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  • 学べば増えるはず

    「繰り返しですが」4月18日『理不尽PTAに「NO」』という見出しの記事が掲載されました。「PTA不要論」著者黒川祥子氏へのインタビュー記事です。その中で黒川氏は、『PTAは任意加入の団体で、入会は強制ではないはずです。それなのに、その説明は一切ない』『(ひとり親世帯、家族の介護など)出来ない事情のある人を思いやるどころか、切り捨てる。どんなブラックな組織なんでしょうか』『PTAに関わることで、子どもとの時間は減ってしまい~』などと、現在にPTAの在り方の疑問を呈していらっしゃいます。全くその通りです。私は教員時代にPTAの教員側委員を長年勤めましたが、黒川氏の指摘に全面的に同感です。誤解のないように言っておきますが、PTA活動に熱心に取り組んでいらっしゃる役員や委員の方々に悪い印象はありません。そうでは...学べば増えるはず

  • 美談でいいか

    「連想」4月17日『「おかしい」とっさに54歳漁師容疑者組み伏せ』という見出しの記事が掲載されました。『遊説中だった岸田文雄首相に和歌山市の漁港で爆発物が投げつけられた事件(略)容疑者を取り押さえた男性の一人が取材に応じ、事件のてんまつを語った』ことに関する記事です。記事によると、『容疑者が何かを前方に投げたのが見えた。黒っぽかった。再び容疑者に目をやると、まだ手を動かしている。「おかしい」。とっさに飛びかかった。自然と容疑者の首に手を回し、手にあったものを一心不乱に払いのけた~』ということだったようです。私が気になったのはその後です。『15日夕方、自身の携帯電話が鳴った。「本当にありがとうございます」。相手は岸田首相だった(略)家族から「よくあんなことができたね」とたたえられた』という記述がありました。...美談でいいか

  • 迷路に

    「すべて白紙でいいの」4月16日ノンフィクション作家河合香織氏が、『「かくあるべし」を白紙に』という表題でコラムを書かれていました。その中で河合氏は、『いまだ「あるべき母親像」というものが存在する。男性の育児参加が当たり前という時代になっても、主に子育てを担うのは母親であるはずだ、という価値観は根強くはびこっている』と書き、『まずは社会の意識を変えていくことが、少子化改善の第一歩』と述べていらっしゃいます。全くその通りです。そして岸田流の少子化対策を批判し、『必要なのはお金を配るだけではなく、「かくあるべし」という価値観を一度、リセットすることだ』ともおっしゃっています。これにも同感です。ただ、少し考えてしまったのも事実です。河合氏は、女性と子育てに関する「かくあるべし」のリセットを主張なさっているのだと...迷路に

  • 幸せな教員

    「トップの発想」4月14日『全従業員でおもてなし』という見出しの記事が掲載されました。ディズニーランド開業40周年の今年、その歩みを振り返る記事です。その中に気になる記述がありました。TDLの直営ホテルで営業推進部長を務めた経験のある内苑孝美氏の話されたことです。『部下に対し「自分たちが楽しいと思わなければゲストも楽しめない」という考えの下で指導していたといい、「キャストの幸せがゲストの幸せになり、ゲストの幸せがキャストの幸せにつながる好循環を生み出している」』というものです。人と人とが接する仕事では、不変の真理だと思います。もちろん、ホテルやディズニーランドだけでなく、学校においても、です。将来はともかく、少なくとも現在の学校は、子供と教員が触れ合うことなしには成立しません。立場の違いはあっても、お互い...幸せな教員

  • 自動翻訳機能とチャットGPT

    「混線」4月14日読者投稿欄に千葉県塾講師U氏の『考えない葦でもいいのか』というタイトルの投稿が掲載されました。その中でU氏は、『(英語が)苦手な生徒ほど「自動翻訳を使えば、英語ができなくても問題ない」というのが気になる』と述べ、その後チャットGPTを取り上げて、『考えなくてもよい人を大量に生み出すことになる』という懸念を表明し、『コミュニケーションの手段を機械任せにする弊害をよく考え、使い方を十分に議論してほしい』とむすんでいます。一読して、U氏の見解はどこかでこんがらがっているという気がしました。それは、英語の自動翻訳機能とチャットGPTを同列に考えていることが原因だと思います。自動翻訳を使って外国人とコミュニケーションを取る場合、相手の言うことを理解しようとする、自分の思いや考えを伝えようとするとき...自動翻訳機能とチャットGPT

  • 誤解から批判

    「知ってるの?」4月13日金秀蓮記者が、『学びを止めない』という表題でコラムを書かれていました。その中で金氏は、熊谷市立藤見中学校の通級指導教室を取り上げ、『そこに通う生徒一人一人に時間割や教材が用意されていた』と紹介し、『こういうのを「学びの最適化」と言うのだろう』と評価なさっていました。???という感じです。殊更今の時点で取り上げ高評価を与えるようなことなのかという疑問が生じてしまうのです。私が教委で特別支援教育、当時は心身障害教育と言っていましたが、を担当していた27年ほど前、通級指導学級では、既に個別指導計画が作成されていました。それも特別に熱心な教員が取り組んでいたというのではなく、管内の通級指導学級全てで、通ってくる全ての子供について作成していたのです。もちろん、私が所属していた教委だけが先進...誤解から批判

  • 逆効果?

    「逆効果かも」4月13日『映画製作に映適マーク脱やりがい搾取の一歩に』というタイトルの社説が掲載されました。『日本映画製作適正化機構が発足し、適正な労働環境で作られた映画に「映適マーク」を付与する認定制度が始まった』ことに関する社説です。社説では、『映画業界での活躍を夢見る若者が酷使される「やりがい搾取」が常態化している』という現状認識を示し、『若手スタッフが定着せず、技術の継承も危ぶまれる』と危機感を露わにしています。具体的には、『撮影現場の作業は1日13時間以内にとどめ、2週間に1日の完全休養日を設ける。ハラスメント対策では~』などの認定ガイドラインが定められたということです。羨ましいと思いました。やりがい搾取は、教員においても重要な問題だからです。「映画が好きなんだろ。だったらつべこべ言うな」「俺た...逆効果?

  • 子供はどう思うか?

    「子供はどう思う?」4月12日『チャットGPT政府も活用検討』という見出しの記事が掲載されました。『政府は人工知能を使った対話型ソフト「チャットGPT」に関し、国会答弁など行政分野での活用を検討する』ことを報じる記事です。記事によれば、『文章の作成をはじめとした業務に役立て、職員の負担を軽くできるとの期待がある』とのことです。当然の流れでしょう。私は、チャットGPTの教育における影響を論ずる記事やコラムが掲載されるたび、どうしてこのことが論じられないのだろうと不思議に思っていたことがあります。それは、生徒や学生の使用ではなく、教員の使用についてでした。教員は、校務において様々な文書を作成します。行政職員と同じように、負担軽減になるようなチャットGPTの活用は当然行われるべきです。しかし、子供や保護者向けの...子供はどう思うか?

  • 古い奴だとお思いでしょうが

    「緊急避難」4月11日植草学園大教授野澤和弘氏が、『がまんしない若者たち~Z世代考』という表題でコラムを書かれていました。ちなみに、Z世代とは、『1990年代中ごろから2010年代前半に生まれ』た若者たちです。その中で次の記述に目がとまりました。『強く自己主張をしないこと。ものごとに意味を求め、意味が感じられず理不尽と思えば逃げることもZ世代の特徴とされる。自分と意見が異なる相手と衝突することのストレスや時間の浪費を嫌い、その場から去ることに合理性を感じる』という記述です。私が指導主事になったころは、いじめが社会問題になっていた時期でした。1990年代中頃です。その頃まだZ世代は生まれていないわけですが、野澤氏のコラムの内容を想起させる出来事がありました。私の先輩指導主事のS氏は、生活指導を専門にする人で...古い奴だとお思いでしょうが

  • 何を言っても………

    「出来ない!」4月11日専門記者大治朋子氏が、『トランプ氏の被害者物語』という表題でコラムを書かれていました。その中で大治氏は、全米の市民を対象に行われた被害者意識調査について触れ、『米社会で優遇される白人男性にも根強い被害者意識があり、しかも被害者意識をたきつけられると、その語り手を支持する傾向が強まると分析。トランプ氏の演説は常に「被害者物語」であり、支持者はそこに我が身を重ねて魅せられている』という見解を紹介しています。さらに、『多様性重視の世界的潮流の傍らで強まる被害者意識』は世界共通の現象であるのではないかとも述べていらっしゃいます。その通りなのだろうと思います。ここでのポイントは、客観的に見れば、優遇されている立場にあるにもかかわらず、本人の主観では冷遇されている被害者であるというギャップです...何を言っても………

  • 新しい学問から新しい教科

    「新知識」4月11日『東京音大と藤田医科大音楽と医学を融合新領域開拓へ協定』という見出しの記事が掲載されました。『東京音楽大と藤田医科大学が包括連携協定を結んだ(略)両大学が培ってきた専門的な知見や実績を融合させ、大学間連携の新たなモデルケースを目指す』ことを報じる記事です。記事には、『地域社会の健康課題への対応(略)医学と音楽は一見遠いように見えて、実は近しい関係にある~』などの記述があるだけで、詳細は書かれていませんでしたが、いくつか予想することができます。音楽療法という言葉もあるように、音楽を生かした治療法の開発、その医学的効果の科学的なデータ集積などが行われるものと思われます。既に、美術や文芸を含むアートという括りではこうした取り組みが始まっていますから。気になるのは、こうした動きが学校教育にも影...新しい学問から新しい教科

  • 理想は何?

    「理想とは」4月10日読者投稿欄に、大阪府在住の小学校教員A氏の『理想の教育求めていきたい』と題する投稿が掲載されました。その中でA氏は、勤務校でスクール・サポート・スタッフをしていた大学生が別の小学校で教員として歩み出したことを紹介しています。そして彼について、『平日は算数や体育の授業の手伝いに始まり、休み時間の児童との触れ合いにも積極的だった。休日には、校区の少年野球チームでの指導、田植えなど地域行事にも熱心に参加していた』と書き、『現場ならではの発見もあったのではないか』としています。よく分かりませんでした。校区の野球チームの指導や田植えなどの行事参加は、学校現場の一部だということなのでしょうか。私も教員時代には、保護者とのソフトボール試合に参加したり、地域児童間の祭りで子供たちと竹馬をしたりしたこ...理想は何?

