桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「これで今日の稽古は終り・・・本気が伝わったか?」「・・・・・・はい。どうもありがとうございました・・・」今日も苦かったんだけど、少しは慣れてきた薄茶。本当言えばお菓子が後で、この苦さを打ち消したいんだけど・・・それを言ったら確実に怒鳴られると思い、黙っておいた。ただ、もう少し話をしてみたい・・・そう思ったから、片付け中の西門さんに「ちょっと聞いてもいい?」と言うと・・・「まぁ、普通は稽古中に聞くもんだけど・・・牧野は初...
浦田が真音の保育園を張り込んで1週間が過ぎた。だがつくしが現われる気配はなく、俄に焦りが出て来た。それならまた演技をしてでも確かめるしかないと思い、月曜日の夕方には歩いて保育園の入り口に近付いた。そして1人の若い母親が2歳ぐらいの子供の手を引いて出て来た瞬間、小走りで近付き、明るく「こんにちは~」と叫んだ。その母親は「こんにちは~」と答えたが、見慣れない男に困惑している様子・・・警戒されないためにも...
ーー牧野の本気度が判んねぇのに、無茶は言わねぇよーーそれを言われた瞬間、何故かムッとした。「本気でやるなら俺も真剣になる。そうじゃなくて興味程度なら俺もそれに合わせるってことだ」・・・そう言ってる時もニヤニヤしてて、まるで私は後者だと言わんばかりに・・・。そりゃ、ド真剣かと言われると素直に「はい」と言えない。だけど始めてみようかなって思った事に比べると、気持ちは随分違う・・・だからあんなに頑張って野点に参...
アパートの部屋には真音が見ているアニメの声だけが響いていた。その小さな背中の後ろではつくしと本郷が向かい合って座り、そして無言・・・・・・『どうだろう・・・俺と新しい人生を歩んでいけないかな。これまでの恋を捨てろなんて言わない・・・言い方は変かもしれないけど、良いパートナーとして暮らさないか?』これまでの恋を捨てないのに、新しい人生とは?良いパートナーと言うのは夫婦ではないと・・・?そんな風に本郷の言葉を繰り返...
少しは包帯とガーゼが減るかと思ったのに、逆に増えてしまうとは・・・まさかの追加治療だったけど、その左腕部分はそんなに酷くはなかった。むしろ固定していた右足の捻挫を余計に痛めたというか・・・お医者様にもくれぐれも気をつけるように言われたんだけど、そもそも原因は隣の男だし・・・。「ほんっとにドジだな!」「・・・ちょっとぼ~っとしただけよ///」「まぁ、見えない部分で良かったけどな」「へっ?どう言う意味?」「他人から見...
21時になり、本郷が眠くなった美来を連れてアパートから出て行く時だった。つくしは自分が作ったネーム入りの通園バッグ一式を「使って下さい」という言葉と共に差し出した。それを受け取った本郷は、バッグをマジマジとみて、その名前に気が付き目を大きくさせた。「えっ・・・これ、牧野さんが?」「はい。初めてなんであまり綺麗じゃないけど、新しい保育園で使ってもらえたらと思って・・・」「・・・・・・名前がちゃんと入ってる・・・」...
「おはようございま~~~す、牧野様」誰かが呼んでる気がして目を開けようとしたけど瞼が重くて開かない・・・と言うか、あまりにも気持ちいいお布団で、この中から出たくない。私、こんな良いお布団買ったっけ・・・・・・軽いし暖かいし、もう最高なんだけど・・・「何処か痛みますか?大丈夫ですか?」「・・・・・・・・・う~~~ん」「もうすぐ朝食ですよ?牧野様~~~」「・・・・・・っ!」朝食というワードでパチッ!と目が覚めた。そして1人の女...
その水曜日の昼間、つくしは本郷と連絡を取っていた。『えっ?保育園を退園する・・・じゃあ会社は?』「それも相談したいんです。すみませんが、もうあのお店で働くことも出来ないかと・・・」『そうか・・・そうだよね、真音君を退園させるなら仕方ないよね』「本当に申し訳ありません。会社の手続きは本郷課長に手続きをお願いしてもいいですか?」『うん、それは構わないけど・・・』「それで保育園に退園届を出さなくてはならなくて、でも...
