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2015/01/11

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  • 魔法少女マヂカ・298『桟橋を転がる』

    魔法少女マヂカ・298『桟橋を転がる』語り手:マヂカ南無三!海面まで数十メートルを残すのみ!わたしは最後の決意をした!セイ!!キャーーーーーー(≧∇≦)!渾身の力でクマさんを放り上げた。見届ける余裕はないが、いまの馬力とクマさんの悲鳴なら百メートルの高さは確実だ。出でよ風切丸!シャリーーン!顕現した風切丸を一角獣の角のように構えると、全身の力をその先端に籠めアリヨールを貫かんとする!一撃で倒せれば、そのまま海面を蹴って落下してくるクマさんを受け止めて、うまくいけば視野の端に見えている桟橋に着地できるだろう。ピカ!その桟橋の先端が光ったかと思うと、一条の光芒が発せられ、瞬時にオリヨールを包み込んだかと思うと北方の水平線の彼方に消えていった。ズシャ!風切丸を一閃する。たった今までオリヨールを倒そうと渾身の力が...魔法少女マヂカ・298『桟橋を転がる』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・39『なにかがタギリはじめた……』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語39『なにかがタギリはじめた……』ガタガタガタ……気の早い木枯らしが脅かすように立て付けの悪い窓を揺すった。一瞬そちらに目を奪われたけど、すぐに机の上のSDメモリーカードを見つめる視線の中に戻った。「再生してみますか……」加藤先輩が小型のレコーダーを出した……ほんとは気の利いたカタカナの名前がついてんだけど、こういうのはスマホとパソコンの一部の機能しか分からないわたしには、そう表現するしかない。「マリ先生が再生するなって……」「じゃ、マリ先生は……」わたしは持って行き場のない怒りに拳を握って立ち上がった。「そう……じゃ、マリ先生は、全てを知った上で辞めていかれたのね」柚木先生が腰を下ろした。木枯らしはまだ窓を揺すっていたが、もう振り返る者はいなかった。「あとは山埼、おまえがや...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・39『なにかがタギリはじめた……』

  • くノ一その一今のうち・28『潜入・1・草原を走る』

    くノ一その一今のうち28『潜入・1・草原を走る』たぶん中央アジアのどこか。小さいころから、お祖母ちゃんに日本の地理については教えられた。物心ついたころの玩具は、都道府県の形をしたブロックだった。毎日、それを組み立てて、保育所に行く頃には都道府県名と旧分国名を県庁所在地と合わせて憶えていた。小学校に入ると、都道府県別のブロックになって、国内の地理に関しては、そこいらへんの教師よりも詳しくなった。ただ、世界地図になるとお手上げだ。ざっくりと五大陸が分かって、ニ十個ほどの国の位置と名前が分かる程度。まあ、並みの高校生レベル。これで、観光バスのバスガイドになれるかなあと四年生になるくらいまでは思っていた。五年生になると、鏡に映る自分の顔を見てバスガイドじゃなくてブスガイドになると思った。お祖母ちゃんは、万一忍者に...くノ一その一今のうち・28『潜入・1・草原を走る』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・38『……九人しかいない』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語38『……九人しかいない』部活の稽古場になっている視聴覚教室に向かう。思わず急ぎ足になる。――早く、お礼とお詫びを言わなっくっちゃ――わたしは、二十七人の部員一人一人に言葉をかけようと、夕べはみんなからのメ-ルをもう一度見なおした。忠クンへのお礼ってか、想いは昨日伝えた。これでほとんど終わったつもりでいたんだけど、あらためてみんなのお見舞いメールを見ると、それぞれに個性がある。アイドルグル-プのMCの子がコンサートの終わりでやるような全体への挨拶じゃいけない。一人一人に言葉をかけなくちゃ……って、ついさっきも言ったよね(^_^;)。緊張してんのよ、わたしって……そうだ副顧問の柚木先生……ま、普段の部活には来ないから、あとで教官室に行けばいいや。お礼は、それまでに考えればいい…...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・38『……九人しかいない』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 95『毒食わば皿ま……わし』

    鳴かぬなら信長転生記95『毒食わば皿ま……わし』織部「大橋(だいきょう)さま。ムースが仕上がりました」鈴を転がすような声がして、案内のそれとは別の小女がお茶とお菓子を捧げてきた。「あら、うまく仕上がったようね。では、お客人といっしょに試食してみましょう。そうね、あなたたちも、これに合うようにお召し替えしましょうね」クリン大橋が指を振ると、二人の小女はメイド服に変わった。「豊盃でカフェを出しているお友だちに教わりましたの、フワフワで、とても美味しいのだそうです。実験台になってくださいな」茶道で供されるお菓子は、干菓子と主菓子(生菓子)と決まっているが、このガラスの器に収まっているのは褐色の泡立ち。茶筅で泡立てたばかりの茶に似ているが、これは、食品サンプルのように固まっている。固まってはいるが、卓に置かれた瞬...鳴かぬなら信長転生記95『毒食わば皿ま……わし』

  • 宇宙戦艦三笠12[ステルスアンカー]

    宇宙戦艦三笠12[ステルスアンカー]ステルスアンカーとは、巨大な銛(もり)のようなものだ。大きさは10メートルほどであろうか、テキサスの艦尾に食い込み、その端には丈夫な鎖が付いていて、鎖の端は虚空に溶けて見えないし、コスモレーダーにも映らない。テキサスは出力一杯にして振り切ろうとしたが、まるで弱った鯨が捕鯨船の銛にかかったように、艦尾を振り回すだけだった。「修一くん、直ぐに助けてあげて。時間がたつほどあのアンカーは抜けなくなるから!」みかさんの声にこたえ、修一は樟葉とトシに命じた。「テキサスの前方に出る。艦尾のワイヤーを全部使ってテキサスの艦首のキャプスタン(巻き上げ機)やボラート(固定金具)に結束!」「了解、全ワイヤーをテキサスの艦首に固定!」三笠の艦尾から、ありったけのワイヤーが発射され、自動的にテキ...宇宙戦艦三笠12[ステルスアンカー]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・37『火事の痕跡』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語37『火事の痕跡』あの火事騒ぎから一週間、わたしは久々に学校へ行った。久々という感覚は人によって違うんだろうけど、なんせひいじいちゃんの忌引きで、小学校のとき二日しか休んだことのないわたしは、本当に久しぶり。地下鉄の出口を出て、百メートルほど歩いて発見。え?斜め向かいのお店が並んだ一角が工事用シートで囲まれている。シートに隙間があって、中が見える。シートの中は……更地になっていた。更地……つまり何もない空き地。こないだまで、ここには何かのお店があったはず……はずなんだけど……思い出せない。駅の出口を出ると、ちょっと行って乃木神社。道路を挟んで乃木ビル。ブライダルのお店、飲み屋さん、コンビニと続いて……あとはそんなに意識して歩いているわけじゃないから記憶もおぼろ……パン屋さん。...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・37『火事の痕跡』

  • 漆黒のブリュンヒルデQ・097『騒めくお札たち』

    漆黒のブリュンヒルデQ097『騒めくお札たち』駅前通りはお札と、お札の欠片でいっぱいになった。まともなお札は平気でいるけど、切られたお札の中にはウンウン唸っているものもいる。「肖像のところで切られたのは死んでるみたいニャ」ねね子が拾った一万円札は諭吉が痛そうに左腕を押えている。このお札は左の四半分が切れて無くなっていた。「こちらんお札はけしんじょるようじゃ」玉ちゃんが拾った五千円札は肖像のところで斜めに切られ、袈裟懸けに切られた樋口一葉が血反吐を吐いてこと切れている。「これは、いったい……」豪徳寺に武笠ひるでとして降臨して以来、数百数千の妖や怪異と遭遇したが、こういうのは初めてだ。「お札だから、銀行と関係はないのかニャ?」みそな銀行を指さすねね子。「銀行には、特別あやしか空気は感じんど。大金庫ん中にけっこ...漆黒のブリュンヒルデQ・097『騒めくお札たち』

