― 斐水門 ― 「道に迷ったか?」 テギョンに声を掛けたコ門主は、軽口のように問いはしたが、ここは一本道でそれはあり得ないだろうと前後の道を見回してみせる…
― 斐水門 ― 「道に迷ったか?」 テギョンに声を掛けたコ門主は、軽口のように問いはしたが、ここは一本道でそれはあり得ないだろうと前後の道を見回してみせる…
― 斐水門 ― 昼餉を挟んで、話し合いはなおも続いていた。 距離、日数、変装、模諜での似顔絵の有無まで、シヌにはまだまだ考えておくべき事が尽きないようだが、…
― 斐水門 ― ミニョはテギョンと二人で外に出て、少し離れて立つ。 出てきた部屋を振り返ると、障子窓にはずらりと顔が並んでいる。 ミニョは小さくため息をつい…
― 斐水門 ― テギョンの部屋を出たフニは、宗主が誰かに興味を持つなどこれまでになかった事だと思いながら部屋に戻ると、誰かに相談できる事でない事に頭を悩まし…
― 斐水門 ― フニは水の如き斐水の酒を堪能し、気持ちよく眠りについたからか、早朝だというのになんとなく目が覚めて、部屋を出た。 散策といっても建物内と小さ…
― 斐水門 ― 「僕に母と対立しろと?」 ジェルミは少し怒った口調でそう言ったが、この時驚きはしていても怒ってはいなかった。 ミニョとの未来を考えれば、こ…
― 斐水門 コ・ミニョの部屋 ― ミニョは遠い昔の夢を見ていた。 幼い幼い子供の姿で、そこはあの日の水路工事だ。 斐水門の外に出る事のないミニョには、何も…
― 斐水門 ― テギョンたちは場所を移して夕餉という名の宴の真っ最中だ。 「昔からお腹がすくと泣く子だった。」 これはコ門主が泣きそうなミニョを見て言っ…
― 斐水門 ― 『泣くな』この一言に喜んだのは誰でもない、姿の見えないヘイだけで、水の壁に閉ざされた空間の中で全員が全員、責めるような目をテギョンに向ける。…
― 斐水門 ― 「俺は模諜枢教と対立するつもりはない。」 テギョンは、ミニョの利用を問うコ門主にそう答えた。 「最初の計画では模諜に行く予定もなかった。…
― 斐水門 ― まさか、まさかの結婚の申し込みかと、コ門主はあんぐりと開けた口をアワアワと動かしたが、肝心の言葉は出てこない。 すぐさまフニは両手を動かすと…
― 斐水門 ― 降り出した雨が大雨になり始めると共に、水かさが増して舟は大きく揺れ始める。 雷鳴までもが聞こえてくる中、ドンジュンは緊張こそしているが落ち着…
― 斐水 ― 舟を降りたドンジュンは、ミナムたち三人を残して先に行く事にした。 この後の段取りと指示を出す為だ。 残ったミナムたちは、後から到着したシヌたち…
― 斐水 ― 止まらないんじゃないかと思えたテギョンのくしゃみは、川の上に逃げた事で、幾分だが落ち着きつつあった。 ミナムとドンジュンは舟の上でホッと胸を撫…
― 斐水 ― テギョンたちをを乗せた舟は、悠々たる大河の流れに下流へと押し流されながら、向こう岸へと向かって進む。 流れに任せて行く舟は、大きく揺れる事もな…
― 斐水への路 ― ジフンは怖い気持ちを押し殺して、じっと黙ってここまで付いて来た。 自分が金鉱教の継承者ではないと見破られはしないかと、縹炎宗に入る時も怖…
― 風林堂 ― 風林堂の朝は早い。 朝餉の前に風林堂内を掃除し、その後で修行を行う。 テギョンたちも同じように起床し、それぞれに部屋の掃除を済ませると、修行…
― 風林堂 ― ミナムが湯あみを終える頃、ドンジュンとジェルミの二人が、別々の所からミナムを気にしてやって来た。 一時は落ち着きを見せていた二人の仲は、ミニ…
― 風林堂 ― 美しい筋肉の動きに沿って流れる、一筋の汗に目を奪われていると、風を切って矢が的に刺さる。 「さすが宗主、一発必中の腕前。」 フニが嬉しそ…
― 風林堂 ― 黙々と山道を下りて行くシヌの後ろについて行った先は、見学の初めに見た道場だ。 だがそこに居たはずの堂徒の姿はどこにもない。 「堂徒はいいの…
