chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
フォロー
住所
岐阜市
出身
伊万里市
ブログ村参加

2014/10/10

arrow_drop_down
  • きのうの出来事 (へんな ゆめ)

    はじめてのこと。夢のなかでの地震なんて。大きな建物じゃなくて、でも大きな部屋にいて。突然に床が割れて、その床に必死にしがみついて。それでどんどん人が落ちていく。それで……、……、思い出せない。そう、前の日のこと。たくさんの人が捕らえられて――なにに?異星人?なにかのなかに閉じ込められてしまう。大きな揺れがあって、床が割れて、地下のような洞窟のなかに落ちていく。ゆめ、突拍子もない夢のはなしです。義勇兵の募集がはじまり、ひとりふたりと応じて、そしてわたしも手を上げて前に出る。塔のようなものの中に入り、暗いなかを一歩一歩下っていく。いや、登ってる。壁伝いのらせん階段を、ひとりひとり登っていく。幅のせまい階段を、大きな塔の端っこの階段をのぼっていく。突然のこと。田舎風の部屋があり、「トイレに行きたい人、どうぞいっ...きのうの出来事(へんなゆめ)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(八)

    生まれてこのかた、女と名のつく人種との会話といえば母親ぐらいの彼だった。幼児期は「人見しりのはげしい子でして」。小学生時代には「恥ずかしがり屋さんでこまりますわ」。中学に入ると「愛想のない子でして」。そして高校時代に、ゆいいつ訪れた機会をうしなってしまった。通学時にバスが同じになる女子生徒が声をかけてきた。ただ単に「おはよう!」という声かけだった。「おはよう」なり「ああ…」とかえすだけでも良かったのだが、とつぜんのことに頭が真っ白になり、返事をすることもなく横をむいてしまった。彼としては悪口雑言をあびせたわけでもなく、すこしの邪険な態度をとっただけじゃないかと思っていた。しかし女子生徒にとっては、衆人環視のなかで受けた屈辱でありいたたまれないものだった。わっと泣き出してその場にうずくまってしまった。以来、...青春群像ごめんね……えそらごと(八)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十六)23歳の、minako。「ヒハハラアヒラヒノ、ヘヘホレル?(いまからあいたいの、でてこれる?)」異国語のように聞こえた、まるでロレツのまわっていない声。時計を見ると、十時半をまわっていた。休日前の夜は、普段ならばふたりして食事をしているはずなのに。「こんやだけはごめんね」と、手を合わせたminako。訳を聞くと、すまなさそうに苦しげな表情を見せたminako。minakoが指定した場所に行くと、強いライトによって暗闇のなかに浮かびあがっている、コンビニという異世界。その前で女子高生らしき娘どもが、地べた座りしている。「ああいうのって、いやね」なんて言ってるminakoが、タクシーから降りるやいなや飛びかかってきた。酒くさい息が、体の中にはいり込んできた。なんどか引き離そうとしたけれど、がっちりと首...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十七)

    (佐々木小次郎四)小倉屋に逗留のあいだも、毎朝に夜明け前から鍛錬にはげむムサシだった。庭にはおおきな池があり、悠然とおよぐ錦鯉が数十匹はいた。紅白の模様がそれぞれにおもむきがあり、当主ごじまんの錦鯉も数匹いると手代からきかされた。「おほめになられると、夕げにはひと品がふえますですよ」と耳打ちをしていく。しかしそれができるムサシならば、もうすでにどこかの藩に召し抱えられているはずだった。大声を発しながらの素振りで、重さが三貫はあろうかという太い木剣が上段から振りおろされるたびに「ブォン、ブォン」と空気を切りさくにぶい音がする。桜がいいというお内儀は「桜ははかない。商家にはむかない。長寿と繁栄をあらわす松の木にしましょう」と、おおきく枝がはった松の木が植えられている。「木を傷めませぬように」と釘をさす番頭には...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十七)

