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長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」
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2015/07/18

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  • newborn!

    令和6年の春は、年々気の早くなるソメイヨシノ殿が思い掛けない茶目っ気を発揮して、大方の予想の裏をかき、4月に入ってからの開花となった。なんと何年ぶりの新学期、新年度での桜でありましょうか…と、門出を祝うに常になく嬉しい心持ちがして、8日月曜日は薄曇りの花見に出掛けたが、次の日の火曜日は、これまたお天道様がムラっ気を起こして、暴風雨…春の嵐となった。スズランの新芽も漸く頭を覗かせたものの、こう冷え込んでは幾ら花に誘われようとも、先駆けても良いこともありますまいから、もう暫くお待ちなさい…と越冬サナギたちに心のなかで言い聞かせていたところ…そんな1週間が過ぎようという金曜日、曇天の寒さに午近くなってようよう、ベランダの植木に水をやりにゆくと、枝に小さきものがぶら下がっておりました。そはいずくより来たりしか…と...newborn!

  • ことしの檸檬

    アゲハチョウ騒動記…揚羽蝶ラプソディ……ぅぅむ…と、とつおいつ悩みつつも、腰を落ち着けてパソコンの蓋を開ける間もなく、早や令和6年のお彼岸は来にけり。幼虫たちが蝕んだ葉の形が心苦しく、半枯れの葉っぱを払ったら、檸檬樹は殆ど丸坊主の体となり、疎らな葉緑素にてこの冬を凌ぐ有り様となった。それでも健気に春を迎えるまで三つの果実が残った。一方で、結実せず冬を越した鉢を見ると、みな一様にシザーハンズ様の新芽を出して一陽来復を歓んでいる。葉の少ないところへ、更に新芽を育てる余力の無さそうなユーレカ種も不憫である。ちょうど彼岸とて、供物とするのが佳かろうと、収穫した。今年の檸檬は、幼虫養育のために犠牲にされた分、些か小振りであったけれど、レモンイエローに耀く艶やかさは変わらない。(大きさ比較のため、善光寺名物の八幡屋礒...ことしの檸檬

  • 木曜日の邦楽演奏会

    新暦の3月3日、ひな祭りも過ぎましたが、我が心の拠りどころ、太陰太陽暦では令和六年睦月廿三日の月が二時間ほど前、西の地平に沈んだばかり。時間も価値観もただ、時の過ぎ行くままに変わって行くご時勢に、暫し立ち止まって、自分自身の立ち位置を顧みるひとときをお過ごしになるのは如何でしょうか?来る木曜日、3月7日午後2時より、新橋駅ごく近くの内幸町ホールにて、"和の音の集い"というイベントがございます。午後1時30分開場で、開演まで和楽器体験コーナーにて、日本の伝統楽器とふれあうトキメキ時間もご用意されております。長唄演奏の部に、私ども杵徳会一門の若手による「小鍛冶/こかじ」お囃子入りで参加しております。確定申告が済んでやれやれ…と心の余裕がお出来になった方々も、そうでないけど、平日の午後に新橋界隈でちょこっと一息...木曜日の邦楽演奏会

  • 梅花、照星に似たり

    一日、一日と過ごしているうちに、年が改まってしまった。2024年2月10日は、月暦の令和六年正月朔日、元日であった。新暦の年末、常に懸案事項であった稽古場の模様替えに着手し、蔵書の整理に手を伸ばして以来、旧暦の新年を迎える今日に至っても、いまだ志し成らず、作業進行中なのである。中学校への三味線授業の帰り道、谷保の天神さまを詣った。だらだら坂の参道をのぼると冬木立の合間に、白い星々を頂く樹々が見えた。ぉぉ、何と嬉しいこと…梅が咲いている。梅林に走り寄りたい気持ちを抑え、ここは菅原道真公へ先に御詣りするのが筋であろう…と本社へ。阿吽の狛犬さんの奉納年代は、苔むし細石の赴きさえ生じた台座から読み取るのは最早ムリであったが、霊長万物に対する不変の情愛は感じ取れた。梅が枝に見とれていると、枝を透かした先の青空に三日...梅花、照星に似たり

  • 〽️夕日も早く 落葉どき 梢の風に…

    月歴神無月も十日を過ぎまして、二十四節気では小雪。新暦では11月30日、来週木曜日の宵の16時より、東京の日本橋蛎殻町にございます日本橋公会堂(日本橋劇場)にて、伝統長唄伝承の会の演奏会がございます。この演奏会は、重要無形文化財「長唄」の総合認定保持者(つまり人間国宝)の先生方が、毎年、後継者の育成とわざの伝承を目的として研修事業を行いまして、その成果を発表する演奏会で、今年度で13回目を迎えます。有り難いことに、私も研修生としてお教えを賜り、本年は、二世杵屋勝三郎作曲の大薩摩物『忍車/しのびぐるま』に出演させて頂きますことと相成りました。この忍車は、安政五(1858)年十月の、江戸市村座の歌舞伎の一場面で、北条時頼の時代の鎌倉が舞台です。作者は河竹新七…後の黙阿弥です。初演時、七代目市川團十郎が盗賊の出...〽️夕日も早く落葉どき梢の風に…

  • 邦楽演奏会@吉祥寺

    おはようございます。矢継早やのお知らせで恐縮ですが、来週末(今週末?)にも演奏会がございます。ご予定の多い錦繍の秋、お時間叶いましたら是非お越し下さいませ。お待ちしております。邦楽演奏会@吉祥寺

  • 世田谷loveな皆さまへ

    今年はまだか…と案じていた金木犀が、昨日、東京都内では一斉に花開いた様子。当方のアゲハチョウの幼児たちも、今季何世代かを繰り返し(写真撮影はしているのですが、ご報告未だ成らず…同好の皆さまには御免なさい)、終齢幼虫が十数匹、青虫に成る前のゼブラちゃん達共々合わせて三十数匹居るのではないか…と思いながら10月の声を聞いて、アッと言う間の中旬、幼虫の数が蛹化のための旅立ちばかりだけでなく、奇妙な減り方が夥しい…と、不思議に思っておりましたところ、擬似鳥の糞がどうやら本物のフンらしい…と気がつくに及び、これは…最早手遅れかもしれないが、と、蝶のお母さんが卵を産みやすいよう張り出させていたベランダの檸檬樹の枝に、鳥避けの網をすっぽり、被せました。さて、今日と明日の2日間、小田急線の成城学園前駅より徒歩4分ほどの成...世田谷loveな皆さまへ

  • 雄々しき虫

    夕暮れ時に、檸檬の枝先でキッパリと世界を睥睨する青虫が居た。彼の視線の先が気になって…ベランダの結界である網の先なので、巧く撮れなかった幼虫の後ろ頭。恐らく、彼が羽化した後の住処である、井の頭公園の御殿山雑木林を見ているものと思われる。咲き初めた金木犀の香を愉しむが如き、こうべの上げようも頼もしく、幼虫の無事と未来の棲み処の安寧なるを願う。雄々しき虫

  • 吾妻錦絵と長唄、謡曲の饗宴~鈴木春信展@下北沢

    Charmingな春信美人画展~長唄と謡の空間において開催のご案内を申し上げます九夏三伏の砌、皆さまいかがお過ごしでしょうか、さて、このたび、小田急線と京王井の頭線がクロスする文化の街、下北沢・武蔵屋画廊様に於きまして、横山實コレクションと、歌舞伎の三味線音楽である長唄、また能楽の謡曲のライブ上演をお愉しみいただける、展覧会を行うこととなりました。この催しは、予てより、日本が世界に誇る江戸時代の浮世絵と、世界を一にする同時代の音曲を同じ空間で鑑賞して頂きたい…との願いから、幾たびか行って参りました試みですが、今回は劇場ではなく、ギャラリーという、ごく身近に作品の息吹を感じて頂ける空間で行います。21世紀も二割方進みました今日、日本人が、自らの歴史の中で育み、紡いできた自分たちの伝統文化に触れる機会が激減し...吾妻錦絵と長唄、謡曲の饗宴~鈴木春信展@下北沢

  • 池のほとりに

    池のほとりに

  • 今週末の演奏会@成城ホール

    おはようございます。今年は花の暦が早いようで、菖蒲園の様子が気になる一方、夏の高原からはニッコウキスゲ開花のニュースが届きます。梅雨の晴れ間に覗く空がこんなに青いのならば、私もどこかへ行きたいもの…揺すぶられる旅情を胸に秘め、さて皆さま、今週末、こちらへお出かけになるのは如何でしょう?6月も早や3週目の今週末18日(日)、小田急線成城学園前駅北口徒歩3分、成城ホール(世田谷区/砧区民会館)にて、邦楽の演奏会がございます。13時開演で終演は16時ごろ。入場は無料、お出入り自由にて、長唄、笛、囃子、小唄など、伝統的な古典邦楽から新作の現代邦楽などがお愉しみいただけます。また、企画番組として長唄杵家流御家元・杵家弥七師の「三味線のお話」もございます。杵徳社中は、三味線三重奏曲「ペーパードール」長唄「もみじ橋」そ...今週末の演奏会@成城ホール

  • 長唄の発声・歌唱法ワークショップがあります。

    関東地方は梅雨入りしたようでございます。空も晴れぬが、心も晴れぬお年頃の皆さまに、ひととき、浮世を離れ日本の伝統文化に触れていただければ、ほのかに明るいともしびが胸のうちに灯るかも知れません…というわけで、JR中央・総武線及び京王井の頭線吉祥寺駅北口徒歩3分のコピス吉祥寺A館7階(以前は伊勢丹百貨店吉祥寺店でした。往年のTVドラマ「俺たちの旅」オープニングテーマで、中村雅俊と秋野太作、田中健が水浴びする池はこの前庭に在りました)吉祥寺美術館音楽室にて6月17日土曜日夜19時より受付まして、20時ぐらいまで、長唄の発声・歌唱法のワークショップがございます。参加費は無料です。どなたでもご参加頂けます。講師は生まれも育ちも生粋の吉祥寺ネイティブ、長唄杵徳会家元・杵屋徳衛です。この季節にぴったりの"いたこ=潮来出...長唄の発声・歌唱法ワークショップがあります。

  • 明日の演奏会@吉祥寺

    新暦なれど6月2日の悪天候にて、昨日被災された皆さまに御見舞い申し上げます。さて今日は旧暦四月十五日、夕暮れには美しい月も昇りましょうほどに、先ずは表題写真のご説明。一年間双葉のままだった檸檬の実生がありまして、どうなるのかなぁ…と気にしておりましたところ、このほど目出度く脇芽が生えて参りました。令和の一年寝太郎噺とでも申しましょうか、気長に暮らすと佳いことがあるものです。ご案内が遅くなりましたが、明日4日(日)は、吉祥寺駅南口徒歩2分の武蔵野公会堂にて、武蔵野邦楽連盟による、“邦楽春の会”が開催されます。開場は12時半、開演は13時。終演は16時の予定です。古来よりの日本の伝統文化である長唄、箏曲、現代邦楽の演奏をお楽しみ頂けます。入場は無料、お出入りは自由です。ご来場をお待ちしております。明日の演奏会@吉祥寺

