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Pas de Quatre http://pasd124.blog.fc2.com/

花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。

読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。

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2017/02/11

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  • ハズレを引いた男と女・89

    「これで今日の稽古は終り・・・本気が伝わったか?」「・・・・・・はい。どうもありがとうございました・・・」今日も苦かったんだけど、少しは慣れてきた薄茶。本当言えばお菓子が後で、この苦さを打ち消したいんだけど・・・それを言ったら確実に怒鳴られると思い、黙っておいた。ただ、もう少し話をしてみたい・・・そう思ったから、片付け中の西門さんに「ちょっと聞いてもいい?」と言うと・・・「まぁ、普通は稽古中に聞くもんだけど・・・牧野は初...

  • 君がいない風景(90)

    浦田が真音の保育園を張り込んで1週間が過ぎた。だがつくしが現われる気配はなく、俄に焦りが出て来た。それならまた演技をしてでも確かめるしかないと思い、月曜日の夕方には歩いて保育園の入り口に近付いた。そして1人の若い母親が2歳ぐらいの子供の手を引いて出て来た瞬間、小走りで近付き、明るく「こんにちは~」と叫んだ。その母親は「こんにちは~」と答えたが、見慣れない男に困惑している様子・・・警戒されないためにも...

  • ハズレを引いた男と女・88

    ーー牧野の本気度が判んねぇのに、無茶は言わねぇよーーそれを言われた瞬間、何故かムッとした。「本気でやるなら俺も真剣になる。そうじゃなくて興味程度なら俺もそれに合わせるってことだ」・・・そう言ってる時もニヤニヤしてて、まるで私は後者だと言わんばかりに・・・。そりゃ、ド真剣かと言われると素直に「はい」と言えない。だけど始めてみようかなって思った事に比べると、気持ちは随分違う・・・だからあんなに頑張って野点に参...

  • 君がいない風景(89)

    アパートの部屋には真音が見ているアニメの声だけが響いていた。その小さな背中の後ろではつくしと本郷が向かい合って座り、そして無言・・・・・・『どうだろう・・・俺と新しい人生を歩んでいけないかな。これまでの恋を捨てろなんて言わない・・・言い方は変かもしれないけど、良いパートナーとして暮らさないか?』これまでの恋を捨てないのに、新しい人生とは?良いパートナーと言うのは夫婦ではないと・・・?そんな風に本郷の言葉を繰り返...

  • ハズレを引いた男と女・87

    少しは包帯とガーゼが減るかと思ったのに、逆に増えてしまうとは・・・まさかの追加治療だったけど、その左腕部分はそんなに酷くはなかった。むしろ固定していた右足の捻挫を余計に痛めたというか・・・お医者様にもくれぐれも気をつけるように言われたんだけど、そもそも原因は隣の男だし・・・。「ほんっとにドジだな!」「・・・ちょっとぼ~っとしただけよ///」「まぁ、見えない部分で良かったけどな」「へっ?どう言う意味?」「他人から見...

  • 君がいない風景(88)

    21時になり、本郷が眠くなった美来を連れてアパートから出て行く時だった。つくしは自分が作ったネーム入りの通園バッグ一式を「使って下さい」という言葉と共に差し出した。それを受け取った本郷は、バッグをマジマジとみて、その名前に気が付き目を大きくさせた。「えっ・・・これ、牧野さんが?」「はい。初めてなんであまり綺麗じゃないけど、新しい保育園で使ってもらえたらと思って・・・」「・・・・・・名前がちゃんと入ってる・・・」...

  • ハズレを引いた男と女・86

    「おはようございま~~~す、牧野様」誰かが呼んでる気がして目を開けようとしたけど瞼が重くて開かない・・・と言うか、あまりにも気持ちいいお布団で、この中から出たくない。私、こんな良いお布団買ったっけ・・・・・・軽いし暖かいし、もう最高なんだけど・・・「何処か痛みますか?大丈夫ですか?」「・・・・・・・・・う~~~ん」「もうすぐ朝食ですよ?牧野様~~~」「・・・・・・っ!」朝食というワードでパチッ!と目が覚めた。そして1人の女...

