志乃さんと話した後、自分の部屋に戻って電話を掛けたのは美作の鑑定機関の責任者・市村だ。そろそろあきらから連絡がいっているだろうと思って聞いてみると、『いつでも大丈夫です』とのこと。それを聞いて、何処で採取するかを話し合ったが・・・『ご家族には内緒でと聞きましたので、出来るだけ自然な場所がいいと思います。まずはどなたを調べますか?』「彼女の・・・牧野の子どもの一颯と俺、そして一颯と片山という男の鑑定を頼み...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
2月の終り・・・私は会社帰りにとあるカルチャーセンターに向かった。そこには茶道があり、表千家の先生に教えてもらえるって事だったから・・・本当は考三郎先生のところに行けばいいんだろうけど、牧田って偽名を使ったし、西門さん絡みで行きにくい・・・出来が悪いのは判っているから、それをイチイチ報告されるのは恥ずかしいし。それは涼子達にも誰にも言わず、こっそりと・・・別にすごく興味がある訳でもなかったんだけど、折角西門さ...
『もしもし、類?どうしたんだ、急に・・・』「・・・・・・ごめん、今少しいい?」『あぁ、今日の仕事は一段落したから・・・震えてんのか?』その声は西門総二郎・・・唯一日本に残ってる友人だ。そして真音・真利愛の事は説明済み。現時点で類の話を聞けるのはこの男しかいなかった。類は総二郎に旅行についての説明と今日の出来事を伝え、総二郎はそれを最後まで黙って聞いていた。だがここでも答えは同じ・・・『キツい事を言うが、まことって名...
牧野が言った『その後の電話で言ったじゃない』・・・それを思い出そうとしたが思い出せない。そう思ってスマホを手に取り、通話履歴を見てみると牧野とのやり取りが数件・・・「あぁ、そうか・・・レーズンは牧野からかかってきた電話か。で、その後俺がかけてるけど・・・思い出した、野久保の名前を聞いたんだ!で、そのすぐ後に牧野から?そんなやり取りしたっけ・・・」そこで画面を睨みながら暫く考えてると、森田さんの車にスマホを置いて...
地獄巡りから自宅近くまで戻ったのは17時前で、後部座席の2人はまだ爆睡だった。本郷も「やれやれ」と苦笑いだし、つくしも「疲れたんでしょうねぇ」と・・・そこで考えたのは夕食だ。つくしは自分で作れるが、本郷はこれから帰って、自炊するのかと聞くと・・・「ははは・・・簡単なものなら作るんだけど、土日は殆ど惣菜かなぁ・・・特に今は暑いから作る気しなくて」「そうですよね~、それは私も同じです」「掃除や洗濯はなんともないん...
最悪な14日が始まり、その日1日中野久保課長とは口をきかなかった。向こうも腹がたってるのか、直線距離で2メートルなのに私への用件は総て社内メール・・・しかも『お疲れさま』も『よろしくお願いします』の文字も無し!涼子達もビビってるし、休憩室では「何よ、あれ!」って感じで、早くも私以外の営業課女子社員全員を敵に回してた。「顔は良いんだけど性格悪っ!」「なんかイメージダウンだわ~~、ガッカリした!」「来年...
美央が車に戻ったとき、そこには1台しかなかった。もちろん残っているのは自分が乗っていた車だが、慌てて車のドアを開けると、そこには類が座っていて、真利愛と遊んでいたのだ。「あら?類様・・・どうなさったんです?」「少し前にベルトラン氏の車が出ただけ。気にしなくていいよ」「でもご案内のお役目が・・・申し訳ありません、私が少し遅くなったから怒ってしまわれたとか?」「いや、全然。これまで一緒だったせいで俺が真利愛...
牧野の上司・野久保武司と京都の舞妓・乃々香・・・真理子が知り合い?突然そんな繋がりを知って、あの日の事を思い出した。そう言えば野久保は誰かと待ち合わせていると言っていたし、真理子は野久保と話している間に忽然と消えた。とは言え、野久保の態度は牧野に対する悪態だけで、特に俺の周辺で驚いた風じゃなかったから、乃々香の方が野久保を見て逃げたってことか?でもそれなら真希乃の言葉に違和感がある・・・彼女の言い方だと...
「まぁ君、あそこにワニさんがいるよ~~!」「まって~~~!」「こら、美来!走ったらダメだぞ!」「真音も、転けたら怪我するから!」鬼山地獄に入ると、子ども達は地獄よりもワニが居る場所に急いだ。そこで柵越しに覗き込むと、ワニたちがウヨウヨと・・・初めてワニを見た真音はキョトンとしていたが、美来は「カッコいいよね~」とはしゃいでいた。鬼山地獄・・・別名「ワニ地獄」。大正12年に日本で初めて温泉熱を利用し、ワニ飼...
爺さんと若菜が遊んでる間、俺は真希乃を相手に酒を飲んでいた。でもさっきまでの陽気な雰囲気ではなく、少々気不味そうに・・・それに地方さんも気が付いてるようだったが、俺は気にせず「乃々香の男」について探りを入れてみると・・・「さぁ・・・うちは知らんどすけど・・・どうしてそんな事を?」「置屋のお母さんがそう言ってたから」「・・・まぁ、お母さんも余計なことを・・・」「乃々香が舞妓の時に何度か会ってて、その子が困ってるなら・・...
つくし達が地獄巡りに来たのは14時30分で、そこは観光客で賑わっていた。少し離れた駐車場に車を止め、つくしが真音のリュックを手に持つことに。そして強烈な日差しの下、帽子を深く被ってひとまず木陰へ・・・「牧野さんはここ初めて?」「はい、実は別府に来て2年半ですけど、まだ来たことがなくて・・・真音も赤ちゃんでしたし」「そっか・・・地獄巡りって場所にもよるけど、子どもにはあんまりピンと来ないと思うんだよね。だか...
「まきの、早くしないとお座敷に遅れるよ」そう言われて出て来た芸妓が俺に気が付いてこっちを見た。その顔はデカい目にちょっと幼げな顔・・・とは言え牧野に似てるワケじゃなく、俺は胸を撫で下ろした。そして「まきの」と言う芸妓はもう1人の芸妓と並んで女将さんに挨拶をし、下駄の音も華やかに何処かに歩いて行った。おそらくこれからお座敷なのだろう・・・それを見送る女将さんに「すみません」と声をかけ、近寄った。「はい、ど...
大騒ぎしたジャングルバスから降りると、今度はふれあいゾーンに向かった。入口に入ってすぐにミニチュアホースを見付け、美来は真音の手を引いてそこにまっしぐらだ。その姿を後ろから見る本郷とつくし・・・他人には夫婦に見えるだろうし、子ども達は間違いなく仲の良い姉弟に見えるだろう。うみたまごでもそれを感じたつくしは、ほんの少し本郷と距離を取ろうと歩を遅くした。だが本郷の方は気にもしてないようで、穏やかな笑顔で...