― 風林堂 ― フニが言い放った事をジェルミは否定こそしなかったが、一つだけ確信している事があった。 ミニョが斐水門に戻る選択をしたのは閉じ込められる事を受…
― 風林堂 ― ミニョと違って、内心の動揺をうまく隠すミナムの心情にシヌは気付いていないようで、フニに促されたからか、特に何かを言う事もなく、殺生門を抜けて…
― 風林堂 ― 節度や礼節を重んじる風林堂らしく、来客用の宿泊施設も男女に分けられてあり、女性用は比較的なだらかな平地に建てられているが、男性用は傾斜地に建…
― 風林堂 ― テギョンは自分の推測に漏れがないかを、迅速に黙考すると、そのまま思考しながら口を開いた。 「光焔教事件は噂が少ない、それがずっと疑問だった…
― 風林堂 ― フニとは別々に案内されたヘイは、部屋に入るなり案内してきた女堂徒にミナムはどこの部屋になるのかを訊いてくるよう言いつけていた。 困惑顔をしな…
― 風林堂 ― 誰かが話している途中で、テギョンが口を挟む。 そんな事はこれまでに一度もなかった。 (もしここにフニ宗士がいれば、きっと信じられないって顔…
― 風林堂 ― 序列に従っていない事に、カン堂主の眉は顰(ひそ)められたままだったが、テギョンたちの方は、共に旅をする間にいつの間にか序列を気にしなくなって…
― 風林の宿 ― 翌朝、宗主の部屋に出発の確認に伺った宿の主人は、戸口の外まで聞こえてきたテギョンの声に驚いた。 宿の主人にあるまじき行為だが、彼はそろりと…
― 風林 ― シヌがカン堂主と話し始めた頃、ミナムたちは風林の都を夕餉をとる店を探しながら、ぶらぶらと散策していた。 風林の都は所々に朱の柵に囲まれた御社や…
― 風林堂 ― 結局、ミナムが言った最初の部屋割り通りになって、重い荷を下ろし一息つこうと、ミナムが畳の上に大の字になって寝転がった頃、シヌは梵天山の山門で…
― 風林の境界 ― ミナムが目を覚ますとテギョンはすでに起きていた。 テギョンがゆっくり休めるよう、寝ずの番をするはずが、凭(もた)れ掛かっていたはずのテギ…
― 風林の河原 ― 「それで、」シヌは言った後に一息置いた。 酒ではなく自ら淹れた茶を飲むと、静かに落ち着いた声で訊く。 「ファン宗主を助ける為とはどう…
― 風林の河原 ― 二人の為じゃない、ミナムのこの一言は一気に場の空気を重くした。 しかし魚の焼けるおいしい匂いが漂い、荷の仕分けを終えたフニが手に甕を二つ…
― 風林の河原 ― テギョンが湯から上がると、ゆっくりとでも湯の温度は下がっていく。 それでも暫くは肩まですっぽり浸かっていたミナムだが、このままぬるくなる…
― 風林の境界地 ― ミニョは許嫁なのに―――ドンジュンのこの発言に誰もが驚いた。 特にジェルミは、ドンジュンの視線の先に眉をひそめ首を傾ける。 (どうして…
― 風林の境界地 ― 「おまえは俺の後ろにいろ。」 襟首を掴まれたミナムは、テギョンの声に耳を疑った。 これでは、まるで庇護される子供のようだ。 「ヒ…
― 三栗谷街道 最後の宿 ― ミナムとテギョンが一人用の寝台で眠ったという事実は、当事者でない二人、フニとドンジュンによって隠蔽する事に決められた。 フニと…
― 三栗谷街道 最後の宿 ― 三栗谷街道の外れには何軒もの宿が点在している。 山脈に沿った街道を出ても山地であることには変わりなく、道はこの先幾筋にも分かれ…
― 三栗谷街道の宿 ― ドンドンドンドン―― 朝から部屋の戸を叩かれて、機嫌よく寝ていたフニが飛び起きた。 横の寝台で寝ているだろうテギョンに目をやると、急…
― 金鉱教の孤城 ― 縹炎が赤い砂地なら、金鉱は険峻(けんしゅん)な山々で囲まれている。 金鉱教の城閣は、都から離れた岩山に巨大な石を積み上げて作った要塞だ…
― 三栗谷街道の宿 ― 宗家の宿と違って、全員が集まると一杯になりそうなこの部屋は二人で一部屋だ。 ミニョを寝台に寝かせると、テギョンとフニは後をヘイに任せ…
