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油屋種吉
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2013/08/16

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  • 女の子って、わからない。 (5)

    大ジョッキで二杯のビールは、康太をして、帰りの浅草駅の構内で、赤の他人の若い女性に、背後から、声をかけさせた。「ちょっと待ってよ。あおい、あおい。どうしたんだよ。こんなところで?」紺のスーツの上下を身に着けた女性は、振り向きざま、きついまなざしを康太に向けた。実際のところ、彼女は見かけよりうんと年老いていたらしく、振りむきざま、康太にきついまなざしを向けた。「ふうん、わたしがおたくの知り合いの女の人に似てるんだ。きっとお若いことでしょうよ。ああ、うれしいやらかなしいやら。まあ、ありがた迷惑もいいとこってとこね」彼女は、康太の目の前まで、つかつかと歩み寄った。そして細い右腕をしならせ、ピシャリと康太の左ほほを平手でたたいた。へえっと言ったきり、ふたりの様子をわきから観ているしかなかった二郎である。彼女が靴音...女の子って、わからない。(5)

  • 女の子って、わからない。 (4)

    「ほら、行こうよ。ねっ、いいでしょ」急に、相手が親指と人差し指を使って、康太の上着の袖をつまんで引っ張った。「はあ?ちょっちょっと、どこへ行くんですか」身体ばかりが大きくなった康太だが、知らないことが世間に多すぎた。ふわふわして地に足がつかない気分の康太である。あやうく、見ず知らずの人間について行きそうになってしまう。「おいおい、康太、おまえ、父ちゃんこと放っておいて、どこへ行くんだ」二郎の声が、不意にわきから飛んできた。康太にとって、その声は神さまのものに聞こえた。(あっ、父ちゃんだ)康太は相手の腕を振りほどき、逃げようとした。だが、相手の力が強い。康太のからだが、ぐいぐい引っ張られる。二郎が勇んでふたりの前に、立ちはだかったが、相手は気にとめない。「さあさあ、行こうね。いい思い、させてあげるって。あん...女の子って、わからない。(4)

  • 柳美里さん、退院おめでとうございます。

    こんにちは。退院とお聞きして、ほっとしております。お気の毒に、帰宅する間も、晴れやかな気分になることができなかったのですね。それを聞いて、とても悲しく思いました。何が、あなたを、そんなふうにさせているのでしょう。あなたの初期の作品を、いくつか読ませていただきました。あまりに生々しく描かれていて、どきどきしどおしでした。ご家族やご親戚ともども、異国の地で多大な苦労をなさってこられたのだ、と、思うばかりです。小高川のほとりを散策なさったのですね。お写真、拝見しましたよ。多少、空気に冬の名残が感じられたでしょうが、山や野の草木のやわらかないろどり、さらさら流れる川面のきらめき……。それらはきっと、あなたのこころを和ませたことでしょう。小高地区に居をかまえ、東日本大震災に遭遇された人々を、日々勇気づけてくださって...柳美里さん、退院おめでとうございます。

  • 女の子って、わからない。 (3)

    見知らぬ女が声をかけている相手が、まさか自分だとは思わない。康太はあたりを見まわし、彼女にふさわしい男のありかを目で探したが、それらしき人物は見当たらない。十メートルほど先にライトに照らし出された桜の木が二本あり、その辺りには、彼女の年に見合ったような年配者が三人ばかりいるが、みな女連れである。康太は思いきって、女に向き合った。声には出さず、右手の人差し指の先で、そっとじぶんの鼻のてっぺんを触った。女は、うんと首を振った。康太は現代っ子に似合わず、神経質な面がある。小学生の頃から友達の輪の中に入らず、ちょっと離れたところから彼らの話の内容を気にしているようなタイプだった。気が小さいだけで、ほんとうは彼らの中にとけこみたいと思っていたのかもしれない。「うふっ、可愛いのね。あんたよ。あんた。あたしが呼びかけて...女の子って、わからない。(3)

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