「・・・・・・ったぁ・・・!」「いたたたた・・・また何処か擦り剥いたかも・・・・・・」「・・・・・・・・・えっ?」「・・・・・・・・・あ・・・」気が付いたら俺は牧野の上に重なるように倒れてて、牧野は両手広げた状態。指輪を握ってた俺の右手は床だったが、もう片方は牧野の胸の上・・・そして顔と顔は15㎝ぐらい。焦点が合わないほどの至近距離だし、牧野のワンピは捲れて太股丸だしだけど、その足の上には俺の足・・・。しかも何故か俺の左手、広げた状態で胸に...
つくしがアパートで本郷と会っていた頃、真音の保育園の近くでは車で張り込んでいた浦田がイライラしていた。それはつくしの姿が確認出来ないからで、本当言えば今日にでもつくしを直接確認して、類に報告して指示をもらうつもりだったからだ。別府に来て2ヶ月以上・・・正直こんなに早くに見付かるとは思っていなかったが、さっさと東京に戻りたいのが本音。それに成功報酬まで入れると2000万だ。早くその金を手に入れたくてウ...
なんやかんや言って私は西門流でお稽古する羽目に・・・と言うか、断わることが出来なかった。もちろん今は捻挫してるし包帯だらけだから正座しないけど、座って出来るお茶室もあるらしくて、そこで西門さんに教えてもらうことになった。「じゃあ牧野さん♪これからよろしくね~」「まぁ、ゆっくり始めるといい。総二郎、頼んだぞ」「てか牧野の姉ちゃん、俺の教室に来たら良かったのに~~」「えっと・・・まだ頭がこんがらがってるんで...
本郷がつくしのアパートに来たのは10時半だった。空いている駐車場に車を停め、辺りを確認してから素早く降りたが、よく考えたら「つくしを探している男」はこのアパートは知らないはず・・・だから足早に2階に上がると、チャイムを押した。そのドアはすぐに開き、本郷は言葉も交わさずに中に入った。「ごめんね、驚かせて・・・落ち着いた?」「・・・はい・・・会社、大丈夫ですか?」「あぁ、保育園のことで市役所に行くって話して出たか...
どうにかこうにか夕ご飯を食べ終えたのに、突然家元夫人に言われた一言・・・「カルチャーセンターの茶道教室ではなく、うちでお茶を習わない?私がお稽古を付けてあげるから、ここでやってみないこと?」あまりにも綺麗な顔であっさり言うもんだから一瞬フリーズ・・・と、言うかこれまでの自己調査&体験で「家元夫人」がどんな人かは判ったんだけど、その人が私にお稽古?それに多分、イイトコのお嬢様が申し込んでも、一発OKなんて...
月曜日、東京から戻った本郷はいつも通り保育園に美来を連れて行った。そして担任保育士に預け、さっさと帰ろうとした時に背中側から声が掛かった。「本郷さん、おはようございます」「・・・・・・あなたですか。おはようございます・・・」呼び止めたのはひろみだ。そして今日はいつも以上にニコニコして近付いて来た。本郷としては先週彼女に辛辣な態度をとったつもりだったので、まさか話し掛けてくるとは思っておらず、かなり驚いた。...
西門家のダイニング・・・てっきり和室なのかと思ったら、レトロな感じの洋室で、大正浪漫風なテーブルと椅子だった。天井を見上げればやっぱりレトロな照明器。マジマジとみると米国MINKA-LAVERY社のシーリングライトが2つ・・・これ、1個30万円ぐらいするんじゃないの?と思って見上げていたら、西門さんに「後ろにひっくり返るぞ」と言われて慌てて元に戻した。そして正面を見ると・・・家元夫妻と考三郎先生っ!挨拶よりも先に照明...
ふなばしアンデルセン公園に着いたのは10時前で、類たちは南ゲートから入った。その付近が小さな子供向けだというので、1番初めに向かったのはキッズガーデンと呼ばれる場所。ここには3歳までの子供が楽しめる遊具が沢山あるからだ。類がランチボックスと真利愛の着替えなどを入れた鞄を持ち、美央が真利愛の手を引いて通路を歩く。外遊びには丁度いい季候なので、そこには既に何組かの家族が来ていた。真利愛は同じような年頃...
家元夫人も西門さんも、志乃さんも出ていった・・・そして部屋に残ったのは私とサッちゃん。彼女はおトイレやお風呂用品に不足がないか、念入りに調べてくれていた。紺色の着物着てキビキビと・・・しかも居候に1人の使用人さんを付けるなんて、なんて贅沢なんだろう。こんな人が数十人もこのお屋敷にはいるってことだよね?一体西門家ってどんだけお金持ちなんだろう・・・借金のカタに売られそうになった過去がある私には想像出来ないん...
