久しぶりの外出だった。少し早めにお邸を出て、クリスマスの装飾が始まった街を歩く。夜は優紀に会う予定だから、司さんが用意してくれた服じゃなく、アパートから運ばれていた着慣れた服を選んだ。生地屋さんは休みの日にもよく立ち寄っていたお店だから、カジュアルでも大丈夫。司さんの好みは、あのクローゼットを見れば分かる。上品で、綺麗目で、だけどどこか甘さのある服。そんな彼の好みに合わせたくて、頑張って綺麗目を意...
「ごちそうさまでした。」「ごちそうさま。」一緒のベッドで寝起きをして、ダイニングで一緒に朝食をとる。最近では彼女の食欲につられてか、俺もサラダやパンを口にするようになった。食事を済ませた後、こう言うのも彼女の影響だ。そんな俺の変化を、彼女はとても喜んでいる。「今日のパンはコーン入りだったね。」「......そうだったか?」「司さんは気付かなかったの?もったいない.....、毎朝ちょっとずつ違うのに。」部屋に...
「んっ・・」腕の中にいる彼女の口元から、小さく鼻から抜ける様な声がして、彼女が目覚めたのが分かった。この可愛い声を聞きたいような、もう少しこのままでいたいような。目覚めた彼女が俺を見て、その大きな瞳で見つめ、微笑んでくれたら。それだけで朝からハッピーだろ?けど、俺が起きてることに気付いていないこいつは、いつもそっと俺の元を去ってしまう。それならいっそ目覚めなければいいのに。そんな相反する感情を持て...
「つくし、本当に結婚するのかい?」「うん。」「でも、付き合っている人がいるなんて、パパは一度もそんな話を聞いたことが無かった.....よ?」彼女と一緒に訪れた、彼女の父親が入院している病院の談話室で、俺は初めて牧野の両親に会った。困惑気味に俺をちらちらっと伺いながら、牧野の父親が彼女に食い下がっている様子を、俺は内心ドキドキしながら見守っていた。ババァの意見なんてどうでもいいが、彼女の両親に反対された...
「一応報告ですが、明日、入籍します。」「............っ! あなた、いきなり、何を言い出すのっ!?」滞在中のシンガポールメープルで、突然掛かってきた息子からの電話に大声を上げた。「司さんっ!」「彼女の両親に挨拶をした後に区役所へ行きますので。」淡々と話す息子は、我が家の跡取りであり、会社の副社長だ。これまでの息子は結婚は絶対にしないと豪語していて、何度か仕掛けた見合い話に目をくれたこともなかった。恋...
本当はね。初めに言おうと思ったの、経験がないんだっていうこと。でも、やっぱり言わなかった。だってね、経験のない、面倒くさい女だって思われるのが怖かった。この年齢でまだって...、どれだけモテない女なのかって、がっかりされちゃうのも嫌だった。契約結婚なんだから、彼が必要なのは『妻』という存在だけ。『私』を欲しいって言ってくれている訳じゃないけれど、それでも『私だけ』だって言ってくれたから、せめて『私を...
イラつきに任せて放った言葉を後悔した。それでも一度吸い付いた甘い唇をなかなか離すことができず、唇を合わせながら、彼女からの抵抗がないことに安堵していた。類からの着信音が部屋に響いている間は夢中で、その音が途絶えた途端、俺は急に冷静になった。抵抗しない彼女は、俺をどう思っているんだろう。最低な男だと思っているのか?体目当てだと、そんな風に思っているのか?抱きたい気持ちは嘘じゃねぇが、決してそれだけじ...
何が起こったの・・・?『俺はお前を抱く権利があるし、 お前はそれに応える義務がある。』私の手首を掴んだ道明寺さんはとても怖い顔をしていた。ワインを開けて食事を取っていた時は、口数は少なかったけど優しそうに見えたのに。急に、どうして?足元がふらついて、ソファーに倒れこんだ。道明寺さんが私に覆いかぶさる形で私の脇に手をついた。彼の顔が近い。あんなに間近で見たのは初めてだった。怒っているような、でもどう...
「このお話、お受けします。」牧野の両手はグッと握られていた。結婚を決めた女とは思えない、これから戦にでも出向くのか?と言いたくなるようにキリリとした表情。『選択肢はない』と脅しとも取れる提案をしたのは俺で、この表情の責任も俺だ。なのに、元凶の俺は、嬉しさのあまり、すぐには言葉が出なかった。ガッツポーズでも取りたくなるような浮かれた気持ちを、膝の上の手をグーパーと動かして誤魔化していた。契約書でも交...
ベッドの中、しっとりと汗ばんだ妻の体を抱きしめた。深紅の薔薇の花束は、あの時言えなかったプロポーズの代わりだ。『好きだ。俺の妻になってくれ』そう言えたらどんなに良かったか。ただ、それじゃあ、こいつを手に入れることはできなかったはずだ。告白しただけで、簡単に結婚に踏み切るような女ではないから。「そうだ、今日、お前の両親をうちのマンションに案内した。」「..........え.....?」情事の後、いつものようにぼ...
おはようございます。Happyendingです(*^^*)ジレジレが始まった『たとえば、こんな・・・』、応援ありがとうございます。今日は午前中お休みでして...洗濯物干して、掃除はまだなんですけど...(;^_^Aで、実験中・・・PC用のテンプレートです。(スマホ用は以前からずっと同じです。)以前からPC用のテンプレート変えたいなーと思っていたのですが、私はカスタムとかできない人なんで、そのままポンッて当てはめるだけなんですけど...
「類とフランスに行くと聞いたんだが。」考え込む牧野に、俺は唐突に切り出した。いや、正直に言えば、裏の世界のことなんて実は大して心配していなかった。道明寺の権力を使えば、牧野一家の安全を保障することなど容易かったから。こじれるようならあきらに頼めば一発だろう。それよりも、俺が気になっていたのは、このことだ。「え?類.....いえ、花沢専務がそう言ったんですか?」「ああ。」パーティーの時から分かっていたが...
牧野をリムジンに乗せ、タオルを渡すと、その温かさが伝わったのか、ふぅ...と息を吐いた牧野がポツリポツリと話し出した。「弟もどこかに連れ去られたみたいんです。」親父さんが勤務中の運転で事故を起こした。元々ペーパードライバーだったらしいが、同僚が突然気分不良になり、運転を代わったらしい。相当注意して運転していたはずだったが、前の車の急停車にブレーキが間に合わず、追突した。追突事故はほとんどが後続車の責...
「おい、今日は絶対早く上らせろよ。」「でしたら、これまで通り朝食は社でとられては?」俺の要求に、第一秘書の西田が渋い顔をした。俺は元々朝メシなんて食わねぇ。結婚前は出社後コーヒーを飲む程度だった。邸のダイニングに通うようになったのはつい1週間前からだ。普段の俺は一日中仕事三昧で、あいつと一緒に飯を食う時間は取れない。だったら、朝メシ位一緒にとってもいいだろ?1週間前、世間を騒然とさせた俺の結婚発表。...
「行ってらっしゃい。」玄関で、私が声を掛けると、彼はちらっと振り返り、「今日は昨日ほど遅くはならない。」そう言って、じっと私を見つめた。......え?何だろう?昨日の夜......あっ!?そうだ、昨夜は・・・彼の帰宅が深夜0時を回って、「遅くなるようなら先に寝てくれ」とは言われてたけれど、それも与えられた自分の部屋で眠るのか、彼の部屋で眠るのか...なんて、そんなことを考えていたらいつの間にかソファーで眠ってし...
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