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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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住所
岐阜市
出身
伊万里市
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2014/10/10

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  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十八)

    翌朝、台所から小夜子の明るく弾んだ声が聞こえてきた。ベッドの中でまどろむ武蔵の耳に、心地よい。「いやあねえ、三河屋さんったら。何もないわよ、なにも。声が弾んでるですって?そりゃ、体調がいいからよ。何か始めたかって?ふふふ……、ひ、み、つ。なーんてね。今ね、着物を新調してるのよ。それを着てね、パーティに出席するの。アメリカ将校さんのお宅でね。うーん、会食みたいなものかなあ。女優さんみたいでしょうねって、ふふふ、そんなこと。口がうまいのね、三河屋さんは。だめよ、これ以上は要らないわ。じゃ、お願いね」大きく伸びをして時計を見やると、七時を回っている。「おっと、こりゃいかん。寝坊してしまった」慌てて飛び起きると、「おおい、小夜子ー!」と、呼んだ。「まずい、まずいぞ。社長の俺が遅刻なんて、示しがつかん。小夜子ー!」。何の...水たまりの中の青空~第二部~(百二十八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十七)

    「ここかあ?いや、居ないぞ。それじゃあ、この中か?居ない。おかしいぞ、おかしいぞお。匂いがするのに、見つからんぞお」布団の中で、小夜子は笑いを噛み殺していた。部屋をうろつく音がするが、中々ベッドに近付いては来ない。「おかしいぞお、おかしいぞお。逃げられたか、またしても」「ククク……」思わず、声を上げてしまった。「おっと、声がしたぞ。どこだ、どこからだあ!クンクン、クンクン」小夜子は、わくわくしながら武蔵を待った。突然、小夜子の太ももに武蔵の手が触れた。「キャッ!」小さな悲鳴を上げた途端に、武蔵が布団の中に潜り込んできた。ベッドから逃げ出そうとする小夜子を、武蔵はしっかりと抱きとめた。「見つけたぞお、やっと捕まえたぞお!さあ、どこから食べるかなあ。この腕か、それとも太ももかあ……」一瞬間、小夜子は声を失った。背筋...水たまりの中の青空~第二部~(百二十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十六)

    「ねえねえ、この間買い物をしてたらさ。ふふふ……奥さんって、言われちゃった。参っちゃうわ、ほんと。『お嬢さん、何にします?ああ、ごめんよ。みたらいさん家の、奥さんだったねえ。どう?新婚生活は。優しくしてもらってるかい?』ですってえ」「なんて答えたんだ?小夜子は」と身を乗り出す武蔵に対し「ふふ、内緒。内緒なの」と、はにかんだ表情を見せながら、甘えたような声で言った。「気になるじゃないか、その言い種は。言えよ、言わなきゃこうだぞ!」武蔵は両手を大きく広げ、襲いかかる熊の仕種を見せた。「きゃあ、イやだあ!」と、慌てて小夜子は立ち上がった。逃げ惑う小夜子を、何度も雄叫びを上げながら追いかけた。「怖いよお、おうちの中に助平熊が出たよお!誰か、助けてよお!」。さながら鬼ごっこの如くに、家中を駆け回った。廊下に飛び出した小夜...水たまりの中の青空~第二部~(百二十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十五)

    「どうしたの?ニヤニヤして。思い出し笑いなの?」時折小さな笑い声を出している武蔵二対して、小夜子が拗ねたような表情をみせた。「いや、なに。小夜子が初めて来た時の、縮こまった姿を思い出してな。ククク」我慢できずに、バンバンと膝を叩いて大笑いした。「やあな、お父さん。誰だって、初めてのお宅じゃ緊張するでしょうに。まして、赤の他人よ!」口を尖らせて反論する小夜子に、「それが今じゃ、な!」と、武蔵が言う。「今じゃ、って何のこと!」「そう、尖がるなよ。美人が台無しだぞ」「おかめで結構です」ぷうーと頬を膨らませてそっぽを向いた。当初は何かにつけて緊張感から顔を強ばらせる小夜子だった。が今では、すぐに怒り顔を見せたり泣き顔を作って見せたり、先ほどのような拗ね顔を見せたりしていた。そんな変幻自在の表情を見せる小夜子を眺めるのも...水たまりの中の青空~第二部~(百二十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十四)

    「そうか、そうか。小夜子が料理を作ってくれるのか。それは、楽しみだ。そういうことなら、千勢は辞めさせよう。そうか、小夜子が作ってくれるのか、そいつは楽しみだ」相好を崩して、大きく頷く武蔵だ。“一時のことかもしれんが、ま、いいさ。飽きたら、また雇えばいいことだ”。小夜子の気まぐれに付き合うことに慣れてきた武蔵で、子猫のじゃれる様に見えている。一分でも一秒でも早く帰宅したがる武蔵に「少しは会社のことにも気を配ってくださいな」と、五平が苦言を呈するほどだ。取引先の接待に関しても五平に任せっきりとなり、果ては服部たち社員にまで任せ始めた。「将来の幹部候補生だぞ、少しは任せても良いだろう」と言い訳をする。「いいかしら?千勢さん、困らないかしら?」「大丈夫、大丈夫。そんなことは、小夜子が心配しなくていい。ひと月分余分に渡し...水たまりの中の青空~第二部~(百二十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十三)