  • よもやま話 時間(その十)~「自分時間」の概念 ~

    よく言われることなんです、「いまは自由な寝起き時間で、いいですね」、と。たしかに、ありがたいです。たとえば、夏には起床が7時あたりが平均で、ときに6時ということも。前夜の夜ふかしがあれば別ですけれども、大体は早起きですよね。しかしこれが、秋、冬と季節が過ぎるにつれて、遅くなってきますよ。別段おそく起きようと意図しているわけではないですよ。考えてもみてくださいな。へやの温度がひくく、ふとんの中が暖かい……。ねえ、だれしも出たくないでしょ?起きたくないでしょ?でもそうもいかない。いつかは起きなくちゃならない。でもなんで?おなかが減っちゃうから?おしっこに行きたいから?「晴耕雨読」って、四字熟語がありますよね。晴れていたら畑仕事をして、雨ならば本を読む。昔の人は、ほんと働き者でした。太陽が出たら仕事に出かけて、...よもやま話時間(その十)~「自分時間」の概念~

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十二)

    突然に話しはじめたことは栄子には関係のないことだった。興味もない。それよりもこれからのふたりの関係についての話が、本音の話が聞きたいのだ。しかし松下はとうとうと話しつづける。「でですね、その愚痴の中に、大変な玉が隠れているんです。玉石混合ってやつです。当の本人たちは気付かない、ダイアモンドが混じっているんです…」あくびをかみ殺して聞き入る栄子だが、もううんざりといった表情を隠すことが出来なくなった。それでも松下は話をつづける。“このひとは自己チューなのね。人のことなんて、まるで気にしないんだわ”。ホテルの控え室で感じた冷たさが、いままた感じられた。「ぼくはね、栄子さん。情報の海のなかを泳ぎきって、新大陸を見つけたいんだ。で、その産物として大金が転がり込むというわけだ。金が欲しいわけじゃない。成し遂げたいん...愛の横顔~100万本のバラ~(二十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百三)

    五平のいうとおりに、ここは軽傷だったと答えるべきだろう。時間かせぎだとしても、その間に対策を講じねばならない。だがしかし、小夜子はどうなるのだ。会社のことばかりを優先させてもいいものだろうか。それになにより、この事態をなんと伝えればいいのか、真実を話すのか、軽傷だと安心させるべきなのか。思案に暮れる竹田だった。「よし、決まった。とうめんは箝口令をしいてしのぐとして、長期にわたった場合には銀行との折衝だな。なんとしてもこの案をのませなくちゃ。竹田、これから言うことは、秘密中のひみつだ。俺とおまえだけの話だ。徳江にも言うな、絶対だぞ。会社の存亡に関わることだからな」気迫のこもった、ついぞ見たことのない五平の目だった。目の中でギラギラと炎が燃え上がり、体全体に熱いマグマのような血液がめぐり回りまわっている、そん...水たまりの中の青空~第三部~(四百三)

  • ポエム 焦燥編 (たばこ)

    タバコ……その煙、、、白?灰色?……光によって、その色が変わる。雨にも、似たもの。酔わせてくれる。肺に、グッと吸い込む。ガツ―ンと、脳を、マヒさせる、ボーとなる。景色―すべてがぼける。体から力が、抜ける。……昇天……?タバコで、これ。……酔う、ということ……己を失う?怖い……=(背景と解説)タバコ、そしてアルコール。正気を失って、感情コントロールを失って、側溝に反吐を吐き続ける……誰かが背中をさすってくれて、「無理してたんだね」と柔らかい言葉が聞こえた。誰?と問い返すことが怖くて、ただただ、吐き続けた。グループと別れてすぐのことだった。これ以上飲んだら、正体を失ってしまう。そう思って、黙って群れから離れた。なのに、なのに、一体誰が……?現実逃避を願いつつも、異世界に入り込んだときに、はたして戻れるのか……...ポエム焦燥編(たばこ)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(七)