  • さなぎの季節

    新年度からの公事、私事に紛れ、旧暦の三月尽(今年は新暦5月19日でした)も瞬く間に過ぎ、迚ても気に懸かっていることも出来ぬまま、今春、最初の幼虫たち10匹君中、最後の一匹が今朝がた青虫になり、三日ほど前に前蛹化した最初の1ぴきが先ほど、無事サナギに脱皮しました。朝9時頃↑↑10時過ぎ。あっという間の早業です。レモンの樹の枝でそのまま蛹化するのが、今季の傾向らしく、↑今朝がた前蛹化したもう一匹。いつもならモグモグと、一心不乱に蚕食する忙しない他の青虫も何となく姿が見えず、陽射しは日中の暑さを予感させるものの、シーンとした檸檬の日曜日のAM風景でした。新しい卵もそろそろ孵化しそうです。さなぎの季節

  • 野辺は緑

    この一週間は諸事につき、写真を撮る心のゆとりとてなかった。越冬さなぎのほぼ総てが、透明な抜け殻となり、ベランダのそこかしこに残されている。やっと環境整理ができる…と安堵に伴う若干の寂寥感が…しかし、責務を果たして空に同じく晴れ晴れとする。昨年収穫したレモンの種から実生の苗が育って、少しずつ寸を伸ばしている葉っぱに、此方を食べられては大変…と、先週まで気をつけてハーブから精製された防虫剤を撒いていたのに、すっかり手薄になっていたところへ、今朝の発見。早くもアゲハチョウのお母さんに新たな命を託された者としては…善処するしかあるまい。孵化したらお隣の鉢の、大きい樹の葉っぱに移住させるとして、さてはて息をつく間も無く、再び生き物の動向に気をめぐらせる季節が到来したのだった。出先の所用が済み、久し振りに日比谷公園を...野辺は緑

  • けさの昆虫

    オードミュゲの爽やかな匂いに誘われ、羽化したばかりなのか、名も知らぬ蠅とおぼしき昆虫が一匹。スズランには毒が有るらしいけれど、大丈夫でしょうか…けさの昆虫

  • 通り雨

    今朝方、一昨日羽化した蝶が悪天で雨宿り三日目の朝を、いのどんと共に迎え、出掛けに様子を伺えば、もう一頭が羽化し、昼過ぎに戻ればもう蛻の殻と思いきや、新たにもう一匹が羽化しており、昼下りの諸事を済ませてベランダを覗けば、また一羽がふらふらしている、https://youtube.com/shorts/jq9-RYtDUdw?feature=sharehttps://youtube.com/shorts/W2YnEPzXOWU?feature=shareもう、今日は何頭見送ることになるのか…とよく分からなくなっているところで、レモンの葉陰から二頭を陽光のもとに見送ると午後三時を過ぎていた。今日はもう羽化ラッシュもお仕舞いであろうと、いのどんのご機嫌を見やり、床のあちこちを確かめて戸締りしようとするところへ、バ...通り雨

  • つゆのひぬま

    このところ一日の最低気温が10℃を超えているので、そろそろ本格的な昆虫たちの季節が到来したのでは…♪気は早やモミジ…(長唄「越後獅子」の一節)ならぬ新緑の、気がせくので今朝も5時半に目が覚めてしまいました。下のほうから釣り鐘が姿を見せ…つまり、鈴蘭が徐々に花開いておりますのに目を止めると、なんと!葉先に朝露がこぼれていて、尚いっそう可憐。〽つゆのひぬまのスズランの…(改作…(;^ω^))文楽で以前はよく通しで上演していた生写朝顔日記の歌、そしてまた、上村松園画伯の深雪の絵を想い出しながら。写真だけは撮って纏める間もないまま、当家では昨日7番目の越冬サナギが巣立っていった模様。(すっきりした脱け殻が、ベランダに遺されておりました)今週の火曜日に三頭ほど羽化したのですが、一頭は何故か翅が伸びず羽化不全に。ロー...つゆのひぬま

  • そは誰人の子なるぞや…

    おはようございます。昨日は清明でした。今日が入学式の皆さまは、おめでとうございます。昨晩早く寝てしまい、ふと、何とはなしの胸騒ぎに目が覚めました朝七時半。スズランの花芽は雨後の筍のよう。毎日どんどん伸びます。ふと網戸側に目をやると、アゲハチョウが強風にあおられハタハタしておりました。こは、如何に…Σ(・ω・ノ)ノ把握しております十数匹の越冬サナギの所在を確かめますと、皆スヤスヤと春眠中。さては、どこかで密かに蛹になって、この春、いち早く無事羽化したか…と思うと感慨深いものです。ちょこちょこ歩むうしろ紐♪さても優しき童べと顔しけじけと打ち眺め♪そは、たれびとの子なるぞや……切禿(きりかむろ:長唄に二種類ある『土蜘/つちぐも』のもう一つの方の曲)の一節。♪月の澄む軒端にかかるササガニの…本日は、旧暦令和五年、...そは誰人の子なるぞや…

  • 5年目の快哉

    令和婚を祝すために探していた鈴蘭の鉢植えの運命を、密かに案じて下さった方はいらっしゃいますでしょうか、↓昨年度末、3月29日(水)のスズラン近影。今年の新芽は何やら恰幅がよいなぁ…と思っておりましたら、三日見ぬ間の四月馬鹿の朝、おや、随分瑞々しく育った…と、写真を撮る間も無く過ごして、昨日4月3日(月)近影↓今年もノボタケで元気に育ちそうだなぁ…と嬉しく思っておりましたが、お水遣りの今朝……‼️何と、花芽らしきものが顔を覗かせておりますょ(*>∀<*)5年目の奇跡でしょうか、よく育ったものであります。無事に花開きますように…【追伸】今季の越冬サナギはお寝坊さんです。5年目の快哉

  • あなたに、似た人

    早や、…あれは三年前♪のこととなりましたが、こちらのブログでもご紹介以来(20/09/27付)、思い掛けなくたくさんの方々にご観覧たまわりました、【アートにエールを!東京プロジェクト】動画の専用サイト(https://cheerforart.jp/)が、今年度末、3月31日をもって閉鎖されることとなりました。申請から制作まで短期間のことで、撮影や演奏の至らぬことなど見返すたび…汗顔の至りでしたが、横山實先生の素晴らしいコレクションをじっくり眺めさせていただける嬉しい機会ともなり、映像の断片を一曲にまとめ上げて素敵に編集して下さった、鈴木翔媛くんにも深く感謝する次第です。ご覧になって下さった皆さまにも、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。さて、実は“長唄絵合せ/リモート編『風流船揃』”の画像の中に、...あなたに、似た人

  • キッズ伝統芸能体験 発表会のお知らせ

    年々、お年とともに気が早くなる染井吉野どのは、なんと今年は新暦の浅野内匠頭の祥月命日に咲いてしまった。風誘う花よりもなほ我はまた春の名残りを如何にとやせん…辞世の句、そして田村右京太夫のお庭先、桜の花びらがはらはらと…忠臣蔵の時代劇映画での人口に膾炙した1シーン。旧暦では如月の二十三夜で、西行法師には廻り合わせがいま一つの令和5年でありました。…なんてことを想い乍ら、このところの日曜日はアーツカウンシル東京主催の、キッズ伝統芸能体験東村山クラスに伺っておりました。昨年11月から、小学2年生から6年生までの受講生の皆さんが一生懸命、はじめての三味線にチャレンジして、ついにいよいよ、来週は発表会です。コロナ禍も一段落して、今年度は広く一般の皆さまもご観覧できる運びとなりました。3月29日水曜日長唄の部夕刻午後...キッズ伝統芸能体験発表会のお知らせ

  • 檸檬樹の下にて

    二月も末から、日中は20℃を超える日があったりして、思い思いの場所で越冬しているサナギたちの動向が気懸りで、植木の手入れをするつもりで枯葉を捥いでいる手がうっかり羽化した蝶の翅を摘まんでしまった夢を見た。こう気候がよいと木の芽も莟も…蛹虫だって気が早い。檸檬の摘果をどうしたものか迷っていたところ、ビアブランカ種の枝に新芽が出てきた。一方のユーレカ種には新芽がない。実を為す重労働に腐心する余り、新葉を育む余力がない為かもしれない。令和5年が明けて怒濤の如き2箇月が往き…明日本番の演奏会が過ぎればもうあと一つ。とても気になっていた、昨シーズンのレモンの種から芽吹いて、寄せ植えになっていたままの苗を、一鉢ごとに独立させん…と植え替えたついでに、令和4年度産の檸檬を収穫することにした。如月の望月が西の地平に沈んだ...檸檬樹の下にて

  • 居待ち

    枝ばかりの木立に吹く風も、春の気配を見せて嬉しい、このところの空の色。西に昨晩からの居待ち月が、顔を残しておりました。旧暦睦月十八日の月が地平に傾きつつある、立春を過ぎた木曜日の朝。おはようございます。居待ち

  • さらば、寅歳。

    武蔵野邦楽合奏団主催の「浮世絵とたのしむ和の音色・舞踊」公演は、大盛況のうちにお開きとなりました。ご来場くださった皆さま、舞台を支えて下さった皆さま、お気にかけて下さった皆さま、総ての方々、廻りあわせの森羅万象に感謝しつつ、まだ残る諸事を顧みつつ…一先ず御礼申し上げます。嬉しい余韻をいだきつつ、週明けに三味線体験授業へ赴きますれば、またうれしいめぐり合わせが。コロナ禍の影響もありましょうか、知らない人が居ると教室へ入ってこられない生徒さんが、廊下で私どもの授業の様子をうかがっているうちに、いつの間にか教室へ入ってきて、一緒に三味線を弾いていたり、聴覚過敏で、日頃はヘッドフォンをつけている生徒さんが、何も着けずに三味線にチャレンジして、我らが家元・杵屋徳衛の、長唄の唄い方、演奏の仕方で奏でた「さくらさくら」...さらば、寅歳。

  • 九代目團十郎の一軸

    いよいよ開催まで二日となりました、“浮世絵とたのしむ和の音色・舞踊”鑑賞会。今回は浮世絵のほかに、横山先生が、このたびの十三代目市川團十郎の襲名を記念しまして、大変めずらしい、市川三升(十代目團十郎)・賛、鳥居忠雅・画の、九代目團十郎の掛け軸を出展して下さいます。まさかり髷、柿色に三升定紋の裃に黒紋付という、瑞々しい色彩も美しい、成田屋の正装の出立ちで、舞台挨拶の絵姿。第二次世界大戦後間もない、1951(昭和26)年の夏に制作されました、謎の一軸。浮世絵探偵・横山先生の緻密な捜査・研究の末、導き出されました浮世絵の謎解き、ぜひ皆さま、ご自身の目でお確かめくださいませ。ご来場お待ちしております。九代目團十郎の一軸

  • from 武蔵野邦楽合奏団 with Love

    あらたまの御壽めでたく申しおさめ候予てよりご案内の"浮世絵とたのしむ和の音色・舞踊"鑑賞会は、武蔵野邦楽合奏団の主催公演でございます。出演者の関係各方面の皆さまの御厚意に寄りまして、インターネット上でもご紹介頂き、嬉しく存じます。浮世絵のコレクションと解説でお馴染みの横山實先生が評議員である関係から、ポーラ文化財団さまがホームページのお知らせに取り上げて下さいました。https://polaculture.weblogs.jp/blog/一方で、肝心の主催者ホームページが休止中で申し訳なく存じます。公演のお切符は、当日分も、カンフェティさまに取扱いをお願いしております。下記QRコードからお申し込み頂けますれば、お近くのセブンイレブン各ご店舗さまより、発券して頂けます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。有難う...from武蔵野邦楽合奏団withLove