    「お千勢さんに辞めて欲しいんです。家の中のこと、あたしがやりたいんです」意を決して、しっかりと武蔵の目を見据えた。しかし、すぐに視線を落としてしまった。「小夜子は、千勢が嫌いか。分かった、分かった。誰か、他のお手伝いを探そう」小夜子を抱き寄せると、頭をポンポンと軽く叩いた。小夜子の意図することに反した武蔵の言葉に、小夜子は慌ててしまった。「違うの、そうじゃないの。お千勢さん云々じゃないの。あたしが、お料理やらお掃除やら、お洗濯をしたいの」さらに顔を真っ赤にして、言う。こんな言葉を口にするとは、考えられない小夜子だった。お姫さま然の暮らしをさせてくれるかもと期待する思いがあった小夜子だった。「手伝いの娘が居るから好きなことをして時間を潰せばいい」。「しっかりと英会話の勉強をしろ」。そんな言葉をかけられている。そし...水たまりの中の青空~第二部~(百二十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十二)

    武蔵宅での小夜子の生活は、まるで一人暮らしをしているが如きものだった。武蔵と顔を合わせない日すら、間々あった。小夜子が朝目覚めた時には、既に武蔵は出社していた。夜は夜とて、小夜子が床に就いてからの帰宅が多い。“わたしを避けてるのかしら……”。時に、そんな思いにすら囚われてしまう。“体を求めてきたら、どうしょう”と危惧していたことが、笑えてしまう。それにしても不思議なもので、家事が苦手な筈の小夜子が、今は嬉々として勤しんでいる。掃除、洗濯は勿論のこと、いつ帰るとも分からぬ武蔵の為に夕食を用意していた。といっても座敷机に出来上がった料理を運ぶだけであり、はたきを持って指差される場所を軽くはたき、手渡される洗濯物を物干し竿にかけるだけだったが。「社長さん、お千勢さんのことですけど」「千勢がどうかしたか」「いえ、そうじ...水たまりの中の青空~第二部~(百二十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十一)

    「分かった、分かったよ。これから女性の社会進出は、当たり前のことになるさ。その先進グループに入りたいんだな、小夜子は。しかし一人暮らしは、なあ。どうだろうなあ。そうか思い出したぞ。『愛人になれ!』と、口説いたんだ。だけど小夜子は、即座に『イヤッ!』と言ったんだ」「それはそうよ。あたしには好きな人がいるんだから、愛人はだめ」“奥さんなら、いいかも”突然、思いも寄らぬ言葉が浮かんだ。危うく、口の端に乗せそうになった。“な、なに、考えるの、あたしったら。でもどうせ、間に受けはしないでしょうけど”。ぽっと、頬を赤らめた小夜子だ。武蔵は、物怖じせずに答える小夜子が可愛くて仕方がない。軽くお触りをしようとすると、即座に“ピシャッ!”と、手が飛んでくる。そんな仕種がまた、武蔵には可愛い。「そうだ、そうだ。段々、思い出してきた...水たまりの中の青空~第二部~(百二十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百二十)

    鮨店の座敷に上がりこんだ武蔵は、小夜子の酌での酒を楽しんだ。「いゃあ、小夜子の酌で飲む酒は格別だ。同じ酒でも、まるで味が違う」「ホント?美味しい?あたしも、少し飲んでみようかな?」上目遣いで、手を休めて言った。「よし、飲んでみるか?」武蔵は新しいお猪口を持って来させた。半分ほど注がれたところで手を止めた武蔵に対して「いっぱい、入れて!」と、小夜子が不満げな顔を見せた。「ハハハ、まっ、少し飲んでからだ」「いや!飲めるわよ、その位は」「分かった、分かった」小夜子は溢れんばかりに注がれたお猪口を、恐る恐る口に運んだ。半分ほどを口に入れた途端、ぶっ!と吐き出した。「辛い!なにこれ、ちっとも美味しくないわ」眉間にしわを寄せて、武蔵をじっと見つめた。武蔵はニタニタと笑いながら「おいおい、勿体ないぞ。まだ小夜子には、無理だな...水たまりの中の青空~第二部~(百二十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百十九)

    叔父夫婦には十歳と八歳になる二人の姉妹がいた。その後は一度も懐妊できずに、来年には三十路も半ばとなる。焦る叔父に対して「まだ若いんだ。焦らずに男子が産まれるのを待ったらどうだ」。武蔵を養子として迎える話が持ち上がった折に、叔父の母方の親戚から挙がったことばだ。代々金物屋を営む商家で、近隣の町にも名が通っている。小作人の息子である武蔵では家としての格が違いすぎると、不平の言葉が飛び交った。叔父が武蔵に目をとめたのには二つの理由があった。一つは貧乏小作人の息子と言うことでしがらみがないこと。親戚筋から跡取りを受け入れるとすると、他の親戚たちのやっかみもさることながら、当の実父からの横やりが懸念された。二つ目は武蔵の小狡さだった。幼児期に生死の境を彷徨うほどの栄養失調に陥り、診療所の医師に首をふられた武蔵だった。哀れ...水たまりの中の青空~第二部~(百十九)

  • 感謝、感謝、感謝の嵐! そして感動でした。

    オリンピック!開会式、素晴らしかったですねえ。思わず、落涙した場面も。ゴタゴタ続きのスタートでしたが、アスリートたちの真剣さと歓びが感じられる式でした。コロナ禍という自然界の猛威を相手にしては、まったく分の悪い中です。自然界と闘うのではなく、共生するーその難しさを痛感しました。スポーツの持つ魅力、アスリートたちの汗がわたしに与えてくれるであろう……。様々なパフォーマンスは、日本人の生真面目さを如実に表現しているように感じましたよ。聖火ランナーたちの歓びに満ち溢れた笑顔を見たとき、辞退した人たちの無念さを感じました。ギリシャからの聖火が多くの人たちの手から手へと届けられ、そして会場に入り点火!オリンピックの始まり!です。とうとう、今日、最終日。史上最高の、金メダル:27個。そして、銀メダル:14個。銅メダル:17...感謝、感謝、感謝の嵐!そして感動でした。

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