    仕方なく、窓からそとの景色をながめた。相もかわらずはげしく渋滞しながら、車がいきかいしている。車の保有台数は、全国的にも多いと聞かされている。家内工業が多いせいだろうと、教えられた。だから運転には気をつけるようにと、毎日の朝礼で訓示される。(車が半分に減ったら、確実に事故が増えるぞ。減ることはないって。岩田は減ると言うけど、絶対に増える。、車が多いからこそスピードが出せないんだから)。そんなことを考えていると「ホント、車が多いわね。半分くらいに減ったら、事故も減るでしょうに」と、本田さんが近づいてきた。背筋に水がながれた直後のように背筋をのばして「そ、そうですね」と答えてしまった。なんと言うことだ。じつに情けない。裏腹のことを答えてしまったと、自分に腹がたった。しかも、卑屈にもうろたえてだ。昨日までは何も...青春群像ごめんね……えそらごと(七)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十五)願う己と、阻止したいじぶん新一を抹殺する――それをねがう己と、それを阻止したいじぶん――とがいる。まるで神とあくまの代理戦争のごとくに思えていた。そしてそのことに、どれほどの時と労力をついやしたことか。それがいま、それらすべてが、こころの外側に位置している。この一瞬間の歓びをあらわしたい。踏みしめている大地にほおずりしたい。そのままひざまずき、イスラムの祈りのように、大地に接吻したい。ひんやりと湿った土から与えられるもの、そうだ。この匂いは、この香りは……お袋が毎朝作ってくれていた、みそしるの香りだ。大きな背におぶさわれた折の、親父のあせの匂いだ。先夜の、恋人とのいさかい。行きちがい。ねっとりとした熱い空気が体にまとわりついた夜のこと。不快指数100%だったあの夜のこと。minakoからの電話。[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十六)

    (佐々木小次郎三)ムサシがこの小倉に来てからというもの、佐々木小次郎という名を一日とて聞かぬ日はなかった。「あの素早いツバメを切り落としたそうな」「三尺もあろうかという長剣で、目にもとまらぬ早さできりおとしたんだと」「細川さまのごしなん役になられてからというもの、ただの一度も負けを知らずだ」「大きな声では言えねえが、さるご大藩がぢだんだをふんでいなさるそうな」「柳生家ですら、にげごしだと言うからねえ」どこを歩いても、小次郎の話で持ちきりだった。日の本一と自負するムサシには、なんとも面白くない。吉岡一門を、と進言した相模屋の番頭も「あのお方とだけは避けられませ。決して相まみえてはなりませぬ。天下一の剣士でございます」と、たしなめた。ムサシとしても、ためらいの気持ちが湧かないでもなかった。しかしこのままでは埒...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十六)

  • きのうの出来事 時間(その九)

    でもねえ、K医師は深刻な顔をしてましたねえ。「万が一感染症のばあいには、ペースメーカーを取り出さなければなりません。それ自体は簡単です。問題は、リード線です。心臓(中だっけ?外側だったっけ?どう言われたか忘れちゃいました)と一心同体化していると思われます。なにせ、12,3年経過していますからねえ。うまく取り出せるかどうか……」わたしが、「はあ、はあ、そうでしょうねえ」と、あまりにも軽い反応をしめすものですから、肩透かしをくらった感じ、なんでしょうね。拍子ぬけ、といった感じです。まあ、鳩が豆鉄砲……とまではいきませんが。「この間の、レントゲン室前でのようなことが起きると、心臓は動いてくれません。いや、もっと軽いものでも、これまで経験された体感できないくらいのものでも……」(すみませんなあ、先生。まったく実感...きのうの出来事時間(その九)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十一)

