― 金鉱教 ― 「人ならざるモノが棲むという縹炎。 そこから来たファン宗主も、ユ・ヘイ嬢同様、姿を消すことが出来るのではないのかね。」 アン教主は、ゆった…
― 金鉱教 ― 「人ならざるモノが棲むという縹炎。 そこから来たファン宗主も、ユ・ヘイ嬢同様、姿を消すことが出来るのではないのかね。」 アン教主は、ゆった…
― 金鉱教 ― 教徒が案内したのは石造りの大きな部屋だ。 ガランとしたその部屋の、前方中央に置かれている豪奢な長椅子には毛足の長い敷物が掛けられ、その上にア…
― 金鉱教 ― アン教主は、まさかテギョンが生還するとは思っていなかったからか、狂喜乱舞するフニの後ろで複雑な笑みを浮かべていた。 シヌたちもテギョンが無事…
ご機嫌如何ですか。先日春をすっ飛ばして初夏か?って感じる日があったのに、ここ数日は冬に戻ったのかように寒い日が続いています。 このブログでは永遠の二十歳の海風…
― 金鉱教 ― シヌは、ジフンが継承者を名乗るのには能力が低いことを最初に見抜いていた。 しかし風林堂は聖人君子であり陰口や見下しといった行動は禁じていて、…
― 金鉱教 崖下 ― 落ちてくる砂や砂利、中にはつぶてとは言えない大きさの石も交じっていて、テギョンはそれらを防ぐように片手をかざして顔を上げた。 しかしそ…
― 金鉱教 ― 暗闇の中、目を覚ましたミニョは辺りを見回しても自分がどこにいるのか分からなかった。 そこは明かり取りの窓が閉じられているのか、とにかく暗くて…
― 金鉱教 ― 「話さないよう言ったでしょう。」 アン教主以外誰も入れないはずの私室で、突然ヘイの声が響いた。 振り返ったアンは開いた管の蓋を手をで押さえ…
― 金鉱教 ― ―――どこで計画が狂ったか。 問われたアン教主は声も発せず眉を寄せて立ち尽くしていた。 そのような言葉が出るはずがない、知る由もないはずだと…
テギョンはその肩を抱きよせって縹炎と斐の水沫 第三章 邂逅に揺蕩う 第三十四節③
― 金鉱教 ― 暗く引き攣った顔で、開いた門扉から出てきた若い教徒はテギョンを見てギョッとした。 ミニョを抱きしめていたからだ。 赤らめた顔を慌ててそらし声…
― 金鉱教 ― 「アン教主は問題の起きた模諜から来られた以上、すぐにはお会いできないとの事で、三つの質問に答えて頂いた後、お会いするかどうかをお決めになられ…
― 金鉱教 ― 金鉱教の自室に籠るアン教主は、壁を見つめたまま届けられた知らせを握り潰して考え込んでいた。 その知らせに何が書かれていたのかも知らない教徒は…
― 金鉱のめし処 ― 店に入ってきたフニはとても暖かそうな衣に身を包んでいたが、同時に冷気も纏っていてフニが近づくとともにその場の空気がひんやりとした。 …
― 金鉱の門 ― 「密告者!?」 ジェルミは思わず発してしまった自分の声に、慌てて手で口を覆った。 それからすぐに声を落として訊き返す。 「誰が・・・…
― 金鉱に向かう道 ― 牛であれ馬であれ乗り換えるのは難しい事ではない。 良いと思うものを選ぶだけだ。 しかし、この牛に限って良し悪しの見立てができないと…
― 金鉱に向かう道 ― 牛車が砂利道に戻ってミニョとジェルミは中へと乗り込んだが、テギョンだけは御車台にいるフニの隣に座っていた。 お喋り好きのフニの話し声…
今年もすっかり明けて4日目の朝を迎えました。窓から見える空は薄青く、白い雲が陽の光を浴びて輝きながら、ゆったりと流れています。みなさまもよい年をお迎えのことと…
― 金鉱へ向かう道 ― 偶然見つけた窪みに牛車を隠したテギョンは一人牛車から離れると、一目散に駆け抜けていく人馬の集団を見送った。 だがその姿が見えなくな…
