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  • おにぎりセット

    3時。本来なら眠りの世界の中にいて、運ばれてきた無意識をナイフとフォークで切り分け一口サイズの夢にして、その苦味をブニブニした食感と合わせて食べている頃だった。しかし火山が噴火するくらい力強い空腹が、薄っぺらい毛布にくるまって眠りの世界へ運ばれかけていた僕の全身を突き動かした。毛布を蹴飛ばし、ベッドから勢いよく立ち上がると簡単な着替えだけ済まして、家のドアを開けた。外へ出ると夏の熱さが夜闇にまで溶け込んでいるのか、白いシャツ一枚だというのに肌寒さは感じなかった。何の熱も感じない空気の中をふらふらと歩いていると、外気と自分の体の境目がわからなくなり、夢の中を歩いているような感じになった。フィッシ…

  • 三人称日記のススメ

    よく宇宙人が地上に降り立ったときに 「我々は宇宙人だ」と地球人に言うようなイメージがある。勝手な偏見でしかないけれど きっと宇宙人はマッチングアプリでマッチした相手にも 「我々は宇宙人です」とメッセージを送り MEではなくWEということを訴えてくるのかもしれないと思っている。ポケモンで言えばモグラみたいなものが 3匹集まったダグドリオのようなイメージが 宇宙人には勝手に植え付けられている。だけど、私が宇宙人だったら 「私は宇宙人です。後ろのやつらも宇宙人です」 と私と彼らを切り離して言うだろう。もっと言えば何も言わないかもしれない。 コミュ障だから。便利な言葉。ちなみにこの宇宙人の話はまったく…

  • 前田司郎『夏の水の半魚人』感想文

    SNSを漂っていたら 「評価されないのでその正体を知りたい。誰か小説を読んでください」 という投稿を見かけて、その正体がわかれば苦労しないんだけどなあ と思いながら興味本位で読んでみたところ あっさりとその「正体」が見つかったことがある。その小説は恋愛小説だったのだけど 登場人物の感情も思考も全てクリアで まったくもって行間というものがなかった。「喉が乾いた、だから水を飲む」 みたいな感じで 「彼は優しい。優しいから好き。好きだから告白する」 というような感じ。人間というより、数式やプログラミング言語にしか思えなかった。 読みやすく、面白くないわけではなかったのだけど、 悲しいことや嬉しいこと…

  • スケラッコ『バー・オクトパス』感想文

    夜中におにぎりが食べたくなって 住んでいるマンションの外へ出た。僕の住んでいる場所はわりと都会で コンビニに行くまでの道のりにバーと スタジオがある。非常事態宣言が出ているので仕方ないのだけど 22時前だというのにバーは閉まっていて 「酒類提供しません」という張り紙がしてあった。お酒を提供しないバーって 何をするんだろう?と思いながら そもそも「バーって行ったことないかもしれない」ことに気づく。僕の中のバーは 「カウンターがあってマスターがいて すごく静かなところ」という 幼稚園児の落書きくらいに雑なイメージのものしかない。よほど縁がない限りは自ら足を踏み入れることはないだろう と思っていたの…

  • 最果タヒ『もぐ』読書感想文

    夏といえば夏休み。 夏休みといえば読書感想文。そんな単純な連想ゲームで、今日は読んでいて面白かったエッセイ 最果タヒの『もぐ』を紹介します。最果タヒというのは現代詩人です。 詩のほかにもエッセイや小説も書いています。今日紹介する『もぐ』は「食」にまつわるエッセイで パフェとかドーナツとかちくわ天とか そういった僕たちが胃に納める食べ物のエッセイが 合計25個収録されています。僕がこのエッセイを読んで一番思ったのは 「その感覚はわからない」 ということでした。書くこと一つひとつが ほぼほぼ共感することができない という事態に遭遇しました。たとえば 「パフェは食べ物の天才」だとか 「小籠包は食べる…

  • 四方八方に飛び散った

    太陽とか水星とか土星とか 宇宙にある惑星たちが TSUTAYAのDVDコーナーの隅っこにある ノンフィクション作品を集めた黒い棚で 埃を布団にして眠っている。そんなつまらない話を充電が切れかかった ブルートゥースイヤホンで聞いている。目的地に向かって歩いている間は 本当に暇で、もう何百回も同じ場所を歩いていると すれ違う人も建物も死んでいるようにしか思えない。インスタ映えする墓石なんかよくわからないことを思いつく。 一日の儀式眼を開けたら天井に名前をつけるアルファ ロメオ 西野 いきなりアップルパイ タケオ同じ空間にいるって思わないよう 自分の部屋を見知らぬ空間にする。 やりたくないことを「仕…

  • 何を書こうかなと思うとき

    太宰治が文章を書くコツのひとつとして 「好きな人に話しかけるように書くといいよ」 と言ったらしいので、だから僕も 恋多き死にたがりの文豪にあやかって 好きな人に向かって書くことにする。と、宣言したものはいいものの 正直に言うと 僕はいま何を書けばいいかわからない状態で、それこそ好きな人をはじめて デートに誘ったはいいものの何を話せばいいかわからず、 小さく微笑んだまま固まっているような そんな状態。「誰かに何か伝えたいことを伝える」 っていうのが文章の掟なのだとしたら その掟を真っ向から否定している。たぶんそれは僕に書きたいと思うものが 何もないからで、ただ書きたい 「何も伝えたいことはないけ…

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