    八時の約束だったが、思いのほか電車の乗りつぎがスムーズにいき、15分ほど前に着いてしまった。“遊び人の男は、大体10分ほど前に着いている”。よくそんな話を耳にしている。ロビーの中央にある大きな観葉植物に目をうばわれながら、いくらなんでもこんなに早くは来ていないだろうと、ソファに腰をおろした。「栄子さん。おどろいた、こんなに早くおいでになるとは。電車の乗りつぎが、よほどにうまくいったようですね」。相好をくずして、つややかな紺のポロシャツとジーパン姿の松下が近寄ってきた。ごった返す店の奥まった場所を確保した松下、キョロキョロと周囲を見回す栄子に「こんな場所は、栄子さんは初めてですか」と声を掛けた。「はい……」。嘘ではなかった。教室に通ってくる練習生から誘われることもありはしたが、「きょうはちょっと。ごめんなさ...愛の横顔~100万本のバラ~(二十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百二)

    長時間におよぶ手術がやっと終わった。昼の名残りののこる薄暮の時間から、漆黒の闇につつまれる午前二時過ぎに終わった。憔悴しきった三人の前で、手術中のランプが消え大きく息をつく音とともにドアが開いた。「プシューッ」三人の頭が上がった。まだ朦朧としたあたまではあったが、小夜子がまっさきに「あなた、武蔵!」と、しがみついた。つづいて、五平と竹田が、また同じく「しゃちょー!」と声を合わせた。竹田は思わず指を組んでいる。それを見とがめた小夜子が「祈りはだめって」とのことばを発し、また大粒の涙があふれでた。ガラガラと音を立てておされる中、引きずられるように「信じてたんだからしんじてたんだから」とお念仏のようにつぶやきつづけた。手術室まえで、五平と竹田が固唾をのむなか、静かに執刀医がせつめいをしはじめた。「難しい手術でし...水たまりの中の青空~第三部~(四百二)

  • 本日のできごと (なんちゅう寒さやあ!!)

    本日の起床時間9:30。起き抜けで、書いてります。なんという寒さでっか!昨夜の天気よほうでは1℃だと聞いていたけど、こんなに寒いとは……。冬がけふとんを二枚重ねです。さらには、湯たんぽです。「あっつう!」と横に蹴飛ばしていた湯たんぽが、今夜はすごく愛しいやんか。なのに、「寒う」と二回も三回も起きて。これ以上は毛布しかない。けど、重さに耐えかねて……圧迫○なんてことに……そうや、膝掛けがある。何かのおまけに付いてきた膝掛けが。何の足しにもナランかも?と思いつつ、AM4:30に足下に乗せた。よし、よし、よっしゃあ!効果あり。(柔道での、KOUKA!)。やっと安心して眠れました。で、起きたのが、ムニャムニヤ。お寝坊しちゃいました。そう、雪や、ユキや、初雪や。積もってない?降ってないやんか?溶けたん?いや、ちがう...本日のできごと(なんちゅう寒さやあ!!)

  • ポエム 焦燥編 (青 空)

    水たまりの中の青空は小さかったポチャンと投げた石ころに水たまりの中の青空は歪んだ。渇いた愛砂に吸われる水草木は枯れていた枯れ木に風が吹く今日の愛明日には憎悪そして渇いた愛激しい雷雨外で遊ぶ子どもたち汗まみれ……(背景と解説)「水たまりの中の青空」小説のタイトルにも使っています。このフレーズ、実は、若い頃(二十歳前後だったと思いますが)に見た夢のシーンから生まれたものです。夢の内容はさておいて、良くやりましたよね、特に幼稚園児のころ。水たまりを見つけると、ポチャン!と足で波紋を作ること。その波紋こそが、小説のテーマなんですけどね。そして、自分史も書き入れるつもりでした。というより、青春時代についてのベースは自分史です。ところがところが、その自分史を書き上げてしまいました。読まれた方もみえると思いますが、[ド...ポエム焦燥編(青空)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(六)