  • 團圓

    我が心の糧となるアゲハチョウを育ててくれた檸檬樹が、今季は8つの実を成しました。しかし、8つが8つとも丸い。丸いレモンもレモンのうち。月のこよみでは昨日上弦の半月にて、本日昼頃のぼるのが師走九日の月。未だ壬寅歳にピリオドは打てませぬ。晦日ならぬ新暦の大晦日に。團圓

  • 浮世絵とたのしむ 和の音色・舞踊 【鑑賞会NEWS】

    おはようございます。新暦ではありますが、本日暮れ方は、赤穂浪士が本所松坂町・吉良邸へ討入りました、"忠臣蔵"伝説結実のアニバーサリーの夜でございます。21世紀の今日、生きている私共が古いことに終始しておりますのは、重要無形文化財となりましても、博物館のショーケースの向こうの存在ではなく、脈々と息づいている文化・芸術を、生きて行く皆さまの心の糧として頂きたい、夢があるからであります。IHAVEADREAM…昨日伺った三味線体験授業中、「今日は楽譜は見ません❗️」との先生のお言葉に「ぅわーい‼️」と一部の男子から歓声が上がって、実は学校の音楽の授業が苦手だった私は、我が意を得たり…と心中ニンマリとしておりました。音楽は心の糧、愉しみなくして、なんの人心の栄養となり得ましょう。…そんな魅力を持つのが、日本の伝統...浮世絵とたのしむ和の音色・舞踊【鑑賞会NEWS】

  • 寒月

    おはようございます。朝、西の空に残った満月。別名コールドムーンとかや。2022年最後の満月だそうですが、太陰太陽暦では霜月十五夜の月。令和四年十一月十五日の月でしたので、忠臣蔵の暦日で義士祭を愉しみたい方は、まだまだ、宵の口。極月十四日は、2023年1月5日(木)ですので、少々お待ち下さいませ。茶会をするか、蕎麦屋の二階に集まるかは、お気に召すままに。寒月

  • 夕べほどなく暮れ方の…

    西暦2022年の11月は本日、30日をもって終焉となりますが、ご安心くださいませ。今日は、太陰太陽暦令和四年霜月七日。(明日はまだ師走じゃない…!!)雨が上がれば上弦の月が、暮れ方に南中して、なかぞらに皓々と輝きましょう。と、心の持ちよう一つで浮世離れして、今宵は憂き世のうさを晴らす、ゆらぎ成分が汪溢する邦楽の演奏会へお越しくださいませ。第12回伝統長唄伝承の会日本橋公会堂(日本橋劇場)日本橋蛎殻町1-31-1日本橋区民センター4階暮れ方の午後5時開演入場料は自由席にて3000円番組二世杵屋勝三郎作曲時雨西行/しぐれさいぎょう三世杵屋六四郎作曲阿国歌舞伎/おくにかぶき三世杵屋勘五郎作曲橋弁慶/はしべんけい何と有難いことに、当代の勘五郎師のご指導を賜りまして、橋弁慶に徳桜も出演いたします。この度は、能と長唄...夕べほどなく暮れ方の…

  • 西池袋おけいこ案内

    能楽の初体験をなさった方々から興味深い感想を伺いました。「笛の音程がはずれているのに、とても心に残って、また聞きたくなってしまった」「鼓:つづみの音程が見る舞台ごとに違うのは何故か、とても不思議に思っていました…」それで、逆にビックリ、私の目からウロコが落ちました。そうか、西洋音楽の素養しかない方は、日本の伝統音楽を鑑賞するのに、洋楽の物差しでもって鑑賞なさるのだ!日本の学校教育では、私が小学生だった昭和40年代から既にドレミファ…の、12音階で奏でる音楽しか教えていませんが、20世紀の子どもたちの身の回りには日本の伝統、古典から根差した文化が多数、空気のように存在しておりました。21世紀の現在、純正、まじりっけなしの洋楽体験しかない環境で育った方々はそのように感じてしまうのか、と、ガリレオ・ガリレイが天...西池袋おけいこ案内

  • 橘はじめて黄なるか

    さて、令和4年の今季最後のふたりの幼虫たちは、立冬を過ぎても猶、20℃ほどもある気温に気をよくしてのびのびと育っていたのでありますが、西の空に寝待月が残る朝、レモンの葉っぱに佇む一匹を残し、夕刻いそいそと蛹化へと逍遥の旅へ。残された最後のひとりは食いよいよ逞しく、火曜日、そぼ降る雨に濡れながら、枝上にじっと忍び居り、翌日は晴天となりましたのが、月暦廿二夜の残んの月を西に見て、観察者は暫し水辺へ。水面の煌めきを眼に残して人界の徘徊から戻ると、夕暮れの檸檬樹はもぬけの殻、無人となって虚しく空に枝を伸ばしておりました。無事にどこかで蛹になって、来春青空へ飛び立てますように…翌朝。君去りしのちの傷心を、トンボが慰めに来てくれました。今年のレモンも佳い檸檬。橘はじめて黄なるか

  • 凍蝶

    【いてちょう】シジミチョウには成体で越冬する種類もあるという。10月末に急に寒くなったある日の夕方、ベランダの手摺に安らいでいる蝶を発見、驚かさないよう、そっと写真を撮った。翌日、そんなことは忘れて、植木に水を遣りにベランダに出たら、同じ場所で昨日の蜆蝶が端正な姿で居残っていた。ぁぁぁ…チョウの墓場?と我がベランダの運命に気が差したが、いのどんシジミは、翅を広げて寛いでいたのでホッとした。私の心の動揺が移ったのか、程なくしてハタハタと飛び立って行ったのが、晩秋のよく晴れた青空であった。インターネットで見掛けたシジミチョウの図鑑に、命名の原因となる蜆貝の写真を載せていたものがあり、烏の濡れ羽色の漆黒の貝殻の外見と比較して、似てる???とのコメント。…あのね、シジミをお付けの実にしてご覧なさいな、口を開けた貝...凍蝶

  • 十日夜を過ぎて

    おはようございます。昨晩は十日夜(とおかんや)でありました。旧暦の10月10日の夜で、豊穣なる秋の収穫をお祝いする祀りの日です。"その日に山に帰る、田の神を送るために、餅を供える"と、ものの本にありましたから、季節の替り目が実感できる頃だったのでしょう。明けて今朝、今季最後の鯨ちゃん2匹のうち最後の一匹がミドリくんに変身しておりました。ご参考(?)までに昨日の様子↓今年は6月から9月まで、おおよそ4か月も気温30度の日が続き、今日も20度近くまであるようですから、昆虫たちには有難い気候。11月2日火曜日(十日夜イブ)に先に緑ちゃんに脱皮したミドリくん。冬が来る前に、早う蛹になってたもぅ…十日夜を過ぎて

  • 和の音色ライブのご案内

    早いもので9月ももうお彼岸です。今週末、25日(日)、吉祥寺で邦楽大会がございます。箏曲、尺八、長唄など十二番をお愉しみ頂けます。木戸は無料で、お出入り自由ですが、感染症対策へのご協力をお願いしております。当杵徳社中は、古典長唄「島千歳(しまのせんざい)」、同じく「蜘蛛拍子舞(くものひょうしまい)」をお囃子入りの演奏で出演いたします。我がFAVORITEな名曲、蜘蛛拍子舞の内容に関しましては愚ブログ2015年3月23日付「それは蜘蛛拍子舞から始まった」をご参照頂けましたら幸甚です。近年、大和屋が舞台でかける歌舞伎の一番組は現代のご見物衆を慮って、説明が多いような気が致します。私が昔観た歌舞伎舞踊の蜘蛛拍子舞は、もっと官能的でスピーディで、二十歳前後の婦女子のハートを理屈抜きにむんずと捕まえた、圧倒的面白さ...和の音色ライブのご案内

  • 右脳のヒト

    気がつけば月暦の七月が往き、夏休みのなんと短いことよ…と、蝉の声がタイムスリップの鍵となって、少年時代に気持ちが還っている私は、サマータイムを謳歌している世上の皆さまに同情するのですが…今日はなんとまぁ!江戸シンパには忘れ得ぬアニバーサリー、正しく八朔、旧暦令和四年八月一日です。…と、このところの塞ぎの虫(ふさぎのむし)をつらつら綴ってみるか…と重いパソコンの蓋を開けたのに、何やら書いているうちに愉しい気持ちが蘇ってしまいました。何でしょう、私の根っからの朗らかな性根は、昭和という時代が育んでくれた、明日に対する希望、という漠然とした安心から由来するものに違いありません。昨今、日本人で自らの命を殺めてしまう方が年単位で4万人、国際的基準の統計の試算法によれば10万人ぐらいに換算されてしまうらしいのですが…...右脳のヒト

  • ひとり。

    今日の予想最高気温36℃…を知り、東京脱出を決行したのが8月16日㈫午前9時半。エレベータホールに至る、武蔵野の雑木林に面した非常階段踊り場に、何を思うか一人佇むカマキリ先生。とても毅然とした立派なうしろ姿。21世紀の昆虫界の行く末を想い、外界を見下ろしておられるのか…蟷螂の斧とはこれ如何に。背なで泣いてる唐獅子牡丹…的哲学的趣きに心を打たれる。土用過ぎの海は鬼門である。都下西域に住む者は自然と甲州路に足が向かう。青春18きっぷを準備する気の利いた計画性もないので、小淵沢止まりの中央本線から、イルフ児童館のある武井武雄ゆかりの岡谷を目指すつもりが、1時間待ちの前に発車する臨時の小海線中込行きに乗り込む。外気温21℃!おお、いいじゃないですか。わが旅の目的は達成されたり。佐久平の開けように驚き、小諸なる古城...ひとり。

  • こどもの神様

    三つ子の魂百まで…こどもの頃、目にしたものは生涯忘れられないものである。記憶の何処かに潜んでいて、上層に様々なものが沈澱して、すっかり忘れていたのに、ある時ひょっと眼にしたものが、あっ、これを私は知っている、昔とても好きなものであったはずだ…と、自分でも吃驚することがある。二つになるかならないかの子ども時代、私は絵本を読んでもらうのが迚も好きだったらしい。母の話では、目の前に絵本を拡げて読んでいて、ふと、分かっているのかしら…と思って読むのをやめると、まだ口がよく利けないのに、本を手で示して続きをうながしたそうである。熊田千佳慕先生の『おやゆびひめ』は、私のとても大好きな絵本だった。熊田ちかぼ先生は、ファーブルに影響を受けた昆虫の画家としても有名である。たまたま数年前、「バースディカード」という、1970...こどもの神様