「ぱっぱ、はよ~~~~~♪」「うわっ!!・・・・・・あぁ、真利愛か・・・・・・」日曜日の朝、寝ていた類の上に飛び乗ったのは真利愛。寝癖でボサボサの髪をもっとグシャグシャにしながら、「あしゃでしゅよ~~~!」と上機嫌だ。そんなお転婆娘を捕まえ、「悪戯っ子め!」と言って自分の布団の中に入れて遊んでいたら、すぐ近くでクスクス笑う声が聞こえた。それは美央で、真利愛の荷物を揃えながら「おはようございます」と・・・類が身体を...
私が通されたのは母屋・東棟の中にある数少ない洋室の客間・・・西門さんのお部屋から100メートルぐらい離れてる場所だった。てか、普通の家じゃ考えられない距離。一体どれだけ部屋があるのか判らないぐらい広くて、まるで温泉旅館・・・私は「西門温泉」の離れで暫くの間泊まることになったみたい。その部屋に入ったら西門さんは「俺は少し仕事があるから」って出ていき、志乃さんも「宗家の皆様にご報告してきますので」と言って出...
ひろみと浦田が睨み合って数秒間・・・ニヤリと笑ったひろみが「探してるのはあの子の父親?」と聞いた。かなりグレーな行動をしている情報屋とは言え、浦田はプロだ。だから依頼主の詳細を話すことはない。だが情報を得るために、氏名も住所も言わずに「そうだ」と答えた。「・・・牧野って人、どうしてシングルなの?もしかして黙って旦那から逃げて来たの?」「それをあんたが聞いても意味ないだろう?質問に答えてくれればいい・・・彼...
西門さんと車の中で言い争いになったけど、これは西門さんの希望じゃなく、ご両親の希望。事故の責任を感じてってことだし、あの男の子の家が西門家と大事な間柄・・・あれこれ言われて頭がこんがらがり、とうとう行く事を承諾した。それでも自分のカバンひとつも持たずに行くのは気が引ける・・・そう言うと、西門さんがアパートに向かってくれた。「でもお前の部屋は2階だろ?階段、上がれねぇだろ」「別に上がれると思うけど・・・松葉...
金曜日の朝、本郷が美来を連れて保育園に行くと、いつもより無愛想な表情のひろみが出て来た。そして美来を預けた後、退園届を園長に手渡したことを伝えられた。いつもより笑顔の少ない彼女だったが、元々ウンザリしていた本郷はそれについて何も触れることはなく、いつものように「シッターが迎えに来るのでよろしく」とだけ言って車に戻ろうとしたが・・・「あの人、もう迎えに来ないんですか?」そんな言葉を言われて立ち止まった...
「2日目の方が身体が痛いというのは本当なんだ・・・・・・」次の日、朝起きた瞬間に激痛が全身を襲った。昨日はそんなに思わなかったんだけど、一晩寝たらあちこちが痛い・・・ベッドから降りることもすぐには出来なかった。それを看護師さんに言うと、すぐに病室来たのは西門家の主治医先生。その人が丁寧に教えてくれたんだけど・・・事故の翌日と言わず、しばらくしてから痛みが出る場合があるのは何故か。その原因は色々あるらしいけど、...
美央が同窓会に出席してから数日後の木曜日・・・20時に類が帰宅すると加代が心配そうな顔で近付いて来た。その時、2階では美央が真利愛を寝かしつけ中で、類の出迎えには来ていなかったのだ。そのままリビングに向かい、昼間の報告を受けたのだが・・・「美央の様子がおかしい?」「はい・・・随分沈んでおられまして、真利愛様のお声も聞こえないほどで・・・」「食事は?」「あまり召し上がっておいでではないです。お顔の色も悪いのでお...
西門さんとご飯を食べたあと、暫くしたら看護師さんが来てベッドに戻るように言われた。その時に事故の時に一緒にいたお爺ちゃん達が見舞いに来ると聞いたので、西門さんも同席することになったんだけど・・・折角茶会の話を聞いていたもんだから少し残念。でも一応怪我人だし?こんな特別室で豪華な和食セット食べてるのがバレたら、それも少し恥ずかしいし?わざわざ具合悪いフリなんてしないけど、大騒ぎして救急車で運ばれたんだ...