  • データは他にも

    「データの解釈」4月9日早稲田大教授中林美恵子氏が、『WBCの熱気米社会にも変化の兆し』という表題でコラムを書かれていました。その中で中林氏は、『「最も野球ファンの多い国は?」という統計分析』について触れられています。『国ごとの比較には、多様な物差しがいる。観客動員数や視聴者数の他に、ニールセンによる世論調査で「野球に非常にまたは割りと興味がある」と答えた人の割合を調べたり、グーグル検索で野球がどれほどヒットしたかを国際比較したりする』のだそうです。そしてその結果は、『観客動員数は、ゲーム数が2349と断トツに多かった米国(略)1ゲーム平均にすると米国2万6353人に対し日本が2万4558人と肉薄(略)100万人あたりの1ゲーム観客動員数でみると、プエルトルコが1位(略)MLBに興味があるかどうかの世論調...データは他にも

  • 明日は休みます

    「休んでもいい?」4月9日心療内科医海原純子氏が、『言い訳は必要ない』という表題でコラムを書かれていました。その中で海原氏は、『平日は仕事をし、休日は休むのが当たり前と思い込む傾向も問題だ(略)昼間働きに行かないことや、平日の昼間、勤務以外の場所にいる理由をいちいち関係者以外に言い訳する必要など本来ない』と書かれています。SNSの投稿で、テーマパークのアトラクションに乗っている写真を掲載し、わざわざ「仕事です」と言い訳する人について書かれたものです。その通りだと思いましたが、コラムの後半で、『何日も休みなく働くようなことがありやっと取れた平日昼間、遊びに行くようなときは言い訳しないで堂々と休む』と書かれているのを見て、何だかがっかりしてしまいました。なんだかんだ言っても、海原氏も、平日に休んだり、遊びに行...明日は休みます

  • 自省と厚顔無恥

    「教職の業」4月9日武蔵野大教授碧海寿広氏が、『生誕850年親鸞と向き合う自分の「悪」正視する姿勢』という表題でコラムを書かれていました。その中で碧海氏は、悪人正機という思想について語られています。悪人正機とは、『善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや』という言葉で表されています。意味は、『善い人が極楽往生という救いを得られるのであれば、悪い人が救われないわけがない』ということです。碧海氏は、悪人正機について、自分を『物欲や性欲、承認欲求などに駆動され、ときに取り返しのつかない過ちを犯す』悪人であると自覚し、『他人の「悪」を必死で非難する前に、まずは自分自身が抱える「悪」の詳細な点検を。自分をはじめ誰もが常に過ちを犯しうる存在』であると認識したときに真価を発揮する思想であると述べています。私はこうした考...自省と厚顔無恥

  • 魂を揺さぶられる学校

    「必要不可欠」4月7日『形だけのDXが分断加速』という見出しの記事が掲載されました。情報学者で東大名誉教授西垣通氏へのインタビュー記事です。その中で西垣氏は、川名壮志記者の『社会のデジタル化は急激に進むが、肝心の未来が見えない。このままではリアルな社会までも格差が広がり、分断が深まる』という懸念を肯定されています。そして、『あなたが恋人にフラれたとする。人間ですから、大変なショックですよね。ところがAIは『フラれた』は認識できても、トラウマを持つことができない(略)論理の更に奥底にある、人間の情動は理解できないのです。そのAIにいたずらに答えを求めるのは、危うい』と具体例を挙げていらっしゃいました。記事は、社会の分断をテーマに書かれていますが、私はAIと情動の関係に関心をもちました。西垣氏は、人間には情動...魂を揺さぶられる学校

  • 存分に語れ

    「訊いてみたい」4月7日『いじめ「重大事態」報告せず茨城大付属小調査も拒否』という見出しの記事が掲載されました。茨城大付属小学校が、「重大事態」に該当するいじめがあったにもかかわらず、調査も報告もしていなかったことを報じる記事です。その中に、保護者側と学校側の面談の様子を報じる記述がありました。『教育学部副学部長の木村勝彦、三輪寿二両教授が対応した。三輪氏は、茨城県ひたちなか市教育委員会のいじめ問題調査委員(略)第三者による調査を再三求めたが、三輪氏は「調査って言葉、僕もあんまり使いたくなくて、グチャグチャになっちゃうから嫌なんだけど」と持論を展開(略)弁護士から重ねて事案の解明を求められると、「じゃあ、先生(弁護士)はどれだけ調査したら気が済むんだ」と言った』というものです。調査も、報告も法に定められた...存分に語れ

  • 憲法26条の空洞化

    「義務と権利」4月7日論点欄では、こども家庭庁発足を受け、3人の識者がそれぞれの観点から論じていました。その中で、実業家小幡和輝氏の『不登校児の教育環境を整備』という話が気になりました。ちなみに、小幡氏は『幼稚園から中学校まで10年間、不登校を経験した』方です。小幡氏は、『不登校への世間の偏見を変えて堂々と認められる社会を作っていきたい』と述べられています。また、ご自身の経験を踏まえ、『不登校になったとしても、所属するコミュニティーを変えれば輝けることもある』とも話されていました。そして、まとめとして『決して不登校を勧めているわけではない。追い詰めないでほしいだけだ。「他の環境だったら頑張れるよ」と周囲の大人が環境を変える手伝いができれば子どもは救われる』と語られていました。小幡氏の意見には賛成です。しか...憲法26条の空洞化

  • 人を傷つける思い込み

    「嫌なものは嫌」4月4日『「子ども欲しくない」に理由いるの?』という見出しの記事が掲載されました。32歳の独身女性がインターネットラジオに出した一通の便り、その彼女に菅野蘭記者が会いに行って聞いた話を報じる記事です。その中に考えさせられる記述がありました。『結婚したい。子どもが欲しい。そう夢を語る女性に誰も理由を求めない。だが、ナナさんのように「今は結婚したくない。子どもは欲しくない」という意見は、納得する理由を求められる。ナナさんは問いかける。「なぜなんでしょうか」』という記述です。私は教員時代、教委勤務時代に多くの既婚女性と机を並べて仕事をしてきました。しかし、改めて思い返してみたのですが、一度として彼女らに「どうして結婚したんですか」とか、「どうしてお子さんを設けたのですか」という趣旨の質問をしたこ...人を傷つける思い込み

  • オチを説明するお笑いのような

    「求められる表現力」4月3日『問い直す展示の定石「裏話」で輝き増す現代アート』という見出しの記事が掲載されました。角川武蔵野ミュージアムで開かれている『タグコレ現代アートは分からんね』展について紹介する記事です。同展は、『これまでにない展示の試みに注目』すべきそうで、『現代アートの見せ方や受け取り方をめぐって鋭い問いを投げかけている』ということです。記事によると、『異例のボリュームの文字情報が同居する。作家の生い立ち、美術史上の位置づけといった解説にとどまらず、オークションでの落札額やギャラリーでのやり取り(略)など「裏話」も面白い』とのこと。そして記事を書かれた平林由梨記者は、『確かに文字から得る情報を元に作品が輝き始め、身近に感じられることはある』と述べていらっしゃるのです。またまた混乱してしまいまし...オチを説明するお笑いのような

  • 性善説では成り立たない

    「嫌な教員を辞めさせる方法」4月2日『教員による性暴力対応マニュアル策定小中高対象に都教委』という見出しの記事が掲載されました。『都教育委員会は児童や生徒に対する教職員の性暴力が発生した場合を想定した初動対応マニュアルを策定し、ホームページで公開した』ことを報じる記事です。その中に気になる記述がありました。『処分の規定にSNSなどでの私的なやりとりは停職などになることを初めて明記した』という記述です。私的な、と断っているのですから、公的なやりとりは問題ないことになります。授業や部活などの連絡事項などが想定されます。しかし、公的な事項であれ、SNSでのやりとりが行われるということは、子供から教員への送信が可能であるということでしょう。そうであるならば、子供から教員に、「もう嫌だ、生きていたくない。先生、死ん...性善説では成り立たない

  • そもそも論

    「そもそも論」3月30日部活クライシス第3部下として、『移行後押す少子化』という見出しの記事が掲載されました。『公立中学校の休日の部活動は当面、学校主体の活動も併存することになった。だが、予定通り地域社会への移行を推進する先進的な自治体も少なくない。一方で、将来を担う教職志望者の中には、持続可能なスポーツ指導の道を探る動きもある』という趣旨なのですが、一読して、とてもおかしな記事だと思いました。記事は大きく2つのことを報じています。先進自治体の取り組みとスポーツ指導の道を探る教職志望者です。しかし、この2つとも、本来の部活改革の趣旨とは離れた事柄に過ぎません。前者については、『少子高齢化の進行は避けられず、子供たちが部活を選べなくなってからでは遅い』という教育長の言葉に象徴されるように、『団体競技は学校単...そもそも論

  • 幸せな人生のために

    「学校は…」3月28日オピニオングループ小国綾子氏が、『結婚は少子化対策じゃない』という表題でコラムを書かれていました。その中で小国氏は、参議院予算委員会公聴会でのやりとりを紹介なさっています。『「少子化対策には血痕が重要。結婚を後押しする政策はどうか」と議員に問われ(略)「結婚は、愛する人と人生をともにするためにすべきものであって少子化対策ではありません」』というものです。ちなみに、快答の主は恵泉女学園大学学長大日向雅美氏です。まったく、まったくその通りです。結婚する人が増えると生まれてくる子供が増え、減ると子供も減る、それは事実でしょう。婚外子が少なく、多くの子供が婚姻関係のある男女間で生まれてくる我が国においては、両者に関係性があることは誰でも想像がつきます。しかしそれはあくまでも結果であって、目的...幸せな人生のために

  • 2つのキーワード

    「学校も」3月27日専修大教授武田徹氏が、『活字に託す「対話」の場』という表題でコラムを書かれていました。その中で武田氏は、永井玲衣氏の著書「水中の哲学者たち」、荒木優太氏の著書「転んでもいい主義のあゆみ」、谷川嘉浩氏の著書「スマホ時代の哲学」を紹介しています。内容についてはもちろんですが、特に30代で『物心ついたときにインターネットがあった世代』ある3人が『活字メディアの書籍という形式を選んだことに改めて注目したい』としているのです。次にその理由について考察し、『常時接続のネット環境はあふれる刺激で人々の関心を吸い寄せ、哲学に必須の熟慮の持続を邪魔する』『答えを急がずに立ち止まる力を重視するプラグマティズムは(略)間違い=転ぶことを排除せず、漸進の糧にしようとする。それは僅かな間違いに対して糾弾の大合唱...2つのキーワード

  • 真面目であれ

    「苦情は来る」3月26日連載企画『僧侶・陽人のユーチューバー巡礼』に、農水省公式ユーチューブチャンネル「BUZZMAFFばずまふ」運営担当者白石優生氏が登場し、陽人氏と対談しました。白石氏によると、農水省のユーチューブでの情報発信が注目されだしたのは、『大臣から「オレが全責任を取るから、若手のやりたい発信をそのまま出せ」というような声』があってからで、それまでは真面目な動画ばかりだったそうです。現在も、『目的がちゃんとしていれば手段は問いません。例えば、国産米の消費拡大という目的に沿っていれば、ダンスを踊っても漫才をしてもラップを歌ってもNGはありません』ということだそうです。驚きました。羨ましいと思いました。私が教委で指導室長をしていたときには、まだユーチューブはありませんでした。しかし、もし現在のよう...真面目であれ