― 三栗谷街道 ― 天界には、侵してはならない不文律がいくつかあるのだが、その一つが天界の情報を漏らしてはならないだ。 人間界に降りた天の使いは、様々な者に…
― 三栗谷街道 ― ミニョから離れたテギョンは、これまで陥っていた迷いの袋小路から脱却しつつあった。 ミニョとのやりとりが功を奏したのだ。 なにより一番不安…
― 三栗谷街道 斐水の宿 ― 宿に着くと、フニがミニョの前に立ち塞がった。 「宗主はお部屋にいらっしゃいますが、お休みになられてます。」 テギョンの部屋…
― 三栗谷街道 ― 伽藍堂から、茫然としているテギョンを引っ張る様にしてそのまま梅香楼を出た一行は、今夜の寝床となる斐水の宿に向かって歩き始めた。 夕闇迫る…
― 梅香楼 楼閣 ― 大きな音と共に駆け込んで来た四人は、閉めた戸にへばり付いて息を切らしている。 聞き耳を立て、追ってきたはずの女たちが諦めたのを確認する…
― 梅香楼 呪(まじな)いの堂宇― 空が色を変え始める頃、一行は梅香楼の門前に到着した。 だがその門には扁額が掛かってない。 門は梅香楼という名のごとく梅…
― 三栗谷街道 ― 「ファ・・・・・・」 早朝の街道、ヘイを乗せた馬車のさらに後ろを歩くミニョは、口に手を当て大きな欠伸をして、目を擦った。 「夕べ眠れ…
― 三栗谷街道 風林の宿 ― 宿に戻ると、フニが不満そうな顔で待っていた。 「行くなら行くと、言ってくださいよ。」 テギョンは訴えるフニをしり目に、近く…
― 山賊の根城 ― テギョンの言葉一つに、エンたちは二十年以上も昔に引き戻されてしまった。 過去の事象として記憶しているのと、当事者に戻って思い出すのとでは…
― 山賊の山 ― 山賊の根城である小屋からミニョを救出したシヌは、当初安全な場所までミニョを連れて行った後で、また戻って来るつもりでいた。 だが思うようには…
― 山賊のいる山 ― テギョンとジェルミ、そしてジフンの三人は、宿を出ると文に記された道を通って、山の麓に訪れた。 そこはあの抜け道の煙の上がった先ではない…
― 山賊の根城 ― ミニョはとっさに身構えた。 だけど手足は縛られている為、その姿勢はとても妙な形だった。 「何してるんだ。」 首領らしき男が怪訝な顔で…
― 三栗谷街道の幽霊屋敷 ― 抜け道を見つけたテギョンは、宿に行こうと言い出した。 「どうして宿に行くんだ? ミニョが攫(さら)われたのは、ここなんだぞ。…
― 十年前の三栗谷街道 ― 光焔の村の入り口で、フニと別れた少年テギョンは、迷うことなく真っすぐ三栗谷街道に入った。 初めて見る活気のある人々に目を瞠る。 …
― 三栗谷街道の幽霊屋敷 ― テギョンたちは傷のある棺の蓋を探し始めた。 一つ一つ、蓋を開けて中を見るのが一番手っ取り早いのだが、死者の眠りを妨げる事にもな…
― 三栗谷街道の幽霊屋敷 ― 「ミニョがいない!」 ジェルミの声が、まだ薄っすらと霧の残る中で響いた。 すぐさまジェルミを睨む者、無視する者、呆れている者…
― 三栗谷街道の幽霊屋敷 ― それが第一の理由、テギョンはそう言ってまた歩き出した。 腕を引っ張られたミニョは、半歩後ろを歩いていく。 一見従順に従っている…
私のコロナ日記、そろそろ一年と書こうとしてたんだけど・・・・・・、悪夢の再来と書きましたが、どうやら、 またまた、 我が家の長男が、 コロナです。 病院で…
― 三栗谷街道の橋 ― 宿を出て歩き続ける一行の前から、途絶えることなく続いていた店も露店も姿を消し、家屋はおろか小屋の一つも見当たらなくなった。 街道から…
― 三栗谷街道 ― 翌日、ミニョはテギョンの近くにいて、その顔はなんというか、一見普通に見えながら、どこか沈んでいるとも言えるし、困ってるようにも見えた。 …
― 三栗谷街道 金光教の宿 ― 目を覚ましたミニョは、そこが寝台の上だと気づいて身体を起こした。 (初めて見る部屋、ここはどこ? 私は・・・・・・) 何…