月曜日から浦田は再び美来の保育園に張り付いた。だが当然つくしは現われない。それは判りきっていたので、今のターゲットはひろみだった。先週のひろみの様子から、つくしに関する動きがあるのでは・・・そう思っていたからだ。その張り込みが3日間続いた時、浦田はある事に気が付いた。それはひろみが1人の父親に対してだけ態度が違うと言うこと・・・毎朝小さな女の子を連れてくる男を見ると、奥の方から出て来てニコニコと話し掛け...
牧野と野久保が同じホテルに・・・それを聞いて身体が前のめって大声が出てしまった。が、慌てて姿勢を戻し、コホンと咳払い。志乃さんがクスクス笑ってやがったが、それを無視して「何処まで行ったんだ?」と聞くと・・・「工場は横浜にあって・・・」「はぁ?横浜なら帰りゃいいだろうが!」「だって昨日の夜は泊まったホテルで懇親会だよ?帰りたかったけど帰れないじゃん!」「・・・・・・まぁ、そうか。会社の研修だもんな」「そうだよ!私...
湯布院フローラルビレッジを出た4人は、車で少し移動した公園でおやつタイムにした。ここでもつくしお手製のマフィンとかぼちゃ餅は好評で、本郷も2つめのマフィンに手が伸びていた。美来はかぼちゃ餅を美味しそうに食べて、「おばちゃん、また作って~!」と・・・真音はマフィンを両手で抱え、ポロポロ溢してみんなを笑わせていた。それを食べ終わると、次に行く場所をスマホを見ながら考え中。すると本郷が「自分の箸が作れる場...
着物が再起不能・・・・・・西門さんがそう言って椅子から立ち上がり、すぐ近くに置いてあった着物を持って来てくれた。それは確かに真理子さんの着物だったけど、汚れてる上に破れてる・・・本当に無残な姿だった。「帯はそうでもねぇけどな・・・てか、これはレンタルか?」「・・・・・・・・・・・・」「レンタルなら西門が弁償してやるから、どこのレンタル屋か教えてくれ」「・・・・・・・・・・・・」「おい、しっかりしろ。お前が放心状態になっても着物は復活...
リビングに入った美央は驚いた。その後ろではドアを閉める柑菜・・・そして「どうぞ、座ってちょうだい」の声が聞こえてゾクッとした。「柑菜・・・これはどういうこと?」「見ての通りよ?今日は私とあなたの同窓会・・・こうでもしないと2人きりになれないじゃない」「招待状は嘘だったの?」「あはは!相変わらず騙されやすいのねぇ、美央って!」「どうしてこんな事を・・・!」「だって花沢邸だと見張りがいるんですもの」その部屋には誰...
「お前、ここで何してんだ!!俺の声が聞こえてんなら返事しろ!おい、牧野!!」そう叫んだけど牧野の目は開かない・・・出血はなさそうだったが、もしかしたら頭を強く打ったのかもしれない。だからむやみに動かさず、誰かが「救急車を手配しました!」と言う言葉を聞いて、それを待つ事にした。真後ろには客が大勢いて大混乱・・・そのうち親父達も来て、お袋が「まぁ、このお嬢さんが?!」と叫んでいた。そんな事よりも着物の状態で...
美央が黒田邸に着いたのは約束の時間の5分前・・・初めて見る黒田邸は、花沢に比べると小さいものの、その周辺ではかなり目だつ洋風の邸宅だった。重厚感のあるアプローチ、スクエアなフォルムの建物、クリーム色の外壁にあえて黒の縁取りの窓。外光をふんだんに取り入れる西洋的なデザインであり、来客に丸見えのガレージには高級車が2台・・・気になったのは人の気配があまりしないことだった。美央はどちらかというと遅く来た方だろ...
家元夫人のお茶席には年配の女性が多かった。しかもみんな「奥様」って感じで、カルチャーセンターのおばちゃん達とはちょっと違う・・・しかも皆さん、作法に困ってないようで流れるような所作でお茶碗を受け取っていた。私と言えば、茶道は考三郎先生の体験見学とカルチャーセンターのお稽古が3回のみ。まだ教えてもらわなきゃお茶碗も持てないし、お菓子の食べ方もイマイチ・・・そう思っていたら、志乃さんが「もうすぐお菓子が来ま...
つくし達が湯布院に着いたのは昼前で、まず向かったのは「トリック3Dアート 湯布院」。トリック3Dアートとは二次元である壁や床に立体感のある三次元的な世界を表現した、所謂「だまし絵」のこと。平面の絵が立体的に見えたり、角度により異なる絵が見えたりと、目の錯覚を利用した不思議な世界が楽しめる美術館だ。ここではコンピューターグラフィック(CG)による作品を展示しており、スケールが大きいことで有名だった。外...