職場のバレンタイン・・・このどうでもいいイベントを始めたのは誰なのか💢健康診断でメタボに引っ掛かりそうな人も多いのに、わざわざチョコをあげる必要があるだろうか・・・・・そんな事を思いながら、土曜日にはデパ地下のチョコ売り場に来ていた。「どれにしようかな・・・高価すぎるのは困るし、安くて見栄えが良いものがあればいいけど・・・」職場で配る場合、チョコレートをもらえない人がいないようにしたり、本命チョコや手作りチョコ...
前に座る大人達と、後部座席の子ども達の空気感は全く違っていた。真音と美来は楽しそうに笑ったり歌ったり・・・もちろん真音は言葉が少ないので、その殆どは美来だ。美来も独りっ子のため、弟が出来たようで嬉しいのだろう。それにいつもは真音も美来も後部座席で1人なので、もう1人子供がいる状況にハイテンションなのだ。それに比べて、運転する本郷と助手席のつくしは微妙な雰囲気。それというのもこの距離感はお互いに初めて...
茶道具の恐ろしさを目の当たりにして、私は暫く放心状態・・・まさか、こんなお菓子入れに9万円とか!実家では極々稀に可愛いクッキー缶をもらったら、それにみかん入れたりしてたけど、茶道では9万円に和菓子を入れるのかと・・・そんな光景が想像出来なくて、店員さんが説明してるのに全く頭に入らなかった。そんな事してると西門さんの用が終わったみたいで、彼は「揃ったら宗家に届けてください」って頼んでた。でもその手には小さ...
旅行2日目の朝、ベルトラン一家だけが意気揚々と高千穂峡のボートを楽しむためにホテルを出て行った。その乗り場まで同行したのは藤本で、類と美央、そして真利愛はホテルの部屋で戻って来るのを待っていた。ぐっすり寝た真利愛は機嫌が良く、スイートルームの中庭で遊んでいる。花沢邸とは全く違う日本庭園が面白いのか、石灯籠に登ろうとして美央が必死に止めていた。そこに野鳥が飛んできて、木の枝に止まり、美しい声で囀る・・...
茶道教室を見学したことがバレたばかりなのに、今度は茶道具展・・・ササッと見て帰るつもりだったから、まさか西門さんに会うとは思わなかった。・・・と言うか、野久保課長に会うことも想定外だった💢気分が悪いまま西門さんの後に付いて行くと、そこは東京ミッドタウンプラザの1Fにあるレストランで、お昼には少し早かったから人は空いていた。中に入ると窓際の明るい席に案内され、西門さんがササッと注文・・・私には選択権はなかった...
青島から高千穂峡までは車で2時間30分。その車中、類はベルトラン一家のお喋りに付き合い、それはかなり憂鬱な時間だった。『そろそろルイのところにも男の子が産まれれば父上が言っていたよ。どうなんだね?』『・・・そればかりは私にも判りませんが・・・』『あらあら、あんな素敵な奥様がいるんですもの、お子さんが1人だなんてことはないわよね?』『どうでしょう・・・でも私は真利愛がいれば幸せですし』『お父さん、そんなにル...
「お前、ここで何をしてるんだ?」振り向いた途端、そこに居たのは野久保課長?!どうして課長がこんなところに?!しかも結構お洒落な格好で、でも側には誰もいないからおひとり様?てか、1人なら尚更こんなところに来る?!と1人でテンパってアタフタしてしまった。でもよくよく考えたら自分も1人・・・課長と全く同じ状況であることに気が付いた。「あっ、あの・・・えっと、ちょっと興味があって・・・」「お前が茶道具に?冗談だろ...
宮崎に着いた類たちは空港で待っていた車に乗り込んだ。それは花沢が手配したレンタカーで、運転手も現地の人間を手配して待機させていたのだ。当初の打ち合わせ通りに類はベルトラン氏の車に乗り、美央と真利愛はもう1台の車に乗った。藤本は類の乗った方、そして女性秘書の桑原は美央の方に・・・真利愛は疲れも見せずに大興奮で、見慣れない風景にはしゃいでいた。まずは空港から近い場所にある隠れ家風レストランで、全員一緒の...
2月4日の日曜日。朝からダラダラとテレビを観ていたら、今日の山羊座は『芸術に触れるとラッキー』だと言ってた。それで何気に右手の指輪を見たら、これも「Lucky27」・・・「芸術に触れると言われてもねぇ・・・芸術ってなによって話からだよ」恵方巻き食べながらそんな事を考えてたら、思い出したのはS美術館。芸術=美術だよね?と。そのS美術館の場所を調べたら六本木だった。六本木と乃木坂の中間にある商業施設の中にあり、世...
それから数日間が過ぎた。つくしが出勤してから更衣室に向かい、そこのドアを開けた瞬間・・・それまで中で話していたスタッフ達が会話をやめ、つくしの方を見た。「・・・?・・・おはようございます」「・・・・・・・・・さっ、もう時間だわ」「おはよう、牧野さん・・・・・・えっと、今日の入荷は・・・」「早く行こう、主任が五月蠅いから」「・・・・・・・・・・・・」すぐに視線を逸らされ、つくしはその瞬間に嫌な記憶が蘇った。それは英徳時代に味わった虐め・・・...
今日もこいつの部屋は綺麗に片付けられていて・・・まぁ、洗濯物も室内干しされていたけど、急いで何処かに隠していた。俺は前も座った同じ場所に座り、牧野は買い物したものを冷蔵庫に仕舞い、珈琲の準備をしながら恵方巻きを確認。そこで「すごい!!今日買わなくて良かったぁ~!」と叫んだ。「・・・てか、多すぎない?」「食えるだろ、牧野なら」「そうだけど・・・明日も食べられるよね?」「(やっぱ、そうなんだな?!)・・・平気だろ...
梅雨真っ只中の大分は、今日もスッキリしない天気だった。重たい雲が広がり、ジメジメと鬱陶しい・・・そんな中、一際鮮やかな青い紫陽花があちこちに咲いていた。「もう7月か・・・保育園は休みがないから助かるなぁ~」「あっ、たっく~~~~ん!」つくしが真音を車に乗せて保育園に行くと、その門のところで同じクラスの男の子に出会った。車を停めると友達親子も足を止め、「おはよう、まぁ君~」と・・・つくしも急いで車から降り、...
