chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
フォロー
住所
岐阜市
出身
伊万里市
ブログ村参加

2014/10/10

arrow_drop_down
  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (十二)

    (修行二)小坊主の殆どが商家の出であり、次男三男が多かった。わがままの許される家から戒律の厳しい寺へ移り、嘆き悲しむ日々を送っている。もしも実家に逃げ帰ろうものなら、己は勿論のこと、親兄弟、果ては親族たちのことまで非難の対象となってしまう。そんな彼らに対して、ごんすけが吠えた。「子をすてるおやなんていねえ!おやをすてる子はいるかもしれねえが……」自戒の念を込めてのごんすけの言葉に、沢庵和尚が手を打って小坊主たちに説き始めた。「よう言うた!その通りじゃ。みなそれぞれに親がある。されど、憎うてこの寺へ入れたのではないぞ。お前たちの先行きを案じての事じゃ。それぞれに事情は違うけれども、よくよく胸に手を当てて考えてみよ。今のお前たちならば、当時の親の心が分かろうというものじゃ」「こんな言葉を知っておるかのお。『寵...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百七十一)

    社員数で圧倒する日本一か、売上額で日本一となることか。この日本橋の地に、他を圧倒する高さを誇る自社ビルを建てることなのか。しかしなにかが違うと感じる武蔵だった。数字ではない、そういった物理的なものではなく、武蔵もまた小夜子とおなじく崇められたいのだ。「おめえは、いらん子だ。よぶんな子だ」酔った父親から浴びせられたそのことばが、まだ幼い武蔵に突きささる。「いやだっちゅうのに、酔っぱらったとうちゃんが……」。母親の子どもをかばう思いのことばなのか、それとも父親と同じく思いもかけぬ赤子だったゆえのことばなのか。そういえば母親に抱かれてあやされたという記憶がない武蔵だった。貧乏小作人の常として、家族そうでのはたけ仕事になってしまう。畦に竹で編んだおおきなまるかごをおいて、そのなかにほうりこまれた。大声で泣き叫んだ...水たまりの中の青空~第二部~(三百七十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百七十)

    「心配って、おかしいじゃないの!そんなに心配しているのなら、それこそ早く帰って来るべきでしょうが。そうよ、武蔵は案外に冷たいのよね。千勢もそう思うでしょ!」「いえ、そんなことは……」決してここで、同調しない千勢だ。武蔵を非難することばは、小夜子以外が口にすることはタブーだ。ひと言でも武蔵をとがめようものなら、烈火のごとくに怒りだす小夜子だ。「武蔵の悪口を言っていいのは、あたしだけなの!」これが、常套句だ。「旦那さまはおやさしいお方ですから。奥さまがおつかれのごようすなのをごぞんじで『起こしちゃいかんぞ。』と、おっしゃられたので」と、あくまでよき夫であると強調した。とたんに、小夜子のけわしい表情がゆるんだ。パッと、明るくなった。「そうなの、そうなのよね。それが、武蔵なのよ。あたしが、先ず一番なのよね。ふふ…...水たまりの中の青空~第二部~(三百七十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十九)

    昨日までの小夜子ならば、「そんなこと、あたしには関係ないわ」と、席を立つところだ。しかしいまは、妊婦のはなしを聞きたくてならない。ささいなことも、一言一句聞きもらすものかと身構える小夜子だ。これから出産までの内に小夜子をおそうであろう事柄を、とにかく知っておきたいのだ。「つわりって、どんなでした?お食事は、しっかり取れるでしょうか?好みが変わるって、ほんとですか?」。ことばの端々をつかまえては、立てつづけに聞いた。「ハハハ。つわりはねえ、人それぞれだと言うねえ。ひどい人もいれば、軽い人もいる。あたしの場合は、その中間ぐらいだったかねえ。ま、辛いといえば辛いし、そうでもないといえばそうでもないし。食事にしたって、そうさ。食べたい時に食べればいいのさ。食べたい時に食べたいものを食べる。気にしないことだね、何ご...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十九)

  • ポエム 正午編 (神の苦悩)

    ぼくが神に同情する唯一のことは大勢の人間を同時に愛せても大勢の人間に常に愛されても一瞬間でさえひとりの人間だけを愛するそれがただそれだけのことが許されないことだ=背景と解説=他愛もないポエムです。ですが、好きなんですよね。「神は、公正・公平で在らねばならぬ」別に自分を神にたとえたということではないですけど。傲慢ゆえの思い、と言っても良いかと思います。「スーパーマン」ご存じですよね。大好きなんです、わたし。クリストファー・リーブス主演の「Superman」で、思いを寄せる女性記者(ロイス・レーン)を助けるために、本来やってはならない時間を巻き戻すという行為を犯してしまう。これらのポエムを書き上げてから十年ほど後に観る映画なのですが、「ああ、ありなんだ」と思えましたけれどね。でもやっぱり、ヒーローに戻っていく...ポエム正午編(神の苦悩)