  • 君がいない風景(87)

    その水曜日の昼間、つくしは本郷と連絡を取っていた。『えっ?保育園を退園する・・・じゃあ会社は?』「それも相談したいんです。すみませんが、もうあのお店で働くことも出来ないかと・・・」『そうか・・・そうだよね、真音君を退園させるなら仕方ないよね』「本当に申し訳ありません。会社の手続きは本郷課長に手続きをお願いしてもいいですか?」『うん、それは構わないけど・・・』「それで保育園に退園届を出さなくてはならなくて、でも...

  • ハズレを引いた男と女・85

    「・・・・・・ったぁ・・・!」「いたたたた・・・また何処か擦り剥いたかも・・・・・・」「・・・・・・・・・えっ?」「・・・・・・・・・あ・・・」気が付いたら俺は牧野の上に重なるように倒れてて、牧野は両手広げた状態。指輪を握ってた俺の右手は床だったが、もう片方は牧野の胸の上・・・そして顔と顔は15㎝ぐらい。焦点が合わないほどの至近距離だし、牧野のワンピは捲れて太股丸だしだけど、その足の上には俺の足・・・。しかも何故か俺の左手、広げた状態で胸に...

  • 君がいない風景(86)

    つくしがアパートで本郷と会っていた頃、真音の保育園の近くでは車で張り込んでいた浦田がイライラしていた。それはつくしの姿が確認出来ないからで、本当言えば今日にでもつくしを直接確認して、類に報告して指示をもらうつもりだったからだ。別府に来て2ヶ月以上・・・正直こんなに早くに見付かるとは思っていなかったが、さっさと東京に戻りたいのが本音。それに成功報酬まで入れると2000万だ。早くその金を手に入れたくてウ...

  • ハズレを引いた男と女・84

    なんやかんや言って私は西門流でお稽古する羽目に・・・と言うか、断わることが出来なかった。もちろん今は捻挫してるし包帯だらけだから正座しないけど、座って出来るお茶室もあるらしくて、そこで西門さんに教えてもらうことになった。「じゃあ牧野さん♪これからよろしくね~」「まぁ、ゆっくり始めるといい。総二郎、頼んだぞ」「てか牧野の姉ちゃん、俺の教室に来たら良かったのに~~」「えっと・・・まだ頭がこんがらがってるんで...

  • 君がいない風景(85)

    本郷がつくしのアパートに来たのは10時半だった。空いている駐車場に車を停め、辺りを確認してから素早く降りたが、よく考えたら「つくしを探している男」はこのアパートは知らないはず・・・だから足早に2階に上がると、チャイムを押した。そのドアはすぐに開き、本郷は言葉も交わさずに中に入った。「ごめんね、驚かせて・・・落ち着いた?」「・・・はい・・・会社、大丈夫ですか?」「あぁ、保育園のことで市役所に行くって話して出たか...

  • ハズレを引いた男と女・83

    どうにかこうにか夕ご飯を食べ終えたのに、突然家元夫人に言われた一言・・・「カルチャーセンターの茶道教室ではなく、うちでお茶を習わない?私がお稽古を付けてあげるから、ここでやってみないこと?」あまりにも綺麗な顔であっさり言うもんだから一瞬フリーズ・・・と、言うかこれまでの自己調査&体験で「家元夫人」がどんな人かは判ったんだけど、その人が私にお稽古?それに多分、イイトコのお嬢様が申し込んでも、一発OKなんて...

  • 君がいない風景(84)

    月曜日、東京から戻った本郷はいつも通り保育園に美来を連れて行った。そして担任保育士に預け、さっさと帰ろうとした時に背中側から声が掛かった。「本郷さん、おはようございます」「・・・・・・あなたですか。おはようございます・・・」呼び止めたのはひろみだ。そして今日はいつも以上にニコニコして近付いて来た。本郷としては先週彼女に辛辣な態度をとったつもりだったので、まさか話し掛けてくるとは思っておらず、かなり驚いた。...