庭の梅が咲き始めた2月、俺と弟による真剣勝負が繰り広げられていた。勝負は3回。第1回戦は俺が勝ち、第2回戦は考三郎が勝った・・・・・・今から最後の戦いだ。「泣くなよ、考三郎・・・」「総兄こそ・・・あとで金で解決しようとすんなよ」「「最初はグー!!ジャンケンポンっ!!」」「よっしゃあぁーーっ、俺の勝ち!!節分の茶会の亭主は総兄に決まりーーーーーっ!!」「・・・・・・・・・・・・」頭がパーの考三郎がその通りパーを出し、俺は右...
目の前にいる派手な女性、黒田柑菜が美央を見て驚いている。同時に美央も柑菜を見て顔色を変えた・・・それを見ていた黒田と類はそれぞれの妻に「知り合い?」と尋ねたが、それに対してすぐに返事をしたのは柑菜だった。「えぇ、美央と私は大学の同期ですの。懐かしいわ、美央~~!まさか花沢家に嫁いでいたなんて~、教えてくれたら良かったのに!」「ご、ごめんなさい・・・お式には友人を殆ど呼んでなくて・・・」「そうなの?花沢物産の...
それからまた10日ほど経ち、1月末になった。その日の夕方、事務員5人が集まり・・・・・・「「「「「最初はグーーーーー!!ジャンケン・・・ポーン!!」」」」」「はい、牧野に決定!!」「・・・・・・・・・・・・」「「「やったぁ!!おめでとうっ!!」」」・・・・・・とうとうくじだけじゃなく、ジャンケンにも一発で負けた・・・。なんのジャンケンかと言うと、新しく赴任してくる課長のお迎えに行く係を決めるジャンケンだ。昨年末にお父さんが突然...
7月になり、九州旅行のスケジュールは概ね完成した。1日目の土曜日は高千穂にある高級ホテルを予約し、2日目は湯布院に宿を取った。そして観光地はと言うと・・・「どうせなら青島に行きますか?」「・・・高千穂とは反対方面だけど、時間的には大丈夫なのか?」「青島から高千穂まで車で2時間半です。青島の観光を1時間程度にすれば、午後には高千穂峡を観光できるでしょう」「・・・任せる。先方の子供は大きいけど、うちはまだ2...
仕事始めから2週間が過ぎた。あの人は初釜とやらをしたんだろうか・・・そんな事を考えていたら、例のビルの営業がスタートし、岩本電気工事の担当者から西門流の茶道教室も始まったって聞いた。何気にその商業ビルの公式サイトを見ると、今日の教室は17時から18時30分と、19時から20時30分までって書いてあった。先生は『西門考三郎 西門流講師』・・・これがあのド派手な内装をした弟さん?顔写真が出ていたけど、西門さ...
アパートに戻ると子ども達は大はしゃぎだった。部屋の真ん中にあるテーブルにおやつを置き、美来は本当の姉のように真音の世話をしている。つくしは2人にお茶を出し、「仲良く遊ぶんだよ」と言いながらキッチンに向かった。まずは急速で米を炊き、買って来た食材を冷蔵庫に仕舞う。それが済んだら洗濯物を取り込み、子ども達が遊ぶのを見ながら部屋の隅でたたんだ。「うわぁ、まぁ君のおもちゃ、おもしろいねぇ~」「み~ちゃ、ど...
正月が過ぎ、10日には初釜が行われた。初釜とは、年が明けて最初に行われる茶会のこと。略式の気軽な会ではなく、茶道を学ぶ人にとっては1年の稽古初めとなる大切な会でもある。うちの場合亭主は家元か俺だが、初日は家元である親父。その親父が元旦の早朝に汲んだ若水を用いた茶が振る舞われ、初回の客はうちの後援会長含む爺様が中心だ。その初釜は3日間行われたが、その最終日に五十嵐家がやって来た。この日は俺が亭主・・・命じ...
うみたまごに行った翌週の日曜日、つくしの部屋に博美親子が遊びに来て、一緒にランチを食べた。その時にゴールデンウイークの話になり、博美達は長崎に遊びに行ったらしく、そこの土産を沢山もらった。実家に戻ったおかげで経済的にはゆとりが出来たのだろう、博美の表情も穏やかになり、子供も可愛らしい夏服を着ていた。「長崎の土産と言ったらカステラじゃない?」「うん、有名だよね~」「これね、白いカステラなんだよ」「白...
初詣から帰る途中、ぼんやり考え事をしていた。まさかたこ焼きを誰かさんと食べるなんて・・・何気に沢山話を聞いたし、面白かったなぁ~と・・・そうしたら信号のない小さな交差点に来て、そこを曲がろうとして・・・一瞬、西門さんの『気をつけろ』の声が聞こえた気がした。だから一旦足を止めると、突然自転車に乗ったおじちゃんがすごいスピードで走って来て、思わず悲鳴を上げた!「きゃああああぁっ!!」「あ、悪ぃ、姉ちゃん!」・・・...
類がシャワーを終えて部屋に戻ったとき、もう真利愛は寝入っていた。それを側で見守っていた美央は静かに立ち上がり、中央のソファーに移動した。類もバスローブ姿のまま美央の対面に座り、1度真利愛を確認・・・起きる気配はなかったので、美央に何があったのかを聞いた。するとやはり出て来たのは遙香の名前で、真利愛に家庭教師を付けろと言うものだった。「家庭教師?」「えぇ・・・お昼に電話がありまして、そろそろ英語とフランス...
「ちょっと💢!返してよ、私のおみくじ!」「ぶはははははは!すげぇ内容だな、お前!失物戻らず、さらに失うって、これ以上何を失うんだよっ!!」「五月蠅いなぁ💢💢!」「病気は大病の可能性ありだってよ?今年は保険証が大活躍しそうだな♪」人の大凶をここまで笑うとは・・・そう思ったらおみくじよりも西門さんに腹が立って、この人の脇腹を思いっきり殴った!そうしたら「痛ぇ!」って言ってるけど顔は笑ってる。尚更ムカついて、...
6月になり気温はずいぶんと高くなった。今年の梅雨入りは8日で、その日は最近にしては珍しく、風を伴わない雨が降っている。類は専務執務室の窓辺に椅子を向け、鈍色の街を眺めていた。もう2年以上も頭の中には靄が掛かった感じがしている・・・今日の天気は類の心の中、そのものだった。「専務、よろしいですか?」「・・・・・・・・・」「専務、どうされました?」「あぁ、ごめん・・・少し考え事をしていた」「・・・お話ししてもよろしいですか...
「新年、明けましておめでとうございます!今年は良い年になりますように!」元旦の朝、私はお雑煮を作ってから、1人でおせちに向かって挨拶をした。そして超豪華なホテルおせちを摘まみながら、お雑煮を食べる・・・それがもう美味しくて美味しくて!生きてて良かった~~~~っ!!って思えた。「おっと・・・朝、全部食べる訳にはいかないから、残りはお昼と晩ご飯にとっとかなきゃ・・・」すでに4分の1を食べてしまった私は急いで蓋を...