  • しもきた三味線プレイス

    コロナ禍も3年越しとなりました。7月の歌舞伎座が公演中止とは…お見舞い申し上げます。平成の歌舞伎座では、7月というと、先代澤瀉屋の独壇場(どくだんじょう)でありました。澤瀉屋の芝居という家業に対する気高い精神性…お客様に対するサービス精神には、贔屓でない者も胸が熱くなる思いでした。何より、三階席の、天井桟敷の人々っぽい我々は、狂熱のライブを絶賛したものです。さて、日本列島に生まれ育った者のDNAを慰めるために、日本の伝統音楽は生まれ、洗練され、発展して参りました。世情が不穏で人心が掻き乱される日常となった不幸な時代、古典に携わる者として皆さまのお心を安らげ、なごみへとお誘いするのがつとめでは…と気持ちを新たに、新しい考え方の下、三味線スタジオを設けることといたしました。三味線は、奏でる者の体が楽器の一部で...しもきた三味線プレイス

  • 波はみどり

    一昨日より初伏に入りて蒸す。海の日なり。旧友のご実家よりの賜りものの八朔の、最後の一つを食せし折り、ふと、種を蒔いてみむとす。ふた月ほどがそのままに過ぎ、やはり無理かと忘れたころ発芽し、双葉が三段目ほどに出ずる。ユリ科の雑草の一種と思われるひと本の植物の間近に生え、先に生ふるものは立ち枯れてきたが実を結んだ。アールヌーボー調の曲線が、何とも言えぬ風情を醸す、不思議な景色である。芳年の新形三十六怪撰の何か…にも似ている。12、13、14日と、連日羽化続きの庭に静寂が訪れたものの、未だ檸檬樹に居残っているサナギ二頭が気になるので、朝七時半、様子を見に行く。と、一頭のさなぎの周りに俄かに細かい羽虫が群がりて騒がしい。余りに恐ろしい風景なので、霧吹きで水攻めを試みるも、どうやらサナギの中から湧いて出てくる。…アオ...波はみどり

  • 罠~トラップのある家

    2022年7月1日6:45ベランダの片隅で無事に羽化し、大空へ飛び立つものがあれば、また、支障ありて一隅を仮りの寓とするものあり。酷暑はただ自然のままでありたいとするものから多くのものを奪う。炎熱の床に彼の体から剥がれた翅の一部が残り、本体を恋しがるのか、しきりと蠢くを恐る恐る眺めてみると…彼もまたこの世界の片隅でいのちをつなぐものであった。2022年7月2日7:22半夏生。早朝から既に熱い。暑いのではなく熱い。青虫も物憂げに枝上で吐息をもらす。レモンの真白き花は香華。右手ベランダ床に目をやり、愕然とする。昨日とまったく同じところに、羽化直後と思われるアゲハチョウが居る。しかし彼もまた、太功記十段目の登場人物のように、既に満身創痍の態である。翅全体が白茶けて、右後翅の尾翼が既に欠落していた。こは如何なるこ...罠~トラップのある家

  • 花がるた 七月 萩・桔梗

    今年はどうしたことでしょう、新暦の六月下旬から摂氏三十度超えの日が続き、二年続いて継続中のコロナ禍下も小康状態とて、少しづつ仕事を復活させる機運が街なかに広まりつつありますが、大好きな薄物を身に纏う喜びも半減いたします。生地を見ているだけで、その透け感にうっとりしてしまう明石縮は、雨に遭うとチリチリチリ…としぼんでしまうので、こんな急変する天候の時はもってのほか、十年ちょっと前、知り合いの呉服屋さんがお店をたたんでしまった折、一級河川…東京に於いては多摩川と荒川なんですが…一級化繊でもあるポリエステルの絽小紋を何着か仕立てて頂いたことがありまして、これが夏場は非常に重宝致します。しかし、この暑さはもう、如何ともし難く…。久しぶりに小千谷縮を取り出してみました。同じ“ちぢみ”でも、明石は正絹、長唄・越後獅子...花がるた七月萩・桔梗

  • キヘンのひと、リターンズ。

    2022年6月30日節電に協力するために、午前中に出掛ける。最寄り駅までの吉祥寺通りは、どうした方針か何年か前、立派な欅の街路樹の枝を払って、棒状の木立に直接、葉っぱが枝葉末節的に芽吹いた小枝が申し訳程度についているばかりで、日陰もなく涼しくもなく、炎天下にさらされた、これまた炎熱地獄に拍車をかけるイマイチ趣味の悪い三色タイル張りの舗道を歩くのも気鬱。生死にかかわるので遠慮して、文化園内を突っ切って井の頭公園駅まで歩く。さぞかし快適、涼しかろうと思いきや、あにはからんや…妹でも弟でもハカランヤ。これまた、一見オシャレ風な煉瓦様タイルを敷き詰めた歩道が整備されているお蔭で、チイとも涼しくありゃしない。公園の木々も整備されてしまったようで、春ごとに美しさを誇った桜樹の枝ぶりも今いづこ、灌木も疎らである。手の込...キヘンのひと、リターンズ。

  • 水無月朔日のdeparture

    そいえば、私が二十歳の頃、愛と青春の旅立ち…という洋画がありまして。屈折したつもりのオタクっぽい青春を送っていた…つもりの、マイナー擁護派の私としては、恥ずかしくて見に行けないタイトルの映画ではありました。今、原題は何だったのかと、日記を書くにあたり標題に迷っていたので調べましたところ……20世紀の映画会社(固有名詞ではなく)の方々の翻訳センスの素晴らしいこと!!本日のお題は、譬えますれば「アゲハくんの冒険~愛ある旅立ち」…かな?はて扨て、過ごしやすい早朝の気温(されど6時半の気温27℃)も、余談から入りますと、肝心の話題に入らずじまいでパソコン前から撤退を余儀なくされる、頭脳に疲弊が生じない適温を超える室温となります。つい一時間ほど前のこと…いつものように、ベランダの檸檬樹にお水を遣りに参りましたところ...水無月朔日のdeparture

  • 存在証明

    遅かりし由良之助…さすがに早暁に起きて三日続けてアゲハの羽化につき合うのは草臥れるもので、さてこそ、当家のクロアゲハは気が利いてござる。いつの間にやら蛹化して、消息を知らしめて家内を安心させ、また人知れず羽化して去っていったのである…と、何となくホッとしたのが、早朝の6時26分。朝というには強すぎる陽射しの中で、レモンアゲハの鯨組が一匹、みどり君に脱皮している。この暑さでは檸檬たちの水加減が心配である。そうして、外気温36℃という暑さに耐えかねて、二時間おきぐらいにベランダへ様子を見に行くたび、まだ体長15ミリ程のちびっこの鯨組が一頭また一頭と脱皮し、美登利ちゃんへと変貌しているのだった。〽葉っぱの乱れを水差しで引き揚げながらアゲハ算…(「四季山姥」畳算・改)本日、午前中だけで4頭の幼虫が終齢のミドリちゃ...存在証明

  • マカオン・ノワールの4時間

    〽木陰にしばしやすらひぬ…胡蝶に心和らぐのは荒獅子ばかりではなく、人間とても同じこと。二頭を間近に見て、クロアゲハが羽化して青空に飛び立つまで、ほぼ4時間を要するらしいことが分かりました。普通の黄地に黒のアゲハチョウは2時間程度だったように記憶しておりましたから、これは意外なことでした。体が大きい分、翅を動かす筋肉(?)が調うまで時間が要るのでしょうか。ともあれ、彼らの今生の仮の宿…旅籠のあるじとしては出立を見送ることが出来て大いに気が済んだことでした。そんなわけで、令和4年6月25日朝7時56分。それから1日が過ぎまして、鎌倉の世なれば、虎が雨が降る月暦五月廿八日の、令和四年の日も暮れて…さて、その次に控えしは…マカオン・ノワールの4時間

  • まだ宵ながら明けぬるを…(昧爽の攻防)

    よほど外界が恋しかったのでありましょう。本日の日の出は4時27分。朝陽とともに微笑む姿を…と思っておりましたが、既に。夜明け前から殻を破って羽化した模様。遅参いたしました。が、スマフォのカメラも限界ながら…見えますか…強風と撮影者に驚き、お隣との区分壁峡谷に、逃れて暫しやすらいぬ。パラディソ・レモンは事も無く…ノワール三号も大人しく控えております。そして新たなるレモンアゲハ鯨組と、昨日出来立ての緑のさなぎちゃん。清原くんと名を替えし摺墨二番は…現身の無事を暁に祈る、残されしもの。廿六夜の月宿りたる雲一つ見えませで、今日も暑くなりそうな…まだ宵ながら明けぬるを…(昧爽の攻防)

  • 曜変

    仲夏の胡蝶の夢を見てしより、ここ数日、早朝五時に目が覚めてしまいます。鯨組とは別に、一人残ったレモンアゲハの緑くんもそろそろ旅立つ風情。昼ごろ様子を窺うと、埴生の宿たるレモンの植木鉢から転がり落ち、テーブルの三隅をうろうろしておりました。そいえばユーレカ種を乗せたこっちの植木台は配置換えをして以来、手摺りから孤立しているので旅立ちにくいかもしれない…と、橋を架ける女たる私が(古代マヤ暦占いに拠る)お隣のビアフランカ種の植木台へ板を渡したところ、得たりや応と進み出で…夕方四時ごろ再び見ると、その場所にはおらず、どうしたものかと見渡せば、ずいぶん離れたところで既に蛹になっておりました。異例の変わり身の早さ…(四時間のうちに前蛹化してさらに蛹化したものと思われ…)30℃超えという気温が拍車をかけるのか…しかし何...曜変

  • 佇むひと

    〽ベランダの隙より見ればサッシの下に色殊なるサナギの今を盛りと見えて候立ち寄り眺めばやと思ひ候…夕暮れ時はこのような塩梅でしたが、夜更けて夜目に透かして見れば、墨のように黒くなっておりました。翌朝、ふと目が覚めましたのが寅の刻。〽檸檬に戯れ匂ひに交はる胡蝶の精魂現れたり〽詩歌管絃の御遊を催し眺め絶えせぬ花の色一時間ほどの間にだんだん翅が伸びて参ります。二期作(?)次世代のレモンアゲハの緑くんも、未だ夢のなかから応援中。二時間ほども経ったでしょうか、〝わが翼をご覧ぜよ″〽草木の花に心を染め梢に遊ぶ身にしあれども深き望みのある身なりそれから更に一時間ほど、前脚で頭をこすっているかと思いましたら、体液を排泄し、やにわに羽ばたき始めました。そしてついに、明るい向こうへ…〽人目稀なる木の下に宿らせ給へ我が姿夢に必ず...佇むひと

  • 曇天のレモン横丁

    ♪葉脈一本両手に抱いて罷り出たのもアゲハの食生…梅雨らしい薄どんよりとしたお天気の朝は、昭和歌謡の替え歌が頭の中を経廻るのが常でして…旺盛な食欲の幼虫たちを見ていると、現代日本が青春時代だった昭和中期の愉しい雰囲気が思い起こされ、心がなごみます。4つ目の朝に3つ目のサナギを見つけたり、黒揚羽の八蟲士が旅立った後に新たなる種族、レモンアゲハが「11人いる、再び!」モードで檸檬樹の巷を席巻したり。本業を纏めるいとまもなく、伸び伸びと育ちゆく小さき者どもの日常を、取り急ぎ近況まで…「レモンの食卓」↓クロアゲハの8頭のうち、三匹の侍がベランダにて南面の武士となりつつあり…(お耳がカッツェさまに似ている〉ガッチャマン世代の第一印象)(角度によってはお腹周りがムーミン・トロールを髣髴とさせます)さて、幾度目かのベラン...曇天のレモン横丁