  • けしからん、となっては

    「日本は大丈夫?」3月26日『Q共産党万歳A腐敗して無能なのに中国版チャットGPT、検閲との相性悪く』という見出しの記事が掲載されました。『中国はAIの分野でも米国と激しく競っているが、共産党への批判が許されない中国で果たして同様のシフト開発は可能なのか』という疑問を呈する記事です。かつて、中国の対話サービスが、『「中国共産党万歳」という呼びかけに対して「あんなに腐敗して無能なのに何が万歳だ」と回答』したことが原因で停止させられたことがあるそうです。これでは、自動応答ソフトとして信頼できません。自動応答ソフトについては、米国では使用を禁止する学校が出る一方、きちんと使いこなせれば学生や生徒の能力向上に資するという専門家の見解もあり、学校教育での活用や影響について注目されています。我が国においても、遠からず...けしからん、となっては

  • 実戦不足

    「能力維持の難しさ」3月25日『世界は広いいってらっしゃい』という見出しの記事が掲載されました。『生まれ育った離島の小中学校で9年間、ただ一人の在校生だった』少女が卒業式を迎えたことについての記事です。その中に気になる記述がありました。『中学の先生は5人。授業では「生徒役」の先生もいて教室で章乃さん(ただ一人の在校生だった少女)と意見を交わした』という記述です。普通、ただ一人の卒業生の旅立ちといえば、その生徒の今までの生活やこれからのことに関心が向くと思いますが、私はひねくれているので、関心をもったのは、離島の学校の教員たちについてでした。中学生と言えば生意気盛りで学級経営は骨が折れます。いじめや不登校、非行といった生活指導面の問題への対応も理論だけではうまくいきません。授業は講義型で進めるのであれば生徒...実戦不足

  • 発禁本ばかり

    「改竄?」3月25日連載企画『国際女性デー2023声をつないで』は、落語家林家つる子氏へのインタビューでした。つる子氏は、『女性目線で古典を変革』することに取り組んでいらっしゃる方です。このことについてつる子氏は、『登場する女性の背景や思いを丹念に追った噺はほとんどない。男性の手で書かれ、主に男性の口で語られてきた芸だから(略)高座を勉強するうちに、今まで描かれてこなかった部分を見てみたくなりました。そして、その時代に絶対あっただろうことを描いてみたくなりました』と語っていらっしゃいます。落語に限らず、江戸時代以降、伝統芸能の作者は男性が中心でした。私が授業で扱ってきた人物も、松尾芭蕉、近松門左衛門、滝沢馬琴、十返舎一九など男性ばかりでした。つる子氏の師匠である林家正蔵氏が『落語家は自分の理想の女性を描く...発禁本ばかり

  • 私の方が、私の方が

    「弱者で悪者」3月24日論点欄は、『変わらない日本』というタイトルで、我が国の人権状況について、3人の識者が論じていました。その中で、成蹊大教授伊藤昌亮氏の指摘に考えさせられました。伊藤氏は、『反・反権力』とでもいうべき思考があると述べていらっしゃいます。その例として、『自分が女性よりも「弱者」だと信じる男性たちがいる。その一部は、電車の女性専用車両さえ「特権」と誤認し、フェミニストの主張などに「本当は強者である女が、弱者を詐称してさらに権利を要求するのが許せない」と憤る』を挙げていらっしゃいます。さらに、こうした考え方は、女性に対してだけ適用されるのではなく、『高齢者や生活保護受給者、性的マイノリティー、在日コリアン』にも及び、『にせの弱者』だと攻撃されるという構図が見られるというのです。要するに、困っ...私の方が、私の方が

  • 定義変更

    「学校新世紀?」3月23日県立静岡がんセンター総長山口健氏が、『医療哲学の新世紀』という表題でコラムを書かれていました。その中で山口氏は、『医療の役割は、「病気を治すこと」にととまらず、「病気を治し、患者・家族を支えること」を目指して進化しつつあります』とし、『個々の課題への場当たり的な対応ではなく、将来像を盛り込んだ新たな「医療哲学」の確立が求められている』と述べられています。他の専門家の方も同じ趣旨の見解を述べていらっしゃるのを目にした記憶があります。医療以外でも、その「守備範囲」を広げて捉える動きは拡大しています。例えば、犯罪への対応にしても、警察が単に犯人を逮捕して終わりではなく、再犯を防ぐために刑務所内での学習や職業訓練、出所後の受け入れなどに取り組む動きが重視されるようになってきています。学校...定義変更

  • ドン臭くても生きていける

    「本当に住みやすい?」3月22日『「不確実さ」は挑戦の原資』という見出しの記事が掲載されました。文化人類学者で立命館大大学院教授小川さやか氏へのインタビュー記事です。小川氏は、主にタンザニアについて研究をなさっている方だそうです。記事の中にタンザニアの路上商人についての記述がありました。『客を見て裕福そうなら高値で、貧しそうなら安値で売ります。交渉にはうそや演技も交じっていて、結構ずる賢いんです。でも、困った人に同情して大幅値引きをする仁義もあって、そこに貸し借りの関係ができるんです(略)私はその仕組みにとても魅了されました』。正直なところ、私は魅了されるどころか、「うわっ、嫌だ」と思ってしまいました。このタンザニアの路上商人の商売の仕方は、『身につけるべき美徳として教わり、都会の底辺に生きる労働者にとっ...ドン臭くても生きていける

  • 評価不能では

    「変わっていかなければ」3月22日『美術館のアクセシビリティー全ての人に開かれた場へ』という見出しの記事が掲載されました。その中に次のような記述がありました。『オランダの美術館はにぎやかだ。「アムステルダムの国立美術館なんかに行くと、観光客もいれば、電動車椅子の団体、小さな子供もいて、作品の前でおしゃべりをしている」。リッセという街には、むしろ話すことを推奨する美術館まであるという』という記述です。また、『会話しながらの鑑賞は「共同作業」のようだ(略)補完しあったり、異なる意見を自由に口にしたり、誰かの言葉で考えが変わったり』という記述もありました。そんなものかな、と思う反面、こうした発想の下で学校の美術の時間に「鑑賞」の授業を行う場合、評価はどうなるのだろう、と考えてしまいました。ある作品を前にして、自...評価不能では

  • この「違い」はOK?

    「違ってもよいのは」3月21日精神科医香山リカ氏が、『違っていい好ききらい』という表題でコラムを書かれていました。その中で香山氏は、『人間の場合は、好みはあまりにバラバラ(略)それでも一緒に過ごさなければならないのだから、配慮やゆずり合いは欠かせない』と書かれていました。また、『私はこれが好き。これが苦手。それがひとと違っても、少しもおかしなことじゃないむしろその好ききらいこそが“その人らしさ”なのだ』とも書かれています。基本的には同感です。しかし、この「好き嫌い問題」実際には複雑な問題なのだとも感じています。例えば、「私は魚が好きだが野菜は嫌い、僕は肉が好きだが野菜は嫌い」はどうでしょうか。その人らしさでしょうか。バランスよく栄養を摂り健康に暮らすためには、直したほうがよいことであり、その人らしさと割り...この「違い」はOK?

  • 方法を身につける

    「同感」3月18日書評欄の『なつかしい一冊』コーナーで、小説家米澤穂信氏が、『「ポケットに名言を」寺山修司著(角川文庫)』をあげられていました。米澤氏は、『~言葉は忘れたことがない。「性格を持たないとき、人はたしかに方法を身につけなければならない」。アルベール・カミュ「手帖」より。私はこの言葉を、天才でないなら技を磨かねばならないと解釈した。書くべき内面がないならば、せめて上手くなれ。その技は、もしかしたら、ひょっとしたら、何かの「性格」に届くかもしれないと思った』と書かれていました。米澤氏の解釈が正しいのか否か、私には判断がつきません。ただ、私も米澤氏と同じことを考えたことがあると思い出したのです。私が教員になると決まったとき、母や姉は驚くと同時にとても心配していました。教員には向かない、と考えていたか...方法を身につける

  • 手前味噌

    「分離」3月17日『ハラスメント対策不可欠』という見出しの記事が掲載されました。『女性が政治に参加しやすい環境を整えようとハラスメント対策の充実を提唱し、2月に発足した「女性議員のハラスメント相談センター」のアドバイザーも務める三浦まり・上智大教授』へのインタビュー記事です。その中で三浦氏が語られたことが印象に残りました。三浦氏は、『(議会におけるハラスメントについて)「相談」と「調査」を分ける必要がある(略)相談は申立人に寄り添って話を聞く必要がある。一方、調査は独立性を保って当事者双方から聞き、事実認定の客観性が求められる(略)すべての自治体議会で個々に仕組みをつくるのは現実的ではないだろう。県単位など広域で設置して、エリア内の市町村も使えるようにしたらいい』とおっしゃっているのです。私は以前このブロ...手前味噌

  • 明日は我が身

    「統廃合」3月16日『本格的人員増に慎重意見も』という見出しの記事が掲載されました。『保育の「質の向上」を図るため保育士の配置基準を引き上げようという機運が、保育団体の間で高まっている』ことから配置基準の見直しについて現状を報じる記事です。その中に、『政府内からは、本格的な配置基準の改善に慎重な声が聞こえてくる(略)自治体によっては人材不足が著しい。政府内では、単に配置基準を引き上げても必要な人員を確保できず、認可が取り消される園が出るリスクも指摘されている』という記述がありました。この構図、学校にも当てはまるのではないでしょうか。近年、教員志望者が減り、採用試験の倍率の低下が問題になっています。教員の配置基準については、戦後一貫して教員増の方向で改善がなされてきました。かつての1学級50人などという時代...明日は我が身

  • 花を摘んでもいいですか

    「花を摘む」3月13日『「脱成長」と新しい社会』という見出しの記事が掲載されました。『ともに「成長主義からの転換」を唱える思想家』である京大名誉教授佐伯啓思氏と東大准教授斎藤幸平氏の対談を伝える記事です。その中に気になる記述がありました。斎藤氏の『一人一人が豊かに生きるための「富」が「商品」に姿を変えていく。森や水などかつてはみんなの共有財産(コモン)だった富を含め、あらゆるものが商品化され(略)コモンを広げていければ、新しい社会の萌芽をより具体的に描ける』という発言です。私はつれあいとほとんど毎日散歩をします。彼女は土手に咲く花を見て、「摘んでいっていい?」とよく訊きます。私の答えは「ダメ。この土手を管轄している役所の許可を得ないと泥棒になる」です。彼女はさらに「だって、このままにしておいても、しばらく...花を摘んでもいいですか