    いつもならば「ごくろうさま!」と返ってくるはずが、きょうに限ってなにもない。鎌首をもたげてのぞき込んだ。一望できる仕切りのない作業場には、だれもいない。誰かしらが必ずいるのだが、どうしたことかきょうは無人だった。部屋はだだっ広い空間で、壁にはもろもろの治具がかけられている。ステンレス製の定規が長短あわせて五種類があり、ハサミも大きな裁ちばさみから小ばつみまで七種類がある。製図用の横幅のある平机には三種類のアイロンが置いてあり、使い道の分からぬ小物治具が何種類かある。そして階段を上がりきった角に、彼の天敵であるパターンやらハトロン紙が置いてある。それらを車に積み込む折に、無造作に放り込んだところを主任に見とかめられた。破れやすい紙類の扱いについては、特にあつかいを注意するようにと、常々言われていた。それを怠...青春群像ごめんね……えそらごと(六)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十四)まやかしのように柵から身をのりだして、自分の姿をその水面に映してみた。美しい空の絵のなかに自分の顔をみつけ、“うん、好い男だ”と、ほくそえむ。しかしどう考えても、余分だった。やっぱりわたしはいらない。空の美しさに感動している自分の興をそいでしまう。山々に見え隠れする太陽のひかりを受けて、明るい世界の住人になっていた。覚悟した。もうもどれない、きのうまでのくらい世界には。闇とは「光の欠如」であり闇という「なにか」が存在するわけではない。仏教用語にある無明とは「迷い」である。真如とは「あるがままに」あることである。すべてのことに対し、まったく素直な自分に気づいた。素直さのなかでは、なにもかもが肯定できた。なにもかもが素晴らしい!It’sbeautiful!こころに安らぎをえたいと、レコードに映画にそし...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(三十五)

    (佐々木小次郎二)小次郎元服の前年、道場内における門弟どうしの試合がおこなわれた。一度たりと負けたことのない相手と対した小次郎だったが、思いもよらぬ不覚をとってしまった。「まだまだ!まだまだ!」声を張り上げて臨む小次郎に対し、「それまで!」と師の声がかかった。「慢心じゃ、小次郎!毎日の鍛錬をおこたったが故のこと。いくど手合わせをしても、もう勝てぬ。未熟者めが!」師よりのきびしい叱責をききおよんだ父親によって、ひと月のあいだ、道場内に軟禁された。朝昼の鍛錬のあとも、ひとり小次郎だけが厳しい修練を課せられた。太平の世にうつりつつある昨今において、「勝てば良し!」とする剣技ではなく、美しく流れるような剣さばきが求められた。剣術にも、美しさと物語り性が求められていた。いちばん鶏が鳴くやいなや飛び起きる小次郎を、道...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十五)

  • きのうの出来事 時間(その八)

    まさかこんことになるとは、!!!です。9月4日(月)の退院の日にですね、肩からグルグル巻きにされていた包帯が外されて、、透明の傷カバーだけになったんですわ。ぶきみですねえ、やっぱり。血がねえ、にじみ出てきてたわけですよ。でね、ペースメーカーが鎮座されている所のそと側に、血液のたて筋が(内出血でしょうな)あるわけです。「うむ、うむ。これなら良いでしょう」そう仰るんですよね、執刀医が。ということは、この血のにじみ具合は想定内ということですか。止血状態になっているから、OKということになったんでしょう。ペースメーカーに沿っている内出血も、その内にとれるということでしょうね。そして、9月8日(金)です。術後、1週間に、診察です。透明のカバーが外されて、にじみ出ていた血をぬぐい去り、きれいな肌色がでてきました。完全...きのうの出来事時間(その八)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (二十)

    よどみなく話す松下に対し、栄子の中に警戒心のようなものが生まれた。確たる理由はないのだが、なにかしら松下の中にへびのような陰険さを見てとった。“なんでもいいの、だれでもいいの。とにかくパトロンをみつけなくちゃ”。フラメンコダンサーとして世界に打って出るには、賞味期限切れが近づいていることを知る栄子だ。しかし、ぜひにということばが出てこない。いぶかる主宰にひじで突つかれた。「いま、四時過ぎですから、そうだな、六時にロビーでの待ち合わせとしましょう」困惑顔の栄子をかばうように主宰が口をはさんだ。「松下さん。女は、いろいろと用意があるのですよ。自宅に一度は帰りたいでしょうし」「いや、これは失礼。気が付きませんでした。それじゃ、ここに部屋を取りましょう。そこでシャワーを浴びるなり、なさればいい」あくまでの己の主張...愛の横顔~100万本のバラ~(二十)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百一)