イルカのショーが終わると、今度はセイウチやトドを見たりしたが、やはり真音にはまだ早かったようだ。何を見ても泣いてしまうので、つくしは困り果てて本郷に「ここで失礼します」と言ったのだが・・・「いやいや、2歳だもんね、無理ないよ。もう少し可愛い動物のところに行こうか」「パパ、あそびーちに行こうよ~」「あそびーち・・・ネットで見ましたけど」「・・・ふぇ・・・」「うん、そうしようか。遊具もあるし、そんなに怖くないと思...
自分の誕生日が終わったら、すぐにやって来る大晦日・・・その日は朝から大掃除して、途中でお正月の食材を買いに出掛けたけど、わざわざおせちなんて作らない。だって実家にも帰らないし、1人でおせちなんて虚しいだけだもん。だから元旦から普通のご飯で、特別なものなんてない。「そうは言っても、少しぐらいは豪華にするか・・・」そう思って作るのはお雑煮ぐらい。お餅も1番小さな10個入りのヤツで、入れる具材は関東風雑煮の代...
真音と2人きりならレンタルのベビーカーを使おうかと思っていたつくしだったが、美来と言うお姉ちゃんがいるのなら・・・そう思って借りるのをやめた。そして本郷が主に子ども達の世話をしてくれて、つくしは少し後ろからその光景を見ていた。「パパ、エイのとこ、行く~~~!」「うん、わかった。まぁ君の手を離しちゃだめだよ、美来」「は~~~い!まぁ君、こっちだよ~」「あいっ!」「真音、ゆっくりじゃないと転けるから・・・」...
牧野が温めたPizzaをテーブルに置き、それを広げると出て来たのはLサイズのバンビーノ。バンビーノとはチーズの上にコーンやベーコン、ツナなどをたっぷりと乗せたヤツで、どっちかと言うと甘いタイプだ。そもそもバンビーノとはイタリア語で「男の子」という意味であり、子どもが好きな具材を使用しているためにその名前がつけられたと言われている。そう言うと牧野は「私が子供だと?!」と怒ったが、ある意味大正解だ。「...
真音が保育園に行くようになってから2ヶ月が過ぎた。そのゴールデンウィーク中、店は忙しいのに保育園が休みだからつくしは働くことが出来ない。それは申し訳なかったが幸いにもパート従業員は多かったために、シフトは問題無く組めたようで一安心・・・だから久しぶりに親子で遊びに行くことにした。でも真音はまだ2歳5ヶ月なのでアトラクション系は無理だ。そうなると鑑賞出来るものがいいと考え、大分マリーンパレス水族館 「う...
牧野の様子を見ると、薫子が何か余計な事を話したのかも・・・もしかしたら俺の離婚の事を言ったのか?と若干イラついた。別にバレてもいいけど、それは俺の口から説明した場合のことであって、他人からベラベラと話されるのは御免だ。どうせ真実が伝わらない・・・俺の不実だとか不貞行為だと思ってるヤツもいるし、元嫁を擁護する声も多い。それでも良いと思っての離婚だったんだけど・・・・・・いや、そもそも牧野相手にそんなに感情的にな...
友人になった博美とは月に2~3度会うような関係になった。そしてお互いの家に泊まることもあり、シングルマザーになった経緯も少しずつ話すように・・・でもつくしは本当の事を言えないので、「既婚者の子供を身籠もった」ということにしていた。「え~~~!でも相手の男の人、何もしてくれなかったの?」「うん・・・私も判ってたから・・・」「じゃあつくしちゃんは自分が不倫してるって判ってて?」「・・・だから相手には何も言わずに東...
薫子さんの前で電話が鳴り、それが西門さんと判った瞬間・・・すごく気不味かった。そのまま無視しようかと思ったけど、手が自然に動いて通話をタップ・・・ヤバい!と思った時には遅かった。ただ、この電話が聞かれるワケじゃないし、出ちゃったもんだから急いで耳に当てると・・・『おぉ、お前、今どこにいるんだ?』あんたの彼女の目の前だよっ!!そう言いたかったけどやめて、渋谷の109の前だと答えたら・・・『渋谷か。んじゃ、少し待...
ーー2年後・大分県別府市ーー「まぁ君~~~、お母さんが迎えに来たよ~」桜の花が散る春の夕方・・・保育士の声が響くと、小さな男の子が部屋の窓から外を見た。そして母の姿を見付けると、嬉しそうに笑って手を振る・・・その小さな手に答えるように手を振り返したのはつくしだ。そこはつくしのアパートの近くにある保育園で、この3月から真音を預けていた。本当は4月からの予定だったが、真音の「お試し保育」として1ヶ月の間、2...
ドタバタしたクリスマスが終わり、今度のイベントは自分の誕生日。でも誰とも約束はないし、しかもその日は会社の仕事納めで、誰も私の誕生日なんて覚えてないから今年も1人でお祝いってことで。それも慣れてるからなんとも思わず・・・と思った時に見てしまった右手の指輪。実はあれからずっと付けているんだけど、すでにここが定位置になっていた。内側に彫られてるのは「Lucky27」・・・良いことがあればいいなぁ、と思いながらそ...
控え室から出ると、もう披露宴終了の5分前だった。ゲストハウスの中央にあるガーデンに皆が集まり、そこで類と美央がそれぞれ花束を持って両親に贈呈をした。類から新婦親、美央から新郎親へ・・・ここで遙香は満面の笑みに涙を浮かべ、招待客の拍手を誘った。そして澪が代表謝辞を行い、続いて新郎である類がマイクの前に立った。ただそれは与えられた文章を読んだだけ・・・幸せそうには感じられなかったが、元よりアンニュイな雰囲気...
大きなガラスケース(?)の中にあるバカラのシャンデリア・・・確かに綺麗だけど、それよりもシャンデリアを見ているカップルに目が行ってしまう。私と西門さんもその中にいるんだけど、回りの人からはどう見られているのかと・・・・・・草津に行った時も、ハルニレテラスでもそうだったけど、ここでもやっぱり私達は恋人に見えているんだろうか?そんな事を考えていたら西門さんに電話が掛かり、彼は「ちょっと待っててくれ」と言ってそ...
結婚式が終わり、披露宴会場であるゲスハウスに移った。それは立食形式ののんびりした披露宴で、自由に席移動が出来るスタイル・・・堅苦しいこともなく、新郎新婦のお色直しもない。そんな風に決めたのは類と美央で、その理由は真利愛と一緒にいたかったからだ。どうしても2人がメインテーブルに座ると真利愛の世話を加代がすることになる。もちろん真利愛は加代に懐いていたが、ここは子供の存在をアピールするには丁度良く、遙香...