  • 熟成と沈潜

    「間違っていた?」3月12日『まず他人の思考を借りること』という見出しの記事が掲載されました。哲学者谷川嘉浩氏へのインタビュー記事です。その冒頭、『「自分の頭で考える」ことが哲学ではありません』という谷川氏の言葉が紹介されています。なかなかキャッチーな言葉です。谷川氏はさらに、『一人で考えると、簡単に考えたつもりになってしまいがち』と述べ、哲学の営みは、『他人の考えをインストールすること』だと言い切るのです。また、『性急に自分の意見を言う前に日々出会う人やものの複雑さに目をこらすこと。そうして思いもしなかったものを受け取るところから習慣や世の大勢に流されない思考や自己対話が始まる』ともおっしゃっています。考えることと直接関係はないのかもしれませんが、『私たちの生活の本分は、他の人とシェアしづらい、バズらな...熟成と沈潜

  • 年寄りの繰り言

    「意味は違うが」3月12日国際女性デー2023にちなんだ企画『声をつないで』では、『ケアの倫理』が取り上げられていました。その中に、『ケアは既存の正義論や資本主義が非常に低く評価しているけれど、人間社会の存続にとって重要な営み』『誰かのケアに支えられ、私の自由がある』などの記述がありました。ここで言う「ケア」とは、世話をするとか面倒を見るといった行為、介護施設やリハビリ病棟で使われるイメージとは異なる概念です。私もうまく言えないのですが、『ケアの倫理は第一に関係性(略)個人主義的な世界観ではなく、関係性の網がまずあるという社会認識』という説明で理解できるでしょうか。あるいは、この説明に加え、『わたしたちはすでに関係性の網の中にいる。現実にみんなが依存していて、誰かがケアしなければならない』という記述で捉え...年寄りの繰り言

  • 自分事

    「広げて」3月12日放送タレント松尾貴史氏が、『コメンテーターの条件とは』という表題でコラムを書かれていました。その中で松尾氏は、『どうしたら高齢化とさまざまな人生のリスクを軽減できるだろうかということを考えて、たどり着いた結論は集団自決みたいなことをするのが委員じゃないか。特に集団切腹みたいなものをするのがいいんじゃないか、ということです』『ある年齢で自ら命を絶ち、自らが高齢化し老害化することを事前に予防するというのは、いい筋なのではないか』という、某コメンテーターの発言を紹介し、非難なさっていました。私も強く非難すべき発言だと思います。ただ、松尾氏が、『高齢化に関する差別発言は、多くの方面から反発を呼び、海外のメディアも批判的に論評している』ことを述べ、『医療費と社会保障費を削りたいのだろうと思わざる...自分事

  • 平凡な子供以外対応不可

    「そうでない子供がいるとしたら」3月10日藤原章生氏による連載企画『イマジンチリの息子と考えた』の第8回が掲載されました。その中で藤原氏は、社会心理学者山岸俊男氏の論を引用なさっていました。『無条件に何の根拠もないけれど、まず信頼するところから他者との関係を人間は始めてしまう。それが人間の特徴である』というものです。そしてその無根拠さが『社会関係を円滑にしたり、人間社会を豊かにする』というのです。ちなみにそれがAIにはできないのだそうです。私は、もし、無条件の信頼が人間の特徴であるならば、それを欠いた人がいるとすれば、その人は異常者なのだろうか、と考えてしまいました。教員時代に受け持った子供の中に、最初は不信や猜疑心をもって私に接する子供がいたことを思い出したからです。Fさんは、私が教員生活2校目、異動し...平凡な子供以外対応不可

  • 絶対正義の人

    「自己保身」3月10日論点欄は、『東日本大震災進む風化』というテーマで、2人の識者が見解を述べていました。私はその一人、PRプロデューサー殿村美樹氏の発言に虚を突かれました。殿村氏は、復興庁の『持続可能な復興広報を考える検討会議』のメンバーとして、会議において『風化させないことは大事だが(略)忘れてほしいと思っている人がいる』と発言したというのです。阪神淡路大震災のとき、西宮市に自宅を構えていた殿村氏は、『生活も震災前のように戻ると、「いつまで被災者扱いが続くのか」「早く忘れてほしい」と強く感じるようになった』というのです。そして、『東日本大震災では被災した農家や漁業者、中小企業を相手に新規ビジネスに関する助言をしてきた』中で、食べて応援というイベントについて、被災者の『いつまでも「食べて応援」と言い続け...絶対正義の人

  • 専門職の力

    「それはできる」3月9日『国際女性デー「性の権利」を守る社会に』というタイトルの社説が掲載されました。『世界的に「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」を尊重する取り組みが進んでいる』にもかかわらず、我が国における取組が進んでいないことに警鐘を鳴らす内容です。その中に、性教育についての記述がありました。『「性の権利」を社会に根付かせるために欠かせないのが、「包括的性教育」である。体や生殖の仕組みだけでなく、人間関係や性の多様性、ジェンダー平等なども含め、幅広く体系的に進めるものだ』とありました。そして我が国の性教育の現状について、保守派の政治家による批判によって遅れていることを指摘しています。全くその通りだと思います。ただ、頑迷な政治家への働きかけについてはともかく、「人間関係や性の多様性、ジェ...専門職の力

  • 委ねることの罪

    「委ねることの罪」3月8日『原発への「特攻」今も苦悩』という見出しの記事が掲載されました。東日本大震災時の原発事故対応に際して、元東京消防庁消防総監新井雄治氏の心情に迫る記事です。記事によると、新井氏は、『東京消防庁に出動要請がかかるのは時間の問題だった(略)本人の意向を尊重する形にして、139人の派遣部隊を整えた』そうです。当時の心境について新井氏は、『消防で働いている者たちだ。1000人に1人も断らないだろう』と高をくくっていたと述懐しています。しかしその後、『爆発が起きれば、隊員の大半が死ぬか重い障害を追うのは確実な作戦だ。細かく安全対策をしたところで、全員を無事に帰還させる自信はなかった』という思いが浮かんできて、『特攻を命じてしまったのかもしれない』と考えたのだそうです。先の戦争で行われた「特攻...委ねることの罪

  • 私は資格なしですか

    「究極の揚げ足取り」3月8日『子育てを罰ゲームにしない』というタイトルで行われた対談が掲載されました。対談者の1人、サイボウズ社長青野慶久氏の発言に引っ掛かりました。青野氏は『経営者自ら育休や時短を取得』した方で、『育児体験を積極的に公表してきた』方でもあります。「並み」の男性とは違い、出産や育児について理解が深く、女性が抱える悩みや困難についても課題意識を持たれている方です。さて、私が気になった青野氏の発言とは、『妻の出産に立ち会ったお陰かも。出産が母胎に与える影響の大きさを知りました。企業の経営者や管理職は出産に立ち会い、育休を取るべきだと思います』です。何が気になるんだ、当然のことを言っているだけじゃないか、と思われる方がいるかもしれません。私も青野氏がおっしゃりたいことに反対なわけではないのです。...私は資格なしですか

  • 優しくて思いやりのある子供たちですから

    「優しい子供たちですから」3月7日『毎日ユニバーサル委員会第13回座談会』の様子が掲載されました。その中にとても気になる発言がありました。まず、順天堂大大学院教授鈴木大地氏の発言です。『日本の文化として、困った人や弱った人を助けるという道徳心も広く浸透していると思います。日本の独自性を生かした障害者へのアプローチを考えてみてもいいのではと考えます』。それを補足するように、前田浩智主筆が『障害者に関して、学校現場では主に道徳心を教えていたように記憶しています』と発言なさっています。一方で、約50年ご自身が車椅子生活を送られている元東洋大教授川内美彦氏は、『日本も批准した国連の「障害者権利条約」がいい例です。「思いやり条約」でも「福祉条約」でもありません。障害者の権利である平等な社会参加の実現を目的にしていま...優しくて思いやりのある子供たちですから

  • 乞う反論

    「私立、別学」3月4日書評欄に、東京工業大教授中島岳志氏による、『「ネット右翼になった父」鈴木大介著(講談社現代新書)』についての書評が掲載されました。著者の鈴木氏は、『若い女性や子どもの貧困問題を取り上げてきたジャーナリストで、社会的弱者に寄り添ってきた』方だそうです。本書は、そんな著者の父が、『晩年、「ネット右翼」的な発言を繰り返すようになり~』ということについて、考えたことを書かれたものです。その中に考えさせられる記述がありました。『「人はその当事者を目の前にしない限り、その人の困難について想像力を働かせることはできない」。そして「自身が困難を乗り越えた経験のある者は、その経験を基準に『他者も乗り越えられる』と誤認する」。大学に進学し、一部上場企業に勤めた父は、貧困などに追いやられた当事者との接点が...乞う反論

  • 息抜き

    「ちょうどよいバランス」3月2日ナレーター近藤サト氏が、『勝手に流れてくれる安心感』という表題でコラムを書かれていました。その中で近藤氏は、息子さんのテレビ観を紹介なさっています。『彼は、テレビを見ながら、あるいは、聞きながらスマホを使いたい(略)BGMのようにニュースやバラエティー番組を見つつ、オンラインゲームに興じたり、ユーチューブやインスタを見たりするのが心地いい』というのです。そして、『実はさまざまな調査でこの「ながら視聴」をする人が年々増加していることが分かっています』と続け、テレビが受動的なメディアであることがその原因だと推論したうえで、『これからのテレビの存在意義を考えると逆の強味になる可能性がある』と述べられているのです。その理由として近藤氏は、『(スマホを使うなどの能動的行為は)疲れる行...息抜き

  • 大谷フィーバーは?

    「豊かな人生」3月2日専門記者田原和宏氏が、『Z世代のスポーツ離れ』という表題でコラムを書かれていました。その中で田原氏は、『若者のスポーツ離れの傾向は明らかだ』と述べ、具体例として『20~60代の男女を対象に最近1~2年間のスポーツ観戦についての調査』結果を紹介なさっています。その結果はというと、『20代は半数を超える54%がテレビやネット配信も含めて観戦しなかったと回答した。夏冬2回の五輪があり、調査時期がサッカーのワールドカップと重なることを思えば、驚きの低さ』だったのです。正に驚きです。私は、特にスポーツファンというわけではありませんが、大相撲は必ずTV中継を見ますし、中高と部活に所属していた卓球の全日本の決勝と世界選手権の放送は見ます。サッカーはさほど興味がありませんが、さすがにワールドカップの...大谷フィーバーは?

  • 良い影響?悪い影響?

    「いいことor悪いこと」3月1日『遺族側に賠償命令アイドル自殺会見で名誉棄損』という見出しの記事が掲載されました。『アイドルグループのメンバーだった女性の自殺を巡り、遺族らが「所属事務所のパワハラが原因」などと事実と異なる記者会見をしたため名誉を傷つけられたとして所属事務所「Hプロジェクト」と佐々木貴浩社長が遺族らに計約3700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、名誉棄損の成立を認めて遺族と代理人弁護士5人らに計約560万円の支払いを命じた』ことを報じる記事です。まだ一審ですし、遺族側は判決に納得していないようですので、最終的な結論は不明です。ただ、私はこの判決がもたらす影響について、考えずにはいられません。それは、適切な表現ではないかもしれませんが、「弱者の逆襲」ということです。一般的...良い影響?悪い影響?