  • 青春群像 ご め ん ね…… 祭り (一)

    岐阜市は揖斐・長良・木曽の三大川にめぐまれ水の恩恵によくしたものの、そのいっぽうで洪水になやまされつづけた。そんなこの地に水防の神さまとして、おおおくの信仰をあつめる伊奈波神社がある。主祭神は五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)だ。金華山のふもと近くに位置し、長良川の近くでもある。そしてまた駅前から東西をはしる二本の大通りをへだてて、金(こがね)神社がある。五十瓊敷入彦命の妃である渟熨斗姫命(ぬのしひめのみこと)が金大神としてまつられている神社だ。財宝・金運・商売繁盛の神さまとしてあつい信仰をあつめている。その金神社のけいだいととなりあわせになっている金公園での祭りに静子をさそった。かぞえきれないほどの夜店がならんでいて、それらの店から子どものなかに混じっておとなの歓声も聞こえてくる。そのなかでも射...青春群像ごめんね……祭り(一)

  • きのうの出来事 (やつあたり)の 一

    いい話の後になんなんですが……。午後に、整形外科の先生に、八つ当たりをしてしまいました。午前中に行った病院で、どうにも納得のできぬことになっちまいましてね。わたしには「無理難題を押しつけられた」ような気がしました。久しぶりに、イライラしました。ストレスです。「H1BACが、8.3という値になり、2ヶ月連続の8点台の高止まりです。対策を取なきゃね」。先生のおことばです。そんのな、分かってたことじゃないですか、先生。3月末をもって、会社を退職したわけですよ。4時間/1日では合ったけれども、それなりの運動量になってたいたわけでしょ?それを、すぱっ!と辞めたわけですよ。運動不足になるのは、自明の理じゃないですか。先月の検診で、朝の値が上がりましてね、夕食が問題になったわけです。「減らせませんか?」。「いまは無理で...きのうの出来事(やつあたり)の一

  • きのうの出来事 (今度こそ、邪馬台国か?)

    少し前(2週間前?)のニュースでしたが、「すわっ、邪馬台国?」との報道がありました。佐賀県吉野ヶ里歴史公園にて、弥生時代後期の石棺墓が発掘されているとか。よしよしよし、決定ですね、これで。いよいよ、「卑弥呼の墓」ですよ。「奈良が、邪馬台国だ!」とかまびすかったようですが、これで、この地が邪馬台国ということになりますか。第一奈良の方は、宮内庁によって「第7代孝霊天皇孝女のお墓、と、治定されているとのこと。治定とは=物事に決まりが付くこと、落ち着くこと、そうすることに決めること。(kotobank)ま、他にも2カ所ほど候補地があるようですかず、これで決まりでしょう、ね!よーし、よーし、よしよし、二度目の九州旅行時には、もう一度吉野ヶ里歴史公園に行かねば。ああ、たのしみです。また、あの和太鼓の演奏に浸れるんです...きのうの出来事(今度こそ、邪馬台国か?)

  • [蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~](十七)どしゃ降りの雨

    外はもう、どしゃぶりになっていた。少年はかなしかった。肩をたたく雨が、いっそう少年のこころを重くしていた。そしてその雨とともにほほをつたう涙も、とまることを知らなかった。「ごめんなさい……」と、消えいるような声が。そしてそれが少年の耳にとどいた時、ふたりの黒服によって外へとつれだされた。少年のこころに、後悔する気持ちが生まれていないことが救いだった。といって、少女を責める気持ちもない。心情を伝えられなかったことが、残念だった。ただただ、残念だった。……残念だった。“どうして分かってくれない!”“どうして……なぜ……どうして……なぜ……”とつぜんに腹立たしさが込みあげてきた。“なにを、伝えたかった?”“誤解されたって?なにを?”“うなずいてくれれば、良かった?”“話を、したかっただけなのに……”[蒼い情熱~ブルー・れいでい~](十七)どしゃ降りの雨

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (十一)

    (修行一)修行では。住職に逆らう者など、当然ながら一人としていない。よしんば不満を抱いたとしても、ひとり胸にしまい込み他人に明かすことはしない。己は、実家から追い出された厄介者と、皆が分かっている。次男三男の悲哀として、運命として受け入れている。商才のある者は分家として一本立ちする道も残されているが、跡継ぎとして育てられる長男に対する躾の厳しさを目の当たりにすると……。しかしそれでも寺での生活に耐えられなくなると、親元に連絡を取り還俗をすることになる。もしも寺から逃げ出したとしても、すぐに実家から連れ戻されてしまう。そんな小坊主が過去に幾人かいたが、今では誰もが諦めていた。当初こそ警戒感を隠さずにいたごんすけだが、荒んだ気持ちも時が経つにつれ和らいでいった。ひと月も経たぬうちに笑顔が戻り、大声を上げて笑う...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十八)