恵比寿ガーデンプレイスに着いたのは22時で、すでにお店は閉まってた。でもバカラのシャンデリアとかクリスマスツリーは23時まで点灯してるってことで、そこに向かって歩いて行った。まだまだ人は多くて、特に今日は恋人たちでいっぱい・・・恵比寿ガーデンプレイス全体のイルミネーションもキラキラで、そこを歩くだけで幻想的だった。辺り一面シャンパンゴールド・・・こんなの見たらすごく幸せな気持ちになってしまう。結婚して浮...
類とつくしが別れてから2年が過ぎた。今日は類と美央の結婚式が都内のホテルで行われていた。フランスからは類の両親も帰国しており、類の幼馴染み達も全員が出席・・・にこやかなのは良家両親だけで、類は穏やかな表情ではあったが、幸せそうには見えなかった。美央はそんな類の横で静かに微笑み、皆の祝福を受けていた。そんな類が笑ったのは真利愛がリングガールとして出て来た時だけ。2歳と数ヶ月の真利愛だから1人で歩くことは...
とある夏の日、虫たちはとっても元気に過ごしていました。花がたくさん咲いて、草むらには葉っぱが生い茂り、虫たちの食べ物はそこら中にあります。そんな中、キリギリス達は今日も花畑で遊び呆けていました。1番デカいカラフトキリギリスの司は向日葵の葉っぱの上で胡座をかき、美意識の高いヤブキリのあきらはハイビスカスの花の中で歌を歌います。褐色が美しいヒメギスの総二郎は歩いているバッタの女の子に声をかけまくり、並...
むかしむかし、道明寺国に司という王様がいました。王様は我が儘で喧嘩っ早く、家来達はみんな困っていました。王様の方も「俺の言うことが1番正しい!」と言い、大臣達も呆れています。そんな司王は洋服が大好き。気に入ったブランドの服を買いまくり、無駄遣いばかりしていました。そんな時、1人の仕立屋が町に来て、「馬鹿な人間には見えない服を作れる」と言い触らしていました。その噂が城にも届き、仕立屋は司王に呼び出さ...
ぶつかったのは大きな猛禽類で、その頭にはツンツンした毛が生えていました。しかも鋭い目付きをしており、恐ろしい顔に熊のような爪です。つくしは「食べられる!」と思って頭を抱え込みましたが、その猛禽類は襲ってきませんでした。「・・・あれ?」「・・・・・・・・・・・・」「どこ見てるの?」「五月蠅い、黙れ!もうすぐあいつが来るんだ」「あいつ?」「カンムリクマタカの亜門だ!」「亜門?・・・で、あんたは・・・」「俺はオウギワシの司...
とある池のほとりでたくさんの卵を温めていたアヒルのお母さん・楓がいました。そしてそろそろ産まれるという頃、1つの大きな卵以外が割れて、可愛いヒナが誕生しました。しかし、大きな卵はなかなかかえりません。「もうっ!一体いつになったら産まれるんだろう・・・!!あたしゃ仕事があって忙しいのに!」そんな風にイライラしていると、やっと大きな卵からかえったヒナは、それはそれは醜くて大きかったのです。その子には「つ...
「待たんか、コラァ!!」「ぎゃああああぁ~、来たぁ!!」つくしが山を駆け降りていると、その後ろから山姥が追い掛けてきました。その足は婆さんとは思えないほど速く、もうすぐ追い付かれるという時に懐に手を入れ、類和尚さんがくれた2枚目のお札を出しました。「お札さん!お願い、助けて~~~~っ!!」そう言ってお札を投げました。そうしたらお札がクルンと一回転し、ボワンと煙が出たと思ったら、そこから黒いサラ髪の...
昔々ある山寺に類という若い和尚さんと、つくしという小僧さんがおりました。のんびり屋で寝てばかりの和尚さんは、元気がよくて毎日お腹を空かせている小僧さんにタメ口で話され、2人はまるで友達のようでした。そんなある日、つくしは和尚さんに「裏山に行って栗をとってくるように」と頼まれました。「は?和尚さん、知らないの?」「・・・なにを?」「裏山には山姥が出るんだよ?私1人じゃ嫌だよ、絶対行かない!」「でも栗を...
むかしむかし、とある森にお母さん豚と3匹の子豚が住んでいました。お母さん豚の楓は言いました。「そろそろみんな、それぞれの家を建てて暮らしなさい。いつまでも親のすねをかじって暮らすんじゃないよ!財産は自分で築きな!」「は?俺達まだ子供だし」と言ったのは末っ子子豚のあきらです。「だいたい親のすねなんでかじってねぇし。なんもしてくれねぇじゃん」と言ったのは真ん中子豚の総二郎です。「痛い目に遭わされてぇの...
「よっしゃ、じゃあちょっくら天竺まで行ってくるわ」「「「本当に行くのか?」」」「・・・・・・当たり前だろ。姫に頼まれたんだ、行くしかねぇじゃん?」1人目の石作の皇子・総二郎は3人に向かって親指を立てました。でもその胸の内はと言うと・・・『阿呆か!ここから船に乗って大陸に渡り、天竺に行くまでに何日掛かると思ってんだ?そんな馬鹿な事をするわけねぇじゃん♪どうせ姫だってお釈迦様の石鉢なんて見た事ねぇんだから、そこ...
むかしむかし、都の近くに”竹取の翁”と呼ばれる晴男爺さんと、千恵子婆さんが住んでいました。2人の生活は苦しく、食べるものもありません。着ているものはいつもボロボロで、家だって古くて今にも倒れそうでした。それでも他に出来る仕事もなく、毎日竹を切っては細々と暮らしておりました。そんなある日のこと。「爺さんや、今日は山で昼寝せずにいつもより多く竹を切ってくるんだよ!竹カゴをもっと編まないと、来月食べるもの...
新年、あけましておめでとうございます。本年度も宜しくお願いいたします。☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆昨年中は大変お世話になりました。読者の皆様には沢山の応援コメントをいただき、心より感謝申し上げます。本当は拍手コメントのお返事をしたいのですが、時間が取れなくて申し訳ありません。来年はなんとかお返事できるよう、頑張りたいと思います。サクッと近況報告・・・一昨年体調を壊した母ですが、相...
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志乃さんと話した後、自分の部屋に戻って電話を掛けたのは美作の鑑定機関の責任者・市村だ。そろそろあきらから連絡がいっているだろうと思って聞いてみると、『いつでも大丈夫です』とのこと。それを聞いて、何処で採取するかを話し合ったが・・・『ご家族には内緒でと聞きましたので、出来るだけ自然な場所がいいと思います。まずはどなたを調べますか?』「彼女の・・・牧野の子どもの一颯と俺、そして一颯と片山という男の鑑定を頼み...