― 金鉱の最初の宿 ― 昨夜は特別話し合う事もしなかったが、示し合わせたようにジフンもドンジュンも早朝から起きてくると、シヌと共に出発準備を始め出した。 た…
― 金鉱に向かう道 ― どれほど獰猛な顔つきをしていても、牛は馬の如く軽快とはいかない。 ムチをくれるのも躊躇いがちになる。 「宗主、この辺りなら、まだ馬…
― 金鉱の最初の宿 ― 別行動をとるのかを訊くシヌに、テギョンは「そうだ。」と答えて理由を話す。 「アン教主が冷静なら、おとりの馬車を追った密偵が行方知れ…
― 金鉱の最初の宿 ― 怪物のような牛を見た後で宿の部屋に通されたミニョは、耐えられないほどではないがひんやりとした宿の空気に身を固くしながらテギョンの少し…
― 金鉱に向かう馬車の中 ― テギョンの予測が当たって模諜の空に火の手が上がった。 故郷の空に昇る黒煙に馬の足が止まり、馬車の周りにいた教徒たちからの動揺す…
― 金鉱の最初の宿 ― テギョンはジフンの手をドンジュンの背に当てた。 「冷たさを感じるか。」 落ち着いた声に威圧感はなかったが、ジフンと言う人間は何か…
― 金鉱の最初の宿 ― 金鉱の山々から吹き降ろしてくる風が、北の地に来たことを知らせる冷たさを運んでくる。 ドンジュンにとって風はいつも心地よいものだったが…
― 金鉱へ向かう道 ― テギョンは眠ろうとして眠れないのか、何度も身体を動かしていたが唐突にミニョの腕を引き寄せた。 驚いたミニョだったが、引っ張られた腕に…
― 金鉱教 ― 空を飛んで届く情報に、地を走る情報。 そのどれもがアン教主の謀略の、失敗を伝えるものだ。 華美な装飾がなされた部屋は、まだ昼日中だというのに…
― 金鉱へ向かう道 ― テギョンが挙げた第一と第二については、ジェルミも勿論知っていた。 当然だが今回の旅で知ったのではない。 同年代の教徒たちと子供の頃に…
― 金鉱へ向かう道 ― 模諜の都を夕暮れ時に出発した馬車は、北京と西京の境を通って金鉱へと続く北大門を抜けた。 急ぐでなく、さりとてのんびりでもない二台の馬…
― 金鉱へ向かう道 ― 模諜枢教での話を終えたテギョンたちは、四人ずつに分かれて馬車の中にいた。 ミニョは隣に座るテギョンを、目だけを動かして伺い見ると、困…
― 模諜枢教 ― 硬い床に立っていたはずが、いつの間にか床が崩れて砂になり、ズルズルと流れる砂が足の指の間に入ってくる。 でもテギョンの目に映るのは、砂の世…
― 模諜枢教 ― 吃音の混じった声に誰もが即座にジフンを見る。 日頃から存在感がないに等しいジフンだが、光焔教にゆかりのある者なら、なぜ金鉱教の継承者と呼ば…
― 模諜枢教 ― 「そっそそ・・・・・・そん そんな あ・・・・・・」 あり得ないって顔で、ジフンは視線を彷徨わせながら呟いた。 「そ そんなの 想像だ…
― 模諜枢教 ― 「私を恨んでいないのなら、ここで手を引きなさい。」 ファランはゆったりとした動きで、ほんの少しばかり目を細めて見降ろしたテギョンにそう言…
― 模諜枢教 ― テギョンに纏わりつくように立ち上る黒い影が、すっかり過去の事にしかけていた悪霊憑きを思い出させた。 意識を失う前のテギョンを思えば、過去に…
― 模諜枢教 ― 押し開けた扉に片肘ついたテギョンは、片側の口角を上げている。 よろけたのでも、見えずに手を突いたのでもない。 先ほどとはまったく違う姿に、…
毎日毎日暑いですね~、皆様元気に過ごされていますか。さて、いつも通りなら明日は更新日なのですが、海風ただいま首が動かなくなっておりまして、事の発端は火曜の朝、…