  • せやさかい・364『ドイツに勝ったぁ!!』

    せやさかい・364『ドイツに勝ったぁ!!』さくらドイツに勝ったぁ!!ウワアアア!!オッサンの叫び声と窓ガラスが震えるほどの歓声で目が覚めた。「「ふぇ?」」横のベッドで寝てた留美ちゃんも半ボケで目を覚ました。ウワアアアアアアアア!!今度は閉めた窓の外からも歓声。「ええ、戦争……?」「か、勝ったんだよ!ドイツに勝ったんだよ!」外の歓声で完全に覚醒した留美ちゃんは半纏を羽織って、リビングに下りて行った。ちょっと待ってえよ、ウクライナが戦ってるんはロシアで、ドイツやなかったはずやで。いや、日本でこれだけ喜んでるんやから、うちの知らん間に知らんとこで戦争やってた?ここんとこ文化祭の事で頭いっぱいで、全然気ぃつけへんかった!?今日は、家帰って、ご飯もそこそこ、お風呂入って寝てしもたさかい……うちも半纏を羽織ってリビン...せやさかい・364『ドイツに勝ったぁ!!』

  • ピボット高校アーカイ部・32『再生リボンからいきなりの勝負』

    ピボット高校アーカイ部32『再生リボンからいきなりの勝負』「こちらに、青山さんのお店でよろしいでしょうか?」帳場の女の子が「はい、姓は青山、屋号は肥前屋ですが」と笑顔を向けてくる。「キャ、かわいい……」揃って横に立っている麗二郎、いや麗が恥ずかしくなるほどときめいて、巾着持ったままの手を口元に持っていく。カミングアウトしたんじゃねえのか!つっこみたいけど我慢。「こちらに、おリボン置いてらっしゃるって伺ってきたんですけど」「あら、よくご存じですね、リボンはこちらです。あまり出ないもんだから、お父さんが奥に引っ込めちゃって……こっちに……」左手で袂を押え、身を乗り出してリボンが入った箱に腕を伸ばす。うなじと右手の肘から先が露わになる。その色の白さと容の良さに、僕もドキッとする。うなじも肘の裏側も、街でも学校で...ピボット高校アーカイ部・32『再生リボンからいきなりの勝負』

  • 宇宙戦艦三笠11[テキサスジェーン・2]

    宇宙戦艦三笠11[テキサスジェーン・2]「えーーーーーーあなたたち人間なの!?」歓迎の握手を交わすと、その感触で分かったのか、妙なところで驚くジェーン。「あなたは違うの?」樟葉が、まっとうな質問をした。「あたしはguardiangodofaboat……日本語でなんて言うんだろう?」「船霊よ」ミカさんが、まるで、ずっとそこに居たかのように一番砲塔の脇から声を上げた。「あ、あなたが三笠のguardiangodofaboat?」「うん、だけど日本の船霊というのは、ちょっと違うの。ジェーンは、テキサスが出来た時に生まれた精霊のようなもんでしょ?」「そうよ。だから、今年で110歳。ミカさんもそのくらいじゃないの?」「日本の船霊は、船が出来た時に、縁のある神社から分祀されるの」「ブンシ?」「アルターエゴ(altere...宇宙戦艦三笠11[テキサスジェーン・2]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・36『ジャンケン必勝法』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語36『ジャンケン必勝法』愛おしさがマックスになってきた……。まどか……忠クンの手が、わたしの肩に伸びてきた……引き寄せられるわたし……去年のクチビルの感覚が蘇ってくる……観覧車のときのようにドギマギはしない。ごく自然な感覚……これなんだ!「ね、なんで、ここ『アリスの広場』って言うか知ってる?」薮先生のおまじないが口をついて出てきた。「……え、なんで……」「アリスの『ア』は荒川のア。『リ』はリバーサイドのリ。『ス』はステージのス。ね、ダジャレ。笑っちゃうけど、ほんとの話なんだよ」「「「へえ、そうなんだ!」」」二段上の観客席で声がして、振り返るとクソガキ三人が感心している。「どーよ、勉強になったでしょ<(`^´)>?」怖い顔でにらみつけてやる。「「「は、はひ(;'∀')」」」クソ...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・36『ジャンケン必勝法』

  • 銀河太平記・133『日漢秘密会談・1』

    銀河太平記・133『日漢秘密会談・1』越萌マイ少し後悔しているのかもしれない。北大街大酒店、日本語風に言うならば北大街グランドホテルになるだろうか。この五年ほど漢明国では、ちょっとした満州ブーム。それにあやかって、漢明財閥が金にものを言わせて世界中に展開したのが北大街酒店集団だ。名前に漢明や中華を冠していないところがミソだ。五年前に『北大街』という漢明製大河ドラマが流行った。かつての敵国マンチュリアの話などもってのほかという反対も起こらないでは無かったが、大方の漢明国民には好意的に受け止められた。いまは無きマンチュリア、その国際色豊かな文化は漢明でもノスタルジーをもって語られることが多い。マンチュリアは、日本が主導して満州平原に作り上げた新興国だったが、四百年前の満州国のイメージを払しょくするために、完ぺ...銀河太平記・133『日漢秘密会談・1』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・35『アリスの広場』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語35『アリスの広場』アリスの広場に出てきた。狸先生おすすめのスポット。アリスの広場は、あらかわ遊園の一番北にあって隅田川に面した観客席八百の水上ステージ。時々イベントが行われるんだけど、晩秋の今日はなにもやっていない。野外の観客席は人もまばら。「……わたし、きちんと言っておきたいの」「……なにを?」「ほんとうに、ありがとう。あの火事の中助けてくれて……忠クンが助けてくれなかったら、わたし焼け死んでた。ほんとうにありがとう!」わたしは川に向いたまま頭を下げた。コンクリートの床に、ポツリポツリとシミが浮かぶ。「顔あげてくれよ。オレ、こういうの苦手なんだ」忠クンも川を向いたまま言った。「わたし、病院じゃボケちゃってて、きちんとお礼も言えてなかったから」「いいよ、お父さんがキチンと言...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・35『アリスの広場』

  • せやさかい・363『文化祭本番です!』

    せやさかい・363『文化祭本番です!』さくら昼行燈(ひるあんどん)いう言葉があるやんか。ボンヤリっちゅうか、ボーっとしてるやつを指して言う言葉で、あんまりええ言葉やない。「まあ、あの人すてきね!まるで昼行燈みたいに優しそう!」「そのセーター、淡い色合いがステキ!まるで昼行燈!」「このお弁当、昼行燈みたいに優しいお味ねえ!」とか言うて褒めたとしたら、アホかと思われる、場合によっては張り倒される。例外は、吉良上野介を討ち取るまでの大石内蔵助。色町で遊びまくったりしてて昼行燈みたいやと言われてて、あれでは討ち入りなんて企んでるはずないと世間を欺いた。そういう昼行燈みたいなもんやと思て期待はしてなかった。なにかっちゅうと、花火です。三年ぶりに行われる聖真理愛学院の大文化祭!ほとんどの取り組みが三年生中心、一二年生...せやさかい・363『文化祭本番です!』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・34『ここからやり直してみよう』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語34『ここからやり直してみよう』明くる日、かかりつけのお医者さんに行った。「もう大丈夫だ。明日……は、土曜か。月曜から学校行っていいよ」先生が、狸のような体をねじ曲げ、カレンダーを見ながら言った。「あの……」と、カーディガンを着ながらわたし。「うん?」カルテに書き込みしながら背中で応える先生。「明日、出かけてもいいですか?」「デートかぁ?」と、カルテをナースのオネエサンに渡しながら先生。「そ、そんなんじゃないですよ!」ウフフナースのオネエサンが笑う。「ま、あらかわ遊園ぐらいにしときな……日が落ちる前には帰ること。で……」「手洗いとウガイ!」「まどかも、そんな歳になったんだ……」わたしの方に向き直った拍子にハデにオナラをした。「ワハハハ、歳くうと緩んできちまってな……窓開けよう...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・34『ここからやり直してみよう』