  • …そして、三つ目の朝が来た。

    …二つ目の朝は雨でしたが、曇天の今朝は雨が上がっておりました。さて、早々に余談。テレビドラマ版『子連れ狼』のテーマ曲は、圧倒的に橋幸夫の第3シリーズが有名ですが、私はバーブ佐竹の「ててご橋」がメチャクチャ好きで、よくくちずさんでおります。水原弘のカムイ外伝「忍びのテーマ」も物凄く好きですけれども。低温…もとい低音の魅力。このままこんなところで蛹になっちゃうのかなぁ…と思っておりました予定調和。朝いちばんに怖々…恐る恐る…いや寧ろ嬉々としてベランダの様子を窺うと…見れば見るほど不思議です。昨日はこんな感じだったのが☟どうしてこうなるのか、真実のところをお知りになりたい方は、ちょうど3年前の夏、揚羽蝶の前蛹からサナギに変態する動画を撮影してありましたので、こちらのYouTubeチャンネルをご覧くださいませ。何...…そして、三つ目の朝が来た。

  • 柚子坊に…

    柚子坊(ゆずぼう)に干場とられてもらい竿武蔵野の十久女二日目朝の様子↓柚子坊に…

  • 伽羅当世檸 ベランダ床下

    その疑念がわが胸に頭をもたげたのは、実を言えば先月のことであった。檸檬の樹に無邪気に寄宿しているのは、どうやら常のアゲハじゃない。葉の影に隠れた彼の存在を知らなかった或る朝、根方に水を遣ろうとした手が小枝にぶつかって、大きく揺れた。突然、カーマインレッドの筋がひらひらっと閃いたのだ。…??レモン花の雄蕊の散り残りかしらん、サフランじゃあるまいし、ハテ扨てこんな色だっけ???しかも今季、ビアフランカ種の二株には、花はほとんど付かなかった。いぶかしく思ってよくよく見たら、下葉の陰に緑くんが居て、赤い二本の角をチロチロさせていた。ぎょっとして言葉を失ったものの、いや待て、レモンアゲハ(ナミアゲハの当家の呼称)のツノは、こんなじゃない、綺麗なレモンイエローだったはず…(目撃者は語る)急いで証拠写真を撮ろうと、室内...伽羅当世檸ベランダ床下

  • 11人いる?

    五人囃子どころか、地謡座ができるのではないか、と気がついたのがこの木曜日、6月2日の朝のことで、緑の葉海に晦まされ厳密に数えたことも無かったのだが、あれれ、何となくここらへんが薄くなってきたような…と、彼らの旺盛な食欲に応えるべく気前よくその身を投げ出す緑の黒髪ならぬ檸檬樹の茂みを矯めつ眇めつ、心を落ち着けて緑の幼虫をよくよく数えてみたら、昨日まで緑野の七人と思っていたのが、八虫士いたのだった。加えることの、黒白の鯨団が三匹…しめて、11人いる……ではないか。嬉しくなって、今日もいるかしらと、ベランダを覗いたところが、緑のしゃちほこ、ちりれんげの形で寝ていたツワモノが居りました。自由だなぁ…ところで、つい4日前の5月31日に、「今日は土方歳三の誕生日」という文言がインターネット内に流れてきて、刑事コロンボ...11人いる?

  • 日本の調べ~演奏会ニュース

    来る次週末6月5日の日曜日、小田急線・成城学園駅北口ほど近い、成城ホールにて、邦楽演奏会があります。主催は世田谷邦楽研究会、恒例の年に一度の三味線を主体にした和楽器によるライブです。長引くコロナ禍のため、今年度も開催が危ぶまれておりましたが、区教育委員会関係各方面の皆さまのご尽力によりまして、開催にこぎつけました。楽屋用施設がコロナワクチン予防接種会場となる非常時でございまして、参加社中も規模縮小の演奏会となっております。今回は、長唄、小唄、新内、筝曲などがお聴き頂けます。入場は無料、お出入りは自由ですが、新型コロナウイルス感染防止対策を講じて上演いたします。座席は一つ置きの雁木…千鳥…市松模様状に、ご利用下さいませ。また、マスク着用にてのご入場をお願いしております。開演は12時半、終演は16時半ごろを予定して...日本の調べ~演奏会ニュース

  • 松庵梅囃子

    朝から篠突く雨に襲われた武蔵野一帯も、昼過ぎには雲間から薄日が射してきた。三度目の宿替えをして檸檬樹の上層へ巣を張り直した一昨日は、洋々とベランダ空間を睥睨していた蜘蛛が、今朝から姿を消し、些か意気消沈していたところ、気を変えてこのところの案件であった着物の手入れものを出しに、中野行きのバスに乗ったのが八つ半。五日市街道から西荻窪の商店街へ入る路地のほど近く、長年お世話になっているK染み抜き店さんへ、コロナ禍で久しぶりに伺うため、お電話したところ、御主人がこの彼岸に急逝されたと聞き絶句する。抗癌剤治療から帰宅しても伏臥せず仕事机に向かっていたというおかみさんのお話を伺い、職人気質を偲びお線香を上げさせてもらった。生前いつも坐するお姿をお見掛けした作業台の後ろ壁が白い。そのまま日常の営みに戻る気にもなれず、...松庵梅囃子

  • 風よ、伝えて。

    演奏会のある週末を挟んで、数日ぶりに稽古場を開けると、新顔の蘭が独りでほころんでおりました。彼(彼女?)は一昨年の暮れ、令和3年のお年賀に頂いた2年目の株でして、当家に居着いて初めての開花となったわけで、胡蝶蘭の他のメンバーの花時を三月も遅れてやって来た晩生(おくて)ながら、可憐な佇まいが奥床しく。時計の秒針に懸念することなく、在処を忘れていた心の落ち付かせどころを、ようやっと暫し取り戻せて、緑の風と戯れんと、朝、レモン樹の葉陰をしけじけと眺めおりますれば…影しか見えぬ外に張り出した葉上の幼虫二人、随分豊かに育って、今日も仲良く身を寄せているのが見えましたが、重みのため葉が下がっております。折から、天気晴朗にして風強し……葉先にいたちびちゃんは手前の枝に避難する機転もあろうに、年長(日長?)の両人がそのまま危う...風よ、伝えて。

  • 居ぬようで ゐるようで

    三日見ぬ間のレモンの葉っぱかな。越冬サナギが飛び立った後の、空の巣症候群を埋めるかの如く、同日気早なクモが姿を顕し…実を言えばやっと生き物からの束縛を逃れて清々していたところでもあったのですが、恐ろしい現代社会の闘争の巷の噂話から暫し、心慰められるのも事実。葉陰に幼虫と思われる黒い筋を見つけたのが、5月15日のこと。写真は撮ったものの纏めるいとまとて無く、あたふたと一週間が過ぎました。月曜日に焦げ茶の幼体を4つほど見つけ、さらに翌日もう一匹極々生まれたてのものも見つけ、現在、我がベランダ栽培のレモン樹には、四天王から五人囃子ほどの遊興チームが育ちつつあるのである、と昨日まで思っていたものの…なんてカッコイイ、小白金蜘蛛。と、今日も今日とて初夏らしい鮮やかな日差しに、外まで繁りゆく新緑を目を細めて眺めておりました...居ぬようでゐるようで

  • 卯月十八日

    卯月八日はとうに過ぎ、稽古帰りの居待ち月。待っていたとは有難い。月暦、令和四年四月十八日四つ亥の刻、東の空に。卯月十八日

  • そのとき折しも鏑木清方が…(和楽器ライブのお知らせ)

    数年前まで黄金週間最終日の催し物としてお知らせしていた、武蔵野邦楽連盟による邦楽演奏会でしたが、昨年度より風薫る5月下旬の開催となりまして、今年は来る5月22日(日)、吉祥寺駅南口ほど近くの武蔵野公会堂、パープルホールで行います。和楽器である三味線が活躍する、伝統長唄や現代曲、筝曲や尺八など、全16番を予定しております。開演は12時、終演は17時ごろ。入場無料、お出入り自由ですが、感染症対策として入場時の検温・消毒などご協力を賜りたく、(ドレスコードはマスク着用にて)どうぞよろしくお願い申し上げます。当杵徳社中は、長唄「竹生島」、同じく「五色絲」、そして杵屋徳衛作曲の三味線と十七絃による現代曲「吉祥天女伝説/上の巻・白羽の矢」を出曲いたします。長唄「五色絲(ごしきのいと)」は、江戸時代の嘉永五年=西暦1852年...そのとき折しも鏑木清方が…(和楽器ライブのお知らせ)

  • 雨やどり

    居残り組の"いのどん"が羽化したのは、雨の日の月曜日、未だ1970年代を棄てられない庵主は決まってカーペンターズの歌を口ずさむ。空く蛹残るサナギも開くサナギ花鳥風月に思い致せば、誰でもが俳人だったり歌人だったり。オリジナリティが生じるほど修業をしていない日曜歌人は、いつかどこかで聞いたような句のもじりで茶を濁す。一頭だけ残った蝶はチョウではなくて半だわね、などと昔聞いた古しえ人の噂話を想い出しつつ。瑞々しい緑色の外殻がハトロン紙状に変わって三日、愈々油紙ほどに透けてきて今日か明日かと待っていたが、四段目の由良さまか、中々姿を顕さない。庵主は塩谷判官になったり、寝所に忍び込む五右衛門のようにサナギの呼吸を計ってみたり…揚羽蝶のうしろの百太郎であったかと思えるほどに、その数日、サナギの背後の空間に潜んでいた。その後...雨やどり

  • たそ、かれ…

    黄昏時に至るにはまだ早きこと十時間余り。急速なる初夏の陽を浴びる、檸檬樹見舞いをせむ…とお水を遣り、さて、今日も稽古に勤しまねばと、明るきベランダより室内を振り返ったときのことでございます。ガラス戸と網戸の隙間で、ごにょごにょアタフタと蠢く、見慣れた模様の虫が一匹。はぁあ??さてはお主はアゲハよな…こんなところで羽化しちゃったとは、吃驚するなぁ、もう。羽が曲がったら大変、と、慌ててガタピシ!と網戸を外しました。一瞬、はて、まだと思っていた最後の一頭がこんなところまで出張って羽化ちゃったのかしらん、いやいや、ワープじゃあるまいし、やだねぇ、子どもの頃SFチックに育っちゃった昭和の子は…と、今朝様子伺いしたばかりの、お隣との国境近い柱の陰の越冬サナギを確認。まだ大人しく眠っておられます。どうやら、昨秋、終齢幼虫にて...たそ、かれ…

  • 待っていたお嬢~青空のソーシャルディスタンス

    三月の月ずえに突然暖かい日和が訪れ、慌しく前年度中に卒業していった揚羽蝶のゆくえを案じていた、春疾風に凍える新年度早々も、四月馬鹿、旧暦上巳、花まつり、ことごとくが朧夜のうちに過ぎ…ベランダの先に初夏が立っていた。しきりと囀る鶯が闇夜を押し開き、早朝六時にそっと居残り組を覗きみると…真っすぐな光線が陽気の烈しさを呼び、三時間後の九時。急激に羽化の支度が進むサナギに心を残して、日曜日の朝。私は稽古に出掛けた。かのものは今シーズン、我が家で一番最初の越冬サナギであった。ある九月の朝、棲み慣れたレモンの樹に別れを告げ、彼は旅立った。ゼブラ模様の弟妹を残し、まだ青かった檸檬の実が彼を見送った。いったいこの子はサナギになる気があるのかしら…想定外の場所でサンダルの下敷きにするを恐れた庵主は、彼の行方を見守った。しかし彼は...待っていたお嬢~青空のソーシャルディスタンス