「それにしても玄関までが遠いなぁ・・・」武家屋敷並の門を潜ってから歩くこと50歩以上・・・まだ玄関が見えない事に吃驚した。両サイドには植木とか岩とか、地面には敷石とか玉砂利とかで、大きな旅館でもこんなに遠くないんじゃ?って思っていたら、後ろから志乃さんが追い付いてきた。そして私に「受付をしましょう」と言ってくれたのでついて行くと、漸く玄関が見えて来たんだけど、それは広い裏口より更に広くて豪華な玄関・・・そ...
10月の第一日曜日、つくしは早起きして弁当を作り始めた。この日の為に買った4段重ねのランチボックスを並べ、まずはその1つに6種類のおにぎりを15個。このぐらいあれば足りるだろうと思い、ツナマヨ・おかか・サケ・塩昆布・煮卵・牛肉のしぐれ煮の具材を大急ぎで作った。「サバのおにぎりは子供には無理だろうからな~これはうちのおかずにしようっと♪」おかずは定番の唐揚げに、昨日の夜作っておいた筑前煮。卵焼きにさ...
真理子さんに水屋見舞いのお菓子をもらい、かかった費用を精算してホテルを出たのは予定よりも10分遅れた14時10分。それでもお茶会には間に合うので、何度もお礼をいって先にタクシーに乗り込んだ。その時にも「堂々としてたらいいですからね!」ってアドバイスくれて・・・とは言え、堂々と失敗したら、それもそれで恥ずかしい。だから隅っこでおとなしく見学しようと思っていた。まずは研修荷物を置くために自宅アパートに行...
情報屋の男は翌日から3日間、毎日朝と夕方の時間帯に保育園を監視した。が、加藤は毎日現われるが、つくしと思われる人物の姿は確認出来なかった。それなら別の母親にも聞き込みをしてみようかと、4日目になる土曜日の夕方、歩いて保育園に近付き、少し離れた路地で誰かが出て来るのを待った。そうしたら18時頃に1人の若い女性が出て来て、門の前を掃除し始めた。その行動からこの保育園の保育士だとわかり、カマを掛けること...
品川までの時間が長い・・・15分ぐらいしか乗ってないのに、もう3時間乗ってるぐらいに感じてるし、ドキドキも半端ない。この緊張感を少しでもやわらげるためにスマホでもう1回作法について勉強しようかと思ったけど、座ることも出来なかったから無理。野久保課長は私とは違う車輌に乗ったみたいだから姿は見えなかった。それにはホッとして、あとどのくらいで着くのかを、窓の外を見ながら考えてたら・・・次はもう品川だった!「や...
本郷に転勤の辞令が出たのは10月に入ってすぐだった。配属先は東京本社の管理課だ。この夏、本社総務の課長に社内規定違反があり、話し合いの結果依願退職をしたという事例があったのだ。本郷の移動はその後任のためなのだが、元々東京出身なので地元に戻った方が子どものためだと上司が判断し、本郷を推したという経緯があった。本郷としては東京に戻らなくても良かったのだが、その話をされたのは異動が決まってからだった。「...
3月30日・・・今日は類の誕生日。じゃなくて、桜の茶会の日・・・面倒臭ぇなぁ~と思いつつ身体を起こすと、いきなり背中がゾクッとした。「・・・なんだ、今の悪寒・・・風邪引いたか?」とは言え熱っぽくもねぇし咳も出ない。鼻も詰まってないし怠くもない・・・むしろ体調不良になって欲しいぐらいなのに、身体だけは元気そうだ。なんて事をブツブツ言いながらベッドから降り、身仕度を整えたら仏間に向かった。何故なら茶会や茶事の日はご...
暑い夏が過ぎ、9月後半・・・漸く涼しい風が吹くようになった頃。庭に植えていた向日葵が枯れ、その種を美央と真利愛が採っていた。「ママ、こえ、なぁ~に?」「これは向日葵の種なのよ。これを土に植えると、来年また向日葵が咲くの・・・お花はね、こうして増えていくのよ」「ふぅ~~~ん」「うふふ・・・大事にとっておいて、来年の夏にまた植えましょうね」「あいっ!」「じゃあこの箱に入れていってね、真利愛ちゃん」「ん♪」そんな...