  • せやさかい・362『文化祭は明日になりました』

    せやさかい・362『文化祭は明日になりました』さくら今日は朝から文化祭!……のハズやったんやけど、平常通りの水曜日の授業です。なんでかっちゅうと、この雨ですわ。週間予報で、今日の勤労感謝の日ぃだけが高確率で雨やいうのは、先週の土曜日には分かってた。先週の土曜と言うと、マスコミまで呼んで、華々しく公開リハーサルをやった日。陣頭指揮と演出でメッチャ忙しいはずの前生徒会長の百武真鈴(本名の田中真央よりも通りがええ)は、それを見越して秘密裏に学校と交渉してたんやて!「晴れていなければ企画は失敗です!23日は90%の確率で雨になります、どうか24日に変更してください!」校長、理事長、組合の分会長、PTA会長、同窓会長、生徒会顧問、三年生学年主任、学食のオーナーなんかに働きかけてた。なんせ、三年生には最初で最後の文化...せやさかい・362『文化祭は明日になりました』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・33『今年の秋も終わりが近い……』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語33『今年の秋も終わりが近い……』一斉送信しおえて、ヨーグルトを半分食べて気がついた。クラブのことに触れたメールが一つもなかった。そして、潤香先輩のこともなかった。気になって、もう一度ラインとメールをチェックした……やっぱり無い。一つだけ発見があった。マリ先生のメールを読み落としていた。先生は、メールを寄こしてくるときは、いつも「貴崎」と苗字で打ってくる。今回のは「MARI」と書かれていて気づかなかったんだ。――早く元気になって、乃木坂ダッシュの新記録を作ってね――と、書き出して、過不足のない、お見舞いの心温まる言葉が並んでいた。さすがマリ先生(^o^;)。時間は、ちょうど五時間目が終わったところ。里沙にメールを送った。三十秒で返事が返ってきた。――クラブ&潤香先輩も順調に回...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・33『今年の秋も終わりが近い……』

  • 魔法少女マヂカ・297『墜ちる! 舞鶴の海へ!』

    魔法少女マヂカ・297『墜ちる!舞鶴の海へ!』語り手:マヂカチリチリチリ……指輪は、ほとんど髪の毛ほどの細さになって、それでも、最後までわたしと変身魔法の解けかけたクマさんを守ろうとして線香花火のようにか細く震えるように輝いている。風は下の方からビョービョーと吹き上げて、二人の髪をロウソクの炎のように吹き上げている。墜落しているんだ!風に抗って薄目を開けると、視界の半分が海、もう半分が陸地。陸地は迫りくる海を顎いっぱいに口を開け、怒りを籠めて呑み込もうとしている巨人の横顔のように見える。見覚えがある……これは舞鶴の街と海だ。オリヨールが礼子の姿で待ち受けていた因縁の港街(063:『舞鶴沖』)。舞鶴の上空でポチョムキンの罠にはまったのだから、その上空に戻ってきて不思議ではないんだけど、因縁めいて見えなくもな...魔法少女マヂカ・297『墜ちる!舞鶴の海へ!』

  • 宇宙戦艦三笠10[テキサスジェーン・1]

    宇宙戦艦三笠10[テキサスジェーン・1]三笠は、俺(修一)、樟葉、天音、トシ四人の思い出をエネルギーに最初のワープを行った。――最初のワープだから、1パーセク(3・26光年)にしておくわね。樟葉さん舵輪へ。トシ君はエンジンテレグラフの前へ――三笠と同体化したみかさんが指示する。アバターの時と違って、艦の全体から声がするので、なんか包み込まれたような安心感がある。「あ、なんかいいっす(^o^;)」トシがデレて、みんなクスリと笑った。樟葉とトシが配置につき、俺と天音はシートについた。――じゃ、修一君。あとはよろしく――「お、おお」一瞬たじろいだが、マニュアルが頭に入っているようで、直ぐに指示が口をついて出てくる。「面舵3度……切れたところで、前進強速、ワープレベル」「面舵3度、ヨーソロ……」「前進強速……ワー...宇宙戦艦三笠10[テキサスジェーン・1]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・32『下町のシキタリ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語32『下町のシキタリ』昼には平熱になり、半天をはおって茶の間に降りた。おじいちゃん、お父さん、柳井のオイチャンといっしょにお昼ご飯を食べる。三人とも、わたしの回復を喜んでくれて気の早い床上げ祝いということになり、赤飯に鯛の尾頭付きがドデンと載った。缶とワンカップだけど、ビールとお酒も並んでる。わたしはお粥と揚げ出し豆腐ぐらいしか口に入らない。まあ、なんでも祝い事にして一杯やろうという魂胆ととれないこともないけども、これも下町のシキタリ、愛情表現。ありがたくお受けいたしました。宴たけなわになったころ、大学を早引けにした兄貴と、彼女の香里さん。エプロンを外したお母さん。伍代さん……はるかちゃんのお父さんと奥さんも加わった。「商売物でなんだけど、販促兼ねてもらってくれる」奥さんは蒼...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・32『下町のシキタリ』

  • くノ一その一今のうち・27『C130機内』

    くノ一その一今のうち27『C130機内』横田基地から米軍の輸送機で飛び立つ。「これはC130ハーキュリーズという輸送機でな、西側では一番よくつかわれている輸送機なんだ」やっと本来の姿に戻って社長がレクチャーしてくれる。「C130である意味があるんですか?」「1000メートルちょっとで離陸できて、500ちょっとの滑走路で着陸ができる」「えと……飛行機のことって、よく分からないんで(^_^;)」「同サイズの飛行機の半分以下で離発着ができる。1000メートルの滑走路なんて、どんな田舎の飛行場でもあるからな。世界中どこの飛行場でも離発着できる」「オスプレイとかだったら、滑走路そのものが要らないんじゃ……」「オスプレイは、まだ使っている国が少ない」「なにか問題なんですか?」「C130は69か国で使われている……つま...くノ一その一今のうち・27『C130機内』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・31『ん……まだ違和感』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語31『ん……まだ違和感』……薄暗がりの中、ぼんやりと時計が見えてきた。リモコンで明かりをつける……まる三日眠っていたんだ。目覚めると自分の部屋。当たり前っちゃ当たり前なんだけど、なんだか違和感……。「あ」小さく声が出た。目の前に倉庫から命がけで持ち出した衣装が掛けられている。わたしと潤香先輩の舞台衣装。セーラー服と花柄のワンピース。ベッドから見る限り、傷みや汚れはない。四日前の舞台が思い出された。なんだかとても昔のことのよう……潤香先輩もこうやってベッドに寝ている……意識は戻ったのかなあ……意識が戻ったら何を考るんだろうかなあ……わたしはもう起きられるだろう。二三日もしたら外出だってできるかもしれない。しかし先輩はもう少し時間がかかるんだろうなあ……よし、良くなったら、この衣...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・31『ん……まだ違和感』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 94『皆虎の新興屋敷街』

    鳴かぬなら信長転生記94『皆虎の新興屋敷街』織部信長の潜入調査では、皆虎の街は寂びれた軍都で、かつて扶桑国侵攻の最前線だったころの面影はない。土塁や城壁も満足なものは少なく、僅かな観光収入とささやかな定期市の上りで城塞都市の面目を保っていた。それが、曹茶姫の騎兵軍団が皆虎を起点として扶桑との国境地帯を東西に打通して以来、急速に往年の賑わいを取り戻しつつある。詰まった血管に血が通うように、人や物のの流通が盛んになり、ささやかな定期市は常設の商業地帯に変貌しつつある。変貌は商業地帯だけではなく、その周囲に富豪や豪族の別宅、別荘が建ち始めている。市の広場で声を掛けてきた女は、わたしたちを、その中でも一二の規模の新築に誘った。「ここは、呉の孫権さまのご別宅。お妃さまがお出ましになられますので、どうぞ、こちらの庭の...鳴かぬなら信長転生記94『皆虎の新興屋敷街』

  • 宇宙戦艦三笠9[思い出エナジー・3]

    宇宙戦艦三笠9[思い出エナジー・3]「お兄ちゃーん、待ってー!」妹の声は思ったより遠くから聞こえた。いっしょに横断歩道を渡り終えていたつもりが、妹の来未(くるみ)は車道の真ん中。信号が点滅しかけて足がすくんで動けなくなっていた。「来未、動くんじゃない!」トシの言葉は正確には妹には届かなかった。妹は、変わりかけている信号を見ることもなく買ってもらったばかりの自転車を一生懸命に漕ぎながら横断歩道を渡ってきた。それまでの幼児用のそれに比べると買ってもらったばかりの自転車は大きくて重い。たいがいのドライバーは、この可憐な少女が漕ぐ自転車が歩道を渡り切るのを待ってくれたが、トラックの死角に入っていたバイクがフライングした。ガッシャーーン!バイクは、自転車ごと妹を跳ね上げてしまった。妹は、空中で一回転すると、人形のよ...宇宙戦艦三笠9[思い出エナジー・3]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・30『掛け布団を胸までたぐり寄せ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語30『掛け布団を胸までたぐり寄せ』『ほかに、言いようってもんがあるだろう。命の恩人なんだからよ』帰ってきたお父さんの声が二階の部屋まで聞こえてきた。忠クンの家までお礼に行って帰ってきたところなんだ。『でもねえ。あのときは、あの子も、ああしか言いようがなかったのよ』と、お母さんの声。そうなんだ。ひとがましい感情は家に帰ってから蘇ってきた。インフルエンザで、お風呂に入れないもんだから、幼稚園以来久々にお母さんが体を拭いてくれた。髪もドライシャンプー一本使って丹念に洗ってくれた。そうやってお母さんの気持ちが伝わってくる間に、フリーズしていたパソコンが再起動したように蘇ってきた。恐怖と安心と、忠クンへの感謝と愛おしさ、お母さんの愛情、その他モロモロの感情が爆発した。お母さんの胸で泣き...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・30『掛け布団を胸までたぐり寄せ』