  • 檸檬ちゃんはおこりん坊

    残された、名前は未だ無い三頭の越冬サナギの様子が気になります。ベランダの三株の檸檬樹のうち、今年は背の低いユーレカ種の枝に、家紋に例えれば四ツ目結い状に、四つのレモンが実りました。彼らが、陰になり日向になり…と言うよりも、正に陰をつくって陽射しを調整し、風雨から足下のサナギを護っていたのです。そんな心意気に打たれ(単にアゲハチョウが彼を寄り親と定めたわけではありますが)、私も、レモンが爽やかな檸檬色に耀く様子を眺めつつも、筍が竹の子であるのを想い、立派な竹に育つまで、自分の家のひさしを削って見守る、そんな良寛さまの心持ちで、レモンの収穫はこの子が無事羽化するまで待っていようと、9月下旬からの半年余り、両者のすこやかなる成長を願っていたのでした。ヒデヨリ君が旅立った朝の朗らかなお天気が、どうしたことでしょう、午後...檸檬ちゃんはおこりん坊

  • 鶯はYABUにいる

    気持ちよく晴れた月曜日の朝、気の早いお拾いが旅支度をしているとは露とも知らず、東京の桜が満開になったとの報を得た私は自分の目で確かめに行った。とは言え、実のところ花見時の井の頭公園に足を踏み入れるのは気が進まない。人混みはとにかく苦手である。早朝で人通りも疎らな吉祥寺通り、折からのホーホケキョ…の声にいざなわれて、井の頭動物園の前庭である御殿山の雑木林を廻る。声はすれども姿が見えぬ、艶やかな啼き声を耳で追うと、そこは灌木や下草の生い茂った藪である。♪藪のウグイス気ままに啼いて羨ましさの庭の梅…長唄「五郎」二上り冒頭。今年はもう桜。ケキョケキョケキョ…と、おっとりとした間合いの、谷渡りの稽古に余念のない彼らの声、朝陽が心地よい。曾我兄弟の弟、江戸歌舞伎に欠かせない荒事キャラ・五郎時致(ときむね)が、父の仇討ちを胸...鶯はYABUにいる

  • ヒデヨリ、旅立つ。

    さて、予てより当家には4頭の越冬サナギが居り、何故か1頭にだけ名前が付いていた。その名を"御拾い"といった。なぜなら、彼は終齢幼虫の時、蛹化するための最適の場所を求め、ベランダの手すりを這い回っていたが、何を勘違いしたのか、外壁の1尺近い厚みがある銀色の金属カバーの上を、外界へ向かって嬉々として直進し、そのまま真っ逆さまに9階から落ちた。まさか落ちはすまい、しかし、あの元気なスピードのまま進めば落っこちるのではなかろうか…などと思って彼の挙動を見守っていた私は、愕然として、とはいえ厳然とした自然のものの成り行きを、悄然として受け入れる覚悟はできていたので、諸行無常、南無阿弥陀仏…と唱える雲水のように、偶々室内にいた家人にそう告げた。淡々として諦めのよい私とは違い、情の厚い家人は、事の顛末を聞くと、突然玄関を飛び...ヒデヨリ、旅立つ。

  • 風雅の虎の巻

    今朝もまた、ウグイスの啼き声で6時ごろ目が覚めた。今年、令和四年は、東都の乾(いぬい…正しくは酉とりの方角だと思うが、巽が捩れない…ので敢えて…)の我が庵、お隣の文化園では近年リスぞ棲む…武蔵野市の一角にては、月暦二月十二日で新暦3月14日(日付だけ偲べば1701元禄14年にては江戸城松の御廊下内にて刃傷事件の在った日、平成の世ではホワイトデーなる名称が盛んだった日付)に、初啼きを観測致しまして、以来、隣国の戦火である人災の風説、地震や3月のライオンらしき気紛れなお天気と強風などの天変地異に心悩ませる日々を、朝方の一時だけでも、忘れるよすがとなっていた。それでふと、あれは何度目の寅年であったか、年賀状に歌舞伎、菊畑での牛若丸の拵えの似顔絵を極彩色で描き、版下にしてプリントごっこで印刷し、お送りした知人から「趣味...風雅の虎の巻

  • 春は夢

    2022年3月18日は、令和四年二月十六日で月齢15.4。望月なのだった。しかも彼岸の入りである。花のもとにて春死なむその如月の望月のころ…と歌った、何という有言実行のお方でありましょう、皆さま御存知よりの西行法師が亡くなったのは、文治六年(1190)二月十六日。今年と同じく、望月が十五日ではなく、十六日だった年でありました。やぁ、殊更に今年は、西行法師を追慕しなくてはなりませんなぁ…などと思っていたが、何とぎょっとすまいことか、先月より些か季節外れとも思えるが、お稽古の進捗状況により外してはいけない曲の順番というものがあり、何故かお弟子さんのうちお二方が「藤娘」に進んでいた。〽️津の国の難波の春は夢なれや…ぉぉ、何としたこと、藤娘の置唄は西行の「津の国のなにはの春はゆめなれや葦の枯れ葉に風わたるなり」の転用で...春は夢

  • 那須野(三国妖狐物語 下の巻)

    那須野の殺生石(子どもの頃から“さっしょうせき”と呼ぶと思い込んでおりました)が、なんと先日、真っ二つに割れたという。怖いことに、下野新聞の写真から伺うに、何ものかを内在させていたかの如く、石の中は空洞であった。偶々、そのニュースを聞いたのが、昨夕刻、お弟子さんのお稽古で「那須野」の♪のうあさましや幾万代(いくよろづよ)のとしを重ねて功を積み…辺りを、さらっての帰りだったので、とてもビックリした。栃木県のお隣の海に隣接した北関東はI県で生まれ10代まで育った私には、下野の国(しもつけのくに)那須野(なすの)は、幼少よりお馴染みの場所であった。日光への日帰り遠足は屡々行われた学校での年中行事であったし、足を延ばせば那須・塩原は我が裏庭であった。特に、母方の曽祖父は那須野の歌詞にも出てくる“大田原”の素封家の出身で...那須野(三国妖狐物語下の巻)

  • お正月の朝のこと

    今みたび目(個人的印象)の、コロナ禍波襲来警報中。新暦のバタバタで、旧来のお正月らしい伸びやかな新春を寿ぐ心持ちを長らく失っておりました。なんと、2022年2月1日は旧暦2022年正月朔日でもあります。令和四年と書かなかったのは、はて、元号が唯一残っている日本国に置いて旧暦は破棄されてしまった概念であるから、そう記述してよいものか…と迷ったからであります。旧正月を祝う中国でさえ、とうに皇帝暦を廃絶しておりますからねぇ。しかし、本日、三味線の体験授業で伺った中学校を失礼する際に、ちらと「今日は小正月で旧暦のお正月に当たります…」と給食の献立を説明なさる先生のお声が廊下越しに聞こえて参りました。うれしいですね。文化はこのように伝わって、新世代の方々にもお正月を祝う細やかな精神性、EQが育まれてゆくのですね。今年度の...お正月の朝のこと

  • 武蔵野に降る雪

    月暦令和三年極月四日。小寒の候。朝方の鉛色の空から、昼頃より初雪となった。寒さの余り、家に籠って稽古に励もうとも思ったが、年越しのバタバタで失念していた社会的責務の遂行に赴く。思い掛けなく様々な憂き世の現象に出会ったので、雪も降っていることだし、久しぶりに公園を突っ切って帰ることにした。井の頭公園、七井橋を渡る。ボート乗り場の白鳥さんたちは大人しやかに湖面に浮かぶ。鴨かカイツブリか、水鳥たちもしめやかに泳ぐ。工事中の柵さえ雪化粧して美しい。振り向けば、舫ったボートの群れが整然として、これまた美しい。いずれを見ても水墨画の風情。弁天様のお堂は修理中で、緑の網に囲われていた。この月ずえの弾き初めの会で、竹生島で勿体無い唄のお役を仕るので、詫びる。夜、43年遅れで、昭和53年度芸術祭参加作品である深作欣二監督の「赤穂...武蔵野に降る雪

  • まだ初夢は見ない

    おお、そうだ…と暦を捲ったら、今日は師走のお朔日なのだった。月ごよみ、旧暦のお話です。コロナ禍も二年越しともなりますと、世の中の不景気さも深刻度を増し、一般庶民の巷には終末観が帳(とばり)を下ろし、21世紀になってここ十年ばかりでしょうか、10月末のハロウィーンが過ぎると、これしかないのか、日本の歳時記にはもっといろんな行事があったのに、欧米化ここに極まれりだな…と憂国の思いやまぬ新年までの2カ月間、街じゅうをこれでもかと、柊と小鐘のリース、躍る赤と緑の色彩、銀粉を纏う装飾品の数々、そして無理にでも盛り上げようというXmasソングのBGM…etc.に代表されるクリスマス・フィーバーが訪れていたものでしたが、ついに力尽きたか、商店街も駅ビルもひっそりとしていました。そんなわけで、なんだかなぁ…と年越しの実感もわか...まだ初夢は見ない

  • 私たちの居た場所

    この時季ならではの必然的な用向きで、宮益坂の渋谷郵便局へ向かう。渋谷のまちは私の学生時代、明治通りが長いこと工事中だったが、それから40年余りたった現在も大工事中である。ことに、この度の大改造は…何かというとmy休息の場所であった東急プラザが建て替わり、そして今また屋上から地下街まで自分の庭のように思っていた東急東横店(井の頭線コンコースから階段を使わずにデパート内のエレベータだけで東館へ抜ける道筋を知っていたのは私の密かな自慢でもありました)を失うに至り…自分の体のように感じていた場所を一つ、また一つと喪って、“逆どろろ”現象とでも申しましょうか、「この場所に85年間、東急東横線渋谷駅がありました」という看板を見るたび泣いていたのだが、その看板すらなくなってしまった。2019年暮れの地下鉄銀座線渋谷駅最終日は...私たちの居た場所

  • 壬寅、或いは令和長短。

    “みずのえとら”の年がやって来た。昔、私が生まれた年と同じ干支である。なるほど、十二支十干とは、生きているものの時を数えるのに分かりやすい便利な指標である。短いようで、しかし悠久の暦日を表記するのに、人間の尺で出来ている。昨年暮れの強風から、揚羽蝶のお母さんが当家の檸檬樹に託した葉付きの卵のうち、一つだけが残った。我が家の四人の越冬サナギ。ファラオの墓におわすミイラにそっくりである。昆虫すごいぜ!の香川照之に教えられるまでもなく、人間の歴史における昆虫の存在は切っても切れぬものであるのだ。新年早々、台所仕事の耳のおともに、志ん朝の芝浜をかける。なんて巧い、そしてなんと面白い藝でありましょう。さげの、よそう、夢になるといけない…で、思わず泣きそうになってしまいました。20世紀中、私は談志のオッカケをしていて、生前...壬寅、或いは令和長短。

