「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−10 さかさまジョージからのファックス(再編集版)
アストロラーベが言葉を返す。「たしかにお主がペルセリアスの時代に、第一次神界大戦で闘ったことがある。あのときは敵味方だったが、今度は共に闘うことになるであろう」「スカルラーベだ。俺様が来たからには、勝負はすでに決まったようなもんだ。暴れさせてもらうぜ。腕がなるぜ。それにマクミラの育ての親ジェフと恋人のダニエルにも会えてうれしいぜ」めずらしくマクミラがあわてて否定する。「恋人だなんて・・・・・・」「違うのか?」「ダニエルは、貴重な戦力よ」それだけ言うと、マクミラは黙ってしまう。いままで黙っていたミスティラが、言いにくそうに話に加わる。「あの〜、話し合わなくてはいけないことがあると思うのですが」ジェフが言う。「おお、そうでした。ミスティラ様、初めてお目にかかります。マクミラ様の妹君だけあって、さすがお美しい」「それ...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−10さかさまジョージからのファックス(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ(再編集版)
三人は、屋上へ直行する高速エレベータに飛び乗った。エレベータを飛び出したジェフは、かつて見た悪夢を思い出した。目の前で時空間がゆがみ、裂け始めていた。星空が消え去って、景色が真っ暗になる。バキバキと焚き火に爆竹を投げ込んだような音を立てて裂け目が渦巻き、冷たい炎が吹き出す。子供の絵本にあるファイヤー・ドラゴンが、夜空に浮かび上がった。口から紫の煙をあげるドラゴンの背に乗るのは、おそろしく不機嫌な顔をした紅色に燃えたつ髪をした男。(マクミラよ、人間時間ではかなりの時間がたったが、元気そうじゃな)3人の頭に思念が、ガンガンこだました。「おひさしゅうございます、プルートゥ様。こちらでは思念が使えませぬ。言葉・・・・・・人間の伝達手段で失礼いたします」ダニエルが訊ねる。「誰だ、こいつ?」(我は冥主じゃ。ペルセリアス、お...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−9アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−8 プル−トゥ、再降臨(再編集版)
「マクミラ様が先日お知り合いになられたストリート・ギャングたちが、一例でございましょう。彼らのほとんどは、まだ右も左もわからぬ若者ばかりです。普通に考えれば、若いにもかかわらず組織犯罪に関わり、銃やナイフを携帯して命を危険にさらすバカ者共です。ところがカルチュラル・パフォーマンス的に考えれば、若いがゆえに自らを危険にさらし対立する組織と闘うことで自らのアイデンティティを確立しようとしていると考えられます。同時に、ああした組織に所属することは、シャバにいようと監獄にいようと同胞同士による自衛手段であり、大半は若い身空で命のほむらを散らすかもしれません。運良く生き残って、守るものができれば、カタギになってストリート・ギャングを引退するでしょう。それが、生涯を通じてギャングとして生きる職業的犯罪者集団であるマフィアと...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−8プル−トゥ、再降臨(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−7 支配する側とされる側(再編集版)
「わたしには、絶対的価値観の否定の方が正しいような気がするけどね」「そこがむずかしいところでして。たとえば、ナチスによるホロコーストを野蛮な行為と考えれば啓蒙による社会の解放が妥当な選択肢に見えますし、フランクフルト学派が言うようにナチスの暴挙を理性が道具化された状況と考えればモダニズムは妥当性を失います。しかし、支配的な価値観があるからこそ、対抗的な価値観が光り輝くという点は否定できません。フランシス・リオタールは、ポスト・モダニティー(ポストモダン時代)ではなくポストモダン・コンディション(ポストモダンの条件)という言葉を使っています」「ポストモダニズムが、モダニズムを崩壊させてしまうのではなく、あくまで支配的な状況に対するアンチテーゼなのかしら?」「その点は、どのような思想家の立場を取るかによって、多少、...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−7支配する側とされる側(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究(再編集版)