  • 平和の前提

    「戦争阻止教育」3月1日論点欄は、『続くウクライナ侵攻』というテーマで、3人の識者が『悲観的な見通ししか見えない中、現状を考える』ということで論じられていました。その中で、静岡県立大准教授浜由樹子氏の話に注目させられました。浜氏は、『日々の仕事や暮らしに追われる若年層は、戦争に関心を払う余裕すらなさそうだ(略)ウクライナ情勢について18~24歳の73%、25~39歳の66%が「まったくフォローしていない」「特に関心がない」』『ロシア社会は政治離れが進んでいた(略)個人としての政治参加の意思が「まったくない」「どちらかといえばない」は計77%強。理由は「何も変わらない」「政治はしみんのものではない」(略)政権の対抗馬となる野党もない』などといったロシアの国民意識、政治状況を説明し、『この戦争は国民の受動性や...平和の前提

  • 2000万円の誘惑に負ける

    「あなたならどうする」2月28日『難聴11歳逸失利益85%』という見出しの記事が掲載されました。『聴覚支援学校に通っていた女児が重機にはねられ死亡した事故を巡り、遺族が運転手らに計約6100万円の損害賠償を求めた訴訟に判決で、大阪地裁は27日、約3770万円の支払いを命じた』ことを報じる記事です。訴訟の争点は、『難聴だった安優香さんの逸失利益をどう評価するか』でしたが、『就労の上で他者とのコミュニケーションが制限されることは否定できない』とし、『全労働者の平均年収をもとに算出すべき』という遺族の訴えを認めなかったようです。この判決について、民法を専門とする立命館大名誉教授吉村良一氏は、『裁判所は差別や偏見を払拭する判断を進んで示すべきだった』と批判しています。私も同じ意見です。一方で、こんなことも考えまし...2000万円の誘惑に負ける

  • 目立ちたい、褒められたい

    「温故知新」2月27日専修大教授武田徹氏が、『「平凡教育」見直すとき』という表題でコラムを書かれていました。見出しを見たとき私は、平凡教育というのは武田氏の造語かと思いましたが、『民俗学者・柳田国男の用語』であり、『個人の能力を高める「非凡教育」に対して村を持続可能なものにする知恵の共有を意味してきた』ということだそうです。武田氏は、現代社会を『「できる力」を育んできた非凡教育のグロテスクな到達点」』とみなし、『いかにコミュニティを維持するか。そのための知恵と工夫を共有する平凡教育的な性格を現代のメディアリテラシー教育は備えるべきなのだろう。必要に応じて「できる」を抑制できる節度の獲得』が重要という見解を披露なさっているのです。私なりの解釈では、非凡教育は、一人一人の個人が自らの能力を伸ばし、それを思いっ...目立ちたい、褒められたい

  • 役に立たないようで役に立つ

    「人間と社会を理解する」2月25日テレビ報道記者金平茂紀氏が、『ウクライナ侵攻1年そもそもなぜ起きた?作家との対話』という表題でコラムを書かれていました。その中で金平氏は、『この1年間、頻繁にテレビに登場した「最多出場者」は、現下の戦況を分析する軍事問題の専門家(略)ただ、長期化、泥沼化の様相を見せつつあるこの戦争を、今後、戦況面だけから報じることには限界がある』とし、『注目しているのは、歴史家と文学者、アーティストの役割、そして名もなき市井の人々の声を引き出すジャーナリズムの働きである』と述べていらっしゃいます。その通りだと思います。そして、金平氏が挙げたのは、今の社会風潮の中で軽視されている存在なのではないかという思いが捨てきれないのです。歴史家は、何の役にも立たない過去の出来事をいじくりまわしている...役に立たないようで役に立つ

  • 学校関係者じゃなくても知っている

    「今さら言われても」2月25日『識字調査全国実施へ始動』という見出しの記事が掲載されました。『国立国語研究所が識字調査の1948年以来の全国実施を目指している』ことを報じる記事です。記事によると、既に『岡山などで、義務教育を受けられなかった人たちが通う夜間中学の生徒らを対象に実施。約2割が十分に読み書きができず「日常生活に支障の恐れ」との結果』が出ているそうです。私が気になったのは、『義務教育を十分受けられないまま中学を卒業した「形式卒業者」』についての記述です。記事には、『漢字が読めず、電車の切符が買えない』『今でも読み書きに不安があり、運転免許の取得も断念』『漢字が分からず、日報には平仮名ばかり。「漢字が書けないのか」と上司に言われても「理由が言えず、ただ謝っていた」』など、形式卒業者の窮状が綴られて...学校関係者じゃなくても知っている

  • 70歳の老婆?

    「日本もそのうち」2月22日『英出版社作品の表現改変物議』という見出しの記事が掲載されました。『英作家ロアルド・ダールの作品中の表現が、出版社側の判断で改変されている』ことが明らかになったと伝える記事です。記事によると、『従来の「太った」が「大きい」、「鼻は小さく平らだった」が「鼻は小さかった」、「邪悪な女」が「邪悪な人」、「ピンクの肌」が「滑らかな肌」といった表現に変えられた。また、かつてフランス領だったインドの地名ポンディシェリを名に持つ王子は、現地タミル語の「プドゥッチェーリ王子」となり、人種や植民地を想起させる名前も変更された』ということです。要するに、容姿=太った→大きい、ジェンダー=女→人、人種=ピンク→滑らか、歴史=地名の変更、というように、差別や偏見を助長することがないように配慮して、表現...70歳の老婆?

  • 民主主義の基盤

    「そこまでは言い切れない」2月22日『米分断根底は「民主的」』という見出しの記事が掲載されました。東京女子大学長森本あんり氏へのインタビュー記事です。その中で森本氏は、『ワクチンを拒否する陰謀論も、権力への警戒です(略)政府のいいなりになるのは民主主義ではありません。陰謀論も権力への健全な疑いで、根っこは民主的なのだと思います』と語られています。民主主義には、「権力への健全な疑い」が必要という主張には共感します。我が国においても、政権批判が反日的というような短絡的な発想の言論が存在感をもつ現状があり、危機感を抱いていたところですから。ただ、ワクチン批判の陰謀論まで、民主的という主張には、どうしても納得できません。政府(権力)に盲従する姿勢が民主主義にそぐわないことは間違いありませんが、その逆に政府に対して...民主主義の基盤

  • みんな同じ、でいいの?

    「全部同じ」2月21日『セクハラ1回で降格』という見出しの記事が掲載されました。『パナソニックホールディングス傘下でIT事業を手がけるパナソニックコネクトが、1回でもセクハラがあった場合に降格を前提とする罰則を導入』したことを報じる記事です。記事によると、『長期間や複数回のセクハラで降格することはあっても、1回で即降格は珍しい』そうです。同社社長の樋口氏は、『世界的にコンプライアンスやダイバーシティーのレベルが上がっており「風通しを良くしなければ競争に負ける」』と語っています。日本ハラスメント協会代表理事村嵜氏も、『大企業が先陣を切ることで社会的にも抑止力になる』と、同社の取り組みを評価なさっていました。しかし私は疑問です。教委に勤務し、教員の処分に関わってきた者として、処分が一律であることが現実的ではな...みんな同じ、でいいの?

  • あなたにとってはそんなことでも

    「大切な記憶」2月20日医師・作家の鎌田實氏が、『「忘れる力」を生きる力に』という表題でコラムを書かれていました。その中で鎌田氏は、『一度保持した記憶も、思い出して活用する必要がなければ、記憶の底にしまわれ、いつしか忘れ去られていく。それは悪いことじゃない。忘れられるからこそ、新しい情報や必要な情報を記銘し、保持し、想起することができる』と書かれています。確かにそういう面はあるかもしれません。しかし、教員の場合、そうもいかないのです。何十年ぶりに教え子に会うことがあります。教え子と私の間には、長い空白の年月があり、共通しているのは教え子の子供時代の思い出だけです。当然、私との間で思い出話が語られることになります。私の経験では、彼または彼女が語る「印象に残っている思い出」は、私が彼らに関わって保持している記...あなたにとってはそんなことでも

  • 幸せって何だっけ

    「元気の素」2月19日心療内科医海原純子氏が、『推し』という表題でコラムを書かれていました。その中で海原氏は、『若者たちを応援したりしていると、自然に穏やかで優しい気持ちになってくることに気がついた。どうやら人を応援すると自分の心の元気さが上るらしい。若者が「推し」をしている時もそんな感じなのかしら、と思った』と書かれています。そうか、これだったのかと思いました。現在、教員志望者が減り、教員採用試験の倍率が下がり、このままでは教員の質の低下が避けられないと懸念されています。教員は、任期のない職になってしまったのです。かつて、好況期には企業への就職希望者が増える分教員志望者が減り、不況期には教員志望者が増えるとされてきました。現在は、日本経済の地盤沈下が指摘され、失われた30年と言われる長期不況であることを...幸せって何だっけ

  • その程度の『軽さ』だったのか

    「秤にかけて」2月18日『卒業式「歌わずに」マスク外し発声控えて』という見出しの記事が掲載されました。『都教育委員会は都立学校の今年の卒業式で、国歌や校歌などを歌わない方針を決めた』ことを報じる記事です。記事によれば、小池都知事は、『(マスクを)外すにしても、発声については控えましょうという(都教委の)判断の表れだ』と述べているそうです。複雑な思いです。都立高の卒業式における国歌斉唱については、長年、学校現場で校長などの管理職と教職員団体の活動家とが、厳しく対立し争ってきた歴史があります。過去には大量の処分者を出し、最近に至るまで裁判で処分の是非が争われてきました。私も都教委勤務時には、都立高の卒業式に来賓という名目で派遣され、国歌斉唱の状況を把握する業務に従事したこともありました。それらの機会を通して、...その程度の『軽さ』だったのか

  • 芸術系の脳

    「比較選択する力」2月16日東洋大INIAD学部長坂村健氏が、『AI時代の教育現場』という表題でコラムを書かれていました。その中で坂村氏は、『昨年11月にオープンAIが公開した「チャットGPT」のユーザーはすでに1億以上』という事実を告げ、チャットGPTが学校教育に及ぼす影響について論じていらっしゃいます。坂村氏は、『大学の教育現場ですでに報告があるが、チャットGPTを自由に使わせても、リポートの課題をうまく設定すれば、学生の能力の差がちゃんと出る』ことを挙げ、『過去に例のない状況でも、自分で問題設定して言葉にし、解くのはAIでも解決策を選ぶ責任は人間が負う。そういう力を養う必要がある』と結論付けていらっしゃいます。要するに、問題発見力もしくは問題創造力と多様な解がもたらす状況をイメージするシミュレーショ...芸術系の脳

  • 共存共栄

    「学校内学校」2月16日『保育施設内で有料習い事』という見出しの記事が掲載されました。『保育園や認定こども園を中心に、通常の保育時間中に高額な月謝が必要な習い事を実施するケースがある』ことを伝え、その現状と問題点を報じる記事です。記事によると、『英語や体操教室などが多く、「幼いころからいろいろ体験させたい」と子どもを参加させる一方で、「うちの子だけ参加させないわけにはいかない」といったモヤモヤ感を抱える保護者もいる』ということです。『家庭の経済状況で園児が分けられる懸念』もありそうです。この問題自体、大変考えさせられるものですが、私は学校でも…と考えてみました。小中学校においても、学校生活の中に、「空き時間」は存在します。休み時間もトータルでは1日1時間ほどになりますし、給食や清掃の時間も、手早く終えて「...共存共栄

  • 2つの道

    「2つの道」2月14日オピニオングループ小国綾子氏が、『ポッドキャスト始めます』という表題でコラムを書かれていました。その中で小国氏は、『毎日新聞のポッドキャスト「今夜、ブルーポストで」に参加することになった』ことを告げ、その理由として『電車で人々のスマートフォンを観察すると、文字を読む人がどんどん減っている。多くは動画かゲーム(略)紙の新聞はいつか消えるかも、と覚悟はしてきたけど、文字コンテンツ自体が読まれなくなる可能性に気づき、新しいことにも挑んでみよう、と思ったのだ』と書かれていました。なるほどな、と思う気持ちと同時に、そういう選択もあるのかと少し驚きもしました。私なら、文字コンテンツが今後も親しまれていくためにはどうしたらよいか、という方向で考えるとおもったからです。Aが衰退していくという事態に直...2つの道

  • 私は非愛国者?