牧野がスーパーファストを運転する・・・その悪夢のようなひと言で目が覚め、なんとか成田まで無事に運転することが出来た。そこの駐車場に車を停め、降りた途端に言われた言葉・・・「あれ?花沢さん・・・荷物は?」「これだけど」そう言って見せたのは斜め掛けしてるボディバッグ。それを見る牧野の目がテン・・・何処か可笑しいのかと思ったけど、このFelisiのバッグ(ボディバッグで9万円)、お気に入りなんだよね。「えっ?そんなに小さ...
「光翔、今日は何をして遊んだんだ?」「・・・・・・・・・・・・・・」「光翔?」「・・・あのね、原田のじいちゃまのとこ、行った~」「あぁ、タマと遊んだのか?」「うん!」他に子どもがいない我が家では退屈してしまうのだろう。来年には英徳幼稚舎への入園も予定しているが・・・と考えた時に、このまま光翔が西門にいるかどうかを思うと胸が痛んだ。その鑑定をしようとしているのは俺・・・結果次第では、この子は・・・「志乃さんに連れて行ってもら...
とうとうやってきたグアム行き前日の10月9日。私の横に社長が来て、「くれぐれも粗相のないように」って・・・半強制的に連れて行かれるパーティーなのに、粗相もへったくれもあるもんか!って思うんだけど。「忘れ物ない?パスポート、ちゃんと持って行くんだよ?」「・・・大丈夫ですよ、子どもじゃあるまいし」「もう体調は平気なんだよね?花沢さんにご迷惑掛けないようにね?」「・・・それも大丈夫です。と言うか、私のほうが迷惑...
具合が悪そうなフリをして宗家に戻ったのは17時30分。裏口に車を停めるとすぐに出てきたのは志乃さんで、小さな声で「大丈夫でしたか?」と・・・これは身体の心配じゃなくて「話し合いの結果」だと言うことはすぐにわかった。だからこの人の後ろから出てきた美涼に聞かれても問題ないよう、「心配かけて悪かった」とか「もう大丈夫だ」とか・・・それを聞いたのか、美涼はすげぇ心配そうな表情で「休日はしっかりお休みにならないと...
本日のドライブは4000万円の車・・・白い方にもドキドキしながら乗ったけど、2台合わせて1億超えとか、もうシャレにならない。だから持って来たお菓子も出すことが出来ず、背筋をピーンと伸ばした状態で助手席に座ってた。そうしたら「なんで緊張してるの?」って半開きの目をした顔で言われ・・・それにはガクッとした。まぁ、この人は自分の握ってるハンドルの値段なんて気にしないんだろうけど。うんうん、そのぐらいもう理解し...
総二郎の話を聞き終え、初めこそ驚いたけど・・・だからって私の中でこの人の何かが変わるわけじゃない。西門がこの人を追放するというのなら、私が受け止める、そんな気持ちだった。・・・とは言え、私は「片山」になっているけれど・・・「くそっ・・・みっともねぇな」「そんなことないよ・・・・・・むしろ完璧すぎなくて安心したよ」「嬉しくねぇよ///」総二郎は気持ちを落ち着けるために珈琲を淹れ直し、私にもそれをくれた。2人でゆっくり飲...
花沢さんが三毛猫の手に来て契約を交わしてから3週間後・・・今日は9月最後の日曜日だ。この日は花沢さんとプレゼントを買いにいく約束をしていて、彼が10時にアパートに来てくれる。私は何処かの駅で待ち合わせようと思ったんだけど、それは秒で却下された。『花沢の社員に見られるとややこしくなるから』・・・それもそうだよね、と納得。**この3週間、私はちゃんとテーブルマナーの教本を読み、土曜日の夜には指定されたホテルの...
「俺は本来西門の跡を継ぐ資格がない・・・・・・家元の血を引いてねぇんだ」俺の言葉につくしが目を丸くした。この事は志乃さん以外と話したことがなかったから、どんな言葉が返ってくるのか気になったが、つくしは何も言わずポカンとしているばかり・・・それもそうかと、俺は彼女から視線を外し・・・・・・出会った頃の傍若無人な自分の姿を思い出していた。西門は茶道宗家としては異例と言えるほどの資産を持ち、あれだけの広大な土地に屋敷...
その日の18時・・・またこんな時間に花沢さんが三毛猫の手にやってきた。それでも先輩達はニコニコ顔で出迎え、すっかり我が社の太客(お得意様)扱いになってた。その花沢さんの手には今日もお土産があり、それは・・・「「「「ええっ?!浅草にある高級菓子店の和栗のテリーヌ?!!」」」」「そんなに有名なんですか?」←つくし「「「「1本13000円だよっ!」」」」「えっ?!これが?!!」如何にも高級そうな箱に入った和菓子...
私の気分が悪くなるのは片山さんが仕組んだこと・・・そう言われてゾクッとした。言われていれば、頭が重くなるのは食後が多かったし、誰かの話を聞いた直後だったり・・・その会話の何処かに「うら」って言葉があったのかもしれないけど覚えていない。でも総二郎が言うんだから本当なのだろう・・・・・・これからも「うら」と言う言葉に翻弄されるのかと思うと気分が滅入るけど・・・「いや、それはつくし次第だ」「・・・・・・・・・私?」「トラウマ・・...
飲み屋街のど真ん中で聞かれたパスポートの有無・・・その意味がわからなくてポカンと立ち止まってしまった。『多分10日間もあれば取れると思うんだよね』「いや、重要なのは取得までの期間じゃなくて、取得しなきゃいけない理由ですよ」『日本国外に出るには必要だから』「そうじゃなくて💢!!なんで私が国外に行かなきゃいけないんですかって聞いてるんですよ!」顔が良ければ言葉足らずでも良いとかないからね?!マジで日本語が...
つくしの様子が変わり、俺は黙ってその後を見ていた。すると「許さない」という声が聞こえてきて、つくしが下唇を噛んでるのがわかった。そして同時にこれはつくしの感情ではなく、何かのきっかけで「印象操作」されてるのではないかと思った。その対象はおそらく俺・・・だからさっき、俺に向かって「裏切ったくせに!」と言ったわけだ。そして以前の車の中でもそんな状態になったが、その時にどんな会話をしていたのか覚えていない・...
「残念ですが、私にはそのような話はございいません・・・・・・」「それなら本気で頑張りなさい♪」惺に婚約者がいたことを告げられ、若干モヤりながら会長を見送ろうと立ち上がったのだが、その時にこの人が急にポン!と手を叩き、これまたとんでもない話を持って来た。それは篠田産業が来月グアムで開くパーティーに牧野と俺を招待するというもの・・・突然の申し出にキョトンとしていると、「じゃあ詳細を送るから!」と言って、満面の笑...
