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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十七)

    “わたしはほんとうに、トップに立ちたいの?ただ幼いころにいだいた憧れの気持ちに酔っているだけじゃないの?わたしの居場所は、あの教室の、一講師にすぎないのでは?”“わたしはトップに立てるの?そして上り詰めたその座は、本当にわたし居場所なの?それにいつかは、いまのわたしのように、だれかに追い落とされるんじゃないの?”疑念が渦巻いてる。松下という男を信じていいのか。しかし「結婚」ということばすら口にした、愛人ではなく、妻として迎えると言ってくれた。激しい高揚感につつまれる。“そうよ!自分の居場所はトップなのよ!”そしてそれは、いま、目の前にいる松下によって与えられるものなのだ。意を決して、栄子が二人を前にした。「決めました、あたし。松下さん、お世話になります。あなたの妻にして下さい。そして、トップスターにしてく...愛の横顔~100万本のバラ~(二十七)

  • ポエム ~焦燥編~ (朝、太陽が消えた)

    時の流れは今川となりました銀の皿は流れるのですその上に空を乗せたままその夜空は消えましたその朝には太陽が消えました(背景と解説)女友だちとの間が冷え切っていたという時期ではないのです。二股交際という言葉がありますが、わたしの場合は殆ど重なりません。不思議なのですが、ある女性との付き合いが疎遠になると、新たな出会いがあるのです。浮気ぐせ、とも違います。そりゃ、血気盛んな青年時代ですから、色んな女性に目が動くことはあったと思います。でも、この年になって色々思い直して-己を見つめ直してみると、一番の原因は、自分に自信が持てなかったのだと思います。短期間ならば薄っぺらい自分を隠せますからね。当時の連絡手段と言えば、固定電話か手紙ぐらいのものでした。手紙は、正直言ってお手のものでしたから。話を戻します。この詩は、自...ポエム~焦燥編~(朝、太陽が消えた)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(十一)

    えそらごと(十一)店に戻ってダメ元だとばかりに、「いつもにくらべてエンジン音が違っているし、アヒルの鳴き声みたいなんです。それに、ブレーキの効きが悪くなってますし…」と主任に車の異常を報告した。「音だって?お前さんの運転ではうるさいわな。ブレーキ?そんなことは自分のジマンの腕でどうにかしろ。急ブレーキをかけなきゃいいことだし、サイドにしたってギアをローに入れておけば問題ない」と、予想通り相手にしてもらえなかった。(ケッ、なんとまあ調子のいいことを。自分の腕でカバーしろだって。いつも『人間の勘とか腕だとか、そんなものに頼ってはいかん。おかしいと思ったらすぐに報告するように』なんて、いつも言ってるじゃないか)。心内で愚痴りながら、うしろ向きの姿勢で思いっきり舌をだした。苦笑しながら話を聞いていた事務員のひとり...青春群像ごめんね……えそらごと(十一)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (二十)グデン・ぐでんそして書いてあった、詩。(グデン・ぐでん)というタイトルが。わたしはいま、とても酔っています。グデン、ぐでんの、泥酔状態です。わたしは今、とても淋しいのです。人恋しくて、人恋しくて、たまりません。わたしは今、とても泣きたいのです。ワアー、ワアーと、号泣したいのです。あのひとは今、どうしていますか。よっしゃ、よっしゃと、駆け上がってますか。あのひとは今、燃えていますか。ワッセイ、ワッセイと、囃し立てていますか。あの人は今、泣いていませんか。わたしを、わたしを、思い出してませんか。わたしは今、とても酔っています。グチャ、ぐちゃの、ハッピー状態です。[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (四十一)

    (舟島四)そんな小次郎をせせら笑うかの如くに小舟から飛び降りたのムサシの目に、島の外れにある神社が入った。寺を出て十年の余、神仏に対する畏敬の念を捨て去り、一度たりとも神仏に手を合わせることのなかったムサシが―いまさら神仏に加護を願うことなどできぬと煩悶してきたムサシが、「此度ばかりはご加護を。南無八幡大菩薩、吾に力を貸した給え」と、深々と一礼をした。気勢をそがれた小次郎だったが、これが噂に聞くムサシの戦法かと怪訝に思いつつも、神仏に対して無碍な態度をとるわけにもいかない。不意打ちを考えているのかとムサシの一挙手一投足に気を配りつつ、同様に深々と一礼をした。小次郎がムサシに目を移したとき、櫂を削って作った木刀を振りかざしながら、ムサシが波打ち際を走り始めた。木刀をブンブン振り回しながら小次郎に間合いを計ら...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(四十一)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十六)