  • ハズレを引いた男と女・82

    西門家のダイニング・・・てっきり和室なのかと思ったら、レトロな感じの洋室で、大正浪漫風なテーブルと椅子だった。天井を見上げればやっぱりレトロな照明器。マジマジとみると米国MINKA-LAVERY社のシーリングライトが2つ・・・これ、1個30万円ぐらいするんじゃないの?と思って見上げていたら、西門さんに「後ろにひっくり返るぞ」と言われて慌てて元に戻した。そして正面を見ると・・・家元夫妻と考三郎先生っ!挨拶よりも先に照明...

  • 君がいない風景(83)

    ふなばしアンデルセン公園に着いたのは10時前で、類たちは南ゲートから入った。その付近が小さな子供向けだというので、1番初めに向かったのはキッズガーデンと呼ばれる場所。ここには3歳までの子供が楽しめる遊具が沢山あるからだ。類がランチボックスと真利愛の着替えなどを入れた鞄を持ち、美央が真利愛の手を引いて通路を歩く。外遊びには丁度いい季候なので、そこには既に何組かの家族が来ていた。真利愛は同じような年頃...

  • ハズレを引いた男と女・81

    家元夫人も西門さんも、志乃さんも出ていった・・・そして部屋に残ったのは私とサッちゃん。彼女はおトイレやお風呂用品に不足がないか、念入りに調べてくれていた。紺色の着物着てキビキビと・・・しかも居候に1人の使用人さんを付けるなんて、なんて贅沢なんだろう。こんな人が数十人もこのお屋敷にはいるってことだよね?一体西門家ってどんだけお金持ちなんだろう・・・借金のカタに売られそうになった過去がある私には想像出来ないん...

  • 君がいない風景(82)

    「ぱっぱ、はよ~~~~~♪」「うわっ!!・・・・・・あぁ、真利愛か・・・・・・」日曜日の朝、寝ていた類の上に飛び乗ったのは真利愛。寝癖でボサボサの髪をもっとグシャグシャにしながら、「あしゃでしゅよ~~~!」と上機嫌だ。そんなお転婆娘を捕まえ、「悪戯っ子め!」と言って自分の布団の中に入れて遊んでいたら、すぐ近くでクスクス笑う声が聞こえた。それは美央で、真利愛の荷物を揃えながら「おはようございます」と・・・類が身体を...

  • ハズレを引いた男と女・80

    私が通されたのは母屋・東棟の中にある数少ない洋室の客間・・・西門さんのお部屋から100メートルぐらい離れてる場所だった。てか、普通の家じゃ考えられない距離。一体どれだけ部屋があるのか判らないぐらい広くて、まるで温泉旅館・・・私は「西門温泉」の離れで暫くの間泊まることになったみたい。その部屋に入ったら西門さんは「俺は少し仕事があるから」って出ていき、志乃さんも「宗家の皆様にご報告してきますので」と言って出...

  • 君がいない風景(81)

    ひろみと浦田が睨み合って数秒間・・・ニヤリと笑ったひろみが「探してるのはあの子の父親?」と聞いた。かなりグレーな行動をしている情報屋とは言え、浦田はプロだ。だから依頼主の詳細を話すことはない。だが情報を得るために、氏名も住所も言わずに「そうだ」と答えた。「・・・牧野って人、どうしてシングルなの?もしかして黙って旦那から逃げて来たの?」「それをあんたが聞いても意味ないだろう?質問に答えてくれればいい・・・彼...

  • ハズレを引いた男と女・79

    西門さんと車の中で言い争いになったけど、これは西門さんの希望じゃなく、ご両親の希望。事故の責任を感じてってことだし、あの男の子の家が西門家と大事な間柄・・・あれこれ言われて頭がこんがらがり、とうとう行く事を承諾した。それでも自分のカバンひとつも持たずに行くのは気が引ける・・・そう言うと、西門さんがアパートに向かってくれた。「でもお前の部屋は2階だろ?階段、上がれねぇだろ」「別に上がれると思うけど・・・松葉...