  • せやさかい・361『盛り上がる公開リハーサル』

    せやさかい・361『盛り上がる公開リハーサル』頼子セイ!トアッ!ハアッ!ハッ!ノアアア!ゲシ!ドガ!シュィン!ビシ!バシ!ドゲシ!ハアッ!ハッ!ノアアア!セイ!トアッ!ドガガガ!ズッゴオオオオオン!裂ぱくの掛け声とサウンドフェクトがピロティー前の広場に木霊して、満場の生徒や教職員、テレビ局や卒業生やご近所の方々、果ては交通整理の警備員さん、マスコミ関係、一部某国の諜報部員たちが固唾を呑んで『サクラ・ウメ大戦』の練習を見守る。「オッケーー!」メガホンを通しても損なわれないアニメ声が本番を五日後に控えた文化祭の雰囲気を盛り上げる。「うん、やっぱ、ソフィーとソニーのアクションはピカイチだわ。取り巻きは見とれてりゃいいからね、下手に動くとケガするからね。ただ、ただ、いい?みんな『白梅隊』と『八重桜隊』の敵味方同士...せやさかい・361『盛り上がる公開リハーサル』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・29『阿弥陀さま?』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語29『阿弥陀さま?』「おーい」という声で目が覚めた。ボンヤリと白い服を着た人たちが目に浮かんできた……天使さんたちだ。十五歳のこの歳まで、わたしはいい子でいた……自己評価だけど。だから、わたしは天国に来たんだ……そう思った。真ん中に大天使ミカエルさま。両脇にきれいなオネエサンの天使がひかえていらっしゃる。でもいいのかな。うちって、たしか浄土宗か、浄土真宗……じゃ、これは阿弥陀さま?ドタっと音がして、阿弥陀さまの顔が、マリ先生のドアップの顔に入れ替わった。「気がついた、まどか!?」ドアップが叫んだ。「こまりますね。これから、いろいろ検査しなくちゃいけないんだから」阿弥陀さまが文句を言った。「すみません」ドアップのマリ先生の顔が、視界から消えた。そして、ようやく気づいた。――わた...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・29『阿弥陀さま?』

  • 漆黒のブリュンヒルデQ・096『ゆったり女子会』

    漆黒のブリュンヒルデQ096『ゆったり女子会』三人で出かけるのは初めてかもしれない。豪徳寺の駅近にイタ飯屋が出来たと言うので、玉ちゃんとねね子の三人で出向く。「うわあ!なんか、お爺ちゃんに気を遣わせてしもうたかもしれん」出かけに、お祖父ちゃんくれた封筒を開けて玉ちゃんが恐縮する。「おお、諭吉がトリオでいるニャ(^▽^)/」「まあ、再来年には引退だし、諭吉にも旅をさせてやろうって気持ちなんだろ」「え、ひるでの祖父ちゃんはとっくに引退してるニャ?」「諭吉が引退するんだ。後継の渋沢栄一は、もう印刷にかかってるぞ」「え、そうなのニャ?短かったニャ、ついこないだまでは聖徳太子だったニャ」「あたいは慶長小判が出た時ん感動がふてねえ、それまで、日本中バラバラやった貨幣が統一されたときはビックリしたじゃ」「ああ、そういう...漆黒のブリュンヒルデQ・096『ゆったり女子会』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・28『凛然とした禿頭』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語28『凛然とした禿頭』「ありがとう……」言い尽くせない感謝の気持ち、それが、ありきたりの言葉でしか出てこないことがもどかしかった。修学院高校の制服は、問わず語りに、あらましのことを語ってくれた。彼は、グラウンドに面した道路を自転車で通りかかり、倉庫の火事に出くわした。だれか人が取り残された様子に、開け放たれた通用門から一気に自転車でグラウンドを駆け抜け、中庭の池に飛び込み、全身を水浸しにして倉庫に突入。すんでのところでまどかを助けたようだ。ただの通りすがりがここまでやるか……?「ところで……」と、聞きかけたところで救急車が消防車といっしょにやってきた。検査の結果、まどかは、かすり傷。修学院も無事と分かった。ただ、まどかはインフルエンザにかか罹っていることが分かり、注射一本うた...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・28『凛然とした禿頭』

  • 宇宙戦艦三笠・1[黎明の時・1]

    宇宙戦艦三笠・1[黎明の時・1]ほんとだってば!例年になく早い木枯らしをも吹き飛ばす勢いで天音が叫んだ。窓ガラスのガタピシは天音の叫びで一瞬のフォルテシモになった。「だれも天音がウソ言ってるなんて……」あとの言葉を続ける気力がなかった。天音は、オレがいい加減に聞いているとしか思わないだろう。「だったら、ちゃんと聞けって!」予想通りの反応だ。オレとしては樟葉にふってほしかったんだけど、こういう時は樟葉は得だ。投げ出してボンヤリしていると、樟葉は一見クソまじめに見える。樟葉とは保育所の頃からいっしょだからよくわかる。きれいな足を揃えて腕組みした姿は、ひどく冷静に考えているように見える。だから天音は正直にボンヤリしているオレに突っかかってくる。「だからさぁ、黒猫と白猫が路地から出てきたと思ったら茶色の猫が出てき...宇宙戦艦三笠・1[黎明の時・1]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・27『まどかーーーーーーーーっ!!』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語27『まどかーーーーーーーーっ!!』教頭からの指示ということで学校を出た。ニンマリするわけにもいかず、致し方なしという顔でいたが、踏みしめるプラタナスの枯れ葉が陽気な音をたててしまうのは気のせいではないだろう。潤香は、集中治療室から、一般の個室に移されていた。付き添いのお姉さんから、大人びたねぎらいの言葉をかけられ、いささか戸惑った。しかし、潤香の意識が回復するのも近いと聞かされホッとした。まどかたち三人はショックなようで、夏鈴が泣き出し里沙とまどかの目も潤んでいた。わたしは二度目だけど……やはりベッドの上の潤香の姿は痛ましい。そっと窓に目をやると、スカイツリーが見える。孤独に一人屹立した人格を感じさせるのは、抜きんでた六百三十四メートルという高さだけではないような気がした。...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・27『まどかーーーーーーーーっ!!』

  • ピボット高校アーカイ部・31『納戸町』

    ピボット高校アーカイ部31『納戸町』この先が目的地だ。商店街の入り口みたいなところで先輩は立ち止まった。「まずは現場の下見だ。三百メートルほど行くと右手に骨とう屋が見えてくる、わたしたちと同年配の女の子が店番をしているはずだから、よく見ておけ」「イケメンの番頭さんとかいないんですかぁ?」「真面目にやれ、麗二郎」「麗二郎言うな(`Д´)!」「麗と呼んでやれ、ここでは花の女学生なんだからな」「は、はい」なんで僕が怒られるんだ(>o<)。「行くぞ」「「はい」」ゆっくりと通りを歩く。納戸町は新宿区だから、もうちょっと賑やかかと思ったけど、人通りが、そこそこあるだけで印象としては田舎町だ。要(かなめ)の駅前通りの方がイケてるかもしれない。「明治25年だからな」「着物ばっかり……それに、ちょっとダサイかも」確かに、み...ピボット高校アーカイ部・31『納戸町』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・26『怖い顔をしているのに苦労した』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語26『怖い顔をしているのに苦労した』オチョクルまでもなく二行目で吹きだした。「スカートめくり」という単語が目に入ってきたからだ。幼いころ、はるかちゃんという幼なじみと、どうやったらスカートがきれいにひらめくか、おパンツ丸出しにしてスカートをまくってクルクル回っていたというものだ。文章としては面白いが、肝心の道府県名は、その、はるかちゃんが大阪に越していったということだけ。でもエッセーとしてよく書けているので、わたしは花丸をつけてやった。……はるかという名前が大阪という単語と共にひっかかった。昨日、その種のホテルの前で大伸びと大あくびしたあと、地下鉄の駅に行くまでに小田先輩が言っていた中に『はるか』という名前が出ていたような……。小田先輩の恩人、この業界で身を立つようにしてくだ...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・26『怖い顔をしているのに苦労した』