    「坊や。与えられるものなんかで成長するわけがないんだよ。自分の手でつかみ取るものなんだよ。もっと言えば、他人から奪いとるものなんだよ」正男にではなく、己に言い聞かせるように言いはなつ松下だった。「栄子さん、あなたは悪い人だ。こんな純真な若者をたぶらかすとは。本心をそろそろ明かして下さい。いや、良いでしょう。ぼくが彼に説明をしてあげますよ。あなたも言いにくいだろうから」栄子にすがるような目を見せる正男と正対して「正男くん。世の道理というものが、君にはまだ分かっていないようだ」と話し始めた。「現実を見なさい。君は無職の若者で、ぼくは資産家だ。この差は大きい。百万本の薔薇だって?いいだろう、ぼくなら用意できる。でもな、そんなもの何になる?それよりも一億のお金の方がどれほど有益か」「今はまだあなたに負けているかも...愛の横顔~100万本のバラ~(二十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百七)

    「竹田。祈祷師がいたでしょ。つれてきて」さすがにこれには竹田も反対した。小夜子の説得にと五平に連絡をとり、そして徳子までがかりだされた。竹田の母親が見舞いにきたときには、すこし気が動転してみえるからと話し、まともに請け合わないようにと念をおした。万が一にも勝子に処したような、民間療法的なことをいいだされてはこまるのだ。さすがにこりているのか、「ばかをお言いでない!」と一喝された。気丈にふるまう小夜子だったが、竹田の母親にだけは思いがあふれでた。ソファで落ち着かない母親のひざに泣き伏して、大声で「武蔵は、あたしを見捨てる気なのよ」と号泣した。やさしく背中をなでながら、「そんなことはありませんよ」と声をかけ、「たたかってらっしゃるんです、いま。小夜子さんの応援があれば、きっときっと、ね」と励ました。「そうね、...水たまりの中の青空~第三部~(四百七)

  • ポエム 焦燥編 (右に、行け!)

    ある冬の街角で……、そう、少し雪の散らつく寒い夜のこと。ダウンジャケットのポケットに迄、冷たさが忍び込んできた。路面がうっすらと雪の化粧をし、街灯の灯りで眩しい。ひっそりとして、明かりの消えたビルの前を、ポケットの中の小銭をちゃらつかせながら歩いていた。とその時、後ろから恐ろしく気味の悪いーかすれた、腹からしぼり出すような声がする。”だめだ!左はだめだ。右に、行くんだ!”どぎまぎしながらも後ろを振り向いた。全身が血だらけで、片腕のちぎれかけた男が、呼び止める。生々しいタイヤの跡が、顔面に刻み込まれている。その男、確かにどこかで見たような気がする。が、あまりの形相に思わず目をそむけた。そのまま逃げ出し、左へ折れた。そう。男の言う、行ってはならない左へ行った。と、ふと思い出す。血だらけの男の居た場所は、雪が白...ポエム焦燥編(右に、行け!)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(十三)

