冬になる前に

冬になる前に

昼休みに生徒会室の入ると、野梨子がベランダに出て空を眺めていた。「寒くありません?」僕が声をかけると、驚いたように振り向いた。「気付きませんでしたわ。全く」「何を見ていましたか?」僕はベランダに出、野梨子の横に立つ。手摺りに両手を置き、空を仰いでいる彼女を見つめ、同じように手摺りに両肘を置いた。「空よ」「空に何かありました?」「いえ、何も。ただ、すっかり空が高くなりました」「本当に。気付けば秋空。青...