  • 銀河太平記・132『氷室神社の御祭神は秋宮空子内親王』

    銀河太平記・132『氷室神社の御祭神は秋宮空子内親王』兵二自分の任務は隠密に似ているのかもしれない。隠密というのは、物語にあるような忍者めいたものではない。任地に赴き、ほとんど、その地に同化して報告を上げ続ける。そういう地味な任務だ。西之島にやってきて五年、西之島は、ほとんど故郷のようになってきた。漢明との戦争に突入しようとしている今日、ひょっとしたら、この島に骨を埋めることになるかもしれない。五年前、上様の馬ならしのお供をしていて西之島新島に向かうように命ぜられた。中学同窓の穴山彦が発行している扶桑通信をお持ちしたところ、西之島新島の熱水鉱床からパルスガ鉱が発見されたというニュースに目を停められた。パルス鉱はニ十三世紀の主要な動力源で、純度によって、パルス、パルスラ、パルスダ、パルスギの四種に分類される...銀河太平記・132『氷室神社の御祭神は秋宮空子内親王』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・25『寝過ごしてしまったのだ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語25『寝過ごしてしまったのだ』教師になって、こんなことは初めてだった。寝過ごしてしまったのだ。子どもの頃から自立心の強かったわたしは、大学で要領をカマスことを覚えるまで、無遅刻、無欠席だった。大学もおおやけには無遅刻、無欠席なんだけど、個人的心情では、代返の常習者。文学部演劇科に籍を置き、教職課程をとりながら、キャンギャルやら、MCのバイトに精を出していた。これくらいの要領はカマシておかないとやっていけない。え、その歳なら忌引きの一つや二つはあったろうって?わたしの家系は、みんな元気というか、長生き。今年メデタク卒寿を迎えたお祖父ちゃんは、まだピンピン。お祖父ちゃん、過剰に孫娘に構い過ぎるのよ。大学のときも勝手にわたし達の口座に、学費と称して、多額のお金を振り込んでくれた。で...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・25『寝過ごしてしまったのだ』

  • 宇宙戦艦三笠8[思い出エナジー・2]

    宇宙戦艦三笠8[思い出エナジー・2]疾風(高機動車)の前方30メートルほどのところに、チャドル姿の女性が倒れこんだ。隊長は、すぐ全車両に停止を命じた。「隊長、自分が見てきます」山本准尉は、隊長と目が合ったのを了解と解して疾風を飛び出した。自爆テロの可能性があるので、うかつに大人数で救助に向かうわけには行かなかった。「きみ、大丈夫か?」姿勢を低くし、二メートルほど離れたところから、山本准尉は女に声を掛けた。爆発を警戒してのことでは無かった。そこここに現地住民の目がある。異民族の男が女性の体に触れるのははばかられるのだ。「ゲリラに捕まって、やっと逃げてきました。日本の兵隊さんですね……助けてください」チャドルから、そこだけ見せた顔は、まだ幼さが残っていた。「……分かった。君の村まで送ってあげよう」山本は、優し...宇宙戦艦三笠8[思い出エナジー・2]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・24『幽体離脱』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語24『幽体離脱』「なんで、ちゃんとたたまないのかなあ!」くしゃくしゃになった衣装を広げながら、衣装係のイト(伊藤)ちゃんがぼやいた。「ボヤくなって、大ラスで、審査長引いて……」と、山埼先輩。「結果があれだったんだからな」と、勝呂先輩がうけとめる。放課後の倉庫。夕べは、とりあえずの片づけしかできなかったので、本格的な片づけと、衣装やらの天日干し。衣装は一見きらびやかそうにできているけど、洗濯できないものがほとんどで、天日干しにして除菌剤をスプレーする。シワの寄ったものは平台を尺高(約三十センチ)にして、その上でアイロンをかける。昨日の疲れと審査結果で、一年が三人と二年が一人休んでいる。そのうちの二人は学校には来ていたのに、クラブには「休みます」と舞監の山埼先輩にメールをよこした...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・24『幽体離脱』

  • 魔法少女マヂカ・296『ポチョムキン村・5・広場のお祭り騒ぎ』

    魔法少女マヂカ・296『ポチョムキン村・5・広場のお祭り騒ぎ』語り手:マヂカコクンと頷いて、ほんの一瞬エリザはフリーズした。ほんとうに一瞬の事で、エリザはすぐに、またステップを踏み始めた。印象としてはループしている。大事な秘密を明かして、次の行動に移ろうとして躊躇っている。そんな感じだ。――なにかあるのか?――悟嬢が目だけで聞いてくる。リズムをとって、エリザのダンスに手拍子を打って合わせてはいるが、中国有数の魔法少女。この桃源郷の底にあるものに気付いて、どうしたものかと思っているんだ。エリザのステップが、微妙にコマ落としになってきている。――フレームレートが下がってきたみたいな感じだな――スペックの低いゲームパソコンで高精細で動きの激しいVRゲームをやっている感じ。144ほどのフレームレートが72に落ちて...魔法少女マヂカ・296『ポチョムキン村・5・広場のお祭り騒ぎ』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・23『地下鉄で三駅行ったY病院』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語23『地下鉄で三駅行ったY病院』「そりゃ、君たちの気持ちも分かるがね……」予想通り、教頭先生はバーコードの頭を叩いた。教頭先生が機嫌のいいときのクセなのよね。「でしょでしょ、わたしたちも深夜帰宅しなくてすむし。いいえ、わたしたちはかまわないんですけど、このごろ、ここから青山にかけて変質者が出るって噂ですし……親が心配しますでしょ。それに、生徒は、まだだれもお見舞いに行ってないんです。先輩のご両親もきっと喜んでくださると思うんです。なにより、わたしたち先輩のことが心配で、いてもたってもいられないんです、先生!」「「そうなんです!」」里沙と夏鈴が合いの手を入れる。「よし、君たちの先輩を思う気持ちは、まことに麗しい。ぜひ行ってきなさい。付き添いは……」「「「貴崎先生が空いていらっし...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・23『地下鉄で三駅行ったY病院』

  • くノ一その一今のうち・26『百地流忍法骨語&闇着替』

    くノ一その一今のうち26『百地流忍法骨語&闇着替』――いま下りたソノッチは金持ちだ――ヘリコプターのドアを閉めながら、もう一人のわたしが口の形で言う。――なんで化けてるんですか?で、あなたは?――言いながら指さすと、そいつはニヤリと笑って『わたしだよ』と忍び語りで応える。おかしい、この騒音の中だ、いくら忍び語りでも聞こえるわけがない。『一種の骨伝導さ』見ると、そいつは、わたしが座っているシートのアングルを掴んでいる。離すと、とたんに口パクになる。『百地流忍法、骨語り』――百地流……え!?――見破ったわけじゃない、そいつの顔が、一瞬で百地社長になったんだ!『いやあ、歳だな、化けているのは三時間が限度だ』――術を解くなら、全部解いてください!首だけ社長というのは気持ち悪いです!――『解いてもいいが、この服を着...くノ一その一今のうち・26『百地流忍法骨語&闇着替』

  • 宇宙戦艦三笠7[思い出エナジー・1]