  • 君がいない風景(80)

    金曜日の朝、本郷が美来を連れて保育園に行くと、いつもより無愛想な表情のひろみが出て来た。そして美来を預けた後、退園届を園長に手渡したことを伝えられた。いつもより笑顔の少ない彼女だったが、元々ウンザリしていた本郷はそれについて何も触れることはなく、いつものように「シッターが迎えに来るのでよろしく」とだけ言って車に戻ろうとしたが・・・「あの人、もう迎えに来ないんですか?」そんな言葉を言われて立ち止まった...

  • ハズレを引いた男と女・78

    「2日目の方が身体が痛いというのは本当なんだ・・・・・・」次の日、朝起きた瞬間に激痛が全身を襲った。昨日はそんなに思わなかったんだけど、一晩寝たらあちこちが痛い・・・ベッドから降りることもすぐには出来なかった。それを看護師さんに言うと、すぐに病室来たのは西門家の主治医先生。その人が丁寧に教えてくれたんだけど・・・事故の翌日と言わず、しばらくしてから痛みが出る場合があるのは何故か。その原因は色々あるらしいけど、...

  • 君がいない風景(79)

    美央が同窓会に出席してから数日後の木曜日・・・20時に類が帰宅すると加代が心配そうな顔で近付いて来た。その時、2階では美央が真利愛を寝かしつけ中で、類の出迎えには来ていなかったのだ。そのままリビングに向かい、昼間の報告を受けたのだが・・・「美央の様子がおかしい?」「はい・・・随分沈んでおられまして、真利愛様のお声も聞こえないほどで・・・」「食事は?」「あまり召し上がっておいでではないです。お顔の色も悪いのでお...

  • ハズレを引いた男と女・77

    西門さんとご飯を食べたあと、暫くしたら看護師さんが来てベッドに戻るように言われた。その時に事故の時に一緒にいたお爺ちゃん達が見舞いに来ると聞いたので、西門さんも同席することになったんだけど・・・折角茶会の話を聞いていたもんだから少し残念。でも一応怪我人だし?こんな特別室で豪華な和食セット食べてるのがバレたら、それも少し恥ずかしいし?わざわざ具合悪いフリなんてしないけど、大騒ぎして救急車で運ばれたんだ...

  • 君がいない風景(78)

    月曜日から浦田は再び美来の保育園に張り付いた。だが当然つくしは現われない。それは判りきっていたので、今のターゲットはひろみだった。先週のひろみの様子から、つくしに関する動きがあるのでは・・・そう思っていたからだ。その張り込みが3日間続いた時、浦田はある事に気が付いた。それはひろみが1人の父親に対してだけ態度が違うと言うこと・・・毎朝小さな女の子を連れてくる男を見ると、奥の方から出て来てニコニコと話し掛け...

  • ハズレを引いた男と女・76

    牧野と野久保が同じホテルに・・・それを聞いて身体が前のめって大声が出てしまった。が、慌てて姿勢を戻し、コホンと咳払い。志乃さんがクスクス笑ってやがったが、それを無視して「何処まで行ったんだ?」と聞くと・・・「工場は横浜にあって・・・」「はぁ?横浜なら帰りゃいいだろうが!」「だって昨日の夜は泊まったホテルで懇親会だよ?帰りたかったけど帰れないじゃん!」「・・・・・・まぁ、そうか。会社の研修だもんな」「そうだよ!私...

  • 君がいない風景(77)

    湯布院フローラルビレッジを出た4人は、車で少し移動した公園でおやつタイムにした。ここでもつくしお手製のマフィンとかぼちゃ餅は好評で、本郷も2つめのマフィンに手が伸びていた。美来はかぼちゃ餅を美味しそうに食べて、「おばちゃん、また作って~!」と・・・真音はマフィンを両手で抱え、ポロポロ溢してみんなを笑わせていた。それを食べ終わると、次に行く場所をスマホを見ながら考え中。すると本郷が「自分の箸が作れる場...

