〇夫馬進『訟師の中国史:国家の鬼子と健訟』(筑摩選書)筑摩書房2024.4訟師とは、近代以前の中国で人々が訴訟しようとするとき、これを助けた者たちである。大半の読者にとって「訟師」とは初めて聞く言葉であろう、と著者は冒頭に述べている。確かに私も聞いた記憶がない。ただ、2023年制作の中国ドラマ『顕微鏡下的大明之絲絹案』(天地に問う)で程仁清という人物が「状師」を名乗っていたので、中国語のサイトで調べたら「状師。又称訟師」と出て来たことは記憶にあった。なので、実は本書を読みながら、ずっと脳内で訟師には程仁清(を演じた王陽)のイメージを当てていた。訟師の評判はよくない。真実を嘘とすり替え、無実の人に濡れ衣を着せ、必要のない訴訟を起こして大儲けをする社会のダニで、訴訟ゴロツキ(訟棍)とも呼ばれていた。しかし例外...訴訟社会の伝統/訟師の中国史(夫馬進)