光翔君・・・総二郎が育てている子どもが、もしかしたら違う人の子どもかもしれない。そんな話をしていると、その子の顔が見たくなった。それで総二郎に画像を見せて欲しいと言うと、彼は苦笑いしながらスマホを出し、私に見せてくれた。・・・総二郎が抱っこして、ニコッと笑った可愛らしい光翔君・・・それは西門の中庭だろうか、桜の花が咲いてる時期のものだった。撮ってくれたのは志乃さんという人で、だからなのか総二郎も穏やかな顔...
平和な日々が戻った・・・・・・・・・今日はもう9月で、あれから1ヶ月が過ぎた。「加藤さんは今日何処に行くの?千葉の方なら葛西の中村さん宅で家具の移動、お願いできます?」「了解~~~、牧野さん、中村さんに時間は15時頃って伝えといて~」「は~~い!」「工藤君は時間に余裕ある?庭木の剪定、得意だったよね?」「明日ならOKですよ、牧野さん、悪いけど高枝切り挟みの手入れ、頼んでもいい?」「了解です!お任せ下さい」相...
雨の日とは違い、燃えるように熱い総二郎の腕の中・・・しばらくの間そこで幸せに酔い痴れていたけど、これで話が終わるわけじゃない。今度は2人掛け用のソファーに並んで座り、再び4年前の記憶を辿ることにした。どうやら片山さんは私と一緒に産婦人科に行き、そこで一緒に妊娠を聞いたと言ったらしいけど、それは嘘だ。私は1人で行き、その話を聞いた。そして自分が生理不順だったこともあり、妊娠した時期がはっきり判らなかっ...
惺さんが海外赴任・・・・・・つまり、数回にわたる「お嫁さん」発言はお巫山戯だった・・・と。それを聞いて初めこそ腹が立ったけど、目の前には若干ニヤついてるお爺ちゃんがいるし、百合子さんがお世話してくれるのならいいかと思うことに・・・妄想膨らました自分が馬鹿だったってだけで!「・・・まぁ・・・結果オーライってヤツですかね!でも、百合子さんはお店があるのにどうするんですか?車の免許も持ってないですよね?」「うん、それもさ...
あの日のことは思い出したくない・・・と言いたいところだけど、肝心な部分は全然覚えていない。それを総二郎に話しても信じてもらえるかどうか・・・それが不安だった。だけど正直に言うしかないと思い、部屋に入ってから覚えている限りの話をした。気持ちが悪くなって、どうやって部屋に行ったのかも覚えていない。覚えてるのは片山さんに支えられて部屋に入り、お茶をもらったこと・・・その時の細かい会話は忘れてしまった。退職理由を...
インターホンを押すと、門は自動で開いた。取りあえずは中に入ってもいいよって事だろうと、花沢さんと2人で玄関までの坂道を上がって行く・・・その時もドンヨリした気分で、今にも吐きそうだった。この家のアプローチ、こんなに長かったっけ?と・・・そして玄関に着いたら花沢さんに「大丈夫?」って真顔で言われたけど、大丈夫じゃない・・・。ついさっき追加で衝撃的な事を言われたから、何が起きてもどうでもいいやってぐらいテンシ...
その日の夜・・・旅館の部屋でスヤスヤと眠る真音を見ながら、つくしはまた1週間前の事を思い出していた。そしてなんとか自分の計画通りに移動できたことをホッとすると共に、類がどれだけ苦しんでいるのかを想像して苦しくなり・・・頭も身体もくたくたで、膝を抱えてその場で丸くなった。**遙香との約束をした次の日、類は昼頃病院にやって来た。そしてつくしの退院の手続きをしてくれて、家族4人でアパートに戻ったのは13時。「類...
イケメン茶道家・食事のマナー完璧・車はド派手な外車・・・そんな西門さんは温泉卓球も上手かった。多分最後の方は手加減してくれたんだと思うけど、結局何をしても「出来る男」なんだと判った。と言うのも、既にギャラリーが半端ない。何処から湧いて出たのか、女の子達が目をハートにして彼を見ていた。そして私の方にも目を向けて、「彼女、普通だね~」って・・・彼女じゃないのよ!と言いたかったけど、見ず知らずの人にそれを説明し...
「それではこちらの部屋をお使い下さい。何かあったら私までご連絡いただければ、必要な物を持って行きますから」「・・・ありがとうございます・・・」「それと、こちらは副社長からです。持ってて損は無いのでお使い下さい」「・・・・・・・・・はい。類のお母さんに会うのは何時ですか?」「今からお嬢様を連れて花沢家に戻りますが、そこに副社長もいらっしゃると思います。年始行事の都合上、類様にお知らせするのは昼頃になると思いますよ...
まさかの全裸公開・・・もうそれだけで人生終わったぐらいに落ち込んだのに、西門さんは飄々として全然変わんない。それだけ私の身体が「不合格」だったってことで、それも自覚してるんだけど・・・それを脱衣場で悩みまくったけど、もうどうしようもない。しかも私だって見てしまった・・・・・・///ただ、ソレが「どのくらいのレベル」なのかは判んないけど、結構・・・おっきかった気がする///。てか、目に焼き付いて離れないんだけどっ!!元...
スマホの画面に出たメッセージありの文字・・・類はそれを見るのを少し躊躇った。だが、遙香の到着の遅れと何か関係があるような気がして、勇気を出してそれを開いた。1番初めの文字は・・・『大好きな類へ』それを読んだだけで心臓が止まりそうになった。そして長々と続く文章は・・・『これから伝える事を、どうか落ち着いて読んで下さい。私はこれから真音と一緒に東京を離れます。そして類のところには真利愛が残ります。もうすぐした...
「うひゃああああぁ♥これが露天風呂ってヤツかぁ~♥」12月だから当然寒いんだけど、カラカラっと扉を開けて外に出たら、岩に囲まれたお風呂が♥その初めての光景にワクワクして、バスタオルをグルグル巻きにしたままお風呂に向かった。そこで急いで掛け湯をして、1度振り向いて西門さんの気配を確認・・・こっちに来る様子はなかったので、片脚からお湯に入った。「うわぁ、あったか~~~~い♪」少し熱めのお湯にはいると、それま...
真音と真利愛の出生届が受理された。その後、いろいろな制度の説明等を受け、つくしが車に戻ったのは40分も経ってからだった。気持ちは焦るのだが走ることが出来ないため、ゆっくり駐車場に戻ると、車内で類が子供をあやしているが見えた。表情までは見えないが、おそらく腕の中に抱いているのだろう・・・それを見ると、やはり胃がキリキリと痛んだ。が、そんな顔をして戻れないため、元気よく「お待たせ~」と言ってドアを開けた...
