毛内と服部の2人が連れ立つように境内に出たのは、どちらが誘った訳でもなく自然な流れだった。 「どう思いますか」 「うまくは言えないのですが」 先に口を開いたのは毛内だった。その問いに、服部は暫しの思案の末に、ゆっくりと口を開いた。 「すっきりしないというのが一番ですね」 「確かに。まるで、あらかじめ伊東さんの考えを調べて合わせているようにも感じますね」 それが何故なのか。芹沢鴨の言動が、京都天狗…
「ところで、大方針の1つと申されましたが、他にどの様な方針をお持ちなのか、お聞きしても宜しいでしょうか?」 「勿論と言いたい所だが、今一つは現時点では明かす事は出来かねる。これは相手がある事故、慎重に事を進めたい。御理解頂きたい」 伊東だけではなく、芹沢はその場の者達を見渡しながら言った。話はそれでほぼ終わりとなり、場はお開きとなった。 帰り際に伊東と型通りの挨拶を交わしたのみで、毛内と藤堂は戒…
「伊東さんは、ずばり京都天狗党の方針について聞いていましたよ」 これは寧ろ、毛内にとっても意外な反応だった。芹沢の主張を聞く限り、伊東は無条件で受け入れると思っていたからだ。 「幕府が実行出来ない尊皇攘夷の実現を目指すと話されましたが、具体的な方針はどの様なものでしょうか?」 一瞬の沈黙の後、芹沢は満面の笑みと共に答えた。 「流石だよ、伊東君。同じ水戸出身という贔屓目ではなく、君の先を見通す力は…
「祖国の危難を前に、日本人同士が争う事はあってはならぬ。それは日本を支配しようと企てる、西洋の国々を利する事にしかならないと考えている。日本よりも遥かに進んだ技術と軍事力を持つ者達を相手にするのに、我らは今こそ、主義主張や立場を乗り越えて1つに成るべきと考えている。その為にも、本日は各々方の忌憚のない意見を交わす事が出来ればと考えている次第。如何であろうか」 そう一気に語った芹沢に対して、最早反…
服部、内海、阿部の3人は 、落ち着かない様子で戒光寺の境内を歩き回っていた。かれこれ半刻程はこうしている。 京都天狗党から文が届けられたのは、今朝の事だった。そこには党主である芹沢鴨と並んで、岩倉具視の名前も書かれていた。これでは拒否権はないに等しい。 文は新撰組や御陵衛士と共に、御陵衛士の分離派である服部達にも届けられた。後に分かる事だが、芹沢は同様に、倒幕派や公武合体派などにも同様の文を発して…
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