく。そんな中、寅には気になることができた。小豆島へ来てから急にユキが無口になったことだ。あれほど快活だったユキが口をひらかず、黙々と作業している。寡黙なユキ...上州の「寅」(41)ユキの変化

  • 上州の「寅」(40)ハチと自然

    上州の「寅」(40)ハチと自然

    上州の「寅」(40)オリーブの栽培が本格化したのは1908年(明治41年)。日露戦争に勝利した日本政府は、北方漁場の海産物を保存する方法として、オリーブオイルを使用したオイル漬けに着目した。オリーブオイルを生産するため、農商務省がオリーブの試験栽培を開始。香川・三重・鹿児島の3県が栽培地として指定された。その中で香川県の小豆島のみが栽培に成功した。1911年(明治44年)。74㎏の実を収穫することができた。小豆島の気候が地中海沿岸とよく似ていたこともあるが、技師たちのたゆまぬ努力が実を結んだといえる。3年後。オリーブ栽培が島全体に普及した。いまに続く栽培の礎が築かれた。「なるほど。それでこの島がオリーブの島になったのですか。で、ご老人はこの小豆島で日本ミツバチを飼う元祖になったと伺ったのですが、なぜハチ飼いをは...上州の「寅」(40)ハチと自然

  • 上州の「寅」(39)オリーブの島

    上州の「寅」(39)オリーブの島

    上州の「寅」(39)「いまから15年前だ。作業小屋の換気口に見慣れぬものがあった。日本ミツバチの巣じゃ。ほう。こんな島にも日本ミツバチがいたのか。それがわしとハチの出会いじゃ。それからわしの養蜂がはじまった」自転車店の店主・麦わら帽子の老人は、小豆島における養蜂の先駆者。大学や専門家たちに聴きながら試行錯誤の養蜂を学んだ。いまは七ヶ所の畑に巣箱を置き、年間50キロのハチミツを採るという。「ひとつの巣箱に1匹の女王バチがいて、群れが暮らす。群れの大きさは様々だ。たいてい1万~2万匹。収穫は一年に一度。とれたはちみつは売らん。ちかくの人へおすそわけじゃ」「もったいないです・・・高価なのに」「欲をかくとロクなことがねぇ。日本ミツバチがたくさんいて、いろんな花があちこちで咲く。そんな風景を子や孫にのこせれば、それで充分...上州の「寅」(39)オリーブの島

  • 上州の「寅」(38)元祖のはちみつ

    上州の「寅」(38)元祖のはちみつ

    上州の「寅」(38)「おやっさん。居るかい?。若い者を連れてきたぜ~」店の前へベンツを停めた大前田氏が窓から顔を出す。奥へ向かって呼びかける。返事はない。明かりはついているが人の気配はない。古い自転車店だ。組み立て中の自転車が数台、店の中で乱雑に置かれている。ということはまだ自転車店として成り立っているらしい。だが店名を書いたペンキは、すでにじゅうぶん色あせている。「居ねえのか。しょうがねぇ。探しに行くか」大前田氏が店の裏手へむかう。足取りが慣れている。その先に店主が居ることを知っているようだ。はたして・・・「なんだよ。居るじゃねぇか。居るんだったら返事してくれ」「おう。おまえさんか。おれはまた性質のわるい仲買人が、はちみつを買いに来たと思った」麦わら帽子が巣箱の前から立ち上がる。「この子たちがつくるはちみつは...上州の「寅」(38)元祖のはちみつ

  • 上州の「寅」(37)小豆島

    上州の「寅」(37)小豆島

    上州の「寅」(37)九州の南端から小豆島までを、大前田氏の黒いベンツは7時間余りで走破した。「ほら見ろ。おれがその気で飛ばせば、こんなものだ。小豆島といえば二十四の瞳とオリーブの島。おまえ。二十四の瞳を知ってるか?いろんな女優が映画やドラマで新任の教師・大石先生を演じたがおれがいちばん好きなのは1987年に公開された田中裕子だ。初々しくて、じつにチャーミングだった」田中裕子は知っているが、1987年と言えば寅が生まれる13年も前のことだ。いまの田中裕子なら知っているが、生まれる前のことなどまったくわからない。はて?、と寅が首をかしげる。「知らんのか。昔の田中裕子は・・・。そういえば男はつらいよシリーズの、30作目にも登場しているぞ。花も嵐も寅次郎のマドンナ、蛍子だ。鼻にかかった甘い声。猫のように男にしだれかかる...上州の「寅」(37)小豆島

  • 上州の「寅」(36)もと暴走族

    上州の「寅」(36)もと暴走族

    上州の「寅」(36)鹿児島から小豆島まで756㎞。九州縦貫自動車道と山陽自動車道を経由しておよそ11時間。寅を助手席に乗せ、後部座席にチャコとユキを乗せたベンツが一ヶ月を過ごした荒れた日本庭園をあとにする。九州縦貫自動車道へ乗る少し前、ベンツが弁当店の前で停車した。「昼のぶんだけでいい。途中はトイレ休憩以外は停まらんからな。夕方には小豆島へ着くだろう。着いたらうまい魚を食わせてやるから感謝しろ」夕方には小豆島へ着く?。「そういえばお前。約束手形を持っているだろう。そいつをよこせ。現金にかえてやる」寅が額面10万円の約束手形を大前田氏へ差し出す。「たしかに。じゃこれ。遠慮なく受け取れ」分厚い封筒を寅へ手渡す。手ごたえが有る。10万円にしては重すぎる。寅が中を確かめる。真新しい帯封がひとつ。100万円がおさまってい...上州の「寅」(36)もと暴走族

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