    「武蔵は、ほんとに小夜子が好きなんだ。それは分かるね?けども、武蔵の女あそびは、病気だ。どうしようもない。女あそびを止めちまったら、武蔵は死ぬかもしれない。それくらいの大病だわ。どうだろ、小夜子。いろいろ含むところもあるだろうけれど、ぐっと飲みこんでおくれでないかい。女のふところの深さを見せておやりな。いや案外のこと、子供でもできたら、変わるかもだよ。あたしの知ってる男に、そういうのが居たよ。そうだ、ぴたりと女遊びを止めるかもね。子どもベッタリとなるかもよ。もちろん武蔵には、あたしから釘を刺しておくから」梅子の思いが、どれほど小夜子に伝わったか。小夜子自身、武蔵の女遊びについては、諦めの思いがないではなかった。それが男の活力源だと公言してはばからない武蔵だ。「女あそびを止めちまったら、武蔵は死ぬ」。梅子の...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十七)

    とつぜんに下腹部にはげしい痛みが走り、生暖かいものが内股に流れた。あわてて産婆を呼んだが、その出血を見た途端に暗い顔を見せた。そしてすぐに、産院に行けと言う。「どうなの、どうなの。おたきさん、大丈夫よね?まだ産み月じゃないものね。ちょっとした手違いよね?だってあたし、あたし、じっとしてたんだよ。お医者さんの言いつけを守ってたんだから」不安な思いが、しだいに絶望感をともないはじめる。産婆はひと言も口を開こうとしない。いつも饒舌な産婆が、だ。そして病院に向かう間中、ずっと梅子の手をにぎりしめてくれていた。「先生、どうしてなの?言い付けを守って、じっとしてたんだよ。ほんとに大事にしてたんだから。なのに、なのに、なんで、どうして……。ひどいよ、神さま。酷じゃないか、あんまりだよ。欲しくないと思ってたあたしを、あた...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ ( 三百六十六)

    「五ヶ月だね。気付かなかったのか、お前さん。他人のそれには敏感なくせに、自分のこととなるとからきしだな」と、馴染みの医者にからかわれる始末だ。「つわりは無かったのか?そうか。静かに静かに、いのちを育んできたんだな。で、どうするね?といっても、いまさら堕ろすわけにもいかんがね。お前さんに気づかれまいと、静かに成長をつづけてきたんだ。赤ん坊は、生まれたがっているぞ。神さまも、そんな赤ちゃんを応援しているらしい」医者はそう言う。しかし梅子の耳にとどく赤子の声はちがう。“このままお母さんに知られることなく、静かに逝くつもりだよ。心配しないでいいよ。ぼくが産まれたら、お母さん困るものね。お父さんだって、歓迎しないだろうし。大丈夫、大丈夫だから。お母さんを、お父さんを困らせるようなことはしないから。きっと、きっと、ふ...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十六)

  • ポエム 黎明編 :最終作品    (たわむれる少女)

    うみべの夕陽、かわに映える夕陽。そして、やまの背を焦がす夕陽。美しい花のささやき。雨にうたれる紫陽花の花。七色にかがやく虹。昇りくるたいようを背の少女。朝のはまべの少女。流れ着いたかいがらを見つめる少女。なみまに戯れる少女。=背景と解説=理想像として思い描いていた、少女像です。ポエム黎明編:最終作品  (たわむれる少女)

  • 青春群像 ご め ん ね…… 問屋街(八)

    そののちに麗子さんからの情報で、熊本の親もとをはなれての集団就職で、年齢は十六歳だということがわかった。声の小さな子で、いつもあいての耳元で話しかけている。まるで内緒ばなしをしているように見えてしまう。まだ方言がとれずにいたせいらしい。はじめの職場では人間関係がうまくいかず、在籍している定時制高校のあっせんで増田商店にきたということだった。とにかく万事においてひかえめで、出しゃばるということを知らない。どういう経過なのかはわからないが社長宅で寝泊まりしていて、麗子さんがお姉さんがわりとして何やかやと世話をしているということだ。そして当日のことだ。ロープウェイでと言いはるぼくに対して、三人の女性は歩くと言いいり、鶯谷にある山道からのぼることになってしまった。ぶつぶつとくぢるぼくに対して「情けない人ですね、そ...青春群像ごめんね……問屋街(八)

  • きょうの出来事 (痛っ!! 久しぶりです)

