― 西京の門 ― 山寺を出発したばかりの頃は雨足も強くなかったから、馬も軽快に走って馬車を引っ張ってくれていたが、雨が強くなるにつけ立ち止まる事が多くなった…
― 西京の門 ― 山寺を出発したばかりの頃は雨足も強くなかったから、馬も軽快に走って馬車を引っ張ってくれていたが、雨が強くなるにつけ立ち止まる事が多くなった…
― 苔むす山寺 ― ミニョとジェルミを見送った五人は、テギョンを起こさないようテギョンの眠る部屋から、一番離れた所に集まっていた。 といっても各々がそれぞれ…
― 模諜への道外れにある山寺 ― ミニョの説得で山寺に向かう事になった一行は、かつては光焔だった模諜の地を後にした。 とはいえ行く先である山寺は、かつての光…
― かつての光焔 ― 手を上げたジフンに顔を向ける。 どの顔も不思議そうな表情だ。 ジフンがこの場で何か言う事があるとは想像すらできないからだ。 一瞬の迷い…
― かつての光焔 ― いざ寝ようという段になると、テギョンがミニョとは夫婦だからと突然一部屋を要求してきた。 誰もが声も出せないほどに驚いたのは当然だが、そ…
― かつての光焔 ― 「その模諜の都へは、祭りが始まる前に行くのかしら、それとも終わってからかしら?」 ヘイは小首を傾けて、しなを作りながら立てた指を顎に…
― かつての光焔 ― テギョンの酷い物言いに、ジェルミは顔を真っ赤にして「失礼だ!」と憤った。 だがテギョンはそれすらも小馬鹿にしたように笑うから、隣でミニ…
― かつての光焔 ― 「あの~、もしかしてずっと起きてました?」 フニは奥の間にいる二人を気にして、シヌに近づいてからかなり小声でそう訊いたが、聞いていた…
― かつての光焔 ― フニは引き戸の前に座っていたが、そこは小さな窓があるだけの、いわば奥の部屋の前室だ。 座った時はまだ外からの陽射しが届いていたが、いつ…
― かつての光焔 ― 昨夜と同じ部屋(続き間の大部屋)をそのまま使える事になると、テギョンたちはする事がなくなった。 これまでは宗家に身を寄せた時以外、連泊…
― かつての光焔 ― そっその笑顔は反則よ――テギョンから目を背けたミニョは顔が熱くなっているのを感じる。 さらには胸に広がる喜びや嬉しさに、自然と顔が緩ん…
― かつての光焔 ― ミニョが言わんとする事はジェルミにだって分かっていた。 「だけど、ミニョだって疲れてるのに・・・・・・」 ミニョの膝で眠るテギョ…
― かつての光焔 ― ミニョは夢を見ていた。 ただ、いつもの夢とは違って崩れ落ちるのはミニョではない。 傷を負い、戦い疲れたテギョンがミニョの目の前で倒れる…
― かつての光焔 ― (何も写さない眼は何を捉えて攻撃を仕掛けるのかしら。 なぜ彼らは私たちを敵だとみなしたの。 彼らの望みが分かればいいのに。) ミニョ…
― かつての光焔 本殿 内陣 ― テギョンは傷口が開かないよう片腕を身体に沿えて、ゆっくりと動き出した。 眠っているかに見えた時も、彼は休んでいなかった。 …
― かつての光焔 ― ジェルミにとっての光焔事件は、生まれる前の事件であって、概要も成長してから説明を受けた。 それは光焔の宗家が悪企みをして、母であるモ教…
― かつての光焔 ― 「まだだ。」 (まだ・・・・・・だ・・・・・・?) ヘイはテギョンの言葉を頭の中で反復した。 テギョンが火神だとしても今は人間で、能…
― かつての光焔 ― 突然の声で目を開けたミニョは、目の前を塞ぐ見慣れない胸板に瞬いた。 遠い昔、誰かの胸で眠った記憶が呼び覚まされたが、そこには二つのまー…
― かつての光焔 ― 光焔―――、フニの言葉を聞いて飛び起きたテギョンは、怪我を負った方の肩を押さえて苦痛に顔を歪めた。 だがそれでも確認せずにはいられない…