    宇宙戦艦三笠8[思い出エナジー・2]疾風(高機動車)の前方30メートルほどのところに、チャドル姿の女性が倒れこんだ。隊長は、すぐ全車両に停止を命じた。「隊長、自分が見てきます」山本准尉は、隊長と目が合ったのを了解と介して疾風を飛び出した。自爆テロの可能性があるので、うかつに大人数で救助に向かうわけには行かなかった。「きみ、大丈夫か?」姿勢を低くし、二メートルほど離れたところから、山本准尉は女に声を掛けた。爆発を警戒してのことでは無かった。そこここに現地住民の目がある。異民族の男が女性の体に触れるのははばかられるのだ。「ゲリラに捕まって、やっと逃げてきました。日本の兵隊さんですね……助けてください」チャドルから、そこだけ見せた顔は、まだ幼さが残っていた。「……分かった。君の村まで送ってあげよう」山本は、優し...宇宙戦艦三笠7[思い出エナジー・1]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・22『大阪に転校したはるかちゃん』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語22『大阪に転校したはるかちゃん』まあ、帰ってから聞いてみよう……ぐらいの気持ちで家を出た。で、あとは、みなさんご存じのような波瀾万丈な一日。帰ったら、お風呂だけ入ってバタンキュー。で、今日は朝からスカートひらり、ひらめかせっぱなし。お父さんの「も」にかすかなインスピレーション感じながら、中味はタイトルに『大阪に転校したはるかちゃん』と、あるだけで、あとははるかちゃんとの思い出ばっかし。提出すると、プッと吹きだして、先生はわたしの目を見た。「あ……いけませんでした?」「いいわよ、文章が生きてる。仲さん、あなた、はるかちゃんて子とスカートめくって遊んでたの?」先生は地声が大きい。クラス中に笑い声が満ちた。「違います!」「だって」「次の行を読んでください!」「アハハ……」声大きい...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・22『大阪に転校したはるかちゃん』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 93『リュドミラの胡旋舞』

    鳴かぬなら信長転生記93『リュドミラの胡旋舞』織部似て非なるものだ!怒っているのかと思った。広場の胡旋女たちを目に止めると、リュドミラは吐き捨てるように言った。「コサックダンスはもっと激しい!もっと速い!もっとカッコいい!」「あんまり大きな声で言うな、ここは三国志なんだよ」「これは、カザフスタンやタジキスタンの温い踊りだ!」「そ、そんな怒ることはないだろ」「怒ってるんじゃない、血が騒いでいるんだ!」「そ、そうなのか(^_^;)?」返事の代わりにリュドミラはリズムを取り出した。「……タンタタタンタタタンタタタンタタ……うん、リズムはいっしょだ……タンタタ!タンタタ!タンタタ!タンタタ!!」そして、ごく自然に胡旋女たちの中に入って行くと、胡旋女たちの倍以上に激しく大きく踊り出した!胡旋女たちが一回転する間に、...鳴かぬなら信長転生記93『リュドミラの胡旋舞』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・21『……と言えば大阪だ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語21『……と言えば大阪だ』課題は、社会科(正式には地歴公民科っていうんだけど、だれも、そんな長ったらしい名前で呼ぶ者はいないよ)共通のもので、日本の白地図に都道府県名を書きなさいという小学生レベル。ただし、貴崎先生……(わたしまで改まっちゃった)のは――好きな道府県を(東京は地元なので除く)一つ選び、思うところを八百字以内にまとめて書くこと――なのよ。五分ほどで道府県名を書き終えて、考えた……気になる道府県……と言えば大阪だ。正確に言えば、大阪に転校しちゃった三軒隣のはるかちゃん。一昨日、なぜか、お父さん朝からイソイソと出かけていった。わたしはコンクールの初日だったので気にもとめなかったんだけど。フェリペから帰ってみると、南千住の駅でいっしょになった。なぜだか、はるかちゃんの...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・21『……と言えば大阪だ』

  • せやさかい・360『皆既月食と呪文』

    せやさかい・360『皆既月食と呪文』さくらペコちゃんがすべった。と言っても、なにかの試験に落ちたわけやないし、バナナの皮を踏んだわけでもない。ベテランの芸人さんが、ここ一発のギャグをとばして反応が薄かった。こういうのを「スベった!」って言うでしょ?その「スベった!」ですわ。「昨日の皆既月食はすごかったよねえ(^▽^)/」授業の冒頭でかましたんやけど、「あ、ああ……」いう反応がチラホラ。あとは「え、それなに?」という反応。「あ、いや、だから昨日は皆既月食だったでしょうが」言いながら、黒板に『皆既月食』と大きく書いた。――え、みんなで月を食べる?――そういうスカタンもちらほら。なんちゅうか、それがどないしたいう感じ。「ほら、太陽と地球と月が一直線に並んで、月が地球の陰に入って見えなくなることを言うんだよ!」教...せやさかい・360『皆既月食と呪文』

  • 漆黒のブリュンヒルデQ・095『皆既月食の夜に煌めく星座、閃く玉ちゃん』

    漆黒のブリュンヒルデQ095『皆既月食の夜に煌めく星座、閃く玉ちゃん』ちょっとちごっかもしれん風呂上がりの髪を乾かしながら玉ちゃんが呟く空には、間もなくコンプリートしそうな月食の月。なにかの閃きが居候の神さまにあるのかもしれない。「寅どん(吉田松陰)も望東尼どんも、彼んこっ『高杉どん』て呼んじょったんじゃね?」「あ、うん。二人とも受け持ちの生徒かクラスメートを心配する感じだったよ……なにか?」「うん、思い出したたっどん、高杉晋作は亡くなっ二年前に谷と苗字を変えちょっ。名前は潜蔵、谷潜蔵が最後ん名前やったじゃ」「でも、それって、身を隠すための偽名とかじゃないの?晋作って、ずいぶん敵も多かったみたいだし」「うん、じゃっどん、名前を変えたんな藩命で、高杉ん籍も離れっせぇ、録も新知に百石になっちょっで正式やっど。...漆黒のブリュンヒルデQ・095『皆既月食の夜に煌めく星座、閃く玉ちゃん』

  • 宇宙戦艦三笠7[思い出エナジー・1]

    宇宙戦艦三笠7[思い出エナジー・1]メイドさんは四人とも同じメイド服なんだけど色がちがう。白、黒、茶、そして白黒茶の混ざったの。「「「「お早うございます、ご主人さま、お嬢様」」」」一瞬驚いたあと、四人のメイドさんは揃って挨拶をしてくれる。「あ……」「う……」「え……」「お……お早う」互いに挨拶を交わして、あとが続かない。「わたしたち、陰ながらみなさんのお世話をいたします。わたくしがミケメ」白黒茶が口火を切った。「シロメです」「クロメです」「チャメです」「陰ながらのお世話のはずでしたが、申しわけございません、早々にお目に留まってしまいました」「あ、いや、それはいいんだけど……」「三笠はフルオートの自律戦艦ですが、やはり、細々とした気配り目配りはメイドがいなければ叶いません。そのために、わたしどもが乗艦してお...宇宙戦艦三笠7[思い出エナジー・1]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・20『武藤さんの言うとおりね』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語20『武藤さんの言うとおりね』下足室まで走って気がついた、今朝の一時間目はマリ先生の現代社会……。晩秋だっていうのに、どっと汗が流れてきた。職員室は、教室のある新館とは中庭を隔てた反対側の本館。授業の準備なんかしていたら、わたしよりは二三分は遅くなる。ゼエゼエ……ゼエゼエ……えへへ息を整えながらも、余裕で階段を上り始めた。ただね、噴き出す汗がたまんなくて、三階の踊り場で立ち止まった。タオル(クラブ用なのでタオルハンカチのようなカワユゲなものじゃない)で、顔、首、そいでもって、セーラー服の脇のファスナーをくつろげ、脇の下まで拭いちゃった……われながらオッサンであります。「ヘックショ!」慌てて、手をあてたけど間に合わなかった。「ン」はかろうじて手で押さえられたけど、大量の鼻水とヨ...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・20『武藤さんの言うとおりね』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・19『スカートひらり!』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語19『スカートひらり!』スカートひらりひるがえし……愛に向かって~~いたわけじゃない。なんて、お母さんオハコのAKBの古い曲がリフレインしている。小学校から元気だけが取り柄のわたし、ひいじいちゃんのお葬式で忌引きになった以外、無遅刻、無欠席。まあ家業が零細鉄工所、従業員もゲンちゃんとマサちゃんが辞めて、柳井のオイチャン一人になっちゃったけど。日々の生活と仕事のリズムに狂いはなく、わたしも自然と身に付いた生活習慣。それが今日に限って……それだけ昨日のコンクールは身に応えた……と、こぼしたら、「てめえの甲斐性でやってる部活だろ。言い訳にすんじゃねえ!」と、オヤジにに叱られた。だから、家の玄関から地下鉄の車中を除いて、わたしのスカートはひるがえりっぱなし。わたし乃木坂って好きだけど...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・19『スカートひらり!』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・18『ブラボー!』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語18『ブラボー!』「初日、中ホリ裏の道具置き場を見に行ったよ」「マスター、ハイボールおかわり!……で、お化けでも居ました?」「いたね、ヌリカベの団体さん筆頭にいろいろ」「あれはね、フェリペが中ホリから後ろ半分使わせてくれないから……」「逆だね。あんなに飾りこまなきゃ、道具はソデに置いて舞台全体が使えた。芝居の基本は……」グビグビグビ……グルン!お代わりのハイボールを一気飲みすると九十度旋回して先輩と正対した。「おい、大丈夫かマリちゃん?」「大丈夫。お説拝聴させていただきます」「じゃあ、言わせてもらうけどね……」互いに芝居で鍛え上げた声、店内いっぱいに響く大激論になった。しかし、激論しているのがテレビでも有名な(わりに、わたしは、その日まで知らなかったけど。なんせテレビ見ないし...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・18『ブラボー!』