  • ハズレを引いた男と女・75

    着物が再起不能・・・・・・西門さんがそう言って椅子から立ち上がり、すぐ近くに置いてあった着物を持って来てくれた。それは確かに真理子さんの着物だったけど、汚れてる上に破れてる・・・本当に無残な姿だった。「帯はそうでもねぇけどな・・・てか、これはレンタルか?」「・・・・・・・・・・・・」「レンタルなら西門が弁償してやるから、どこのレンタル屋か教えてくれ」「・・・・・・・・・・・・」「おい、しっかりしろ。お前が放心状態になっても着物は復活...

  • 君がいない風景(76)

    リビングに入った美央は驚いた。その後ろではドアを閉める柑菜・・・そして「どうぞ、座ってちょうだい」の声が聞こえてゾクッとした。「柑菜・・・これはどういうこと?」「見ての通りよ?今日は私とあなたの同窓会・・・こうでもしないと2人きりになれないじゃない」「招待状は嘘だったの?」「あはは!相変わらず騙されやすいのねぇ、美央って!」「どうしてこんな事を・・・!」「だって花沢邸だと見張りがいるんですもの」その部屋には誰...

  • ハズレを引いた男と女・74

    「お前、ここで何してんだ!!俺の声が聞こえてんなら返事しろ!おい、牧野!!」そう叫んだけど牧野の目は開かない・・・出血はなさそうだったが、もしかしたら頭を強く打ったのかもしれない。だからむやみに動かさず、誰かが「救急車を手配しました!」と言う言葉を聞いて、それを待つ事にした。真後ろには客が大勢いて大混乱・・・そのうち親父達も来て、お袋が「まぁ、このお嬢さんが?!」と叫んでいた。そんな事よりも着物の状態で...

  • 君がいない風景(75)

    美央が黒田邸に着いたのは約束の時間の5分前・・・初めて見る黒田邸は、花沢に比べると小さいものの、その周辺ではかなり目だつ洋風の邸宅だった。重厚感のあるアプローチ、スクエアなフォルムの建物、クリーム色の外壁にあえて黒の縁取りの窓。外光をふんだんに取り入れる西洋的なデザインであり、来客に丸見えのガレージには高級車が2台・・・気になったのは人の気配があまりしないことだった。美央はどちらかというと遅く来た方だろ...

  • ハズレを引いた男と女・73

    家元夫人のお茶席には年配の女性が多かった。しかもみんな「奥様」って感じで、カルチャーセンターのおばちゃん達とはちょっと違う・・・しかも皆さん、作法に困ってないようで流れるような所作でお茶碗を受け取っていた。私と言えば、茶道は考三郎先生の体験見学とカルチャーセンターのお稽古が3回のみ。まだ教えてもらわなきゃお茶碗も持てないし、お菓子の食べ方もイマイチ・・・そう思っていたら、志乃さんが「もうすぐお菓子が来ま...

  • 君がいない風景(74)

    つくし達が湯布院に着いたのは昼前で、まず向かったのは「トリック3Dアート 湯布院」。トリック3Dアートとは二次元である壁や床に立体感のある三次元的な世界を表現した、所謂「だまし絵」のこと。平面の絵が立体的に見えたり、角度により異なる絵が見えたりと、目の錯覚を利用した不思議な世界が楽しめる美術館だ。ここではコンピューターグラフィック(CG)による作品を展示しており、スケールが大きいことで有名だった。外...

  • ハズレを引いた男と女・72

    「それにしても玄関までが遠いなぁ・・・」武家屋敷並の門を潜ってから歩くこと50歩以上・・・まだ玄関が見えない事に吃驚した。両サイドには植木とか岩とか、地面には敷石とか玉砂利とかで、大きな旅館でもこんなに遠くないんじゃ?って思っていたら、後ろから志乃さんが追い付いてきた。そして私に「受付をしましょう」と言ってくれたのでついて行くと、漸く玄関が見えて来たんだけど、それは広い裏口より更に広くて豪華な玄関・・・そ...