    なにかを言わねば、慰めのことばをかけなければ。“勝子ねえさんだったらどういうだろう、どうお慰めするだろう”。思えばおもうほど、考えればかんがえるほど、ことばが逃げていってしまう。“社長、しゃちょう。お姫さまのところへ戻ってきてください。信じてらっしゃいますよ、小夜子奥さまは”。やはり祈るだけしかできない竹田だった。「社長はねえ、つねづね言ってらっしゃった。『小夜子に勝る宝物はねえよ。おれがこんなに女ごときに惚れちまうとは、思いもよらねえことだぜ』ってね。小夜子奥さまに会わずに逝かれることはありません、ぜったいにね。いや、あっちゃならねえことです。戻られますって、ねえ。今日だって、『武士坊ちゃんにおもちゃを買うんだ』って、そう言って出られたんですよ」五平のことばに意を強くした竹田もまた、「そうでした、おもち...水たまりの中の青空~第三部~(四百一)

  • ポエム 焦燥編 (白い紙と黒い鉛筆)

    白い紙は、机の上。わたしの手に、黒のエンピツ。そのまま下ろし、手を動かせばそこには、黒い線の誕生。もう一度、動かせば━双生児の誕生。紙はまだ白い。わたしの手のエンピツは早くなる。そして正確に、少しずつ白い紙は黒くなる。それでも、紙はまだ白い。エンピツの速度は上がる。次第に紙は黒くなる。いつの間にか、白い紙は黒い紙だった。そして、ちびたエンピツと共に、黒い紙が、捨てられた。ゴミとして、屑カゴの中に。(背景と解説)白い紙=○○黒い鉛筆=○○二十歳前ですからねえ、この頃は。こんな比喩の仕方しか思いつかなかったのも、やむを得ぬことでしょうか。それにしても、ゴミとして屑かごの中に捨てるなんて、それもちびたエンピツと共にでしょ?………………わたしの本質は、ニヒリスト…というより、サディスト、いやマゾヒスト…でしたかポエム焦燥編(白い紙と黒い鉛筆)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(五)

    増田商店に着くと「まいど!」と、大声で怒鳴るように叫んだ。間口は七、八メートルほどで奥行きがしっかりある店内で、入り口近くには誰もいないのが常だ。いつもは事務室でふんぞり返っている部長が、きょうは陳列してある商品の確認をしていた。彼の声に気付くといつもの仏頂面で、あごをしゃくり上げて二階へとの指示がでた。その二階には岩田が耳打ちした、あの本田という女性がいる。「失礼しまーす」と声をかけて、事務室横の階段を上がる。階段途中で少し耳たぶを赤くした彼が、また「まいど!」と声を張り上げた。二度も同じことばを発してなにをくだらぬことをと思いつつも、いつもそうだ。要するに、まいど以外の気の利いたことばが出てこないのだ。主任からは、お世辞のひとつも言ってこいと言われてはいるが、どうにも思いつかない。まいどと言うことばす...青春群像ごめんね……えそらごと(五)

  • きのうの出来事 夢占い (死の前兆……?)