    日曜日、天気はカラリと晴れ渡った。いつもなら昼ちかくまで白河夜舟のくせに、すこし開けておいたカーテンの隙間からさし込んだ太陽のひかりで、平日よりもはやい七時に目がさめた。足下のかべに貼ってあるカレンダー写真のおおきな鉄砲百合がニッコリと微笑みかけている。「良かったね、楽しんでね」と呼びかけられた気がして、浮き浮きとした気分でベッドから飛びおきた。考えてみれば、昨夜は、いつもの土曜日とはまったくちがう時間で動いた。終業時間の五時半になっても、グズグズとロッカー前をはなれない。「どうした?」。先輩社員に声をかけられても「はあ、ちょっと」とはっきりしない。岩田がいつものようにすこし遅めに帰ってきて、「あれ?なに、待っててくれたの?」と嬉しそうに話しかけてくる。「いや、別に。……そうだった。あれ、どうした?いいや...青春群像ごめんね……えそらごと(十三)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十九)「よっ!」「元気してた?」そしてminakoから届いた手紙。toshiくん。あなたを呼ぶときには、いつも「くん」付けでしたね。年下だったから、ついつい「くん」と呼んじゃいました。あなたの、男としてのプライドも考えずに。ひょっとしてわたし、あなたをあなたのことを見下していた?ごめんね…ごめんね…ほんとにごめん。もうすぐ二十四になる、minakoです。我が家では、家訓としてね、二十四には嫁入りすることになってるの。お母さまもお婆さまも、そして大お婆さまも。あなたがあの日……。いいの、いいのよ、もう。あなたは、まだまだ子どもだったってこと。そのことに気づかなかったわたし、でした。楽しい想い出をいっぱいありがとう。でも、悲しい想い出もつくってくれたわね。いいのよ、それも含めていい想い出になっています。いま...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (四十)

    (舟島三)時折前髪を揺らす風を、小次郎は心地よく受け止めていた。いら立っていた気持ちも、少しずつ穏やかさを取り戻した。ギラギラと輝く太陽の下、海は凪いでいる。時折立つ白波の中に、一艘の小舟が見えた。船頭がゆっくりと櫓を漕いでいる。「大方、漁師であろう」と囁き合う武士たちに対して「この島を絵師に描いてもらうも一興よ。あの岩礁を背にして立つ我も良しか」と、声をかけた。さすがに小次郎殿だとうなずき合う武士たちに、薄ら笑いを見せる小次郎だった。今の小次郎には、ムサシとの試合が遠い異国での話のように感じられる。これから始まる死闘が、まるで他人事のように感じられた。焦点の合わぬ小次郎の目に、死の床に伏せった恩師鐘巻自齋が浮かび上がった。師である自齋を、大勢の門弟の前で、完膚なきまでに倒した小次郎だった。それが因で床に...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(四十)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十五)

    栄子の駆け引きかとも思う松下だが、ここは慎重にと「ママのおっぱいが恋しい年頃だろうに」と、正男に探りを入れた。顔を赤くして反論しようとする正男を制して「松下さん。今夜は紳士的に行きましょうよ」と、栄子が牽制した。「あなたのステイタスには相応ふさわしくないと思えたものでね。彼には、沙織とか言う女性がお似合いだ思うんですがね。たしかにご両親は立派だ。父上が経産省の官僚、母上は華道の先生ときている。ところがどうしたことか、彼は…」「ど、どうして、ぼくのことを」青ざめた顔色で正男が口をはさんだ。しかし松下は毅然として「別に君がどうこうと調べたわけじゃない。付録だよ、付録。栄子さんには失礼だが、調べさせてもらいました。パートナーになってもらう女性だ。分かって貰える思いますが」と告げた。「そうですか。で、合格しました...愛の横顔~100万本のバラ~(二十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六)

    しかし記者発表の場では、女を寝取られたことによる意趣返しの犯行だとされた。仕事関係のトラブルについては一切報道されず、世間的には愛憎問題として報じられた。さほどに盛り上がることもなくすむかと思われたが、業界新聞によって事の真相が暴露された。富士商会によって倒産させられた大杉商店の長女・次女が、ある金主の妾になることにより資金提供を受けて日本商会を立ち上げた。あくまで富士商会をターゲットにした商売だったが、それが失敗に終わり金主からの返済を求められた末の、苦肉の報復だったことが報じられた。あまりに詳細なその情報から、日の本商会からのリークだし断じられて、物笑いの種となった。一時期において動揺の走った取引先も、「御手洗社長のやりそうなことだ」として、一般紙の話を口にして騒動がおさまった。結局のところ、富士商会...水たまりの中の青空~第三部~(四百六)

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十九)