  • ピボット高校アーカイ部・30『明治25年にセーラー服は無い』

    ピボット高校アーカイ部30『明治25年にセーラー服は無い』ちょ、大丈夫!?再び転げ落ちて心配なのは、僕たちの後に転げ落ちてきた女生徒。先輩と僕は自分の意思で魔法陣に立ったけども、放課後の混雑の中、正門付近は下校の生徒が一杯いて、巻き込んでしまったことは想像に難くない。「う、う~~ん」呼びかけに、こっちを向いた女生徒を見て、僕も先輩もビックリした!カ、カミングアウト!?「……わたしたちの後に魔法陣に飛び込んでしまったという訳なんだな?」「はい、先輩と田中くんが抱きしめ合って消えたものだから、つい、追いかけてしまったんです」「だ、抱きしめ合っていたんじゃない!ダウンジングの感度を上げるためにだなあ……」「いや、結果的には抱きしめていたんだから間違いではないだろう」「そこは否定してくださいよ!」「それで、ここは...ピボット高校アーカイ部・30『明治25年にセーラー服は無い』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・17『KETAYONA』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語17『KETAYONA』それからの片づけ作業は敗戦処理のようになってしまった。わたしも、どこか気が抜けていたのだろう。なんせ広いだけが取り柄の倉庫。進駐軍が、この学校を接収したときも、この倉庫だけは除外したというシロモノ。ちょっと気を抜くとコウモリが巣くったり、野良猫が住み着いたり。いつもなら隅々までチェックするんだけど、この時ばかりは……。「ヤマちゃん、オーケー?」ヤマちゃんも……。「里沙、オーケー?」と、伝言ゲーム。ルーキーの里沙はチェックシートを見てオーケーサイン。そのチェックシートは去年のコピーで、この春にみつけた欠陥は書かれていなかった……。生徒達を解散させたあと、北畠先生に電話した。まだ病院にいるようなら交代しなければならない。なにより潤香の様態が気がかりだった。...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・17『KETAYONA』

  • やくもあやかし物語・161『なんだか癪です』

    やくもあやかし物語161『なんだか癪です』あれから十日。わたしの部屋は殺風景なまま250時間経ってしまった。うう……時間に換算すると、めちゃくちゃ長い。勉強道具とか、生活に必要なもの以外のアイテムが無い。黒電話、相変わらず机の上に載ってるんだけど、うんともすんとも言わない。受話器を取っても、交換手さん出てこない。神保城で逓信大臣の仕事が忙しいのかもしれない。神保城にも行けなくなった。神保城に行くには眠らなくてはならない、半分くらい眠ったって時に神保城に通じる坂道が出てくるんだけど、それが出てこない。そもそも夢を見なくなった。見ても忘れてるのかもしれない。寝床に着くと、一日のあれこれがポワポワと浮いてくるんだけど、神保城や、フィギュアたちや、あやかしたちのことを思い浮かべると、いっしゅん思い浮かんで消えてし...やくもあやかし物語・161『なんだか癪です』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・16『演劇部の倉庫』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語16『演劇部の倉庫』揺れるトラックの中で潤香の一束の髪は、わたしのバッグの中に入っている。あのあと、潤香のお母さんは、こう付け加えてくれた。――潤香の脳内出血は、原因がはっきりしないんです。最初の事故で出血したのをお医者様が見逃したのか、二度目のことが原因なのか……それに血統的なこともあるんです。主人の父も兄も、同じようなことで……あ、今は潤香の容態も安定していますので。先生もコンクールの真っ最中なんでしょ、どうぞお戻りになってください。そこに、潤香の担任の北畠先生もやってこられたので、お任せしてフェリペに戻ってきた。そして気になることがもう一つ……。「先生、着きましたよ」そう言って、運ちゃんはポップスをカットアウトした。「おかえりなさい」警備員のおじさんが裏門を開けて待って...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・16『演劇部の倉庫』

  • 銀河太平記・131『オロオロ』

    銀河太平記・131『オロオロ』穴山彦地球で戦争が起こると、火星人は身も世も無くオロオロしてしまう。火星で最大の戦争であったマース戦争の最中でも、満州戦争が起こると、ほとんど休戦状態になって、最前線では敵味方双方が、自分の戦争を放り出して、地球の戦争について情報交換をしたほどだった。戦争経験者には悪いんだけど、外で姉弟げんかをしていたら「おまえんちの父ちゃん母ちゃんが大喧嘩してるぞ!」と教えられ、心配になって自分たちの喧嘩どころではなくなるのと同じだ。これは、つまり、火星が真の意味で独立できていないことの現れだ。二十幾つの独立国になって、国家としては地球の国家と変わりがない。頭の中では分かっていても、開拓時代を入れても二百年の火星の国家群は心の底では自信が無い。我が扶桑は、建国以来幕府の体制をとっていて、他...銀河太平記・131『オロオロ』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・15『思わず歯ぎしり……我ながら可愛くない』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語15『思わず歯ぎしり……我ながら可愛くない』お気楽そうに手を振るのがやっとだった。バックミラーに、いつまでも不安そうに見送るまどかの姿が見える。フェリペの通用門を出るまでの、ほんの数十秒なんだけど、やたらに長く感じられる。体が、グイっと左に傾き、四トンの巨体は通りに出た。「いつもの、かけます?」馴染みの運ちゃんが気を利かせてくれる。返事も待たずにオハコのポップスをかけてくれた。運ちゃんと二人のデュオになった。「この曲って、Mアニメのテーマミュージックなんですよね。家で唄ってたらカミサンに言われました」「わたしも。そのアニメからこのミュージシャンにハマちゃったのよ」「へえ、そうなんだ」運ちゃんは、わたしがダッシュボードに片足乗っける前に、缶コーヒーをとった。運ちゃんは飲み残しの...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・15『思わず歯ぎしり……我ながら可愛くない』

  • 魔法少女マヂカ・295『ポチョムキン村・4・エリザの秘密』

    魔法少女マヂカ・295『ポチョムキン村・4・エリザの秘密』語り手:マヂカ「父はポチョムキン侯爵、そして母はエカチェリーナ二世……だよね」「あら、マジカさんはご存知だったんですか?」「うん、対ロシア工作をやっていた時に、少しだけロシア史を齧った」「わたしはサッパリだ。歴史については西遊記と三国志ぐらいしか分からないかな」そんなはずはないのだけど、まあ、一人が聞き役に回った方が、話が早いという悟嬢の姿勢だろう。「エカチェリーナ二世はピョートル三世と結婚したけど、クーデターで夫を倒して、自らロシア皇帝になったんだったね」「なんだか則天武后のようだな」「ええ、そこだけ聞くと、とんでもない悪女に聞こえますけどね(^_^;)」「違うのかい?」「ピョートル三世は、大のドイツかぶれで、普段はドイツ語しか喋らないくらいでし...魔法少女マヂカ・295『ポチョムキン村・4・エリザの秘密』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・14『オオカミ女になっちゃうぞ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語14『オオカミ女になっちゃうぞ』「やられたな……」フェリペ坂を下りながら、峰岸先輩が呟いた。「え!?」「声がでかい」「すみません」「考え事してただろう?」「いいえ、べつに……」「彼氏のこととか……」「ほんと(゚д゚)!?」夏鈴、おまえは入ってくんなよな!「いま、目が泳いだろ」「え(;'∀')?」そうだよ、わたしはヤツのことを考えていた。ここは、リハの日、ちょうどコスモスをアクシデントとは言え、手折った坂道。で、幕間交流のとき見かけた姿……昼間なら赤く染まった頬を見られたところだろ。ダメダメ、表情に出ちゃう。わたしはサリゲに話題をもどした(^_^;)。「で、なにを『やられた』んですか?」「サリゲに話題替えたな」「そんなことないです!」「ハハ……あの高橋って審査員は食わせ物だよ」...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・14『オオカミ女になっちゃうぞ』