― 模諜枢教 ― ミニョの首を掴んだままでテギョンは首を傾けた。 握っているのは砂ではなく空気のはずだが、手にはしっかりとした存在感がある。 しかもそれは逃…
― 西京の闇賭場 ― 熱く燃え上がったものが一気に冷めていく。 まだブスブスとくすぶってはいるが、先ほどまでの熱量とは程遠い。 これほどの人数を相手に戦った…
― 模諜枢教 ― 広い西京の都でファン・テギョンを探し出した模諜枢教の教徒たちは、今やただ遠巻きにその姿を眺めるだけだ。 彼らは経験の為に連れ出された十代の…
― 模諜枢教への道 ― 昨日から馬車に揺られているシヌは、明け方になって訪れた疲労感に目を閉じていた。 二日眠ってないのだから疲れて当然だ、少しは眠っておこ…
― 模諜枢教 ― 斐水門の継承者、ミニョの従弟であるドンジュンたちが、表門に着いたとの一報はミニョにも届けられた。 表門は模諜枢教のいくつかある大門の一つだ…
― 西京の盛り場 ― (一体なぜこんな事になってしまったのか。) 折り重なって床を埋め尽くす者たちに目を落としたシヌは嘆息する。 少し離れたところに立つテ…
― 西京の盛り場 ― テギョンとシヌは、数人の男たちに囲まれて薄暗い階段を降りて行く。 途中まで降りると、上からの声に交じって階下からも聞こえてくる歓声、た…
― 西京の盛り場 ― 「ファ・・・・・・ テギョン!」 シヌはとっさに宗主と呼ぶのをやめて名を呼んだ。 宗家の者が暴力事件となれば厄介だが、場所が場所だ。…
― 西京の宿 ― 噛みしめられていたヘイの唇が、ゆっくりと弧を描くと閉ざされた戸に向かって動く。 「テギョンさん、ミニョさんの事で話があるの。」 固く閉…
― 模諜枢教 ― 「コ・ジェヒョン門主は元気だったかしら。 久しぶりに会って来たのでしょう。」 何かを思い出したように微笑んだファランは、口の端に笑みを残…
― 西京の宿 ― テギョンに問われたジフンは、どう答えるかを考える前にそっと目だけを動かしてヘイに助けを求めてみた。 しかしすぐに諦めて視線をテギョンの足元…
― 模諜枢教 ― 広々とした堂閣、その一辺に壇上があり、壇上に置かれた背面の高い椅子にモ教主ファランが座っている。 四方の壁は丹念に磨かれた黒檀で、天上に向…
― 西京の門 ― ジェルミも言ったように西京の門は模諜宗家の管理下にない。 そして模諜枢教と対立している宗家も西京の宗家ではないのだ。 とはいえ何かと交渉す…
― 苔むす山寺 ― テギョンは夢を見ていた。 一見いつもと同じ夢に見えるが、目の前にいるのはミニョの前世ではなくてミニョ自身だ。 戸惑い困惑する表情も、キョ…
― 西京の門 ― 夜が明けると柔らかな日差しが馬車を包み込んでいた。 ここに着いた時は、まだ水滴を落としていた馬車も今では薄っすらと朝露が滲む程度だ。 馬車…
― 西京の門 ― 山寺を出発したばかりの頃は雨足も強くなかったから、馬も軽快に走って馬車を引っ張ってくれていたが、雨が強くなるにつけ立ち止まる事が多くなった…
― 苔むす山寺 ― ミニョとジェルミを見送った五人は、テギョンを起こさないようテギョンの眠る部屋から、一番離れた所に集まっていた。 といっても各々がそれぞれ…
― 模諜への道外れにある山寺 ― ミニョの説得で山寺に向かう事になった一行は、かつては光焔だった模諜の地を後にした。 とはいえ行く先である山寺は、かつての光…
― かつての光焔 ― 手を上げたジフンに顔を向ける。 どの顔も不思議そうな表情だ。 ジフンがこの場で何か言う事があるとは想像すらできないからだ。 一瞬の迷い…
― かつての光焔 ― いざ寝ようという段になると、テギョンがミニョとは夫婦だからと突然一部屋を要求してきた。 誰もが声も出せないほどに驚いたのは当然だが、そ…