草津温泉での観光の楽しみは散策・・・昭和レトロの香り漂う温泉街は、俺達には実に新鮮だ。ライトアップもオレンジっぽい光りで温かみがあり・・・「へっくしょん!!」「・・・寒いのかよ」「はぁ~~、だって12月だよ?」「お前が着てるそのコート、ダウンじゃねぇの?」「へ?そんな高いもの買うわけないじゃん。腰にカイロ貼っとけばあったかいし」「・・・・・・・・・・・・カイロねぇ」「あ!西門さん、あれ食べたい!!」「は?」牧野が指差...
つくしが退院した夜、2人はベッドから布団をおろし、子ども達の横で寝た。その時にはつくしが端で、類が子供側に・・・授乳のことがあるので代わろうと言うのに、類は「ここがいい」と言って双子が見える場所で横になった。「・・・でも何度か起きちゃうよ?」「平気・・・つくしは寝てて?どうせ泣いたら起きないといけないんだし」「類、最近仕事が忙しかったのに・・・」「そんなの真利愛達を見てたら吹き飛んじゃうよ」「じゃあ・・・少しだ...
草津温泉に着いたのは16時30分で、丁度日の入りだった。だからすぐに旅館を探し、そこの駐車場に真っ赤な車が入ってく・・・当然悪目立ちして超恥ずかしかった。でも西門さんはそんなの気にせず、出迎えた仲居さんにくじ引きで当てたって事を説明してくれて、あっさり部屋まで通されたんだけど・・・「えっ!同室なの?!」「当たり前だろう、ペアチケットなんだから」「うそっ、知らなかった!!」「何でだよ💢普通はそう考えるだろう...
11時に授乳し、11時30分には双子のおむつを交換した。そして色んな書類の説明を受けて、あとは類を待つだけ・・・その時もつくしの顔は笑っていなかった。類に会いたいような、会いたくないような・・・そんな気分で待っていると、廊下を走る足音が聞こえて来た。そして荒々しくドアを開けられ、飛び込んで来たのはもちろん類だ。その顔は本当に嬉しそうで、つくしは頑張って笑顔を作った。「もう~!病院内を走っちゃ怒られるよ?...
「ちょっと西門さん・・・・・・」「なんだ?」「・・・交差点で停まるのやめてくれない?通行人の視線が痛いんだけど」「今度はイタ車扱いか💢!!」イタ車とは「見ていて痛々しい車」という意味からきた俗語・・・この俺の愛車をそんな風に言うとは信じられん!とばかりに睨むと、確かに牧野の言う通り、通行人がこの車を見ている。が、俺は毎度の事なので全然気にならない。そう言うと「よくこんなド派手な車に乗れるよね?」って・・・別に茶道...
誕生日の翌日・・・つくしは朝からスマホを眺めていた。今朝の食事は半分ほどしか食べられず、体調は万全ではない。それでも双子の朝の世話は一通り済ませた。今はよく眠っているのだが、その顔を横目で見ながら・・・・・・つくしは遙香に電話を掛けた。それが朝の9時で、遙香はすぐに電話に出た。だが回りに人がいるのか、すぐに掛け直すので待てと言う・・・何処までも自分中心に動く遙香に苛立ちはあったが、相手は花沢の副社長だ。それも...
「総兄、どうしたんだ?そんなに思い詰めた顔をして」「総二郎?」「あら、ほんと。総二郎さん、お腹でも痛いの?」「・・・俺は何歳だ。ちょっと静かにしたぐらいでそんなに心配すんな」土曜の朝食中、親父達が俺の顔を覗き込んでそんな事を言いやがった。別に俺は気分が悪いわけでも思い詰めてるわけでもなく、ましてや腹が痛いわけでもない。ただ、あいつと草津温泉・・・この展開に多少困惑してるだけ。何故素直に受け取ったのか・・・...
「ほぎゃあああああぁ~~!」「おぎゃあぁ~~、おぎゃあぁ~!!」「・・・・・・・・・・・・・・・」「牧野さん?オムツ替えないと・・・」「はっ!ごめんなさい・・・・・・」翌日から本格的に赤ちゃんのお世話が始まったのに、つくしはぼんやりすることが多かった。今も双子が部屋に来ていて、オムツ交換の時間・・・それを手に持って広げていたのに、泣いている子供を前に、自分の視線が何処に向いてるのか判らないといった感じだ。看護師も不思議そう...
「今から六本木の○○ビルに行きません?俺、そこのくじ引き券持ってるんですよ♪しかも明日が期限で、全部で30枚!」「えっ♪くじ引き?♥」「・・・俺は別に・・・」「はいっ!行きますーーーっ!!」生まれてこの方「くじ引き」なんてしたことがない俺・・・それなのにこの2人が盛りあがったせいで六本木に行くことになった。話を聞けば、こいつはとあるショッピングセンターが行ってるイベントのくじ引き券を、仕事関係者から譲り受けたそ...
「類がいつもお世話になっています。母の花沢遙香ですわ」「あ、あの・・・・・・・・・」「そんなに緊張なさらないで?でも、お話がしたいので少しよろしいかしら。2日目だからまだ痛むでしょうし、そんなに長居はしませんわ」つくしは身体が痛むのも忘れて起き上がったが、そんなに機敏に動けるわけもなく、慌ててネグリジェの上にカーディガンを羽織った。遙香はさっきまで実奈美が座っていた椅子に座り、品良く微笑むのだが・・・それに温...
期待を裏切らない肉がズラリ・・・それを俺が焼いて牧野が食うと言う構図。そしてチョイチョイ出てくる三井の手。まぁ、俺はこのぐらいの肉は家でも出されるし、そんなに腹が減ってるワケでもねぇから良いけど、この2人は夢中になって食ってるからそんなに会話にもならなかった。特に牧野は息継ぎしてるのか?って勢いで・・・マジで恋より飯、男より飯、結婚生活より飯って感じ。だがこれが本当に浮気されて離婚した女の姿か?と目を疑...
出産後の約2時間は、異常出血等が起こりやすいため、分娩台の上で寝たまま安静にしなくてはならない。その間に医師や助産師から説明を受け、類はつくしに飲み物を渡していた。その後、必要な検査を終えた赤ちゃんが連れて来られ、ここでまた家族4人が対面・・・看護師が「記念撮影します?」と聞いてきたので、それを撮ってもらった。上半身を起こしたつくしの横には男の子、類の腕の中には女の子が抱かれ、すごく嬉しそうなつくし...
12月1日・・・月初めは何かと忙しいのに、定時で切り上げて会社を出た。そしてダッシュで駅まで行き、西門さんに言われた西麻布まで行く事に。その前に東京メトロ日比谷線・六本木駅で三井さんと待ち合わせだから、まずはそこに向かった。帰宅ラッシュでごった返す中、駅近くのローソン前で18時だったんだけど、なんとかその5分前には到着。焼き肉屋さんは西門さんがいないと入れないっていうお店で、予約は18時30分。だか...