    (舟島二)小谷新左衛門の言葉が、小次郎に朱美を思い起こさせた。昨夜のことだ。初めて朱美が小次郎のために涙した。「あのムサシという男、鬼神とのうわさが。いかな小次郎さまにてもかなわぬと、巷間ではささやかれておりまする」頬を伝う涙を拭こうともせずに、朱美はひたすら小次郎にすがった。「ムサシという男、情け容赦のなき者とか。試合った相手は、ことごとくにこの世を去られていると聞き及びました。おねがいでございます、小次郎さま。この試合、おやめください。もしも小次郎さまがお敗れになられでもしたら…。朱美の一生のおねがいでございます。こたびだけは、どうぞ、朱美のねがいを、おききとどけくださいまし」ムサシとの試合は藩主細川忠興の知るところであり、小倉藩はもちろん隣藩でも大きな話題となっている。今さら取りやめることなど到底出...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十九)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十四)

    「わかりましたわ」とばかりに帽子に手をやる栄子の姿に、うんうんとうなずく松下だったが、栄子のうしろに立つ青年を見て愕然とした。“なんだ、あの男は。まさか調査員が報告してきたプータローか?”困惑顔を見せる松下に「お待たせしました」と笑顔を見せる。うしろにかしこまっている若者を従えての登場に、松下は不機嫌さを隠しもせずに「不愉快だ、ぼくは。どうしてこの若者がいるんですか」と、かみついた。「それについてはお詫びします。ただ彼もまた、わたしにプロポーズをしてくれています」“わたしのペースに持って行かなきゃ”と、涼しい顔でこたえる栄子だった。それに気をよくした正男も「そうだとも。ぼくにもここにいる権利があるはずだ」と、胸を張った。“なんだ、このおっさんは。資産家だときいていたけど、全然じゃないか!こんな場所もばしょ...愛の横顔~100万本のバラ~(二十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五)

    「竹田。席をはなれてくれ。奥さんが心配だ、そばにいてやってくれ」さっきのことを腹に入れて対処しろ、と目配せをした。「わかりました。自宅のほうにも連絡しておきます。お千勢さんが心配されているでしょうし」万が一にも五平の意図を知らされぬまま、警察の事情聴取をうけられてはならぬ。一秒でも早く、小夜子に伝えておかねばならない。しかし気の重い竹田ではあった。会社を守るためとはいえ、武蔵個人をいやしめるのだ。たしかに武蔵の浮気は多い、はげしかった。しかしそれとて、小夜子との結婚まえの話だ。最近では減っている、というより、以降はいちどもそんな兆候がない。たしかに酒宴の席はへってはいない。増えた感もある。しかしそれとて、小夜子の自慢のための酒宴がおおくなっていた。さらには武士が誕生してからの、お祝いだと浮かれる姿もある。...水たまりの中の青空~第三部~(四百五)

  • ポエム 焦燥編 (もがいて……)

    考えて悩んで……なにもしないなにもできない俺ただ不安がるだけ手足をもぎとられたわけでもないのに二十歳になったとき十五才の女の子と話をした七・八年先に結婚しょうかなあ…いくつの人がいいの?そうだな、二十二・三才の女性かなじゃあ、あたし、丁度いい年頃だねそうかあそうだねじゃあ予約しておこうかでも恋人いるんでしょ?恋人はいないけどデートの相手はいるようそ!いないんだあたしのお兄さんと一緒いないんだわ!いるよデートの相手ぐらいはうそ!いないのょそんなにモテナイ男に見えるかい?うーん!……じゃ今度デートしてくれるかい?うんいいよ!やめとこもう少し大きくなってからね(背景と解説)他愛もない会話でしたが、その中にも計算が働いていました。その子がわたしに興味を持っていることを知りつつ、、、純情な子を弄(もてあそ)ぶような...ポエム焦燥編(もがいて……)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(九)

    外に出ると、空はカラリと晴れわたっている。ジリジリと刺すように日差しがとどいている。とつぜんに、車に乗ることに嫌悪感を感じた。(仕事なんかやってられるか)という思いがわいてきた。このまま長良川に行き、パンツ一枚で泳ぎたいと思ってしまう。これまでにも仕事を投げ出してしまおうかと思ったことはあった。しかしそれをすれば会社をクビになることは自明の理であるし、それ以上に社会からの脱落を意味すると分かっていた。それより何より、なぜいま、そのような気持ちにおそわれたのか、言いようのない不安に胸が押しつぶされそうになっているのはなぜなのか、そのことのほうが彼を苦しめた。中学時代に愛読というより狂気に近い思いで読みあさった芥川龍之介が思いだされた。その作品群ではなく、その死に様が彼におそいかかってきた。「ぼんやりとした不...青春群像ごめんね……えそらごと(九)