― かつての光焔 ― 「その模諜の都へは、祭りが始まる前に行くのかしら、それとも終わってからかしら?」 ヘイは小首を傾けて、しなを作りながら立てた指を顎に…
― かつての光焔 ― テギョンの酷い物言いに、ジェルミは顔を真っ赤にして「失礼だ!」と憤った。 だがテギョンはそれすらも小馬鹿にしたように笑うから、隣でミニ…
― かつての光焔 ― 「あの~、もしかしてずっと起きてました?」 フニは奥の間にいる二人を気にして、シヌに近づいてからかなり小声でそう訊いたが、聞いていた…
― かつての光焔 ― フニは引き戸の前に座っていたが、そこは小さな窓があるだけの、いわば奥の部屋の前室だ。 座った時はまだ外からの陽射しが届いていたが、いつ…
― かつての光焔 ― 昨夜と同じ部屋(続き間の大部屋)をそのまま使える事になると、テギョンたちはする事がなくなった。 これまでは宗家に身を寄せた時以外、連泊…
― かつての光焔 ― そっその笑顔は反則よ――テギョンから目を背けたミニョは顔が熱くなっているのを感じる。 さらには胸に広がる喜びや嬉しさに、自然と顔が緩ん…
― かつての光焔 ― ミニョが言わんとする事はジェルミにだって分かっていた。 「だけど、ミニョだって疲れてるのに・・・・・・」 ミニョの膝で眠るテギョ…
― かつての光焔 ― ミニョは夢を見ていた。 ただ、いつもの夢とは違って崩れ落ちるのはミニョではない。 傷を負い、戦い疲れたテギョンがミニョの目の前で倒れる…
― かつての光焔 ― (何も写さない眼は何を捉えて攻撃を仕掛けるのかしら。 なぜ彼らは私たちを敵だとみなしたの。 彼らの望みが分かればいいのに。) ミニョ…
― かつての光焔 本殿 内陣 ― テギョンは傷口が開かないよう片腕を身体に沿えて、ゆっくりと動き出した。 眠っているかに見えた時も、彼は休んでいなかった。 …
― かつての光焔 ― ジェルミにとっての光焔事件は、生まれる前の事件であって、概要も成長してから説明を受けた。 それは光焔の宗家が悪企みをして、母であるモ教…
― かつての光焔 ― 「まだだ。」 (まだ・・・・・・だ・・・・・・?) ヘイはテギョンの言葉を頭の中で反復した。 テギョンが火神だとしても今は人間で、能…
― かつての光焔 ― 突然の声で目を開けたミニョは、目の前を塞ぐ見慣れない胸板に瞬いた。 遠い昔、誰かの胸で眠った記憶が呼び覚まされたが、そこには二つのまー…
― かつての光焔 ― 光焔―――、フニの言葉を聞いて飛び起きたテギョンは、怪我を負った方の肩を押さえて苦痛に顔を歪めた。 だがそれでも確認せずにはいられない…
― 風林と模諜の境 ― 風を裂いて飛ぶ矢の音に、いち早く気付いたのはシヌだった。 避けろという声を聞いたミニョだったが、正面に飛んできた矢に驚いて、その場に…
― 風林と模諜の境 ― ヘイの陰謀に必要な谷風。 谷さえあれば風を吹かす事はできると思っていたが、思いもかけずその地形が姿を現し、ヘイの望む風が舞い上がった…
― 風林の宿 ― 二人を覗き見ていたヘイは、二人の関係がミニョの告白によって劇的な変化が訪れなかった事に安堵し、その後ミニョが布団に入り、何事もなかったよう…
― 風林の宿 浴場 ― 戻って来たヘイはすぐに浴場に入ることなくもう一度覗いた。 さっきと変わらずミニョはぼんやりと座ったままだ。 (考え事、まさかね。 …
― 風林の宿 ― 風林の都でも一、二を争う大きな宿は、風林堂から連絡が入れられていて予約が入っている。 だから急ぐ必要はないとは言え、テギョンとミニョが並ん…
