人は“みかけ”に依らぬものと云うが、力士だって例外じゃぁあるまい。その外見だけで相撲ぶりを判断できない。明治三三年、静岡県出身の中川部屋。165㎝・130kgの“あんこ”型なのにさ、押し相撲得意なのに、引分け相撲も─。①大正十一年夏場所四日目西前十六✖綾鬼━楢錦(十両)②同十四年春場所二日目東前十一✖綾鬼━琴ヶ浦✖西前頭七③仝六日目前頭十一✖綾鬼━一ノ濱✖西前十三④仝九日目同十一✖綾鬼━大蛇山✖西前頭三⑤同十五年春場所五日目西前十二✖綾鬼━若太刀✖東前十三殊に、大正十四年春場所は3番の引分け相撲━「押し」を封じられて尚且つ粘りの取口なのか…鳥渡ばかり想像できない。更に、同十五年春場所は相撲改革で「取直し」制を実施したのに、引分けを記録しているのは不可解なのである。あんこ型押し相撲で引分け5番