― ユ・ヘイの馬車 ― 御車台に座る事の出来なかったテギョンは、腕組をした身体を馬車の側壁に預けて目を閉じ、微動だにせず座っていた。 ヘイとは人一人分の間が…
― 三栗谷街道の川 ― すっかり忘れてしまっていた鉄砲水が、頭の中でぐるぐるし始めた。 二つの事が同時にできないミニョは、一つの事を考え始めた為に、雨の中で…
― 宿 大部屋の中の個室 ― その夜、どうやって戻ったのかミニョは全く覚えていなかった。 目を覚ますと、瞼が重く腫れていて、頭は重くすっきりしない。 起き上…
― 三栗谷街道の路地裏 ― 外に出ようとして誰かにぶつかったとたん、口を塞がれた。 叫び声を上げる事も出来ずに黒い布で覆われて、何も見えないまま担がれて連れ…
ミニョは、話が模諜枢教やモ教主に及ぶと、ジェルミの事が気になり始めた。 ミニョの知っているジェルミは、モ教主の庇護のもと、模諜枢教から出るにはモ教主の許可が…
ご機嫌如何ですか。 突然このようなタイトルで浮上し、驚かせてしまいました。まさかの更新と思われた方、ごめんなさい。 実際のところ、自分で言うのもなんだけど、な…
― 宿の大部屋 ― 水が豊富な斐水では、湯あみではなく水浴びをする。 だから熱い湯で湯あみをしたのは、模諜枢教が初めてだったと、ミニョは湯に浸かりながら思い…
― 宿の大部屋 ― フニが衣服屋の店主から聞いたとおりに行くと、宿はすぐに見つかった.。 だがそこは、八人も泊まれば一杯になりそうな宿だ。 テギョンは宿を前…
― 三栗谷街道 衣服屋 ― 昼下がりの街道は、旅人や商人たちの足取りも先を急いで早くなる。 その中をゆっくりと進んでいた馬車が止まった。 ユ・ヘイより先に降…
― 三栗谷街道 ― 「やっちまえ!」の声と同時に、「やめろ!」と飛び込んできた男の声が響いた。 振り上げた武器を持つ手が止まって、さすがに身構えたテギョンた…
― 三栗谷街道 ― 山道を下ると街道に出た。 左は三栗谷街道唯一の歓楽街だが、右は何もない林道で、先に進んで右に上れば光焔の村、そのまま進めば模諜と金鉱の境…
― 狩り人の山道 ― フニは滔々(とうとう)と話し続ける。 「何日も歩き続けて、模諜の外れに着いた時も、宗主はまだ茫然としていて、とても仕事のできる状態じ…
― 狩り人の山道 ― 日が落ち切ると辺りは一気に暗くなった。 ジェルミたちが立てる小さな話し声の中、テギョンは幾度も寝返りを打ったが目を覚ます事はなかった。…
― 狩り人の山道 ― テギョンは、二人に言うだけ言って、何もなかったように元の場所に戻って行く。 それを待ってユ・ヘイは、フニにテギョンを探るよう話しかけた…
― 狩り人の道 ― テギョンたち一行は、翌日の朝早くに光焔の村を出ると、風林堂を目指して、未踏の山道を歩いていた。 未踏と言っても、これまでのように起伏の激…
― 光焔村 お堂の前 ― ミニョは何度も寝返りを打って、なんとか眠ろうとしたが、どれほど振り払っても、頭の中はさっきのテギョンの話でいっぱいで、全く眠れそう…
― 光焔村のお堂 ― 「宗家の者が盗人だったなんてね。」 戻ったばかりのテギョンに向かって、ジェルミが聞こえよがしにそう言った。 テギョンは僅かに眉をしか…
「あの入り口からの下り道に、立っていたのが宗主でした。 勿論その時はまだ宗主じゃありませんし、幼いとは言えないまでも、十分に少年と呼ぶに相応しい子供でしたが…
― 宗家のない村 ― 予定より三日も遅れて村に着いたテギョンたちを、マ・フニが泣きそうな顔で出迎えた。 「宗主、何があったんです~? こんなに遅れるなんて…
― 山の麓 ― テギョンたちが辿り着いたのは、かなり遅くなってからだった。 シヌは、テギョンを見て、さらに後ろからヒーヒー言いながら鹿を運んでくる、ジェルミ…
― 毒蛇の丘 ― 井戸を直したりする時間もあって、十分に休憩をとることのできたミニョは、支えられることなしに一人で歩き始めた。 確かに随分と回復していると誰…