「話をわかりやすくします。演劇の実践者が虚構世界のスクリプトを演じるのに対して、パフォーマーは現実世界における差別、偏見、権威などに対する社会批評を試みます。多くの文化による出会い、衝突、摩擦が多くの問題と新しい創造の可能性を提起する今日、人文、社会諸科学にまたがる幅広いスペクトルにおけるパフォーマンス研究は、教育、娯楽、儀礼、癒しの理論化などの分野で大きな役割を担っていると言われています。パフォーマーは、一人芝居、紙芝居、映像作品、掛け合い漫才、即興演奏、バックグラウンド・ミュージック、ボディ・ペインティング、人形劇、スキット、寸劇、ロール・プレイング等、ありとあらゆる手段を駆使して、長期間のリサーチやフィールドワークを元にパフォーマンスを行います。たとえば、ボディ・ペインティングの世界では、デミ・ムーアの表...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−6ジェフの語るパフォーマンス研究(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する(再編集版)
1993年8月末、マクミラはヌーヴェルヴァーグ・タワー内の書斎で忙しい毎日を過ごした。昼は、明かりの届かぬ図書室で人間心理や行動の本を読みあさった。ただし、多くの心理学研究はデータの実証可能性ばかりを重視しすぎていて、現実にどのように人間が行動するかを理解する手助けにはあまりならなかった。どこかで聞いた「直接的に役に立たなければ立たないほど学問的」という皮肉なセリフを思い出した。夜は堕天使ダニエルと四人の魔女たちにどう対すべきか考えていた。災厄を抱え込んだと思う反面、勝ちの見えたゲームに興味を失いつつあったので、ウキウキする部分もあった。圧倒的精神力と魔力を持った冥界時代ならともかく、今、まともにあたっては勝ち目がないことははっきりしていた。ジェフが、おずおずと話しかけた。「マクミラ様、たまには昼はお休みを取ら...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−5マクミラ不眠不休で学習する(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ(再編集版)
マッドがメイクアップでもしたようなピエロ顔で、ニヤニヤ笑いを浮かべる。髪がザンバラになって、下に垂れている。リギスが言う。「やっと表に出てきたでありんすか。でも、おかしなオーラでありんす。子供のように純粋かと思えば、感受性の強い青年のようにひねくれ、老成しているかと思えば、特攻兵のように自暴自棄。サーカス団で育てられた悪魔の子、遊園地に住みついた魔法使い、人にまざってレスリングに興じるゴブリンとでも言うでありんすか?いったい、お前さんは何でありんす?」質問に答えて、子供の声で話が始まった。「ボク、トリックスターのさかさまジョージ。でもおねえちゃんたち、なんでさかさまなの?えっ、ボクの方が逆だって!自分がまともだなんて誰に言われたの?まともじゃない人から見たら、まともな方が変で変がまともだよ。おねえちゃんたちこそ...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−4トリックスターのさかさまジョージ(再編集版)
マーメイド クロニクルズ 第二部 第6章−3 リギスの唄(再編集版)
レイモンドが猿の敏捷さで巨木の陰から飛び出すと、両肩に備え付けられたレーザーガンから白光を発射する。ドルガの羽に黒く小さな穴がうがたれて煙を上げるが、蚊にかまれたほどの痛みも感じない。面倒くさそうに腕を振ると、小さな竜巻がレイモンドを襲う。ドルガの瞳が輝くとレーザーガンが竜巻にあっさり爆破されて、身体が次々と異次元空間に持って行かれる。サムソンが筋肉のかたまりの身体から雄叫びを上げると、胸のフルオート・マシンガンがメギリヌに放縦を開始する。銃弾が当たっても、メギリヌは表情一つ変えない。いつの間にか、手中に数百発の銃弾が握られている。彼女が息を吹きかけると銃弾が凍りつく。次の瞬間、投げつけられた銃弾を受けたサムソンが凍りつき崩れ落ちる。サムソンはゾンビ能力を発揮することもなく粉々に砕け散った。ゴーレムは、最も悲惨...マーメイドクロニクルズ第二部第6章−3リギスの唄(再編集版)
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