  • 宇宙戦艦三笠6[話の続きとスタンウォーク]

    宇宙戦艦三笠6[話の続きとスタンウォーク]「で、なんだよ、怖い話って?」みんなが、朝食のテーブルから、突っ立ったままのトシに顔を向けた。「それが……ピレウスを目指しているのはボクらの三笠だけじゃないみたいなんです」「え、ほんとかよ?」「世界には、三笠以外に保存されている戦艦は20隻ちかくあって。そのほとんどが三笠と同時にピレウスを目指しているようなんです」「え、他にも残っているのなんてあるの?」「そういや、ミズーリがハワイで残ってたな……」「アメリカは、ミズーリを入れて8隻が記念艦で残ってます。中国はレプリカだけど定遠が。それに、戦艦じゃないけど遼寧が出てきています」リョウネイ?どうも、樟葉も天音も、こういうことには疎いようだ。オレは説明を加えた。「ウクライナから買った航空母艦だよ。でも、どうして空母が?...宇宙戦艦三笠6[話の続きとスタンウォーク]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・13『コンチクショウ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語13『コンチクショウ』あやうく握手会というところで三人の審査員の先生が入ってきた。――ただ今より、講評と審査結果の発表を行います。みなさん、お席にお着きください。みんな慌ただしく席に戻った。「審査員、表情が固い……」峰岸先輩がつぶやいた。三人の審査員の先生が、交代で講評していく。さすがに審査員、言葉も優しく、内容も必ず長所と短所が同じくらいに述べられる。配慮が行き届いていると感じた。単細胞の夏鈴はともかく柚木先生まで「ほー、ほー」と感心している。ただ、乃木高の講評をやった高橋という専門家審査員の先生が「……と感じたしだいです」と締めくくったとき、峰岸先輩だけが再びつぶやいた。「講評が……」「なんですか?」思わず聞き返した。「シ、これから審査発表だ」舞台美術賞、創作脚本賞から始...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・13『コンチクショウ』

  • くノ一その一今のうち・25『してやられる』

    くノ一その一今のうち25『してやられる』「行ってきまーす」「行ってらっしゃい」お祖母ちゃんと言葉を交わして玄関を出る。三歩で通りに出て左に曲がる。お線香の匂いがして、つい「お早うございます」を言いかける。筋向いのお爺ちゃんは、仏壇にお線香をたて、リンを鳴らして、ナマンダブを三回唱えるのが朝のルーチン。そのあと、郵便受けに新聞を取りに出て、玄関を出たばかりのわたしに「お早う」を言ったり「お早うございます」をこっちから投げかけたり。でも、先月、お爺ちゃんは亡くなったので「お早うございます」は言わない。それが、つい口をついて出てしまったのは、お線香の匂いがしたからだ。「お早う、そのちゃん」お爺ちゃんの声。思わず振り返ると、郵便受けから新聞を取り出しながらお爺ちゃん。「お早うございます」してやられたと思いながらも...くノ一その一今のうち・25『してやられる』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・12『メイクを落として制服に着替えた』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語12『メイクを落として制服に着替えた』幕間交流の間に、バラシも搬出も終わっていた。わたしは、スタンディングオベーションのきっかけになったアイツを探したかったけど、マリ先生の様子が気になって搬出口に急いだ。バタンと音がして、荷台のドアが閉められたところだった。「まどか、大儀であった。じゃ、先に行ってる。柚木先生、あとはよろしく」柚木先生がうなづくと、トラックはブルンと身震いして動き始めた。助手席の窓から、お気楽そうに、マリ先生の手が振られた。二台目のトラックのバックミラーに、ほっとした山埼先輩の顔が一瞬映った。ホーーーーーーーため息一つつく間に、二台のトラックはフェリペの通用門を出て行ってしまった。実際にはもう少し時間があったんだろうけど、頭の中がスクランブルエッグみたくなって...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・12『メイクを落として制服に着替えた』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 93『短期留学生来たる!』

    せやさかい・359『短期留学生来たる!』さくら今日から短期留学生が入ります。お早うの挨拶どころか、中学を合わせても三年間(中学は二年生からやったから)一回も忘れたことのない起立・礼をやらせることも忘れて、教壇につくやいなやペコちゃんは切り出した。ええ……?ビックリした後に「……?」の間が空いたのは、そういうペコちゃんらしからぬ、まるでコマ落ちしたみたいな様子のせい。「入ってちょうだい」廊下に向かって声をかけ、一礼して入ってきた短期留学生を見て心臓が止まるかと思た。「「ソニー(°д°)!?」」「……(゜艸゜)!?」うちとメグリンはあからさまに、留美ちゃんは口に手を当て息を呑んでビックリした!「ソニア・ヒギンズさんです。ヤマセンブルグからの短期留学生で、二学期いっぱいいっしょに勉強します。ソニア、ご挨拶を」「...鳴かぬなら信長転生記93『短期留学生来たる!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 92『クルミ団子から胡旋舞へ』

    鳴かぬなら信長転生記92『クルミ団子から胡旋舞へ』織部あくる日には米粉ともち米を買って、クルミ団子とクルミ餅にして売り出す。すると午前中には売り切れてしまった。調理場は、代書屋の台所を借りてている。台所を使うにあたって、台所の諸道具の手入れをしてやると、代書屋の奥方や子供たちにも喜ばれ、しばらくは売り物の団子と餅のおすそ分けをすることだけで使わせてもらえるようになった。「これだけ繁盛したんじゃ路地では手狭だな」気を良くした代書屋は、渡りをつけてくれて、四日目には表通りに店を出せるようにしてくれた。「わたしに店番が務まるのかなあ……」本人は、少し不安なようだったけど、リュドミラに店を任せて、五日目には皆虎の店々を見て回るようにした。「見て回るのはいいが、出歩くのは、この大通りだけにしてくれ。店番をしながら目...鳴かぬなら信長転生記92『クルミ団子から胡旋舞へ』

  • 宇宙戦艦三笠5[旅立ちの時・3]

    宇宙戦艦三笠5[旅立ちの時・3]みかさんが消えると、オレたちは普段の服装に戻っていた。オレはジーパンに生成りのシャツ。樟葉はチュニックの下に厚手のタイツ。天音はチノパンにチェックのシャツ。トシは引きこもり定番のジャージ。「フワ~、とりあえず寝ようか」いつもの生活時間では、もう寝る時間なので他の3人も異議が無かった。艦内の様子は頭に入っていた。さっきあれだけのチュートリアルをやったので、艦内のことが頭に入っているのはなんの不思議も感じなかった。どうやら、オレが艦長らしいのはチュートリアルで分かっていたので迷うことなく艦長室に。他の三人も船の幹部なので、それぞれの部屋に向かっていった。艦長室のクローゼットには、日ごろ俺が着る服がかかっていて、迷うことなくパジャマに着替えるとベッドに潜り込む。が、なかなか寝付け...宇宙戦艦三笠5[旅立ちの時・3]

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・11『本番』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語10『本番』――ただ今より、乃木坂学院高校演劇部による、作・貴崎マリ『イカス嵐のかなたより』を上演いたします。ロビーにおいでのお客様はお席にお着きください。また、上演の妨げになりますので、携帯電話は、スイッチをお切り頂くようお願いいたします。なお上演中の撮影は上演校、および、あらかじめ届け出のあった方のみとさせていただきます。それでは……あ、え?神崎真由役は芹沢潤香さん急病のため、仲まどかさんに変更……。客席に静かなどよめきがおこった。張り切った見栄がしぼんでいく……やっぱ、潤香先輩は偉大だ。本ベルが鳴って、しばしの静寂。嵐の音フェードイン。緞帳が十二秒かけて上がっていく……。サスが当たって、わたしの神崎真由の登場。「きみのことなんか心配してないから」最初の台詞。自分でしゃべ...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・11『本番』

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