    「愛国心」2月14日専門記者大治朋子氏が、『その胸に抱かれていれば』という表題でコラムを書かれていました。ロシアのウクライナ侵攻という事態を受け、そこに住む人間と土地の結びつきについて書かれたものです。その中で大治氏は、『ウクライナ政府は約1年前、「市民の詩」を掲示するサイトを立ち上げた』ことを伝え、いくつかの詩を紹介なさっています。『血と心と魂と』と題された詩は、『私の家は世界で最高の場所だ。ここにいると何も怖くない。胸いっぱいに深呼吸して、明日を信じる(略)私はウクライナ人だ』という内容です。また、『戦士』という詩については、『「敵の刃に私が恐れを感じることはない」と言い切る。「我々の心は矢だ。敵の武具を貫く」。ロシア兵の武具の下にあるのは「弱い魂」だが、「我々の心は戦闘によって受ける屈辱から守る盾で...私は非愛国者?

  • 本物のバッグは欲しくない?

    番外「チンプンカンプン」WSJWSJ日本版に、『現金にそっぽ向く米国の子ども多くの家庭でお小遣いはゲームの仮想通貨で支給』という見出しの記事が掲載されました。困惑しました。数回読み返してみたのですが、チンプンカンプンなのです。次のような記述がありました。『家事を手伝ってくれた子どもたちにお小遣いをあげようとした。だが、現金ではダメだということがすぐに分かった。娘たちはロブロックスのオンラインゲームで使われる仮想通貨「ロバックス」で支払われることを望み、しわくちゃのドル紙幣に見向きもしなかった(略)長女のケイリーさんは最近、ゲーム内でルイ・ヴィトンのハンドバッグを買い、次女のジネルさんも同じくグッチのジャケットを手に入れた。いずれの商品もロバックスで5㌦相当に満たない価格だ。「現実の世界でお金を使うとしたら...本物のバッグは欲しくない?

  • 更生の機会

    「失敗から学ぶ」2月12日連載企画『私のセンバツ春の涙、いま』の第2回は、『1995年出場育英阪神コーチ藤本敦士』氏を取り上げていました。『悪送球の教訓指導の根』と題された記事は、『遊撃手の一塁悪送球でサヨナラ負け。グラウンドにうずくまった遊撃手』であった藤本氏が、『以来、キャッチボールを大切にするようになった。単なる肩慣らしではない。この一球が正確に相手に届かないと、どんな結果を招くか』と30年近く前の失敗を胸に刻み込んで、選手の指導に当たる姿を伝えています。失敗を糧にして、再起し成長する、そんな元高校球児を取り上げる特集記事は、今後も続くようです。野球に限ったことではなく、失敗に押しつぶされることなく、その苦さを忘れずに教訓として生かしていく、そうした生き様は、多くの人の共感を得ます。ところが、全く異...更生の機会

  • 柔軟で強靭な組織という視点

    「多様性の視点」2月12日心療内科医海原純子氏が、『学び直しって何?』という表題でコラムを書かれていました。その中で海原氏は、『人はすべてを経験することはできない。経験した人でなければ分からないことがあるからその意見を聞き、経験者を施政の場に加えることが必要であり、それが多様化ということなのだと思う』と書かれています。海原氏は、岸田首相の育休中のリスキリング発言に関連して言われているのですが、私は全く違うことを連想してしまいました。それは、小学校における教科担任制の導入についてです。最近、港区が区内小学校全校で高学年の教科担任制導入を決めました。他の自治体でも導入を検討したり、モデル校で導入したりする事例が増えています。その背景としては、主に学びの高度化への対応と、いじめの原因とされる担任と子供との人間関...柔軟で強靭な組織という視点

  • 憶えていたのは

    「環境整備」2月11日書評欄に、書店員花田菜々子氏による『おうち性教育はじめます思春期と家族編』についての書評が掲載されました。その中に次のような記述がありました。『もし親のあなたが勇気を出せずに何ひとつ実践できなかったとしても、リビングに置いて子どもに手に取ってもらう、というやり方でも役に立つのだ』という記述です。親子で性について話し合うということについて、その必要性は理解していても、実際にはハードルが高いと感じる保護者は多いと思います。そうした保護者に対する救いの一言です。私はこの記述から、教員時代のことを思い出しました。それは、本を置いておく、ということからの連想です。私は、学級文庫を作っていました。児童用図書ではなく、私が私的に買って読んでいた文庫本の中から、子供に読ませても害がないと思った本を数...憶えていたのは

  • 保険を求める人生設計は

    「理解不能」2月10日藤原章生氏の連載企画『チリの息子と考えた』の第4回が掲載されました。その中で、藤原氏の息子さんの言葉が紹介されていました。『お父さん、お金がないと生きていけないとか、働かないと生きていけないっていう考え方にとらわれているんだよ。そんなものなくたって自由に生きていけるんだよ』という言葉です。ちなみに、息子さんは世間知らずで頭でっかちな「若造」ではありません。何年も自立して外国で暮らし、『困ったときには、銅鉱山で通訳をしたり、地方都市で日本語を教えたり、農場でブドウ狩りをしたりとバイトにいそしんでいる』人で、生きるたくましさを備えている人です。藤原氏は、そんな息子さんの言葉に対して、『うまく反論できない』と述懐なさっているのです。藤原氏の息子さんは、安定志向の私とは正反対の人のようです。...保険を求める人生設計は

  • 補完関係

    「もっとほかにも」2月8日『悪質いじめ警察と連携を文科省19事例明示し通知』という見出しの記事が掲載されました。『文部科学省は7日、全国の教育委員会などに対し、重大ないじめ犯罪行為に相当するようないじめは、速やかに警察と連携して対応するように求める通知を出した』ことについて報じる記事です。あまりにも当然のことです。その当然のことを改めて通知しなければならない現状は深刻です。学校が警察への通報を躊躇う状況があるのです。教員に、教育の現場に警察の論理を持ち込むのは、教育の敗北だというような時代錯誤な感覚が残っていることが原因です。日常的に子供と接し、子供と信頼関係を築いている私たち教員が、真摯に向き合えば子供たちは心を開き、反省してくれるというような非現実的な幻想に囚われているのです。全く逆です。悪質ないじめ...補完関係

  • 歴史も政治も経済も

    「どの程度?」2月8日『3億円ウォーホルの「箱」炎上』という見出しの記事が掲載されました。『米ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホル(略)の代表作の一つ「ブリロの箱」が今、鳥取県で大きな議論を巻き起こしている(略)同県が約3億円で購入したことに対し、「税金の無駄遣い」「作品の意味がわからない」といった声が噴出した』ことを報じる記事です。私も記事に添えられている写真を見ましたが、とても3億円の価値があるようには思えず、興味をもって記事を読みました。その中に、日本の美術教育が抱える問題を指摘する記述がありました。『現代アートについての「普通の人が見てもきれいだと思わない」という意見は、「美術は感性で見るものだ」という誤った認識に基づいている。美術鑑賞は、ある程度の知識を前提とする知的な行為なのに、日本では実...歴史も政治も経済も

  • 両立しない?

    「そうなんだけど」2月4日読者投稿欄に、大分県M氏による『育児は休暇ではなく「労働」』というタイトルの投稿が掲載されました。その中でM氏は、『育児が「労働」であるという意識が日本人に欠けている』『育休=休みという考えが間違っている』と指摘なさっています。その通りと思う反面、育児を「労働」と言い切ることに心理的な抵抗感があるのが、私の正直な気持ちです。労働という言葉が含まれる単語を思いつくままに並べてみると、強制労働、奴隷労働、労働組合、労働運動、重労働、労働力、労働者階級などが浮かびます。キリスト教文化では、労働は苦役とされていると聞いたことがあります。出来るならばしないで済ませたいが、労働せずに生活できるのはごく一部のブルジョアに過ぎず、他の階級の人間は、いやいやでも労働力を切り売りして生きるために必要...両立しない?