    先日インターネットで「夢占い」という、記事を見つけました。その中に、「死の前兆」という項目があり、ちょっと気になったものですから、読み込んでみました。曰くに「故人が夢に出てきたら、死の前兆のひとつだ」とあります。わたしは、30年近い前に父を亡くしています。現在、ご存じの方も多いと思いますが、74歳、今年で75歳になります。あと何年?といった団塊の世代、最後です。今年の8月末に、ペースメーカーの2回目の電池交換をすませました。すこぶる快調です。今年の1月に3歳上の兄を亡くしましたが、そのときは落ちこみました。体調も絶不調となり、75歳まではと思っていた仕事を3月で辞めました。しばらく血糖値も高止まり(Hba1c:8点台)してしまうし、睡眠もブツブツ切れで目を覚ますし、最悪でした。追いかけることになるのかな?...きのうの出来事夢占い(死の前兆……?)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十三)銀の皿新一と出会うまえのようなオドオドした暗さとはちがい、どこか慇懃無礼さがある、と思える。こころの中に内在している――でんと居すわっている新一を、消しさるためのひとり旅だ。別人格をそだてあげて苦痛からの逃げ場をつくったことが、ときに重荷となり障害となることに気づいた。おそかったかもしれない、あるいは気づかぬままの方が良いのかもしれない。「朝食のご用意、よろしいでしょうか?」鈴とまではいかないけれど、それでもすがすがしい声で尋ねられた。「そうですね、散歩をしてきます。三十分ほどで戻りますから、そのあいだにお願いします」国道づたいに歩いていると、トラック類が引っ切りなしに行き交う。その間を肩をすぼめるがごとくに、乗用車がはしる。それにしても、排気ガスの臭いには閉口させられる。“平日なんだ、きょうは”...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(三十四)

    (佐々木小次郎一)小倉の地にて。佐々木小次郎の妻女然として振ふるまう朱美だが、周囲の誰もが当然のこととして受けいれている。五尺七寸の長身小次郎に対して、朱美は並の男たちと変わらぬほどの五尺二寸ほどの背丈を持っている。しかもすらりとした体型は、小次郎の隣に立たせてもなんの遜色も感じさせない。実のところ小次郎の口からはひと言もない。朱美にしても、小次郎に対して恋いしたう素振りを見せてはいない。育ての親であるお婆に小次郎の世話を命じられて、渋々といった観の朱美なのだ。そして平素の朱美は、次々と悪態を吐いてくる。しかし朱美の辛辣な言葉は、小次郎には賞賛のことばとして響いている。「こたびのごぜん試合では、つばめしをご披露なさるとか。あのような小物相手に大人げないことで…」また時には、小次郎の忌み嫌うムサシを口の端に...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十四)

  • きのうの出来事 時間(その七)

    9月の中ごろに、睡眠テストを受けました。ひと晩の入院です。以前、もう二十年近く前に、赤十字病院で、「睡眠時無呼吸症候群」との診断を受け、鼻マスクを1年間着用しました。そののちに引っ越したこともあり、鼻腔テープを使うことで鼻マスク治療を終えました。再発したかと疑ってのことだったのですが、結果は軽度なものであり「心配するほどのこともないでしょう」との診断でした。以前から処方されている睡眠導入薬でOKということになりましたわ。当日は9時に起きると言いましたが、普段から9時には起きるようにしています。やはり明るくなっていますから、自然と目がさめますしね。よっぽど前夜に夜更かしをしない限りは、ですけど。いつだったか、夜中の2時頃にめがさめて(いつものことですが)、なかなか寝付けずに、朝方の5時近くまで起きていたこと...きのうの出来事時間(その七)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百)

    それまでごった返していたのに、突然に男と武蔵のあいだに2ートルほどの直線ルートができた。そのときはじめて、男が武蔵と視線をあわせた。危険を感じた武蔵だったが、この至近距離ではいかんとしがたく、なされるままだった。なんのことばもなく、「ドン!」とぶつかり合い、男は去っていった。武蔵と男がぶつかった、ただそれだけのようにみえたが、武蔵の腹に、大型のサバイバルナイフが突き刺さっていた。挨拶をしているようにみえました、争うようすはありませんでしたという証言がほとんどだった。中年男がはなれたとき、武蔵がその場に崩れおちたが、なんのことばもなかった。静かにひざが折れて前のめりになり、両手で傷口をおさえていた。「男のお子さまでいらっしゃいますし、これからいろいろとご活発に、、、」。売り場主任が大量の玩具類を台車にのせて...水たまりの中の青空~第三部~(四百)

  • ポエム 焦燥編 (レモンの夕立ち)