― かつての家 ― 井戸の修理などで、休息の時を過ごせたミニョは、もう大丈夫ですと言う笑顔を周りに向け、茶を淹れたシヌは、労(ねぎら)う意味も込めてテギョン…
― 毒蛇の丘 ― テギョンを先頭に歩き始めた一行は、ずっと続く暗く深い森に、差し込む光を感じ始める。 歩行の邪魔でしかなかった、大蛇のようにうねった根の隆起…
― 深淵の森 ― 鬱蒼と茂る森の木々によって、まだ夕刻だと思うのにここは既に薄暗く、早くから火を熾した事もあってか、誰もがもう夜なのではと思わずにはいられな…
― 深淵の森 ― ユ・ヘイは、自分の両脇で支えるジフンとドンジュンにありえないとでも言いたげに目を細めた。 ジェルミは先に行き、シヌはテギョンとミニョの荷を…
― 獣の山 瘴気の谷 ― 先ほどまでの獣との争いが、嘘だったかのような穏やかな陽光の中、劈(つんざ)くヘイの悲鳴とミニョの叫び声が、テギョンたちの耳にも届い…
― 獣の山 ― 誰もが何らかの疑問を持ちながら、それでも声を出すのを控え、火にくべた木が爆(は)ぜる音だけが聞こえる中、まんじりともせずに夜が明けるのを待っ…
― 獣の山 ― テギョンはぐるりと周りの顔を見まわして口を開いた。 「このまま進行方向に山を下りれば、瘴気が立ち込めた谷に出くわし、結局迂回する事になる。…
― 獣の山 ー 次の砂嵐に遭遇する前に、山の麓に辿り着かなければならないと、誰もがそう思って歩き続けた。 (誰がこっちに行こうって言ったんだ、クソッタレ)…
― 赤い砂地 ― 吹きつける生暖かい風が、幾分強くなった気がしながらも、誰もがようやく安堵のような表情を浮かべ始めた。 これまでのただ一面の赤い砂地とは違っ…
― 縹炎 中央 ― 結界の強化はたいして時を要しない、まだ薄暗さの残る空気の中、振り返ったテギョンが言う。 「終わった、出発しよう。」 「宗主、気を付けて…
― 六角禅堂 ― テギョンは無言のままジェルミを見据えた。 テギョン自身、視察に来た継承者に、ここの状況を訴えたからと言って、それで解決するとは思っていなか…
― 祖廟 ― 六角禅堂への上り口の床は、節や節穴のある板を敷き詰めて出来ている。 じっくり見ても、それらは木の模様にしか見えないが、テギョンはその節穴の一つ…
この地は、縹炎に至る遥か昔に、神魔大戦で滅した地であった。 永い眠りの後に、地は草を生み、木々を育て、豊かな緑の地へと再生して、胡族の草原となった。 し…
― 縹炎宗 庖 ― マ・フニはテギョンが六角聖堂で話をしている間に、夕餉の差配もあって、庖(くりや)に来ていた。 縹炎宗 宗主の食事も、宗徒の食事も、そして…
― 縹炎 六角禅堂 ― 「逆に、ファン宗主には訊きたい事はないのですか。」 それまでは、ただ静かにお茶を飲んでいたカン・シヌが、テギョンを見て訊いた。 テ…
― 縹炎宗 ― ある日の午後、いつもなら鍛錬を終えるとすぐにコ・ミニョの前を通り過ぎて行ってしまうテギョンが、なぜか動きを止める。 ミニョはじっとテギョンの…
― 縹炎宗 ― 十分な休息と食事、そして瞑想のおかげで、コ・ミニョの身体はすっかり元の元気を取り戻していた。 さらにファン・テギョンは、コ・ミニョに瞑想だけ…
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― 斐水門 ― 「道に迷ったか?」 テギョンに声を掛けたコ門主は、軽口のように問いはしたが、ここは一本道でそれはあり得ないだろうと前後の道を見回してみせる…
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ご機嫌如何ですか。 突然このようなタイトルで浮上し、驚かせてしまいました。まさかの更新と思われた方、ごめんなさい。 実際のところ、自分で言うのもなんだけど、な…
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