  • 負け犬も生きていける

    「負け犬に」2月3日『戦争国が国民犠牲にすること』という見出しの記事が掲載されました。エジプト考古学者吉村作治氏へのインタビュー記事です。その中で吉村氏は、『若者たちは社会の仕組みに入り込もうとしています。誰もやっていないことをするのではなく、誰かがやってうまくいったことをしたがる』と話されています。最近の若者論としてよく目にする指摘です。でもその後が違うのです。吉村氏は先の指摘に続けて、『でも決して好ましくないわけではない。穏やかな日常が社会を築いているんです』と、そんな「今」を肯定的に捉えていらっしゃるのです。我が意を得たり、という思いです。若者に限らず、今の世の中は、「挑戦」をすることこそ尊いという言説で満ちています。公務員志望という若者は若さを失った情けない存在で、高齢者でもまだまだできることはた...負け犬も生きていける

  • 考え抜いての結論で

    「それはできない」2月2日『苦しみ伝える父の決意』という見出しの記事が掲載されました。『警察や自治体は(性被害を受けた)女児への配慮から詳しい被害内容を公表せず、マスコミも具体的な表現を避けて報道した。「事件の本質がオブラートに包まれてしまうと、被害者の深刻な苦しみが届かない」。そんな思いで取材を自ら希望した父親の叫びを伝えたい』という趣旨で書かれた記事です。記事によると、被害に遭った娘さんは、『学校のみんなに同じ思いをしてほしくない』と言い、それを受けて父親は警察官に『「娘が特定されない範囲で事件の状況や場所を全て発表してもらっていい」と伝えたが、「被害者保護の観点から出さないと思う」と告げられた』そうです。メディアも『事件現場の状況や被告と女児のやり取り、具体的な手口には触れていない』ことを知り、『女...考え抜いての結論で

  • あなたがいなければ

    「頼りにされる」2月1日『石原信雄さん死去』という見出しの記事が掲載されました。『竹下内閣から村山内閣まで7内閣で、事務方トップの官房副長官を務めた石原信雄さんが1月29日、多臓器不全のため死去』したことを報じる記事です。記事では、『竹下、宇野、海部、宮沢、細川、羽田、村山の7内閣で刑年3カ月』副長官を務めたとありました。竹下氏から宮沢氏までは、派閥等は違うものの自民党内閣ですが、その後は政権がくるくる変わります。自民党政権の宮沢内閣から、非自民連立の細川内閣へ、そして非自民という点では変わらないものの構成政党が変わる羽田内閣へ、さらに自民党が政権復帰した自社さ連立の村山政権へと、政権交代が行われても、歴代首相から信頼され、官房副長官の職を務めたという点に、石原氏のすごさがあります。私が教委の指導室長を務...あなたがいなければ

  • カステラか饅頭か

    「勤務時間」2月1日『秘書官の土産購入「公務」』という見出しの記事が掲載されました。『(岸田首相の)長男で首相秘書官の翔太郎氏が首相の欧米5カ国歴訪の際、公用車を使って購入した閣僚らへの土産』について、『政治家としての首相の土産を購入する、これも政務秘書官の本来業務に含まれ得る、すなわち公務だと思う』と首相が語ったということについて報じる記事です。苦しい言い訳だと思います。しかし、ここでは深入りしません。私が考えたのは、教員の「出張」についてです。私も何回か「管外出張」に行きました。他府県の学校や教育研究所、教委などを訪問して、特色ある教育実践や新しい教育課題への先進的な取り組みなどについて学び、今後の教育活動に生かすという趣旨で行われるものです。そのとき、出張で学校を空け授業ができない分、補教などで迷惑...カステラか饅頭か

  • 知らぬは自分ばかりなり

    「過剰」1月31日長崎市長田上富久氏が、『若者へ平和のバトン』という表題でコラムを書かれていました。その冒頭田上氏は、『平和宣言文起草委員会に、ある年、初めて若い世代の委員に入ってもらいました。「私たちに『原爆はダメだ』ということから教えないでほしい。何が起きたかを教えてほしい。ダメかどうか、自分で考えたい」(略)彼の意見は、私を含めた従来の委員たちをハッとさせるものでした。自分で感じ、考えるプロセスを経なければ、、本当の意味で自分事にならないと、彼は言いたかったのでした』と書き出しています。私もハッとさせられました。さらに田上氏は、『若い女性の委員はこう言いました。「被爆の情景描写が強烈すぎると、どうしてもゲームや映画のように思えてしまう。今朝、朝ごはんを作ってくれたお母さんと、いつも相談に乗ってくれる...知らぬは自分ばかりなり

  • 「知」を強制する

    「それが学校」1月30日連載企画『学校とわたし』欄は、ソニー・グローバルエデュケーション会長礒津政明氏へのインタビューでした。その中で礒津氏は、『国語や社会の授業でも好きな物理や数学の問題集を開いていた』ような生徒であり、『受験では、得意な理系科目で勝負できた東京工業大に進みました』と述べていらっしゃいます。その続きがあります。大学入学後、『ところが最も印象的だったのは社会学者、橋爪大三郎先生の哲学の授業。高校時代まで捨ててきた文系科目でした』とおっしゃっているのです。そして、『橋爪先生の講義に出合うまで数学や物理さえ分かればよく、社会の仕組みは本を読めば分かるし、人に教えてもらう必要はないと思ってきました。しかし独りよがりでは巡り合えない知識があり、異なる視点を知る大切さに気づくことができました(略)教...「知」を強制する

  • 思い出づくり

    「そんなもの?」1月28日人生相談欄に、29歳の中学校教員からの『中学校って何?』というタイトルの相談が掲載されました。その中で相談者は、『高校受験を控えたこの時期は学校を休む生徒が増えます。「学校に行く意味がない」と保護者に言われる生徒が多く、代わりに塾に行く生徒もいる』と現状を述べ、『仲間と共に過ごす最後の時期に生徒が学校にいません。中学校とは何なのでしょうか』と問うています。回答者は劇作家・俳優の渡辺えり氏です。渡辺氏は、『中学生の時がもっとも充実(略)生徒会の会報づくりや部活の稽古を夜遅くまでやりました。帰りは男子生徒が女子生徒を家まで送り届けてくれました(略)友達と過ごしたり、みんなが喜ぶ活動をしたりすることが生きがいでした。本や演劇の面白さを知ったのも中学生の時代でした(略)連携の面白さや仲間...思い出づくり

  • タレント???

    「教員界は」1月28日『芸能界のハラスメント悪弊断ち切る覚悟が必要』というタイトルの社説が掲載されました。『長年の悪弊を断ち切れるのか、芸能界の覚悟が問われている』という問題意識で書かれたものです。内容は正論であり、私もまったくの同感でした。ただ、本当に枝葉の部分の一言が気になってしまったのです。それは、『才能がものをいう芸能界では、現場における暴力的、差別的な言動が見過ごされがちだ』という記述です。この記述が正しいとすれば、芸能界以外の分野では、才能がものをいわないのか、つまり才能以外のもので評価される世界だということになります。当然、教員の世界も、です。では、教員は何で評価されるのでしょうか。そのことを考える前に、そもそも、教員にとって「才能」って何でしょうか。教員の能力資質という言葉はよく使われます...タレント???

  • 少しだけ反省

    「疑問に感じない?」1月27日『大リーガー最多5人WBC参戦侍J全30人発表』という見出しの記事が掲載されました。『第5回ワールド・ベースボール・クラシックに出場する日本代表「侍ジャパン」の残り選手18人が26日、発表され、全30選手が出そろった』ことに関する記事です。事実を淡々と伝える記事で、特に目新しい情報はありません。ではなぜ今回この記事を取り上げたかというと、「侍」J、「侍」ジャパンという名称が気になったのです。なぜ、「侍」なのか、どうして「町人」でも「百姓」でも「公家」でもなく、「侍」なのか、という疑問です。侍という存在は、明治以降にはなく、一般的に言えば、武家による統治が始まったとされる鎌倉から江戸時代の武士を指す言葉でしょう。その時代の我が国には、いわゆる侍以外の人がたくさんいたはずです。と...少しだけ反省

  • 学校で生きる

    「学校という社会」1月26日『「つながり」が生むスポーツの価値』という見出しの記事が掲載されました。コロナ禍の東京五輪について考察し、『札幌市が招致を目指す2030年冬季大会で語られるべき意義は何か』を専門家に問う記事です。その中に、次のような記述がありました。『ウェルビーイングというと、幸せや健康と訳されがちです。幸せとは一瞬の感情のことを指しますが、ウェルビーイングとは持続する豊かな状態を表す言葉で、意味が異なります。また、ウェルビーイングは心身の健康だけでなく、社会との関係性における健康も含まれます。自分の役割実感や貢献実感、そして自分の居場所の実感などです』。このウェルビーイングの概念、これこそ学校という社会の中で実現されなければならないものなのではないでしょうか。心身の健康などは前提条件として誰...学校で生きる

  • 正念場がくる

    「禁止の実効性」1月25日『AI応答ソフトに1兆円マイクロソフト投資へ「思考力低下」利用禁止する学校も』という見出しの記事が掲載されました。『米新興企業「オープンAI」が開発した人工知能を使った自動応答ソフト「チャットGPT」』に関する記事です。記事によると、『対話のスムーズさが話題となり、インターネットの使い方を変える可能性が指摘される一方、思考力低下につながると利用を禁止する学校も現れた』ということです。『学生がリポートの作成などに使用する恐れがあるため』だそうです。授業や講義などの際に使用を禁止するのは、イメージが浮かびます。でも、教員の目の届かないところ、放課後や休日に自宅で、となればどのように禁止令の実効性を確保するのでしょうか。別のAIを使って照合すれば、「チャットGPT」を使ったか否かが分か...正念場がくる

  • 楽になった、でいいの

    「どうしてる」1月24日大学生が作るページ『キャンパる』に、『「SNSで」が圧倒的多数』という見出しの記事が掲載されました。『年末年始の恒例行事として定着していた年賀状書き(略)SNSを駆使する若者は、年賀状についてどう感じているのだろうか』ということで、アンケート調査を実施した結果について報じる記事です。結果は7割が年賀状を出していない、でした。また、『新年のあいさつでLINEやツイッターなどのSNSを利用したかどうか』という問いには、9割が利用したと答えたそうです。そして私が感心したのは、『「友人にはLINEで簡略に、先生などにはメールで」というように相手によって手段を使い分ける』という記述でした。これは大学生の話です。彼らは、『年賀状を出さなかった人全員が「過去に出したことがある」』と答えているので...楽になった、でいいの

  • マンツーマンではなく

    「下支え」1月23日『格差の再生産「学校の力」見つめ直そう』というタイトルの社説が掲載されました。『親の貧困が子に引き継がれることを「格差の再生産」と呼ぶ。密接に関わっているのは教育(略)家庭が貧しいほど授業の理解度が低い生徒が多かった。学力が身につかないと進学もままならない(略)家計に余裕がない家庭のこの学力を下支えする仕組みが欠かせない』という問題意識で書かれたものです。全く同感です。そして、『全ての子に学びを保障するのは公教育を担う学校の役目』という指摘もその通りだと思います。しかし、その先が少し違うのです。『学校が困窮家庭の子を支える福祉的機能を高めるには、専門スタッフの手厚い配置が不可欠だ。教師は、子ども一人一人に丁寧に関わって学力を伸ばす指導に専心できるようにしていくべきだ』。日本大教授末富芳...マンツーマンではなく

  • 体質、個人も組織も

    「体質」1月22日心療内科医海原純子氏が、『炎上するかな』という表題でコラムを書かれていました。その中で海原氏は、今年の箱根駅伝について触れ、『優勝したチームの監督が6区を走る学生に「男だろ」と声を掛けていたのには衝撃を受けた。翌日その話が新聞やテレビで肯定的に紹介されていたのにもかなり驚いた』と書かれています。実は私も同じでした。以前にも「男だろ」発言があり、そのことが報道され、その問題点が指摘されていました。ここで繰り返すまでもありません。性によるアンコンシャスバイアスです。私はこうした発言が、まがりなりにも教育者として位置づけられる大学スポーツの監督の口から発せられ、本人が反省の弁を出すこともなく、大学上層部が見解を述べることもなく、駅伝の主催者や陸連等の関係者から批判の声も上がらないという状況に危...体質、個人も組織も

  • 少し違う

    「少し違う」1月22日『「教員がいじめなんて」滋賀・市立小報告書案現場の思考停止指摘』という見出しの記事が掲載されました。『野洲市の市立小学校で教員による児童いじめが相次いだ問題で、市教育委員会が事案を分析し再発防止策をまとめた報告書案』について報じる記事です。その中にとても強い違和感を抱いた記述がありました。『授業や学級経営につまずいた教員らが子供の言動に原因があるとみて障害などのレッテルを貼ろうとする風潮があるのではないか』『小学校では1人の担任が基本的にすべての授業と学級経営を行うため、教室の密室化を招きやすく、担任の児童に与える影響が大きくなると指摘。高学年での教科担任制の導入促進や、中低学年での交換授業などの検討も求めた』の2点です。まず最初の記述ですが、「授業や学級経営につまずいた教員」は、子...少し違う

  • あなたが変わればいい?