    -トシ君とアコちゃん、どうかしらねえ。=トシ君、もう高校生でしょ。アコちゃんも、小学生とはいえ六年生だしねえ。井戸端会議の声が、胸につき刺さる。せまい故郷にかえってきてわずか、二日目のこと。夕立ちの雨が激しく大地を叩きつける。トシのほ々も又、濡れた。すっかり辺りを飲み込む闇。トシも又、消えて行く。「トシ兄ちゃん、また明日ネ!」アコの声が、空虚しくトシの耳に響く。(背景と解説)極短編小説の、原本詩です。詩とは言えないものですが、載せちゃいました。うーん、何年前になりますかねえ。九州は、福岡県の、中間市という所に住んでいた折のことです。このときのことは、[九州旅行~ルーツ探しの旅~]で詳しく書くつもりです。ポエム焦燥編(レモンの夕立ち)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(四)

    「伝票ができたぞ!」と声がかかり、ふたりして倉庫の二階にある事務室に入った。中二階の造りで事務をする人間には不評な一室だ。広さも八畳ほどで、そこには女子事務員が三人と課長が陣取っている。そして社長夫人が経理担当としてにらみをきかせている。主任の席もあるにはあるのだが、一階の入り口近くに机を置いて差配している。現場での仕事が多いからというのが主任の言い分なのだが、社長夫人が苦手だからさと噂されている。カウンター代わりの事務棚のうえに小箱がおいてあり、担当者別に伝票が仕分けされている。それぞれに伝票を受け取り、部屋を出たとたんに岩田が「増田商店の本田さんがさびしがっていたよ」と、彼に耳打ちした。きのう急な注文がはいり、彼の代わりに岩田がとどけた言う。にやついた表情でも見せれば冗談かと受けとめられるのだが、能面...青春群像ごめんね……えそらごと(四)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十二)そのニヒルさが青春の真っただ中にいるわたしの夢といえば、小さなことだと笑われるかもしれないけれども、やっぱり異性との交際につきる。遠くからじっと見ているだけのわたしが、ゆめ見てはため息を吐いていたわたしが、当たって砕けろ!と。玉砕の憂き目にあったこともあるけれども、デートにこぎつけられたことも。二度三度とデートをかさねて、ゆっくりながらも階段を上がっていく。手をにぎることで、どぎまぎした初デート。二度目は相合傘で肩を抱き、そして三度目のデートで甘いキス。思いが達せられたと歓びに満ちあふれつつも、一瞬間過ぎるきょだつ感。温かいぬくもりに包まれながらも、とつじょ襲いくるくうきょ感。デートの間中、一瞬のかげりも見のがさない。そしてそのかげりに、どれ程にこころを痛めたことか。相手に見せる笑いの中に、どこか...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十三)

    (吉岡一門七)泥田のなかを逃げるムサシを「許すまじい!」「逃すなあ!」。叫びあいながら一斉に追いかけた。ある者はムサシ同様に泥田のなかを走り、またある者はあぜ道をかけた。決戦の場、洛外下り松に通ずる街道に身をふせていた他の門人たちも、その怒号を聞きつけて一斉にムサシに向かってかけよった。すぐに多数の門人たちに囲まれてしまった。四方八方から斬りかかられては、一本の刀では危うくなってしまう。とっさに小刀を抜いたムサシ、両手でもって襲いかかる門人たちの刀を振りはらった。強靱な腕力を持つムサシならではの戦法、二刀流がここに生まれた。風車のごとくに、ぶんぶんと大刀を振りまわしながら、門人たちを寄せつけない。一歩二歩と歩をすすめながら泥田から抜けでたムサシ、息を切らす門人たちをしりめに、脱兎のごとくに駆けだした。唖然...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十三)

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、敏ちゃんさんをフォローしませんか?

ハンドル名
敏ちゃんさん
ブログタイトル
敏洋 ’s 昭和の恋物語り
フォロー
敏洋  ’s 昭和の恋物語り

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用