    今回は、「きょうの出来事」です。今朝は、冷えましたかねえ。久しぶりのことなんですが、左足のふくはらぎに激痛が走り、かけました。「ズキッ!」ではなく、「ズ!」です。前兆というか、一歩手前です。この痛みはまちがいなく、ふくらはぎのこむら返りですわ。すぐさま間髪を入れずに、足の指先に力を入れて、うらがわに引っ張られないようします。足の指先がうらがわに引っ張られると、もうだめです。地獄が待っています。のたうち回るほどの激痛におそわれます。八大地獄プラスの九大地獄にしてもいいぐらいの痛みです。ふくらはぎの筋肉がちぢこまっちゃって、どうにもなりません。高速で針に刺されつづけられるんです。ほんとそうなったら、どうにもなりません。ただただ痛みに、歯を食いしばってたえるしかありません。極端に悪化した虫歯の痛み、どころじゃな...きょうの出来事(痛っ!!久しぶりです)

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~ (十六)逡巡

    少年が立ち上がった。しかし逡巡はつづいている。帰られるのだ、このまなにごともない顔をして帰ることができるのだ。しかし少年の足は、あの女のもとにうごいた。手足のない達磨のごとくにすこしの歩みではあっても、かくじつに少年の歩はすすんだ。亀のようにのろい歩みではあっても、たしかに女の元へ。少年にはえいえんの時間のように感じた、その道のり。話にきょうじるアベックたちの間のびしたこえが、少年の耳にとどく。バンドの音楽も回転数をまちがえたレコード音のごとくに、間のびして聞こえる。少年が立ち上がって、ものの五、六秒。三つのテーブルさきに陣取っていたあの女が、いままさに目と鼻のきょりにいる。そして階段も。「あのお……」少年は、自分でも信じられない程にたやすく女にこえをかけた。つまりつまりながらも、少年が女に話しかけた。い...[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~(十六)逡巡

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (十)

    (山寺三)そんな視線に気付いた沢庵和尚は、破れた袖口やら裾をひらひらと舞わせながら「いまは乞食じゃ、乞食じゃ。だがのう、これでも寺に戻れば法衣を着れば袈裟も着けておる。あちこちの大名が列をなして門前で待っておるぞ」と、僧たちの笑いを誘いながら住職の隣に立った。そして、年の頃は十歳だが身の丈五尺ほどで赤銅色の少童がその後に隠れるように立った。「ごんすけという名前じゃ。すぐに分かることゆえ、皆には今話しておこう」と、ごんすけを皆の前に対座させた。「南蛮人じゃ。ゆえに、ごんすけには、寺の作務を終えるとすぐに、勤行ではなく異例ではあるが武芸を習得させる」寺に居する者が勤行をせずに武芸に励むとは……と、あちこちから疑念の声があがると、沢庵和尚がすぐに一喝した。「ごんすけは預かりものじゃ。このことは、皆、決して忘れて...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十五)

    「梅子さん、ちょっと。ひょっとして」と、実千代が小声でささやく。「やっぱり実千代もそう思うかい?あんたのお姉さん、おめでただったものね。うんうん、そうだよ、きっと」「小夜子、今夜はお帰りな。で、しばらくの間、出入り禁止だ」えっ!と不満げな表情を見せる小夜子。そして安堵の表情を見せる竹田。「いいかい。明日にでも、医者に行きな。違う、違う。産院だよ、産院。十中八九、おめでただよ。どうだい、月のものが遅れてるだろ?まちがいない、おめでただよ」「社、社長に連絡してきます。こんな所にいてはだめですから、すぐに帰りましょう」あわてて立ち上がる竹田だが、当の小夜子は悠然としている。「竹田!そんなに慌てることはないわ。明日調べていただいてからでいいの!もし違っていたら、どうするの。がっかりさせることになるでしょ。それに、...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十五)

  • きのうの出来事 自転車屋さん、ありがとう!

    もう一度会いたくて、二度寝してみました。随分と前ですが、つづきを見ることがあったんですわ。でも、今回はだめでした。もう来てはくれませんでした。まあしかし、またひょっこりと、「よお!」ってね。ここのところ夢のはなしばかりみたいです。仕事を辞めてのリタイヤ後というのは、外出すると行っても、せいぜいが買い物ぐらいですからね。ちがうわ、病院通いがありました。でも、“社会とのつながりが希薄になる”と、よく聞きますが、ほんとですね。そうだ!ひとつネタがありました。自転車です。運動不足に陥ってるわたしです――私の場合、仕事=老後のレジャー資金を稼ぐ=運動、みたいなものでしたから。5年ぶりぐらいかな、駐輪場からひっぱり出したのは。ええええ、そりゃもうほこりと汚れだらけでした。タイヤの空気は抜けてるし、バッテリー(電動アシ...きのうの出来事自転車屋さん、ありがとう!