― 斐水 ― 翌朝早くに斐水を出て、経由地点である風林を目指す。 大舟は大河の流れに乗って悠々と河を渡り、斐水でも風林でもない村に着くとそこからは来た時と同…
― 斐水の宿 ― テギョンはミニョに口づける事でこの結婚は嘘ではないと証明してみせると、後の事をフニとドンジュンに任せてさっさと宿へと引き上げた。 というの…
― 斐水 ― 斐水門を出発する朝、ミニョは頭から白い薄布をすっぽりと被りその顔を覆い隠して舟に向かう。 だがそれは明らかな花嫁衣装で、桟橋でミニョを待ってい…
― 斐水門 ― 舟は、無言という重い空気に包まれて、ゆっくりと水路を滑っていく。 こんな時、気の利いた船頭なら歌ったり喋りかけたりするものだが、門徒ではそれ…
― 斐水門 ― テギョンの指がそっとミニョの涙を拭う。 「何を泣く?」 テギョンの低い声にミニョの心臓がドキンと跳ねる。 本当の事は言えない、だけど嘘も…
― 斐水門 ― 「道に迷ったか?」 テギョンに声を掛けたコ門主は、軽口のように問いはしたが、ここは一本道でそれはあり得ないだろうと前後の道を見回してみせる…
― 斐水門 ― 昼餉を挟んで、話し合いはなおも続いていた。 距離、日数、変装、模諜での似顔絵の有無まで、シヌにはまだまだ考えておくべき事が尽きないようだが、…
― 斐水門 ― ミニョはテギョンと二人で外に出て、少し離れて立つ。 出てきた部屋を振り返ると、障子窓にはずらりと顔が並んでいる。 ミニョは小さくため息をつい…
― 斐水門 ― テギョンの部屋を出たフニは、宗主が誰かに興味を持つなどこれまでになかった事だと思いながら部屋に戻ると、誰かに相談できる事でない事に頭を悩まし…
― 斐水門 ― フニは水の如き斐水の酒を堪能し、気持ちよく眠りについたからか、早朝だというのになんとなく目が覚めて、部屋を出た。 散策といっても建物内と小さ…
― 斐水門 ― 「僕に母と対立しろと?」 ジェルミは少し怒った口調でそう言ったが、この時驚きはしていても怒ってはいなかった。 ミニョとの未来を考えれば、こ…
― 斐水門 コ・ミニョの部屋 ― ミニョは遠い昔の夢を見ていた。 幼い幼い子供の姿で、そこはあの日の水路工事だ。 斐水門の外に出る事のないミニョには、何も…
― 斐水門 ― テギョンたちは場所を移して夕餉という名の宴の真っ最中だ。 「昔からお腹がすくと泣く子だった。」 これはコ門主が泣きそうなミニョを見て言っ…
― 斐水門 ― 『泣くな』この一言に喜んだのは誰でもない、姿の見えないヘイだけで、水の壁に閉ざされた空間の中で全員が全員、責めるような目をテギョンに向ける。…
― 斐水門 ― 「俺は模諜枢教と対立するつもりはない。」 テギョンは、ミニョの利用を問うコ門主にそう答えた。 「最初の計画では模諜に行く予定もなかった。…
― 斐水門 ― まさか、まさかの結婚の申し込みかと、コ門主はあんぐりと開けた口をアワアワと動かしたが、肝心の言葉は出てこない。 すぐさまフニは両手を動かすと…
― 斐水門 ― 降り出した雨が大雨になり始めると共に、水かさが増して舟は大きく揺れ始める。 雷鳴までもが聞こえてくる中、ドンジュンは緊張こそしているが落ち着…
― 斐水 ― 舟を降りたドンジュンは、ミナムたち三人を残して先に行く事にした。 この後の段取りと指示を出す為だ。 残ったミナムたちは、後から到着したシヌたち…
― 斐水 ― 止まらないんじゃないかと思えたテギョンのくしゃみは、川の上に逃げた事で、幾分だが落ち着きつつあった。 ミナムとドンジュンは舟の上でホッと胸を撫…
― 斐水 ― テギョンたちをを乗せた舟は、悠々たる大河の流れに下流へと押し流されながら、向こう岸へと向かって進む。 流れに任せて行く舟は、大きく揺れる事もな…