その日の研修はあっという間に終わった。なんてのは嘘で、本当は長かった・・・・・・。照明器具なんてパソコンの画面でしか見ないから現物を見られるのは嬉しいけど、その製造工程にあまり興味はない・・・と言ったら怒られるから真面目に見たけど、正直見ても意味が判らない。それに勉強会では「部屋の広さと明るさの目安」とか「照明器具のデザインや材質」とかって専門的な説明があったけど・・・途中で目を開けた状態で寝てたと思う。「電...
翌日、つくしはいつもより少し早めに起き、子ども達の朝ごはんを作った。小さめのおにぎりにオムレツ、そして昨日の残りの中華スープ・・・小さな食器を2つ並べると、自然とそこに真利愛の顔が浮かんだ。花沢家の朝食・・・真利愛はどんな風に食べているのだろう。これは毎日想像してしまうのだが、その度に小さく首を振り、その光景を打ち消してきた。「真音、美来ちゃん、朝だよ~~!」「・・・・・・ん~~~」「あさぁ?・・・ふぁあぁ~~~...
桜の茶会まであと少し・・・今年もお嬢達が着飾ってくるんだろうなぁと溜息吐いていたら、背後に人の気配。誰だ?と思って振り向いたら、何故かニコニコしたお袋が立っていた。その笑顔が超不気味・・・我が母親ながらゾッとした。「総二郎さん」「・・・なんだ?最近ヤケに声掛けてくるな」「桜のお茶会に特別に呼ぶ人はいないの?」「は?特別ってなんだよ・・・別にいねぇけど?」「あら、いないの?遠慮しなくてもいいのよ?」「野点にどん...
以前1度だけ迎えに来たことがある美来の保育園。そこに着いたのは17時で、つくしは園の駐車場に真音を残したまま急いで玄関に向かった。そして本郷から頼まれて美来を迎えに来たことを告げると、廊下の奥から出てきた美来はニコニコ笑って「おばちゃんだぁ~」と・・・。「美来ちゃん、先生からお話し聞いた?」「うん、パパが病気になるかもしれないから、今日と明日はまぁ君ちにお泊まりって!」「そうそう。突然だからこのまま...
ホワイトデーの余韻に浸っていた15日。会社に行ったら突然「工場見学」の話をされた。それはメーカーの照明器具工場に行くという研修なんだけど、照明器の製造過程を見学したりショールームを見せてもらったりして、夜は大宴会・・・よって、横浜にその工場があるから遠くはないんだけど泊まりになる。しかも日程は2週間後の29日(金)と30日(土)・・・あまりにも急な話に驚いた。「なんでそんな急なの?普通は2ヶ月前ぐらいに...
8月の間中、つくしは歳の近い職場仲間に無視をされ続けた。だがつくしは過去の経験からなのか、他の連中が思うほどのダメージはなかった。そうしているうちに話し掛けてくる人も出て来たり、初めからあんな噂を気にしない年配のパート従業員とは会話も出来るようになっていた。気をつけたのは本郷との接触・・・あれから数回本郷が店舗に来たが、それを見掛ける度にバックヤードに入った。本郷も忙しかったようでつくしに会いに来る...
お手軽に「居酒屋」を言うと思った俺が馬鹿だった。まさかの「うなぎ」・・・そう言われたら都内の専門店に行くしかないと思い、そこに電話を入れた。そうしたら丁度個室がひと部屋空いていると言われ、そこを予約することに・・・おそらく2万円のコースだろうが、金額よりもその内容に納得するのか?と心配だった。なんたって「うなぎづくし」だから他のものが殆どない・・・あとで「物足りなかった!」と言いそうだが?うなぎの旬は冬と...
花沢邸の庭は芝生が殆どで、大きな花壇や温室、池などはない。あるのはガゼボと輸入した木製のゆりかごブランコ、そして真利愛と美央が育てている向日葵の花壇と、真利愛の為に作った小さな砂場があるだけだった。柑菜がどうしてもと言うので子ども達を庭に出したが、容赦なく照りつける日差しを避けるため、使用人が急いでパラソルとテーブルに椅子、そして飲み物を用意したりと大変だった。この時は加代もテラスから真利愛と瑛翔...
3月14日・・・俗に言うホワイトデーの当日、私達女子社員は朝から茫然としていた。何故なら、休憩室のテーブルにのど飴の袋が3つ置いてあったから・・・「・・・ねぇ、まさかだけど」「これが・・・お返しってことはないわよね?」「去年までは高級洋菓子店のケーキだったよね?しかもその中でも高いヤツで、色々選べるようになってて・・・」「毎年あみだでケーキを選んでたよね?」「・・・・・・・・・」←毎年あみだで残りものになっていたつくし「...