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十四)

    ご満悦の表情で竹田の値ぶみをする梅子だが、いつもはキヤッキヤッとはしゃぐ小夜子の静かさが気になっていた。“社長がいないから、元気がないのか?小夜子は、見た目はきつい女だけれど、あんがい淋しがりやさんだからね。みなにきつく当たったり横柄な態度をとるのも、その裏返しかねえ。あんがい、張子の虎なんだよ。この竹田という若者にきついのも、そのせいだよね。けど、ほかにもなにかあるかもねえ。情ははないだろうが。そういえば同じ竹田姓だけど、親戚筋かなにかかねえ……。でもそうならそうで、社長がそう言うだろうし。偶然ということかい”「どうしたんだい、今夜は。えらく静かじゃないか」と、小夜子に声をかけた。「梅ねえさん、じつは、きもちちがわるいの……」顔面蒼白状態で、必死の声をふり絞ってくる「は、吐きそう……なの。うっ、うっ、う...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十四)

  • きのうの出来事 久しぶりい!

    8:00目ざめました。夢です。なんとまあ嬉しいことに、先日に辞めたはずの会社で働いています。整然とならんだ棚のなかで働いているわたしのもとに、廣瀬があらわれ、なんと中村までがうしろにつづいています。片付けものをしていたわたし、帰り支度となります。廣瀬は仕事かなにかの電話中です。わたしときたら、(しかしどうしょう、このまま知らん顔をして帰ろうか)なんて、生来(?)の弱気の虫というかなんというかためらうわたしがいるんです。気恥ずかしさ(仕事に対するコンプレックスといったことではなく)があり、そう、想定外のシーンに戸惑うわたしがいるということですね。普段から、小説のネタはないかと考えているわたしです。機転が利きそうなもんですのに、からきしだめなんですね。もっとアンテナを高性能にするか、髪の毛1本1本(最近うすく...きのうの出来事久しぶりい!

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十三)

    「名前、なんて言うんだい?この青年は。うーん、真面目だね。初めてだろ?こんな店は。いや店どころか、女あそびの経験もないね?きっと。あれ?待てよ、見覚えがあるぞ。梅子ねえさんもヤキがまわったかねえ。来てるね、きてるよ。一度だけかな?専務が若いのを連れてきたんだけど、そのときにいたねえ。おいおい、そんなに小さくなることはないさ。そんな端っこに座らずに、ほらっ、でんと真ん中に座りな。あんたはお客さまだ。大きな顔をしてりゃいいのさ。あ、分かったぞ。あんたは、竹田くんだろ?そうだよ、間違いない。社長がいつも言ってるよ。石部金吉みたいな青年がいるってね。発想がね、おもしろいって。ほかの奴にはないなにかがあるって、ほめてたよ。将来が楽しみだとも。良い参謀になるだろうってね」「そ、そんな大それた者じゃありません」更に体を...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十三)

  • ポエム 黎明編 (風・朝の儀式)

    西のそらを風がながれるそして雲のない空にぼくは大きく雲を描く東のそらを風がながれるそして雲のない空にぼくは真っ赤な朝陽を描く太陽光線が湖に凍てつくそして水面を走る白鳥━朝の儀式=背景と解説=不可解だと、不快に思われますか?当時――高校時代なのですが、「感性の詩だ!」と気取っていたものです。文芸部に所属していましたが、「おまえら凡人には理解できんだろう」と、傲慢さに取り憑かれていた気がします。いやな奴でした。でもそんなところが、ニヒリズムととらえられて、自分で言うのもなんですが、完全なモテ期でしたね。とりあえず解説をしておきますと。西の空=極楽浄土=理想郷雲のない空=空虚な心=大きく雲を=大きくがキモで、自分を過大評価したがる世代なんですよ。東の空=誕生期=黎明期雲のない空=真っ白いキャンパス真っ赤な朝陽を...ポエム黎明編(風・朝の儀式)

  • きのうの出来事 (なんちゅう、目覚めか!)

    7:50目ざめ。トイレへ。体がエラい=ダル重状態。腰もいつにも増して、痛い。このまま起きるのは不可と思い、チョイ寝へ。の、つもりだったのに、いざ目ざめたのは8:30ごろ。昨夜の就寝が11:15だったので、「良し!」と体を起こすも、だめ。ではいま一度のチョイ寝へ。とにかく、8時台には。否!目ざめたのは、9:15。頭がぼーっととしています。二度寝の弊害かと思いつつも、このまま起きる気にならず、ベッドの上でゴロゴロ。いつの間にか、また眠りへ。9:40、目ざめ。しかしどうにも心持ちが落ち着かない。夢見の悪さを感じるんですが。(直後には覚えていたものが、いまは思い出せずです)で、ゴロゴロしている内に、またまた眠りへ。9:50、すっきりと目ざめです。体のダル重さはとにかく、頭はスッキリとしています。ところが、すぐに体...きのうの出来事(なんちゅう、目覚めか!)