  • 温室の夢

    午前中と夜のお稽古の間がすっぽりと空いてしまったので、この間からとても気になりつつ放ったらかしにしてあった、蘭の植え替えをすることにした。植え替え時期ではないのだが、雑草のようなものが生えてきたりして、稽古場に来る度、気が気ではなかったのだ。この胡蝶蘭は、もう7年ぐらい前の、証券会館ホール(日本橋茅場町の証券会館内にありまして、昭和の頃は、兜町という土地柄もあって邦楽演奏会の本場でありました。今では広尾に在る山種美術館が山種証券のビル内にあった頃のお話です)にての一門会のお祝いに頂いたもので、私の素っ気ない無精な取扱いが功を奏してか、一鉢を三株に分けてから、毎年美しい白い花を咲かしてくれる。稽古場には仕事に行くので、他に気を回す時間もなく、花影などあまり撮らないのだが、今年の立春、2021年2月3日に、おや、今...温室の夢

  • 長唄は津軽じゃない

    photocaption:振り向けば残んの月令和三年長月廿二日「俺たちは天使じゃない」という1980年代に旧作をリメイクしたアメリカ映画がありまして、この四半世紀来、お話のオチが腑に落ちなかった、英語に堪能ではない者の未解決の悩み。脱獄した囚人がつくり神父様に身をやつしての逃避行(未見の方にはゴメンナサイ)、ラストで、自分の身を明かす肝心のシーンで、明かされた相手が勘違いをするというキーワード、日本語字幕では“脱獄囚”を"異教徒"と聞き違える、というものでした。…えっ、それはどんな英語だったのだろう…日本語ネイティブの私にはスクリーンの字幕だけで、一瞬のうちに通り過ぎて行った言葉。???掛けることの無限のループが、頭の中に残ったのでした。映画鑑賞後、自分の中で暗中模索したシロウト探偵の答えは、プリズナー(囚人)...長唄は津軽じゃない

  • 名付けますれば…スリーブロック演奏会

    おはようございます。雨模様の新暦10月半ば、明日午後1時開演の演奏会のご案内を申し上げます。ところは京王井の頭線・JR吉祥寺駅南口より徒歩2分ほどの、マルイ百貨店東隣の、武蔵野公会堂です。コロナ禍下における感染症対策を、皆さまのご協力を賜り乍ら執り行い、開演の運びと致したく存じます。昨年からこの春まで三期分が中止となりました、武蔵野邦楽連盟、久々の演奏会です。一、尺八ニ、箏曲三、長唄の、3分野の邦楽を、15分の換気休憩をはさみ、3ブロックに分けて9曲ほどをおたのしみ頂けます。終演は午後3時40分頃を予定しております。当杵徳社中は、長唄の古典曲「安宅松/あたかのまつ」、流儀祖の三世杵屋勝吉作曲「菅公/かんこう」にて御目文字、仕(つかまつ)ります。木戸無料にて、お出入り自由ですが、ご入場の際、検温・消毒、必要事項を...名付けますれば…スリーブロック演奏会

  • お気に入りの場所

    このところ、物言わぬ小さき者たちに和まされて生きております。昨日、ここ二日ほどレモンの葉陰に留まってじっとしている、地肌が緑っぽくなったユヴェンチーノ…今朝、起き抜けに見たら指定席に居りませんで…別の葉陰で脱皮しておりました。…そして直近の様子を伺って見ましたところ……ふたたびお気に入りの場所に戻っておりました。おもしろや…天然の王国、大自然の幼子たち。※左下に遠く見えますのはサナギです。果実も幼虫もサナギも、皆、レモンのきょうだい。【ご報告】旧暦令和三年九月九日(今年は10月14日)重陽の節句を過ぎまして、現在所在が判明している越冬蛹2体、幼虫6匹(青4、鯨1)、卵5個ぐらい?養い親である檸檬樹に深く感謝申し上げる次第。お気に入りの場所

  • にほやか

    旧暦長月の朔日来る。先週末のこと、関東を直撃するかと危ぶまれた台風が逸れて、天然の気まぐれな烈しき気性に障らずに済んだ嬉しさに、つい習い性となった東に向いてる窓を開け~♪未だ成虫にならざる様々な生育途上形態のアゲハチョウたちのご機嫌を伺いながら、檸檬樹に水を遣っておりますと…不思議やな、甘き香りがいずこからともなく…どう考えてもおかしい…が、つい先月咲いたキンモクセイの淡い香りがいたします。その日は深く考えるいとまもなく、慌しく仕事に出掛けてしまいましたが、翌日もやはり、金木犀の香りが匂ってまいります。はて、どういうことなのか、もう哀惜の情を抱きながら毎年別れる金木犀のシーズンは過ぎたはずであるのに、世の中にはまだまだ謎が多い…お隣の柔軟仕上げ剤の残り香か何か??…などど、悲しいかな俗人は世話っぽい発想にて落着...にほやか

  • 二百十日のおちびちゃん

    今年の二百十日は…節分が一日ずれたのでお気づきの方もいらっしゃいましょうが、なんと8月31日だったので、私はひそかに風の又三郎が日本のどこかの小学校に転入しそびれるのではないかと、心配していた。その懸念は、8月最終週の月曜日からもう新学期が始める、という関東地方一地域のニュースを聞いて雲散霧消したのであるが。もう夏休みの宿題をしなくていい私には、8月末日は、世間のバカンスという夏の狂騒状態が鎮まりつつある嬉しい秋(とき)でもある。2021年のアゲハチョウたちのシーズンが過ぎて、わが秘密の花園…ベランダガーデニング苑のレモンの実り具合と葉の状態を、いくばくかの寂寥感をもってしけじけと眺めていた、そのとき。防鳥網の向こうまで元気に育っている若緑の葉先に、ふた粒の卵が生みつけてあることに気がついた。なんと、我が家にも...二百十日のおちびちゃん

  • 疑惑

    蝉しぐれが殊の外こころにしみる令和三年の夏、それにつけてもよくもまあ行方知れずになった我が子の旅立ちにめぐり合えたものだ…能や歌舞伎の「隅田川」(長唄で言えば『賎機帯~しずはたおび』)に申し訳ない…桜川であった有難さよ…と廻り合わせの不思議さに、今朝も物語を紡ぎだしてくれる植木たちに水を遣りながら、ベランダから目を移すと、疫病か熱中症か見分けもつかず、入院も出来ない人々が巷に放り出されるという、とても西暦を二千年以上数えた、この日本の現実のこととも思えない世相が展開されているのである。黒澤明の羅生門の1シーンが目に浮かぶ。植木鉢に小さいハエが湧くのを防ぐのは、培養土の上2センチぐらいをゴッソリ取り除くといいですよ…と花の好きなお弟子さんが教えてくれたのを、思い付きでコバエ除けを目論んで鹿沼土を薄く敷いてみたが…...疑惑

  • 二人の碧丸

    今年の旧暦六月六日は7月15日。午前中に、轟然たる雷鳴とともに滝の如き雨に見舞われた。コロナ禍下とてお盆の墓参も控えて、三日の間、昭和の頃の精霊棚のしつらえをあれこれ想い出していた。田舎の8月の旧盆では、仏壇とは別に、奥座敷の床の間へ精霊棚を設けて、家紋入りの吊り提灯のほかに、たくさんの大内行灯を飾る。さまざまな意匠を凝らした回り灯篭が美しい。古典的な具象柄の走馬灯のほかにポップな水玉柄もあって、子どもごころに気に入っていた。お墓の前には、二本の笹竹を支柱として竹の横木を渡したところへ、彩色を施した盆提灯を三つ下げたのを飾った。各家の墓前がとりどりの提灯をぶら下げていて、旧盆の墓地は賑やかだった。いつ頃からだったろう、そのような風景を見なくなって久しい。翌16日は閻魔様もお休みで、まさに地獄の釜の蓋があいたよう...二人の碧丸

  • Time to say goodbye

    “ある日のことでございます。お釈迦様は極楽の蓮池のふちを独りでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました…”…なんて、お盆だものだから、芥川の蜘蛛の糸の書き出しを思い出し乍ら、何とも云えない好い匂いの、咲き初めたばかりの檸檬の花へお水を上げようと、ベランダに出た朝のことでございます。ふと、今年の春、丸い鉢に植え替えた鈴蘭の方へ目をやりますと、何かふわふわと空中に動くものがございます。……!!なんと、鷹揚と艶やかな翅を広げた一頭のアゲハチョウが、今まさに外界へ飛び立とうとしているところなのでした。お前はみどり丸ではないか…!お隣との境界線の仕切りの辺りから、漂うように浮上してきたので、今朝方羽化したものと思われます。何という邂逅、なんという奇跡の廻り合わせ。どたばたと部屋に戻り、携帯をひっつかんで、やっと写真が二枚...Timetosaygoodbye

  • 香華

    東京はお盆である。お弟子さんに、お家では旧盆でなさるの?と訊いたらキツネにつままれたような怪訝な顔をされたので((。-人-。)ゴメンネ)、はっとした。弟子の疑問点を説くのが師匠の務めである。もともと、お盆は七月十五日を中心とした祭り事なので、太陽暦を採用した明治五年(1872)十二月三日=明治6年(1873)1月1日以降、帝都たる東京府民は、従来通り日付を変えることなく新暦でも7月15日にお盆行事を執り行った。2021年現在、お盆の行事をどの程度まで日本国民が踏襲して行っているのかは知らないけれども、六十余州のほとんどが旧盆と呼ばれる新暦8月15日の盂蘭盆会をメインイベントとして、翌十六日の藪入りの習慣は廃れることなく、お盆休みという休暇の体系は続いている。この旧盆の習慣は、1945年8月15日の終戦をもって...香華

  • 君去りしのち

    グレーの梅雨空になじむように今年のアブラゼミが鳴き始めたのは昨日のこと。昼下りのベランダに出て、悄然とレモンの鉢を眺める。ビッグバンドに憧れて、タップを踏みながらクラリネットを吹く寄席芸人を目指していたのは昭和60年ぐらいのことだったか。習いに通っていた吉祥寺の丸石楽器も今はもうない。サンロード向かいにあったバウスシアターももう無い。クローゼ・クラリネット教本から始めて、ジャズのスタンダードナンバーをやりたいんです、という私のわがままを聞いてくださった本田先生は今はどうしていらっしゃるだろう。昨春から介護施設に入所したまま、コロナ禍に見舞われ帰宅も面接もままならぬ母が飲みたいらしい“大人のカルピス(以前は珈琲が好きだったのに、苦いからイヤと、介護スタッフの皆さまのお手を煩わせているらしい…)”を届けがてら、五日...君去りしのち

  • 時空を超えて

    なんと懐かしい…!!NHKの伝統芸能鑑賞番組が、いつのころからか少なくなり、現在「にっぽんの芸能」という番組に集約されてしまっているようですが、私が青春を傾けた時代の憧れの名女形・七世中村芝翫(神谷町)の特集を放送しておりました。今現在の時点における一般に向けた業界の情報収集のため毎週録画しているだけで、積読ならぬツン録状態になってTVチューナーのメモリーを徒らに増やしているだけだったりもするのですが、深夜に起きだしてうっかり見てしまいました。番組序盤で紹介された1976年歌舞伎座の「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」は、立三味線が松島寿三郎師で、我が師匠・杵屋徳衛が前名・勝衛の時代に勤めた舞台の録画でした。本番直前に芝翫丈が「み、水…」とおっしゃって、山台四枚目に居た徳衛の目の前で、おつきの方...時空を超えて