  • 君がいない風景(73)

    10月の第一日曜日、つくしは早起きして弁当を作り始めた。この日の為に買った4段重ねのランチボックスを並べ、まずはその1つに6種類のおにぎりを15個。このぐらいあれば足りるだろうと思い、ツナマヨ・おかか・サケ・塩昆布・煮卵・牛肉のしぐれ煮の具材を大急ぎで作った。「サバのおにぎりは子供には無理だろうからな~これはうちのおかずにしようっと♪」おかずは定番の唐揚げに、昨日の夜作っておいた筑前煮。卵焼きにさ...

  • ハズレを引いた男と女・71

    真理子さんに水屋見舞いのお菓子をもらい、かかった費用を精算してホテルを出たのは予定よりも10分遅れた14時10分。それでもお茶会には間に合うので、何度もお礼をいって先にタクシーに乗り込んだ。その時にも「堂々としてたらいいですからね!」ってアドバイスくれて・・・とは言え、堂々と失敗したら、それもそれで恥ずかしい。だから隅っこでおとなしく見学しようと思っていた。まずは研修荷物を置くために自宅アパートに行...

  • 君がいない風景(72)

    情報屋の男は翌日から3日間、毎日朝と夕方の時間帯に保育園を監視した。が、加藤は毎日現われるが、つくしと思われる人物の姿は確認出来なかった。それなら別の母親にも聞き込みをしてみようかと、4日目になる土曜日の夕方、歩いて保育園に近付き、少し離れた路地で誰かが出て来るのを待った。そうしたら18時頃に1人の若い女性が出て来て、門の前を掃除し始めた。その行動からこの保育園の保育士だとわかり、カマを掛けること...

  • ハズレを引いた男と女・70

    品川までの時間が長い・・・15分ぐらいしか乗ってないのに、もう3時間乗ってるぐらいに感じてるし、ドキドキも半端ない。この緊張感を少しでもやわらげるためにスマホでもう1回作法について勉強しようかと思ったけど、座ることも出来なかったから無理。野久保課長は私とは違う車輌に乗ったみたいだから姿は見えなかった。それにはホッとして、あとどのくらいで着くのかを、窓の外を見ながら考えてたら・・・次はもう品川だった!「や...

  • 君がいない風景(71)

    本郷に転勤の辞令が出たのは10月に入ってすぐだった。配属先は東京本社の管理課だ。この夏、本社総務の課長に社内規定違反があり、話し合いの結果依願退職をしたという事例があったのだ。本郷の移動はその後任のためなのだが、元々東京出身なので地元に戻った方が子どものためだと上司が判断し、本郷を推したという経緯があった。本郷としては東京に戻らなくても良かったのだが、その話をされたのは異動が決まってからだった。「...

  • ハズレを引いた男と女・69

    3月30日・・・今日は類の誕生日。じゃなくて、桜の茶会の日・・・面倒臭ぇなぁ~と思いつつ身体を起こすと、いきなり背中がゾクッとした。「・・・なんだ、今の悪寒・・・風邪引いたか?」とは言え熱っぽくもねぇし咳も出ない。鼻も詰まってないし怠くもない・・・むしろ体調不良になって欲しいぐらいなのに、身体だけは元気そうだ。なんて事をブツブツ言いながらベッドから降り、身仕度を整えたら仏間に向かった。何故なら茶会や茶事の日はご...

  • 君がいない風景(70)

    暑い夏が過ぎ、9月後半・・・漸く涼しい風が吹くようになった頃。庭に植えていた向日葵が枯れ、その種を美央と真利愛が採っていた。「ママ、こえ、なぁ~に?」「これは向日葵の種なのよ。これを土に植えると、来年また向日葵が咲くの・・・お花はね、こうして増えていくのよ」「ふぅ~~~ん」「うふふ・・・大事にとっておいて、来年の夏にまた植えましょうね」「あいっ!」「じゃあこの箱に入れていってね、真利愛ちゃん」「ん♪」そんな...