九州旅行が終って数日後、類はいつもと変わらない日常へと戻った。今日も専務執務室で書類に目を通し、パソコンを睨み、メールを返信・・・ただ1つ変わったと言えば、常にあの御守を持ち歩いているということだ。それが息子のものかどうかは不明だが、鞄の中に入れて一緒に出勤していた。そしてもうひとつ・・・机の引き出しに入れている、私用のスマホに入る連絡を待つようになった。旅行から帰った日の夜、類は情報屋に連絡を入れた。...
雛の茶事が終って4日目・・・歳のせいか、通常より長く休んだお袋が復活した。そして俺達の前に出て来たんだが、毎年のように言われる言葉がなくてちょっと気持ち悪かった。それは・・・『どのお嬢様が印象的だった?』とか『連絡取りたいお嬢様はいなかったの?』ってヤツ。何故なら雛の茶事は「桃の節句」に合わせてるから、お嬢達は超着飾ってくる。例年ならお袋が亭主だから、俺や考三郎は茶事の前後に挨拶するだけ・・・それでもお嬢...
翌日、つくしはいつも通りに起きて朝食を作り、真音を起こしてから保育園の準備をした。月曜日の保育園荷物は大量だ。連絡帳などの毎日の荷物は当然で、真音の保育園は昼寝用の布団も持参だった。それにおむつも取れてないので数枚用意し、夏だからタオルに水着もある。汗をかくので着替え3組に帽子、スモックも加わり、大容量のバッグに布団袋、それに真音の通園リュック。つくしは落とした御守の代わりに黄色いマスコット人形を...
3月に入って1番初めの月曜は4日。それは私の茶道デビュー・・・カルチャーセンターは18時30分からの1時間半なので、仕事が終わったら早めに事務所を出なきゃ間に合わない。それなのに今は月初の仕事がてんこ盛り・・・「おい、お前・・・」「・・・・・・・・・・・・」「おい、聞こえないのか」「私はお前ではありません。名前を呼ばないのなら答えられません」この1ヶ月、殆ど「牧野」と呼ばれない状態が続き、私は我慢の限界だった。そもそも上司から...
旅行の最終日、類たちは午前中に湯布院を観光した。始めに行ったのは「湯布院フローラルヴィレッジ」で、ここはイギリスのコッツウォルズ地方の街並みを再現したミニテーマパークだ。全体がイングリッシュガーデン風に仕上げられており、色とりどりの美しい花々が咲き乱れた庭と、小さな動物たちもいる。敷地はそれほど大きくないのだが、とにかく可愛らしく、湯布院では異彩を放つ場所だ。ベルトラン家の子ども達には然程珍しい建...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...
つくしが花沢邸に来てから1ヶ月が経過した。それが5月の中旬で、ここで2人は婚姻届けを提出することになった。何故3ヶ月も先になったのかというと、社長に就任した類が多忙だった事もあるが、警察の事情聴取、つくしの税務処理と何かにつけてドタバタしていたのだ。それも全部終わり、類も落ち着いてきたために漸く自分達の届け出に着手できたのだ。しかも類と真利愛は養子縁組をしていたので、その辺りの修正手続きに弁護士を...
いきなり現れたのが恐ろしい顔の人形だったのか、それとも人間だったのか・・・それすらわかんない状況で彼に逃げられたけど、こんなところに1人で取り残されるのもイヤだ!だから楽しむ時間もなく暗闇の中を追い掛けたら、道明寺さんは何にもない壁に両手ついてゼイゼイしていた。・・・まったく、それが30歳の男のすることか💢!!それを怒ることも出来ず、薄気味悪いBGMの中、道明寺さんの背中をポンと叩くと・・・「うわあああぁっ!...
「・・・・・・マジか・・・」「俺、1回入ってみたかった♪」「悪い、俺は絶対に嫌だ。乗り物ならいいけど、あそこは無理!」「・・・・・・・・・は、入るだけなのか?」「うん、入るだけだよ~~♪だってお化け屋敷だもん!自分の足で歩くだけだよ~~」子供の頃からの夢だと言いながら、つくしは薄気味悪い建物の前で立ち止まった。そしてここでも言いだしたのがジャンケン。あきらが絶対に嫌だと言うから、俺と類と司とつくしの4人で2組に分かれ...