― 斐水への路 ― ジフンは怖い気持ちを押し殺して、じっと黙ってここまで付いて来た。 自分が金鉱教の継承者ではないと見破られはしないかと、縹炎宗に入る時も怖…
― 風林堂 ― 風林堂の朝は早い。 朝餉の前に風林堂内を掃除し、その後で修行を行う。 テギョンたちも同じように起床し、それぞれに部屋の掃除を済ませると、修行…
― 風林堂 ― ミナムが湯あみを終える頃、ドンジュンとジェルミの二人が、別々の所からミナムを気にしてやって来た。 一時は落ち着きを見せていた二人の仲は、ミニ…
― 風林堂 ― 美しい筋肉の動きに沿って流れる、一筋の汗に目を奪われていると、風を切って矢が的に刺さる。 「さすが宗主、一発必中の腕前。」 フニが嬉しそ…
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― 金鉱教 ― 「人ならざるモノが棲むという縹炎。 そこから来たファン宗主も、ユ・ヘイ嬢同様、姿を消すことが出来るのではないのかね。」 アン教主は、ゆった…
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― かつての光焔 ― テギョンの酷い物言いに、ジェルミは顔を真っ赤にして「失礼だ!」と憤った。 だがテギョンはそれすらも小馬鹿にしたように笑うから、隣でミニ…
― かつての光焔 ― 「あの~、もしかしてずっと起きてました?」 フニは奥の間にいる二人を気にして、シヌに近づいてからかなり小声でそう訊いたが、聞いていた…
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― かつての光焔 ― そっその笑顔は反則よ――テギョンから目を背けたミニョは顔が熱くなっているのを感じる。 さらには胸に広がる喜びや嬉しさに、自然と顔が緩ん…
― かつての光焔 ― ミニョが言わんとする事はジェルミにだって分かっていた。 「だけど、ミニョだって疲れてるのに・・・・・・」 ミニョの膝で眠るテギョ…
― かつての光焔 ― ミニョは夢を見ていた。 ただ、いつもの夢とは違って崩れ落ちるのはミニョではない。 傷を負い、戦い疲れたテギョンがミニョの目の前で倒れる…
― かつての光焔 ― (何も写さない眼は何を捉えて攻撃を仕掛けるのかしら。 なぜ彼らは私たちを敵だとみなしたの。 彼らの望みが分かればいいのに。) ミニョ…
― かつての光焔 本殿 内陣 ― テギョンは傷口が開かないよう片腕を身体に沿えて、ゆっくりと動き出した。 眠っているかに見えた時も、彼は休んでいなかった。 …
― かつての光焔 ― ジェルミにとっての光焔事件は、生まれる前の事件であって、概要も成長してから説明を受けた。 それは光焔の宗家が悪企みをして、母であるモ教…
― かつての光焔 ― 「まだだ。」 (まだ・・・・・・だ・・・・・・?) ヘイはテギョンの言葉を頭の中で反復した。 テギョンが火神だとしても今は人間で、能…
― かつての光焔 ― 突然の声で目を開けたミニョは、目の前を塞ぐ見慣れない胸板に瞬いた。 遠い昔、誰かの胸で眠った記憶が呼び覚まされたが、そこには二つのまー…
― かつての光焔 ― 光焔―――、フニの言葉を聞いて飛び起きたテギョンは、怪我を負った方の肩を押さえて苦痛に顔を歪めた。 だがそれでも確認せずにはいられない…
― 風林と模諜の境 ― 風を裂いて飛ぶ矢の音に、いち早く気付いたのはシヌだった。 避けろという声を聞いたミニョだったが、正面に飛んできた矢に驚いて、その場に…