  • ハズレを引いた男と女・68

    その日の研修はあっという間に終わった。なんてのは嘘で、本当は長かった・・・・・・。照明器具なんてパソコンの画面でしか見ないから現物を見られるのは嬉しいけど、その製造工程にあまり興味はない・・・と言ったら怒られるから真面目に見たけど、正直見ても意味が判らない。それに勉強会では「部屋の広さと明るさの目安」とか「照明器具のデザインや材質」とかって専門的な説明があったけど・・・途中で目を開けた状態で寝てたと思う。「電...

  • 君がいない風景(69)

    翌日、つくしはいつもより少し早めに起き、子ども達の朝ごはんを作った。小さめのおにぎりにオムレツ、そして昨日の残りの中華スープ・・・小さな食器を2つ並べると、自然とそこに真利愛の顔が浮かんだ。花沢家の朝食・・・真利愛はどんな風に食べているのだろう。これは毎日想像してしまうのだが、その度に小さく首を振り、その光景を打ち消してきた。「真音、美来ちゃん、朝だよ~~!」「・・・・・・ん~~~」「あさぁ?・・・ふぁあぁ~~~...

  • ハズレを引いた男と女・67

    桜の茶会まであと少し・・・今年もお嬢達が着飾ってくるんだろうなぁと溜息吐いていたら、背後に人の気配。誰だ?と思って振り向いたら、何故かニコニコしたお袋が立っていた。その笑顔が超不気味・・・我が母親ながらゾッとした。「総二郎さん」「・・・なんだ?最近ヤケに声掛けてくるな」「桜のお茶会に特別に呼ぶ人はいないの?」「は?特別ってなんだよ・・・別にいねぇけど?」「あら、いないの?遠慮しなくてもいいのよ?」「野点にどん...

  • 君がいない風景(68)

    以前1度だけ迎えに来たことがある美来の保育園。そこに着いたのは17時で、つくしは園の駐車場に真音を残したまま急いで玄関に向かった。そして本郷から頼まれて美来を迎えに来たことを告げると、廊下の奥から出てきた美来はニコニコ笑って「おばちゃんだぁ~」と・・・。「美来ちゃん、先生からお話し聞いた?」「うん、パパが病気になるかもしれないから、今日と明日はまぁ君ちにお泊まりって!」「そうそう。突然だからこのまま...

  • ハズレを引いた男と女・66

    ホワイトデーの余韻に浸っていた15日。会社に行ったら突然「工場見学」の話をされた。それはメーカーの照明器具工場に行くという研修なんだけど、照明器の製造過程を見学したりショールームを見せてもらったりして、夜は大宴会・・・よって、横浜にその工場があるから遠くはないんだけど泊まりになる。しかも日程は2週間後の29日(金)と30日(土)・・・あまりにも急な話に驚いた。「なんでそんな急なの?普通は2ヶ月前ぐらいに...

  • 君がいない風景(67)

    8月の間中、つくしは歳の近い職場仲間に無視をされ続けた。だがつくしは過去の経験からなのか、他の連中が思うほどのダメージはなかった。そうしているうちに話し掛けてくる人も出て来たり、初めからあんな噂を気にしない年配のパート従業員とは会話も出来るようになっていた。気をつけたのは本郷との接触・・・あれから数回本郷が店舗に来たが、それを見掛ける度にバックヤードに入った。本郷も忙しかったようでつくしに会いに来る...

  • ハズレを引いた男と女・65

    お手軽に「居酒屋」を言うと思った俺が馬鹿だった。まさかの「うなぎ」・・・そう言われたら都内の専門店に行くしかないと思い、そこに電話を入れた。そうしたら丁度個室がひと部屋空いていると言われ、そこを予約することに・・・おそらく2万円のコースだろうが、金額よりもその内容に納得するのか?と心配だった。なんたって「うなぎづくし」だから他のものが殆どない・・・あとで「物足りなかった!」と言いそうだが?うなぎの旬は冬と...