  • 青春群像 ご め ん ね…… 問屋街(七)

    「かりにも社長令嬢だぞ。それに年上なんだから、そんな口の利き方はやめろ」先輩社員にしかられるが、そうなると反こつ心がムラムラと湧いてくるのだ。立場が上の人間にたいしては猛然と反発心がわいてくる。というよりは、ニヒリズムに心酔している――自分に酔っているのかもしれない。あの友人の影響であることは、中学時代のじぶんといまの己をくらべれば一目瞭然だ。おどおどと人の顔色ばかりをうかがっていたぼくだったが、歯にきぬ着せない言動でクラス内で浮いた存在となったものの、その実みなから一目置かれる存在の彼のかげにかくれているぼくだった。それがいまでは、その友人が乗りうつったかのごとき振る舞いをしている。「それでさ、そのデートには、あたしも付いていくから。静子ちゃんには麗子さんがついて、あなたにはあたしが付いてあげる。来週の...青春群像ごめんね……問屋街(七)

  • きのうの出来事 (うるさい!)

    「ゴーン、ゴーン」。「ガッガッガアー」。耳障りな音で目がさめました。「うるさいっ!」と、怒鳴りたかったけれども、早や9:00でした。恥さらしになるだけだと、ぐっとのみこみました。夜勤勤めならばまだしも、オールフリーの無職者ですもんね。勝手に夜更かししてのこと。しかも相手は公共工事さまです。勝てませんっ、て。平日は高齢者たちの「カーン」「コーン」と。「ゲートボールですか?」。「いえいえ、グランドゴルフです」。「どうです、あなたも?」。いえいえ、窓から手をふってご辞退しました。土・日は子どもたちの歓声が、すぐ近くの公園で響きわたりますんです。9時、10時すぎまでの就寝は、いいかげんにやめましょうかね。23:00の就寝、せめて日付の変わらぬうちにベッドに入りたいもんです。そうそう、腰痛ベルトが届いています。さっ...きのうの出来事(うるさい!)

  • [蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~](十五)煩悶

    長いながい、少年の煩悶がつづいた。“どうして……なぜ……どうする……どうやって……どうして……なぜ……”悲しいことに、なにをどうはんもんしているのか、少年にはわかっていない。ことばだけが堂々めぐりしている。少年の視線のさきにいる女は、食いいるようにバンドを見つめている。“ほら、ほら、待ってるんだぞ。ほら、ほら、待ってるんだぞ”煩悶が、いつしか逡巡にかわっていた。靴のかかとが、コトコトと音をたてている。よしっ!と、にぎりしめた拳も、すぐに力がぬける。気を取りなおしての力も、かかとが床につくと同時にゆるんでしまう。バンドが交代している。身をのりださんばかりだった女が、ストローを口にはこんだ。もうひとりの女と、にこやかに談笑している。ときおりケタケタと大声での笑い声がきこえてくる。“下品なおんなだ。あのひととは...[蒼い情熱~ブルー・れいでい~](十五)煩悶

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (九)

    (山寺二)体力の回復を待って長崎の地に送り届けるつもりの僧侶だったが、ごんすけにその旨を問い質した。「いまさらなんばんにいっても、だれもおらん。おれは、ここのほうがいい。大きくなってりっぱになって、お父をさがすよ。お父は、ひとりしかいねえ」涙ながらに訴えるごんすけに対し、僧侶の言葉は冷たかった。「ごんたのことは諦めることだ。実を言うと、おまえは捨てられたのだ。村から逃げ出すときに、村の子どもを痛めつけたであろう。そのことから、こっぴどくごんたは殴られてな。それが元で、もう漁のできぬ体になってしまったのじや。分かっておる、おまえが悪いのではない。ごんたも責めてはおらぬ。しかしもう一緒に暮らすことはできぬということじゃ」おいおいと泣きじゃくるごんすけの背を優しく撫でながら、(嘘じゃ嘘じゃ、ごんたはお前のことを...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十二)

    「さよこおー!いらっしゃーい!」酒に焼けた野太い声が、小夜子にかけられた。「梅子ねえさーん、梅子ねえさあ」いきなりに小夜子の目から、大つぶの涙があふれでた。当然に梅子も竹田も、当惑の色をみせる。しかしもっとも驚いたのは、当の小夜子自身だった。悲しい思いなど、まるでないのだ。「ど、どうした?なにかあったのかい?そうか、また武蔵に悪いくせがでたのか。で、どこの店の女だ?まさか、うちの店じゃないだろ?それとも、出張先かい?病気だからね、武蔵の女あそびは。よしよし。こんど店にきたらたっぷりととっちめてやるよ。大丈夫、大丈夫だから。この梅子姉さんに任せときな」と、赤子をあやすように、小夜子の肩をだいてやる梅子だった。「ちがうの、ちがうの、梅子姉さん。べつに悲しくなんかないの。なのにね、涙がね、なみだが出てくるのよ。...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十二)

  • きのうの出来事 (デシャブー? それとも ゆめ?)