― 風林と模諜の境 ― 風を裂いて飛ぶ矢の音に、いち早く気付いたのはシヌだった。 避けろという声を聞いたミニョだったが、正面に飛んできた矢に驚いて、その場に…
― 風林堂 ― テギョンは自分の推測に漏れがないかを、迅速に黙考すると、そのまま思考しながら口を開いた。 「光焔教事件は噂が少ない、それがずっと疑問だった…
― 風林堂 ― フニとは別々に案内されたヘイは、部屋に入るなり案内してきた女堂徒にミナムはどこの部屋になるのかを訊いてくるよう言いつけていた。 困惑顔をしな…
― 風林堂 ― 誰かが話している途中で、テギョンが口を挟む。 そんな事はこれまでに一度もなかった。 (もしここにフニ宗士がいれば、きっと信じられないって顔…
― 風林堂 ― 序列に従っていない事に、カン堂主の眉は顰(ひそ)められたままだったが、テギョンたちの方は、共に旅をする間にいつの間にか序列を気にしなくなって…
― 風林の宿 ― 翌朝、宗主の部屋に出発の確認に伺った宿の主人は、戸口の外まで聞こえてきたテギョンの声に驚いた。 宿の主人にあるまじき行為だが、彼はそろりと…
― 風林 ― シヌがカン堂主と話し始めた頃、ミナムたちは風林の都を夕餉をとる店を探しながら、ぶらぶらと散策していた。 風林の都は所々に朱の柵に囲まれた御社や…
― 風林堂 ― 結局、ミナムが言った最初の部屋割り通りになって、重い荷を下ろし一息つこうと、ミナムが畳の上に大の字になって寝転がった頃、シヌは梵天山の山門で…
― 風林の境界 ― ミナムが目を覚ますとテギョンはすでに起きていた。 テギョンがゆっくり休めるよう、寝ずの番をするはずが、凭(もた)れ掛かっていたはずのテギ…
― 風林の河原 ― 「それで、」シヌは言った後に一息置いた。 酒ではなく自ら淹れた茶を飲むと、静かに落ち着いた声で訊く。 「ファン宗主を助ける為とはどう…
― 風林の河原 ― 二人の為じゃない、ミナムのこの一言は一気に場の空気を重くした。 しかし魚の焼けるおいしい匂いが漂い、荷の仕分けを終えたフニが手に甕を二つ…
― 風林の河原 ― テギョンが湯から上がると、ゆっくりとでも湯の温度は下がっていく。 それでも暫くは肩まですっぽり浸かっていたミナムだが、このままぬるくなる…
― 風林の境界地 ― ミニョは許嫁なのに―――ドンジュンのこの発言に誰もが驚いた。 特にジェルミは、ドンジュンの視線の先に眉をひそめ首を傾ける。 (どうして…
― 風林の境界地 ― 「おまえは俺の後ろにいろ。」 襟首を掴まれたミナムは、テギョンの声に耳を疑った。 これでは、まるで庇護される子供のようだ。 「ヒ…
― 三栗谷街道 最後の宿 ― ミナムとテギョンが一人用の寝台で眠ったという事実は、当事者でない二人、フニとドンジュンによって隠蔽する事に決められた。 フニと…
― 三栗谷街道 最後の宿 ― 三栗谷街道の外れには何軒もの宿が点在している。 山脈に沿った街道を出ても山地であることには変わりなく、道はこの先幾筋にも分かれ…
― 三栗谷街道の宿 ― ドンドンドンドン―― 朝から部屋の戸を叩かれて、機嫌よく寝ていたフニが飛び起きた。 横の寝台で寝ているだろうテギョンに目をやると、急…
― 金鉱教の孤城 ― 縹炎が赤い砂地なら、金鉱は険峻(けんしゅん)な山々で囲まれている。 金鉱教の城閣は、都から離れた岩山に巨大な石を積み上げて作った要塞だ…
― 三栗谷街道の宿 ― 宗家の宿と違って、全員が集まると一杯になりそうなこの部屋は二人で一部屋だ。 ミニョを寝台に寝かせると、テギョンとフニは後をヘイに任せ…
― 三栗谷街道 ― 天界には、侵してはならない不文律がいくつかあるのだが、その一つが天界の情報を漏らしてはならないだ。 人間界に降りた天の使いは、様々な者に…
― 三栗谷街道 ― ミニョから離れたテギョンは、これまで陥っていた迷いの袋小路から脱却しつつあった。 ミニョとのやりとりが功を奏したのだ。 なにより一番不安…