    「あなたが変わればいい」1月20日『博多の女性殺害事件ストーカー対策再検討を』というタイトルの社説が掲載されました。『なぜ、最悪の結果を防げなかったのか。事件の全容解明と合わせ、警察の対応の検証が欠かせない』と主張する内容です。その中に気になる記述がありました。『警察は女性に避難や転職を勧めていたが、被害者が不利益を被るのは筋違いである』という記述です。全くその通りです。ストーカー対策の目的は単にストカー被害をなくすことではありません。被害者の人権と生活を守ることが大前提としてあり、その上で被害防止を考えるのです。もし、ストーカーから被害者の身を守ればいいだけならば、簡単です。被害者を刑務所に収容して、独房に入れればよいのです。でもそれを良しとする人はいないでしょう。私はこの記述から、学校におけるいじめ対...あなたが変わればいい?

  • 2つの選択肢

    「同じことを言っている?」1月20日『教員残業月平均92時間10年前と大差なし「過労死ライン」超え』という見出しの記事が掲載されました。『全日本教職員組合は19日、小中高校などに勤める教職員の1カ月当たりの平均残業時間が92時間34分に上ったとする独自調査の結果を発表した』ことに関する記事です。その中に、気になる記述を発見しました。『長時間労働の解消に向けては、教職員の増員(89.7%)▽受け持つ授業を減らす(62.5%)▽少人数学級を広げる(55.8%)-を求める意見が多かった』という記述です。3つの選択肢が挙げられているように見えますが、私には同じ回答だとしか思えませんでした。受け持ち授業減を実現するためには、授業の総時間数が変わらない以上、教員数を増やすしか方法がありません。そして、多くの教育課題が...2つの選択肢

  • 笑顔の価値

    「学校は無力」1月19日『本当の「サクラ咲く」とは』という見出しの特集記事が掲載されました。『中学受験のリアルが描かれた人気漫画「二月の勝者-絶対合格の教室-」』中で話題となった『君達が合格できたのは、父親の「経済力」。そして母親の「狂気」』という言葉について、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏とともに読み解く記事です。その中に、とても大切な記述がありました。『(子供の)心の奥底にある本当のモチベーションは、第1志望に受かりたいという気持ちよりも、親の笑顔。受かったら、親がきっと喜んでくれるだろうと思うから頑張れるわけです』というおおた氏の言葉です。私は、教員時代に8回6年生を担任し、何十人もの私立中学受験者とその親(主に母親)を見てきました。ですから、おおた氏の言葉がよく分かります。自分のため、自分の夢...笑顔の価値

  • コスト主義にNO

    「コストが減った?」1月19日東洋大INIAD学部長坂村健氏が、『「迷走」恐れない社会』という表題でコラムを書かれていました。その中で坂村氏は、『日本では一度決めたことを短期間で変更することを嫌う(略)だから時間をかけて検討してからでないと決断できない』と書かれています。そして、それに対置させる形でイーロン・マスク氏のやり方を取り上げています。『スペースXの新型ロケットエンジン開発では、とにかく作っては壊しの連続。それによって小型高性能と量産型を両立した新設計のエンジンが短期間で完成した』『新ロケットも、無謀な挑戦と言われ何度も爆発を繰り返したが、数年で完成させた』と。この事例から導き出されたのは、『紙と電話とファックスの時代には、業務の手戻りのコストが非常に大きかった(略)しかしインターネットが普及し、...コスト主義にNO

  • 水平と垂直

    「水平と垂直」1月18日論点欄は、『「自立」の意味を考える』というタイトルで、東京大准教授熊谷晋一郎氏へのインタビュー記事でした。その中で熊谷氏は、『人間の「自立」とは依存しないことではなく、独占されることなく依存先を多く持つことだ』『自立とは依存先を増やすこと』と語られていました。やや分かりにくいですね。熊谷氏は、『依存先の多さと、一つの依存先への依存度の深さとは反比例の関係にある。依存先が多ければ、依存先から支配されなくなる』という説明もしています。少し見えてきた気がします。私が好きな歌(タイトルは忘れた)の歌詞に、「私は今日まで生きてきました。ときには誰かの力を借りて~」というフレーズがあります。人は誰しも、誰かの力、何らかの助けや補助を受けなければならないときがあります。困難に直面し自力では解決す...水平と垂直

  • 世間の評価

    「聞いたことがない」1月17日『大学の女性登用策多様性こそ創造の源泉だ』というタイトルの社説が掲載されました。『同質性の高い集団からは、斬新な発想や技術は生まれにくい。独創性を育むためには、多様な人材を集めることが必要だ』ということで、高等教育機関の女性教員比率向上を求める内容です。当然の主張ですが、今回この社説を目にして、その主題とは全く関係のないことが浮かんできました。私が教委に勤務するようになってから、部下に女性は3人だけでした。その3人ですが、現在、2人が大学の教授職にあり、もう1人が、NPO法人の副理事長を務めながら大学の講師をしています。皆、高等教育機関=大学の教員をしているというわけです。3/3、100%ですから、なんだかすごい数字です。私は教員としてはあまり有能ではありませんでしたが、上司...世間の評価

  • 堂々と「ええ、知りません」

    「スペシャリストということ」1月12日読者投稿欄に、大学生T氏による『教員になる前に職業体験を』というタイトルの投稿が掲載されました。教員志望のT氏は、『教員は(略)社会を教える立場でありながら社会の厳しさを知らない』『教師とは異なる苦労や大変さは経験してみないとなかなか理解できない』とし、『教員志望者であっても、企業でのインターンなど就職活動に近い経験をしてみたらよいのではないか』と述べられていました。そうすれば、『(インターン)の経験を通じて生徒の就活の相談にも乗りやすくなる』というのです。私はこの投稿を読んで、教職にまつわる問題について考えさせられました。まず、教職とは何か、ということです。教職は専門職であるというのが私の考えです。では、医師志望者は企業でインターンを、という提言を聞いたことはあるで...堂々と「ええ、知りません」

  • 野球好きは社会人野球へ

    「やりがいにもいろいろある」1月12日『教員負担軽減現場の葛藤』という見出しの記事が掲載されました。『(教員の仕事のスリム化)を、当の先生たちはどう受け止めているのか。ある研究グループが調査したところ、先生たちの抱える多様な考え方と、その中で葛藤する姿が見えてきた』という特集記事です。負担軽減のため、中教審答申では『①基本的には学校以外がになうべき業務②学校の業務だが必ずしも教師がになう必要のない業務③教師の業務だが負担軽減が可能な業務』の三つに整理されています。記事では、東京大名誉教授小川正人氏のグループが行った研究結果が紹介されています。教員を対象に、上述①~③について、『「負担である」「どちらでもない」「負担ではない」の3択で尋ねた。また、教員以外の手に委ねたいかについても「任せたい」「どちらでもな...野球好きは社会人野球へ

  • レッテル貼りだと思うけど

    「男は、女は」1月11日『コロナ下の学生たちよ』という見出しの記事が掲載されました。詩人伊藤比呂美氏へのインタビュー記事です。その中で伊藤氏は、若者たちについて語られています。『学生に詩を書かせる授業もしました(略)女の子は、日常から題材を得て書き始める。軽自動車ですうっとコーナーを回るみたいに。一方、男の子は遠くを見たがる。遠くを見据え、高速道路を時速100kmで走るような詩が多い』『男の子として育てられた若者の「アーマー(よろい)」はとても厚い。今の時代、男の子は「防御アーマー」、女の子は「攻撃アーマー」を身につけているように感じます。男の子の防御のためのよろいは分厚く、思いから、脱ぐのが大変』。他にもありますが、長くなるので書きませんが、ほとんどが、「男の子」と「女の子」の対比という形で書かれている...レッテル貼りだと思うけど

  • 何型?

    「アーティスト、それとも」1月11日映像プロデューサー吉川圭三氏が、『商業化はびこる日米の映像』という表題でコラムを書かれていました。その中で吉川氏は、『かつてプロデューサーたちは「楽しめてかつ心に何かが残る映画」を目指していたというが、最近では会議で出席者たちが「数字」をはじき出して話し合っている。それでは心に染み入るものは作れない』と書かれています。これは日米に共通する現象のようで、日本でも『視聴率を重視する傾向が強くなった(略)人気アイドルが出ているだけの安易で企画意図不明のドラマが増えました』とも述べていらっしゃいます。まあ、よく聞く話です。ただ、次の記述には少し考えさせられました。『米国では製作者がビジネスマン化し、日本ではサラリーマン化した、といったところ』という記述です。ビジネスマン化とサラ...何型?

  • ヒトは何をする?

    「人間が行う分野は?」1月9日『デジタル活用いじめ対策』という見出しの特集記事が掲載されました。『「GIGAスクール構想」で小中学生に1人1台ずつ配られたデジタル端末などを活用し、いじめの端緒をつかむ取り組みが広がっている。最大の狙いは、見て見ぬふりをする子どもを減らすこと』の具体例を報じる記事です。記事によると、『いじめをやめようと言う勇気はないけど、匿名ならそうだんできるかもしれない』という児童や、『相談先が学校外にもある意味は大きい』という教員の声が紹介されており、効果を上げているようです。『相談したことがクラスに発覚して新たないじめの標的にされる心理的なリスクを減らせる』ことのメリットは私もよく分かります。ですから、良い試みだと思います。広がってほしいものです。ただ、記事では、その先が書かれていな...ヒトは何をする?

  • 使い捨て

    「キャリア設計は」1月8日『不登校専門教員配置』という見出しの記事が掲載されました。『小池百合子知事は7日、不登校への対応を強化するため、新たに中学校への専門教員や小中学校の別室で学習指導をする支援員を配置することを明らかにした』ことを報じる記事です。記事によると、『専門教員を中学20校』に配置ということですが、気になるのは専門教員の教員人生です。教員の仕事は職人芸、これは拙著「教師誕生」の帯の言葉ですが、教員は大学の教職課程で学んだことよりも、実際に多様な子供と向き合い、失敗と成功を繰り返していく中で、体に染み込ませた感覚や技術を武器に日々の職務に当たるものだという意味です。この考えは、今も変わりません。以前このブログで、中学校夜間学級に赴任した新人教員のことを書きました。中学校夜間学級、いわゆる夜間中...使い捨て

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