  • 君がいない風景(66)

    花沢邸の庭は芝生が殆どで、大きな花壇や温室、池などはない。あるのはガゼボと輸入した木製のゆりかごブランコ、そして真利愛と美央が育てている向日葵の花壇と、真利愛の為に作った小さな砂場があるだけだった。柑菜がどうしてもと言うので子ども達を庭に出したが、容赦なく照りつける日差しを避けるため、使用人が急いでパラソルとテーブルに椅子、そして飲み物を用意したりと大変だった。この時は加代もテラスから真利愛と瑛翔...

  • ハズレを引いた男と女・64

    3月14日・・・俗に言うホワイトデーの当日、私達女子社員は朝から茫然としていた。何故なら、休憩室のテーブルにのど飴の袋が3つ置いてあったから・・・「・・・ねぇ、まさかだけど」「これが・・・お返しってことはないわよね?」「去年までは高級洋菓子店のケーキだったよね?しかもその中でも高いヤツで、色々選べるようになってて・・・」「毎年あみだでケーキを選んでたよね?」「・・・・・・・・・」←毎年あみだで残りものになっていたつくし「...

  • 君がいない風景(65)

    九州旅行が終って数日後、類はいつもと変わらない日常へと戻った。今日も専務執務室で書類に目を通し、パソコンを睨み、メールを返信・・・ただ1つ変わったと言えば、常にあの御守を持ち歩いているということだ。それが息子のものかどうかは不明だが、鞄の中に入れて一緒に出勤していた。そしてもうひとつ・・・机の引き出しに入れている、私用のスマホに入る連絡を待つようになった。旅行から帰った日の夜、類は情報屋に連絡を入れた。...

  • ハズレを引いた男と女・63

    雛の茶事が終って4日目・・・歳のせいか、通常より長く休んだお袋が復活した。そして俺達の前に出て来たんだが、毎年のように言われる言葉がなくてちょっと気持ち悪かった。それは・・・『どのお嬢様が印象的だった?』とか『連絡取りたいお嬢様はいなかったの?』ってヤツ。何故なら雛の茶事は「桃の節句」に合わせてるから、お嬢達は超着飾ってくる。例年ならお袋が亭主だから、俺や考三郎は茶事の前後に挨拶するだけ・・・それでもお嬢...

  • 君がいない風景(64)

    翌日、つくしはいつも通りに起きて朝食を作り、真音を起こしてから保育園の準備をした。月曜日の保育園荷物は大量だ。連絡帳などの毎日の荷物は当然で、真音の保育園は昼寝用の布団も持参だった。それにおむつも取れてないので数枚用意し、夏だからタオルに水着もある。汗をかくので着替え3組に帽子、スモックも加わり、大容量のバッグに布団袋、それに真音の通園リュック。つくしは落とした御守の代わりに黄色いマスコット人形を...

  • ハズレを引いた男と女・62

    3月に入って1番初めの月曜は4日。それは私の茶道デビュー・・・カルチャーセンターは18時30分からの1時間半なので、仕事が終わったら早めに事務所を出なきゃ間に合わない。それなのに今は月初の仕事がてんこ盛り・・・「おい、お前・・・」「・・・・・・・・・・・・」「おい、聞こえないのか」「私はお前ではありません。名前を呼ばないのなら答えられません」この1ヶ月、殆ど「牧野」と呼ばれない状態が続き、私は我慢の限界だった。そもそも上司から...

  • 君がいない風景(63)

    旅行の最終日、類たちは午前中に湯布院を観光した。始めに行ったのは「湯布院フローラルヴィレッジ」で、ここはイギリスのコッツウォルズ地方の街並みを再現したミニテーマパークだ。全体がイングリッシュガーデン風に仕上げられており、色とりどりの美しい花々が咲き乱れた庭と、小さな動物たちもいる。敷地はそれほど大きくないのだが、とにかく可愛らしく、湯布院では異彩を放つ場所だ。ベルトラン家の子ども達には然程珍しい建...

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