    不思議な目ざめでござんした。頭が、少々混乱しとりますんで、整理させてくださいな。6時:トイレに起きました。で、ふたたびベッドへ(いつものことです)。7時:少し前かな?時計の短針が、7時まで行ってなかった気がします。まだは早いとばかりに、ひと眠り(いつものことです)。左での横臥。だめ、眠れない。右の横臥へ(こっちなら確実に眠れるはず)。――どうしたことか、眠れない。でも、そのまま目をつむる。目がさめる。時間は…?7時23分。まだ早い。もうひと眠り。目がさめる。時間は?6時57分。???……7時57分の見まちがい?いや。7時に短針がきていない。もう一度、寝る。目がさめる。なんだか寝た気がしない。時計は?室内干ししている下着がじゃまで見えない。体を起こして確認。窓の外が明るい。えっ、えっ、ええっ!やっぱり、7時...きのうの出来事(デシャブー?それともゆめ?)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十一)

    「いらっしゃいませ、御手洗さま。ようこそのお越しで」うやうやしく礼をするボーイに、ニッコリと微笑んで「おひさしぶり。小夜子でいいわよ」と応える小夜子だ。鮮やかなネオンサインで、キャバレー:ムーランルージュとある大きな建物のなかに、小夜子がすいこまれていく。あわてて追いかける竹田に「いらっしゃいませ。どうぞ、ごゆっくり」と、ふかくお辞儀をする。「あ、いえ、こちらこそ。お世、」と、慌てて竹田が返事をかえすと、すぐさま竹田の卑屈さをかんじとった小夜子の、いらだつ声が飛んできた。「竹田、早くいらっしゃい!」「申し訳ありません。久しぶりの場所なもので、なにをどうしていいのか分かりません」ペコペコと米つきバッタのように頭を下げつづける竹田に、周りから失笑がもれた。己が詰ることには良しとしても、他人に蔑視されることには...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百六十)

    「大丈夫だって!梅子姉さんに聞いてもらいたいことがあるのの、今夜は。それで、すこし武蔵を叱ってもらいたいの。もう少し浮気を控えろってね。出張のたびに浮気をするんじゃ、ない!ってね。」「ですから、今回の出張ではそのようなことは、」「今夜はなくても、昨夜にはあったの。それとも、明日?まあねえ、武蔵に浮気をするな、というのも無理な話だしさ。そんなことをさせたら、武蔵は武蔵でなくなっちゃうのよねえ。元気のない武蔵はきらい!でもねえ、妻としてはねえ、いつもいつも、ねえ」なんど否定しても頑として受け付けない。決めつけている小夜子では、竹田がなにを言おうと矛を収めるはずもない。それは分かっているのだが、竹田にしてみれば、つねに小夜子第一としている武蔵の浮気ぐせは、どうしても理解できない。竹田の知る浮気というものは、たい...水たまりの中の青空~第二部~(三百六十)

  • きのうの出来事 (腰痛ベルト)

    久しぶりに8時台に起きました。7時台に目がさめて、起きようかともおもったのですけれど、1日の長さを考えると、そしてまた8時間の睡眠ではなく9時間のすいみんをとりたいという気持ちが強くて、10分延ばしに。目を閉じては眠りにはいりそして目ざめ、そして目をとじてねむりにはいりそして目覚め、そしてまた目をとじて眠りにはいりそしてまた目ざめる。そのくりかえしののちに、8時20分ににおきることにしました。ベッドの上で両肩と腰と右肩上腕部に、シップ薬をたっぷりと5枚貼りました。どうにも肩と腰の痛みが治まりません。仕事に通っているときにも痛みはありましたが、これほどではなかったんです。両肩と右上腕部の痛みなんて、感じなかったはずです。整形外科で、レントゲン検査を受けているのですが、1年前とほぼ変わらない状態とのこと。「近...きのうの出来事(腰痛ベルト)

  • ポエム 黎明編 (嫁さん)

    おれの嫁さんどんな娘だろうナ背丈はおれの鼻まで髪は黒くてツヤがある口づけすると甘いにほいがするといい目はパッチリで少し大きめ瞳はもちろん黒!その瞳に映るおれメガネ顔は冴えないか?鼻は高くないのがいいだってさ……キスする時じゃまだもん唇は厚からず薄からず……まっ、いいか肩はなで肩がいい抱きやすい肩だなあそれから、ボインすぎるのも嫌だけどナインではちょっと……ウエストは断然細めけどヒップは大きい方がいいなんと言っても安産型がいいといってウルトラヒップはちょっとごめん足か……ま、多少の大根足でいいただし足首は細めのことおれの嫁さんどんな娘だろうナ朝の目醒め口移しにコーヒーを飲ませてね苦いコーヒーと嫁さんの舌で唇をくすぐって欲しいなあそうすりゃ目醒めはいいだろうさ朝食はコーヒーとパンだな目玉焼きでもあれば万・万歳...ポエム黎明編(嫁さん)

