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  • 高野和明の『踏切の幽霊』

    ◇『踏切の幽霊』著者:高野和明2022.12文芸春秋社刊作者11年ぶりの新作。まず題名がストレートでいい。読み始めてすぐに単純な心霊ものではないことがわかった。踏切の心霊写真をきっかけに、今は女性誌の取材記者だが、元社新聞社会部記者が踏切付近の殺人事件との奇妙な符合を手掛かりに手堅く関連事実を追って行き、盛り場世界、裏社会、政治家の汚職、殺人などを手繰りながら巧みにエピソードを織り交ぜ、読者を倦ませない手口が憎い。主人公の元新聞記者松田は愛する妻を亡くして2年、今は泣くことにも慣れた。心霊写真を初め殺人事件の被害者でもある「髪の長い細身の女」を追跡するにつれて、作り笑いで周囲をはぐらかして生きるしかなかったその女の哀れな育ち、過酷な人生に深い同情を覚えて彼女を死に追いやった人非人に果敢に立ち向かう一徹さが...高野和明の『踏切の幽霊』

  • ジョン・グリシャムの『大統領特赦(上・下)』

    ◇『大統領特赦(上・下)』(原題:THEBROKER)著者:ジョン・グリシャム(JOHNGRISHAM)訳者:白石朗2007.3新潮社刊(新潮文庫)アメリカ議会の名うてのロビイスト(フィクサー))ジョエル・バックマン。莫大な額の不正取引疑惑で逮捕され司法取引の末容疑を認め刑務所に入っていた。刑期を6年ほど消化したある日、突然釈放された。格別の成果を上げることもなくホワイトハウスを去る大統領アーサー・モーガンによる任期切れ直前大統領特赦のおかげ。当然バックマンから莫大な買収金が払われたと取りざたされた。しかし実は真の目的はバックマンをどこの国の誰がバックマンを殺すか見定めるというCIAの企みだった。ジョン・グリシャムといえば、押しも押されぬ法廷もの作者。リーガル・スリラーの第一人者である。そのJ・グルシャム...ジョン・グリシャムの『大統領特赦(上・下)』

  • 中西智佐乃の『狭間の者たちへ』

    ◇『狭間の者たちへ』著者:中西智佐乃2023.6新潮社刊新潮新人賞受賞後第3作目。「狭間の者たちへ」、「尾を喰う蛇」2作の小説集。<狭間の者たちへ>さえない、ダサいことを自認している中年男。妻と娘がいるが、妻を愛しているわけでもない。保険会社支店の営業担当であるが、成績も上がらず、年下の上司にコケにされている日常の鬱憤が積もりに積もっている。二人目の子供を求める妻に迫られても必死に拒む。結婚前には風俗店の「あーちゃん」という女性に入れ込んで通い詰めた。高価なプレゼントもしたのに結局逃げられた。彼女を「底辺から救ってやる」ような上から目線が疎ましかったからだ。週2回、早番のある時間帯の電車で一緒になる女子高生。咲きたての花のような、青みががかった甘い匂いがする。彼女の後ろに立ち息をつめてせい一杯吸い込む。元...中西智佐乃の『狭間の者たちへ』

  • 陳思宏の『亡霊の地』

    ◇『亡霊の地』著者:陳思宏訳者:三須祐介2023.5早川書房刊台湾中部台北近くの永靖の出身である作者が、故郷の地での思い出を背景に紡いだ、陳一家9人の壮絶なエピソードである。作者はこの永靖の地を「亡霊の地」という(原作は『鬼地方』)。鬼の地である。鬼には幽霊や亡霊という意味の外に劣悪な、どうしようもないという形容詞でもある。だから作者は「鬼の地=くそったれの地」という意味も持たせた。保守的で結構どろどろした因習が根付いた田舎町の中で濃密すぎる人間関係が織りなす悲喜劇にふさわしい題名かもしれない。永靖という町の情景描写が優れ、作者がこの故郷の町に持つかぎりない愛着と哀切あふれる思いが十分に伝わってくる。また日本統治下の台湾、毛沢東の中国を逃れた国民党支配時代の台湾、そして民主化の道を選んだ今の台湾の姿を垣間...陳思宏の『亡霊の地』

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