先日は大変お騒がせしました。たくさんコメントいただきまして、そのお返事も出来ずに申し訳ありません。多くの方にお話を楽しみにしていると言っていただき、とても感謝しております。しばらくお休みさせていただき少しは落ち着いたのですが、続編のお話で物足りなさが解消できるかどうかを考えると・・・どうなのかな~?と思いつつ・・・でも書いていたものだけは公開して、それでこの話を完全終了させることにしました。なので近々0...
初めはゆっくり動くジェットコースター・・・だんだん心臓がバクバクし始めて、喉がゴクリと鳴った。そうしたら花沢さんがボソッとひと言・・・「ジェットコースターってさ・・・恐怖心とは関係なく気絶する事があるんだよね」「は?」「極端な重力がかかると血液は下半身に集まって脳に届かなくなるから。特に気温の高い日は汗をかいて体内が脱水気味になってるから余計になりやすいんだって」「・・・・・・(今日、暑いけど)・・・」「ジェットコ...
「あ~あ、もう無理か・・・」「美作さん、何が無理なの?」「いや、何でもない(総二郎達のゴンドラからはもう見えない・・・なんて言えないし)。つくしちゃん、あと少しだからしっかり見ておかないと!」「は~~~い!」観覧車の後半になったら美作さんは私と向かい合って座り、何故かニヤニヤしていた。その意味は判らなかったけど、言われたとおりに窓の外を眺めて「もう地面が近くなった~!」と・・・その時目に入ったのはジェット...
遊園地とは文字の如く、楽しく遊べるように、いろいろな遊具やアトラクション、設備を備えた施設。アトラクションの設置に関係なく遊園地と呼ばれている公園もあるんだけど、私の思う遊園地は「乗り物」があること!それは滑り台、ブランコじゃなく、もっとハードでスピード感のあるもの・・・まさか、本当にそれに乗れる日が来るとは・・・っ!!「・・・・・・うっ・・・うっ・・・えぐっ!」「ちょっと総二郎・・・この子、泣いてるんだけど」「悪い...
「ふああああぁ~~~~~~~~!よく寝たぁ~~~~~~~~~~!!」大きく背伸びをして起きたのは6時30分。総二郎がいないおかげで久しぶりに爆睡でき、すっごく気持ちの良い朝だった。カーテンを開けると清々しい朝陽が目に入る・・・「今日は快晴だな~」と呟きながらベッドを降りて服を着替えた。そしてドアを開けて隣の部屋を覗くと・・・ベッドで寝ているのは美作さん1人。花沢さんはソファーで丸くなり、道明寺さんと総二...
私を無視して決められた翌日の予定・・・まさかの、道明寺さん達とのお出掛け?!結婚式の翌日に団体行動?!「ちょっと待ってよ、何処に行くの?」「つくし、行き先が問題じゃねぇよ💢俺達は2人きりでここで過ごし、明日の夜までマッタリするんだから!そうじゃないと明後日からは仕事なんだぞ?これまでの疲れを癒やさないとダメだろ?」「確かに疲れてるかも・・・行き先次第だけど・・・」「そうだなぁ、何処に行きたい?あきら」「俺は...
最後まであきらが仕切った二次会終了・・・考三郎はそれからまた飲みに行くと言い、女達を連れて何処かに消えた。従姉妹・従兄弟達はそれぞれの迎えの車であっさり帰宅。涼子達はつくしよりも景品に浮かれまくり、万歳しながらタクシーに乗った。港に残されたのは俺達5人・・・今日は宗家に戻らず、Tホテルのスイートを予約していたので、そこに向かうと言うと、あきらが「ハネムーンは?」と聞いてきた。答えは・・・「今すぐ旅行には行か...
「皆さま、大変長らくお待たせいたしました。本日の主役である新郎新婦の準備が整ったようです。皆さま、ご準備はよろしいでしょうか~?!それでは新郎新婦の入場で~~~す!」美作さんの声で扉が開けられ、途端に目の前でパーン!とクラッカーの鳴る音が!それよりもシャンデリアの灯りの方が眩しくてクラッとしてしまった。その後で叫ばれたのは・・・「西門さん、つくし、おめでとう~~~!」「さぁ、二次会は盛りあがっていく...
おはようございます。突然ではございますが、当面の間類君の連載公開を中止します。理由は、今回のお話について、「物足りない」とのコメントをいただき、それによりモチベーションがダダ下がりしてしまったからです。物足りない・・・それは私の筆力がないので受け入れますが、200話以上で「終盤が物足りない」と言われても、素人の私ではどうしていいのか判りません。明日より続編として、つくしと真利愛のこと、美央とのその後...