  • 新生

    なんと嬉しいことでしょう‼️瑞々しい青々とした葉を繁らせて、食べてくれる幼虫の一匹も居ないのは何と寂しいことだろう…と、徒(あだ)な緑影を嘆いておりました、昨春からの我が檸檬樹。果実の育ち具合はどんなものかと、朝からベランダに立ち出でてみますれば、むばたまの…昨日、葉陰に揚羽蝶の一齢幼虫とおぼしき生命体を発見。表題写真は発見2日目の今朝。早くも昨日の倍に。早朝よりひたぶるに、蚕食の余念なく。健気なものたちの旺盛な生命力が、わが魂に仄かなあかりを燈したのでした。コロナ禍を治められず混迷を極める世相に、うちひしがれた我が心。梅雨空が慈雨にておとない、天佑なる食客をもたらす天空の采配を、先ずは記すのみ。新生

  • 風に吹かれて

    ここ半年というもの、憂鬱の風に吹かれて、日記を書き始めては上げられずに閉じる、という内省の日々を送っていた。下書きばかりで収拾がつかないのも、パソコンの蓋を重くした。コロナの魔手に絡め取られるわけにはいかないので、緊急事態宣言中はお稽古を自粛したり、準備していた演奏会が中止になったり…また出掛けるにも人混みを避け、考え得る万全の対策をして玄関を後にするので、帰宅するととても疲れてしまう。精神的疲労が肉体的疲労に勝る日常は、想像以上に、人間のモチベーションを削ぐものであると思い知った。一年前もこの夕暮れ時の麗しい時季に、家に鬱々と籠っていたので、梅雨の晴れ間なのか、陽射しが落ち着いて地熱が鎮まりつつある暮れ方のひと時、吹き抜けてくる風に身をゆだねる快感を想い出した。植木が育ってゆくのを無心に眺める愉しみは、魂の養...風に吹かれて

  • 6月6日に…

    昨年は中止となりました、世田谷邦楽研究会の年に一度の演奏会。今年も開催が危ぶまれておりましたが、会場の成城ホールが開場されるとのことで、嬉しく久方ぶりの演奏会となります。生憎、いつも楽屋としてお借りしている施設が、今年はコロナワクチン接種場として使用されるため、会の規模を縮小して行います。長唄は三社中が出曲いたします。お囃子入りです。御用とお急ぎなくば、どうぞお越しください。ドレスコードはマスク着用にて、お願い申し上げます。お待ちしております。6月6日に…

  • 鐘の音、またはコールドムーンと対の銀嶺。

    一年のほぼ半分を冬眠して過ごした令和二年、極月最後の稽古日。東京脱出を果たし、鎌倉に移住したお弟子さんが、今年は帰省できないので、はじめてお正月を関東で過ごすと言う。「一人で過ごすのも寂しいんですが、北鎌倉は鎌倉五山のうち四つのお寺があるから、除夜の鐘の聞き分けが出来るそうで、それも愉しみなんです」「えぇつ!!いいなぁぁあ……!!!」心底うらやましげな私の声を聞いて、彼女は水月観音菩薩の現し身の如く、コロコロと笑った。と、同時に私は、狂言の『鐘の音』そのままの話じゃないかと、もの凄くびっくりした。狂言〈かねのね〉は、例によって粗忽な太郎冠者が、ご主人に金の値…(要するに為替レートですな、と、バイリンガルな件んのお弟子さんに説明したら聡明な彼女はすぐに分かってくれた)を訊いてこいと言われて、本当に、お寺の鐘の音を...鐘の音、またはコールドムーンと対の銀嶺。

  • 名前

    芸術の秋がやって参りましたが、例年と些か(いささか)趣きを異にしております。学校巡回が徐々に再開されましたのは、わたくし共にとりましても嬉しいことです。授業時間の合間を縫って調弦するほかに、三味線および付随する小物類の消毒・除菌作業が加わったのが、令和二年度ならではの特記事項でありましょうか。そのような手間を凌いで余りある感動…瑞々しい可能性に満ちた若人(わこうど)たちが、新しい知識や体験を吸収して、成長し羽ばたいてゆく(それが今すぐ、目に見える形でないとしても)…自分たちの蓄積を次世代に移し繋いでいくことは、人間として冥利に尽きることでもあります。そこで近年増えました質問、伝統芸能における名前、芸名ということについて、ごくごく簡単に、お話ししたいと思います。杵屋は、長唄(三味線含む)に携わる者の芸名です。苗字...名前

  • 長唄絵合せ【リモート編】風流船揃

    さて、通年行事たる年内の演奏会はことごとく中止となりまして、何となく心のうちにウロを抱えたような…心もとない秋は来にけり…という中途半端な令和2年9月。当ブログでも以前ご紹介いたしました、浮世絵と長唄のコラボライブの企画で、東京都の「アートにエールを!」動画配信プロジェクトに応募いたしました。このたび有難いことに、無事採択されサイトに公開されましたので、リモート版「長唄絵合せ」を、皆さまにお届けいたしたく、ご高覧賜れますれば、うれしく存じます。お聞きいただきます長唄は「風流船揃(ふうりゅうふなぞろい)」の、抜粋演奏です。幕末のペリー来航から3年後の1856(安政三)年二月、二世杵屋勝三郎による作曲作品です。1853(嘉永六)年九月、幕府は大船建造の禁令を解き、堰き止められていた奔流が怒涛をうって流るるが如く、開...長唄絵合せ【リモート編】風流船揃

  • 和をつむぐ

    世の中の発想の基本的な立脚点が、日本の慣習でできていた20世紀とはだいぶかけ離れてきたなぁ…と、実感する事どもをつらつらと書き連ねてまいりましたが、思いがけないところから、これでもか…と放射されますと、言葉を失います。たとえば、プロ仕様の三味線は、欧米の、ピアノのようにスタンウェイ…などのようなブランド品があるわけではありません。自分が代々お世話になっている三味線屋さんや、お気に入りの三味線屋さんがあって、いつもそこにお願いしています。現代の感覚ですと、三味線屋さん=三味線を売るところ、と思っている方が多いですが、わたくし共の感覚では、三味線屋さんは、三味線を拵えてくださるところ、です。また、ヴァイオリンのストラディバリ…のように、古えのギルドマークが重用されるということもありません。三味線は古くなると音が枯れ...和をつむぐ

  • めぐるメイヨー

    20世紀につくられた、シルクロード紀行番組を偶々見た。砂漠の遺構群が、遥か異国への憧憬と旅情を思い起こさせてくれたのだが、たぶん、もう今では心無い人災や戦禍に見舞われ、時の流沙にさらされる以前に、失われてしまっているのだろうなぁ…日中共同制作…というキャプションが懐かしく、ぁぁ、そんな時代もあったね…と、しばしほのぼのしたのだが、記憶がまぶしく目に痛かった。1980年代中頃、横浜中華街への食い倒れツアーや、返還されて間もない米軍住宅跡地(マイカル本牧として新開発される以前でしたがその名称さえ今は昔)散策、新作が封切りされるたび連れ立って出掛けたジャッキーチェン映画の観劇仲間でもあった大衆読み物研究会の学生時代の友人が、日本語学校の先生になって、中国(どの地方か失念してしまったが)へ赴任した。土産話に、買い物に出...めぐるメイヨー

  • sunみつ

    …拝啓外出を思い切るにはちょうどよい暑さの夏も過ぎようとしております…思案投げ首、新たなる職探しをも視野に入れて日を送る、若き芸能者の消息も伝え聞かれる令和二年、春、そして夏。自分のことで何かと物要りでありましょうに、盆暮れ正月、欠かさずお心尽しのご挨拶を下さる、律義なお弟子さんへの御礼状をしたためておりました。なんだか妙にやせ我慢というか、向こう意気というか、存外自分らしい時候のご挨拶が書けてしまったので、勢いづいて新暦八月になってからこの方、開けてもみなかったパソコンを開いてみました。人間は暑さに弱いものでござんすね。こう立て続けに自分の体温とそうそう変わらぬサウナに入りっぱなしの状態で日々を過ごしておりますと、脳内が混濁してまいります。太陽が濃密、略してsunみつ。南の島に行ってぼーーっと太陽が磯の汀の彼...sunみつ

  • 九夏三伏の暑き日は…♪

    鳥の声に目覚める季節が過ぎる。早朝、靄にかすむ雑木林からアブラゼミの鳴き声が聞こえてくる。関東者には夏本番のお知らせだ。8時を過ぎた頃になると、さぁ、今日もこれから幕開きですよ、と、劇場の1ベルともおぼゆるミンミンゼミが騒ぎ出す。数日前から、夕暮れ時の涼風に乗って、ヒグラシが鳴き始めた。通常運転なら、世界中が夏休み。以前、一の字騒動なる記憶をご紹介したが、50年余の時を経て、ついに、決着した。正解は、「考え無しに迂闊なことをするな」。それに気がついたのは、遅れたこと30年、吉川英治原作・大河ドラマ「太平記」足利高氏・青春グラフィティ的エピソードにての、無口な苦労人・緒形拳as足利貞氏の顔を見ていたときのこと。それが我が小学一年生の折の、担任の先生のお教えだったのだろう。至極当たり前で単純なことだけれど、上の空に...九夏三伏の暑き日は…♪

  • コメット君

    旧暦五月はさて、どんな月になりましょうか…などと言っている間に、皐月も本日、晦日を迎えた。梅雨の晴れ間にちらりと覗く青い空は、旅情を誘う。罪つくりなやつである。「なんだか東京だけ罰ゲームみたいになっちゃってるじゃないさ」「寄席はもう開いているらしいね」「チドリに座らされるそうですよ、アベックで行っても離ればなれにされちゃうんですって」「それって、その時以外はアベックでいるんだからさ、もはや無意味なんじゃ……?」千鳥に座るって、ステキな言葉ですね。そいや、お裁縫で千鳥掛けってのがあったわね。違う意味で千鳥掛けな訳だわね。そいや、若かりし頃の宴席での、いざというときの心の持ち唄は、♪唐傘の…でした。いざというとき…というのは、ご接待にお呼ばれしたとき、小唄の一つでもご披露…という、昭和の宴席では極々当たり前に見かけ...コメット君

  • 手札

    子雀が翔ぶ稽古をするときの、可愛らしい囀ずりが聞こえたのが6月。信号待ちの高架下の交差点で、燕がパタパタと翼をはためかせ飛び交っていた昨日はもう、7月。♪ここらでやめてもいいコロナ~と、小林旭の自動車ショー歌が脳裡を経廻る禍中もつかの間、令和2年は半年が過ぎ、中止・延期の憂き目を見た演奏会や催し物の手当てが、解除宣言とともに急に押し寄せ、落ち着かない。総棚ざらいをしていた箪笥のあちこちから、過ぎし日々の捨てられぬテレフォンカードがひょっくり、顔を出す。断捨離は果てもなく、私の記憶は藪のなか、未だ夢の途中。【追記】益田玉城「現代隅田川風景」、目黒雅叙園美術館メトロカード(パスネット)は、昨年末に別れを告げた、営団地下鉄銀座線渋谷駅の旧駅改札口で求めたもの。手札

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