  • 寒中見舞い

    寒中お見舞い申し上げます寒い日がつづいておりますお体をご自愛くださいムンク作「接吻」「最後に愛は勝つ!」世界に平和がもどりますように……寒中見舞い

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十七)ベタ惚れ?「ばんごはん、なにたべた?」「いま、なにしてた?」「どんなテレビ、みてた?」「フリーターってたのしい?」「おふろ、はいった?」「どこから、あらうの?」「シャンプー、なにつかってる?」「トリートメントは、しゅうなんかい?」「-----?」「*****?」矢つぎ早の問いかけ。答えるまえに、次のしつもんが飛ぶ。右腕にしがみついて、しなだれかかるminako。ときおり拳をつき上げて、そして嬌声をはりあげるminako。どうした?こんやは。唯ただ、とまどうばかりだ……。のらりくらりと歩くふたりの目に、緑の木々が飛びこんでくる。チラホラと紅葉した葉っぱが、じつにきれいだ。が、立ち止まって見入ることはない。ぼくの急かす声に、動くminako。とどまりたげなminakoの気持ちに気づいてるくせに、わざと...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十八)

    (舟島一)そして、舟島にて。小倉の地からはさ程に離れていない小島だが、隣接している岩礁は難所として恐れられており、漁師ですら立ち寄らない。「見世物にしてはならぬ」という藩主の命により、見物人を立ち入らせぬためとして、この島が決められた。約束の刻限を過ぎても、ムサシの姿は見えなかった。照りつける日の下で、小次郎はかれこれ半刻近くを過ごしていた。「どうしたことだ、ムサシは。一向に現れぬではないか」扇子を激しく振りながら愚痴る武士たちだったが、小次郎は自他共に許す天才剣士の名の下に、泰然自若と臨んでいた。「小次郎殿、ムサシはまだ現れぬようじゃ。暫時、木陰で休まれるがよろしかろう」立会人の小谷新左衛門の二度目の声がかかり、ようやく小次郎は松の下に体を休めた。物見遊山で集まった武士たちの喧噪を他所に、小次郎はほくそ...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十八)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十三)

    約束のクリスマス・イヴの夜、朝からどんよりとしていた曇り空が、いまでは星々がまたたいている。栄子にとって一生を左右するときが、刻一刻と迫っている。“どうするの?どうしたいの?”。己に煩悶する栄子だった。だれかに背中を押してもらいたい気もするが、栄子のプライドとして他人の意見に惑わされることはできない。それに、分かっているのだ。主宰は「受けるべきよ」といい、健二は「やめろ」というはずだ。いや、口にしないかもしれない。栄子の気質をよく知るふたりだ。主宰はかおを輝かせ、健二はみけんにしわを寄せるだけのことだ。会社帰りのサラリーマンやウーマンでごった返す居酒屋に、若い男を引き連れた女性が入ってきた。話に興じていた中年男が、「おいおい。場ちがいな女がきたよ」と、相手のことばををさえぎった。振り返った20代後半の女性...愛の横顔~100万本のバラ~(二十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百四)

    五平の元に、警察から連絡がきた。小夜子には伝えないでほしいとという、五平の要望を理解した警察のはいりょだった。「自首してきましてね、本庁に。凶器のナイフも所持していました。おとなしく捕まりました。あの手の犯罪者というのはにげまわるもんなんですがね。犯人の名前は、太田和宏です。年令は、44歳です。心あたりがありますか?出身がはっきりしないのですが、本人の言によると山陰地方だというんですが。ただねえ、戸籍がねえ。本名かどうかも怪しいんですがねえ。どうも筋者ではないようです、いわゆる特攻帰りというやつですな。これだけははっきりとしています」戦後の混乱期に帰国した者の戸籍については、中には怪しげなものもありはした。外地で戦死した者の戸籍をかたる者がいたのは事実だったからだ。「で、ですな。動機なんですが。本人は『天...水たまりの中の青空~第三部~(四百四)

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