  • きのうの出来事 (大っ嫌いが、大好きに)。

    この歌、ご存じですか?中島みゆきさんの楽曲なんですけどね。~~~(重苦しいピアノ音が流れて、おもくるしく吐息をはくような歌いはじめ)なんとちいさなこの手のひらであろうかわずかばかりの水でさえこぼれてなんと冷たいこの手のひらであろうかなんでもできると未来を誇っていたのはちいさな手のひらの少年のころだった(転じて間奏は、ピアノ音の上に、見事なまでに美しい音色のバイオリンがかなでられる。そしてまた、重苦しく吐息を吐くように歌声がつづく……)~~~タイトルがですね、分かんないです。パソコンに入っていたのですが、タイトルがないんです。なんでこんな話をしているかと言いますと、中島みゆきさんのことなんです。はじめて聴いた歌が最悪でした。なんかこう、がなり立てるような歌声で、嫌悪感を感じました。どんな歌だったのか、まるで...きのうの出来事(大っ嫌いが、大好きに)。

  • 青春群像 ご め ん ね…… 問屋街(七)

    「かりにも社長令嬢だぞ。それに年上なんだから、そんな口の利き方はやめろ」先輩社員にしかられるが、そうなると反こつ心がムラムラと湧いてくるのだ。立場が上の人間にたいしては猛然と反発心がわいてくる。というよりは、ニヒリズムに心酔している――自分に酔っているのかもしれない。あの友人の影響であることは、中学時代のじぶんといまの己をくらべれば一目瞭然だ。おどおどと人の顔色ばかりをうかがっていたぼくだったが、歯にきぬ着せない言動でクラス内で浮いた存在となったものの、その実みなから一目置かれる存在の彼のかげにかくれているぼくだった。それがいまでは、その友人が乗りうつったかのごとき振る舞いをしている。「それでさ、そのデートには、あたしも付いていくから。静子ちゃんには麗子さんがついて、あなたにはあたしが付いてあげる。来週の...青春群像ごめんね……問屋街(七)

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

    (十五)ミニスカートグリーンのロングベストの下で、フリルの付いた真っ白いブラウスがキラリキラリと光っている。そしてその下は、ミニスカート。あざやか過ぎる真っ赤なミニスカート。少年のこころを燃えあがらせている。週刊誌のヌード写真も映画のラブシーンでも、これほどの早鐘は経験していない。少年の目は女の手に縛られて、少年の意には添わなくなってしまった。少年のこころが、少年からはなれてしまった。女の手がひざの上におかれる。少年の視線が、女の膝小僧にうつる。少年の目が、桜色にかがやき眩しく光るひざこぞうにくぎ付けになってしまう。一瞬時、少年の意識がとおのく。そして我にかえると、視線の先には、また膝小僧が。とおのく、我にかえる、ひざこぞうが、遠のく、われにかえる、膝小僧が……。それが、いくど繰り返されたことか。女の視線...[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (八)

    (山寺一)山寺にて。山腹の木々はすでに紅葉している。その山麓に赤茶けた瓦屋根でこつ然と姿を現す古びた山寺が、これからのごんすけを創り出す――僧侶の思い(いつか南蛮人の元に返してやろう)を遂げられる地になるはずだった。幸いにも、その寺には南蛮人との交易をしている商人が度々訪れていると聞いていた。二、三年ほどを寺で修行させた後には、その商人とごんすけを会わせてやろうと目論んでもいる。ごんすけが望めば、その商人の元に送り出すこともありうる。ひとり合点しながら頷きつつ歩を進める僧侶の表情は柔和だ。その後ろを、これからの行く末に不安を感じずにはいられないごんすけがついて行く。口をへの字に結び、時折鼻水をすすりながら、目は僧侶の背中を凝視している。傷だらけの裸足でもって、一歩一歩をしっかりと大地を踏みしめて行く。辺り...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百五十九)

    ジュージューという音が、食欲をそそる。はじめて見るビーフステーキなるものに、竹田の視線がはずれない。「これが、ビーフステーキなんですか?なんとも、醜悪な形ですね。色も、何とも奇妙です。でも匂いがいいです。腹の虫が泣いてます」「さ、召し上がれ。こうやってフォークでお肉を押さえて、ナイフで切るのよ。ほら、肉汁が凄いでしょ?」「小夜子奥さま。赤いところがあります。これ、生焼けじゃないですか。けしからんな、こんなものを小夜子奥さまにおだしするなんて」憤慨する竹田に、目を細めてこたえた。「それがいいのよ、生の部分はわざと残してあるの」と言いつつも、今日に限っては食欲がない。それ以上に、嘔吐感さえおぼえる。“したたる血のせいかしら?”と、武蔵の不在のせいだとは思いたくない小夜子だった。隣のテーブルで水をつぎ足している...水たまりの中の青空~第二部~(三百五十九)

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、敏ちゃんさんをフォローしませんか?

ハンドル名
敏ちゃんさん
ブログタイトル
敏洋 ’s 昭和の恋物語り
フォロー
敏洋  ’s 昭和の恋物語り

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用